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審決分類 審判 全部無効 発明同一  A23L
審判 全部無効 2項進歩性  A23L
管理番号 1336718
審判番号 無効2015-800211  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-11-17 
確定日 2018-02-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第3966527号発明「生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3966527号(以下「本件特許」という。)に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成10年 6月12日 出願(特願平10-165696号)
平成19年 6月 8日 特許権の設定登録(請求項の数5)
平成22年 1月18日 訂正審判の請求(訂正2010-390006号)
同年 2月25日 訂正2010-390006号審決(訂正認容、確定)
(平成25年 3月25日 無効2012-800065号審決(請求不成立))
(平成26年 5月 2日 無効2013-800173号審決(請求不成立))
(平成26年 9月 3日 無効2014-800012号審決(請求不成立))
平成27年11月17日 本件特許無効審判の請求
平成28年 2月 2日 答弁書の提出
同年 6月10日 審理事項通知
同年 7月13日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
同年 7月13日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
同年 7月26日 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)の提出
同年 7月26日 第1回口頭審理
同年 7月29日 上申書(請求人)の提出

以下、本審決において、記載箇所を行により特定する場合、行数は空行を含まない。
また、「・・・」は記載の省略を意味し、証拠は、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。丸数字は、例えば「○1」のように表記する。

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、確定した上記訂正2010-390006号審決(甲28)により訂正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、
前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
【請求項2】
生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、
前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記生海苔混合液槽の内底面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
【請求項3】
生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、
前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
【請求項4】
生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、この回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置において、
前記防止手段を、突起・板体の突起物とし、この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。
【請求項5】
請求項1?請求項4に記載の生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置において、
前記突起・板体の突起物を、回転板の回転方向に傾斜する構成とした生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置。」

第3 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第3966527号は、これを無効とする」との審決を求め、以下の証拠方法を提出し、次の無効理由を主張する。

1 無効理由
(1) 無効理由1[特許法29条の2]
本件発明1?5は、本件特許の出願の日前の実用新案登録出願であって、その出願後に実用新案掲載公報(甲1)の発行がされた実用新案登録出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された考案と同一であり、しかも、本件発明1?5の発明者がその出願前の実用新案登録出願に係る上記の考案をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記実用新案登録出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

(2) 無効理由2[特許法29条2項]
本件発明1、3及び4は、甲4に記載された発明並びに甲2、甲3及び甲16に記載された発明及び甲9?甲14に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
審判請求書に添付して甲1?甲17、口頭審理陳述要領書にて添付して甲18?甲27、平成28年7月29日付け上申書に添付して甲28が提出された。
なお、当事者間に甲1?甲28の成立に争いはない。

甲1 実願平10-003304号(登録実用新案第3053035号)
甲2 登録実用新案第3017060号公報
甲3 特開平8-112081号公報
甲4 特開平8-140637号公報
甲5 特許第3966527号公報
甲6 特願平10-165696号に係る平成19年3月15日付け拒絶理由通知書
甲7 特開平11-346733号公報
甲8の1 甲6の拒絶理由通知書に対する平成19年3月26日付け手続補正書
甲8の2 甲6の拒絶理由通知書に対する平成19年3月26日付け意見書
甲9 海苔タイムス第2面(発行日:平成10年2月11日)
甲10 海苔タイムス第2面(発行日:平成10年2月21日)
甲11 海苔タイムス第3面(発行日:平成10年3月11日)
甲12 海苔タイムス第4面(発行日:平成10年3月21日)
甲13 海苔タイムス第3面(発行日:平成10年4月11日)
甲14 海苔タイムス第3面(発行日:平成10年6月1日)
甲15 海苔タイムス第8面(発行日:平成11年8月11日)
甲16 特開平8-280362号公報
甲17 平成27年(ワ)第12480号 特許権侵害差止等請求事件における原告意見書(新和解条項案)(平成27年8月25日付)
甲18 平成27年(ワ)第12480号 特許権侵害差止等請求事件における原告第3準備書面(平成27年12月22日付)
甲19 平成28年(ワ)第2720号 特許権侵害差止等請求事件における訴状(平成28年1月29日付)
甲20 平成28年(ワ)第2720号 特許権侵害差止等請求事件における原告第2準備書面(平成28年1月29日付)
甲21 特許第5843273号公報
甲22 特願2015-154133号に係る平成27年9月25日付け拒絶理由通知書
甲23の1 甲22の拒絶理由通知書に対する平成27年10月5日付け手続補正書
甲23の2 甲22の拒絶理由通知書に対する平成27年10月5日付け意見書
甲24 特許第2662538号公報
甲25 無効2005-80132号の特許審決公報
甲26 特開昭51-82458号公報
甲27 特開昭48-25968号公報
甲28 訂正2010-390006号の特許審決公報

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の証拠方法を提出し、請求人が主張する無効理由は理由がないものであると主張する。

