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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1336683
審判番号 不服2017-6212  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-28 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2015-182833「電力計測装置及び電力計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月17日出願公開、特開2015-227894、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月20日に出願した特願2011-93600号の一部を平成27年9月16日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月29日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月4日付けで手続補正がされ、平成29年1月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年1月20日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2000-338149号公報
2.特開平10-026641号公報

第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年4月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電源から負荷に供給される電力を計測する電力計測装置であって、
前記電力が供給される負荷の電圧と電流の信号をサンプリングしてAD変換を行うAD変換手段と、
前記AD変換手段によってAD変換が行われた電圧と電流の値を乗算して電力を演算する演算手段と、
前記AD変換手段のサンプリング周期mをn等分に分割してm/n間隔でサンプリングするタイミングを設定し、1番目のタイミングでサンプリングする期間を第1期間とし、n番目のタイミングでサンプリングする期間を第n期間とし、前記第1期間?第n期間を所定の時間幅毎に切り替える切替手段と、を備え、
前記切替手段は、前記所定の時間幅より大きい所定の第2時間幅毎に、前記AD変換手段における前記電圧のサンプリングするタイミングと前記電流のサンプリングするタイミングとを交互に入れ替えることで切り替え、
前記切替手段は、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷毎にサンプリングタイミングを異ならせ、かつ所定の時間幅毎のサンプリングタイミングを前回の時間幅におけるサンプリングタイミングと少なくとも一つの負荷は異なるように切り替え、
前記AD変換手段は、前記切替手段によって切り替えられた期間のタイミングで、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷の電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリングし、
前記演算手段は、前記複数の負荷に供給される電力をそれぞれ求める、
電力計測装置。
【請求項2】
電源から負荷に供給される電力を計測する電力計測装置における電力計測方法であって、
前記電力が供給される負荷の電圧と電流の信号をサンプリングしてAD変換を行うステップと、
前記AD変換が行われた電圧と電流の値を乗算して電力を演算するステップと、
前記AD変換のサンプリング周期mをn等分に分割してm/n間隔でサンプリングするタイミングを設定し、1番目のタイミングでサンプリングする期間を第1期間とし、n番目のタイミングでサンプリングする期間を第n期間とし、前記第1期間?第n期間を所定の時間幅毎に切り替えるステップと、を有し、
前記切り替えるステップでは、
前記所定の時間幅より大きい所定の第2時間幅毎に、前記AD変換における前記電圧のサンプリングするタイミングと前記電流のサンプリングするタイミングとを交互に入れ替えることで切り替え、かつ、
少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷毎にサンプリングタイミングを異ならせ、かつ所定の時間幅毎のサンプリングタイミングを前回の時間幅におけるサンプリングタイミングと少なくとも一つの負荷は異なるように切り替え、
前記AD変換を行うステップでは、切り替えられた期間のタイミングで、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷の電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリングし、
前記演算するステップでは、前記複数の負荷に供給される電力をそれぞれ求める、
電力計測方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図とともに次の事項が記載されている(下線は、当審による。)。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電圧信号と電流信号をサンプルして得たデータを用いて交流電力の計測演算を行う電力計測装置に関し、特に、入力信号生成部における付加位相によって発生する計測誤差を無くすようにしたものである。」

イ 「【0003】次に従来の電力計測装置の動作について説明する。各相毎の電圧信号および各相毎の電流信号を電流/電圧変換した電圧信号は、所定のサンプリング信号によってマルチプレクサ102で順番に選択抽出( サンプリング) され、A/D変換器103に導かれる。A/D変換器103はマルチプレクサ102への前記サンプリング信号と連動した制御信号によりマルチプレクサ102からの出力をディジタル信号に変換してマイクロコンピュータ104へ出力する。マイクロコンピュータ104はこのディジタル信号をサンプリング信号と関連を持たせて内部メモリ104aに一旦記憶し、必要なデータが揃ったところで、電力計測のための演算を行う。なお、マルチプレクサ102におけるサンプリング信号の制御、A/D変換器103の変換制御および電力計測のための演算はマイクロコンピュータ104で行う。」

