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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1336801
審判番号 不服2016-17459  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-22 
確定日 2018-01-24 
事件の表示 特願2011-218379「レーザ切断装置用のベルト清掃システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日出願公開、特開2012- 82073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年9月30日(パリ条約による優先権主張2010年10月12日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年7月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成27年9月14日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月8日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して平成28年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年7月8日付けで平成28年4月6日に提出された手続補正書による手続補正について補正の却下の決定がされ、同日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年11月22日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成29年5月10日に上申書が提出されたものである。


第2 平成28年11月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年11月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年9月14日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項2を、下記の(2)に示す請求項2とする補正を含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項2
「 【請求項2】
レーザ切断装置におよびレーザ切断装置から紙製品を移送する搬送面を有するコンベヤベルトを清掃するベルト清掃システムであって、
含水材料で構成された清掃ウェブと、
前記清掃ウェブをコンベヤベルト搬送面に回動当接状態に付勢するローラと、を含み、それによって前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃するローラアセンブリと、
前記清掃ウェブに洗浄液体を供給する液体供給下位システムと、を備え、
前記液体供給下位システムは、洗浄液体を収容するよう適合させた洗浄液体貯槽を含んでおり、前記清掃ウェブは近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、前記ローラは前記清掃ウェブループの近位端部分に配置され、前記清掃ウェブループの遠位端部分は前記洗浄液体貯槽内に配置され、
前記ベルト清掃システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽内の前記洗浄液体の液位を検出する液位検出器と、
前記検出された液位が所定の液位に達した場合に、前記洗浄液体が前記洗浄液体貯槽に流入されるように制御する制御部と、を備える、
ベルト清掃システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項2
「 【請求項2】
レーザ切断装置におよびレーザ切断装置から紙製品を移送する搬送面を有するコンベヤベルトを清掃するベルト清掃システムであって、
含水材料で構成された清掃ウェブと、
前記清掃ウェブをコンベヤベルト搬送面に回動当接状態に付勢するローラと、を含み、それによって、前記コンベヤベルト搬送面がレーザ照射領域に到達する前に、前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃するローラアセンブリと、
前記清掃ウェブに洗浄液体を供給する液体供給下位システムと、を備え、
前記液体供給下位システムは、洗浄液体を収容するよう適合させた洗浄液体貯槽を含んでおり、前記清掃ウェブは近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、前記ローラは前記清掃ウェブループの近位端部分に配置され、前記清掃ウェブループの遠位端部分は前記洗浄液体貯槽内に配置され、
前記液体供給下位システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽の外部に設けられ、洗浄液体から紙屑を除去するフィルタと、
前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとに接続され、前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記洗浄液体貯槽内に洗浄液体を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとの間で洗浄液体を循環させるポンプと、
を有し、
前記ベルト清掃システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体の液位を検出する液位検出器と、
前記検出された液位が所定の液位に達した場合に、洗浄液体が前記洗浄液体貯槽に流入されるように制御する制御部と、を備える、
ベルト清掃システム。」
(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付したものである。)

2 本件補正の目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項2における発明特定事項である「ローラアセンブリ」における「前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃する」動作について、「前記コンベヤベルト搬送面がレーザ照射領域に到達する前に」との事項を付加することにより、時機を限定するものである。
また、本件補正は、本件補正前の請求項2における発明特定事項である「液体供給下位システム」について、「前記液体供給下位システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽の外部に設けられ、洗浄液体から紙屑を除去するフィルタと、
前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとに接続され、前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記洗浄液体貯槽内に洗浄液体を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとの間で洗浄液体を循環させるポンプと、
を有し」との事項を付加することにより、構成を限定するものである。
そして、本件補正後の請求項2に記載される発明は、本件補正前の請求項2に記載された発明の解決しようとする従来手法の「機械を稼働させたまま手あるいは機械的に起動される掻き落としブレードを用いて定期的にベルトを清掃するもの」が有する「清掃の間に紙屑が堆積し、ベルトがたわみ、粘着性となり、書類を取り除くのが困難となる。掻き落とした場合、1)紙屑がブレードの掻き落とし端に堆積し、ブレードの効能を低下させ、2)ブレードがベルトを引っ掻き、汚染物の除去をより困難とし、3)移送ベルトのたわみ領域にブレードがアクセスできない。手で清掃した場合、洗浄溶液と紙屑が共に真空引き孔を介して吸引され、ベルトの下側に移動し、そのことが片や駆動上の問題とより多くのベルト欠陥を引き起こすことがある。」との課題(本件出願の明細書の段落【0003】及び【0004】)を同じく解決しようとするものである。
よって、特許請求の範囲の請求項2についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項2に記載された発明と本件補正後の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 本願補正発明の独立特許要件について
(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成28年11月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものであるところ、上記1(2)の【請求項2】に示したとおりのものである。

