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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1336820 |
審判番号 | 不服2017-9227 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-23 |
確定日 | 2018-02-19 |
事件の表示 | 特願2014-242264「電子装置へのアクセスを制御するマン・マシン・インターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月30日出願公開、特開2015- 84236、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2004年6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年5月30日,米国)を国際出願日とする出願である特願2006-533547号の一部を平成25年7月11日に新たな特許出願とした特願2013-145795号の一部を平成26年11月28日に新たな特許出願としたものであって,平成27年7月13日付けで拒絶理由通知がされ,平成27年11月13日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年4月28日付けで拒絶理由通知(最後)がされ,平成28年10月11日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成29年2月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成29年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は,以下の引用文献1-4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2000-293253号公報 2.特開平10-011216号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2002-358162号公報(周知技術を示す文献) 4.特開平07-234837号公報 第3 本願発明 本願請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,平成28年10月11日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-11は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 コンピュータに方法を実行させるプログラムであって,前記方法は, タッチスクリーンの位置において第1のユーザからアイコン選択入力を受信するステップであって,前記タッチスクリーンの前記位置はアイコンに関連付けられており,前記アイコンは機能に関連付けられており,前記タッチスクリーンは前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示する,ステップと, 前記アイコンと前記第1のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第1のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見された場合,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを許可するステップと, 前記タッチスクリーンの前記位置において第2のユーザからアイコン選択入力を受信するステップと, 前記アイコンと前記第2のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記アイコンと前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第2のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記アイコンと前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見されなかった場合,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを禁止するステップと, を備えることを特徴とするプログラム。 【請求項2】 前記方法は, 前記アイコンに関連付けられた前記機能がユーザ認証を要求しない場合,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを許可するステップ を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項3】 前記方法は, 前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が検索される前に,前記第1のユーザからの前記アイコン選択入力に基づいて前記アイコンを判定するステップ を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項4】 前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権は,複数のセキュリティ特権のうちの1つであり,前記複数のセキュリティ特権からの各セキュリティ特権は,機能に関連付けられたアイコンとユーザの生体計測テンプレートとに基づいている ことを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項5】 前記方法は, 前記機能へのアクセスが前記第1のユーザに許可される前に,前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見されなかった場合,前記第1のユーザによる前記機能へのアクセスを禁止するステップ を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。 