1 証拠方法
答弁書に添付して乙1の1?乙41の2、口頭審理陳述要領書にて添付して乙42が提出された。
なお、当事者間に乙1の1?乙42の成立に争いはない。

乙1の1 判例時報2185号115?141頁(東地平成24年11月2日判決)
乙1の2 東京地裁平成22年(ワ)第24479号に係る平成24年11月2日判決書79?88頁
乙2 判例時報2192号105?122頁(知財高裁平成25年4月11日判決)
乙3 無効2012-800065号に係る平成25年3月25日付け審決
乙4 特開平6-197742号公報
乙5の1 特開平10-327820号公報
乙5の2 特願平9-159207号に係る平成17年9月22日付け拒絶理由通知書
乙5の3 乙5の2の拒絶理由通知書に対する平成17年12月5日付け手続補正書
乙5の4 乙5の2の拒絶理由通知書に対する平成17年12月5日付け意見書
乙6の1 特開平11-206345号公報
乙6の2 特開2001-69954号公報
乙7 特開平11-243924号公報
乙8 特開平11-276124号公報
乙9 特開平11-276125号公報
乙10 特開平11-285366号公報
乙11 登録実用新案第3053035号公報
乙12 特開平11-313643号公報
乙13 特開平11-318399号公報
乙14 特開2000-23642号公報
乙15の1 特開2004-89033号公報
乙15の2 特願2002-252429号に係る平成19年8月28日付け拒絶理由通知書
乙15の3 乙15の2の拒絶理由通知書に対する平成19年11月5日付け手続補正書
乙15の4 乙15の2の拒絶理由通知書に対する平成19年11月5日付け意見書
乙16 特開2005-333905号公報
乙17の1 特開平7-303463号公報
乙17の2 特開平8-280362号公報
乙17の3 特開平8-275755号公報
乙17の4 特開平9-262075号公報
乙17の5 特開平10-75745号公報
乙17の6 特開平10-262616号公報
乙18の1 特願平10-61497号の願書、明細書及び図面
乙18の2 特願平10-258335号の願書、明細書及び図面
乙18の3 特開2000-139424号公報
乙18の4 登録実用新案第3060414号公報
乙19の1 特開2007-306832号公報
乙19の2 特願2006-137777号に係る平成23年2月15日付け拒絶理由通知書
乙19の3 乙19の2の拒絶理由通知書に対する平成23年4月25日付け意見書
乙19の4 特許第4789041号公報
乙20 特許第4352427号公報
乙21 以下の動画1?17を記録した「DVD-ROM」
動画1「CFW-37」(約3分36秒)、撮影日平成13年3月29日、撮影者幸田巨樹((株)親和製作所従業員)
動画2「CFW-36」(約2分34秒)、撮影日平成13年7月23日、撮影者幸田巨樹((株)親和製作所従業員)
動画3「海苔の流れの概要説明」(約1分15秒)、撮影日平成22年5月12日、撮影者古田政士(フルタ電機(株)取締役)
動画4「板無し」(約6分40秒)、撮影日平成22年5月12日、撮影者古田政士(フルタ電機(株)取締役)
動画5「板有り」(約6分36秒)、撮影日平成22年5月12日、撮影者古田政士(フルタ電機(株)取締役)
動画6「東京地裁平成22年(ワ)第24479号事件-乙6の1」(約14分2秒)、撮影日平成22年9月28日、撮影者 幸田巨樹((株)親和製作所従業員)
動画7「共回り確認実験1-板なし」(約1分49秒)、撮影日平成22年10月29日、撮影者鰐部幸牧(フルタ電機(株)従業員)
動画8「共回り確認実験2-板あり」(約1分34秒)、撮影日平成22年10月29日、撮影者鰐部幸政(フルタ電機(株)従業員)
動画9「進行協議期日1-板なし1」(約35秒)、撮影日平成23年7月7日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画10「進行協議期日2-板なし2(スロー)」(約8分49秒)、撮影日平成23年7月7日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画11「進行協議期日3- 板あり(スロー)」(約7分55秒)、撮影日平成23年7月7日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画12「高速回転(1)」(約8秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画13「高速回転(2)(スロー)」(約2分18秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画14「吸引なし(スロー)」(約3分09秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画15「超低濃度(スロー)」(約9分10秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画16「低濃度(スロー)」(約10分20秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
動画17「中濃度(スロー)」(約10分40秒)、撮影日平成23年6月24日、撮影者被請求人代理人(弁護士小南明也)
乙22 フルタ電機(株)従業員鰐部幸政撮影「写真」平成23年6月9日
乙23 被請求人代理人弁護士小南明也撮影「写真」平成22年11月17日
乙24 特開2010-146225号公報
乙25の1 特開平11-346733号公報
乙25の2 特願平10-165696号に係る平成19年3月2日付け面接記録(出頭者用)
乙25の3 特願平10-165696号に係る平成19年3月15日付け拒絶理由通知書
乙25の4 乙25の3の拒絶理由通知書に対する平成19年3月26日付け手続補正書
乙25の5 乙25の3の拒絶理由通知書に対する平成19年3月26日付け意見書
乙25の6 特願平10-165696号に係る平成19年3月26日付け物件提出書
乙25の7 DVD-R(動画)「平成19年3月26日提出物件(ビデオ)」
乙26の1 無効2013-800173号に係る平成25年12月17日付け審判事件答弁書
乙26の2 無効2013-800173号に係る被請求人が答弁書と同時に提出した参考資料「生海苔異物除去装置及びそれに関連する特許等出願状況一覧表」
乙27の1 東京地裁平成26年(ヨ)第22019号仮処分命令申立事件に係る平成26年10月31日付け仮処分決定
乙27の2 東京地裁平成25年(ワ)第32555号に係る平成27年3月18日付け判決書
乙27の3 乙27の2の東京地裁判決に対する控訴審(平成27年(ネ)第10048号等)に係る平成27年11月12日付け知財高裁判決書
乙28の1 無効2013-800173号に係る平成26年5月2日付け審決
乙28の2 知財高裁平成26年(行ケ)第10135号に係る平成27年7月16日知財高裁判決書(「別紙審決書の写し」の2頁以下省略)
乙29の1 無効2014-800012号に係る平成26年9月3日付け審決
乙29の2 知財高裁平成26年(行ケ)第10223号に係る平成27年7月16日知財高裁判決書(「別紙審決書の写し」の2頁以下省略)
乙30 特開平6-121660号公報
乙31の1 特開平3-183459号公報
乙31の2 特開平5-41965号公報
乙31の3 特許第2662537号公報
乙32 特開2003-325142号公報
乙33 特許第2662538号公報(表紙のみ)
乙34 特開平11-285365号公報
乙35 特許第3858085号公報(表紙のみ)
乙36の1 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第1回口頭弁論調書
乙36の2 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第1回弁論準備手続調書
乙36の3 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第2回弁論準備手続調書
乙36の4 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第3回弁論準備手続調書
乙36の5 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第4回弁論準備手続調書
乙36の6 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第5回弁論準備手続調書
乙36の7 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第6回弁論準備手続調書
乙36の8 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る第7回弁論準備手続調書
乙37の1 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年9月18日付け被告ら第2準備書面
乙37の2 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年9月18日付け証拠説明書
乙38の1 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年10月23日付け原告第2準備書面
乙38の2 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年10月23日付け原告証拠説明書(3)
乙39の1 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年12月10日付け被告ら第3準備書面
乙39の2 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年12月10日付け証拠説明書(2)
乙40 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成27年12月22日付け原告第3準備書面
乙41の1 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成28年1月29日付け被告ら第5準備書面
乙41の2 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成28年1月29日付け証拠説明書(3)
乙42 東京地裁平成27年(ワ)第12480号に係る平成28年6月30日付け東京地裁判決書

