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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1337042
異議申立番号 異議2016-700791  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-31 
確定日 2018-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5875167号発明「情報管理装置及び情報管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5875167号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、〔7、8〕について訂正することを認める。 特許第5875167号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5875167号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成27年7月1日に特許出願され、平成28年1月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 遠藤義彦(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年12月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月3日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年5月11日付けで意見書が提出され、平成29年8月2日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、その指定期間内である平成29年10月6日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年11月22日付で意見書が提出されたものである。
なお、本件訂正請求がされたため、平成29年3月3日の訂正請求は、取り下げられたものとみなされた。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1?6に係る
「前記店舗端末からのリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを複数のグループに分けて、当該複数のグループを区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させるための分析手段」を
「前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させるための分析手段」に訂正し、
「前記店舗端末により1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信する配信手段」を
「前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信する配信手段」に訂正する。

イ 請求項7、8に係る
「前記店舗端末からのリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを複数のグループに分けて、当該複数のグループを区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させること」を
「前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させること」に訂正し、
「前記店舗端末により1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信すること」を
「前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信すること」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア、イの訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には、段落【0074】ないし【0076】、【0077】、図9において、「店舗端末20に表示される分析結果の一例」として、「第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け」た上で「第1数のサブグループを第1軸に沿って」かつ「第2数のサブグループを第2軸に沿って」それぞれ区別可能な態様で表示するとともに「複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で」表示させたものが示されているとともに、これが「RFM分析を応用し」た「二次元のマトリックス形式でグループ分けした例」である旨が示されている。また、段落【0077】には、「縦軸ないし横軸の各サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれる」ように「それぞれの境界の値」を「調整」してもよい旨が示されており、また、「RFM分析」のRとMは、それぞれ「店舗に来店した日に関する情報」「ユーザが購入した金額に関する情報」を示すものである。さらに、段落【0080】には、店舗端末に表示された「分析グラフ画像」から「特定のグループをタッチ」して「クーポン等を配信する対象とするグループを選択する」旨が記載されている。
してみると、上記ア、イの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において、店舗端末の表示態様について限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、これらの訂正は、それぞれ請求項〔1?6〕及び〔7、8〕の各一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕及び〔7、8〕について訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるものである。

【請求項1】(本件発明1)
ユーザを識別するためのユーザIDと、店舗に来店した日に関する情報と、当該店舗で前記ユーザが購入した金額に関する情報とを含む履歴情報を記録する履歴記録手段と、
前記店舗で使用される店舗端末または前記ユーザが使用するユーザ端末から、前記履歴情報を収集して、前記履歴記録手段に格納する収集手段と、
前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させるための分析手段と、
前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信する配信手段と、
を備える情報管理装置。
【請求項2】(本件発明2)
前記収集手段は、ユーザが店舗を予約する際に取得した前記ユーザの氏名、電話番号またはログインIDに基づいて、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1記載の情報管理装置。
【請求項3】(本件発明3)
前記収集手段は、店舗に設置された発信機から発信されたビーコンを受信したユーザ端末から、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1または2記載の情報管理装置。
【請求項4】(本件発明4)
前記収集手段は、前記ユーザ端末に表示された画像から、前記店舗端末がユーザIDを読み取ることによって、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項5】(本件発明5)
前記分析手段は、ユーザ毎に集計された、所定期間における前記店舗への来店回数及び累積購入金額、並びに、最新の来店日または購入日に関する情報に基づいて、ユーザを前記複数のグループに分けることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項6】(本件発明6)
前記所定のデータは、クーポンに関するデータを含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項7】(本件発明7)
ユーザを識別するためのユーザIDと、店舗に来店した日に関する情報と、当該店舗で前記ユーザが購入した金額に関する情報とを含む履歴情報を記録する履歴記録手段を使用可能なコンピュータのプロセッサにおいて、
前記店舗で使用される店舗端末または前記ユーザが使用するユーザ端末から、前記履歴情報を収集して、前記履歴記録手段に格納することと、
前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させることと、
前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信することと、
を実行する情報管理方法。
【請求項8】(本件発明8)
請求項7に記載の情報管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

(2)取消理由の概要
取消理由通知(決定の予告)における取消理由の要旨は、請求項1、請求項7及び請求項8に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3(甲第3号証)に示される周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項2ないし6に係る発明は、引用文献1(甲第1号証)に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3(甲第3号証)に示される周知技術と他の周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし8に係る発明は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1ないし8に係る特許は、取り消されるべきものである、というものである。

(3)取消理由における引用文献、異議申立理由の主引用文献とされた甲号証の記載
ア 引用文献1(甲第1号証:特開2003-248774号公報)
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,商品,サービスの割引情報,その他の特典を含むクーポンをデジタルデータの形式で顧客に提供するための技術に関する。」

(イ)「【0006】【発明の実施の形態】以下,本発明の実施形態について,図面を参照して詳細に説明する。(第1の実施形態)図1は本発明による電子クーポン提供システムの第1の実施形態を示す構成図である。図1において,1はコンピュータ端末,2はクーポン情報生成部,3は顧客セグメント手段,4はインセンティブ設定手段,5はクーポン情報作成手段,6は購買履歴データ,7は顧客マスタ,8は商品マスタ,9は2次元コード生成手段,10はWebサーバ,11はメールサーバ,12は携帯端末,13は2次元コードリーダ,14はPOSレジスタである。
【0007】図1において,コンピュータ端末1は,クーポン発行元である加盟店本部に設置されたコンピュータ端末であり,本発明においては,顧客マスタ7,商品マスタ8へのデータ入力手段およびクーポン情報生成部2への指示入力手段として利用される。クーポン情報生成部2は,電子クーポン作成の基になる誰にどのような内容のクーポンを配信するかという情報であるクーポン情報を生成するためのものであり,顧客セグメント手段3,インセンティブ設定手段4,クーポン情報作成手段5を有している。顧客セグメント手段3は,購買履歴データ6,顧客マスタ7,商品マスタ8に記録されたデータに基づいて,様々な分析手法を駆使して,顧客をセグメント化する機能を有する。インセンティブ設定手段4は,セグメント化された顧客情報に基づいて,誰にどのようなインセンティブを設定するかを示すインセンティブ設定ファイルを作成する。クーポン情報作成手段5は,インセンティブ設定ファイルの内容に基づいて,各顧客に提供する具体的なクーポンの内容であるクーポン情報を決定する機能を有する。購買履歴データ6は,加盟している各店舗からの過去の売上情報を集めた購買履歴データである。顧客マスタ7は,加盟店で購入またはサービスを受けた顧客の情報を記録したマスタデータである。商品マスタ8は,加盟店で販売している商品の情報を記録したマスタデータである。2次元コード生成手段9は,クーポン情報を2次元コード化する機能を有する。所定のデータを2次元コード化する手法については,周知の手法を用いることができるので,ここでは詳細な説明は省略する。なお,クーポンデータ情報生成部2,顧客セグメント手段3,インセンティブ設定手段4,クーポン情報作成手段5,2次元コード生成手段9はコンピュータに専用のソフトウェアを搭載することにより実現され,物理的には,1台のコンピュータであっても複数台のコンピュータであっても良い。
【0008】Webサーバ10は,Webサーバ機能を搭載したサーバコンピュータであり,本発明においては,生成された2次元コードを顧客が取得するためのWebページを記録している。メールサーバ11は,電子メールの送受信を行う機能を備えたサーバコンピュータであり,本発明においては,クーポン情報が提供されることを顧客に通知するための電子メールをクーポン情報生成部2から受信し,顧客の携帯端末12に送信する機能を有する。携帯端末12は,携帯電話や通信機能がついたPDAなどの携帯端末であり,電子メール送受信機能およびWebブラウザを搭載し,2次元コードを表示可能なディスプレイを有している。2次元コードリーダ13は,2次元コードを光学的に読取って,2次元コードが意味しているクーポン情報を認識する機能を有する。POSレジスタ14は,店舗ごとの売上を集計する機能を有するものであり,集計された売上データは,オンラインまたはオフラインで送られて購買履歴データ6に記録される。」