(2)引用刊行物
ア 刊行物1
(ア)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-12863号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a 「【0007】
上述したように、従来は画像形成を行う画像形成装置本体に対して前処理又は後処理にてシート材を加工している。特に、医療業界に使用されているレセプト紙に関しては、近年、給紙搬送されたシート材に、画像形成後、画像形成部下流に設けた穿孔装置にて穴あけ処理が行われることが一般的となっている。
【0008】
しかしながら、このような画像形成装置本体の前、或いは後で穴あけなどを行う装置を接続することを装置全体の大型化を招いているという課題がある。これは、例えば、穿孔処理を行う場合には、シート材を拘束した状態で、且つ位置精度を要求された状態にて処理されなければならないため、搬送装置・シート材位置規制部材等の装置が必要となるためである。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置本体内部、特にシート材の位置精度を必要とする画像形成部でシート材を切断することによって、装置全体の小型化、制御の簡略化、装置簡略化を図れる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、シート材に対して画像を形成する画像形成手段と、シート材を画像形成手段に対向して搬送する搬送ベルトと、この搬送ベルト上でシート材を切断する切断手段とを備えている構成とした。
【0011】
ここで、切断手段は搬送ベルト上でシート材の外形を切断する構成とできる。
【0012】
この場合、切断手段は搬送ベルト上でシート材を送り方向に沿って切断する構成、切断手段は搬送ベルト上でシート材を送り方向と直交する方向に切断する構成、切断手段は搬送ベルト上でシート材を指定された形状に切断する構成とできる。また、切断手段は搬送ベルト上でシート材を切断するカッターを備えている装置である構成、切断手段は搬送ベルト上のシート材に対してレーザーを照射して切断する装置である構成、切断手段は搬送ベルト上でシート材を加熱して切断する装置である構成とできる。」(段落【0007】ないし【0012】)

b 「【0075】
次に、本発明の第5実施形態について図17ないし図19を参照して説明する。なお、図17は同実施形態の説明に供する平面説明図、図18は同じく正面説明図、図19は図17の左側面説明図である。
この実施形態では、画像形成手段としての記録ヘッド24の用紙送り方向下流側で、搬送ベルト31の上方に、シート材を切断するシート材切断手段であるシート材切断装置220を備えている。なお、ここではシート材切断装置220としてレーザー221を照射してシート材Sを切断する装置を用いている。
【0076】
このシート材切断装置220は、図示しない走査機構によって、主走査方向及び副走査方向に移動可能に配置している。
【0077】
これにより、搬送ベルト31上のシート材Sを指定された切断ラインC(既切断部C1,未切断部C2で示す。)に従って切断することができる。
【0078】
このように、切断手段がシート材を指定された形状に切断する装置である構成とすることによって、ユーザーが所望する形状のシート材を得ることができる。」(段落【0075】ないし【0078】)