ウ 「【0014】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1 はこの発明の実施の形態1.に係る電力計測装置の構成図である。図において1 0は本件発明に係る電力計測装置である。電力発生装置200から出力される計測要素(R相、S相、T相)毎の電圧を計測要素毎測定用電圧に変換する計測用変圧器1a11、1a12、1a13と、この出力を計測用信号に変換する電圧レベル変換器1a21、1a22、1a23とよりなる第1 の入力生成部1aと、前記電力発生装置200から出力される計測要素(R相、S相、T相)毎の電流を計測要素毎測定用電流に変換する測定用変流器1b11、1b12、1b13とこの出力を計測用信号に変換する電流/電圧変換器1b21、1b22、1b23とより成る第2の入力生成部1bとから構成される入力信号生成部である。2は前記第1 の入力生成部1aからの出力信号を第1群の入力信号とし、前記第2の入力生成部1bからの出力信号を第2 群の入力信号として、それぞれ入力する複数の入力端子と一つの出力端子を有し、サンプリング信号によって前記入力信号の内の特定の1つの信号を選択して出力に導く(サンプリングする)マルチプレクサである。3はマルチプレクサ2のアナログ出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器である。4は、波形整形回路5からの交流信号波形の一周期Tの時間情報に基づき、一周期内において複数個( =計測要素数×m+1) のタイミング信号( 各タイミング信号の間隔=T/(計測要素数×m+1)) を生成するタイミング信号生成部42、前記タイミング信号にもとずいて生成され、前記マルチプレクサ2の第1群の入力信号に対しサンプリングを行う第1 の基準時間を有する第1 群のサンプリング信号と前記マルチプレクサ2の第2群の入力信号に対しサンプリングを行う第2 群のサンプリング信号を生成するサンプリング信号生成部45、第1 群のサンプリング信号の基準時間と第2 群のサンプリング信号の基準時間の相対的関係の調整設定を行う基準時間設定部46、A/D変換器3からのディジタル信号などを記憶するメモリ部44、前記第1 群の入力信号にもとずくディジタル信号と前記第2群の入力信号にもとずくディジタル信号とを使って電力計測のための演算を行う計測演算部43、これら各部の制御を予め組込まれたプログラムによって制御するプログラム制御部41、各部の接続制御をプログラム制御部41からのタイミングゲート信号によって行うバスライン47から構成される。5は前記電力発生装置200からの交流信号波形を波形整形し、交流信号波形の一周期の時間情報Tを抽出する波形整形回路、6は計測演算結果の出力端子である。
【0015】次に動作について説明する。電力発生装置200からは3相電力が出力されていて、この電力量を本件発明に係る電力計測装置で計測する。3相電力の計測要素は6項目あり、R相、S相、T相のそれぞれの電圧と電流である。各電圧はそれぞれ測定用変圧器1a11,1a12,1a13および電圧レベル変換器1a21,1a22,1a23より構成される第1の入力信号生成部1aを経て、また各電流はそれぞれ測定用変流器1b11,1b12,1b13および電流/電圧変換器1b21,1b22,1b23より構成される第2の入力信号生成部1bを経てマルチプレクサ2に導びく。マルチプレクサ2に入力した複数の入力信号は、所定の周期と時間基準を有するサンプリング信号によって、順次計測要素の順にその1つが選ばれ出力される。そして次のA/D変換器3でディジタル信号に変換される。なお、マルチプレクサ2からA/D変換器3に入力されるサンプリングされた信号の波形は時間と共に変化するので、マルチプレクサ2のサンプリング信号と同期して動作するサンプルホールド回路( 図示せず) でホールドした上でディジタル信号に変換する。ここでサンプリングは、まず電圧の計測要素に係る電圧信号のサンプリングが順番に、交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で3Tの期間行われる。ついで、電流の計測要素に係る電流信号のサンプリングが順に交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で次の3Tの期間行われる。この様子を先の図2に示す。この図では説明の都合上、交流電圧の1周期Tの間サンプリングの回数は、m=2として7回行う場合について示している。すなわち、まず電圧信号のサンプリングを3Tの間行い、次いで電流信号のサンプリングを3Tの間行い、6T(=交流電圧の周期T×計測要素数6)後毎に最初のサンプリング位置、つまり計測要素の電圧信号が最初のタイミング信号によって抽出される位置( 図2 の◎印の位置) に戻るようにしている。このようにしてサンプリングされ、A/D変換器されたディジタル信号は、計測要素毎のサンプリングの位置情報(図2では、周期番号(第1周期から第6周期)と、その中での位置番号(1?7)で表示している)と対応させてメモリ部44にて蓄えられ、電力の計測演算の基礎データとして使用される。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電圧信号と電流信号をサンプルして得たデータを用いて交流電力の計測演算を行う電力計測装置であって、
電力発生装置200から出力される計測要素(R相、S相、T相)毎の電圧を計測用信号に変換する第1の入力生成部1aと、前記電力発生装置200から出力される計測要素(R相、S相、T相)毎の電流を計測用信号に変換する第2の入力生成部1bと、
前記第1の入力生成部1aからの出力信号を第1群の入力信号とし、前記第2の入力生成部1bからの出力信号を第2群の入力信号として、それぞれ入力する複数の入力端子と一つの出力端子を有し、サンプリング信号によって前記入力信号の内の特定の1つの信号を選択して出力に導く(サンプリングする)マルチプレクサ2と、
マルチプレクサ2のアナログ出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換器3と、
波形整形回路5からの交流信号波形の一周期Tの時間情報に基づき、一周期内において複数個( =計測要素数×m+1) のタイミング信号( 各タイミング信号の間隔=T/(計測要素数×m+1)) を生成するタイミング信号生成部42と、前記タイミング信号にもとずいて生成され、前記マルチプレクサ2の第1群の入力信号に対しサンプリングを行う第1の基準時間を有する第1群のサンプリング信号と前記マルチプレクサ2の第2群の入力信号に対しサンプリングを行う第2群のサンプリング信号を生成するサンプリング信号生成部45と、
前記第1群の入力信号にもとずくディジタル信号と前記第2群の入力信号にもとずくディジタル信号とを使って電力計測のための演算を行う計測演算部43と、を備え、