第5 甲各号証の記載事項
1 甲1
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し、前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において、前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅としたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。」
(1b)「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は生海苔の異物(ゴミ、エビ、アミ糸等、以下同じ)分離除去装置に関し、生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種の異物分離除去装置にあっては、混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し、前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた、回転板を回転させることによって、生海苔よりも比重の大きい異物を遠心力によって前記クリアランスよりも環状枠板部側、即ち、タンクの底部に集積し、生海苔のみを水とともに前記クリアランスを通過して下方に流している結果、前記クリアランスには異物が詰まりにくく、よって、洗浄装置等を別途に設ける必要がなく、装置の維持がしやすいとともに取扱いが簡易になり、生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができるも
のであった(特開平8-140637号)。」
(1c)「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の異物分離除去装置にあっても、前記クリアランスに異物の詰まる場合が稀に生じ、よって、この詰まった異物を除去しなければならないという不都合を有した。
【0004】
この考案の課題はかかる不都合を解消することである。
考案者は、前記クリアランスに詰まった異物は、茎部の付いている生海苔(以下、「生海苔異物」と記す)が大部分であること、および、このような生海苔異物も海苔製品の原料として使用不可能でないということに着目し、鋭意研究した結果、本考案を完成した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この考案に係る生海苔の異物分離除去装置においては、混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し、前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において、前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅としたため、前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に、前記凹部におけるクリアランスを通過することができるものである。」
(1d)「【0007】
図1及び図2において、Dは生海苔の異物分離除去装置、10はこの装置Dの筒状混合液タンクである。この筒状混合液タンク10には異物を含んだ生海苔混合液が収容される。なお、11はこの筒状混合液タンク10の底板である。
【0008】
次に、20は第一分離除去具、30は第二分離除去具であり、各々、前記混合液タンク10の底面に設置されている。
【0009】
まず、第一分離除去具20及び第二分離除去具30について説明する。
【0010】
21は第一モータ,31は第二モータであり、各々ブラケット211,311を介して前記混合液タンク10における底板11の外側面に固定されている。前記第一モータ21および前記第二モータ31がこの考案の「回転駆動手段」に相当する。
【0011】
次に、22は第一円孔,32は第二円孔であり、各々前記底板11に形成されている。この第一円孔22の周縁に沿って第一環状固定板23が螺子止め、この第二円孔32の周縁に沿って第二環状固定板33が螺子止めされている。前記第一環状固定板23は前記第一円孔22の内周側に延出し、後記第一回転板26の外周縁とのクリアランスCを保持し、前記第二環状固定板33は前記第二円孔32の内周側に延出し、後記第二回転板36の外周縁とのクリアランスCを保持するためのものである。なお、このクリアランスCの幅は切断された生海苔の葉部が通過する程度(0.1?0.2mm位)が適している。
【0012】
次に、図1および図3において、231は第一環状固定板23における凹部、331は第二環状固定板33における凹部であり、前記第一環状固定板23及び前記第二環状固定板23の内周面に形成されている。この凹部231,331におけるクリアランスCは他の部分よりも広幅となっている。なお、前記凹部231,331における前記クリアランスCの幅は前記生海苔異物における茎部(切断されている)が通過する程度(約0.2?0.3mm位)が適している。
【0013】
なお、前記底板11とこの第一環状固定板23及び第二環状固定板33とがこの考案の「環状枠板部」を構成する。
【0014】
又、図2において、51は底板11に設置された排出管であり、除去された異物を混合液タンク10外に排出するためのものである。
【0015】
又、図1において、52は流出管であり、前記底板11における前記第一分離除去具20及び第二分離除去具30の下方に設置され、異物の除去された混合液をバッチ水槽Bに流れ落とす。」
(1e)「【0019】
次にこの異物分離除去装置Dの作動を説明する。
【0020】
まず、原料供給管53を介して生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)を混合液タンク10内に供給する。そして、モータ21,31を駆動させ、第一回転板26及び第二回転板36を回転させる。すると、第一分離除去具20および第二分離除去具30において、混合液タンク10内の混合液が渦を発生し、混合液中の小異物は第一回転板26及び第二回転板36の遠心力によってクリアランスCを越えて第一環状固定板23又は第二環状固定板33側に集積する。このため、生海苔のみが水とともに前記クリアランスCを通過して下方に流れる。このとき、第一回転板26及び第二回転板36は回転しているため、前記クリアランスCに生海苔は詰まりにくいものである。なお、稀にではあるが、このクリアランスCの狭幅部(凹部261,361の存在しない位置のクリアランスCの部分)に所謂、生海苔異物が詰まる場合がある。この場合、詰まった生海苔異物は、前記回転板26,36に引きずられてクリアランスC内を移動し、前記凹部261,361の位置に達した際に、前記凹部261,361におけるクリアランスCを通過する。
【0021】
一方、異物の除去された混合液は流出管52を介してバッチ水槽Bに流出する。なお、バッチ水槽Bの液面検出センサが上限を検出したときに、前記第一回転板26及び第二回転板36を逆回転させて上昇させるようにすれば、後工程に対して、異物の分離された混合液を常時供給することができる。」
(1f)「【0023】
【考案の効果】
この考案に係る生海苔の異物分離除去装置は、混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し、前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において、前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅としたため、前記クリアランスに詰まった生海苔異物は前記回転板によって引きずられ前記凹部の位置に達した際に、前記凹部におけるクリアランスを通過することができるものである。」

2 甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し、これらのスリットに、生海苔調合液を通過させることによって、前記生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において、前記回転ローラーの外周面に螺旋溝を形成したことを特徴とする生海苔の異物分離装置。
【請求項2】 隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらしたことを特徴とする請求項請求項1の生海苔の異物分離装置。」
(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は生海苔の異物(ゴミ、エビ、アミ糸等、以下同じ)分離装置に関し、生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの、以下同じ)から異物を分離する際に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるこの種の異物分離装置は、所要数のローラーをスリットを介して並列に配置し、これらのスリットに、生海苔調合液を通過させることによって、前記生海苔調合液中の異物を分離除去していた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の異物分離装置にあっては、スリットの上流側に分離除去された異物が詰まりやすく、この結果、異物の分離除去の作業能率を向上させにくいという不都合を有した。
【0004】
この考案の課題はかかる不都合を解消することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために、この考案に係る生海苔の異物分離装置においては、所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し、これらのスリットに、生海苔調合液を通過させることによって、前記生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において、前記回転ローラーの外周面に螺旋溝を形成したものである。
【0006】
なお、隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらすこともできる。
【0007】
【作用】
この考案に係る生海苔の異物分離装置は上記のように構成されているため、分離除去されてスリットの上流側に留まった異物は、螺旋溝の回転に従ってローラーの軸方向に沿って移動し、当該異物はスリットから除去され、よって当該スリットは常時空間を確保することができる。
【0008】
なお、隣り合う前記回転ローラーの螺旋溝をずらせば、溝部におけるスリット幅を狭く維持することができる結果、通過可能な異物の大きさを最小に押さえることができる。」
(2c)「【0010】
図1および図2において、10,10 は異物分離装置Dの回転ローラーであり、軸11,11 を介して回転可能に設置されたいる。この回転ローラー10,10 はスリット(約0.3 ?0.5mm 位) Sを介して水平方向に沿って並列に配置され、適宜駆動手段Mによって同方向に回転する(図2の矢印を参照のこと)。原料海苔(裁断され海水又は真水によって適度な濃度に調整された生海苔、この考案の「生海苔調合液」に相当する)は、回転ローラー10,10 のスリットSを通過する際に、含んでいる異物Bを除去される。この場合、回転ローラー10,10 は同方向に回転しているため、スリットSの上流側の異物は回転ローラー10,10 と逆方向に回転して弾き跳ばされやすい。
【0011】
次に、20, 20は螺旋溝であり、前記回転ローラー10,10 の外周面に形成されている。この螺旋溝20,20 の深さは異物が通過しない程の0.1 ?0.2mm でよい。この螺旋溝20,20 は回転ローラー10,10 の回転に沿って螺旋回転をするため、前記スリットSの上流側に留まり弾き跳ばされなかった異物B回転ローラー10,10 の軸方向に沿って移動し、適宜手段によって回転ローラー10,10 外に排除される。このため、スリットSは常に空間を維持することができる。」