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
a 上記(ア)a及びb並びに図17ないし19の記載(特に、段落【0010】ないし【0012】並びに図17及び18の記載)によれば、刊行物1には、搬送ベルト31が記載されていることが分かる。

b 上記(ア)b並びに図17ないし19の記載(特に、段落【0075】及び図18の記載)によれば、搬送ベルト31の上方に、レーザー221を照射して紙のシート材Sを切断するシート材切断装置220を備えることが分かる。

c 上記(ア)a及びb並びに図17ないし19の記載(特に、段落【0010】並びに図17及び18の記載)によれば、搬送ベルト31の搬送面により、搬送方向の上流側から紙のシート材Sがシート材切断装置220に対して移送され、また、シート材切断装置220から搬送方向の下流側に紙のシート材Sが移送されるから、上記bと合わせると、搬送ベルト31は、レーザー221を照射して紙のシート材Sを切断するシート材切断装置220に紙のシート材Sを移送するとともにシート材切断装置220から紙のシート材Sを移送する搬送面を有することが分かる。

(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には次の事項からなる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「レーザー221を照射して紙のシート材Sを切断するシート材切断装置220に紙のシート材Sを移送するとともにシート材切断装置220から紙のシート材Sを移送する搬送面を有する搬送ベルト31。」

イ 刊行物2
(ア)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-318623号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サック貼機(紙器製凾機)等に備えられているフィーダーベルトに一定量の水分を連続的に供給するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】サック貼機等において、紙器ブランクの給紙を行なうために、ブランクシートの積層部の下方にフィーダーベルトが設けられている。フィーダーベルトの給紙面(表面)が最も下に積層されたブランクシートの下面に吸着することにより、もしくは両者間の摩擦により、フィーダーベルトとブランクシートとは一体に移動して、ブランクシートを1枚ずつ送る。このようなフィーダーベルトにおいては、ブランクシートの下面との間の吸着力もしくは摩擦力の大きさを適当に調節して紙送りが1枚ずつ確実に行なえるように、フィーダーベルトの走行経路途中において一定量の水分を含ませた角形スポンジを接触させ、フィーダーベルトの給紙面に一定の水分を持たせるようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上のようにしてフィーダーベルトの給紙面に一定の水分をもたせる方法によると、スポンジを頻繁に取り替える必要があった。スポンジを水に浸し、フィーダーベルトに接触するように配置するのだが、そのために人手を要し、また水分量を一定に調節するために作業員の熟練を要していた。また取り替える度にサック貼機の運転を止めるわけには行かないので、高速回転中のフィーダーベルトに手が接触する等の事故の発生する危険を伴なっていた。
【0004】よって本発明の目的は、人手を介することなく、自動的に一定量の水分を連続してフィーダーベルトに供給できるような連続給水装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、走行経路の一部においてフィーダーベルトの給紙面の一部にその表面が接し、走行経路の一部において水中を通り、表面は水分含有層であるエンドレスベルトと、該エンドレスベルトを駆動する駆動装置とを備えてフィーダーベルトの連続給水装置を構成した。」(段落【0001】ないし【0005】)

b 「【0008】請求項1に記載の発明に係るフィーダーベルトの連続給水装置においては、表面が水分含有層のエンドレスベルトは駆動装置により走行する。エンドレスベルトは走行経路途中で水中を通って水分含有層に水分を含ませ、さらに走行してサック貼機等のフィーダーベルトの給紙面の一部にその表面を接しさせることにより、水分含有層に含有されていた水分がフィーダーベルトの給紙面に供給される。また、フィーダーベルトの給紙面に付着していた汚れ、紙粉等がエンドレスベルトの水分含有層の表面に転移する。転移した汚れ、紙粉等は水中を通過する時にすすぎ落される。」(段落【0008】)

