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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1337359 |
審判番号 | 不服2016-17968 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-01 |
確定日 | 2018-03-05 |
事件の表示 | 特願2013-237074「プラズマチャンバーにおいて半導体ワークピースを取り巻く導電性カラー」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開,特開2014- 90177,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2002年2月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2001年4月3日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2002-580374号の一部を平成22年1月29日に新たな特許出願とした特願2010-18786号の一部を平成25年11月15日に新たな特許出願としたものであって,平成25年12月16日に審査請求がなされ,平成26年7月18日に上申書が提出され,同年9月24日付けで拒絶理由が通知され,平成27年3月30日に意見書と手続補正書が提出され,同年7月2日付けで拒絶理由が通知され,平成28年1月7日に意見書が提出され,同年7月27日付けで拒絶査定され,同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され,平成29年1月11日に手続補正書が提出され,同年5月10日に上申書が提出され,同年6月19日付けで当審から拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し,同年12月7日にファクシミリにより補正案が提出され,同年12月8日に電話応対がなされ,同年12月25日に意見書と手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.(進歩性)この出願の請求項1?15に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第01/01445号 2.国際公開第99/14788号 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-15 ・引用文献等 1-5 ・備考 <引用例1を主引例とした検討> ア 引用例1には,FIG.1ないしFIG.11Bとともに,以下の記載がある。(日本語訳は,対応する日本国公表特許公報による。) (引1a)「【請求項40】 ワークピースの炭化水素層をエッチングするプラズマ強化プロセスであって, 前記炭化水素層をエッチングするプロセスガス混合物をプラズマチャンバの内側に供給するステップと, 前記チャンバ内の前記プロセスガス混合物の少なくとも1部からプラズマを形成するステップと, 前記プラズマに面する上面を有する陰極電極を前記チャンバ内に供給するステップと, 前記陰極電極の上面に隣接して前記ワークピースを保持するステップと, 前記ワークピースの周辺を取り巻くように,誘電体物質で構成されるシールドを配置するステップと, 前記誘電体シールドの少なくとも1部分の上に重なるリングを配置するステップとを含み, 前記リングが,前記プラズマに含有される化学種による腐食に対して前記誘電体物質よりも耐性を有する非誘電体物資で構成されるプラズマ強化半導体製造プロセス。 【請求項41】 前記シールドが,二酸化ケイ素で構成され,また前記リングが,シリコンで構成される請求項40に記載のプロセス。 【請求項42】 前記炭化水素層が,リソグラフ耐性物質である請求項40に記載のプロセス。 【請求項43】 ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスであって, 前記スピン-オンガラス層をエッチングするプロセスガス混合物をプラズマチャンバの内側に供給するステップと, 前記チャンバ内の前記プロセスガス混合物の少なくとも1部からプラズマを形成するステップと, 前記プラズマに面する上面を有する陰極電極を前記チャンバ内に供給するステップと, 前記陰極電極の上面に隣接して前記ワークピースを保持するステップと, 前記ワークピースの周辺を取り巻くように,誘電体物質で構成されるシールドを配置するステップと, 前記誘電体シールドの少なくとも1部分の上に重なるリングを配置するステップとを含み, 前記リングが,前記プラズマに含有される化学種による腐食に対して前記誘電体物質よりも耐性を有する非誘電体物資で構成されるプラズマ強化半導体製造プロセス。 【請求項44】 前記シールドが,二酸化ケイ素で構成され,前記リングが,シリコンで構成される請求項43に記載のプロセス。」 (引1b)「【0037】 別の例として,石英シールド30の腐食によって放出される酸素は,ウェーハの二酸化ケイ素をエッチングするプロセスに異なる効果を有している。そのような腐食プロセスが,ウェーハに露呈されるあらゆるシリコンのエッチングに対してできる限り選択的であることが望ましい。典型的な酸化物腐食プロセスにおいて,酸素は,二酸化ケイ素のエッチングを促進しないが,シリコンのエッチングを促進する。