3 甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生海苔のゴミ取り装置に関するものである。」
(3b)「【0005】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と、同調合部により調合された生海苔と塩水との調合液を吸込む吸込流路部と、同吸込流路部に設けて、調合液中のゴミを濾過する濾過部とを具備し、濾過部には一定細幅の濾過用スリットを形成したことを特徴とする生海苔のゴミ取り装置を提供せんとするものである。」
(3c)「【0019】濾過部形成体25は、図1、図2、及び図4?図6に示すように、濾過部形成枠体26の上側後面26a の近傍において、流路形成筒体20の左右側壁20a,20a 間に、筒状の支軸25a を横架し、同支軸25a に矩形枠状の形成体本体25b の上端縁を一体的に取付けると共に、支軸25a 中に、外周面に雄ネジ部を形成したスリット成形体支軸25c を挿通すると共に、流路形成筒体20の左右側壁20a,20a 間に横架し、同スリット形成体支軸25c に、四個の縦長矩形板状のスリット形成体25d,25d,25d,25d をそれぞれボス部25e,25e,25e,25e を介して左右幅方向に間隔を開けて螺着し、各スリット形成体25d,25d,25d,25d を形成体本体25b 内に形成したスリット形成体配設用溝部31内にて左右幅方向に摺動自在に配置して、各スリット形成体25e,25e,25e,25e の側端面間にそれぞれ濾過用スリット32,32,32を形成している。」
(3d)「【0034】図8は、第3実施例としての濾過部形成体25を示しており、同濾過部形成体25は、基本構造を前記第2実施例としての濾過部形成体25と同様に構成しているが、濾過用スリット32に半円弧状の拡幅部32a を千鳥状に形成している。
【0035】このようにして、ゴミの濾過機能を良好に確保したまま、生海苔の通過量を増大させて、濾過効率を向上させることができるようにしている。
【0036】なお、拡径部32a の大きさは、濾過用スリット32の幅に比例させて大きく形成することができる。」

4 甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)「【請求項1】 筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたことを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。
【請求項2】 前記第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にしたことを特徴とする請求項1の生海苔の異物分離除去装置。
【請求項3】 筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設け、更に、前記第一回転板の下方に第二回転板を軸心を同じくして回転可能に設置し、この第二回転板の周縁部を前記第一回転板と前記環状枠板部内周縁との間のクリアランスの下方に配置し、この第二回転板を前記クリアランスを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転させることを特徴とする生海苔の異物分離除去装置。
【請求項4】 前記第一回転板の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にさせるとともに前記第二回転板の周縁部の表面を回転中心から周縁に向かうに従って下がり傾斜にしたことを特徴とする請求項3の生海苔の異物分離除去装置。」
(4b)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は生海苔の異物(ゴミ、エビ、アミ糸等、以下同じ)分離除去装置に関し、生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】従来におけるこの種の異物分離除去装置は、分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け、前記分離ドラムを軸心を中心として回転させながらこのドラム内に生海苔混合液を供給し、前記分離孔を通過させることによって、前記生海苔混合液中の異物を分離除去していた(特開平6-121660号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の異物分離除去装置にあっては、生海苔混合液中の異物をこの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するものであるため、当該分離孔の周縁に異物が蓄積し、目詰まりが発生する結果、当該分離除去を能率良く行うためには、目詰まり噴射水によって洗浄するという洗浄装置を別途に設けなければならないという不都合を有した(特開平6-121660号)。」
(4c)「【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するために、この発明に係る生海苔の異物分離除去装置においては、筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたものである。」
(4d)「【0009】
【作用】この発明に係る生海苔の異物分離除去装置は上記のように構成されているため、第一回転板を回転させると混合液に渦が形成されるため生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側、即ち、タンクの底隅部に集積する結果、生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れるものである。このとき、第一回転板は回転しているため、前記クリアランスには生海苔が詰まりにくいものである。」
(4e)「【0015】次に、前記第二分離除去具20は、前記フレーム30に螺子止めされた円板状の底板部21とこの底板部21の周縁に立設された周筒部22とこの周筒部22の上端内周縁に連設された環状枠板23とから構成されている。24は環状固定板であり、前記環状枠板23の内周縁に螺子止めされている。この環状固定板24は前記環状枠板23の内周側に延出し、後記第一回転板51の外周縁とのクリアランスCを調節する(図4を参照のこと)。なお、この環状枠板23と環状固定板24とがこの発明の「環状枠板部」を構成する。又、25は第二分離除去具20内に設置された管状の排出路であり、その上端は前記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口にはコック261 を有する排出管26が連設されている。更に、27は第二分離除去具20内に設置された管状の連通路であり、その上端は前記環状枠板23に開口するとともにその下端は前記周筒部22に開口している。この周筒部22の開口には上方に延びる連通管28が連設されている。この連通管28の機能については後記する。29は流出口であり(図2参照のこと)、前記周筒部22に設置され、異物を除去された混合液を前記バッチ水槽11に流れ落とす。」
(4f)「【0020】また、61は円筒状の混合液連設タンクであり、前記第二分離除去具20の環状枠板23の外周縁に外嵌めされている。また、この連設タンク61の上端縁には前記第二分離除去具20と同じ構成の第一分離除去具70が配置されている。但し、環状固定板74と第一回転板81とのクリアランスSは前記第二分離除去具20よりも大であり、また、分離した生海苔と水との混合液を第二分離除去具20上に落下させる必要上、第二分離除去具20における底板部21の代わりにガイド筒77が設けられている。なお、第二分離除去具20における第二回転板52に相当するものは図示されていないが設置しても構わない。第一分離除去具70において、72は周筒部、73は環状枠板、75は管状の排出路、76はコック761 を有する排出管である。
【0021】90は円筒状の混合液主タンクであり、前記第一分離除去具70の環状枠板73の外周縁に外嵌めされている。なお、この主タンク90及び/又は前記連設タンク61はこの発明の「混合液タンク」に相当する。91は原料供給管であり、前記主タンク90の上端縁に設置されている。この原料供給管91を介して原料液(原生海苔と水との混合物)を前記主タンク90内に供給する。また、図示はしないが、水供給管も前記主タンク90の上端縁に設置されている。なお、92は液面レベルセンサであり、前記主タンク90の上端縁に設置されている。この液面レベルセンサ92はタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内への混合液および水の供給をコントロールする(タンク内において混合液が所定量に達したときに混合液又は水の供給を停止する)。」
(4g)「【0022】次にこの異物分離除去装置Dの作動を説明する。
【0023】まず、原料供給管91を介して生海苔混合液(生海苔と塩水とを適宜濃度に調合したもの)を主タンク90内に供給する。そして、第一モータ11を駆動させることによって第一分離除去具70の第一回転板81および第二分離除去具20の第一回転板51を回転させるとともに第二モータ12を駆動させることによって第二分離除去具20の第二回転板52を回転させる。すると、第一分離除去具70において主タンク90内の混合液が渦を発生し、混合液中の大異物は第一回転板81の遠心力によってクリアランスSを越えて環状枠板73側に集積する。このため、生海苔のみが水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れる。このとき、第一回転板81は回転しているため、前記クリアランスSに生海苔は詰まりにくいものである。また、小異物は生海苔および水とともに前記クリアランスSを通過して下方に流れ、連設タンク61内に混合液として供給される。
【0024】すると、第二分離除去具20において連設主タンク61内の混合液が渦を発生し、混合液中の小異物は第一回転板51の遠心力によってクリアランスCを越えて環状枠板23側に集積する。このため、生海苔のみが水とともに前記クリアランスCを通過して下方に流れる。このとき、第一回転板51は回転しているため、前記クリアランスCに生海苔は詰まりにくいものである。また、同時に、第二回転板52も前記クリアランスCを通過する生海苔と水との混合液の通過速度以上の周速度で回転しているため、前記クリアランスCを通過する生海苔と水との混合液の通過は促進される。
【0025】異物の除去された混合液は第二分離除去具20の流出口29をバッチ水槽11に流れ落とされる。また、除去された異物を排出する場合は、主タンク61へ混合液を供給するのを停止して、水のみを供給してタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内の混合液比率を薄くしてタンク(主タンク90及び前記連設タンク61)内に生海苔が存在していないことを確認した後、コック261 ,761 を開いて排出管26,76から大小の異物をそれぞれ排出する。」
(4h)「【0028】
【発明の効果】この発明に係る生海苔の異物分離除去装置においては、筒状混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内周縁内に第一回転板を略面一の状態で僅かなクリアランスを介して内嵌めし、この第一回転板を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底隅部に異物排出口を設けたため、第一回転板を回転させると混合液に渦が形成されるため生海苔よりも比重の大きい異物は遠心力によって第一回転板と前記環状枠板部とのクリアランスよりも環状枠板部側、即ち、タンクの底隅部に集積する結果、生海苔のみが水とともに前記クリアランスを通過して下方に流れるものである。このとき、第一回転板は回転しているため、前記クリアランスには生海苔が詰まりにくいものである。
【0029】よって、この異物分離除去装置を使用すれば、異物が前記クリアランスに詰まりにくいため、従来のように目詰まり洗浄装置等を別途に設ける必要がない結果、装置の維持がしやすいとともに取扱いが簡易になり、この結果、生海苔の異物分離除去作業の作業能率を向上させることができる。」