【請求項6】 装置であって, 複数の生体計測テンプレートを格納するように構成されたメモリであって,前記複数の生体計測テンプレートからの各生体計測テンプレートが,複数のセキュリティ特権のうちの1つに関連付けられ,前記複数のセキュリティ特権からの各セキュリティ特権が,複数の機能のうちの1つに関連付けられる,メモリと, タッチスクリーン内の位置におけるアイコン選択入力を受信するように構成され,前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示するように構成されたタッチスクリーンであって,前記複数のアイコンからの各アイコンは前記複数の機能のうちの1つに関連付けられている,タッチスクリーンと, 前記メモリに結合され,前記タッチスクリーンに動作可能なように結合され,前記複数のアイコンからのアイコンに関連付けられた機能へのアクセスを,前記アイコン選択入力が前記タッチスクリーン内の前記位置において受信された場合であって,そのアイコンと生体計測入力に関連付けられた前記複数の生体計測テンプレートからの生体計測テンプレートとに関するセキュリティ特権が前記メモリに格納されている場合に,許可するように構成された,プロセッサと, を備えることを特徴とする装置。 【請求項7】 前記プロセッサは,前記アイコンと前記生体計測テンプレートとに関する前記セキュリティ特権を,前記アイコンと前記生体計測テンプレートとに基づいて判定するように構成される ことを特徴とする請求項6に記載の装置。 【請求項8】 前記プロセッサは,前記タッチスクリーン内の前記位置が,いかなるセキュリティ特権からも独立している場合,前記機能へのアクセスを許可するように構成される ことを特徴とする請求項6に記載の装置。 【請求項9】 前記アイコン選択入力は第1のアイコン選択入力であり,前記生体計測入力は第1のユーザの生体計測入力であり, 前記プロセッサは,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを,第2のアイコン選択入力が前記タッチスクリーン内の前記位置において受信された場合であって,前記アイコンと第2のユーザの生体計測入力に関連付けられた前記複数の生体計測テンプレートからの生体計測テンプレートとに関する前記セキュリティ特権が前記メモリに格納されていない場合に,禁止するように構成される ことを特徴とする請求項6に記載の装置。 【請求項10】 方法であって, タッチスクリーンの位置において第1のユーザからアイコン選択入力を受信するステップであって,前記タッチスクリーンの前記位置はアイコンに関連付けられており,前記アイコンは機能に関連付けられており,前記タッチスクリーンは前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示する,ステップと, 前記アイコンと前記第1のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第1のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見された場合,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを許可するステップと, 前記タッチスクリーンの前記位置において第2のユーザからアイコン選択入力を受信するステップと, 前記アイコンと前記第2のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記アイコンと前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第2のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記アイコンと前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見されなかった場合,前記アイコンに関連付けられた前記機能へのアクセスを禁止するステップと, を備えることを特徴とする方法。 【請求項11】 前記アイコンと前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権は,複数のセキュリティ特権のうちの1つであり,前記複数のセキュリティ特権からの各セキュリティ特権は,機能に関連付けられたアイコンとユーザの生体計測テンプレートとに基づいている ことを特徴とする請求項10に記載の方法。」 第4 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,「情報処理装置」(発明の名称)に関し,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線は重要箇所に対して当審が付与した。 ア「【0040】 【発明の実施の形態】図1は,本発明の実施の一形態である情報処理装置31のブロック図である。指紋認証機能を備える情報処理装置31の中央処理部32には,表示・指紋読取部34の指紋読取動作を制御する指紋データセンシング制御部33,指紋センシングエリア設定部35,表示・指紋読取部34の表示動作を制御する表示制御部36,キーボードなどのキー入力部37,不揮発性メモリで実現される記憶部38,ネットワークとの接続やプリンタなどの周辺機器との接続のための入出力部39および記憶部40が接続され,装置全体の動作を統括的に制御する。 【0041】表示・指紋読取部34において,たとえば液晶表示装置で実現される表示部の直交座標が設定された表示面と,公知の技術によって実現される指紋読取部の指が接触される指紋読取面とは同一である。具体的には,液晶表示装置のすべての画素にデータ読取りのためのセンサが設けられる。該センサは液晶表示装置のすべての画素に設ける必要はなく,一部の画素だけに設けても構わない。