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審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 一部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1337013
異議申立番号 異議2017-700574  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-07 
確定日 2017-12-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6044698号発明「易接着フィルムおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6044698号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認める。 特許第6044698号の請求項1及び5に係る特許を維持する。 特許第6044698号の請求項2に係る特許についての特許異議の申し立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6044698号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成24年6月8日に出願した特願2012-130663号の一部を平成27年11月20日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月25日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数5)がされ、その後、その特許に対し、平成29年6月7日に特許異議申立人 内野 房子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2及び5)がされ、当審において同年7月31日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年9月29日付け(受理日:同年10月2日)で特許権者 東洋紡株式会社より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年10月4日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされたが、特許異議申立人からは応答がされなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成29年9月29日付け(受理日:同年10月2日)でされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記塗布層が色素および界面活性剤を含有し、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、」とあるのを「前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の易接着フィルム。」とあるのを「塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の易接着フィルム。」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「(1)少なくとも色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程」とあるのを「(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程」と訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【0009】に「前記塗布層が色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布、乾燥して形成され、」とあるのを「前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布、乾燥して形成され、」と訂正する。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の【0010】に「即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が色素および界面活性剤を含有し、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
2. 界面活性剤がシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする上記第1に記載の易接着フィルム。
3. 界面活性剤が水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤であることを特徴とする上記第1また第2に記載の易接着フィルム。
4. 塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、架橋剤を含有することを特徴とする上記第1?第3のいずれかに記載の易接着フィルム。
5. 透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であり、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくとも色素および界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」とあるのを「即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
2. (削除)
3. (削除)
4. 塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする上記第1に記載の易接着フィルム。
5. 透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であり、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」と訂正する。

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の【0012】に「(ポリエステルフィルム基材)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン?2,6?ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6?ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。」とあるのを「(ポリエステルフィルム基材)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。」と訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の【0044】に「該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、N?プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N?ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2?メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸N?ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。」とあるのを「該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸N-ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。」と訂正する。

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の【0065】に「真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネ?ション法等の通常の成形法を利用し、」とあるのを「真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、」と訂正する。

(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の【0066】に「ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4?フッ化エチレン?パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4?フッ化エチレン?6?フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2?エチレン?4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3?フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。」とあるのを「ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4-フッ化エチレン-パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4-フッ化エチレン-6-フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2-エチレン-4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3-フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件等

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における塗布層の含有物を「ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂」に限定し、訂正前の請求項1に係る発明における界面活性剤を「シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、訂正前の請求項2及び3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2及び3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2及び3によって請求項2及び3を削除したことに伴い、請求項4における引用関係を整理する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明における塗工液の含有物をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項6及び7について
訂正事項6及び7は、訂正事項1ないし5により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6及び7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項6及び7は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、請求項1ないし5について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。

(6)訂正事項8ないし11について
訂正事項8ないし11は、いずれも、いわゆる文字化けにより生じた「?」という記載を「-」又は「ー」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項8ないし11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項8ないし11は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、請求項1ないし5について行うものであり、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われている。

(7)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし4は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし4は、一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、請求項1ないし4を包含する請求項1ないし5についてされたものである。
したがって、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1ないし4については、一群の請求項ごとに請求されたものである。

(8)独立特許要件
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1、2及び5に対してされているので、訂正後の請求項1及び5に係る発明については、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
他方、訂正後の請求項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされた訂正後の請求項1を引用するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされたものである。そして、訂正前の請求項4は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、訂正後の請求項4に係る発明については、訂正を認める要件として上記独立特許要件が課せられる。
そこで、訂正後の請求項4に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

訂正後の請求項4は、訂正後の請求項1を引用するものであるから、まず、訂正後の請求項1に係る発明について検討する。
訂正後の請求項1に係る発明は、下記第3 1の【請求項1】に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、下記第3 2及び3のとおり、訂正後の請求項1に係る発明は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由により特許を受けることができないものではない。
他方、訂正後の請求項4に係る発明は、下記第3 1の【請求項4】に記載された事項により特定されるとおりのものであり、訂正後の請求項1を引用するものであって、訂正後の請求項1に係る発明を、「架橋剤を含有する」という発明特定事項により、さらに限定するものである。そして、「架橋剤を含有する」という発明特定事項については、本件特許の発明の詳細な説明に詳細に記載され、その実施例も記載されていることから、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由により特許を受けることができないものではない。
また、他に訂正後の請求項4に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。
したがって、訂正後の請求項4に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3 訂正の適否についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1ないし11は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1、2又は3号に掲げる事項を目的とするものである。
また、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、本件訂正の請求は、明細書の訂正に係る請求項の全てについて行われており、訂正事項1ないし11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正後の特許請求の範囲の請求項4に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4ないし6項及び同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕及び5について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、平成29年9月29日付け(受理日:同年10月2日)で提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の易接着フィルム。
【請求項5】
透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であって、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程」

2 取消理由について
(1)取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。

(理由1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(理由2)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

なお、該取消理由は、訂正前の本件特許の請求項1、2及び5に係る発明に対して通知されたものである。

(2)取消理由についての判断
ア 理由1について
(ア)サポート要件
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本件特許発明に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かを検討する。

(イ)発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明の【0008】等の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「接着層を設ける工程上で欠点の把握が容易であり、かつ良好なコート外観と経時での密着性を両立した易接着フィルムを提供する」ことである。

(ウ)検討
本件特許の発明の詳細な説明の【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0038】、【0052】、【0055】、【0067】ないし【0126】、【0145】及び【0146】等の記載によると、樹脂として、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤を含有する易接着フィルムは、本件特許の発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
そして、本件特許発明1及び5は、樹脂として、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂を含有し、界面活性剤として、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤を含有することを、発明特定事項として有するものである。
したがって、本件特許発明1及び5に関して、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるので、特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合する。

イ 理由2について
(ア)実施可能要件
物の発明について、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載を要する。
また、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用することができる程度の記載を要する。
そこで、本件特許発明1及び5に関して、発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件に適合するか否かを検討する。