(ウ)「【0009】ここで,顧客セグメント手段3が顧客をセグメント化するために実行する分析手法のうち,代表的なデシル分析とRFM分析について説明しておく。デシル分析は,一定期間中の会員顧客の購買金額を多い順に10段階に分ける分析手法である。図2は,デシル分析結果を説明する表である。グループと表記された列のセルの値が当該会員番号に対して分析された顧客セグメントのグループ番号を示す。一定期間の総購入金額と,これによりより多く購入する顧客を優良顧客として他の客よりも優遇しようとする場合にデシル分析の結果を用いることができる。一方,RFM分析は,顧客の最終購買日(Recency),利用回数または購買回数(Frequency),購買金額(Monetory)の組合せによって,各顧客に点数を付け,この点数により優良顧客とそうでない顧客等に顧客をセグメント化する方法である。図3は,RFM分析結果を説明する表である。グループと表記された列のセルの値が当該会員番号に対して分析された顧客セグメントのグループ番号を示す。デシル分析は累積の購買金額だけを顧客セグメント化の基準にするのに対し,RFM分析では,来店回数や最近来店したかどうかも考慮する点が異なる。」

(エ)「【0010】続いて,図1に示した電子クーポン提供システムの処理動作を本発明に係る電子クーポン提供方法と共に説明する。図4は本発明の電子クーポン提供方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。まず,個人対応インセンティブ設定処理を行い(ステップS10),メーカー対応のインセンティブ設定処理を必要なだけ行い(ステップS20),店舗対応インセンティブ設定処理を行い(ステップS30),設定された結果をインセンティブ設定ファイルとして作成する(ステップS40)。続いて,作成されたインセンティブ設定ファイルに基づいて具体的なクーポン情報を作成し(ステップS50),このクーポン情報に基づいて電子クーポンを配信する(ステップS60)。図5はインセンティブ設定ファイルの内容説明図である。会員ごとに,どのようなクーポンを提供すべきかを,商品名と還元額(割引額)で示している。還元額は割引率であっても良い。インセンティブ設定手段4によるインセンティブ設定は,顧客の購買履歴に基づいて行われるため,優良な顧客とそうでない顧客では,同一商品でも割引率(あるいは還元額)が異なることが起こり得る。以下に3種類の異なるインセンティブ設定処理について詳しく説明する。」

(オ)「【0011】図6は,クーポン情報生成部2において行われる個人対応インセンティブ設定処理の流れを示すフローチャートである。個人対応設定処理で提供する予算は売上金額の何%というような決め方であらかじめ目安が付けられている。まず,購買履歴データ6を参照して会員ごとの商品支持率を調査する(ステップS100)。商品支持率とは,その顧客の一定期間中の利用回数におけるある特定の商品の累積買上個数または金額の占める割合である。業種・業界・扱う商品により累積買上個数か累積買上金額のどちらを採用するかを適当に選択するものである。これを調べ図7に示すような商品支持率分析表を作成する。図7の各セルは商品名と括弧の中にその商品の支持率を示している。図7の例では商品支持率は,一定期間における(買上個数)÷(利用回数)で計算している。3回来店して牛乳を累計6本購入したら商品支持率は200%である。次に,各会員顧客ごとのクーポン対称商品を決定する(ステップS101)。通常は,各会員の支持率第1位商品を個人対応クーポンの対応商品とする。次に,各会員に対する還元額を設定するための分析手法を選択する。分析手法としては,デシル分析とRFM分析のどちらかを選択する(ステップS103)。
【0012】デシル分析を選択した場合は,デシル分析を実行して会員顧客を10段階のグループに分ける(ステップS106)。RFM分析を選択した場合は,RFM分析を実行して会員顧客を10前後のいくつかのグループに分ける(ステップS107)。次に,得られたグループごとに,割引率または還元額を決定するため,割引率設定処理を行う(ステップS115)。割引率または還元額の設定の仕方は,各顧客グループごとに,何%割引くかまたは何円値引くかといった数値を設定する。例えばグループ1を最優良顧客のグループ,グループ10をその対極に位置する顧客グループとしたとき,グループ1の顧客のクーポンは割引率30%,グループ8以下の顧客のクーポンは割引率0%(発行しない),グループ2からグループ7の顧客は,25%から10%の間でリニアに変化させる,というように設定できる。」

(カ)「【0013】図8はステップS115の割引率設定処理の詳細を示すフローチャートである。クーポン情報生成部2は,コンピュータ端末1から顧客セグメントごとの割引率の指示を受け取る(ステップS409)。次に,対象商品の通常価格,クーポン利用率,クーポンの割引率または還元額からクーポン使用による販促経費見積額を計算し,コンピュータ端末1のディスプレイに表示する(ステップS412)。操作者は販促経費見積額を確認し,見積額と販促予算金額が大きく違う場合は,ステップS409に戻り割引率または還元額設定をやり直す。この額がその月の(あるいは一定期間の)販促予算金額にほぼ同額となるならば,販促経費見積額と各顧客セグメントごとの割引率を記録して(ステップS418),割引率設定処理は終了する。なお,クーポン利用率は,過去の実績に基づいてクーポン情報生成部2の定める記憶領域に設定されているものとする。
【0014】図6のフローチャートに戻って,最後にステップS118において,会員顧客ごとに設定されたクーポン対象商品と,クーポン割引率の対応表をデータとして記録して,個人対応インセンティブ設定処理は終了する。会員ごとの割引率または還元額は,デシル分析またはRFM分析により各会員番号に対応付けられたグループ番号(図2または図3のグループと表記されたセルに示された値)と,割引率設定処理で決定した,各顧客セグメントごとの割引率の値を付け合わせることにより決定される。」

(キ)「【0016】図10は,クーポン情報生成部2が行う店舗対応インセンティブ設定処理の流れを説明するフローチャートである。まず,最初に,対象商品コードまたは分類コード等を指定する(ステップS300)。店舗対応インセンティブとは,その店舗が独自の予算でクーポン発行等により販促を図ることを指す。特定の顧客層にインセンティブを設定する場合や,店舗の中にある売場の売上を伸ばすといった狙いで設定される。前者のために,コンピュータ端末1よりターゲット顧客層の属性を入力することで設定し,顧客マスタ7を検索して対象顧客を抽出する(ステップS301)。また,後者のために買い回り分析を行い,対象顧客を抽出する(ステップS303)。両者を同時に行う場合はそれらの抽出結果の和集合をとる。どちらか一方だけを行う場合は,他方を省略する。
【0017】買い回り分析では,各顧客が当該店舗のどの売場でどれだけ購入したかを調べ,全体の購買金額,購買点数,購買商品数,購買頻度等に対する売場別の割合を顧客ごとに算出する。その結果,ある売場を比較的よく利用する顧客,めったに利用しない顧客が分析できる。また,売場間の相関が分析できる。例えば,A売場を利用する顧客はB売場も同時に利用する確率が高いなどの情報が得られる。これらの結果をもとに,例えば,売場Aの売上を伸ばしたい場合は,売場Aをよく利用する顧客,売場Aと同時に利用される確率の高い売場Bをよく利用する顧客を抽出する。
【0018】これから後の各ステップ,割引率または還元額を決定するための顧客セグメント分析手法の選択(ステップS309),デシル分析実行(ステップS312),RFM分析実行(ステップS313),顧客セグメントごとの割引率または還元額の設定(ステップS315)の一連の処理は,個人対応インセンティブ処理の一連のステップの処理と同じである。最後に,ステップS328において,クーポン割引率の対応表をデータとして記録して,店舗対応インセンティブ設定処理は終了する。なお,上記ステップS303の買い回り分析に代えてレコメンデーション処理,すなわち,顧客の嗜好を分析して顧客の好みそうな商品を薦める処理を行うようにしても良い。」