その結果,石英シールド30の腐食は,一般に,ウェーハの周辺近くの腐食プロセスの選択性を減少する。 【0038】 両例示において,ウェーハの周辺近くの空間均一性又は選択性の低下は,腐食プロセスにかなり影響を及ぼす化学種を放出しない物質から構成される保護リング50を有する石英シールド30のインナ部分38をカバーすることによって改善されることが可能である。初期に説明されたように,イオン束が,石英シールドの露呈表面とプロセスガスとの間の反応速度を一般に減速するワークピースの周辺から下に傾いているので,保護リングを有する石英シールド30のアウタ部分をカバーする必要はない。 【0039】 シリコンは,プロセスキットの寿命を延ばすのに効果的であるとして,即ち,誘電体及び金属をエッチングするのに一般に使用される試薬による腐食に対して良好な耐性及び低い不純物レベルを有する簡単な利用性として,初期に記述されたのと同一理由で,保護リング50にとって好ましい物質である。シリコンは,CF_(4)又はCHF_(3)などのフッ素含有試薬を使用する腐食プロセスの均一性を改善するのに別の利点を有している。プラズマのフッ素イオンの高濃度は,一般に,腐食プロセスの選択性を減少する。ワークピースと隣接してシリコン物質を供給すると,ワークピースに隣接してフッ素イオン濃度を減少するため,シリコンは,フッ素イオンと反応し,フッ素イオンを消耗する(「化学的に除去する」)。例えば,酸化ケイ素をエッチングするためのプロセスにおいて,シリコンリング50の存在により,フォトレジストに対する腐食の選択性を改善すると考えられている,即ち,フォトレジストの腐食速度を減少すると考えられている。 【0040】 図7は,保護リング50が誘電体シールド30の露呈表面のより大きい部分をカバーし,それによって,腐食から保護される誘電体シールド30の領域を増大するということを除いては,図4の設計と類似する別の設計を示している。特に,図示されている保護リング50は,上方に面する全表面と,誘電体シールド30の内方に面する全表面をカバーしている。その結果として,図7は,保護リング50の以前に記述した両機能,即ち,プロセスキットの寿命を延ばすことと,誘電体シールド30とプロセスガスとの間の化学的相互作用のよって生ずる半導体製造プロセスの空間不均一性を減少することとをさらなる進歩を設計している。 【0041】 図5及び図6は,更に,保護リング50が,図4の設計におけるよりも多い誘電体シールドをカバーするが,図7の設計におけるよりも少ない誘電体シールドをカバーする図4と図7との間の中間の別の設計を示している。特に,図5及び図6において,保護リング50は,下部リング56と上部リング58とを備え,上部リング58は,部分的に,又は全体的に,誘電体シールド30の内方に面する高架表面32をカバーしている。プロセスにより,図5又は図6の設計は,誘電体シールド30が腐食するのを適切に防止し,それによって,プロセスの化学現象を変える。 【0042】 図7の設計が,特に,石英誘電体シールド30の腐食から放出される酸素によって強度に作用されない半導体製造プロセスに好都合であると考えられている。初期に記述したように,そのようなプロセスはフォトレジスト平坦化エッチングプロセスと,スピン-オンーガラスエッチングプロセスとを含む。保護リング50によってカバーされる石英シールド30の領域を増加することは,更に,石英から酸素を放出することを減少する。そのような放出は,ワークピースの中心に対してか鉱物の周辺近くの腐食速度を増大し,それによって,ワークピースを上の腐食速度の空間均一性を低下する。 【0043】 保護シールド50は,初期に記述したようにフッ素イオンを化学的に除去する利点を有するシリコンで構成されることが好ましい。フッ素含有試薬を使用して酸化ケイ素をエッチングするプロセスにおいて,図7の設計は,プラズマに露呈されるシリコンシールド50の表面領域を増大するので,ワークピースに隣接したフッ素イオンの濃度を更に減少し,それによって,腐食プロセスの選択性を改善する。 【0044】 シリコンシールドの露呈表面領域を増大する1つの可能な利点は,エッチングプロセスの効果がかなりのもとなり,その温度感度をよりよく表示させることである。プラズマ腐食チャンバで通常生ずる温度の範囲内で,シリコンシールドの温度を増大すると,フッ素との反応性を増大する。その結果,シリコンシールドが,プラズマに対して露呈される大きな表面領域を有する設計において,良好なプロセスの反復性を確実にするために,シリコンシールドの温度を調整する必要がある。」 イ 上記記載及び引用例1の図面の記載から,引用例1の「ワークピースの周辺を取り巻くように,誘電体物質で構成されるシールド」及び「『シリコンで構成される』『誘電体シールドの少なくとも1部分の上に重なるリング』」は,それぞれ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)の「誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールド」及び「『半導体材料で構成され』『上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる』『中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラー』」に相当すると認められる。 