(イ)検討
本件特許の発明の詳細な説明(特に、【0030】、【0031】、【0033】、【0034】、【0038】、【0052】、【0055】、【0067】ないし【0126】、【0145】及び【0146】等を参照。)には、本件特許発明1及び5の個々の発明特定事項について詳細に記載されており、その具体的な実施例も記載されている。
したがって、本件特許発明1に関して、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度に記載されているといえるし、また、本件特許発明5に関して、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用することができる程度に記載されているといえるので、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。

ウ 取消理由についての判断のむすび
以上のとおり、取消理由に関して、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。

3 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について
(1)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要
平成29年6月7日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の内、取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。

訂正前の本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
訂正前の本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである。
訂正前の本件特許の請求項2及び5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、訂正前の本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2012-4487号公報
甲第2号証:特開2011-146659号公報

(2)取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由についての判断
そこで、検討するに、本件特許発明1及び5は、いずれも、「塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下」という発明特定事項を少なくとも有するものであるが、該発明特定事項は、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1及び5は、いずれも、本件特許の発明の詳細な説明の【0147】の記載によると、「本発明の易接着フィルムを太陽電池バックシート部材として使用した場合、バックシートと封止材の接着面にコート欠点起因の密着不良を防止できるため、長期間に渡って封止材との密着性を保持することにより太陽電池モジュールの長寿命化に寄与することが出来る。また、該易接着フィルムを長期間保管しても封止材との密着性が良好であるため、バックシートの保管期間によらず安定的な太陽電池モジュールの作成が可能となり、産業界に寄与することが大である。」という甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明からみて格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証のいずれかに記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
また、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
さらに、本件特許発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由に関して、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項2は、訂正により削除されたため、請求項2に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
易接着フィルムおよびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着フィルムに関する。詳しくは、太陽電池用バックシートに使用した際に優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油エネルギーに代わる、エネルギー手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムであり、太陽電池素子として、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体や、化合物系、あるいは有機物系色素など使用されている。最近では、原料、生産に要するエネルギーやコストを削減させるためにシリコンの厚みを薄くした薄膜太陽電池素子の割合が増加してきている。このような太陽電池素子単体を一般的に数枚?数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年以上)に亘って素子を保護するため種々のパーケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼ぶ。
【0003】
ここで、太陽電池モジュールは、一般的に太陽光が当たる面をガラスで覆い、太陽電子素子を封止材で間隙を埋め、裏面をバックシートと呼ばれる耐熱、耐候性プラスチック材料などの複数の層構成からなる保護シートで保護された構成になっている。太陽電池素子を充填する封止材としてはエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、EVA)やポリビニルブチラール樹脂(以下、PVB)などのオレフィン系樹脂が用いられる。これらの封止材を用い、上記ガラス基板/封止材/太陽電池素子/封止材/バックシートの構成で重ね合わせ、真空ラミネーターなどで加熱圧着することによりモジュールが作製される。封止材には、太陽電池素子を接着固定するとともに、外部からの湿気の侵入を防ぎ、太陽電池素子を保護する役割がある。
【0004】
太陽電池用バックシートとしては、太陽電池素子側(封止材側)からポリエステルフィルム/接着剤/ポリエステルフィルム(着色)/金属、または、金属酸化物系薄膜層(防湿層)/接着剤/フッ素フィルム(防汚層)などの積層構成を有したものが提案されている。従来太陽電池素子としてアモルファスシリコンを使用した太陽電池モジュールでは封止材側のポリエステルフィルムには黒色ポリエステルフィルムが用いられている(特許文献1参照)。これは温度上昇による出力低下が小さく、むしろ高温保持により出力が増加することが期待ほか、太陽電池素子とバックシートが黒色で統一されるため、意匠性にすぐれるためである。
【0005】
このようなバックシートには太陽電池素子を外部の湿気や汚染から長期にわたり、保護する役目がある。そのため、封止材と直接的に接する太陽電池素子側の黒色ポリエステルフィルムと封止材との接着性は重要である。しかしながら、表面未処理の黒色ポリエステルフィルムでは、十分な接着性が得られず、改善することが求められている。ポリエステルフィルムと封止材との接着性を改善させる方法として、樹脂や架橋剤を含む接着層を設けることが提案されている(特許文献1?3参照)。
【0006】
しかし、これらの方策で黒色ポリエステルフィルムに接着層を設ける場合、接着層を設ける工程においてコート抜けやハジキが発生した場合に発見が困難であるという問題があった。このようなコート抜けやハジキは封止材との接着工程において接着不良の原因となり、結果として太陽電池モジュールを長期に渡って使用した場合に発電効率が大幅に低下することになり、問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-152013号公報
【特許文献2】特開2006-332091号公報
【特許文献3】特開2007-136911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、接着層を設ける工程上で欠点の把握が容易であり、かつ良好なコート外観と経時での密着性を両立した易接着フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、透光性のポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布、乾燥して形成され、かつ前記塗布層の水接触角を80°以上100°以下、塗布層形成後のOD値を1.0以上4.0以下に調整することにより、太陽電池モジュールの劣化要因となりうる塗布層の欠点を工程上で容易に把握でき、かつコート外観と封止材との密着性を両立し、さらに長期間保管後にも界面活性剤のブリードアウトによる封止材との密着性の劣化を抑止することができる易接着フィルムを提供できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. 透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
2. (削除)
3. (削除)
4. 塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする上記第1に記載の易接着フィルム。