(ク)「【0019】クーポン情報作成手段5は,得られたインセンティブ設定ファイルを読込み,会員顧客ごとに決定されたクーポンの種類と割引率または還元額(図5の各会員番号に対応する各行の内容)から具体的なクーポンの内容であるクーポン情報を作成する。本実施形態では,クーポン情報は,顧客コード,顧客氏名,(割引対象商品の)JANコード,割引対象商品名称,値引額または値引率,発行日,有効期限の各情報により構成されている。」

(ケ)「【0020】2次元コード生成手段9は,作成されたクーポン情報を読込み,これらの内容を表現した2次元コードを生成すると共に,可視情報を含めた画像ファイルを作成し,各顧客ごとのページである個人クーポンページデータに対応付けて記憶装置に記憶する。ただし,可視情報は省略するようにしても良い。2次元コード化される情報としては,顧客コード,(割引対象商品の)JANコード,値引額または値引率,有効期限が必須である。可視情報としては,顧客氏名,割引対象商品名称,JANコード,値引額または値引率,有効期限等を入れることができる。」

(コ)「【0021】電子クーポンとして機能する2次元コードを取得した顧客は,携帯端末12を持って,電子クーポンに記載されている店舗に行ってクーポンにより割引される対象となる商品を購入する。購入の際,店舗に設置してある2次元コードリーダ13に,携帯端末12に表示された2次元コードを読取らせると,2次元コードリーダ13がクーポンの内容を認識してPOSレジスタ14に送信する。一方,店員は顧客が購入のためにレジに持ってきた商品のバーコードから商品コードを読取ってPOSレジスタ14に入力する。POSレジスタ14では,商品から読取られた商品コードと,2次元コードリーダ13から送信された商品コードが一致した場合に,その割引率に従って商品の価格を割引する。このようにして,顧客は,商品購入時に携帯端末に表示された2次元コードを2次元コードリーダ13に読取らせるだけで商品の割引が行われることになる。POSレジスタ14には,電子クーポンを使用した旨の情報が記録され,購買履歴データ6に送信され,購買履歴データ6内の顧客の購買履歴が更新されることになる。」

(サ)「【0022】(第2の実施形態)図12は本発明による電子クーポン提供システムの第2の実施形態を示すシステム構成図である。図12において,図1に示したものと同一の構成については,同一の符号を付してある。図12において,図1と異なるのは,構成要素としてWebサーバ10を有していない点である。このため,クーポン情報生成部2,2次元コード生成手段9,メールサーバ11の機能が若干異なってくる。第2の実施形態においては,インセンティブ設定ファイルの作成までは,第1の実施形態と同じである。第2の実施形態が第1の実施形態と異なるのは,2次元コードを,Webサーバ10から携帯端末12に送信するのではなくて,メールサーバ11から送信する点である。具体的には,2次元コード生成手段9は,生成した2次元コードを含む画像ファイルを,その顧客宛の電子メールに添付して顧客に送信する。この電子メールはメールサーバ11を介して携帯端末12に送信されることになる。携帯端末12に送信された2次元コードは,図11に示したようにディスプレイ上に表示され,第1の実施形態と同様に店舗に設置された2次元コードリーダ13で読取らせることにより使用できる。」