c 「【0011】図1は本発明に係るフィーダーベルトの連続給水装置の一実施例を示す正面図であり、図2は図1の実施例が適用できるサック貼機の給紙部の一例を示す正面図である。
【0012】サック貼機の給紙部1においては、ブランクシートSは給紙ガイド11にガイドされて積層されている。積層されているブランクシートSの前端(図視左端)は、シャッター調整ツマミ12によって上下方向の位置調整可能なシャッター13に接している。ブランクシートSの後端(図視右端)は、ブランク支持ガイド14により持ち上げられており、よってブランクシートSの前端はシャッター13に押し付けられて、ブランクシートSの送りが確実かつスムーズになるようにしている。
【0013】給紙ガイド11の下方には、ローラ15、16、17それぞれに巻回された複数本のフィーダーベルト18が配置されている。フィーダーベルト18は高速で駆動されて、最下に積層されているブランクシートSの下面に表面の給紙面を吸着させて搬送し、ブランクシートSの厚さと略同一の幅に調整されたシャッター13の下端との間から、ブランクシートSを1枚ずつ送る。ブランクシートSは送りコロ19とフィーダーベルト18との間を通って排出される。
【0014】フィーダーベルト18の下方には、連続給水装置2が配置されている。連続給水装置2のエンドレスベルト21は、その表面211がフィーダーベルト18の表面181の一部に接して、水分を供給する。エンドレスベルト21は多層であって、表面211側はスポンジ製の水分含有層212、裏面側はゴム製の基層213である。
【0015】エンドレスベルト21は、フィーダーベルト18と接する部分において、フレーム22に回動可能に取り付けられたブラケット221の先端のプーリ222に巻回されている。ブラケット221の姿勢は調整ツマミ223により調整でき、エンドレスベルト21がフィーダーベルト18に押し付けられる応力を適当に調節することができる。
【0016】スプロケット222の下方には水が収納された水槽23が配置されている。水槽23には駆動ローラ24、ガイドローラ25、26がそれぞれ回動可能に取り付けられている。駆動ローラ24の軸にはプーリ241が固定されており、タイミングベルト27が巻回されている。タイミングベルト27は変速器付きの駆動モータ28の駆動軸に取り付けられた駆動プーリ281に巻回されて、駆動モータ28の駆動により回動する。
【0017】エンドレスベルト21は、プーリ222から、駆動ローラ24とガイドローラ25との間を通過して、水槽23中の水の中を抜け、駆動ローラ24とガイドローラ26との間を通過するように巻回されている。
【0018】このような構成によると、駆動モータ28を駆動することによりエンドレスベルト21は駆動され、水中で水分含有層212に水分が含まれる。水中から抜けたエンドレスベルト21は駆動ローラ24とガイドローラ26とに挟持され、適当に絞られて水の量が調整される。そしてプーリ222に巻回されている部分において、水分含有層212の表面211がフィーダーベルト18の表面181に接して水分が供給される。
【0019】水分含有層212の表面211は水分を供給するとともに、フィーダーベルト18の表面181に付着した汚れ・紙粉等を拭い取り、水槽23の水中ですすぎ落すという効果をも奏する。そのため、エンドレスベルト21の駆動方向は、矢印で図に示すように、フィーダーベルト18の駆動方向と逆になっている。エンドレスベルト21の駆動される速度は、プーリ222の位置とともに、拭い取りの効果を最大にするように、適当に定められる。また、駆動モータ28には変速器が付いているので、エンドレスベルト21の駆動速度を変化させることにより水分が付着する量を調整することができる。速度が速ければ、フィーダーベルト18に時間当たり接触するエンドレスベルト21の長さが長くなるので、より多い水分が供給され、逆に速度が遅ければ、より少ない水分が供給される。」(段落【0011】ないし【0019】)

d 「【0026】以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能であることは言うまでもない。
【0027】例えば、図示の実施例においては水槽は汚れ落しと水分供給の兼用だったが、エンドレスベルトの走行経路に2つの別の水槽を配置して、フィーダーベルトに接してから最初に入る水槽を汚れ落し用、後に入る方を水分供給用として水の汚染を防止するようにすることもできる。また、水槽に循環装置を備え、フィルタを通して常に水の純度を保持するようにしたり、水槽には新たな水を供給し続けて古い水を溢れ出させるようにすることも可能である。」(段落【0026】及び【0027】)