このようにして,図2に示される表示・データ読取画面59を有する表示・指紋読取部34によって,画面59の上の座標データと指紋データとが取得される。中央処理部32は,取得された座標データに基づいて情報処理装置31の動作を制御し,また取得された指紋データに基づいて装置31の動作を制御する。 【0042】なお,表示・指紋読取部34として,たとえば本願出願人による特願平11-12231号に記載した画像読取装置であって,液晶層内部に受光素子を埋込んで指紋データを読取る画像読取装置を採用しても構わない。情報処理装置31では,指紋読取手段,表示手段および座標指定手段が表示・指紋読取部34によって実現される。 【0043】指紋データセンシング制御部33の座標位置・指紋データ記憶部58には,表示・指紋読取部34で取得された座標データと指紋データとが一時記憶される。これらの記憶データは記憶部40に転送される。表示・指紋読取部34には,表示制御部36から表示データが与えられる。また,表示・指紋読取部34の表示動作と指紋読取動作とのタイミングの制御は,中央処理部32によって行われる。 【0044】指紋センシングエリア設定部35は,画面59中に指紋読取領域60を設定する。該領域60は,たとえば入力ペンなどの指示手段によって指定された2点の座標を向かい合った頂点とする矩形領域である。キー入力部37からは,必要に応じて指紋データに対する付加データなどが入力される。 【0045】記憶部38には予め登録されたユーザ登録データが記憶されており,必要に応じて中央処理部32によって読出され,記憶部40に転送され格納される。なお,アプリケーションプログラムも同様に記憶部38に記憶され,必要に応じて中央処理部32が読出し,記憶部40に転送し格納されるが,記憶部40に記憶しておいても構わない。 【0046】記憶部40は,指紋認証部42,ユーザの登録データの読出し・格納部45およびアプリケーションプログラム格納部48で構成されるプログラム・ワークメモリ41を備える。指紋認証部42は,指紋データの特徴データを抽出する特徴抽出部43と,抽出された特徴データを照合する照合部44とを有する。ユーザの登録データの読出し・格納部45は,ユーザ登録データを読出すデータ読出部46と,読出されたユーザ登録データを格納するデータ格納部47とを有する。」 イ 「【0047】図3は,記憶部38のユーザ登録データを示す図である。ユーザ登録データは,ユーザ毎の,基本データ部61と関連データ部62とで構成される。基本データ部61は,ユーザの氏名データ格納部63,指紋データの格納部64および役職・代理決済者データの格納部65で構成される。前記指紋データの格納部64には,左手各指の指紋データ64aと右手各指の指紋データ64bとがそれぞれ格納される。関連データ部62は,操作環境データの格納部66,利用機能の制限データの格納部67,各指のショートカットデータの格納部68,権限データの格納部69および起動アプリケーションの設定データの格納部70で構成される。前記権限データの格納部69には,機器設定変更レベル69a,ネットワーク接続変更レベル69bおよびその他のデータ69cがそれぞれ格納される。 【0048】操作環境とは情報処理装置31の動作条件に相当し,たとえば操作案内を行うヘルプ情報などの特定情報の表示/非表示,スクリーンキーなどの特定キーのオン/オフ,表示される文字の大きさなどを規定するデータである。利用機能の制限データも動作条件に相当し,たとえば接続されるCD(コンパクトディスク)-ROM(リードオンリメモリ)からのデータ読出しの可/不可,SIO(ファイル転送プロトコル)の利用の可/不可などを規定するデータである。各指のショートカットデータはユーザの各指毎に予め設定されたコマンドに相当し,たとえばスケジュールの登録機能の実行を指定するコマンドである。権限データとは,機器設定変更レベルやネットワーク接続変更レベルなどを規定するデータである。起動アプリケーションとは,決済承認願に捺印されたときに実行される注文書発行のアプリケーションや報告書に捺印されたときに実行されるネットワーク接続のアプリケーションである。」 ウ「【0081】図15は,情報処理装置31の第8動作を示すフローチャートである。ステップa81では,表示・指紋読取部34の表示・データ読取画面59に図16に示されるようなメニューの指定を促す画面79が設定され表示される。ここで,メニューはマシン設定およびネットワーク接続の2つであり,前記画面79には2つのメニュー指定領域80a,80bが設定されている。なお,該メニュー指定領域80a,80bは指紋入力領域でもある。また,記憶部38に記憶された指紋データが読出され記憶部40に格納される。 【0082】メニュー指定を促す前記画面79のメニュー指定領域80a,80bは,具体的に図17に示されるように複数の領域A?Jに区分されている。領域80a,80bの中のどの領域A?Jに指紋入力がなされたかによって,メニュー実行時の権限レベルが指定される。 【0083】次のステップa82では,画面79への指の接触による指紋の入力操作があったか否かを中央処理部32が判断する。指が接触されて,指紋の入力操作があったと判断すると,次のステップa83に進む。ここで,メニュー指定領域80a,80b外への指の接触によって,次の処理に進まないよう制御することも可能である。 【0084】ステップa83では,指紋データセンシング制御部33は表示・指紋読取部34から指紋データと指が接触された位置の座標データとを読出し,記憶部58に一時記憶し,記憶部40に転送する。次のステップa84では,指紋データを照合し認証して,一致しているか否かを判断する。一致しているときにはステップa85に進み,一致していないときにはステップa90に進んで,エラー表示を行って動作を終了する。 【0085】ステップa85では,一致した指紋のユーザに対応する権限データを記憶部38から読出し,記憶部40に格納する。次のステップa86では,指紋入力がどの領域A?E内になされたかを判断する。