ウ 一方,引用例1には,シリコンで構成されるリングの抵抗率が示されておらず,この点で,引用例1に記載された発明と,本願発明1とは相違する。(相違点1) エ 上記相違点1について検討する。 引用例1の上記摘記(1b)の「シリコンは,CF_(4)又はCHF_(3)などのフッ素含有試薬を使用する腐食プロセスの均一性を改善するのに別の利点を有している。プラズマのフッ素イオンの高濃度は,一般に,腐食プロセスの選択性を減少する。ワークピースと隣接してシリコン物質を供給すると,ワークピースに隣接してフッ素イオン濃度を減少するため,シリコンは,フッ素イオンと反応し,フッ素イオンを消耗する(「化学的に除去する」)。例えば,酸化ケイ素をエッチングするためのプロセスにおいて,シリコンリング50の存在により,フォトレジストに対する腐食の選択性を改善すると考えられている,即ち,フォトレジストの腐食速度を減少すると考えられている。」,「保護シールド50は,初期に記述したようにフッ素イオンを化学的に除去する利点を有するシリコンで構成されることが好ましい。フッ素含有試薬を使用して酸化ケイ素をエッチングするプロセスにおいて,図7の設計は,プラズマに露呈されるシリコンシールド50の表面領域を増大するので,ワークピースに隣接したフッ素イオンの濃度を更に減少し,それによって,腐食プロセスの選択性を改善する。」との記載から,引用例1のシリコンで構成されるリングは,CF_(4)又はCHF_(3)などのフッ素含有試薬を使用する腐食プロセスの均一性,及び,腐食の選択性を改善する機能を果たすことが求められていることが理解される。 そして,引用例1の上記摘記(1b)の「プラズマ腐食チャンバで通常生ずる温度の範囲内で,シリコンシールドの温度を増大すると,フッ素との反応性を増大する。その結果,シリコンシールドが,プラズマに対して露呈される大きな表面領域を有する設計において,良好なプロセスの反復性を確実にするために,シリコンシールドの温度を調整する必要がある。」との記載から,前記機能を適切に発揮するためには,「シリコンシールドの温度を調整する必要がある。」ことを理解することができる。 オ 一方,引用例2には,以下の記載がある。 (引2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,半導体ウェハ等の加工物を,ポリマ前駆体ガスなどのエッチング選択性向上前駆体材料(etch selectivity-enhancing precursor material)を用いる処理でもって処理するためのプラズマリアクタに関する。」 (引2b)「【0006】【課題を解決するための手段】・・・加熱されたポリマ硬化前駆体(例えば,シリコン)部品の材料は,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比,フッ素に対する水素の処理ガス成分比,及び,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比を温度増加の関数として変化させることによって,重合に有利に関与し,その結果として生じるポリマが実質的に強化される。リアクタチャンバ内のポリマ硬化前駆体材料部品が加熱されて,重合温度(ポリマ前駆体材料が表面上に凝縮することができる温度)を超えてより高い温度範囲までに達したとき,エッチング選択性は温度上昇とともに高まる。このように,本発明の基本的な方法は,(シリコン,炭素,炭化珪素又は窒化珪素,とりわけ好適にはシリコンのような)ポリマ硬化前駆体材料部品を,エッチング処理中に,炭化フッ素,フッ化炭化水素ガスと共にリアクタチャンバに提供し,当該ポリマ硬化前駆体材料部品を加熱して,重合温度を十分に上回る温度(すなわち,より高い温度範囲)にして,これまで得られたシリコンに対する酸化物のエッチング選択性が所望の増加をすることが達成されることである。」 (引2c)「【0009】 ポリマ硬化前駆体(例えばシリコン)部品は,リアクタチャンバの壁部及び/又は天井部の一部と一体となっていてもよい。しかしながら,それは,できれば別体の迅速取外し可能消耗部品であるものが好ましく,また,加熱/冷却装置は,伝導又は遠隔方式でポリマ硬化前駆体部品を加熱する任意の適当なタイプのものでよい。」 (引2d)「【0013】 好ましい実施形態において,ポリマ硬化前駆体消耗部品は,ウェハ支持体すなわちウェハチャックの周縁部から,半径方向外向きにチャンバ側壁部に向かって延びる平らなシリコン環状体又はベースプレートである。(更に,もし必要ならば,シリコンベースプレートはシールドにも役立ち,ある種のプラズマリアクタに用いられるウェハペデスタル上のウェハを保持する下のセラミッククランプ(又は静電チャック)が,プラズマから保護されることができる。)好ましい実施形態において,シリコンベースプレートは,下にあるコイルによって誘導加熱されるが,他の任意の適当な遠隔加熱技術,例えば赤外線放射加熱を用いることができる。この目的のために,適当な抵抗率を有するシリコン材料が,加熱シリコン部品用として選択されて,その下にあるコイルによる効率的な誘導加熱と少なくともほぼ完全な誘導磁界の吸収が確保され,シリコン部品が熱シールドだけでなく,プラズマシールドとしても機能するようになる。」 (引2e)「【0027】・・・そのような交換可能なポリマ硬化前駆体部品は,容易に作成可能な任意の形状(例えば平面環状,平面リング状,中実リング状,円筒状,板状等々)とすることができ,リアクタチャンバ内の任意の場所に置くことができる。