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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1336881
審判番号 不服2016-53  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2018-01-30 
事件の表示 特願2014- 23634「装置,方法及び製品」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月31日出願公開,特開2014-140176〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2009年2月3日を国際出願日とする出願である特願2011-548539号の一部を,平成26年2月10日に新たな特許出願としたものであって,平成26年11月21日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由が通知され,平成27年6月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年8月28日付けで補正の却下の決定がされ,同日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成28年1月4日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,その後,当審において平成29年3月24日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年6月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。



第2 当審において通知した拒絶理由
当審拒絶理由の概要は,以下のとおりである。

理由2 (明確性要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3 (実施可能要件)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

1 理由1(サポート要件)及び理由2(明確性要件)について
(5)請求項3が引用する請求項1には3つのプロセッサが存在するため,請求項3の「前記プロセッサ」とは請求項1のどのプロセッサを指するのか不明確である。
また,N個のバイナリビットは2^(N)状態を表すもののN^(2)状態を表すものではないから,「N^(2)状態を表すNビット」とはいかなるものか意味不明である。

(6)請求項4の「前記ユーザ装置の受信帯域幅内の少なくとも1つのダウンリンクグラントが,1よりも多くの制御チャネル要素及び1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む」との事項は,引用する請求項1のどの構成に関連する事項なのか不明確であり,装置の発明として請求項4に係る発明が不明確である。
また,発明の詳細な説明を見ても,「ダウンリンクグラントが,・・・1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む」とはいかなることか技術的に意味不明である。

2 理由3(実施可能要件)について
(1)請求項3に係る発明に関して,発明の詳細な説明をみても請求項3と同様の記載があるにすぎず,出願時の技術常識を考慮しても,物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)において,如何にしてN^(2)状態を表すNビットを使用して,ACK/NAKのバンドル化をするのか不明である。
また,物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)については,【0004】に「LTE-Aにおいてアップリンク制御信号を送信する別の方法には,アップリンクデータで時分割した(1)PUCCH及び(2)PUSCH(物理アップリンク共有チャネル)の2つがある。」との記載があり,また,【0044】に請求項4([当審注]:「請求項4」は「請求項3」の誤記。)と同様の記載があるのみであって,PUSCHにおけるACK/NAKのバンドル化については開示されていない。そして,【0004】,【0005】,【0028】,【0029】,【0065】等の記載から明らかなように,本発明はPUCCHにおけるACK/NAKのバンドル化に関するものと認められる。
したがって,発明の詳細な説明は,請求項4([当審注]:「請求項4」は「請求項3」の誤記。)に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。

(2)請求項4に係る発明に関して,発明の詳細な説明をみても請求項4と同様の記載があるにすぎず,出願時の技術常識を考慮しても,ダウンリンクグラントが1よりも多くのACK/NAKチャネルを含むとはいかなることか技術的に意味不明である。すなわち,本願明細書に記載されているACK/NAKチャネルは,ユーザ装置がダウンリンクグラントに基づいて基地局から受信したダウンリンクデータに対するACK/NAKを基地局に送信するためのアップリンクのチャネルである。そして,ダウンリンクグラントがアップリンクのACK/NAKチャネルを含むことはあり得ないから,記載内容が意味不明である。
したがって,発明の詳細な説明は,請求項4に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。