(イ)上記(ア)及び図面の記載から分かること
a 上記(ア)aないしc並びに図1及び2の記載(特に、段落【0019】及び図1の記載)によれば、刊行物2には、紙器のブランクシートSを移送する搬送面を有するフィーダーベルト18の表面に付着した汚れ・紙粉等を拭い取るフィーダーベルトの連続給水装置2が記載されていることが分かる。

b 上記(ア)c及び図1の記載(特に、段落【0014】ないし【0019】及び図1の記載)によれば、フィーダーベルトの連続給水装置2が、スポンジ製の水分含有層212と、水分含有層212をフィーダーベルト18の搬送面に回動当接状態に付勢するプーリ222と、を含み、それによって、水分含有層212がフィーダーベルト18の搬送面を実質連続的に清掃するエンドレスベルト21のアセンブリを備えることが分かる。

c 上記(ア)c及び図1の記載(特に、段落【0014】及び【0018】及び図1の記載)によれば、フィーダーベルトの連続給水装置2が、水分含有層212に水を供給する水供給用の下位システムを備えることが分かる。

d 上記(ア)c及び図1の記載(特に、段落【0014】ないし【0019】及び図1の記載)によれば、前記水供給用の下位システムは、水を収容するよう適合させた水槽23を含んでおり、水分含有層212は近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、プーリ222は水分含有層212のループの近位端部分に配置され、水分含有層212のループの遠位端部分は水槽23内に配置されることが分かる。

e 上記(ア)dの段落【0027】には「また、水槽に循環装置を備え、フィルタを通して常に水の純度を保持するようにしたり、・・・中略・・・することも可能である。」と記載されているところ、循環装置が水槽23とフィルタとの間で水を循環させるためには、水槽23と前記フィルタとに接続され、水槽23内の水を前記フィルタに送り、前記フィルタから水槽23内に水を戻すための循環経路と、循環経路を介して水槽23と前記フィルタとの間で水を循環させるポンプとを有することは明らかである。
そうすると、前記水供給用の下位システムは、水から汚れ・紙粉等を除去するフィルタと、水槽23と前記フィルタとに接続され、水槽23内の水を前記フィルタに送り、前記フィルタから水槽23内に水を戻すための循環経路と、循環経路を介して水槽23と前記フィルタとの間で水を循環させるポンプと、を有することが分かる。

(ウ)刊行物2記載の技術
上記(ア)及び(イ)を総合して、本願補正発明の表現に倣って整理すると、刊行物2には次の事項からなる技術(以下、「刊行物2記載の技術」という。)が記載されているといえる。
「紙器のブランクシートSを移送する搬送面を有するフィーダーベルト18の表面に付着した汚れ・紙粉等を拭い取るフィーダーベルトの連続給水装置2であって、
スポンジ製の水分含有層212と、
前記水分含有層212をフィーダーベルト18の搬送面に回動当接状態に付勢するプーリ222と、を含み、それによって、前記水分含有層212が前記フィーダーベルト18の搬送面を実質連続的に清掃するエンドレスベルト21を含むアセンブリと、
前記水分含有層212に水を供給する水供給用の下位システムと、を備え、
前記水供給用の下位システムは、水を収容するよう適合させた水槽23を含んでおり、前記水分含有層212は近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、前記プーリ222は前記水分含有層212のループの近位端部分に配置され、前記水分含有層212のループの遠位端部分は前記水槽23内に配置され、
前記水供給用の下位システムは、更に、
水から汚れ・紙粉等を除去するフィルタと、
前記水槽23と前記フィルタとに接続され、前記水槽23内の水を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記水槽23内に水を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記水槽23と前記フィルタとの間で水を循環させるポンプと、
を有するフィーダーベルトの連続給水装置2。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、後者における「レーザー221を照射して紙のシート材Sを切断するシート材切断装置220」又は「シート材切断装置220」は、前者における「レーザ切断装置」に相当し、以下同様に、「紙のシート材S」は「紙製品」に、「搬送面」は「搬送面」に、「搬送ベルト31」は「コンベヤベルト」に、それぞれ相当する。
また、後者における「シート材切断装置220に紙のシート材Sを移送するとともにシート材切断装置220から紙のシート材Sを移送する搬送面」は、前者における「レーザ切断装置におよびレーザ切断装置から紙製品を移送する搬送面」に相当する。