しかし,図4(A)の実施形態では,ポリマ硬化前駆体消耗部品が,ウェハペデスタル16の周辺を取り囲む(シリコンのような)ポリマ硬化前駆体材料からなる薄い平らな環状リング60になっている。このリング60は,チャンバ内の任意の適当な平面に置くことができるが,従来のウェハ搬送機構によるアクセスを可能にするため,このシリコンリング60はウェハペデスタル16上に保持されたウェハ17の面のやや下方又は近傍に置かれる。 【0028】 ポリマ硬化前駆体リング60と温度直接制御装置との一体化又は機械的結合の必要性を排除するため,直接伝導以外の(例えば放射又は誘導)加熱方法を用いることが望ましい。タングステンハロゲンランプ又は放電ランプ等の放射熱源を用いることができる。放射又は誘導熱源は例えば,リング60から離さずに内部に,或いは,例えば透明窓部を介してリング60から離して外部に置くことができる。図4(A)の実施形態においては,外部誘導ヒータを用いて,少なくとも誘導結合の目的のためにはほぼ透明である石英のような材料製の窓部64によってポリマ硬化前駆体リング60から離した誘導コイル62を構成している。最も効率のよい誘導加熱を行うためは,ポリマ硬化前駆体リング60を,抵抗率が十分に低い,例えば0.01Ω-cm程度のシリコンで形成する。」 カ また,引用例3には,以下の記載がある。 (引3a)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,ポリマー前駆ガス等の選択エッチング促進前駆物質を用いたプロセスにより半導体ウエハ等のワークピースを処理するためのプラズマリアクタに関する。」 (引3b)「【0015】 例えば,シリコン対シリコン酸化物エッチング選択比におけるのと同様の向上も達成されるが(本明細書において後に記載されるように),本発明によって達成されるフォトレジスト選択比に本発明の効力が見出される。」 (引3c)「【0019】 ポリマー硬化前駆物質リング60を温度制御装置に統合するか又は機械的に直接結合するか,いずれかの必要性を除くため,直接伝導(例えば,輻射加熱又は誘導加熱)以外の他の方法による加熱を採用するのが好ましい。タングステンハロゲンランプ又は放電ランプなどの輻射加熱源が使用されてもよい。例えば,輻射又は誘導加熱源は透過窓によってリング60から分離された内部にある平面状環状リング60から分離されるか又は,加熱源が外部にある。第4A図の実施例では,少なくとも誘導結合の目的のためほぼ透明なクオーツなどの材料の窓64によりポリマー硬化前駆物質リング60から分離された誘導コイル62を構成する外部誘導加熱体が採用される。最も効率的な誘導加熱を提供するため,ポリマー硬化前駆物質リング60が十分低い固有抵抗,例えば,0.01Ω-cmの桁のシリコンから形成される。」 キ してみれば,引用例2,3の上記記載から,エッチング処理中に,炭化フッ素,フッ化炭化水素ガスをリアクタチャンバに提供して,半導体ウェハ等の加工物を,エッチング処理するためのプラズマリアクタにおいて,シリコンリングをウェハペデスタル上に保持されたウェハの面のやや下方又は近傍に置き,当該リングを,温度直接制御装置との一体化又は機械的結合の必要性を排除するために誘導加熱方法を用いて加熱することで,加熱された前記シリコンが,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比,フッ素に対する水素の処理ガス成分比,及び,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比を温度増加の関数として変化させて重合に有利に関与することによって,シリコンに対する酸化物のエッチング選択性,あるいは,フォトレジスト選択比を高めることができること,及び, シリコンベースプレートが,下にあるコイルによって誘導加熱される目的のために,適当な抵抗率を有するシリコン材料を,加熱シリコン部品用として選択する必要があるところ,最も効率のよい誘導加熱を行うためは,ポリマ硬化前駆体リングを,抵抗率が十分に低い,例えば0.01Ωcm程度のシリコンで形成することが望ましいことが理解される。 ク そうすると,引用例1と,引用例2,3に接した当業者であれば,「CF_(4)又はCHF_(3)などのフッ素含有試薬を使用する腐食プロセスの均一性,及び,腐食の選択性を改善する機能を果たす」ために,「シリコンシールドの温度を調整する必要がある」とされる引用例1に記載された発明において,前記「シリコンシールドの温度」の調整を,「温度直接制御装置との一体化又は機械的結合の必要性を排除する」ことができる「誘導加熱方法」を用いて行うために,引用例1に記載されたプラズマ腐食チャンバに,誘導加熱用の誘導コイルを設けるとともに,「シリコンで構成される」「誘電体シールドの少なくとも1部分の上に重なるリング」の材料として,最も効率のよい誘導加熱を行うことができるとされる,例えば0.01Ωcm程度のシリコンを選択すること,すなわち,相違点1について,本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,本願の請求項1に係る発明は,引用例1ないし3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 ケ 請求項2ないし15に係る発明についても,抵抗率を0.1Ωcm等の低い値とすることは,上記<引例1を主引例とした検討>エないしクと同様の理由により当業者が容易に想到し得たことであり,また,その他の構成も引用例1ないし5に記載されている事項であるか,設計事項であるから,当業者が容易に発明をすることができたものである。 