第3 請求人の対応
当審拒絶理由に対して,請求人は,平成29年6月27日付けで,特許請求の範囲を補正する手続補正書及び意見書を提出した。

1 補正後の特許請求の範囲
平成29年6月27日付けで手続補正された特許請求の範囲(抜粋)は以下のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサ,及びコンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリを含む装置であって,前記少なくとも1つのプロセッサ及び前記コンピュータプログラムコードは,前記少なくとも1つのプロセッサにより,前記装置に少なくとも,
ユーザ装置の受信帯域幅内のコンポーネントキャリアにわたって肯定応答/否定応答(ACK/NAK)バンドル化を実行し,
バンドル化されたACK/NAK値を前記ACK/NAKのバンドル化のために検出されたリソース割り当てグラントの数に関する情報へマップする所定のマッピングを使用して,少なくとも1つの符号語に対応するバンドル化されたACK/NAK値を生成し,
前記バンドル化されたACK/NAK値を,検出されたリソース割り当てグラントの前記対応する数を示すメッセージにおいて送信する,
ことを実行させるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ユーザ装置の受信帯域幅内で受信された前記リソース割り当てグラントの1つ以上においてDAIビットを使用しない,
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が,Nビットを使用することにより,物理アップリンク共有チャネルでACK/NAKのバンドル化を実行するように構成される,
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ユーザ装置の受信帯域幅内で受信された前記リソース割り当てグラントの内の少なくとも1つのリソース割り当てグラントが,1よりも多くの制御チャネル要素及び1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む,
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。」
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)


2 意見書の主張
請求人は平成29年6月27日付け意見書において,当審拒絶理由の上記理由1(5),理由1(6),理由2(1),理由2(2)に対して,それぞれ以下のとおり主張している。

「これに対して,請求項3においてプロセッサに代えて装置を引用するように補正し,「N^(2)状態を表す」との記載を削除した。これによってご指摘の不備は解消したものと思量する。」,
「これに対して,請求項4において「前記ユーザ装置の受信帯域幅内で受信された前記リソース割り当てグラントの内の少なくとも1つのリソース割り当てグラントが,1よりも多くの制御チャネル要素及び1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む」と補正した。これによってご指摘の不備は解消したものと思量する。」,
「これに対して,請求項3において「N^(2)状態を表す」との記載を削除した。これによってご指摘の不備は解消したものと思量する。」,
「これに対して,請求項4において「前記ユーザ装置の受信帯域幅内で受信された前記リソース割り当てグラントの内の少なくとも1つのリソース割り当てグラントが,1よりも多くの制御チャネル要素及び1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む」とする補正を行った。これによってご指摘の不備は解消したものと思量する。」