第1の入力信号生成部1a及び入力信号生成部1bからマルチプレクサ2に入力した複数の入力信号は、所定の周期と時間基準を有するサンプリング信号によって、順次計測要素の順にその1つが選ばれ、次のA/D変換器3でディジタル信号に変換され、
サンプリングは、まず電圧の計測要素に係る電圧信号のサンプリングが順番に、交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で3Tの期間行われ、ついで、電流の計測要素に係る電流信号のサンプリングが順に交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で次の3Tの期間行われる、
電力計測装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、複数の回路1?Nにおける電力を時分割により求めることが記載されている(段落0025?0035、図2等)。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明は、「電圧信号と電流信号をサンプルして得たデータを用いて交流電力の計測演算を行う電力計測装置」であるところ、当該電圧信号と電流信号は、電源から負荷に供給される電力に関する電圧信号と電流信号と認められるから、引用発明の「電圧信号と電流信号をサンプルして得たデータを用いて交流電力の計測演算を行う電力計測装置」は、本願発明1の「電源から負荷に供給される電力を計測する電力計測装置」といえる。
イ 引用発明の「A/D変換器3」は、マルチプレクサ2のアナログ出力信号をディジタル信号に変換するものであるところ、マルチプレクサ2のアナログ出力信号は、第1の入力生成部1aからの出力信号と第2の入力生成部1bからの出力信号の内の特定の1つの信号を選択して出力に導かれた(サンプリングされた)信号であり、ここで、第1の入力生成部1aからの出力信号は、計測要素(R相、S相、T相)毎の電圧を計測用信号に変換した信号であり、第2の入力生成部1bからの出力信号は、計測要素(R相、S相、T相)毎の電流を計測用信号に変換した信号であるから、A/D変換器がマルチプレクサへの前記サンプリング信号と連動した制御信号によりマルチプレクサからの出力をディジタル信号に変換するものである(引用文献1段落【0003】参照。)ことを踏まえれば、引用発明の「A/D変換器3」は、本願発明1の「前記電力が供給される負荷の電圧と電流の信号をサンプリングしてAD変換を行うAD変換手段」に相当する。
ウ 引用発明の「計測演算部43」は、「前記第1群の入力信号にもとずくディジタル信号と前記第2群の入力信号にもとずくディジタル信号とを使って電力計測のための演算を行う」ものであるところ、前記第1群の入力信号は、第1の入力生成部1aからの出力信号であり、これは、計測要素(R相、S相、T相)毎の電圧を計測用信号に変換した信号であり、また、前記第2群の入力信号は、第2の入力生成部1bからの出力信号であり、これは、計測要素(R相、S相、T相)毎の電流を計測用信号に変換した信号であり、ここで、電力は、電圧と電流の値を乗算したものであるから、引用発明の「計測演算部43」は、本願発明1の「前記AD変換手段によってAD変換が行われた電圧と電流の値を乗算して電力を演算する演算手段」に相当すると認められる。
エ 引用発明において、「サンプリングは、まず電圧の計測要素に係る電圧信号のサンプリングが順番に、交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で3Tの期間行われ、ついで、電流の計測要素に係る電流信号のサンプリングが順に交流電圧の1周期Tの間に、(計測要素×m+1)回の割合で次の3Tの期間行われる」から、引用発明の「A/D変換器3」は、電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリングしているものと認められ、本願発明1の「前記AD変換手段は、前記切替手段によって切り替えられた期間のタイミングで、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷の電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリング」することと、と、「前記AD変換手段は、電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリング」する点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電源から負荷に供給される電力を計測する電力計測装置であって、
前記電力が供給される負荷の電圧と電流の信号をサンプリングしてAD変換を行うAD変換手段と、
前記AD変換手段によってAD変換が行われた電圧と電流の値を乗算して電力を演算する演算手段と、を備え、
前記AD変換手段は、電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリングする
電力計測装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「前記AD変換手段のサンプリング周期mをn等分に分割してm/n間隔でサンプリングするタイミングを設定し、1番目のタイミングでサンプリングする期間を第1期間とし、n番目のタイミングでサンプリングする期間を第n期間とし、前記第1期間?第n期間を所定の時間幅毎に切り替える切替手段」を備えるものであるのに対し、引用発明は、このような切替手段を備えるものでない点。
(相違点2)本願発明1は、「前記切替手段は、前記所定の時間幅より大きい所定の第2時間幅毎に、前記AD変換手段における前記電圧のサンプリングするタイミングと前記電流のサンプリングするタイミングとを交互に入れ替える」というものであるのに対し、引用発明は、このような切替手段を備えるものでない点。
(相違点3)本願発明1は、「前記切替手段は、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷毎にサンプリングタイミングを異ならせ、かつ所定の時間幅毎のサンプリングタイミングを前回の時間幅におけるサンプリングタイミングと少なくとも一つの負荷は異なるように切り替え」るというものであるのに対し、引用発明は、このような切替手段を備えるものでない点。
(相違点4)本願発明1は、「前記AD変換手段は、前記切替手段によって切り替えられた期間のタイミングで、少なくとも1つの電源から電力が供給される複数の負荷の電圧と電流の信号を時分割で交互にサンプリング」するというものであるのに対し、引用発明は、このような複数の負荷に関する電圧と電流をサンプリングするものでない点。
(相違点5)
本願発明の「演算手段」は、「複数の負荷に供給される電力をそれぞれ求める」ものであるのに対し、引用発明の「計測演算部43」は、このようなものでない点。