5 甲9?甲14
甲9?甲14には同内容の新聞広告が記載されており、当該広告部分にはいずれも以下の事項が記載されている。
(5a)「新発売 シンワ式
原草海苔異物除去洗浄機
CFW-36型 特許申請中」
(5b)「特長
○1 選別プレート方式で、取り替えが簡単にできます。
○2 海苔は1回毎に選別機に投入され選別行為を行います。
○3 異物排出は自動で行います。
○4 排出時間は自由に設定できます。(第1回目を除く)
○5 良品タンクのカクハンは、回転自在で洗浄効果を高めます。
○6 少ない海水で選別ができます。
○7 目づまり防止付。」

6 甲16
甲16には、以下の事項が記載されている。
(6a)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は採取した生海苔中に混入された小動物、網繊維、合成樹脂フィルム、甲殻類の殻その他の固形異物を分離除去することを目的とした生海苔の異物除去方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来生海苔中に混入された固形異物を除去する為に、本出願人は先に並列回転ローラの細隙から生海苔を吸い出す装置を提案した(特願平6-98841号)。また一般に生海苔は微細隙(例えば間隔1mm位)を通過し易いが、固形異物は通過がむつかしい特性を利用し、いわゆる細隙を利用したスクリーン除去が考えられている。
【0003】
【発明により解決すべき課題】前記回転ローラの細隙から生海苔を吸い出す装置においては、ローラ細隙が線状に形成されている為に、その調節がむつかしく、しかもローラの撓みなどを考慮すれば、細隙が変化し易く分離効率の向上がむつかしく、かつ生海苔の特性の変化(例えば初期採取葉と、終期採取葉又は海上の風波の有無、強弱による海苔葉の硬軟など)に追随してローラ細隙を調節することがむつかしい問題点があった。また固定細隙の場合には、前記生海苔の特性に応じて、これを調節することが不可能であり、細隙を広くすると分離効率が悪く、細隙を狭くすると分離能率が悪くなるなどの問題点があった。
【0004】
【課題を解決する為の手段】然るにこの発明は、交叉回転する円盤軸の円盤の側面による面細隙を利用することにより、前記従来の問題点を解決したのである。」
(6b)「【0019】前記分離槽1の側壁下部には複数の円盤軸9、9が円盤を交叉して並列横架されて、分離部10(分離手段)を構成し、分離部10の外側を排出匣11で覆い、排出匣11には排出ホース12が連結してある。また排出匣11の下壁には送水ホース56の一端が連結してあり、送水ホース56の他端は濃度槽40内に設置した水中ポンプ48の吐出側に連結され、水中ポンプ48からの送水により、分離部10に矢示68のように逆流水を送ることができる。前記分離部10における海苔液の吸引と海水の逆流は、例えば10秒?2秒間隔で繰り返される。この間隔については、適宜変更することができる。また逆流は排水ホース12に介装した吸引ポンプを逆回転しても行うことができる。
【0020】図4(a)によれば円盤軸9は、中心軸13にスペーサー14及びリング盤15を交互に順次嵌装し、ナット16で締付固定する。また各中心軸13には、スプロケットホイール17が夫々固定され、共通のチェイン18により同一方向に回転させられている。また図4(b)によれば、円盤軸9aは、杆体13aに所定間隔の溝14aを設け、円盤15aを形成している。」
(6c)「【0032】図7は、実施例1の円筒を除去すると共に、撹拌棒に代えてモータ91で回転する撹拌羽根盤72を用い架台79で支持する。また分離部10を2箇所設けた実施例である(原則的には分離部の数に限定はないが2箇所位が好適である)。分離槽1の左右両側壁の下部へ、複数の円盤軸9、9が円盤を交叉して並列横架されて分離部10、10aを構成し、分離部10、10aの外側を夫々排出匣11、11aで覆い、排出匣11、11aの下部壁には排出ホース12、12a及び送水ホース56、56aが連結してある。また排出ホース12、12aには吸引ポンプ(図示してない)が連結されているので、吸引ポンプを間欠的に運転し、吸引ポンプ停止時に送水ホースのポンプを駆動して排出匣11、11a内へ海水を逆流させれば、吸引と逆流とを自動的に繰り返すことができる。結局矢示67、68のように水が流動する。」
(6d)「【0041】図8の実施例は、円盤軸9の調節例を示す。即ち円盤軸9aを軸方向可動とし、円盤軸9bを固定とすれば、円盤軸9aを矢示78の方向へ間隙0まで動かすことにより面間隙S_(0)(0.6mm) はS(1.2mm)となる。」
(6e)「【0047】
【発明の効果】この発明は、円盤軸の円盤の交叉面細隙から生海苔を吸引し、固形異物と分離できるように構成したので、生海苔と固形物は比較的広い面積の面細隙で分離され分離効率を向上し、能率を増大する効果がある。次に分離手段を同一分離槽へ2箇所設けることによって、面細隙の大きさを変えたり処理能力を増大させたりすることができる効果もある。」

第6 当審の判断
1 無効理由1について
(1)甲1に記載された考案について
上記「第5 1(1a)?(1f)」の記載を総合すると、甲1には、次の考案(以下「甲1考案」という。)が記載されていると認められる。
「混合液タンクの底部周端縁に環状枠板部の外周縁を連設し、この環状枠板部の内側に回転板を設置するとともにこの回転板と前記環状枠板部との間にクリアランスを形成し、前記回転板を軸心を中心として適宜回転駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンクの底部に異物排出口を設けた生海苔の異物分離除去装置において、前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における前記クリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって、クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができる、生海苔の異物分離除去装置。」