第4 当審の判断
1 当審拒絶理由の2(1)について
本願明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0004】
LTE-Aは,肯定応答(ACK)/否定応答(NAK),チャネル品質インジケータ(CQI)及びスケジューリング要求(SR)インジケータなどの制御信号をユーザ装置(UE)から進化型ノードB(eNB)へ送信するために物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)を適用する。LTE-Aにおいてアップリンク制御信号を送信する別の方法には,アップリンクデータで時分割した(1)PUCCH及び(2)PUSCH(物理アップリンク共有チャネル)の2つがある。本出願は,主にPUCCHにおけるアップリンク制御信号をテーマにする。アップリンク/ダウンリンク制御シグナリングの観点からすれば,1つの解決策は,既存のリリース8制御プレーン(PDCCH,PUCCHなど)を個々のコンポーネントキャリア(CC)にコピーすることである。これ以降,この概念をLTE-AdvancedにおけるNxPDCCH構造として示す。後方互換性要件に起因して,リリース8型のPUCCHリソースを,PDCCHを送信するダウンリンクコンポーネントキャリアごとに確保することも想定される。これらのリソースは,対応するアップリンクコンポーネントキャリアに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LTE-Advancedの1つの基本前提は,1つのコンポーネントキャリアにつき1つのトランスポートブロック及びHARQ(ハイブリッド自動再送要求)エンティティをサポートすることであった。一般的には,1つのコンポーネントキャリアにつき1つの分離したPDCCHを有すること(NxPDCCH)が,このようなシステムオペレーションに適したダウンリンク制御シグナリング方式のように思えると理解されている。アップリンク制御シグナリングの観点からすれば,NxPDCCH方式を使用した場合,特別な注意を要するいくつかの側面が存在する。1つの側面は,キュービックメトリック(CM)特性である。アップリンク/ダウンリンクリソースを異なるコンポーネントキャリアに割り当てた場合,アップリンクにおいて常にマルチキャリア送信が実現される。アップリンクの観点からすれば,CMを最小化できる場合には常にシングルキャリア送信を目標とすべきであり,すなわち平行するPUCCH(NxPUCCH)の同時送信を避けるべきである。別の側面は,アップリンクにおける制御チャネルの範囲である。1よりも多くのダウンリンクコンポーネントキャリアを割り当てた場合,常にマルチACK/NAK送信(ACK/NAK多重化)が実現される。アップリンク範囲は,マルチビットACK/NAKに関連する課題である。したがって,ACK/NAKのバンドル化,すなわち全てのダウンリンクトランスポートブロック及び割り当てられるコンポーネントキャリアに1つの共通のACK/NAKが存在することは,常に,最適化されたアップリンク範囲を保証するための1つの選択肢でなければならない。したがって,PUCCHにおけるACK/NAKのバンドル化をサポートするために,より高度な制御チャネルの設計解が必要とされている。」,
「【0028】
ある実施形態では,既存のPDCCH設計(NxPDCCH)を使用する場合のLTE-AdvancedのPUCCHにおけるACK/NAKのバンドル化を,ダウンリンクグラントにDAIビットを含めずにサポートするための解決策を提案する。なお,既存のPDCCH設計及びリリース8 TDDからのマッピングテーブルを使用した場合,(CMが小さな)ACK/NAK多重化のサポートには,特別な構成は必要ない[TS36.213,第10.1欄]。
【0029】
NxPDCCH構造を使用するLTE-Advanced FDDでは,PUCCHにおけるACK/NAKのバンドル化をDAIを使用せずにサポートするには以下の方法が容易である(UEの受信帯域幅内でM個のコンポーネントキャリアが半静的に割り当てられていると仮定する)。
・eNBが,PDCCH/PDSCHをM個のCC全ての中にスケジューリングすること,又は,
・eNBが最初のN個の(連続した)CCをスケジューリングする(N<M)こと。このような方法では,バンドル化したACK/NAK/DTXの送信が,最後に正しく受信したPDCCHに基づき,また事前に定めたCC付番スキームが必要となる。」,
「【0044】
ある実施形態では,プロセッサが,N^(2)状態を表すNビットを使用することにより,物理アップリンク共有チャネルにおけるACK/NAKのバンドル化を実行するように構成される。」,
「【0065】
以下の例では,NxPDCCH構造を有するLTE-Advanced FDDにおけるPUCCHでのACK/NAKのバンドル化をサポートするための非DAIベースの方法の実施形態について説明する。説明する方法に共通して1つ指定できることは,PUCCHで送信されるバンドル化したACK/NAKメッセージ及び/又はACK/NAKリソースに,UEの受信帯域幅内の受信/検出されたDLグラントの数に関する所定の情報が含まれるということである。」
([当審注]:下線部は当審が付した。)

上記【0004】,【0005】,【0028】,【0029】,【0065】の記載からも明らかなように,発明の詳細な説明に記載された発明は,物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)におけるACK/NAKのバンドル化に関するものと認められる。そして,LTE及びLTE-Advanced(LTE-A)では,物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)と物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)とは明確に区別されるものであることは,当業者における技術常識である。
そして,発明の詳細な説明には,物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)に関しては,【0004】に「LTE-Aにおいてアップリンク制御信号を送信する別の方法には,アップリンクデータで時分割した(1)PUCCH及び(2)PUSCH(物理アップリンク共有チャネル)の2つがある。」との記載があり,また,【0044】に「ある実施形態では,プロセッサが,N^(2)状態を表すNビットを使用することにより,物理アップリンク共有チャネルにおけるACK/NAKのバンドル化を実行するように構成される。」の記載があるのみであって,物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)におけるACK/NAKのバンドル化についての具体的な開示は存在しない。
また,請求項3の「Nビットを使用することにより」は,【0044】の「N^(2)状態を表すNビットを使用することにより」を含んでいると解されるところ,N個のバイナリビットは2^(N)状態を表すもののN^(2)状態を表すものではないから,【0044】の「N^(2)状態を表すNビット」とはいかなるものか意味不明である。
さらに,出願時の技術常識を考慮しても,物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)において如何にしてNビットを使用してACK/NAKのバンドル化をするのか不明である。
したがって,発明の詳細な説明は,請求項3に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。


2 当審拒絶理由の1(6)及び2(2)について
発明の詳細な説明には「リソース割り当てグラント」に関して以下の記載があるのみである。
「【0024】
ACK/NAKのバンドル化モードでは,UE102及びeNB104の両方が,ダウンリンクにおいてどれだけのリソース割り当てグラント及び対応するデータパケットをeNB104が送信し,UE102が受信しているか,及びこれらをアップリンクにおいてどれだけ同時にACK/NAKする必要があるかを知っている必要がある。そうでなければ,UE102は,バンドル化したACKを送信することはできるが,いくつかのダウンリンクグラントが紛失し,この種のエラーが「DTX対ACK」エラーとして示される。」
また,発明の詳細な説明には「制御チャネル要素」に関して以下の記載がある。
「【0045】・・・複数の(Nx)CCE(制御チャネル要素)を確保することなどにより複数のリソースを使用する場合に利用可能な追加の状態(Nx)も存在することができる。したがって,UEは,生成されたバンドル化したACK/NAK値及び検出されたダウンリンクグラントの数に関する情報に基づいて1つの状態を選択することができる。」,
「【0055】
ある実施形態では,ユーザ装置の受信帯域幅内の少なくとも1つのダウンリンクグラントが,1よりも多くの制御チャネル要素(CCE)及び1よりも多くのACK/NAKチャネルを含む。」
また,発明の詳細な説明には「ACK/NAKチャネル」に関して以下の記載がある。
「【0051】・・・ある実施形態では,プロセッサが,ユーザ装置の受信帯域幅内の受信/検出されたダウンリンクグラントの数に基づいて,第1又は第2のACK/NAKチャネルを決定するように構成される。」

上記【0024】の記載及び当業者の技術常識によれば,「リソース割り当てグラント」とは,ダウンリンクにおいてUEに割り当てられるダウンリンクリソースを示すものであって,「ダウンリンクグラント」と同義であり,UEは当該ダウンリンクリソースにて送信されたデータパケットに対してアップリンクにおいてACK/NAKを送信するものであると解される。
また,上記【0045】,【0055】の記載によれば,請求項4の「制御チャネル要素」は「制御チャネル要素(CCE)」を意味すると認められるところ,「制御チャネル要素(CCE)」が物理ダウンリンク制御チャネル(PDCCH)にて制御信号を送信するリソースの単位(1CCE=9REG=36RE)を含むことは当業者における技術常識である。さらに,上記【0051】の記載によれば,請求項4の「ACK/NAKチャネル」とは,PUCCHにおける第1及び第2のACK/NAKチャネルを含むと解される。
してみると,リソース割り当てグラントが,PDCCHにおいて1よりも多くの制御チャネル要素によりUEに送信されることはあるとしても,リソース割り当てグラントが制御チャネル要素を含むことは,技術常識からみてあり得ない。また,リソース割り当てグラントはPDCCHにおいてUEに送信されるものであるから,リソース割り当てグラントがPUCCHにおける第1及び第2のACK/NAKチャネルを含むことは,技術常識からみてあり得ない。
このため,請求項4の記載は技術常識に反するものであり,請求項4に係る発明が不明確である。また,発明の詳細な説明は,請求項4に係る発明を当業者が実施できる程度に十分に記載されていない。


( なお,平成29年6月27日付けで手続補正された請求項1は,新たに生じた拒絶理由(新規事項,サポート要件違反,明確性要件違反)を有するものであり,請求項1の記載を,発明の詳細な説明の【0049】の例(【0077】の選択肢1-2)や【0052】の例(【0091】の選択肢2-2のオプション2-2-1)を含むものと善解しても,進歩性を認めることができないので,その理由を以下に簡略に記す。