(2)相違点についての判断
事例に鑑み、上記相違点1について以下に検討する。
ア まず、引用文献1の下記図2における第1周期、第2周期及び第3周期の各々の時間幅はTであって、該時間幅Tを本願発明1における「サンプリング周期m」にあてはめてみる。

すると、引用文献1において、T/(計測要素×m+1)の間隔(引用文献1の図2の例では、T/7)でサンプリングするタイミングが、本願発明1における「サンプリング周期m(T)をn(7)等分に分割してm/n(T/7)間隔でサンプリングするタイミングを設定」した「サンプリングするタイミング」に該当する。
さらに、引用文献1の図2において、「1」のタイミングでサンプリングすることが、本願発明1における「1番目のタイミングでサンプリングする」ことに該当し、「k」(k=2?7)のタイミングでサンプリングすることが、本願発明1にあてはめれば、k番目のタイミングでサンプリングすることに該当する。
しかし、例えば引用文献1の図2のR相電圧のサンプリングについてみると、「第1周期」においては、「1」のサンプリングタイミング(1番目のタイミング)でのみサンプリングされているわけではなく、「4」、「7」のサンプリングタイミング(4番目、7番目のタイミング)でもサンプリングされているのであるから、引用文献1における該「第1周期」は、本願発明における「『第1のタイミングでサンプリングする期間』である『第1期間』」には該当し得ない。
したがって、引用文献1には、本願発明1でいう「1番目のタイミングでサンプリングする期間」である「第1期間」も、「n番目のタイミングでサンプリングする期間」である「第n期間」も存在し得ないことになる。