(2)本件発明1と甲1考案との対比・判断
ア 本件発明1と甲1考案とを対比する。
甲1考案の「混合液タンク」及び「生海苔の異物分離除去装置」は、その機能からみて、本件発明1の「生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽」及び「生海苔異物分離除去装置」に相当する。
また、甲1考案の「環状枠板部」は、混合液タンクの底板と環状固定板を含む構成であり、生海苔を排出する開口が設けられることが、その構造上明らかであるところ(上記「第5 1(1d)?(1e)参照」)、本件発明1の「生海苔排出口を有する選別ケーシング」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1考案とは、
「生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」に関わるものである点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本件発明1は、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」であるのに対して、甲1考案は、「前記環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部における」「回転板と前記環状枠板部との間」の「クリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって、クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が前記回転板によって引きずられ上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができる」ようにしたものである点。

イ 上記相違点について検討する。
(ア) 本件特許の訂正明細書(甲28)の記載を参酌すると、本件発明1の「生海苔の共回り防止装置」の意義は、次のとおりである。
回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置においては、回転板を高速回転させることから、生海苔及び異物が回転板とともに回転し、クリアランスに吸い込まれない現象、又は、生海苔等がクリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し、クリアランスに吸い込まれない現象が生じ、究極的には、クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況となる。この「共回り」が発生すると、回転板の停止又は作業の停止となって、結果的に異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等のごとく、最悪の状況となることも考えられる(【0003】参照)。
本件発明1は、上記の問題に鑑み、共回りの発生をなくし、かつクリアランスの目詰まりをなくすこと、又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の回避)を図ること等を目的に、回転板とクリアランスを利用する生海苔異物分離除去装置において、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えるようにして、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことにより、共回りの発生をなくし、かつクリアランスの目詰まりをなくすこと、又は、効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること、この防止手段を、簡易かつ確実に適切な場所に設置できること、この防止手段を、クリアランスへの容易な設置が図れること等の効果を奏するようにしたものである(【0005】、【0020】、【0029】参照)。
よって、本件発明1の「生海苔の共回り防止装置」は、突起・板体の突起物が選別ケーシングの円周端面に設けられた構成によって、該突起物が、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって、共回りの発生をなくし、クリアランスの目詰まりをなくすものである。

(イ) これに対して、甲1考案は、環状枠板部の内周縁に所要数の凹部を形成するとともにこの凹部におけるクリアランスを他の部分よりも広幅とすることによって、クリアランスに詰まる異物の大部分を占める茎部の付いている生海苔が回転板によって引きずられ、上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができるようにして、当該凹部により広幅なクリアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過させ、これによってクリアランスの目詰まりを解消するというものである。

(ウ) そうすると、上記相違点における両者が果たす機能について、甲1考案における、茎部の付いている生海苔が回転板によって引きずられ、上記凹部の位置に達した際に同凹部におけるクリアランスを通過することができるようにして、当該凹部により広幅なクリアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過させ、これによってクリアランスの目詰まりを解消するということが、本件発明1における、共回りの発生をなくし、かつクリアランスの目詰まりをなくすことにあたるとしても、当該機能を果たす具体的な構成について、甲1考案は、回転板と環状枠板部との間のクリアランスを他の部分よりも広幅とする「凹部」であるのに対して、本件発明1は「突起・板体の突起物」である点で、その形状・構造は異なり、当該機能を果たすメカニズムについても、甲1考案は、当該凹部により広幅なクリアランスから生海苔異物の大部分を占める茎部の付いた生海苔を通過させるものであるのに対して、本件発明1は、異物をクリアランスに通過させることによるものではない点で異なるものである。
そして、上記相違点における両者の具体的な構成とそれによるメカニズムが異なる以上、上記相違点は、設計上の微差又は単なる設計変更ではなく、実質的に同一であるともいえない。

(エ) よって、甲1考案は、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えていない点において、本件発明1と相違する。
よって、本件発明1は、甲1考案と同一であるとはいえない。

(3)本件発明2?5と甲1考案との対比・判断
上記(2)を踏まえれば、甲1考案は、本件発明2とは「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記生海苔混合液槽の内底面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えていない点において、本件発明3とは「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えていない点において、本件発明4とは「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えていない点において、本件発明5とは「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、前記突起・板体の突起物を、回転板の回転方向に傾斜する構成とした」「生海苔の共回り防止装置」を備えていない点において、それぞれ相違する。
よって、本件発明2?5は、甲1考案と同一であるとはいえない。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、「本件発明1?5における防止手段である突起・板体の突起物として凹凸が含まれる」ことを前提として、甲1に開示されている「凹部231、331」(単数および所要数を含む)が前記突起物に含まれる凹凸に相当すると主張する(平成28年7月13日付け口頭審理陳述要領書2頁「5 2)a)」)。

イ そこで、本件発明1?5の「生海苔の共回りを防止する防止手段」について本件特許の訂正明細書の記載を確認すると、当該明細書には、「防止手段6は、一例として寸法差部Aに設ける。図3、図4の例では、選別ケーシング33の円周端面33bに突起・板体・ナイフ等の突起物を1ケ所又は数ヶ所設ける。また図5の例は、生海苔混合液槽2の内底面21に1ケ所又は数ヶ所設ける。さらに他の図6の例は、回転板34の円周面34a及び/又は選別ケーシング33の円周面33a(一点鎖線で示す。)に切り溝、凹凸、ローレット等の突起物を1ケ所又は数ヶ所、或いは全周に設ける。また図7の例は、選別ケーシング33(枠板)の円周面33a(内周端面)に回転板34の円周端面34bが内嵌めされた構成のクリアランスSでは、このクリアランスSに突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を設ける。また図8の例では、回転板34の回転方向に傾斜した突起・板体・ナイフ等の突起物の防止手段6を1ケ所又は数ヶ所設ける。」(【0026】)と記載され、本件発明1?5の「防止手段」の実施例として、「突起・板体・ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」が例示されている。
よって、本件発明1?5において、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって、共回りの発生をなくし、クリアランスの目詰まりをなくすという機能を果たす構成が「突起・板体の突起物」であることを踏まえれば、本件発明1?5には、上記例示のうち、「ナイフ等の突起物」及び「切り溝、凹凸、ローレット等の突起物」は含まないと解される。しかしながら、請求人の主張するとおり「・・・凹凸・・・の突起物」の実施例が本件発明1?5に含まれるとするならば、「突起物」とは、円周端面等の所定の面から突き出たあるいはクリアランスに突き出たものと解されるところ、上記「・・・凹凸・・・の突起物」の「凸」部分が、円周端面等の所定の面から突き出たあるいはクリアランスに突き出たものであって、生海苔混合液がクリアランスに導かれる際に発生した生海苔の共回りを解消するとともに(防止効果)、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く(矯正効果)ことによって、共回りの発生をなくし、クリアランスの目詰まりをなくすという機能を果たす場合には、上記「・・・凹凸・・・の突起物」の「凸」部分は、本件発明1?5の「突起・板体の突起物」に該当するものといえる。
一方、甲1考案においては、目づまりを解消する機能を果たすのは、専ら回転板と環状枠板部との間のクリアランスを他の部分よりも広幅とする「凹部」であるところ、当該「凹部」自体が「突起・板体の突起物」に該当するとはいえない。また、複数の凹部の間に凸部とみなされる形状が存在するとしても、当該凸部は目づまりを解消する機能を果たすものでもないし、本件発明1?5の「突起・板体の突起物」の上記機能を果たすものでもない。
よって、甲1考案の回転板と環状枠板部との間のクリアランスを他の部分よりも広幅とする「凹部」が本件発明1?5の「突起・板体の突起物」に該当するということはできない。
よって、請求人の上記主張は当を得たものでなく、採用することはできない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1?5は、甲1考案と同一であるとはいえない。
よって、本件発明1?5は、特許法29条の2の規定に違反して特許されたものではなく、その特許は同法123条1項2号に該当しない。
よって、本件発明1?5についての特許は、無効理由1により無効とすることはできない。