したがって、両者は、
「レーザ切断装置におよびレーザ切断装置から紙製品を移送する搬送面を有するコンベヤベルト」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「コンベヤベルトを清掃するベルト清掃システムであって、
含水材料で構成された清掃ウェブと、
前記清掃ウェブをコンベヤベルト搬送面に回動当接状態に付勢するローラと、を含み、それによって、前記コンベヤベルト搬送面がレーザ照射領域に到達する前に、前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃するローラアセンブリと、
前記清掃ウェブに洗浄液体を供給する液体供給下位システムと、を備え、
前記液体供給下位システムは、洗浄液体を収容するよう適合させた洗浄液体貯槽を含んでおり、前記清掃ウェブは近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、前記ローラは前記清掃ウェブループの近位端部分に配置され、前記清掃ウェブループの遠位端部分は前記洗浄液体貯槽内に配置され、
前記液体供給下位システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽の外部に設けられ、洗浄液体から紙屑を除去するフィルタと、
前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとに接続され、前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記洗浄液体貯槽内に洗浄液体を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとの間で洗浄液体を循環させるポンプと、
を有し、
前記ベルト清掃システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体の液位を検出する液位検出器と、
前記検出された液位が所定の液位に達した場合に、洗浄液体が前記洗浄液体貯槽に流入されるように制御する制御部と、を備える、ベルト清掃システム」であるのに対して、
引用発明は、「搬送ベルト31」であって、コンベヤベルトを清掃するベルト清掃システムを構成しない点(以下、「相違点」という。)。

(4)判断
ア 本願補正発明と刊行物2記載の技術とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「紙器のブランクシートSを移送する搬送面を有するフィーダーベルト18」又は「フィーダーベルト18」は前者における「コンベヤベルト」に相当し、以下同様に、「フィーダーベルトの連続給水装置2」は「ベルト清掃システム」に、「スポンジ製の水分含有層212」はスポンジが網状構造からなるから、「含水材料で構成された清掃ウェブ」に、「フィーダーベルト18の搬送面」は「コンベヤベルト搬送面」に、「プーリ222」は「ローラ」に、「エンドレスベルト21のアセンブリ」は「ローラアセンブリ」に、「水」は「洗浄液体」に、「水供給用の下位システム」は「液体供給下位システム」に、「水槽23」は「洗浄液体貯槽」に、「汚れ・紙粉等」は「紙屑」に、「フィルタ」は「フィルタ」に、「循環経路」は「循環経路」に、「ポンプ」は「ポンプ」に、それぞれ相当する。
・後者における「紙器のブランクシートSを移送する搬送面を有するフィーダーベルト18の表面に付着した汚れ・紙粉等を拭い取る」ことは、前者における「コンベヤベルトを清掃する」ことに相当する。
そうすると、刊行物2記載の技術は、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のうち次の事項を備えているといえる。
「コンベヤベルトを清掃するベルト清掃システムであって、
含水材料で構成された清掃ウェブと、
前記清掃ウェブをコンベヤベルト搬送面に回動当接状態に付勢するローラと、を含み、それによって、前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃するローラアセンブリと、
前記清掃ウェブに洗浄液体を供給する液体供給下位システムと、を備え、
前記液体供給下位システムは、洗浄液体を収容するよう適合させた洗浄液体貯槽を含んでおり、前記清掃ウェブは近位端部分と遠位端部分とを有する連続ループであり、前記ローラは前記清掃ウェブループの近位端部分に配置され、前記清掃ウェブループの遠位端部分は前記洗浄液体貯槽内に配置され、
前記液体供給下位システムは、更に、
洗浄液体から紙屑を除去するフィルタと、
前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとに接続され、前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記洗浄液体貯槽内に洗浄液体を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとの間で洗浄液体を循環させるポンプと、
を有するベルト清掃システム。」