コ なお,審判請求人は,本願発明の効果として,ワークピースからの電気的アークの低減について主張する。しかしながら,当該効果は,下記の「理由2」で示すように,本願の請求項に記載された事項によって特定される発明において,常に奏せられる効果であるとはいえないから,当該主張は,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。 さらに,当該効果は,引用例5の【0027】等の記載に照らして,当業者が予測する範囲内のものともいえる。 したがって,審判請求人の前記主張は採用することができない。 <引例4を主引例とした検討> ア 引用例4には,FIG.1ないしFIG.6とともに,以下の記載がある。(日本語訳は,対応する日本国公表特許公報による。) (引4a)「【0036】 外側エッジリング412は,チャック404の外部表面418を保護するために使用される。更に外側エッジリング412及び内側高周波結合エッジリング408は,チャック404との間に隙間のある継ぎ目ができないように配置される。外側エッジリング412に使用される材料は絶縁すなわち誘電材料である(例えば,セラミック,石英,ポリマ)。一実施形態において,外側エッジリング412の材料は,チャック406からの任意の有効な高周波結合を提供しない。したがって,外側エッジリング412は,エッチング処理中,大きく消耗しないことになる。別の実施形態においては,外側エッジリング412がチャック406と誘電結合しないことを保証するために,チャック404と外側エッジリング412との間に,誘電(すなわち絶縁)材料の充填層を設けることができる。例えば,充填層の材料は,セラミック,石英,テフロン(登録商標),又はポリマを含む幅広い適切な材料から選択することができる。 【0037】 チャック406に高周波電力を加えることで,電場が生成され,次にウェーハ406の上にシース424が生じる。シース424に伴う電場は,ウェーハ406の上面に向かうイオンの加速を促進する。内側高周波結合エッジリング408は,チャック404に提供される高周波エネルギの一部が内側高周波結合エッジリング408を通じて高周波結合されるように,適切な特性を有する材料で作られる。高周波結合エッジリング408は,プラズマ処理を汚染しない様々な材料で作ることができる。適切な材料の例には,半導体材料(炭化ケイ素等)又は絶縁材料が含まれ,この材料の導電性はドーピング等を通じて制御することができる。内側高周波結合エッジリング408の材料とその導電性は,望ましい高周波結合の度合いに応じて選択することができる。通常,高周波結合は,薄い内側高周波結合エッジリング408を使うこと,或いは内側高周波結合エッジリング408として使用する材料の導電性を増加させることで,高めることができる。内側高周波結合エッジリング408がウェーハ406のエッチングに伴ってエッチングされる場合は,汚染物質が生成されるべきではなく,かつ,過度に高価な材料にするべきではない。定期的な交換が必要になるためである。一方,一実施形態において,外側エッジリング412の材料はチャック406からの任意の有効な高周波結合を提供せず,その結果,大体において定期的な交換を必要としないことになる。」 イ 上記記載及び引用例4の図面の記載から,引用例4の「外側エッジリング」及び「内側高周波結合エッジリング」は,それぞれ,本願発明1の「誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールド」及び「『半導体材料で構成され』『上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる』『中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラー』」に相当すると認められる。 ウ 一方,引用例4には,ドーピング等を通じて制御される半導体材料の抵抗率が示されておらず,この点で,引用例4に記載された発明と,本願発明1とは相違する。(相違点2) エ 上記相違点2について検討する。 引用例2の上記摘記(引2e),引用例3の上記摘記(引3c),及び,引用例5の「【0008】好ましくは,カラーリングは,薄いコーティングまたは層,あるいは導体の周辺部を覆う誘電材料の環状リングを備える。カラーリングにより,導体の周辺部からのRF電界構成成分は,そこを通ってプラズマシースに結合できる。好ましくは,誘電材料は,約10^(-3)Ωcm?約10^(1)Ωcmという低い抵抗を有する半導体誘電材料を含み,それは,電圧がチャックの電極に印加されるときに小さい電流が誘電材料を通って流れることができるほど十分に漏れやすい。」(日本語訳は,対応する日本国公表特許公報による。)の記載に照らして,ドープされたシリコンの抵抗率として,0.1Ωcm程度よりも小さい値は,格別のものとはいえない。 一方,引用例4の上記摘記(4a)には,「内側高周波結合エッジリング408の材料とその導電性は,望ましい高周波結合の度合いに応じて選択することができる。通常,高周波結合は,薄い内側高周波結合エッジリング408を使うこと,或いは内側高周波結合エッジリング408として使用する材料の導電性を増加させることで,高めることができる。」と記載されている。 してみれば,引用例4に記載された発明において,ドープされたシリコンの抵抗率を,0.1Ωcm程度よりも小さい値とすることは適宜なし得たことである。 