以上の(ア)?(サ)の記載によれば、甲第1号証(引用文献1)には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
コンピュータ端末1,クーポン情報生成部2,顧客セグメント手段3,インセンティブ設定手段4,クーポン情報作成手段5,購買履歴データ6,顧客マスタ7,商品マスタ8,2次元コード生成手段9,メールサーバ11,携帯端末12,2次元コードリーダ13,POSレジスタ14からなる電子クーポン提供システムであって(段落【0006】,【0022】及び図12),
クーポン情報生成部2,顧客セグメント手段3,インセンティブ設定手段4,クーポン情報作成手段5,2次元コード生成手段9は,コンピュータに専用のソフトウェアを搭載することにより実現され,物理的には,1台のコンピュータであっても複数台のコンピュータであっても良いものであり(段落【0007】),
個人対応インセンティブ設定処理を行い,メーカー対応のインセンティブ設定処理を必要なだけ行い,店舗対応インセンティブ設定処理を行い,設定された結果をインセンティブ設定ファイルとして作成し,作成されたインセンティブ設定ファイルに基づいて具体的なクーポン情報を作成し,このクーポン情報に基づいて電子クーポンを配信するものであり(段落【0010】及び図4),
コンピュータ端末1は,クーポン発行元である加盟店本部に設置されたコンピュータ端末であり,顧客マスタ7,商品マスタ8へのデータ入力手段およびクーポン情報生成部2への指示入力手段として利用されるものであり(段落【0007】),
クーポン情報生成部2は,コンピュータに専用のソフトウェアを搭載することにより実現され,電子クーポン作成の基になる誰にどのような内容のクーポンを配信するかという情報であるクーポン情報を生成するためのものであり,顧客セグメント手段3,インセンティブ設定手段4,クーポン情報作成手段5を有しており,店舗対応インセンティブ設定処理として,対象商品コードまたは分類コード等を指定し,コンピュータ端末1よりターゲット顧客層の属性を入力することで設定し,顧客マスタ7を検索して対象顧客を抽出し,買い回り分析を行い,対象顧客を抽出し,割引率または還元額を決定するための顧客セグメント分析手法としてRFM分析が選択された場合は,RFM分析を実行して会員顧客を10前後のいくつかのグループに分け,得られたグループごとに,割引率または還元額を決定するため,割引率設定処理として,コンピュータ端末1から顧客セグメントごとの割引率の指示を受け取り,対象商品の通常価格,クーポン利用率,クーポンの割引率または還元額からクーポン使用による販促経費見積額を計算し,コンピュータ端末1のディスプレイに表示するものであり(段落【0007】,【0012】,【0013】,【0016】?【0018】及び図8,10),
顧客セグメント手段3は,購買履歴データ6,顧客マスタ7,商品マスタ8に記録されたデータに基づいて,様々な分析手法を駆使して,顧客をセグメント化する機能を有するものであり(段落【0007】),
インセンティブ設定手段4は,セグメント化された顧客情報に基づいて,誰にどのようなインセンティブを設定するかを示すインセンティブ設定ファイルを作成するものであり(段落【0007】),
クーポン情報作成手段5は,インセンティブ設定ファイルの内容に基づいて,各顧客に提供する具体的なクーポンの内容であるクーポン情報を決定する機能を有するものであり,得られたインセンティブ設定ファイルを読込み,会員顧客ごとに決定されたクーポンの種類と割引率または還元額から具体的なクーポンの内容であるクーポン情報を作成するものであり(段落【0007】及び【0019】),
購買履歴データ6は,加盟している各店舗からの過去の売上情報を集めた購買履歴データであり(段落【0007】),
顧客マスタ7は,加盟店で購入またはサービスを受けた顧客の情報を記録したマスタデータであり(段落【0007】),
商品マスタ8は,加盟店で販売している商品の情報を記録したマスタデータであり(段落【0007】),
2次元コード生成手段9は,コンピュータに専用のソフトウェアを搭載することにより実現され,クーポン情報を2次元コード化する機能を有するものであり,作成されたクーポン情報を読込み,これらの内容を表現した2次元コードを生成すると共に,可視情報を含めた画像ファイルを作成し,生成した2次元コードを含む画像ファイルを,その顧客宛の電子メールに添付して顧客に送信するものであり,この電子メールはメールサーバ11を介して携帯端末12に送信されるものであり(段落【0007】,【0020】及び【0022】),
メールサーバ11は,電子メールの送受信を行う機能を備えたサーバコンピュータであり,クーポン情報が提供されることを顧客に通知するための電子メールをクーポン情報生成部2から受信し,顧客の携帯端末12に送信する機能を有するものであり(段落【0008】),
携帯端末12は,携帯電話や通信機能がついたPDAなどの携帯端末であり,電子メール送受信機能およびWebブラウザを搭載し,2次元コードを表示可能なディスプレイを有しており(段落【0008】),
2次元コードリーダ13は,2次元コードを光学的に読取って,2次元コードが意味しているクーポン情報を認識する機能を有するものであり(段落【0008】),
POSレジスタ14は,店舗ごとの売上を集計する機能を有するものであり,集計された売上データは,オンラインまたはオフラインで送られて購買履歴データ6に記録されるものであり(段落【0008】),
顧客セグメント手段3が顧客をセグメント化するために実行する分析手法であるRFM分析は,顧客の最終購買日(Recency),利用回数または購買回数(Frequency),購買金額(Monetory)の組合せによって,各顧客に点数を付け,この点数により優良顧客とそうでない顧客等に顧客をセグメント化する方法であり,RFM分析結果を説明する表では,グループと表記された列のセルの値が当該会員番号に対して分析された顧客セグメントのグループ番号を示すものであり(段落【0009】及び図3),
割引率設定処理において,割引率または還元額の設定の仕方は,各顧客グループごとに,何%割引くかまたは何円値引くかといった数値を設定するものであり,例えばグループ1を最優良顧客のグループ,グループ10をその対極に位置する顧客グループとしたとき,グループ1の顧客のクーポンは割引率30%,グループ8以下の顧客のクーポンは割引率0%(発行しない),グループ2からグループ7の顧客は,25%から10%の間でリニアに変化させる,というように設定できるものであり(段落【0012】),
店舗対応インセンティブとは,その店舗が独自の予算でクーポン発行等により販促を図ることを指すものであり,特定の顧客層にインセンティブを設定する場合や,店舗の中にある売場の売上を伸ばすといった狙いで設定されるものであり(段落【0016】),
買い回り分析では,各顧客が当該店舗のどの売場でどれだけ購入したかを調べ,全体の購買金額,購買点数,購買商品数,購買頻度等に対する売場別の割合を顧客ごとに算出するものであり(段落【0017】),
電子クーポンとして機能する2次元コードを取得した顧客は,携帯端末12を持って,電子クーポンに記載されている店舗に行ってクーポンにより割引される対象となる商品を購入する際,店舗に設置してある2次元コードリーダ13に,携帯端末12に表示された2次元コードを読取らせると,2次元コードリーダ13がクーポンの内容を認識してPOSレジスタ14に送信し,店員は顧客が購入のためにレジに持ってきた商品のバーコードから商品コードを読取ってPOSレジスタ14に入力し,POSレジスタ14では,商品から読取られた商品コードと,2次元コードリーダ13から送信された商品コードが一致した場合に,その割引率に従って商品の価格を割引し,POSレジスタ14には,電子クーポンを使用した旨の情報が記録され,購買履歴データ6に送信され,購買履歴データ6内の顧客の購買履歴が更新されるものである(段落【0021】),
電子クーポン提供システム。

イ 引用文献2(特開2015-52964号公報)
(ア)「【0001】本発明は,コンピュータ及び情報処理の技術に関する。また本発明は,電子的なクーポンを発行する技術に関する。」

(イ)「【0006】店舗は,好適に顧客へクーポンを発行することにより,店舗への集客及び商品販売による利益を含む販促等の総合的な効果を高めたい。特に,店舗は,販売商品等に応じてターゲットにする好適な属性の顧客に対する好適な内容のクーポンの発行により,上記効果を最大にしたい。
【0007】クーポンを発行する店舗の担当者は,クーポンのターゲットにする顧客属性を決め,割引率等の内容を決める。顧客属性は,性別や年齢層等,各種がある。店舗の担当者によるクーポンのターゲットの顧客属性の設定に応じて,当該属性に該当する顧客の集団に対するクーポンの提供が重複する場合や漏れる場合がある。」

(ウ)「【0013】本発明のうち代表的な実施の形態によれば,上記クーポン発行支援に関して,店舗による好適な顧客へのクーポンの発行により販促等の効果を高めることができる。」

(エ)「【0017】[システム構成]図1は,本実施の形態のクーポン発行支援システムの構成を示す。本実施の形態のクーポン発行支援システムは,インターネット等の通信網5を通じて,複数の顧客1である各利用者の利用者端末10,複数の加盟店2の各店舗のクライアント端末20,クーポン事業者3のシステム,及びクレジットカード会社4のシステムが接続される。
【0018】複数の顧客1は,利用者U1?Unで示され,加盟店2の店舗の顧客である。利用者端末10は,顧客である利用者が携帯する例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末である。利用者端末10は,通信機能,入力機能,及び表示機能等を有する。利用者端末10は,クーポン処理機能を備えてクーポンd1を保持してもよい。
【0019】複数の加盟店2は,店舗T1?Tmで示され,クーポンのビジネスに加盟し,独自に各種のクーポンを発行する事業者の店舗である。店舗は,実店舗でもよいし,ECサイト等でもよい。クライアント端末20は,店舗に設置され,クーポン発行の担当者や店員等が操作する,PCやPOSレジ端末等の情報処理装置である。クライアント端末20は,通信機能,入力機能,表示機能,販売管理機能,及び顧客情報処理機能等を備える。クライアント端末20は,クーポン処理機能を備えてクーポンd2を保持してもよい。
・・・
【0023】クーポン発行支援部62は,クーポン発行支援機能を実現する。クーポン発行支援機能は,各店舗による顧客へのクーポンの発行及び運用の際の支援として,店舗の顧客の母集団における個々の顧客及び顧客属性単位の顧客の集合に対するクーポンの提供に関する重複や漏れを抽出する。クーポン発行支援機能は,重複や漏れが無い又は少ないように,クーポンの発行条件を調整する提案及び推奨を行う。クーポン発行支援機能は,上記重複や漏れの情報,並びに提案及び推奨の情報を,店舗の担当者が参照する画面に表示する。
【0024】店舗のクライアント端末20とクーポンサーバ31及び顧客情報サーバ32との間では,クーポン発行支援の際,及びクーポンの発行から使用の間,適宜,クライアント・サーバ通信が行われる。クライアント端末20は,店舗の担当者の操作に基づいて,クーポンサーバ31にアクセスし,クーポン管理部61によるクーポンの管理のサービス,及びクーポン発行支援部62によるクーポン発行支援のサービスを受ける。
・・・」