2 無効理由2について
(1)甲4に記載された発明について
上記「第5 4(4a)?(4h)」の記載を総合すると、甲4には、
「混合液主タンク(90)の底部周端縁に環状枠板部(73、74)の外周縁を連設し、この環状枠板部(73、74)の内周縁内に第一回転板(81)を略面一の状態で僅かなクリアランス(S)を介して内嵌めし、この第一回転板(81)を軸心を中心として適宜駆動手段によって回転可能とするとともに前記タンク(90)の底隅部に異物排出口(75、76)を設けた生海苔の異物分離除去装置における第一分離除去具(70)であって、
前記第一分離除去具(70)は、
第一回転板(81)、
第一回転板(81)との間にクリアランス(S)を形成する環状固定板(74)と環状枠板(73)で構成される環状枠板部、
環状枠板(73)を連設するための周筒部(72)、
異物を排出するための管状の排出路(75)及びそれに続く排出管(76)、及び、
クリアランス(S)を通過した海苔混合液を混合液連接タンク(61)に排出するガイド筒(77)
とで構成されている、
生海苔の異物分離除去装置における第一分離除去具。」
の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

(2)本件発明1、3及び4と甲4発明との対比
ア 本件発明1と甲4発明との対比
甲4発明の「クリアランス(S)を通過した海苔混合液を混合液連接タンク(61)に排出するガイド筒(77)」の排出口にあたる部分は、本件発明1の「生海苔排出口」に相当する。
また、甲4発明の「第一回転板(81)との間にクリアランス(S)を形成する環状固定板(74)と環状枠板(73)で構成される環状枠板部」、「環状枠板(73)を連設するための周筒部(72)」及び「クリアランス(S)を通過した海苔混合液を混合液連接タンク(61)に排出するガイド筒(77)」とで構成される部分は、その機能と構造からみて、本件発明1の「選別ケーシング」に相当する。
また、甲4発明の「第一回転板(81)」は、本件発明1の「回転板」に相当する。
また、甲4発明の「異物を排出するための管状の排出路(75)及びそれに続く排出管(76)」は、本件発明1の「異物排出口」に相当する。
また、甲4発明の「筒状混合液タンク(90)」は、本件発明1の「生海苔混合液槽」に相当する。
甲4発明の「生海苔の異物分離除去装置」は、本件発明1の「生海苔異物分離除去装置」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「生海苔排出口を有する選別ケーシング、及び回転板、並びに異物排出口をそれぞれ設けた生海苔・海水混合液が供給される生海苔混合液槽を有する生海苔異物分離除去装置」に関わるものである点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点A]
本件発明1は、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を、前記選別ケーシングの円周端面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」であるのに対して、甲4発明は「生海苔の異物分離除去装置における第一分離除去具」であって、かかる防止装置でない点。

イ 本件発明3及び4と甲4発明との対比
本件発明3及び4と甲4発明との一致点は、上記アに示した本件発明1との一致点と同様である。
そして、本件発明3と甲4発明とは、以下の点で相違する。
[相違点B]
本件発明3は、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を回転板及び/又は選別ケーシングの円周面に設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」であるのに対して、甲4発明は「生海苔の異物分離除去装置における第一分離除去具」であって、かかる防止装置でない点。

また、本件発明4と甲4発明とは、以下の点で相違する。
[相違点C]
本件発明4は、「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物とし、この突起物を選別ケーシングと回転板で形成されるクリアランスに設ける構成とした」「生海苔の共回り防止装置」であるのに対して、甲4発明は「生海苔の異物分離除去装置における第一分離除去具」であって、かかる防止装置でない点。

(3)上記相違点の検討
ア 甲2に記載された技術的事項
上記「第5 2(2a)?(2c)」の記載を総合すると、甲2には、以下の技術的事項が記載されている。
「生海苔の異物(ゴミ、エビ、アミ糸等)分離装置に関し、生海苔調合液(生海苔と塩水又は真水とを適宜濃度に調合したもの)から異物を分離する際に使用されるものに関するものであって、
従来におけるこの種の異物分離装置は、所要数のローラーをスリットを介して並列に配置し、これらのスリットに、生海苔調合液を通過させることによって、生海苔調合液中の異物を分離除去していたが、かかる従来の異物分離装置にあっては、スリットの上流側に分離除去された異物が詰まりやすく、その結果、異物の分離除去の作業能率を向上させにくいという不都合を有していたため、かかる不都合を解消するために、所要数の回転ローラーをスリットを介して並列に配置し、これらのスリットに生海苔調合液を通過させることによって、生海苔調合液中の異物を分離する生海苔の異物分離装置において、回転ローラーの外周面にらせん溝を形成した。
これにより、分離除去されてスリットの上流側にとどまった異物は、らせん溝の回転に従ってローラーの軸方向に沿って移動してスリットから除去され、当該スリットは常時空間を確保することができるという作用効果を奏する。」

イ 甲3に記載された技術的事項
上記「第5 3(3a)?(3d)」の記載を総合すると、甲3には、以下の技術的事項が記載されている。
「生海苔のゴミ取り装置に関するものであって、
従来、乾燥海苔の製造に当たり、乾燥海苔には、生海苔に混入しているゴミが付着している可能性があるため、ゴミ検出装置によりゴミの検出を行い、ゴミが検出されたものはゴミ取り作業工程に回すようにしていたが、同工程で、乾燥海苔に付着したゴミを手作業により取り除いていたために、手間と労力を要して、作業効率が悪いという問題があったため、所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを一定の重量割合で調合する調合部と、同調合部により調合された生海苔と塩水との調合液を吸い込む吸込流路部と、同吸込流路部に設けて調合液中のゴミをろ過するろ過部を具備し、ろ過部には一定の細幅のろ過用スリットを形成した。
そして、所要の大きさに切断した生海苔と塩水とを、生海苔がろ過用スリット中を通過しやすい程度の重量割合で調合して、同調合液を吸込流路部に吸い込むことにより、その途中でろ過部のろ過用スリットにより調合液中のゴミを確実にろ過することができ、付着ゴミの検出や、手作業によるごみ取り作業の手間を省くことができるという作用効果を奏する。」