そして,下記の「理由2」で示すように,本願の請求項に記載された事項によって特定される発明において,ワークピースからの電気的アークの低減との効果が,シリコンの抵抗率が0.1Ωcm以下という条件で常に奏せられるとは認められないから,「抵抗率が0.1Ωcm以下」との特定に臨界的な意義を認めることもできない。 すなわち,相違点2について,本願発明1の構成を採用することは当業者が適宜なし得たことである。 したがって,本願の請求項1に係る発明は,引用例2ないし5に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 請求項2ないし15に係る発明についても,抵抗率を0.1Ωcm等の低い値とすることは,上記<引例4を主引例とした検討>エと同様の理由により当業者が容易に想到し得たことであり,また,その他の構成も引用例1ないし5に記載されている事項であるか,設計事項であるから,当業者が容易に発明をすることができたものである。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第99/14788号(日本語訳については,対応する日本国公表特許公報である特表2001-516948号公報を参照。) 2.特開平10-64882号公報 3.特開平10-150021号公報 4.国際公開第01/01445号(日本語訳については,対応する日本国公表特許公報である特表2003-503841号公報を参照。) 5.国際公開第99/14796号(日本語訳については,対応する日本国公表特許公報である特表2001-516967号公報を参照。) 2 この出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決を参照。) 。 以下,上記の観点に立って,本願のサポート要件について検討する。 (2)前提となる事実関係等 ア 本願の特許請求の範囲の記載 本願の請求項1ないし15に記載された発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明15」という。また,これらを併せて「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.1Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる,プロセスキット。 【請求項2】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, ドープされた半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり, 上記ドープされた半導体材料は,抵抗率を0.1Ωcm以下とするに充分な濃度のドーパントを有する半導体材料で構成される,プロセスキット。 【請求項3】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.1Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり, 前記導電性カラーは, 内側リングと, 前記内側リンクの外側に放射状に配置され,前記内側リングとは別個の外側リングとを備えたプロセスキット。 【請求項4】 上記導電性カラーは,抵抗率が0.03Ωcm以下である,請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項5】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.012Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる,プロセスキット。 【請求項6】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, ドープされた半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり, 上記ドープされた半導体材料は,抵抗率を0.012Ωcm以下とするに充分な濃度のドーパントを有する半導体材料で構成される,プロセスキット。 【請求項7】 前記導電性カラーは, 内側リングと, 前記内側リンクの外側に放射状に配置され,前記内側リングとは別個の外側リングとを備えた請求項5又は6に記載のプロセスキット。 【請求項8】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.008?0.012Ωcmの範囲の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる,プロセスキット。 