(オ)「【0038】[クーポン管理機能]図2のクーポン管理部61によるクーポン管理機能について説明する。クーポン管理部61は,クーポン情報D1,顧客情報D2,クーポン発行情報82,クーポン使用情報83等を用いて,クーポン管理の処理を行う。
【0039】発行条件設定部111は,店舗の担当者によるクライアント端末20からの操作に基づいて,店舗のクーポンの発行条件を,クーポン情報D1の発行条件情報81に設定する処理を行う。発行条件情報81は,後述の図5のように,クーポンのターゲットの顧客属性等を定義する情報である。またクーポン管理部61は,クーポンの割引率等の内容を定義する情報を,クーポン情報D1に設定する処理を行う。」

(カ)「【0042】[クーポン発行支援機能]図2のクーポン発行支援部62によるクーポン発行支援機能について説明する。クーポン発行支援部62は,クーポン情報D1,顧客情報D2,クーポン発行情報82,顧客属性定義情報71等を用いて,後述の図3及び図4のようなクーポン発行支援処理を行う。
【0043】範囲設定部120は,店舗の担当者によるクライアント端末20からの操作に基づいて,クーポン発行支援処理の対象及び範囲を設定する処理を行う。
【0044】顧客属性分析部121は,顧客情報DB52の顧客情報D2,及び顧客属性定義情報71を用いて,顧客の集団における複数の顧客属性単位の顧客の集合の論理的な関係(例:図9?図11)を分析する処理を行い,その結果を後述の図12のような顧客属性分析情報72に格納する。
【0045】顧客属性定義情報71は,性別や年齢層等のセグメントを含む各種の顧客属性が論理的に定義される。・・・」

(キ)「【0050】[クーポンの発行から使用までの流れ]クーポン管理機能に関する,店舗及びクーポンサーバ31による顧客へのクーポンの発行から顧客によるクーポンの使用までの流れの一例について説明する。
【0051】(1)(クーポン情報D1の設定) 店舗の担当者は,クライアント端末20から,クーポンサーバ31に,クーポンの発行条件及び内容である,ターゲット顧客属性や割引率等を設定する。発行条件設定部111により,対応する発行条件情報81を含むクーポン情報D1が設定される。
【0052】(2)(顧客情報D2の登録) 顧客情報サーバ32は,適宜,クライアント端末20からのアクセスに基づいて,店舗の顧客の属性を含む情報を,顧客情報D2として顧客情報DB52に登録する。
【0053】(3)(クーポン発行) 店舗は,クーポンサーバ31のクーポン管理機能を通じて,顧客へクーポンを発行する。クーポンサーバ31のクーポン管理部61は,発行条件情報81を含むクーポン情報D1に基づいて,クーポンd3を発行し,クーポン発行情報82の内容を更新する。クーポン管理部61は,発行したクーポンd3を,クライアント端末20等を通じて顧客へ提供する。クライアント端末20のクーポン処理機能は,クーポンサーバ31からの発行に基づくクーポンd2を顧客へ提供する。
【0054】店舗は,クライアント端末10であるPOSレジ端末から,顧客による商品購買の際に,レシート等の形式でクーポンを提供してもよい。店舗は,クライアント端末10から,クーポンd2のデータを利用者端末10へ送信してもよい。クーポンサーバ31は,所定のWebサイトにアクセスした利用者端末10にクーポンを提供してもよい。クーポンサーバ31は,メール等の形式で利用者端末10にクーポンを配信してもよい。クーポンサーバ31は,位置情報サービスに基づいて,店舗の近くにいる利用者端末10にクーポンを配信してもよい。」

(ク)「【0060】[クーポン発行支援処理(1)]図3は,クーポンサーバ31の主にクーポン発行支援部62によるクーポン発行支援処理のフローの第1の部分を示す。S1等は処理ステップを表す。
【0061】(S1)クーポンサーバ31は,設定情報312を読み出して取得し,設定情報312の設定状態,例えば漏れ及び重複の両方の調整の機能を提供する設定状態に従い,処理を開始する。
【0062】(S2)クーポン発行支援部62は,範囲設定部120を用いて,店舗の担当者によるクライアント端末20からの操作に基づいて,クーポン発行支援に関する処理の対象及び範囲を指定する処理を行う。対象及び範囲は,店舗,期間,クーポン,顧客属性,等の観点で指定可能である。対象及び範囲とするクーポンは,個別のクーポンだけでなく,種別として,既存のクーポン,新規のクーポン,またはそれらの両方を指定可能である。対象及び範囲とする期間は,後述の発行期間や有効期間を指定可能である。S2の際,範囲設定部120は,画面提供部64を用いて後述の図18のような画面をクライアント端末20に提供し,当該画面で店舗の担当者により対象及び範囲の指定が可能である。S3以下の処理は,S2で指定された対象及び範囲で行われる。
・・・
【0066】(S4)S4では,クーポン発行支援部62は,店舗の担当者によるクライアント端末20からの操作に基づいて,画面で新規クーポンの発行条件及び内容を含むクーポン情報を入力する処理を行う。この際,クーポン発行支援部62は,クーポン管理部61の発行条件設定部111の処理と同様に,クーポン情報の入力用の画面を提供する。店舗の担当者は,画面で,任意にクーポンのターゲット顧客属性等を含むクーポン情報を入力する。クーポン発行支援部62は,この時点の入力のクーポン情報を調整前の仮定の情報として記憶する。
・・・」

ウ 引用文献3(甲第3号証:特開2007-75341号公報)
(ア)「【0001】本発明は、登録された会員の店舗の利用履歴のデータに基づいて、会員に対する種々の分析を支援するデータ分析支援システムに関する。」

(イ)「【0016】以下に本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、遊技場を店舗の例とした場合において、会員の店舗の利用履歴を示す利用履歴情報を収集するための遊技場内の各機器の接続の例を示している。例えば図1の場合は、利用履歴情報を収集する店舗サーバ10に本発明のデータ分析支援システムの機能を持たせてもよい。また、図2は、店舗A?店舗Nの各店舗の店舗サーバ10をインターネット2に接続し、各店舗サーバ10からの利用履歴情報を収集する本部サーバSVをインターネット2に接続した接続の例を示している。インターネット2に接続された本部サーバSVにて各店舗サーバ10からの利用履歴情報を収集し、当該本部サーバSVに本発明のデータ分析支援システムの機能を持たせてもよい。以下の説明では、店舗A?店舗Nを遊技場の各チェーン店として、店舗A?店舗Nとは物理的に離れた遠隔地の本部に設けられた本部サーバSVにてデータ分析支援システムを構成する場合を例として説明する。」