領域Aのときにはステップa87に,領域BまたはDのときにはステップa88に,領域CまたはEのときにはステップa89にそれぞれ進み,読出され格納された権限データのレベルであって,各領域A?Eで指定される権限レベルでマシン設定のメニューを実行するようにして動作を終了し,これ以外のときにはそのまま動作を終了する。 【0086】なお,ステップa90のエラー表示は必要に応じて行えばよく,ステップa84で指紋データが一致しないときには直ちに動作を終了しても構わない。」 エ 【図15】に記載されたフローチャートによれば, 「権限データは3段階のレベルである」こと,及び, 「ステップa87では,登録ユーザーのパスワード設定等の基本動作に影響がでないレベルの設定を行い,権限データのレベルにより設定可能な内容を変え, ステップa88では,日時の設定等の他ユーザーに多少影響のでるレベルの設定を行い,権限データのレベルにより設定可能な内容を変え,最下位レベルの者は設定不可であり, ステップa89では,機器の基本性能の設定やネットワーク設定等の他ユーザーに与える影響が大きい物の設定を行い,権限データレベル最上位の者のみ設定可能である」こと, が記載されている。 上記摘記事項,図面の記載及びこの分野における技術常識を勘案すると,上記引用文献1には,特に,「情報処理装置」の「第8動作」に関する次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「ステップa81では,表示・指紋読取部34の表示・データ読取画面59にメニューの指定を促す画面79が設定され表示され,ここで,メニューはマシン設定およびネットワーク接続の2つであり,前記画面79には2つのメニュー指定領域80a,80bが設定されており,該メニュー指定領域80a,80bは指紋入力領域でもあり,また,記憶部38に記憶された指紋データが読出され記憶部40に格納され, メニュー指定を促す前記画面79のメニュー指定領域80a,80bは,複数の領域A?Jに区分されており,領域80a,80bの中のどの領域A?Jに指紋入力がなされたかによって,メニュー実行時の権限レベルが指定されるものであり, 次のステップa82では,画面79への指の接触による指紋の入力操作があったか否かを中央処理部32が判断し,指が接触されて,指紋の入力操作があったと判断すると,次のステップa83に進み, ステップa83では,指紋データセンシング制御部33は表示・指紋読取部34から指紋データと指が接触された位置の座標データとを読出し,記憶部58に一時記憶し,記憶部40に転送し, 次のステップa84では,指紋データを照合し認証して,一致しているか否かを判断し,一致しているときにはステップa85に進み,一致していないときにはステップa90に進んで,エラー表示を行って動作を終了し, ステップa85では,一致した指紋のユーザに対応する権限データを記憶部38から読出し,記憶部40に格納し,該権限データは3段階のレベルであり, 次のステップa86では,指紋入力がどの領域A?E内になされたかを判断し,領域Aのときにはステップa87に,領域BまたはDのときにはステップa88に,領域CまたはEのときにはステップa89にそれぞれ進み,読出され格納された権限データのレベルであって,各領域A?Eで指定される権限レベルでマシン設定のメニューを実行するようにして動作を終了し,これ以外のときにはそのまま動作を終了し, 上記ステップa87では,登録ユーザーのパスワード設定等の基本動作に影響がでないレベルの設定を行い,権限データのレベルにより設定可能な内容を変え, 上記ステップa88では,日時の設定等の他ユーザーに多少影響のでるレベルの設定を行い,権限データのレベルにより設定可能な内容を変え,最下位レベルの者は設定不可であり, 上記ステップa89では,機器の基本性能の設定やネットワーク設定等の他ユーザーに与える影響が大きい物の設定を行い,権限データレベル最上位の者のみ設定可能である, 情報処理装置による方法。」 2.引用文献2,3について 引用文献2(【0017】,図1)や,引用文献3(【0022】,図1(b))に記載されているように, 「メニューをアイコンで表示すること」(以下,「周知技術」という。) は周知である。 3.引用文献4について 引用文献4(【0017】-【0019】)には, 「指紋のイメージの認識の前に,選択されたオブジェクトを識別すること」(以下,「引用文献4記載技術」という。) が記載されている。 第5 対比・判断 1.本願発明10について (1)対比・検討 本願発明10と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 a.引用発明の「表示・データ読取画面59に」「設定され表示され」る「メニューの指定を促す画面79」は,本願発明10の「タッチスクリーン」に相当する。 b.引用発明の「権限データレベル最上位の者」は本願発明10の「第1のユーザ」に相当し,引用発明の「権限データのレベル」が「最下位レベルの者」は本願発明10の「第2のユーザ」に相当する。 c.引用発明の「領域CまたはE」に関し,これらの領域は明らかに「メニューの指定を促す画面79」の特定の「位置」に関連付けられており,かつ,「機器の基本性能の設定やネットワーク設定等の他ユーザーに与える影響が大きい物の設定を行」う「機能」と関連付けられているものである。 一方,本願発明10の「アイコン」に関し,「前記タッチスクリーンの前記位置はアイコンに関連付けられており,前記アイコンは機能に関連付けられて」いるものである。 したがって,引用発明の「領域CまたはE」は本願発明10の「アイコン」に対応するものであるといえる。 そこで,両者を対比するに,引用発明の「領域CまたはE」は「指紋入力領域」であり,本願発明10の「アイコン」はユーザーが「生体計測入力」を行う「位置」であるところ,両者はいずれも「生体計測入力領域」といえる点で共通する。 その一方で,本願発明10では「前記タッチスクリーンは前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示する」のに対し,引用発明では「ステップa81では,表示・指紋読取部34の表示・データ読取画面59に図16に示されるようなメニューの指定を促す画面79が設定され表示される。」