イ ところで、引用発明が記載された刊行物1には、図31の実施形態として、紙のシート材Sを移送する搬送面を有する搬送ベルト31において、搬送ベルト31の表面に付着する紙片SPを除去する部材を設けることが示されているから、刊行物1には、紙製品を移送する搬送面を有するコンベヤベルトにおいて、コンベヤベルトを清掃する手段を設けるとの示唆(以下、「刊行物1記載の示唆1」という。)がある。
そうすると、引用発明においてシート材切断装置220によりレーザー221を照射してシート材Sを切断する際に紙片SPが生じることは明らかであるから、引用発明において、刊行物1記載の示唆1から、コンベヤベルトを清掃する手段として、刊行物2記載の技術を適用することは当業者が容易に想到できたことである。
そして、刊行物2記載の技術において、フィルタの交換等を考慮して、フィルタを「洗浄液体貯槽(水槽23)の外部に設けられ」たものとすることは、設計的事項にすぎない。

ウ また、刊行物1の図31の実施形態は、紙のシート材Sを搬送する搬送面がパンチ装置に到達する前に搬送面を清掃することが示されているから(以下、「刊行物1記載の示唆2」という。)、「コンベヤベルト搬送面がレーザ照射領域に到達する前に」コンベヤベルト搬送面を清掃することに格別の困難性はない。

エ さらに、液体を収容し、液体を循環させるようにした液体貯槽において、液体貯槽内の液体の液位を検出する液位検出器と、検出された液位が所定の液位に達した場合に、液体が液体貯槽に流入されるように制御する制御部を備え、所定の液位以上に保つことは、本件出願の優先日前に周知技術(例えば、特開2001-276769号公報(段落【0023】、【0026】、【0036】及び【0037】並びに図2及び4)や浴槽用の全自動給湯器などを参照。)であり、洗浄液体貯槽(水槽23)の液位(水位)を所定の液位以上に保つ必要があることは「前記水分含有層212のループの遠位端部分は前記水槽23内に配置され」ることから明らかであるから、周知技術を参酌して、「更に、洗浄液体貯槽内の洗浄液体の液位を検出する液位検出器と、検出された液位が所定の液位に達した場合に、洗浄液体が洗浄液体貯槽に流入されるように制御する制御部と、を備える」とすることに格別の困難性はない。

オ 以上から、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、刊行物2記載の技術、刊行物1記載の示唆1及び2並びに周知技術に基づいて当業者が容易になし得たことである。

カ また、本願補正発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術、刊行物1記載の示唆1及び2並びに周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

キ したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の技術、刊行物1記載の示唆1及び2並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項2に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成27年9月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるものであるところ、前記第2[理由]1(1)の【請求項2】に示したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項、並びに引用発明は、前記第2[理由]3(2)アに記載したとおりであり、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2及びその記載事項、並びに刊行物2記載の技術は、前記第2[理由]3(2)イに記載したとおりであり、さらに刊行物1記載の示唆1及び2並びに周知技術は、前記第2[理由]3(4)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本願補正発明から「ローラアセンブリ」における「前記清掃ウェブが前記コンベヤベルト搬送面を実質連続的に清掃する」動作について、「前記コンベヤベルト搬送面がレーザ照射領域に到達する前に」との発明特定事項を省くとともに、「液体供給下位システム」について、「前記液体供給下位システムは、更に、
前記洗浄液体貯槽の外部に設けられ、洗浄液体から紙屑を除去するフィルタと、
前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとに接続され、前記洗浄液体貯槽内の洗浄液体を前記フィルタに送り、前記フィルタから前記洗浄液体貯槽内に洗浄液体を戻すための循環経路と、
前記循環経路を介して前記洗浄液体貯槽と前記フィルタとの間で洗浄液体を循環させるポンプと、
を有し」との発明特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2[理由]3に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の技術、刊行物1記載の示唆1及び2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物2記載の技術、刊行物1記載の示唆1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-28 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2011-218379(P2011-218379)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
P 1 8・ 572- Z (B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 光司森藤 淳志  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 西山 智宏
槙原 進
発明の名称 レーザ切断装置用のベルト清掃システム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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