【請求項9】 上記誘電体シールドの上記一部分は,上記導電性カラーのいずれの部分も上記誘電体シールドを貫いて上記誘電体シールドの最下面まで延びないように上記導電体カラーの下に横たわっている,請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項10】 上記誘電体シールドは,上記導電性カラーに面する前面を有し, 上記導電性カラーは,上記誘電体シールドの上記前面を完全にカバーする,請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項11】 上記誘電体シールドは,半径方向内側の部分と,半径方向外側の部分で構成され, 上記導電性カラーは,上記誘電体シールドの上記半径方向内側の部分の上に横たわる,請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項12】 上記導電性カラーは,その半径方向の巾が少なくとも5.7mmである,請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項13】 上記導電性カラーは,上記ワークピースエリアの周囲を越えて半径方向に少なくとも4mm延びる,請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項14】 上記導電性カラーは,その厚みが少なくとも0.7mmである,請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスキット。 【請求項15】 上記導電性カラーは,その厚みが少なくとも1.8mmである,請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセスキット。」 イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。 (ア)「【0006】 ワークピースがその周囲付近に露出金属を有し,この露出金属の位置に大きな電界が存在する場合には,露出金属と,チャック電極又は金属ペデスタル本体との間に電気的アークが時々発生し得る。アークは,それにより生じる電流及び熱がワークピース上の電気的コンポーネントにダメージを及ぼすので,極めて望ましからぬものである。アーク発生の確率を高める要因は,カソードにかかる高いDCバイアス電圧,高いチャック電圧,及びチャンバー内のプラズマ密度を向上させるための磁界の使用を含む。」 (イ)「【0010】 本発明の導電性カラーは,ワークピースの周囲の露出金属からアークが発生するおそれを効果的に減少又は排除する。」 (ウ)「【発明を実施するための形態】 【0013】 1.プロセスチャンバーの従来の要素 図2は,本発明を使用できる典型的な半導体製造プロセスチャンバーを示す。図示されたチャンバーは,エッチング又は化学蒸着(CVD)に適した磁気増強型プラズマチャンバーである。本発明の導電性カラーを説明する前に,このチャンバーの従来の要素について説明する。 【0014】 このプロセスチャンバーは,円筒状側壁12,円形下壁14及び円形上壁即ち蓋16により包囲された真空チャンバーである。蓋16の下部にアノード電極18が取り付けられ,これは,通常,電気的に接地される。このアノード電極は,ガス導入口として働くように孔が設けられて,これを通してプロセスガスがチャンバーに入るようにしてもよい。チャンバー壁12-16の各々は,通常,金属であるが,壁の幾つか又は全部を半導体や誘電体にすることもできる。誘電体でない壁は,通常,電気的に接地されて,アノードの一部分として機能する。 【0015】 半導体ウェアのようなワークピース即ち基板10は,ワークピース支持部材即ちペデスタル20の実質的に平らな前面(「前」面とは,アノードに面するペデスタルの面をいう)に取り付けられる。ペデスタルは,通常,チャンバーの下壁に取り付けられ支持される。(ペデスタルを支持する構造部は,示されていない。)ペデスタルは,通常,以下に述べるようにカソード電極として機能する金属本体22を有するが,このペデスタル本体は,静電チャック誘電体に埋設された電極のような別の電極がカソード電極として接続される場合には,金属でなくてもよい。 <・・・途中省略・・・> 【0037】 3.誘電体シールドの上に横たわる導電性カラー ワークピース即ち基板10がその周囲付近に露出金属を有し,この露出金属の位置に大きな電界が存在する場合には,露出金属と,プロセスキット又はチャック電極との間に電気的アークが時々発生し得る。 【0038】 半導体デバイスの製造において,ワークピースの縁からある距離以上接近してワークピースに材料を付着してはならないと従来から言われており,この距離は,「縁除外分」と称される。200mm直径のシリコンウェハの場合には,縁除外分は,3mmから5mmである。縁除外分を必要とする主たる目的は,ロボットがワークピースの縁を掴んだときに粒子が放出するのを回避するためである。 【0039】 通常,ワークピースの縁に金属を露出させてはならないが,このような露出は,ワークピースに次々の層を付着しエッチングするときに整列エラーによっても生じ得る。金属特徴部が整列エラーのために縁除外ゾーンへ若干延びる場合には,それに続く誘電体又はレジスト層の整列ずれや,縁レジスト除去プロセスの不充分な制御の結果として,これら後続層によりそれが完全にカバーされないことがある。 【0040】 アークは,それにより生じる電流や熱がワークピース上の電気的コンポーネントにダメージを及ぼすと共に,アークにより発生する多数の小さな粒子でワークピースが汚染され得るので,極めて望ましくない。アーク発生の確率を高める要因は,カソード電極にかかる高いDCバイアス電圧,高いチャック電圧,及びチャンバー内のプラズマ密度を向上させるための磁界の使用を含む。 【0041】 アーク発生の主たる原因は,ワークピースの周囲付近に強い半径方向成分を有する電界であると考えられる。この半径方向電界は,カソードと接地点との間のRF電圧と,カソードDCバイアス電圧と,チャック電圧との組合せにより発生されると考えられる。 【0042】 本発明においては,従来の誘電体シールド40の上に横たわり且つワークピースの周囲を厳密に取り巻く高導電性カラーにより,アーク発生のおそれが劇的に減少され又は排除される。