(ウ)「【0018】台端末装置40は遊技媒体貸出装置であり、会員カード受付口にて受付けた会員カードから読み取った会員ID、プリペイドカード受付口にて受付けたプリペイドカードから引き落とした金額、あるいは投入された現金に関する情報を会員IDや台番号とともに通信回線91を介して店舗サーバ10に送信する。台ユニット30は、自己に接続された遊技機50の遊技データを通信回線83を介して検出(受信)し、検出(受信)した遊技データを台番号とともに島ユニット20及び通信回線82、81を介して店舗サーバ10に送信する。台ユニット30は、例えば所定時間毎(1分毎等)に、セーフ数(遊技媒体の払出数)、アウト数(遊技媒体の投入数)、始動回数(遊技機の図柄が変動した回数)、特賞状態(遊技媒体の払出数が投入数よりも大幅に多い(セーフ数よりも多い)状態)等を、遊技機50から検出し、島ユニット20を介して店舗サーバ10に送信する。
【0019】店舗サーバ10は、台端末装置40や台ユニット30から上記に説明したような各種の情報を収集し、利用履歴情報を作成して記憶手段(データベースに相当)に記憶する。なお、記憶手段は店舗サーバ10からアクセス可能であれば、どこに配置されていてもよく、図1では店舗サーバ10が内部に記憶手段を備えている例を示している。
【0020】●[本部サーバSVと各店舗サーバ10との接続(図2)] 図2に示すように、本部サーバSVと各店舗サーバ10とはインターネット2を介して接続されている。例えば店舗サーバ10は、閉店後に当日の利用履歴情報を店舗IDとともに本部サーバSVに送信する。そして本部サーバSVは、各店舗サーバ10からの利用履歴情報を収集し、チェーン店全体の利用履歴情報M13(図4参照)を作成して記憶手段(データベースに相当)に記憶する。なお、記憶手段は本部サーバSVからアクセス可能であれば、どこに配置されていてもよく、図2では本部サーバSVが内部に記憶手段を備えている例を示している。
【0021】●[本部サーバSVに記憶されている情報(図3、図4)] 図3に、本部サーバSVの記憶手段(データベースに相当)に記憶している会員登録情報M12の例を示す。会員登録情報M12には、店舗A?店舗Nで登録された会員に関する情報が記憶されている。「会員ID」には、会員を特定可能な識別情報が記憶されている。「登録店舗ID」には、当該会員IDの会員が登録された店舗を特定可能な識別情報が記憶されている。「ユーザ名」には、当該会員IDの会員を特定可能なユーザ名称が記憶されている。「パスワード」には、当該会員IDの会員を照合するための暗証番号が記憶されている。「メールアドレス」には、当該会員IDの会員にメールを送信する場合の送信先が記憶されている。「電話番号」には、当該会員IDの会員に連絡可能な電話番号が記憶されている。その他、「登録日」、「生年月日」、「性別」等、会員に関するデータが記憶されている。」

(エ)「【0022】図4に、本部サーバSVの記憶手段(データベースに相当)に記憶している利用履歴情報M13の例を示す。利用履歴情報M13には、店舗A?店舗Nで会員が店舗を利用した履歴に関する情報が記憶されており、各利用日における会員の利用履歴を集計して記憶している。「会員ID」には、当該利用履歴に対応する会員の会員IDが記憶されている。「利用日」には、当該会員IDの会員が利用した年月日(日時に関する情報(時刻や時間がなくて日にちのみの場合もある))が記憶されている。「利用店舗ID」には、「利用日」において当該会員IDの会員が利用した店舗を特定可能な識別情報が記憶されている。「利用金額」には、「利用日」において当該会員IDの会員が使用した金額に関する情報が記憶されている。「アウト数」には、「利用日」において当該会員IDの会員が遊技機に投入した遊技媒体数が記憶されている。「セーフ数」には、「利用日」において当該会員IDの会員が遊技機から払出を受けた遊技媒体数が記憶されている。その他、「始動数」、「特賞回数」等、利用履歴に関する情報(この場合、遊技場を例にしているので遊技履歴に関する情報)が記憶されている。」

(オ)「【0024】[1.メニュー画面(図5(A))]本部サーバSVの入力手段から、オペレータ等が前記プログラムを起動すると、表示手段には図5(A)に示すメニュー画面M01が表示される。メニュー画面M01から分析期間M01aが入力(指定)され、項目選択部M01bにて分析表を作成する際の2つの項目(この例では、「来店回数と利用金額」の2項目、または「来店回数と投入遊技媒体数」の2項目を選択可能)が入力(指定)されると、制御手段は、図5(B)に示す分析表表示画面M02を表示する。なお、項目選択部M01bには、後述する「分析表の座標軸の設定」にて設定したものが自動的に追加される。
【0025】[2.分析表表示画面(図5(B))]分析表表示画面M02では、タイトル表示部M02aに、メニュー画面M01にて分析表の座標軸として指定された2つの項目名を含む分析表名称(この場合「来店回数-利用金額 相関関係分析表」)と、メニュー画面M01にて指定された分析期間が表示される。ここで、分析表は2つの項目(この場合、「来店回数」と「利用金額」)を座標軸として2次元状に複数のセルが配置されており、「2つの項目」は利用履歴情報M13に基づいた項目である。なお、「来店回数」は利用履歴情報M13に直接的な項目として記憶されていないが、例えば本部サーバSVは、2005年8月1日?2005年8月31日までの期間で会員ID「001」の会員の来店回数を求める場合、利用履歴情報M13から「利用日」が2005年8月1日?2005年8月31日のデータを抽出し、更にそのデータの中から「会員ID」が001のデータを抽出し、その数をカウントすることで来店回数を認識することができる。」

(カ)「【0032】[5.グループに該当する会員に関する情報の抽出(1)(図8)]以上の操作にて、分析表の形態が図6の分析表設定画面M03から行われ、グループの設定が図7のグループ設定画面M04から行われた後、例えば図5(B)に示す分析表表示画面M02において1つのセルを選択(指定)してボタンM02dから「グループセル選択」が選択(指示)されると、選択したセルと同一のグループ(この場合、第2グループ(図6参照))に属する全てのセル(この場合、一点鎖線内のセル4、セル5、セル14、セル15、セル21?セル25、セル31?セル35)に割り当てられている会員に関する情報を抽出する。この抽出結果の一例を、図8の下の表(M12A)に示した。なお、以降の説明にて記載する「会員に関する情報」とは、例えば会員登録情報M12から抽出した会員のユーザ名やメールアドレス等の連絡先である。」

(キ)「【0049】以上に説明したように、本発明のデータ分析支援システムは、集客率を向上させるために、宣伝等の販促処理を行えば来店の可能性が非常に高いと推定される会員を容易に抽出することができる。そして抽出した会員の会員登録情報M12からメールアドレスを抽出し、当該メールアドレス宛に特典等を付与した宣伝を送付すれば、集客につながらない無駄な宣伝を行うことなく、より有効な宣伝を行うことができる。
【0050】本発明のデータ分析支援システムは、本実施の形態で説明した外観、接続、構成、処理、表示例等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。本実施の形態の説明では、データ分析支援システムの機能を本部サーバSVに持たせた例を説明したが、データ分析支援システムの機能を店舗サーバ10に持たせてもよい。利用履歴情報M13の形式、各項目、収集方法等は、本実施の形態にて説明したものに限定されるものではない。データ分析支援システムからアクセス可能な記憶手段に記憶されていればよい。また、会員登録情報M12の形式、各項目等も、本実施の形態にて説明したものに限定されるこのではない。・・・」

エ 甲第2号証(実用新案登録第3188059号)
(ア)「【0001】この考案は、顧客情報や、顧客に対して案内する商品・サービスに関する商品案内情報を取得し、取得した情報をデータベース化して管理、運用することによって効果的なマーケティングを行う顧客情報運用システムに関する。」