5. 透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であり、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明の易接着フィルムは、接着層を設ける工程上で欠点の把握が容易であり、かつ良好なコート外観と経時での封止材との密着性を両立する。本発明の好ましい実施態様としては、本発明の易接着フィルムを太陽電池バックシート部材として使用した場合、バックシートと封止材との接着面についてコート欠点や封止剤の濡れ不良による密着不良を防止でき、長期間に渡って封止材との密着性を保持することにより太陽電池モジュールの長寿命化に寄与することが出来る。また、該易接着フィルムを長期間保管しても封止材との密着性が良好であるため、バックシートの保管期間によらず安定的な太陽電池モジュールの作成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(ポリエステルフィルム基材)
本発明で基材を構成するポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、および共重合成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分や、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分などを共重合したポリエステル樹脂などを用いることができる。
【0013】
本発明で好適に用いられるポリエステル樹脂は、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とする。これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステルフィルムは二軸延伸することで耐薬品性、耐熱性、機械的強度などを向上させることができる。
【0014】
また、これらのポリエステルフィルムは酸による加水分解を防ぐためにカルボキシル末端濃度を低く抑えたり、劣化がある程度進んでも機械的特性を大きく劣化させないために分子量が比較的高いポリエステルを使用するなど、耐加水分解性を高いものを使用することができる。耐加水分解性を高めたポリエステルフィルムを基材として使用することにより、長期間に渡って封止材との密着性をさらに向上させることも可能である。
【0015】
また本発明におけるポリエステルフィルム基材は、単層のポリエステルフィルムであっても良いし、最外層と中心層を有する、少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであっても良い。
【0016】
これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、粒子、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
最外層に含まれる粒子の種類は、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。これらの不活性な無機粒子は、いずれか一種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記の粒子は、平均粒子径が0.1?3.5μmであることが好ましい。前記平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、0.8μmがさらに好ましく、1.0μmが特に好ましい。また、前記平均粒子の上限は、3.0μmであることがより好ましく、2.8μmであることがよりさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm未満では十分なハンドリング性が得づらくなりあまり好ましくない。3.5μmを超えると粗大突起が生成しやすくあまり好ましくない。
【0019】
また、これらの粒子は多孔質粒子、特に多孔質シリカが好ましい。多孔質粒子はフィルム製膜工程での延伸時に扁平型に変型しやすく、透明性の低下が小さいため、好ましい。
【0020】
最外層の無機粒子の含有量は最外層を構成するポリエステルに対し、0.01?0.20質量%であることが好ましい。前記濃度の下限は、0.02質量%がより好ましく、0.03質量%がさらに好ましい。また前記濃度の上限は、0.15質量%がより好ましく、0.10質量%がさらに好ましい。0.01質量%未満では十分なハンドリング性が得づらくあまり好ましくない。0.2質量%を超えると透明性が低下し、あまり好ましくない。
【0021】
前記粒子の平均粒子径の測定は下記方法によって求めることができる。
粒子を電子顕微鏡または光学顕微鏡で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2?5mmとなるような倍率で、300?500個の粒子の最大径(多孔質シリカの場合は凝集体の粒径)を測定し、その平均値を平均粒子径とする。また、積層フィルムの被覆層中の粒子の平均粒子径を求める場合は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で積層フィルムの断面を撮影し、粒子の最大径を求めることができる。
【0022】
ポリエステルに上記粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0023】
本発明の基材となるポリエステルフィルム基材の厚みは20?500μmであり、より好ましくは25?450μmであり、さらに好ましくは30?300μmである。20μm未満の基材厚みでは、熱収縮の影響が大きく、高温高湿処理後の接着性が低下する場合がありあまり好ましくない。500μmを超えて厚いと、ロールとして巻き取りが困難になりあまり好ましくない。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルム基材は透光性であることが好ましい。本発明において、透光性とは、全光線透過率が80%以上のことである。全光線透過率が低く、フィルム自体が黒色や白色等に着色している場合は塗布層の製造工程において微小なコート抜けやハジキを検知することが困難となり好ましくない。長期間の密着性を必要とする太陽電池用途では、このような微小な欠点が製品の長期安定性に影響を与えることから、製造工程中での透過光による外観検査が可能なポリエステルフィルム基材を使用することが望ましい。
【0025】
(塗布層)
本発明において易接着フィルムは、少なくとも色素と界面活性剤を含有する塗布層を有するものである。
【0026】
本発明における色素は後述する樹脂中に均等に分散し、隠蔽性を発現することが求められる。したがって、本発明おける色素としては後述する樹脂及び溶媒に容易に分散する1種類以上の染料または顔料であることが望ましい。
【0027】
色素は特に限定されず、公知のものを使用することができる。顔料としては例えば酸化チタン系、酸化鉄系、複合酸化物系等の金属酸化物;それ以外であるクロム酸塩系、硫化物系、ケイ酸塩系、炭酸塩系、フェロシアン化物、カーボンブラック等の金属酸化物以外の無機顔料;溶性アゾ系、不溶性アゾ系(モノアゾ、ジスアゾ)等のアゾ化合物;縮合アゾ系金属錯塩アゾ系、ベンズイミダゾロン系、多環系であるフタロシアニン系、アントラキノン系、インジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、金属錯塩系、メチン・アゾメチン系、ジケトピロロピロール系からなる有機顔料が挙げられる。
【0028】
染料としてはナフトール染料、アゾ染料、金属錯塩染料、アジン染料(ニグロシン染料)、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、カーボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料などが挙げられる。
【0029】
塗布層における色素の量は、後述の樹脂に対し10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。樹脂中の色素の量が少ない場合には、目的とする隠蔽性を達成するために塗布層の塗工量を増やす必要があり、十分な乾燥をしようとすれば高温及び/又は長時間にする必要があり、基材の平面性不良などが起こりやすくなる。逆に、樹脂中の色素の量が多い場合には、過剰な色素により塗膜の強度が低下したり、樹脂中に含有し切れなかった色素が表面に残留して外観が損なわれたりする。
【0030】
本発明において、塗布層は、色素、樹脂、および有機溶媒を含む塗工液を、透明基材上に塗布、乾燥させて形成される。この際に、前記塗工液中に界面活性剤を含有させることが特に好ましい。界面活性剤を含有させることにより、塗布層の塗工外観、特に、微小な泡によるヌケ、異物等の付着より凹み、乾燥工程でのハジキが改善される。
【0031】
界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の公知のものを好適に使用できるが、界面活性能に優れるシリコーン系界面活性剤を使用し、結果として水接触角値の高い塗膜を得ることが塗布層の塗工外観を向上させることが好ましい。
【0032】
一方で、このような高い水接触角値を有する塗布層に対しては封止剤を密着させる際に工程中に部分的に溶融した封止剤が塗布層に十分に濡れ広がることができず、結果として良好な接着界面が得られないため、密着力が著しく低下することが問題となっていた。
【0033】
そこで発明者らは鋭意検討を重ね、界面活性剤を添加する際には最終的に形成された塗布層の水接触角が80°以上100°以下、より好ましくは85°以上97.5°以下、さらに好ましくは90°以上95°以下に制御することで塗布層の塗工外観と封止剤の密着性とを両立できることを見出した。水接触角が80°未満の場合は、コート層に抜けやハジキ、柚子肌等の欠点が生じるため好ましくない。また、水接触角が100°以上の場合は封止材との密着性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0034】
また、一般的に界面活性剤は分子量が低いため塗布層内部に留まらず、経時で塗布層表面に析出することが知られている。そのため、塗布層表面の水接触角が、析出した界面活性剤により経時的に上昇し、封止剤との密着性に悪影響を与える可能性がある。
【0035】
そこで発明者らはさらに検討を重ね、シリコーン界面活性剤の中でも分子中に水酸基を有する変性シリコーン系界面活性剤を使用することが特に好ましいことを見出した。該界面活性剤を使用することによって、優れた塗工外観と長期間放置後の封止材との密着性を両立することができる。このメカニズムについては明確ではないが、界面活性剤中の水酸基が塗布層中の色素と水素結合し、界面活性剤が経時で塗布層表面にブリードアウトすることを抑制するものと推測される。
【0036】
シリコーン系界面活性剤としては、
TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(以上モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)、KP-321、KP-323、KP-324、KP-326、KP-340、KP-341(以上信越化学工業社製)、L-7001、L-7002、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、L-7604、FZ-2110、FZ-2105、67 ADDITIVE、8616 ADDITIVE、3 ADDITIVE、56 ADDITIVE(以上東レダウコーニング社製)、ディスパロン(登録商標)1711、ディスパロン1751N、ディスパロン1761、ディスパロンLHP-91、ディスパロンLHP-96(以上楠本化成社製)、BYK(登録商標)-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-342、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-371、BYK-378、BYK-3455(以上ビックケミー社製)、
などを例示することができ、また水酸基を有する変性シリコーン系界面活性剤としてはXF42-B0970(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製)、SF-8428(東レダウコーニング社製)、BYK-370、BYK-375、BYK-377(以上ビックケミー社製)
などを例示することができ、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
水酸基を有する変性シリコーン系界面活性剤を用いる場合、乾燥後の塗布層質量に対して、0.1質量%以上あれば、優れた塗工外観と長期間放置後の封止材との密着性の効果を得ることが可能となる。より好ましくは0.2質量%以上である。また水接触角を所望の範囲に調節することもできる。しかしながら、あまりに含有率が大きすぎると水接触角が大きくなりすぎる場合があるので4質量%以下でよい。より好ましくは2質量%以下である。
【0038】
本発明における樹脂としては、公知のものを使用することができる。中でもポリエステルフィルム基材への密着性に優れるポリエステル系樹脂か、ポリエステルポリウレタン樹脂が好ましい。
【0039】
また、塗布層の耐候性を向上させるために架橋構造を取り入れることが望ましい。このとき架橋構造は樹脂自体の一部に架橋性を有する官能基を設けてもよく、樹脂とは別に架橋性を有する官能基を含有した架橋剤を添加してもよい。架橋構造の元となる官能基としては、例えばイソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基など公知なものが挙げられる。
【0040】
架橋剤を添加する場合の含有率は、架橋剤の種類にもよるが、塗布層を構成する樹脂の固形分質量に対する架橋剤の固形分の質量比率として、20質量%以上200質量%以下が好ましく、50質量%以上170質量%以下が更に好ましい。
【0041】
塗布層の透過OD値は1.0以上4.0以下、より好ましくは2.0以上3.0以下であることが好ましい。透過OD値が1.0未満の場合は太陽電池用バックシート用部材として使用する際に隠蔽性が得づらく、太陽電池モジュールの発電効率や意匠性が劣るため、好ましくない。また、透過OD値が4.0を超える場合は色素を大量に使うためにコスト面で不利であるだけでなく、良好な分散状態を得るために界面活性剤を大量に添加する必要があり、ブリードアウトの要因となりうるため、好ましくない。
【0042】
本発明おける塗布層には、表面に凹凸を形成させて滑り性やハンドリング性を改善する目的で、各種の粒子を含有させてもよい。塗布層中に含有させる粒子としては、例えば、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、スチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の有機粒子が挙げられる。
【0043】
本発明において、塗布層は、樹脂、色素、界面活性剤を含む塗工液を透明基材上に塗布・乾燥することにより積層されることが好ましい。該塗工液は、塗工性より有機溶媒により希釈することが必要である。
【0044】
該有機溶媒としては、(1)メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類、(2)エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類、(3)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチレンエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート等のグリコールエーテル類、(4)酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸N-ブチル等のエステル類、(5)アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類、を例示することができ、これら単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
好ましくは、色素の溶解性に優れるケトン類を、塗工液に使用する全有機溶媒に対し、30質量%以上80質量%以下含有させる。その他の有機溶媒は、レベリング性、乾燥性を考慮して選定することが好ましい。また、有機溶媒の沸点は、60℃以上180℃以下が好ましい。沸点が60℃未満に低い場合には、塗工中に塗工液の固形分濃度が変化し、塗工厚みが安定化しにくくあまり好ましくない。逆に、沸点が180℃を超えて高い場合には、塗膜中に残存する有機溶媒量が増え、経時安定性において好ましくない。
【0046】
塗工液中にコンタミや1μm以上の未溶解物が存在した場合、塗布後の外観が不良になりやすいため、塗布する前に、フィルター等で除去することが好ましい。フィルターとして、各種のものが好適に使用できるが、1μmの大きさのものを99%以上除去できるものを用いることが好ましい。1μm以上のコンタミや未溶解物を含む塗工液を塗布し乾燥した場合には、その周囲に凹み等が発生し、100?1000μmサイズの欠点になる場合があり好ましくない。
【0047】
塗工液中に含まれる樹脂及び色素等の固形分濃度は、10質量%以上50質量%以下が好ましい。固形分濃度が10質量%未満に低い場合には、塗布後の乾燥に時間が掛かり、生産性が劣るばかりか、塗膜中に残存する溶媒量が増加し、経時安定性の点で好ましくない。逆に、固形分濃度が50質量%を超えて高い場合には、塗工液の粘度が高くなりレベリング性が不足して塗工外観が不良となりやすく好ましくない。塗工液の粘度は、10CPS以上300CPS以下が塗工外観の面で好ましく、この範囲になるように固形分濃度、有機溶媒等を調整することが好ましい。
【0048】
本発明で、塗布層を塗布法により透明基材上に塗布、積層する方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式など通常用いられている方法が適用できる。これらのなかで、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。また、グラビアの直径は、80mm以下であることが好ましい。直径が80mmを超えて大きい場合には流れ方向にうねスジが発生する頻度が増えて好ましくない。
【0049】
塗布層の乾燥後の塗布量は特に限定されないが、下限は1g/m^(2)が好ましい、より好ましくは2g/m^(2)であり、上限は20g/m^(2)が好ましく、より好ましくは10g/m^(2)である。乾燥後の塗布量が少ない場合には、塗布層の隠蔽性が不足しやすくなる。そのため、樹脂中の色素の存在量を増やすと塗膜強度の劣化や色素の析出を引き起こす。逆に、乾燥後の塗布量が多い場合には、塗布層の隠蔽性は十分であるが乾燥が不十分になりやすくなる。一方、乾燥を十分にした場合には基材の平面性が不良となる。
【0050】
透明基材上に塗布された塗工液を乾燥する方法としては、公知の熱風乾燥、赤外線ヒーターの使用等が挙げられるが、乾燥速度が早い熱風乾燥が好ましい。
塗布後の、初期の恒率乾燥の段階では、20℃以上80℃以下で、2m/秒以上30m/秒の熱風を用いて乾燥することが好ましい。初期乾燥を強く行う(熱風温度が80℃を超えて高い、及び/又は、熱風の風量が30m/秒を超えて大きい)場合には、界面活性剤の表面への局在化が起こりにくく耐久性向上や滑り性付与の効果がでにくいだけでなく、泡由来の微小なコートヌケ、微小なハジキ、クラック等の塗膜の微小な欠点が発生しやすくなり好ましくない。逆に、初期乾燥を弱くする(熱風温度が20℃未満に低い、及び/又は、熱風の風量が2m/秒未満に小さい)場合には、外観は良好になるが乾燥時間が掛かりコスト面で問題があるばかりか、ブラッシング等の問題が発生しやすく好ましくない。
【0051】
減率乾燥の工程では、初期乾燥よりも高温し、塗膜中の溶媒を減少させる必要があり、好ましい温度は、120℃以上180℃以下である。特に好ましくは、下限値が140℃であり、上限値は170℃である。温度が120℃未満に低い場合には、塗膜中の溶媒が減少しにくくなり、残留溶媒となって塗膜の経時的な安定性が不十分となりやすく好ましくない。逆に、180℃を超えて高温の場合には、熱シワにより基材の平面性が不良となりやすく好ましくない。また、通過時間としては、5秒以上180秒以下であることが好ましい。時間が5秒未満に短い場合には塗膜中の残留する溶媒が多くなり経時安定性の点で好ましくなく、逆に時間が180秒を超えて長い場合には、生産性が低下するだけでなく、基材に熱シワが発生しやすく好ましくない。通過時間の上限は、生産性と平面性の点から、30秒とすることが特に好ましい。
【0052】
塗工液を塗布から乾燥炉に入るまでの時間については1秒以上10秒以下であることが望ましい。乾燥炉に入るまでの時間が1秒未満である場合は界面活性剤が塗布層中に分散した状態で乾燥されるために、界面活性剤による塗工外観改良効果が得られず、外観の点で好ましくない。また、界面活性剤が完全に表面に全く析出しないままに乾燥されると、水接触角が小さくなる場合があり、あまり好ましくない。一方、10秒を超える場合は塗布層表面に界面活性剤が顕著にブリードアウトし、封止材との密着性が低下しやすく好ましくない。
【0053】
乾燥の最終では、熱風温度を樹脂のガラス転移温度以下にし、フラットの状態で基材の実温を樹脂のガラス転移温度以下にすることが好ましい。ガラス転移温度を超えて高温のままでは乾燥炉を出た場合には、塗工面がロール表面に接触した際に滑りづらく、キズ等が発生しやすくなるだけでなく、カール等が発生する場合があり好ましくない。
【0054】
(易接着フィルム)
本発明において、易接着フィルムの透過OD値が1.0以上4.0以下、より好ましくは2.0以上3.0以下であることが好ましい。OD値は、易接着フィルムの塗布層中の色素密度や塗布層の厚さにより調整が可能である。
【0055】
本発明において、易接着フィルムの表面の水接触角が80°以上100°以下であることが好ましい。調整する方法としては、塗布層に使用する界面活性剤の種類や添加量の変更や、塗布層形成時の乾燥条件の調整により可能である。
【0056】
また、易接着フィルムには直径が300μm以上、より好ましくは100μm以上のサイズの欠点が存在しないことが望ましい。上記サイズの欠点が存在すると、封止材と密着させる際に密着不良となり、経時で封止材と易接着フィルムとの間が剥離し、その隙間から水分等が浸入し太陽電池モジュールの発電効率を著しく低下させる要因となるので好ましくない。
【0057】
本発明における易接着フィルムとは、太陽電池モジュールに用いられる封止材との高い密着性を有するフィルムのことである。封止材としては例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)を使用した樹脂シートが挙げられる。特に太陽電池用途としてはEVAシートが用いられることが多く、易接着フィルムとしてもEVAシートとの易接着性が求められる。
【0058】
EVAシートとの密着力は高いほど好ましく、具体的には50N/20mm以上、より好ましくは75N/20mm以上、さらに好ましくは100N/20mm以上であることが望ましい。密着力が50N/20mm未満の場合には、太陽電池用バックシートの部材として使用した際にEVAシートとの間に剥れが生じ、その隙間から水分等が浸入し太陽電池モジュールの発電効率を著しく低下させる要因となり好ましくない。なお、上限に関しては特に設定されないが、基材フィルムとEVAシートの凝集破壊により、150N/20mm程度が実際の測定限界である。
【0059】
また易接着フィルムは、長期保管後もEVAシートとの密着力を維持することが望ましい。長期保管後のEVAシートとの密着力は高いほうが好ましく、具体的には50N/20mm以上、より好ましくは75N/20mm以上、さらに好ましくは100N/20mm以上であることが望ましい。長期保管後のEVAシートとの密着力が50N/20mm未満の場合には、太陽電池用バックシート製造工程中に易接着フィルムの密着性が阻害される可能性があり、その結果太陽電池用バックシートの部材として使用した際にEVAシートとの間に剥れが生じ、その隙間から水分等が浸入し太陽電池モジュールの発電効率を著しく低下させる要因となるので好ましくない。なお、上限に関しては特に設定されないが、基材フィルムとEVAシートの凝集破壊により、150N/20mm程度が実際の測定限界である。
【0060】
なお、本発明における長期保管とは、易接着フィルムを製造後、次工程の加工を行うまでの間にロール状で保管されることを意味する。本発明ではこの状態の再現のため、85℃85%条件の恒温恒湿器にて促進評価することで長期保管の指針とした。この条件においては1000時間の保管が約10年の屋外保管と同程度の条件となることが広く知られており、本発明の易接着フィルムは85℃85%条件で100時間以上、より好ましくは400時間以上シート状で放置した後も封止剤との密着性が維持されることが好ましいとした。
【0061】
また、易接着フィルムはバックシートの部材として10年以上の長期に渡って屋外にて使用されるため、EVAシートと密着させた後の状態で密着性を維持することが望ましい。一般的に長期保管後密着性と同様、85℃85%条件の恒温恒湿器での保管を促進評価とみなし、該条件にて1000時間静置後も密着性が維持されることが好ましい。具体的には50N/20mm以上、より好ましくは75N/20mm以上、さらに好ましくは100N/20mm以上であることが望ましい。85℃85%、1000時間静置後密着力が50N/20mm未満の場合には経時でEVAシートと易接着フィルムとの間が剥離し、その隙間から水分等が浸入し太陽電池モジュールの発電効率を著しく低下させる要因となり好ましくない。なお、上限に関しては特に設定されないが、基材フィルムとEVAシートの凝集破壊により、150N/20mm程度が実際の測定限界である。
【0062】
(バックシート)
本発明の太陽電池用バックシートは易接着フィルムを構成部材とする。特に、封止材と直接的に接する最表層に用いることが好ましい。係る構成により本発明の太陽電池用バックシートは封止材との強固な密着性を奏することができ、長期にわたる過酷な環境下においても良好な密着性を奏する。そのため、太陽電池素子の防湿性保持やバリア性向上に寄与しうる。
【0063】
本発明の太陽電池用バックシートの態様としては、例えば、易接着フィルム/接着剤/金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルム/接着剤/ポリフッ化ビニルフイルム又はポリエステル系高耐久防湿フィルムといった構成が例示される。ここで金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルムとしては、水蒸気バリア性を有するものが好適に用いることができる。
【0064】
前記金属の種類としてはアルミニウム、錫、マグネシウム、銀、ステンレスなどが挙げられるが中でもアルミニウム、銀が比較的高い反射率を有し、工業的に入手しやすいため好適である。金属層は金属箔をして使用しても良いし、ポリエステルフィルム等に薄膜として積層してもよい。これら金属を薄膜として積層する方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることができる。
【0065】
本発明においては易接着フィルム、金属箔又は金属系薄膜層を有するフィルム、ポリフッ化ビニルフイルム又はポリエステル系高耐久防湿フィルムの各層間を、真空吸引等により一体化して加熱圧着するラミネーション法等の通常の成形法を利用し、上記の各層を一体成形体として加熱圧着成形して、太陽電池用バックシートを製造することができる。上記において、各フィルム間の接着性等を高めるために、接着剤を介して積層するのが好ましい。接着剤としては例えば(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、その他等の樹脂をビヒクルの主成分とする加熱溶融型接着剤、溶剤型接着剤、光硬化型接着剤等が挙げられる。
【0066】
ここで、高耐久防湿フィルムとは耐候性を向上させる目的で積層されるものであり、高耐久防湿フィルムとしては、例えばポリテトラフロロエチレン(PTFE)、4-フッ化エチレン-パークロロアルコキシ共重合体(PFA)、4-フッ化エチレン-6?フッ化プロピレン共重合体(FEP)、2-エチレン-4フッ化エチレン共重合体(ETFE)、ポリ3-フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニデン(PVDF)、もしくはポリフッカビニル(PVF)等のフッ素樹脂フィルム、あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等の樹脂に紫外線吸収剤を練り混んだ樹脂組成物からなるフィルムが挙げられる。
【実施例】
【0067】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。また、本発明で使用した特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0068】
(1)OD値
白黒透過濃度計(伊原電子工業性 IHAC-T5)を用い、塗工面側に光が当たるようにして測定した
【0069】
(2)塗工面外観
得られたEVA易接着フィルムの塗工面を電飾BOX(KOKUYO製)上に置き、1m離れた場所から視力1.0?1.5の観察者により目視にて観察し、塗工外観に異常がないかを確認した。下記の基準でランク分けした。
○:目視にて確認できるハジキ個数1個以下/A4サイズ、かつ塗工斑が見られない
△:目視にて確認できるハジキ個数1個以下/A4サイズ、塗工斑が確認できる
×:目視にて確認できるハジキ個数1個以上
【0070】
(3)封止材密着性
得られた易接着フィルムを100mm幅×100mm長、封止材を70mm幅×90mm長に切り出したもの用意し、フィルム(塗工面)/下記記載のEVA/(塗工面)フィルムの構成で重ね、真空ラミネーターで下記記載の接着条件で加熱圧着し、サンプルを作成した。作成したサンプルを20mm幅×100mm長に切り出した後、SUS板に貼りつけ、下記記載の条件で引張り試験機でフィルム層とEVA層の剥離強度を測定した。剥離強度は極大点を越えた後に安定して剥離している部分の平均値として求めた。なお、極大点で破断した場合には極大点の数値を破断強度とした。
【0071】
(サンプル作成条件)
装置:真空ラミネーター エヌ・ピー・シー社製 LM-30×30型
加圧:1気圧
EVA:
サンビック製スタンダードキュアタイプ URTLA PEARL PV(0.4μm)
ラミネート工程:100℃(真空5分、真空加圧5分)
キュア工程:熱処理150℃(常圧45分)
【0072】
(測定条件)
装置:テンシロン 東洋BALDWIN社製 RTM-100
剥離速度:200mm/分
剥離角度:180度
【0073】
(4)長期保管後封止材との密着性
得られた易接着フィルムを、高温高湿槽中で85℃、85%RHの環境下100時間放置した。次いで、易接着フィルムを取りだし、室温常湿で24時間放置した。その後、前記(3)と同様の方法で剥離強度を測定した。
【0074】
(5)耐久評価後封止材との密着性
(3)で得られた易接着フィルム(塗布層面)/EVA/(塗布層面)易接着フィルムの積層体を、高温高湿槽中で85℃、85%RHの環境下1000時間放置した。サンプルを高温高湿槽より取り出したのち、25℃、65%RHの環境下で200時間放置した後、前記(3)と同様の方法で剥離強度を測定した。
【0075】
(6)水接触角
水接触角の測定は、協和界面化学株式会社製接触角計 CA-X型を用いてJIS-R3257の静滴法に準じ測定した。具体的には温度23℃ 湿度50%RHの環境下で、得られた易接着フィルムの試料片を塗布層面を上にして水平に置き、水、またはヨウ化メチレンで各N=5回測定した接触角の平均値を各溶媒の接触角とした。尚、水の接触角を求める際、滴下量を1.8μLとし1分間静置後の接触角を読み取った。
【0076】
(7) 基材フィルムの全光線透過率
基材となるポリエステルフィルムについて、ヘイズメーター(東京電色工業社製、モデルTC-H3DP)を用いてJIS-K7136に即し全光線透過率を測定した。
【0077】
(実施例1)
ポリエステルフィルムE5100-50(東洋紡績製)に下記の塗工液Aを基材フィルムのコロナ処理面上に直径60cmの斜線グラビアを用いてリバースで塗工し、乾燥炉に入るまでの時間を5秒、40℃で5m/秒の熱風で20秒間、150℃で20m/秒の熱風で20秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で10秒間通過させて乾燥し、易接着フィルムを作成した。乾燥後のOD値は2.5であった。
【0078】
(塗布層用の塗工液A)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Aを調整した。
・トルエン 26.85質量%
・メチルエチルケトン 26.8 質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7 質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネート(登録商標)L、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST(登録商標) BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.05質量%
(東レダウコーニング製 57ADDITIVE 固形分濃度:100質量%)
【0079】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。長期保管後密着性が若干劣るものの、実用上は問題ないレベルの封止材との密着性を有する易接着フィルムを得ることができた。
【0080】
(実施例2)
下記の塗工液Bを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0081】
(塗布層用の塗工液B)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Bを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.7質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0082】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0083】
(実施例3)
下記の塗工液Cを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0084】
(塗布層用の塗工液C)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Cを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.8質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.1質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0085】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0086】
(実施例4)
下記の塗工液Dを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0087】
(塗布層用の塗工液D)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Dを調整した。
・トルエン 26.4質量%
・メチルエチルケトン 26.3質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 1.0質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0088】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0089】
(実施例5)
下記の塗工液Eを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0090】
(塗布層用の塗工液E)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Eを調整した。
・トルエン 28.8質量%
・メチルエチルケトン 28.7質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 3.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0091】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0092】
(実施例6)
下記の塗工液Fを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0093】
(塗布層用の塗工液F)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Fを調整した。
・トルエン 25.3質量%
・メチルエチルケトン 25.2質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 10.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0094】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0095】
(実施例7)
下記の塗工液を実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0096】
(塗布層用の塗工液G)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Gを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.7質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-375 固形分濃度:25質量%)
【0097】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0098】
(実施例8)
下記の塗工液を実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0099】
(塗布層用の塗工液H)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Hを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.7質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-377 固形分濃度:25質量%)
【0100】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0101】
(実施例9)
下記の塗工液を実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0102】
(塗布層用の塗工液I)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Iを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.7質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・ニグロシン系黒色染料 7.0質量%
(オリエント化学工業製 NUBIAN(登録商標)BLACK NH-805)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0103】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0104】
(実施例10)
下記の塗工液Jを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0105】
(塗布層用の塗工液J)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Jを調整した。
・トルエン 24.4質量%
・メチルエチルケトン 24.3質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・アセチレン系界面活性剤 5.0質量%
(日信化学製 サーフィノール420 固形分濃度:100質量%)
【0106】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。塗膜に塗工斑やハジキが一部見られ、そのため耐久評価後の密着性が若干低下したものの、実用上は問題ないレベルの特性を有する易接着フィルムを得ることができた。
【0107】
(実施例11)
下記の塗工液Kを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0108】
(塗布層用の塗工液K)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Kを調整した。
・トルエン 15.1質量%
・メチルエチルケトン 15.0質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 62.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0109】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。耐久評価後の密着性が劣るものの、実用上は問題ないレベルの封止材との密着性を有する易接着フィルムを得ることができた。
【0110】
(実施例12)
乾燥炉に入るまでの時間を2秒、40℃で5m/秒の熱風で60秒間、150℃で20m/秒の熱風で60秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で30秒間通過させて乾燥したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た。
【0111】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。塗膜に塗工斑やハジキが一部見られ、そのため耐久評価後の密着性が若干低下したものの、実用上は問題ないレベルの特性を有する易接着フィルムを得ることができた。
【0112】
(実施例13)
乾燥炉に入るまでの時間を8秒、40℃で5m/秒の熱風で60秒間、150℃で20m/秒の熱風で60秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で30秒間通過させて乾燥したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た。
【0113】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。界面活性剤が塗膜表面に多く析出したために水接触角が高くなり、そのため封止材密着性が全体的に低下したものの実用上は問題ないレベルの封止材密着性を有する易接着フィルムを得ることができた。
【0114】
(実施例14)
下記の塗工液Lを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0115】
(塗布層用の塗工液L)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Lを調整した。
・トルエン 24.5質量%
・メチルエチルケトン 24.5質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 31.3質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 12.5質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0116】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。耐久評価後密着性が若干劣るものの、優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0117】
(実施例15)
下記の塗工液Mを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0118】
(塗布層用の塗工液M)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Mを調整した。
・トルエン 28.5質量%
・メチルエチルケトン 28.5質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 18.2質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 17.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0119】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。封止材密着性が若干劣るものの、優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0120】
(実施例16)
耐候性ポリエステルフィルム Q1210-50μm(東洋紡製)を使用したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た
【0121】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。耐候性ポリエステルフィルムを使用したため耐久評価1000時間後もフィルムが破断せず、密着性もすぐれた易接着フィルムを得ることができた。
【0122】
(実施例17)
下記の塗工液Nを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0123】
(塗布層用の塗工液N)
ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロン280)をトルエンにて固形分濃度30質量%になるように溶解し、30分以上攪拌し、ポリエステル樹脂溶解物を得た。ついで塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Nを調整した。
・トルエン 26.8質量%
・メチルエチルケトン 26.7質量%
・ポリエステル樹脂溶解物 23.7質量%
(東洋紡績製、バイロン280、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0124】
(実施例18)
下記の塗工液Oを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0125】
(塗布層用の塗工液O)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Oを調整した。
・トルエン 23.4質量%
・メチルエチルケトン 23.3質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・カルボジイミド系架橋剤 22.4質量%
(日清紡ケミカル社製、カルボジライトV-07、固形分濃度:50質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0126】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。優れたコート外観と経時での封止材との密着性を両立した易接着フィルムを得ることができた。
【0127】
(比較例1)
黒色ポリエステルフィルム ルミラー(登録商標)X30-50μm(東レ製)を使用したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た。
【0128】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。塗工面外観を確認することができず、混入していたコート外観異常を確認できなかった。そのため、コート外観異常から生じたと思われる密着不良が発生し、耐久評価後の封止材密着性が著しく低下した。
【0129】
(比較例2)
下記の塗工液Pを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0130】
(塗布層用の塗工液P)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Pを調整した。
・トルエン 29.9質量%
・メチルエチルケトン 29.9質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 0.7質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0131】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。OD値は大幅に低下し、隠蔽性が得られなかった。また、封止剤との密着性も著しく低下した。
【0132】
(比較例3)
下記の塗工液Qを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0133】
(塗布層用の塗工液Q)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Qを調整した。
・トルエン 23.3質量%
・メチルエチルケトン 23.2質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 14.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.2質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0134】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。樹脂中に分散しきれなかった染料が塗膜表面に析出し、外観と封止材密着性が著しく低下した。
【0135】
(比較例4)
下記の塗工液Rを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0136】
(塗布層用の塗工液R)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Rを調整した。
・トルエン 26.89質量%
・メチルエチルケトン 26.8 質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7 質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0137】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。界面活性剤の添加量が不足したため、外観が著しく低下した。また、コート外観異常から生じたと思われる密着不良が発生し、耐久評価後の封止材密着性が著しく低下した。
【0138】
(比較例5)
下記の塗工液Sを実施例1と同様の条件で塗工、乾燥させ、易接着フィルムを得た。
【0139】
(塗布層用の塗工液S)
塗工液の材料を下記の質量比で混合し、30分以上攪拌した。次いで、公称ろ過精度1μmのフィルターで未溶解物を除去して塗工液Sを調整した。
・トルエン 24.4質量%
・メチルエチルケトン 24.3質量%
・ポリエステルポリウレタン樹脂 23.7質量%
(東洋紡績製、UR-8200、固形分濃度:30質量%)
・イソシアネート系架橋剤 15.6質量%
(日本ポリウレタン製、コロネートL、固形分濃度:75質量%)
・アゾクロム錯体色素 7.0質量%
(オリエント化学工業製 VALIFAST BLACK 3810)
・シリコーン系界面活性剤 5.0質量%
(BYK製、BYK-370 固形分濃度:25質量%)
【0140】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。過剰に添加した界面活が表面に析出し、封止材密着性が著しく低下した。
【0141】
(比較例6)
乾燥炉に入るまでの時間を12秒、40℃で5m/秒の熱風で60秒間、150℃で20m/秒の熱風で60秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で30秒間通過させて乾燥したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た。
【0142】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。界面活性剤が塗膜表面に多く析出したために水接触角が高くなり、そのため封止材密着性が全著しく低下した。
【0143】
(比較例7)
乾燥炉に入るまでの時間を0.5秒、40℃で5m/秒の熱風で60秒間、150℃で20m/秒の熱風で60秒間、さらに、90℃で20m/秒の熱風で30秒間通過させて乾燥したこと以外は実施例2と同様にして易接着フィルムを得た。
【0144】
塗布層中の色素濃度、界面活性剤の種類、添加量、架橋剤の有無、使用原反および加工条件を表1に示す。また得られた易接着フィルムの物性を表2に示す。塗膜に塗工斑やハジキが全面に見られ、そのため耐久評価後の密着性が著しく低下した。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の易接着フィルムを太陽電池バックシート部材として使用した場合、バックシートと封止材の接着面にコート欠点起因の密着不良を防止できるため、長期間に渡って封止材との密着性を保持することにより太陽電池モジュールの長寿命化に寄与することが出来る。また、該易接着フィルムを長期間保管しても封止材との密着性が良好であるため、バックシートの保管期間によらず安定的な太陽電池モジュールの作成が可能となり、産業界に寄与することが大である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムであって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、前記塗布層が、ポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素および界面活性剤を含有し、界面活性剤が、シリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤であり、かつ前記塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であることを特徴とする易接着フィルム。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
塗布層が、架橋剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の易接着フィルム。
【請求項5】
透光性ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に塗布層を有する易接着フィルムの製造方法であって、前記ポリエステルフィルム基材がポリエチレンテレフタレートフィルム基材であり、塗布層の水接触角が80°以上100°以下であり、OD値が1.0以上4.0以下であって、塗布層の形成時に、以下の2つの工程を含むこと特徴とする易接着フィルムの製造方法。
(1)少なくともポリエステル樹脂又はポリエステルポリウレタン樹脂と、色素およびシリコーン系界面活性剤、水酸基を含有したシリコーン系界面活性剤又はアセチレン系界面活性剤の界面活性剤を含む塗工液を塗布する工程
(2)塗布後乾燥炉に入るまでの時間を1秒以上10秒以下として乾燥する工程
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-12 
出願番号 特願2015-227415(P2015-227415)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (C08J)
P 1 652・ 121- YAA (C08J)
P 1 652・ 536- YAA (C08J)
P 1 652・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 加藤 友也
西山 義之
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6044698号(P6044698)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 易接着フィルムおよびその製造方法  

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