イ これとは別に、引用文献1において、例えばR相電圧のサンプリングがなされる時間間隔(3T/7)を、本願発明1における「サンプリング周期m」にあてはめてみる。
すると、引用文献1における[1]と[2]、[2]と[3]、・・・、[6]と[7]のサンプリングの間隔は、それぞれ(T/7)となるから、これを本願発明1にあてはめれば「サンプリング周期m(3T/7)をn(3)等分に分割してm/n(T/7)間隔でサンプリングするタイミングを設定」したことに該当する。
しかし、そうすると、引用文献1では、例えばR相電圧のサンプリングは、第1周期から第3周期に亘って、常に(3T/7)のサンプリング間隔でなされているから、これを本願発明1にあてはめれば、「1番目のタイミングでサンプリングする期間」のみが存在することになり、R相電圧をサンプリングする期間として、「1番目のタイミングでサンプリングする」「第1期間」以外の期間、つまり、k(k=2?3)番目のタイミングでサンプリングする第k期間は存在し得ないことになる。

ウ したがって、引用文献1において、第1周期、第2周期及び第3周期の各々の時間幅Tを本願発明1における「サンプリング周期m」にあてはめても、例えばR相電圧のサンプリングがなされる時間間隔(3T/7)を本願発明1における「サンプリング周期m」にあてはめても、引用文献1からは、上記相違点1に係る本願発明1のように、「1番目のタイミングでサンプリングする期間を第1期間とし、n番目のタイミングでサンプリングする期間とし、前記第1期間?第n期間を所定の時間幅毎に切り替える切替手段」を備えることは、当業者といえども、容易に想到し得たことではない。

エ また、引用文献2の記載内容は、前記 第4 2のとおりであって、上記相違点1に係る事項を示唆するものではない。

オ したがって、上記相違点2ないし5について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1、2に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、実質的に本願発明1を方法の発明としたものと認められる
から、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1、2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、当業者が引用文献1、2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-31 
出願番号 特願2015-182833(P2015-182833)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
▲うし▼田 真悟
発明の名称 電力計測装置及び電力計測方法  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  

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