(【0081】),「メニュー指定を促す前記画面79のメニュー指定領域80a,80bは,具体的に図17に示されるように複数の領域A?Jに区分されている。」(【0082】)等の記載によると,「メニュー指定領域80a」はメニューの指定を促す画面79に表示されるものの,それを区分した「領域CまたはE」は「メニューの指定を促す画面79」上に明示的に表示されるものではないと認められる点で相違する。 d.引用発明の「(記憶部38に記憶された)指紋データ」は,本願発明10の「生体計測テンプレート」に相当する。 e.引用発明の「権限データ」は,そのレベルに応じて重要度レベルが異なる内容のマシン設定を行うことを許可するデータであるから,本願発明10の「セキュリティ特権」に相当するといえる。 また,引用発明の「権限データ」は「領域CまたはE」と「指紋データ」に関連付けられたものといえる。 以上を総合勘案し,技術常識も参酌すれば,本願発明10と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「 方法であって, タッチスクリーンの位置において第1のユーザから生体計測入力領域選択入力を受信するステップであって,前記タッチスクリーンの前記位置は生体計測入力領域に関連付けられており,前記生体計測入力領域は機能に関連付けられている,ステップと, 前記生体計測入力領域と前記第1のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記生体計測入力領域と前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第1のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記生体計測入力領域と前記第1のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見された場合,前記生体計測入力領域に関連付けられた前記機能へのアクセスを許可するステップと, 前記タッチスクリーンの前記位置において第2のユーザから生体計測入力領域選択入力を受信するステップと, 前記生体計測入力領域と前記第2のユーザの生体計測テンプレートとに基づいて,前記生体計測入力領域と前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられたセキュリティ特権を検索するステップであって,前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートは前記第2のユーザの生体計測入力に関連付けられている,ステップと, 前記生体計測入力領域と前記第2のユーザの前記生体計測テンプレートとに関連付けられた前記セキュリティ特権が発見されなかった場合,前記生体計測入力領域に関連付けられた前記機能へのアクセスを禁止するステップと, を備えることを特徴とする方法。」 (相違点) 一致点の「生体計測入力領域」が,本願発明10では「アイコン」であり,また,「前記タッチスクリーンは前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示する」のに対し,引用発明では「領域CまたはE」であり,これらの領域は「メニューの指定を促す画面79」に明示的に表示されるものではない点。 (2)相違点についての判断 一般に,情報処理装置などの装置の画面上に表示される「アイコン」が,これに関連する機能(実行されるアプリなど)を示すのみならず,ユーザに対して入力位置を明示するために用いられることは技術常識である。 しかしながら,引用発明の「領域CまたはE」は,「メニューの指定を促す画面79」に明示的に表示されるものではないから,「ユーザに対して入力位置を明示する」ために用いられるものでないことは明らかであり,そのような「領域CまたはE」に替えて本願発明10のような「アイコン」を用いること,及び,この「アイコン」をメニューの指定を促す画面79上に表示させて本願発明10のように「前記タッチスクリーンは前記タッチスクリーン上の様々な位置に配置される複数のアイコンを表示する」構成とすること,に合理的な理由はなく,たとえ引用文献2,3に記載されたように「メニューをアイコンで表示すること」自体が周知技術であるとしても,該周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものということはできない。 また,引用文献4記載技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。 2.本願発明1-9,11について 本願発明1-9,11も,本願発明10の上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから,本願発明10と同じ理由により,当業者であっても引用発明,上記周知技術及び引用文献4記載技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明1-11は,当業者が引用発明,引用文献2,3に記載された周知技術及び引用文献4に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-05 |
出願番号 | 特願2014-242264(P2014-242264) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松田 岳士 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
新川 圭二 稲葉 和生 |
発明の名称 | 電子装置へのアクセスを制御するマン・マシン・インターフェース |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 永川 行光 |
代理人 | 坂田 恭弘 |
代理人 | 下山 治 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |