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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04J
管理番号 1336886
審判番号 不服2016-7283  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2018-01-30 
事件の表示 特願2013-537610「ダウンリンクキャリアアグリゲーションを有するTDDシステムにおけるHARQ-ACK送信をコーディングする方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月10日国際公開,WO2012/060647,平成26年 1月16日国内公表,特表2014-501067〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,2011年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年11月3日 米国,2010年11月4日 米国,2010年11月5日 米国,2010年11月8日 米国,2011年7月28日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成28年1月12日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年5月18日に拒絶査定不服審判が請求され,その後,当審において平成29年2月17日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年7月5日付けで手続補正がされたものである。

その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成29年7月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「時分割二重(TDD)通信システムにおけるユーザ端末(UE)が基地局に送信するための受信確認情報ビットをエンコーディングする方法であって,
複数のサブフレームのそれぞれ及び前記UEに対して構成される複数のセルのそれぞれに対して前記受信確認情報ビットを生成するステップと,1つのサブフレームでの1つの受信確認情報ビットは,1つのデータ送信ブロック(TB)を送信する送信モード(TM)で構成されるそれぞれのセルに対して生成され,1つのサブフレームでの2つの受信確認情報ビットは,2つのデータTBを送信するTMで構成されるそれぞれのセルに対して生成され,
前記複数のセルのそれぞれに対する複数の前記サブフレームに対応する受信確認情報ビットをセルインデックス値の昇順に配列して第1のコードワードを生成するステップと,
前記受信確認情報ビットの総ビット数が所定値より少ないか又は同一である場合に前記第1のコードワードをエンコーディングするステップと,
前記受信確認情報ビットの総ビット数が前記所定値より大きく,定められた上限値より小さいか又は同一である場合に,前記第1のコードワードからの受信確認情報ビットを,第2のコードワード及び第3のコードワードに交互方式で配置し,前記第2のコードワード及び前記第3のコードワードをエンコーディングするステップと
を有することを特徴とするエンコーディング方法。」


2 引用発明等
当審拒絶理由に引用されたHuawei, HiSilicon,ACK/NACK transmission schemes for TDD in LTE-A([当審仮訳]:LTE-AにおけるTDDのためのACK/NACK送信方式),3GPP TSG-RAN WG1#62b R1-105246,2010年10月5日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105246.zip(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「2 Maximum ACK/NACK payload
In LTE-A TDD, UL A/Ns can be from both multiple DL CCs and multiple DL sub-frames, which results in a situation of a much larger A/N payload than that of FDD. For example, for 5 DL CCs with UL:DL sub-frame configuration 2, the A/N payload could be as high as 20 bits even spatial bundling is assumed. This brings a big challenge in the design for UL A/N feedback.
(中略)
For LTE-A TDD, if only a maximum payload of 10 A/N bits is supported, some kind of partial bundling will be required especially for the case of a large number of DL CCs. The partial bundling could be done either in time domain or in CC domain. When compared with spatial bundling, partial bundling has a more significant impact on the downlink throughput. To maximize the downlink throughput, partial bundling should be avoided as much as possible when determining the maximum A/N payload. For a maximum payload of 20 A/N bits, partial bundling could be avoided and the downlink throughput could be maximized. Hence, it is proposed that,
Proposal 1: To maximize the downlink throughput, a maximum payload of 20 A/N bits should be supported for LTE-A TDD.」(1葉目)
([当審仮訳]:
2 最大ACK/NACKペイロード
LTE-A TDDでは,UL A/Nは,複数のDL CC及び複数のDLサブフレームの両方から得られ,その結果,FDDのものよりもはるかに大きいA/Nペイロードの状況になる。例えば,UL:DLサブフレーム構成2を有する5つのDL CCの場合,A/Nペイロードは,空間バンドリングが想定されていても,20ビットほどに高くなることがある。これは,UL A/Nフィードバックの設計に大きな課題をもたらす。
(中略)
LTE-A TDDの場合,10個の A/Nビットの最大ペイロードしかサポートされていない場合,多数のDL CCの場合に特に何らかの部分的バンドリングが必要となる。部分的なバンドリングは,時間領域又はCC領域のいずれかで行うことができる。空間バンドリングと比較すると,部分バンドリングはダウンリンクスループットに大きな影響を与える。ダウンリンクスループットを最大にするには,最大A/Nペイロードを決定するときに,部分的なバンドリングをできるだけ避ける必要がある。20個のA/Nビットの最大ペイロードの場合,部分的バンドリングが回避され,ダウンリンクスループットが最大化される。そこで,
提案1:ダウンリンクスループットを最大にするには,LTE-A TDDのために,20個のA/Nビットの最大ペイロードをサポートする必要がある。)

(2)「3.3 ACK/NACK multiplexing without partial bundling
For A/N multiplexing without partial bundling, neither time domain nor CC domain partial bundling will be needed. Since channel selection can support only up to 4 A/N bits, it is of less meaning to be discussed for A/N multiplexing without partial bundling. The focus of this section is on DFT-S-OFDM.
For DFT-S-OFDM, the (32, O) RM code from Rel-8 with circular buffer rate matching has been agreed to be reused when A/N payload size is less than or equal to 11 bits. To maximize the downlink throughput, partial bundling shall be avoided as much as possible when determining the maximum A/N payload. As discussed in section 2, a maximum A/N payload of 20 bits is important and should be supported for LTE-A TDD. Such an A/N payload could be supported by A/N multiplexing without partial bundling. However, it is still an open issue on how to support A/N payload larger than 11 bits.

As discussed in [5], two schemes could be considered for supporting A/N payload larger than 11 bits. One is the Rel-8 Tail Biting Convolutional Code (TBCC). The other is the double RM code, as illustrated in Fig. 2. In the double RM code based scheme, all A/N information will firstly be equally divided into two parts. Each part of A/N information is encoded by a (32, O) RM code and is punctured to get 24 coded bits. The modulated symbols from the two codewords will be collected alternatively. A detailed analysis and comparison of TBCC and double RM code can be found in [5]. The double RM code based scheme is preferred.
Proposal 4: A/N multiplexing without partial bundling should be supported for LTE-A TDD. The double RM code based scheme is preferred for supporting A/N payload larger than 11 bits.」(3?4葉目)
([当審仮訳]:
3.3 部分バンドリングのないACK/NACK多重化
部分バンドリングのないA/N多重化の場合,時間領域もCC領域部分バンドリングも必要ではない。チャネル選択は最大4つのA/Nビットしかサポートできないので,部分バンドリングなしにA/N多重化について議論することはあまり意味がない。このセクションの焦点はDFT-S-OFDMである。
DFT-S-OFDMの場合,A/Nペイロードサイズが11ビット以下の場合,循環バッファレートマッチングを使用するRel-8の(32,O)RM符号が再利用されることに合意した。ダウンリンクスループットを最大にするために,最大A/Nペイロードを決定する際には,部分的なバンドリングを可能な限り避けなければならない。セクション2で論じたように,20ビットの最大A/Nペイロードは重要であり,LTE-A TDDのためにサポートされるべきである。そのようなA/Nペイロードは,部分バンドリングなしにA/N多重化によってサポートすることができる。しかし,11ビット以上のA/Nペイロードをサポートする方法については未だに未解決の問題である。
(図2は省略)
[5]で議論されているように,11ビットより大きいA/Nペイロードをサポートするための2つの方式が考えられる。1つはRel-8 Tail Biting Convolutional Code(TBCC)である。もう1つは,図2に示すように,ダブルRM符号である。ダブルRM符号ベース方式では,全てのA/N情報は,最初に等しく2つの部分に分割される。A/N情報の各部分は,(32,O)RM符号によって符号化され,24個の符号化ビットを得るためにパンクチャされる。2つの符号語からの変調されたシンボルは交互に収集される。TBCCと二重RM符号の詳細な分析と比較は,[5]で見ることができる。ダブルRM符号ベース方式が好ましい。
提案4:LTE-A TDDでは部分バンドリングのないA/N多重化がサポートされるべきである。ダブルRM符号ベースの方式は,11ビットより大きいA/Nペイロードをサポートするために好ましい。)

引用例の上記各記載及び図面並びに当該技術分野の技術常識を考慮すると,
上記(1)の第1段落の記載によれば,引用例には,LTE-A TDDにおけるUL A/Nフィードバックに関して記載されており,上記(2)の第2,3段落の記載には,当該フィードバックにおけるA/Nビットの符号化に関して記載されている。したがって,引用例には,「LTE-A TDDにおけるUL A/NフィードバックのためのA/Nビットを符号化する方法」について記載されていると認められる。

上記(1)の第1段落の記載によれば,A/Nビットは,複数のDL CC及び複数のDLサブフレームの両方から得られるのであるから,「複数のDLサブフレームのそれぞれ及び複数のDL CCのそれぞれに対してA/Nビットを生成する」といえる。
ここで,上記(1)の第1段落の記載によれば,UL A/Nフィードバックでは空間バンドリングも想定されるところ,2つのコードワードに対するA/Nが空間バンドリングされる場合は,それぞれのコードワードに対する2つのA/Nビットを生成されることは,技術常識に照らして当業者に自明である。

上記(1),上記(2)の第2,3段落の記載によれば,A/Nペイロードは,複数のDL CC及び複数のDLサブフレームの両方から得られたA/Nビットを多重化することにより生成されると認められる。すなわち,引用例には,「複数のDL CCのそれぞれに対する複数の前記DLサブフレームに対応するA/Nビットを多重化してA/Nペイロードを生成する」ことが記載されていると認められる。

上記(2)の第2,3段落の記載によれば,A/Nペイロードサイズが11ビット以下の場合,(32,O)RM符号が用いられ,A/Nペイロードサイズが11ビットより大きい場合,ダブルRM符号が用いられる。
ここで,上記(1)の第2段落,上記(2)の第2?4段落の記載によれば,A/Nペイロードサイズが20ビットまでは,時間領域又はCC領域のいずれかで行う部分的なバンドリングが避けられるのであるから,当該部分的なバンドリングをすることなく上記ダブルRM符号が用いられるのは,A/Nペイロードサイズが11ビットより大きく,20ビット以下の場合であると解するのが自然である。
また,上記(2)の第3段落及び図2の記載によれば,ダブルRM符号ベース方式では,A/NペイロードからのA/Nビットは2つの部分に分割され,分割されることにより形成された部分がそれぞれ(32,O)RM符号を用いて符号化されることが見てとれる。
したがって,引用例には,「A/Nペイロードサイズが11ビットより小さいか又は同一である場合に前記A/Nペイロードを(32,O)RM符号を用いて符号化する」こと,「A/Nペイロードサイズが前記11ビットより大きく,20ビットより小さいか又は同一である場合に,前記A/NペイロードからのA/Nビットを,2つの部分に分割し,分割されることにより形成された部分をそれぞれ(32,O)RM符号を用いて符号化する」ことが記載されていると認められる。

したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「LTE-A TDDにおけるUL A/NフィードバックのためのA/Nビットを符号化する方法であって,
複数のDLサブフレームのそれぞれ及び複数のDL CCのそれぞれに対してA/Nビットを生成し,ここで,空間バンドリングされる場合は2つのA/Nビットが生成され,
複数のDL CCのそれぞれに対する複数の前記DLサブフレームに対応するA/Nビットを多重化してA/Nペイロードを生成し,
A/Nペイロードサイズが11ビットより小さいか又は同一である場合に前記A/Nペイロードを(32,O)RM符号を用いて符号化し,
前記A/Nペイロードサイズが11ビットより大きく,20ビットより小さいか又は同一である場合に,前記A/NペイロードからのA/Nビットを,2つの部分に分割し,分割されることにより形成された部分をそれぞれ(32,O)RM符号を用いて符号化する,
方法。」

同じく当審拒絶理由に引用された CATT, DL throughput comparison of ACK/NAK transmission in LTE-A TDD([当審仮訳]:LTE-A TDDにおけるACK/NACK伝送のDLスループット比較), 3GPP TSG RAN WG1 Meeting#62 R1-104315, 2010年8月17日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62/Docs/R1-104315.zip(以下,「周知例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(3)「2. TDD ACK/NAK transmission scheme
In this section, we briefly discuss the evaluated Rel-10 TDD ACK/NAK transmission schemes, with various ACK/NAK bundling schemes and ACK/NAK payload sizes. In detail, the following ACK/NAK multiplexing/bundling schemes are studied, assuming TDD UL/DL configuration 2 and a carrier aggregation system with 2 component carriers.
(中略)

」(2葉目)
([当審仮訳]:
2 TDD ACK/NAK伝送方式
このセクションでは,様々なACK/NAKバンドリング方式とACK/NAKペイロードサイズを使用して,評価済みのRel-10 TDD ACK/NAK送信方式について簡単に説明する。詳細には,TDD UL/DL構成2及び2つのコンポーネントキャリアを有するキャリアアグリゲーションシステムを想定して,以下のACK/NAK多重化/バンドリングスキームが検討される。
(中略)
ケース6:ACK/NAK完全多重化,MIMO,16個のACK/NAKビット
(図6は省略)
ケース7:複数のTBにわたるACK/NAKバンドリング(ACK/NAK空間バンドリング,MIMO,8個のACK/NAKビット
(図7は省略) )


同じく当審拒絶理由に引用されたSamsung, Discussion on partial bundling methods for ACK/NACK transmission in TDD([当審仮訳]:TDDにおけるACK/NACK送信のための部分バンドリング法に関する検討), 3GPP TSG RAN WG1#62bis R1-105362, 2010年10月5日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105362.zip(以下,「周知例2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(4)「2 Maximum bit number of ACK/NACK
(中略)
Hence, the most typical case for CA is M=2 and 2 or 3 CCs. Correspondingly, the maximum number of HARQ-ACK bits is 8 and 12, which is similar to the maximum number of HARQ-ACK bits for FDD. However, the extreme case of 5 CCs, M=4, and MIMO transmission requires up to 40 HARQ-ACK bits or even 47 bits if DTX is explicitly signalled. Due to PUCCH performance limitations and PUSCH overhead (in case HARQ-ACK is multiplexed in the PUSCH) it is not desirable to report all individual HARQ-ACK bits for such extreme cases and the maximum number of HARQ-ACK bits should be limited. To simplify the design and also maintain commonality between FDD and TDD, keeping the similar maximum overhead, e.g. about 12-13 HARQ-ACK and DTX bits for Rel.10 TDD, is preferred.

3 Bundling methods in TDD
In Rel-8 TDD, two types of bundling are defined to reduce HARQ-ACK overhead; spatial bundling and time domain bundling. With CA, CC domain bundling can also be used to compress HARQ-ACK from multiple CCs. Among the 3 bundling schemes, spatial bundling is a simple and clean way without error cases. Hence spatial bundling should be used to compress the ACK/NACK overhead and the number of HARQ-ACK bits could be limited to 20 bits (assuming no DTX feedback). Further, to have the same overhead as for FDD, time domain bundling and/or CC domain bundling have to be used. We subsequently provide our views on the 2 bundling methods.)」(1?2葉目)
([当審仮訳]:
(2 ACK/NACKの最大ビット数
(中略)
したがって,CAの最も典型的なケースは,M=2で,CCが2,3個である。これに対応して,HARQ-ACKビットの最大数は8及び12であり,これはFDDのためのHARQ-ACKビットの最大数に類似している。しかし,5CC,M=4の極端な場合,MIMO伝送は最大40個のHARQ-ACKビットを必要とし,DTXが明示的にシグナリングされる場合は47ビットが必要である。PUCCHの性能制限及びPUSCHオーバヘッド(PUSCHにHARQ-ACKが多重化されている場合)のために,このような極端な場合に全ての個々のHARQ-ACKビットを報告することは望ましくなく,HARQ-ACKビットの最大数を制限する必要がある。同様の最大オーバーヘッドを維持しながら,設計を単純化し,FDDとTDDとの間の共通性を維持する。約12?13個のHARQ-ACK及びRel.10 TDD用のDTXビットが好ましい。

3 TDDにおけるバンドリング方法
Rel-8 TDDでは,HARQ-ACKオーバーヘッドを低減するために2つのタイプのバンドリングが定義される。空間バンドリング及び時間領域バンドリングが含まれる。CAでは,CC領域バンドリングを使用して,複数のCCからのHARQ-ACKを圧縮することもできる。3つのバンドル方式のうち,空間的バンドリングは,エラーのない単純でクリーンな方法である。したがって,ACK/NACKオーバヘッドを圧縮するために空間的バンドリングが使用されなければならず,HARQ-ACKビットの数は20ビットに制限される可能性がある(DTXフィードバックを仮定しない)。さらに,FDDと同じオーバヘッドを有するためには,時間領域バンドリング及び/又はCC領域バンドリングが使用されなければならない。続いて,2つのバンドリング方法について意見を述べる。)


同じく当審拒絶理由に引用されたHuawei, UL ACK/NACK design for carrier aggregation - payload and format([当審仮訳]:キャリアアグリゲーション用のUL ACK/NACKの設計-ペイロード及びフォーマット), 3GPP TSG RAN WG1 Meeting#60bis R1-101942, 2010年4月6日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_60b/Docs/R1-101942.zip(以下,「周知例3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(5)「1 Introduction
UL ACK/NACK (A/N) feedback issue for carrier aggregation has been discussed extensively in recent meetings. A major point to be decided is to adopt which UL A/N transmission scheme(s), including the corresponding payload, PUCCH format and resource allocation. Now the candidate UL A/N transmission schemes are:
-A/N bundling
-A/N multiplexing [1]
○PUCCH format 1b with SF reduction to 2 or 1
○Channel selection, e.g. with:
■extended to support 5 CCs
■used in conjunction with another scheme for the 5th CC
■with spatial bundling for dual codeword case
○PUCCH format 2
○New PUCCH signal/format (e.g. DFT-S-OFDM based)
○A/N bundling within / across CCs
This contribution shows our opinion on the whole picture of UL A/N feedback design for carrier aggregation.

2 A/N bundling
During RAN1 #58bis meeting, it was agreed that limited A/N transmission for the DL CC transport blocks should be supported for power limitation [2]. Limited A/N transmission could be achieved by A/N bundling.
In A/N bundling, a logical AND operation is performed per codeword across DL CCs as shown in Fig. 1. One or two bits A/N can be fed back depending on whether there is 2 codewords PDSCH transmission. As discussed in [7], the PUCCH format 1a/1b resource implicitly mapped from PDCCH CCE could be utilized for A/N transmission.

Since only one or two bits A/N is fed back, A/N bundling can satisfy the requirement of cell edge UE. A/N bundling is needed for cell edge UEs to support DL carrier aggregation as the interference condition and transmission power may be different between UL and DL. In our opinion, it should be supported in LTE-Advanced for UEs with power limitation.
Proposal 1: A/N bundling should be supported in LTE-Advanced for UEs with power limitation.
○The implicitly mapped PUCCH format 1a/1b resource could be utilized.」(1葉目)
([当審仮訳]:
1 はじめに
最近の会議では,キャリアアグリゲーションのUL ACK/NACK(A/N)フィードバックの問題が広く議論されている。決定すべき大きなポイントは,対応するペイロード,PUCCHフォーマット,及びリソース割り当てを含むどのUL A/N伝送方式を採用するかである。
次に,候補となるUL A/N送信方式は,
-A/Nバンドリング
-A/N多重化[1]
○PUCCHフォーマット1b,SFを2又は1に減らす
○チャンネル選択 with:
■5CCをサポートするように拡張
■5番目のCCのための別の計画
■デュアルコードワードの場合の空間バンドリング
○PUCCHフォーマット2
○新しいPUCCH信号/フォーマット(例えば,DFT-S-OFDMベース)
○CC内/CC間のA/Nバンドリング
この寄書は,キャリアアグリゲーションのためのUL A/Nフィードバック設計の全体像に関する我々の見解を示している。

2 A/Nバンドル
RAN1#58bis会議では,電力制限のために,DL CCトランスポートブロックに対する限定されたA/N送信がサポートされるべきであることが合意された[2]。限定されたA/N伝送は,A/Nバンドリングによって達成され得る。
A/Nバンドリングでは,図1に示すように,DL CCを介してコードワードごとに論理AND演算が実行される。2つの符号語のPDSCH送信の有無に応じて,1又は2ビットのA/Nをフィードバックすることができる。[7]で議論されるように,PDCCH CCEから暗黙的にマップされたPUCCHフォーマット1a/1bリソースは,A/N送信のために利用され得る。
(図1は省略)
A/Nビットは1又は2ビットしかフィードバックされないので,A/NバンドリングはセルエッジUEの要件を満たすことができる。干渉条件及び送信電力がULとDLとの間で異なる可能性があるため,セル端UEがDLキャリアアグリゲーションをサポートするためには,A/Nバンドリングが必要である。我々の意見では,LTE-Advancedでは,電力制限のあるUE向けにサポートされているはずである。
提案1:A/Nバンドリングは,電力制限のあるUEのLTE-Advancedでサポートされるべきである。
○暗黙的にマッピングされたPUCCHフォーマット1a/1bリソースを利用することができる。)

上記(3)?(5)の記載からも明らかなように,空間バンドリングはMIMOにより複数のTB(コードワード)が存在する場合になされることは技術常識であり,例えば上記(5)の図1にも示されているように,「キャリアアグリゲーションにおいてMIMOが採用されるセルとそうでないセルとが存在する。」ことも周知である(以下,「周知技術1」という。)。


本願の最先優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったAlcatel-Lucent, Alcatel-Lucent Shanghai Bell, A/N transmission on PUCCH for TDD([当審仮訳]:TDDのためのPUCCHでのA/N送信), 3GPP TSG-RAN WG1 #62bis R1-105192, 2010年10月14日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105192.zip(以下,「周知例4」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(6)「2.2 Maximum A/N Payload Size for DFT-S-OFDM
The A/N payload size can be reduced by space-, time- or carrier-domain A/N bundling. Spatial bundling can be effective in reducing the A/N payload size due to strong correlation between the spatial layers. Any further reduction in A/N payload size should take into account the following aspects:
・UL A/N channel coverage: For larger A/N payload size, the required transmit power increases due to lower coding gain compared with smaller A/N payload size.
・DL throughput: PDSCH is retransmitted for all the codewords with bundled A/N feedback. DL throughput is reduced if a large bundling window is used.

Assuming that spatial bundling is used, the number of A/N bits for CA scenarios in TDD without CC-domain or time-domain bundling is shown in Table 1 [3]. If a maximum A/N payload size of 12 bits is supported, most of the CA scenarios can be supported with spatial bundling alone, without temporal or carrier domain bundling. It is noted that an A/N payload size up to 11 information bits can be supported with the Rel-8 (32, O) RM code for CQI/PMI on PUSCH. However, for a maximum payload size of 12 bits, a new coding scheme would be required.
Proposal 2: The baseline for maximum A/N payload size for TDD is 11 bits.
・For A/N payload sizes less than or equal to 11 bits, the (32, O) RM code from Rel-8 is reused.
・Support of A/N payload size of 12 bits is FFS


2.3 A/N Bundling for DFT-S-OFDM
For a maximum A/N payload size of 12 bits, the only scenarios that are not supported are the DL:UL configuration of 4:1 for 4 carrier aggregation scenario and the DL:UL configurations of 3:1 and 4:1 for 5 carrier aggregation scenario. For these scenarios, we prefer partial bundling of sub-frames, to minimize the DL throughput loss that would arise from full A/N bundling, with its associated high retransmission rate. This is also consistent with the approach of Rel-8, which uses time-domain bundling.
In partial subframe bundling,
- Full A/N feedback is provided for the first few sub-frames.
- A/N bundling is applied for the remaining sub-frames for a subset of CCs
In the following, we illustrate possible A/N bundling schemes for the three TDD configurations requiring bundling. Our principle is to minimise the amount of bundling, and to spread it as evenly as possible across the aggregated carriers.
We show examples for the maximum payload sizes of 12 and 11 bits -selection to be made depending on the decision on whether to define an extension to the RM code to support 12 bits. Since the number of CCs and the TDD UL/DL configuration is known to the eNB and the UE, a fixed bundling pattern can be used.

」(1?3ページ)
([当審仮訳]:
2.2 DFT-S-OFDMの最大A/Nペイロードサイズ
A/Nペイロードサイズは,空間,時間,又はキャリア領域のA/Nバンドリングによって低減することができる。空間バンドリングは,空間レイヤ間の強い相関のためにA/Nペイロードサイズを縮小するのに有効であり得る。A/Nペイロードサイズのそれ以上の減少は,以下の側面を考慮に入れるべきである:
・UL A/Nチャネルカバレッジ:より大きなA/Nペイロードサイズの場合,必要な送信電力は,より小さいA/Nペイロードサイズに比べて低い符号化利得のために増加する。
・DLスループット:バンドルされたA/Nフィードバックを有する全てのコードワードに対してPDSCHが再送信される。大規模なバンドリングウィンドウを使用すると,DLのスループットが低下する。

空間バンドリングが使用されると仮定すると,CC領域又は時間領域バンドリングのないTDDにおけるCAシナリオのA/Nビットの数は,表1[3]に示される。12ビットの最大A/Nペイロードサイズがサポートされている場合,ほとんどのCAシナリオは,時間的又はキャリア領域バンドリングなしで,空間的バンドリングのみでサポートできる。PUSCH上のCQI/PMIのためのRel-8(32,O)RM符号では,11情報ビットまでのA/Nペイロードサイズをサポートすることができることに留意されたい。しかし,最大ペイロードサイズが12ビットの場合,新しい符号化方式が必要となる。
提案2:TDDの最大A/Nペイロードサイズのベースラインは11ビットである。
・11ビット以下のA/Nペイロードサイズの場合,Rel-8からの(32,O)RM符号が再利用される。
・12ビットのA/Nペイロードサイズのサポートは将来の検討事項(FFS)である
(表1は省略)

2.3 DFT-S-OFDMのA/Nバンドリング
12ビットの最大A/Nペイロードサイズの場合,サポートされていないシナリオは,4キャリアアグリゲーションシナリオではDL:UL構成が4:1であり,5キャリアアグリゲーションシナリオではDL:UL構成が3:1及び4:1である。これらのシナリオでは,完全なA/Nバンドリングから生じる関連する高い再送信レートを伴うDLスループットの損失を最小限に抑えるために,サブフレームの部分的なバンドリングを優先する。これは,時間領域バンドリングを使用するRel-8のアプローチとも一致する。
部分的なサブフレームバンドルでは,
- 最初の数個のサブフレームに対して,完全なA/Nフィードバックが提供される。
- A/Nバンドリングが,CCのサブセットの残りのサブフレームに適用される
以下では,バンドリングを必要とする3つのTDD構成に対する可能なA/Nバンドリング方式を説明する。我々の原則は,バンドリングの量を最小限に抑え,バンドリングをアグリゲートされたキャリアにできるだけ均一に広げることである。
最大ペイロードサイズが12ビット及び11ビットの例を示す。12ビットをサポートするためにRM符号の拡張を定義するかどうかの決定に応じて選択が行われる。CCの数及びTDD UL/DL構成はeNB及びUEに知られているので,固定されたバンドルパターンを使用することができる。
(図1は省略) )


本願の最先の優先日前に公開された国際公開第2010/091425号(以下,「周知例5」という。)には,以下の事項が記載されている。
(7)「[0083] Alternatively, all the CC-specific TPC commands for all active UL CCs for a first WTRU may be jointly coded with CC-specific TPC commands for a second and a third WTRU in a PDCCH with a particular DCI format, such as DCI format 3/3A or extended DCI format 3/3A, for example. The CRC parity bits may be scrambled with a TPC-PUSCH-RNTI. Each location of the respective CC-specific TPC command bits for the first WTRU may be signaled to the WTRU via higher layer signaling. Included in the location information may be the TPC parameter and the TPC index. The TPC-index may be defined for each WTRU. The information regarding which TPC bit corresponds to which CC may be signaled to the WTRU explicitly by higher layers. Alternatively, the WTRU may determine the correspondence implicitly by using a preconfigured rule or mapping. With the implicit signalling, the CC specific TPC bits for a WTRU may be placed in ascending order with the UL CC index and the WTRU may receive information as to where to starting reading the TPC bits within the PDCCH it receives from the eNB using, for example, higher layer signalling.」(20?21ページ)
([当審仮訳]:
(【0080】
あるいは,第1のWTRUのすべてのアクティブなUL CCのCC固有のTPCコマンドはすべて,たとえばDCIフォーマット3/3Aまたは拡張DCIフォーマット3/3Aのような特定のDCIフォーマットによるPDCCHの第2および第3のWTRUのCC固有のTPCコマンドと一緒に符号化されてもよい。CRCパリティビットは,TPC-PUSCH-RNTIでスクランブルがかけられてもよい。第1のWTRUのそれぞれのCC固有のTPCビットの各ロケーションは,上位レイヤ信号伝達を介してWTRUに信号伝達されてもよい。ロケーション情報に含まれるのは,TPCパラメータおよびTPC索引であってもよい。TPC索引は,各WTRUに対して定義されてもよい。どのTPCビットがどのCCに対応するかに関する情報は,上位レイヤによって明示的にWTRUに信号伝達されてもよい。あるいは,WTRUは,事前設定された規則またはマッピングを使用することにより,対応を暗黙的に決定することができる。暗黙的信号伝達の場合,WTRUのCC固有のTPCビットは,UL CC索引により昇順に配置されてもよく,WTRUは,たとえば上位レイヤ信号伝達を使用してeNBから受信するPDCCH内のTPCビットの読み取りを開始する場所に関して情報を受信することができる。)

例えば上記(7)の記載からも明らかなように,一般に,複数の単位に関する情報を多重化する場合,どの情報がどの単位に対応するかが適切に識別される必要があり,そのために,どのように多重化がなされたか(すなわち,多重化の規則。)について送信側と受信側とで共通の認識がなされている必要があることは,技術常識からみて当然のことである。
そして,上記(6)の図1,上記(7)の記載からも明らかなように,多重化の規則として,「各セルに関する情報をセルインデックスの昇順に配列して多重化する。」ことは周知である(以下,「周知技術2」という。)。


同じく当審拒絶理由に引用されたCMCC, CATT, CATR, Huawei, HiSilicon, III, New Postcom, Potevio, ZTE, Way forward on supporting ACK/NAK Payload Larger than 11Bits in Rel-10 TDD([当審仮訳]:Rel-10 TDDで11ビットを超えるACK/NAKペイロードをサポートする方法), 3GPP TSG-RAN WG1 Meeting#62bis R1-105743, 2010年10月14日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105743.zip(以下,「周知例6」という。)及びCMCC, CATT, CATR, Ericsson, ST-Ericsson, Huawei, HiSilicon, III, New Postcom, Potevio, ZTE, Way forward on supporting ACK/NAK Payload Larger than 11Bits in Rel-10 TDD([当審仮訳]:Rel-10 TDDで11ビットを超えるACK/NAKペイロードをサポートする方法), 3GPP TSG-RAN WG1 Meeting#62bis R1-105776, 2010年10月14日(利用可能日),URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_62b/Docs/R1-105776.zip (以下,「周知例7」という。)には,図面とともに以下の同一事項が記載されている。

(8)「Proposals
・Rel-10 TDD supports up to 21 ACK/NAK feedback bits
・The following channel coding (i.e. dual RM coding) is supported for ACK/NAK payload larger than 11 bits
-The ACK/NAK bits are equally segmented into two ACK/NAK blocks of length ceil(N/2) and N-ceil(N/2), where N is the number of ACK/NAK feedback payload size
-Each ACK/NAK block contains less than or equal to 11 bits
-Each ACK/NAK block is encoded with the Rel-8 RM (32, O) coding with the last 8 rows punctured
-Each ACK/NAK block is modulated into 12 QPSK symbols
-The 24 QPSK symbols collected alternatively from the two ACK/NAK blocks are transmitted on two slots

」(2葉目ページ)
([当審仮訳]:
(提案
・Rel-10 TDDは最大21個のACK / NAKフィードバックビットをサポート
・11ビットより大きいACK / NAKペイロードに対して,以下のチャネル符号化(すなわち,デュアルRM符号化)がサポートされる
-ACK/NAKビットは,長さceil(N/2)と長さN-ceil(N/2)の2つのACK/NAKブロックに等しく分割される。ここで,NはACK/NAKフィードバックペイロードサイズ
-各ACK/NAKブロックは,11ビット以下
-各ACK/NAKブロックは,Rel-8 RM(32,O)符号化で符号化され,最後の8行がパンクチャされる
-各ACK/NAKブロックは,12個のQPSKシンボルに変調される
-2つのACK/NAKブロックから択一的に収集された24個のQPSKシンボルが2つのスロットで送信される
(図は省略) )

上記(8)の記載によれば,ACK/NAKビットは,長さceil(N/2)と長さN-ceil(N/2)の2つのACK/NAKブロックに等しく分割され,各ACK/NAKブロックはRel-8 RM(32,O)符号化で符号化されるのであるから,「ACK/NACKビットをほぼ同じ長さの2つの部分に区分してそれぞれ(32,O)RM符号化を行う。」ことは周知である(以下,「周知技術3」という。)。
また,例えば上記(8)の図の「Re1-8 (32,O)RM Coding with truncation」からの12 QPSK symbolsは,slot 0 のDFTとslot 1 のDFTとに交互方式で配置されることにより分割されていることが見てとれるように,一般に,複数のビットからなるビット列をほぼ同じ長さの2つの部分に分割する場合,ビット列の前半と後半とに分割する,ビット列の各ビットを交互方式で分割する等々の種々の手法が慣用されていることは,技術常識である。


3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,

引用発明の「LTE-A TDD」は,本願発明の「時分割二重(TDD)通信システム」に含まれ,また,引用発明の「UL A/Nフィードバック」は,ユーザ端末(UE)が基地局に送信するものであることは技術常識であり,また,引用発明の「A/Nビットを符号化する」は,本願発明の「受信確認情報ビットをエンコーディングする」と同義である。
したがって,両者は,「時分割二重(TDD)通信システムにおけるユーザ端末(UE)が基地局に送信するための受信確認情報ビットをエンコーディングする方法」である点で共通している。

引用発明の「複数のDLサブフレーム」,「DL CC」は,明らかにそれぞれ本願発明の「複数のサブフレーム」,「UEに対して構成される複数のセル」に相当する。

引用発明の「A/Nペイロード」を「第1のコードワード」と称することは任意であるから,本願発明の「前記複数のセルのそれぞれに対する複数の前記サブフレームに対応する受信確認情報ビットをセルインデックス値の昇順に配列して第1のコードワードを生成するステップ」と,引用発明の「複数のDL CCのそれぞれに対する複数の前記DLサブフレームに対応するA/Nビットを多重化してA/Nペイロードを生成し」とは,以下の相違点2は別として,「前記複数のセルのそれぞれに対する複数の前記サブフレームに対応する受信確認情報ビットを配列して第1のコードワードを生成するステップ」の点で一致している。

引用発明の「A/Nペイロードサイズ」は,本願発明の「受信確認情報ビットの総ビット数」に相当するから,引用発明の「A/Nペイロードサイズが11ビットより小さいか又は同一である場合に前記A/Nペイロードを(32,O)RM符号を用いて符号化し」は,本願発明の「前記受信確認情報ビットの総ビット数が所定値より少ないか又は同一である場合に前記第1のコードワードをエンコーディングするステップ」に相当する。

引用発明の「分割されることにより形成された部分」を,それぞれ「第2のコードワード」,「第3のコードワード」と称することは任意である。また,引用発明の「20ビット」は,時間領域又はCC領域のいずれかで行う部分的なバンドリングを避ける上限の値であり,当該値が「提案」とされていること(上記2(1)の第3段落参照。)に照らせば,「定められた上限値」といえる。
したがって,本願発明の「前記受信確認情報ビットの総ビット数が前記所定値より大きく,定められた上限値より小さいか又は同一である場合に,前記第1のコードワードからの受信確認情報ビットを,第2のコードワード及び第3のコードワードに交互方式で配置し,前記第2のコードワード及び前記第3のコードワードをエンコーディングするステップ」と,引用発明の「前記A/Nペイロードサイズが11ビットより大きく,20ビットより小さいか又は同一である場合に,前記A/NペイロードからのA/Nビットを,2つの部分に分割し,分割されることにより形成された部分をそれぞれ(32,O)RM符号を用いて符号化する」とは,以下の相違点3は別として,「前記受信確認情報ビットの総ビット数が前記所定値より大きく,定められた上限値より小さいか又は同一である場合に,前記第1のコードワードからの受信確認情報ビットを,第2のコードワード及び第3のコードワードに配置し,前記第2のコードワード及び前記第3のコードワードをエンコーディングするステップ」の点で一致している。

したがって,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。
(一致点)
「時分割二重(TDD)通信システムにおけるユーザ端末(UE)が基地局に送信するための受信確認情報ビットをエンコーディングする方法であって,
複数のサブフレームのそれぞれ及び前記UEに対して構成される複数のセルのそれぞれに対して前記受信確認情報ビットを生成するステップと,
前記複数のセルのそれぞれに対する複数の前記サブフレームに対応する受信確認情報ビットを配列して第1のコードワードを生成するステップと,
前記受信確認情報ビットの総ビット数が所定値より少ないか又は同一である場合に前記第1のコードワードをエンコーディングするステップと,
前記受信確認情報ビットの総ビット数が前記所定値より大きく,定められた上限値より小さいか又は同一である場合に,前記第1のコードワードからの受信確認情報ビットを,第2のコードワード及び第3のコードワードに配置し,前記第2のコードワード及び前記第3のコードワードをエンコーディングするステップと
を有することを特徴とするエンコーディング方法。」


(相違点1)
一致点の「複数のサブフレームのそれぞれ及び前記UEに対して構成される複数のセルのそれぞれに対して前記受信確認情報ビットを生成するステップ」に関連して,本願発明は「1つのサブフレームでの1つの受信確認情報ビットは,1つのデータ送信ブロック(TB)を送信する送信モード(TM)で構成されるそれぞれのセルに対して生成され,1つのサブフレームでの2つの受信確認情報ビットは,2つのデータTBを送信するTMで構成されるそれぞれのセルに対して生成され」との発明特定事項を有するのに対し,引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点2)
一致点の「受信確認情報ビットを配列して第1のコードワードを生成する」に関して,本願発明は「受信確認情報ビットをセルインデックス値の昇順に配列して」第1のコードワードを生成するのに対し,引用発明はどのようにA/Nビットを多重化してA/Nペイロードを生成するのか明らかにしていない点。

(相違点3)
一致点の「前記第1のコードワードからの受信確認情報ビットを,第2のコードワード及び第3のコードワードに配置し」に関し,本願発明は「・・・第2のコードワード及び第3のコードワードに交互方式で配置」するのに対し,引用発明はどのように「2つの部分に分割」するのか明らかにしていない点。

上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
周知技術1に関して前述したとおり,空間バンドリングはMIMOにより複数のTB(コードワード)が存在する場合になされることは技術常識であり,周知技術1のとおり,「キャリアアグリゲーションにおいてMIMOが採用されるセルとそうでないセルとが存在する。」ことも周知である。
そして,引用発明は,空間バンドリングされる場合は2つのA/Nビットが生成されるものであるから,「1つのサブフレームでの1つの受信確認情報ビットは,1つのデータ送信ブロック(TB)を送信する送信モード(TM)で構成されるそれぞれのセルに対して生成され,1つのサブフレームでの2つの受信確認情報ビットは,2つのデータTBを送信するTMで構成されるそれぞれのセルに対して生成され」ることが想定されていると解するのが自然であり,また,そうすることは当業者にとって容易である。

(相違点2について)
周知技術2に関して前述したとおり,複数の単位に関する情報を多重化する場合,どの情報がどの単位に対応するかが適切に識別される必要があり,そのために,どのように多重化がなされたか(すなわち,多重化の規則。)について送信側と受信側とで共通の認識がなされている必要があることは当然のことである。
そして,多重化の規則としては種々のものあり得るところ,周知技術2のとおり,「各セルに関する情報をセルインデックスの昇順に配列して多重化する。」ことも周知であり,どのように多重化するかは設計上の選択事項に過ぎない。
したがって,引用発明において,多重化するA/NビットをDL CCのセルインデックス値の昇順に配列してA/Nペイロードを生成するようにすることは,当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

(相違点3について)
周知技術3のとおり,「ACK/NACKビットをほぼ同じ長さの2つの部分に区分してそれぞれ(32,O)RM符号化を行うこと。」は周知であり,周知技術3に関して前述したとおり,一般に,複数のビットからなるビット列をほぼ同じ長さの2つの部分に分割する場合,ビット列の前半と後半とに分割する,ビット列の各ビットを交互方式で分割する等々の種々の手法が慣用されていることは,技術常識である。してみると,引用発明において,A/NペイロードからのA/Nビットを交互方式で2つの部分に分割するようにすることは,格別困難なことではない。
ここで,本願明細書の【0084】をみても,2つのコードワード間の同一でないコード率の防止は,ほぼ同じ長さの2つの部分に分割することにより達成され得るものであって,その分割手法が交互方式に限定されるものではないことは,その技術的因果関係に照らして当業者に自明である。
したがって,相違点3は,当業者が適宜なし得ることに過ぎない。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。


4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-01 
結審通知日 2017-09-04 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2013-537610(P2013-537610)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊地 陽一和平 悠希廣川 浩  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
菅原 道晴
発明の名称 ダウンリンクキャリアアグリゲーションを有するTDDシステムにおけるHARQ-ACK送信をコーディングする方法及び装置  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  

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