(イ)「【0014】この考案は、顧客の属性を含む顧客に関する顧客情報をデータベース化して運用する顧客情報運用システムであって、取得した前記顧客情報を、顧客の属性を示す顧客属性コードと対応付けて記憶する顧客情報記憶手段と、顧客情報管理データベースとしてデータベース化した複数の前記顧客情報を前記顧客属性コードに応じたグループごとに分類(セグメント化)する顧客情報分類手段と、前記顧客情報管理データベースの中から所定の前記顧客属性コードに基づいて所定のグループに属する顧客情報を抽出する顧客情報抽出手段とを備えたことを特徴とする。・・・
【0018】前記顧客情報は、例えば、顧客の氏名、メールアドレス、携帯番号、住所などの顧客を特定できる情報をはじめ、顧客の属性に関する顧客属性情報も含む。前記顧客の属性とは、例えば、顧客の住所、年齢、性別、商品の購入履歴、サービスの利用回数、ポイント取得履歴、ポイント残高、嗜好特性、趣味、職業、年収、体重、BMI、家族構成、ICカードなどのカード番号、携帯番号、利用沿線、自家用車の車種、自宅の物件情報などの顧客の体型、性格、行動パターン、生活習慣、購買傾向など、顧客の性質、生活習慣、特徴、趣味・嗜好に関する情報を含む。」

(ウ)「【0026】詳しくは、例えば、案内ターゲットとする顧客層を決定した場合には、顧客情報抽出手段により、ターゲットとする顧客層に対応する前記顧客属性コードに基づく所定のグループに属する顧客情報を前記顧客情報管理データベースの中から抽出することができる。」

(エ)「【0031】ここで、前記情報入力手段は、例えば、顧客情報を入力可能な顧客情報入力手段と、商品、又はサービスに関する商品案内情報を入力可能な商品案内情報入力手段とのうち少なくとも一方の手段を挙げることができ、具体的には、例えばキーボード、タッチパネル、OCRスキャナ、或いは入力した音声を認識する音声認識手段を用いた手段などを挙げることができる。顧客情報入力手段としては、顧客情報を取得可能な手段であれば特に限定せず、また、商品案内情報入力手段としては、商品案内情報を取得可能な手段であれば特に限定しない。
【0032】前記情報出力手段は、例えば、ディスプレイなどの表示手段、メール送信手段、或いは音声出力手段を示す。
【0033】前記商品案内情報とは、商品、及びサービスに関する情報であればよく、例えば、商品、サービスの宣伝、広告情報に限らず、例えば、割引情報、クーポン情報などの特典情報や、商品の販売地、或いはサービスの提供場所を示す店舗情報など、宣伝情報に付随する情報も含む。」

(オ)「【0051】顧客情報記憶部121は、取得した顧客情報Hを、顧客の属性を示す顧客属性コードC5と対応付けしたうえで、複数の顧客情報Hを顧客情報管理データベースDB5としてデータベース化して記憶している。
【0052】詳しくは、顧客情報管理データベースDB5は、図2(a)に示すように、複数の顧客情報Hを顧客ごとに登録してテーブル構成されたデータベースである。顧客情報Hは、ユニークな顧客ID、氏名情報、電話番号情報、メールアドレス情報、性別情報、年齢層情報、及び、顧客属性コードC5からなる。
【0053】顧客属性コードC5は、顧客の属性として顧客の年齢層と性別を示すコードであり、図2(b)に示す顧客属性コード対応テーブルのように、顧客の年齢層と性別との2つのカテゴリを基に構成され、例えば、20代、30代、及び40代の3種類の年齢層と性別との組み合わせに応じて分類して合計6種類を備えている。」

(カ)「【0058】なお、前記案内内容情報は、例えば、該当する商品の宣伝広告内容や、該当する商品に関するクーポン情報や割引情報などの特典情報を示し、文字データに限らず、絵や写真を用いた静止画データ、動画データ、或いは音声データであってもよい。」

(キ)「【0064】顧客情報分類処理部111は、顧客情報管理データベースDB5としてデータベース化した複数の顧客情報Hを顧客属性コードC5の種類に応じたグループごとにセグメント化する処理を実行する処理部である。
【0065】顧客情報抽出処理部112は、顧客情報管理データベースDB5の中から所定の顧客属性コードC5に基づいて所定のグループに属する顧客情報Hを抽出する処理を実行する処理部である。」

(ク)「【0072】まず、顧客情報運用システム1は、取得すべき顧客情報Hとして、少なくとも顧客の氏名、性別、及び年齢に加えて電話番号やメールアドレスといった顧客の連絡先情報を顧客が直接的、或いは間接的に入力することを受け付ける(ステップS51)。
【0073】なお、顧客情報Hを入力する具体的手段として、顧客端末300において、商品を販売する販売元のホームページ画面に、顧客に対して顧客情報Hの入力を要求する所定のフォーマットを表示してクーポン情報を提供する条件として顧客に対して顧客情報Hの入力を促すことが想定される。
【0074】或いは、商品の販売元が運営する会員に入会する際に、顧客に対して顧客情報Hを要求し、顧客が入力することで顧客情報Hを取得してもよい。
【0075】その他にも、例えば、オペレータがオペレータ用電話機220を通じて顧客から聞いた顧客情報Hをオペレータ端末200のキーボード212を用いてオペレータが入力することで取得してもよく、このように顧客情報Hを入力する手段は特に限定しない。
【0076】なお、顧客情報運用システム1には、図示しないが、顧客情報Hを取得した際に、年齢層情報に関して、必ずしも年齢層(年代)が入力されずに、具体的な年齢が入力された場合でも、一桁目の端数を丸めて図2(b)の顧客属性コード対応テーブルに示した3種類の年齢層のうち該当する年齢層に自動的に変換されるように変換機能を備えている。
【0077】入力により取得した氏名情報、性別情報、年齢層情報、及び、電話番号情報とメールアドレス情報とのうち少なくとも1つの情報は、顧客情報管理データベースDB5に登録される。
【0078】登録に際しては、顧客情報分類処理部111によって、顧客情報Hのセグメント化処理が実行される(ステップS52)。
【0079】詳しくは、顧客情報Hのセグメント化処理において、顧客の氏名情報ごとに顧客IDが付与されるとともに、性別情報と年齢層情報から図2(b)に示す顧客属性コード対応テーブルに基づいて顧客属性コードC5が特定され、顧客IDごとに所定の顧客属性コードC5が付与されることで顧客情報Hがセグメント化される。」

(ケ)「【0093】まず、CPU110は、例えば、商品の販売元の従業員であるオペレータが、オペレータ端末200に備えたキーボード・マウス212を用いて自社商品の販売ターゲットとする顧客層の性別と年齢を入力することにより、顧客属性情報として性別情報と年齢層情報を受け付ける(ステップS11)。
【0094】顧客情報抽出処理部112は、入力された顧客属性情報としての性別情報と年齢層情報から図2(a)に示す顧客情報管理データベースDB5を基に顧客属性コードC5を特定する(ステップS12)。
【0095】例えば、オペレータが20代の女性を顧客層として入力した場合には、顧客情報抽出処理部112により、図2(a)に示す顧客情報管理データベースDB5を基に顧客属性コードC5は、「20F」に特定される(ステップS12)。
【0096】なお、上述したステップS11,S12において、顧客属性情報として性別、年齢を入力せずとも、直接、顧客属性コードC5の入力を受け付け可能に構成してもよい。
【0097】そして、顧客情報抽出処理部112は、図2(a)に示す顧客情報管理データベースDB5に基づいて、顧客情報管理データベースDB5に登録された複数の顧客情報Hの中からステップS12で特定された特定された所定の顧客属性コードC5と一致する顧客属性コードC5を有する顧客情報Hを抽出する(ステップS13)。」