(i) 新規事項,サポート要件,明確性要件について
(i-1) 請求項1の「バンドル化されたACK/NAK値を前記ACK/NAKのバンドル化のために検出されたリソース割り当てグラントの数に関する情報へマップする所定のマッピングを使用して,少なくとも1つの符号語に対応するバンドル化されたACK/NAK値を生成し」との記載によれば,「所定のマッピング」は「バンドル化されたACK/NAK値」を「リソース割り当てグラントの数に関する情報」へマップすることになり,また,「バンドル化されたACK/NAK値」をマップする所定のマッピングを使用して「バンドル化されたACK/NAK値」を生成することになる。しかしながら,そのようなことは発明の詳細な説明に記載されておらず,次段落の「前記バンドル化されたACK/NAK値」とは,マップする前の「バンドル化されたACK/NAK値」なのか,マッピングにより生成された「バンドル化されたACK/NAK値」なのかも不明確になっている。
請求人が根拠とする発明の詳細な説明の【0049】?【0054】に記載されているものは,NAK又はいくつのダウンリンクグラントにわたってACKであるかにより区別される状態を,QPSK変調記号にマップすべく2ビットにより示される4つの状態にマップするものであり,マッピングにより生成されるのは,QPSK変調記号(配置点)に対応する2ビットであるから,「バンドル化されたACK/NAK値」を「リソース割り当てグラントの数に関する情報」へマップするものではく,また,「所定のマッピングを使用して・・・ACK/NAK値を生成」するものではない。

(i-2) 請求項1の「前記バンドル化されたACK/NAK値を,検出されたリソース割り当てグラントの前記対応する数を示すメッセージにおいて送信する」について,請求項1には当該記載以前に「対応する数」は存在せず,「検出されたリソース割り当てグラントの前記対応する数を示すメッセージ」が不明確である。また,そのようなメッセージにおいてバンドル化されたACK/NAK値を送信することは,当初明細書等のどこに裏付けらけているのか不明である。さらに,当該メッセージは,その文言からみて,DAIフィールドにて送信される情報を含み得るものであり,発明の詳細な説明の記載内容(【0028】,【0065】及び実施の形態1?3等の記載の非DAIベースの解決策)と矛盾するものである。

(ii) 進歩性について
引用文献1のFigure 2には,ユーザ装置の受信帯域幅内のコンポーネントキャリアにわたって肯定応答/否定応答(ACK/NAK)バンドル化を実行することが記載されている。また,例えば引用文献4の2.3に示されているように,DTX対ACKエラーは周知の課題である。そして,引用文献3の5葉目には,オプション2として,バンドル化されたNAK又はバンドル化されたACKの数を表す2ビット(QPSKの配置点に対応)にマッピングして送信することが記載されており,同葉の図及び表によれば,バンドル化されたNAKを「00」にマップし,バンドル化されたACKの数が3,6,9のいずれかの場合は「01」にマップし,バンドル化されたACKの数が2,5,8のいずれかの場合は「10」にマップし,バンドル化されたACKの数が1,4,7のいずれかの場合は「11」にマップするマッピングの例示が見てとれる。当該マッピングは発明の詳細な説明の【0049】?【0054】に記載されたマッピング,すなわち,NAK又はいくつのダウンリンクグラントにわたってACKであるかにより区別される状態を,QPSK変調記号にマップすべく2ビットにより示される4つの状態にマップするマッピングに対応するものである。そして,当該マッピングによれば,DTX対ACKエラーを検出し得ることは当業者に自明である。
してみると,引用文献1のユーザ装置の受信帯域幅内のコンポーネントキャリアにわたって肯定応答/否定応答(ACK/NAK)バンドル化を実行する際に,引用文献3に記載されたマッピング手法を採用することにより,DTX対ACKエラーを検出し得るようにすることは,当業者が容易になし得ることである。
したがって,請求項1に係る発明に進歩性は見出せない。請求項5,6,9,10,12-14に係る発明についても同様である。 )



第5 むすび
以上のとおり,本件出願は,発明の詳細な説明の記載,特許請求の範囲の記載にそれぞれ不備があり,特許法第36条第4項第1号,同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-23 
結審通知日 2017-08-28 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2014-23634(P2014-23634)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04L)
P 1 8・ 536- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷岡 佳彦  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
菅原 道晴
発明の名称 装置、方法及び製品  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 須田 洋之  
代理人 大塚 文昭  
代理人 上杉 浩  
代理人 近藤 直樹  
代理人 弟子丸 健  

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