ウ 甲16に記載された技術的事項
上記「第5 6(6a)?(6e)」の記載を総合すると、甲16には、以下の技術的事項が記載されている。
「採取した生海苔中に混入された小動物、網繊維、合成樹脂フィルム、甲殻類の殻その他の固形異物を分離除去することを目的とした生海苔の異物除去方法及び装置に関するものであって、
従来生海苔中に混入された固形異物を除去する為の並列回転ローラの細隙から生海苔を吸い出す装置においては、ローラ細隙が線状に形成されている為に、その調節がむつかしく、しかもローラの撓みなどを考慮すれば、細隙が変化し易く分離効率の向上がむつかしく、かつ生海苔の特性の変化(例えば初期採取葉と、終期採取葉又は海上の風波の有無、強弱による海苔葉の硬軟など)に追随してローラ細隙を調節することがむつかしい問題点があり、また固定細隙の場合には、前記生海苔の特性に応じて、これを調節することが不可能であり、細隙を広くすると分離効率が悪く、細隙を狭くすると分離能率が悪くなるなどの問題点があったため、複数の円盤軸が円盤を交叉して並列横架されて分離部を構成して、円盤軸の円盤の交叉面細隙から生海苔を吸引し、固形異物と分離できるようにした。
そして、円盤軸の円盤の交叉面細隙から生海苔を吸引し、固形異物と分離できるように構成したので、生海苔と固形物は比較的広い面積の面細隙で分離され分離効率を向上し、能率を増大する効果がある。」

エ 甲4発明に基づく進歩性について
甲4発明は、従来の異物分離除去装置(特開平6-121660号)が、分離ドラムの周壁に所要数の分離孔を設け、生海苔混合液を回転する分離ドラム内に供給し、分離孔を通過させることによって、生海苔混合液中の異物を分離ドラムの分離孔の周縁に引っ掛けて排出口に流れるのを防止するという方式(以下「従来方式」という。)であったため、分離孔の周縁に異物が蓄積し、目詰まりが発生するという課題を有するものであったことから、かかる課題を解決するために、環状枠板部とこの内周縁内に内嵌めされた第一回転板との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ、第一回転板の回転による遠心力によって、クリアランスよりも環状枠板部側のタンク底隅部に異物を集積させ、生海苔のみを水とともにクリアランスを通過させるようにしたもの(以下「回転板方式」という。)であり、この回転板方式を採用することで、異物がクリアランスに詰まりにくく、従来の異物分離除去装置のように、目詰まり洗浄装置等を別途設けることを不要としたものである。
これに対し、本件発明1、3及び4は、甲4発明を従来技術と位置づけ(本件特許の訂正明細書【0002】)、甲4発明が有する課題の解決を目的として発明されたものであって、回転板方式による異物分離除去装置である甲4発明には、「共回り」の課題があることを見いだし、その課題を解決するために、回転板方式による異物分離除去装置において、回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段を設けたものである。
このように、甲4発明は、回転板方式を前提とする発明である点で本件発明1、3及び4と共通するものであるが、甲4自体には、本件発明1、3及び4の課題である「共回り」、すなわち、「回転板を高速回転することから、生海苔及び異物が、回転板とともに回り(回転し)、クリアランスに吸い込まれない現象、又は生海苔等が、クリアランスに喰込んだ状態で回転板とともに回転し、クリアランスに吸い込まれない現象であり、究極的には、クリアランスの目詰まり(クリアランスの閉塞)が発生する状況等」(本件特許の訂正明細書【0003】)についての記載はない。また、甲9?甲14に記載された広告中に単に「目づまり防止付」との記載があることからは、回転板方式を採用した異物分離除去装置において、上記「共回り」の現象が生じることまでもが自明であって課題とされていたと認められない。
よって、甲4に接した当業者において、回転板方式による異物分離除去装置である甲4発明に上記「共回り」の課題が存在することを認識し得たとは認められない。

また、甲4発明は本件発明1、3及び4と同じく、環状枠板部と回転板との間のクリアランスに生海苔を導入しつつ、異物を回転部材による遠心力により円周方向に追いやり、生海苔のみがクリアランスを通過するようにした回転板方式を前提とするものであるのに対し、甲2、甲3及び甲16に記載された異物分離除去装置は、回転板方式とは異なる分離方式を採用するものであるから、甲4発明と甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項とは、前提とする異物分離除去の解決方式に係る技術的思想が異なるところ、甲4に接した当業者において、甲4発明について、クリアランスに異物や生海苔の詰まりが生じるという問題があるという課題を想起し得たとしても、前提とする異物分離除去の解決方式の異なる甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項を甲4発明に適用しようとする動機づけが生じるとはいえない。

仮に、当業者が甲4発明に甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項を適用し得たとしても、甲4発明において、甲4発明とは異物分離除去の解決方式が異なる甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項をいかに適用するのかを想起することは困難である上、甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項は、本件発明1、3及び4の「回転板の回転とともに回る生海苔の共回りを防止する防止手段」を「突起・板体の突起物」とした「生海苔の共回り防止装置」に相当する構成でもないから、甲4発明に甲2、甲3及び甲16に記載された技術的事項を適用したとしても、本件発明1、3及び4の構成を想到することはできない。

よって、甲4発明において、本件発明1、3及び4に係る上記相違点A?Cの構成を得ることは、当業者にとって容易であるということはできない。

そして、本件発明1、3及び4は、「クリアランスに導かれる際に、生海苔の共回りが発生しても、本発明では、防止手段に達した段階で解消される(防止効果)。尚、前記防止手段は、単なる解消に留まらず、生海苔の動きを矯正し、効率的にクリアランスに導く働きも備えている(矯正効果)。」、「生海苔の分離が、極めて効率的にかつトラブルもなく行われることと、当該回転板、又は当該装置の停止等は未然に防止できる特徴がある。」、「共回りの発生を無くし、かつクリアランスの目詰まりを無くすこと、又は効率的・連続的な異物分離(異物分離作業の能率低下、当該装置の停止、海苔加工システム全体の停止等の回避)が図れること、またこの防止手段を、簡易かつ確実に適切な場所に設置できること等の特徴がある。」という明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである(本件特許の訂正明細書【0020】、【0021】、【0029】、【0031】、【0032】)。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1、3及び4は、甲4に記載された発明並びに甲2、甲3及び甲16に記載された発明及び甲9?甲14に記載された事項に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
よって、本件発明1、3及び4は、特許法29条2項の規定に違反して特許されたものではなく、その特許は同法123条1項2号に該当しない。
よって、本件発明1、3及び4についての特許は、無効理由2により無効とすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件発明1?5に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-08-26 
結審通知日 2016-08-31 
審決日 2016-09-14 
出願番号 特願平10-165696
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A23L)
P 1 113・ 161- Y (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 隆幸千葉 直紀三原 健治  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 千壽 哲郎
窪田 治彦
登録日 2007-06-08 
登録番号 特許第3966527号(P3966527)
発明の名称 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 小南 明也  
代理人 前野 房枝  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 伊藤 高英  
代理人 前野 房枝  

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