(コ)「【0103】そして、情報出力指示処理部116は、例えば、少なくとも顧客IDが「h0002」である顧客情報Hの電話番号など、ステップ13において抽出した全ての顧客情報Hにおける氏名、電話番号などの情報をオペレータ端末200のディスプレイ211に表示する処理を実行する(ステップ16)。」

(4)判断
ア 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(ア)特許法第29条第2項について
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明は、「サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させ」て、「前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信」する事項を有しておらず、この点は相違点である。
そして、引用発明は、顧客セグメント分析手法としてRFM分析が選択された場合にRFM分析を実行し、会員顧客をいくつかのグループに分けて得られたグループごとに割引率または還元額を決定するものであるものの、ここでいうRFM分析は、顧客の最終購買日(Recency),利用回数または購買回数(Frequency),購買金額(Monetory)の組合せによって,各顧客に点数を付け,この点数により優良顧客とそうでない顧客等に顧客をセグメント化するものであり(【0009】)、RFM分析がこのような点数によるセグメント化を行うものであることが不可欠の前提とされている。
してみると、引用発明において、第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で店舗端末に表示し、第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で店舗端末に表示し、複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させたものからの店舗端末における選択により個客をセグメント化するように変更することは、これによって、点数による顧客のセグメント化を行うという引用発明における不可欠の前提を失わせることになるから、このような変更が動機付けられることはない。
してみると、本件発明1は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明2ないし6は、本件発明1の全ての発明特定事項を含む発明であるから、同様に、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件発明7と本件発明8は、それぞれ、本件発明1に対応する方法発明と本件発明7の方法をコンピュータに実行させるプログラムの発明であるから、いずれも、本件発明1と同様に、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、訂正により追加された事項について、引用発明が「RFM分析を行うものである」ことから、いずれも設計事項であると主張する。
しかし、(ア)で上述したとおり、引用発明の「RFM分析」は、各顧客に点数を付け、この点数により顧客をセグメント化するものであるから、この点数による顧客のセグメント化を行うという引用発明における不可欠の前提を失わせる変更が動機付けられることはなく、まして、このような変更について、設計事項であるということはできない。してみると、かかる主張は、理由がない。

イ 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立理由は、甲第1号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反、甲第2号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反、及び、甲第3号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反の主張であるところ、下記(ア)?(ウ)に示すとおり、いずれの主張も、理由がない。

(ア)甲第1号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反について
アで述べた理由と同様の理由により、本件発明1ないし8は、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲第2号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反について
甲第2号証は、(3)エにおいて上記した記載があり、これによれば、「顧客属性」に基づいて顧客をセグメント化するものであり、「顧客属性」には「行動パターン」や「購買傾向」を含む旨の記載はある(【0018】)ものの、主として性別や年齢に基づく顧客のセグメント化に関する技術的事項を開示するにとどまり(【0053】、【0079】)、「店舗に来店した日に関する情報」や「当該店舗で前記ユーザが購入した金額に関する情報」に係る分析を行う本件発明とは前提が異なる。
よって、本件発明1ないし8は、いずれも、甲第2号証に記載された発明から容易想到であるということができない。

(ウ)甲第3号証を主引用例とした特許法第29条第2項違反
甲第3号証は、(3)ウにおいて上記した記載があり、これによれば、データ分析支援システムにおいて、第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で表示し、第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で表示し、複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、表示させたものからの選択により個客をセグメント化するものを開示するものであるが、このデータ分析支援システムを店舗サーバ(本件発明1の「店舗端末」に相当する。)に設けたもの(【0016】、【0050】、図1)と各店舗サーバからの利用履歴情報を収集する本部サーバに設けたもの(【0016】、図2)とが記載されているにとどまり、「店舗端末からのリクエストに応答」して「当該店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出」して「店舗端末に表示」する分析手段は開示されていない。
また、データ分析支援システムを店舗サーバに設けたものにあっては、店舗サーバにおいて分析を行うのであるから「店舗端末からのリクエストに応答」するものにはなり得ないし、データ分析支援システムを本部サーバに設けたものにあっても、履歴の収集を本部サーバで行うにもかかわらず店舗サーバにおいて分析を行うことを示唆する記載はないから、「店舗端末からのリクエストに応答」し「当該店舗端末に対応する店舗における履歴情報」を抽出するものになり得ない。
よって、本件発明1ないし8は、いずれも、甲第3号証に記載された発明から容易想到であるということができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザを識別するためのユーザIDと、店舗に来店した日に関する情報と、当該店舗で前記ユーザが購入した金額に関する情報とを含む履歴情報を記録する履歴記録手段と、
前記店舗で使用される店舗端末または前記ユーザが使用するユーザ端末から、前記履歴情報を収集して、前記履歴記録手段に格納する収集手段と、
前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させるための分析手段と、
前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信する配信手段と、
を備える情報管理装置。
【請求項2】
前記収集手段は、ユーザが店舗を予約する際に取得した前記ユーザの氏名、電話番号またはログインIDに基づいて、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1記載の情報管理装置。
【請求項3】
前記収集手段は、店舗に設置された発信機から発信されたビーコンを受信したユーザ端末から、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1または2記載の情報管理装置。
【請求項4】
前記収集手段は、前記ユーザ端末に表示された画像から、前記店舗端末がユーザIDを読み取ることによって、前記履歴情報に含まれるユーザIDを取得することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項5】
前記分析手段は、ユーザ毎に集計された、所定期間における前記店舗への来店回数及び累積購入金額、並びに、最新の来店日または購入日に関する情報に基づいて、ユーザを前記複数のグループに分けることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項6】
前記所定のデータは、クーポンに関するデータを含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の情報管理装置。
【請求項7】
ユーザを識別するためのユーザIDと、店舗に来店した日に関する情報と、当該店舗で前記ユーザが購入した金額に関する情報とを含む履歴情報を記録する履歴記録手段を使用可能なコンピュータのプロセッサにおいて、
前記店舗で使用される店舗端末または前記ユーザが使用するユーザ端末から、前記履歴情報を収集して、前記履歴記録手段に格納することと、
前記店舗端末からの分析処理のリクエストに応答して、前記店舗端末に対応する店舗における履歴情報を前記履歴記録手段から抽出し、所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記店舗に来店した日に関する情報について第1数のサブグループに分け、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを、サブグループごとに所定の割合のユーザが含まれるように、前記ユーザが購入した金額に関する情報について第2数のサブグループに分け、前記第1数のサブグループ及び前記第2数のサブグループの全ての組合せが複数のグループのうちいずれか1つと対応するように、前記所定期間内に当該店舗に来店したユーザを前記複数のグループに分け、前記第1数のサブグループを第1軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記第2数のサブグループを第2軸に沿って区別可能な態様で前記店舗端末に表示し、前記複数のグループを、前記第1軸及び前記第2軸で囲まれる平面上に、前記複数のグループの特性を表す文字とともに区別可能な態様で、前記店舗端末に表示させることと、
前記店舗端末によって、前記複数のグループのうちから1つのグループが選択されたことに応答して、前記選択されたグループに属するユーザに対して、所定のデータを配信することと、
を実行する情報管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の情報管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-22 
出願番号 特願2015-133073(P2015-133073)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 梅岡 信幸木方 庸輔渡邉 加寿磨  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
宇多川 勉
登録日 2016-01-29 
登録番号 特許第5875167号(P5875167)
権利者 株式会社リクルートホールディングス
発明の名称 情報管理装置及び情報管理方法  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 稲葉 良幸  

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