この導電性カラーとワークピースの周囲との間のギャップは,できるだけ僅かであるか又はゼロであるのが好ましい。これは,導電性カラーの内半径(即ち半径方向内側の境界)がワークピースの外半径(即ち周囲)以下であって,ワークピースの周囲が導電性カラーの半径方向内側部分に接触するか又は重畳する場合に達成される。 <・・・途中省略・・・> 【0047】 本発明は,このような理論に限定されないが,導電性カラーがアーク発生を防止するメカニズムは,次の通りであると考えられる。導電性カラーは,導電率が高いので,その全面にわたってほぼ等しい電位を課する。これは,ワークピースの縁付近で半径方向電界を減少するときに少なくとも2つの利点を有する。第1に,カラーがワークピースの周囲から半径方向外方に延びる距離にわたり,電界は,カラーの表面においてゼロに近づく。第2に,カラーは,ワークピースを取り巻き,ワークピースの周囲にわたりほぼ等しい電位を課するので,ワークピースの平面に沿った電界が減少される。 <・・・途中省略・・・> 【0049】 4.比較テスト 図1及び図2に示した本発明の実施形態を,外側カラー即ちリング50及び内側カラー即ちリング52に対して他の材料を使用するプロセスキットで比較した。より詳細には,200mm直径のシリコンウェハにパッド用の開口を形成するために酸化シリコン及び窒化シリコンの誘電体層をエッチングする従来の磁気増強型プラズマ補助プロセスを実行しながらアーク発生についてテストした。テストに使用したウェハは,誘電体層の下にパターン化された金属特徴部を有するものであった。ウェハは,2つの異なる製造ロットから得られ,第2ロットからのウェハは,第1ロットからのウェハよりもアークを発生する傾向が高いものであった。 【0050】 処理後にウェハを目視検査したり,チャンバー内の閃光を目視監視したり,カソードDCバイアス電圧,チャック電圧,及びRF電源とカソードとの間の反射電力を連続的に監視したりする多数の方法によりアークを検出した。監視されたいずれの値のスパイクもアークの徴候と解釈した。 【0051】 例1:導電性の外側カラー50及び内側カラー52は,ドープされたシリコンの抵抗率が0.008から0.012Ωcmの範囲となるような硼素濃度でドープされたシリコンで構成した。アークは全く観察されなかった。その結果は,ドープされたシリコンが単結晶シリコンであるか多結晶シリコンであるかに無関係であった。 【0052】 対照1:比較のために,前節で述べた導電性リングと同じ寸法を有するが,抵抗率が約2Ωcmの軽くドープされたシリコンで構成された従来の外側カラー50及び内側カラー52に置き換えた。本発明をテストするのに使用したものと同じエッチングプロセス及びテストウェアを使用して,アーク発生の多数の実例を検出すると共に,両ロットからのテストウェアへのダメージを観察した。 【0053】 対照2:又,10^(5)Ωcmの非常に高い抵抗率を有する炭化シリコンで構成される以外は同じ外側カラー50及び内側カラー52についても比較した。アーク発生の多数の実例を検出すると共に,両ロットからのテストウェアへのダメージを観察した。 【0054】 例2:例1でテストした導電性内側カラー52は,軸方向厚みが3.6mmであった。例2として,例1の内側カラーの厚みの半分である1.8mmの厚みを有する導電性内側カラー52に置き換えた。内側カラーの下の誘電体シールドの部分の厚みを1.8mm増加し,そのプロセスキットが例1の場合と同じスペースを占有するようにした。例2の薄いカラー52は,例1の厚いカラーと同程度に良好に機能し,即ちアーク発生の実例は検出されなかった。それ故,テストされたものより大きい軸方向厚みを有するカラーを使用したときに,何らかの性能上の利益が得られるとは考えられない。厚いカラーの主たる効果は,交換を必要とするまでにより多くの浸食に耐えることができ,且つ割れ難くて,個人が手で取り扱う間に偶発的なダメージを受け難いことである。 【0055】 例3:図3は,導電性カラー54が単に平らな環状のもので,その外径が誘電体シールド44の外径に等しい本発明の別の実施形態を示す。この導電性カラーの上面は,ウェハ10の下面と同一平面であり,従って,ワークピースの平面の上に(前方に)延びる焦点リングは存在しない。誘電体シールド44は,その平らな上面が導電性カラー54の平らな下面に一致している。同じテスト条件の下で,例3の実施形態は,例1及び2の実施形態と同程度に良好に機能し,即ちアーク発生は全く検出されなかった。これは,持ち上がった焦点リングを持つことが,本発明のアーク減少の利益を得るために重要でないことを実証している。 【0056】 例4:図4は,導電性の内側カラー52を含むが,導電性の外側カラー50を含まない本発明の別の実施形態を示す。テストにおいて,この実施形態の誘電体シールド46のサイズは,図2の実施形態の誘電体シールド40及び外側カラー52の合成サイズと同じであった。導電性の内側カラー52は,図2の実施形態をテストするのに使用されたものと同じであった。同じテスト条件のもとで,若干のアークを検出したが,対照1及び対照2の場合より遥かに少ないものであった。より詳細には,第1ロットからのウェハは,アークのダメージを全く示さなかったが,監視されている電圧においてアークの潜在性を示すスパイクが検出された。第2ロットからのウェハは,アークのダメージを示した。 【0057】 例1,2及び3が例4より良好に機能したという事実は,全半径方向巾が非常に小さい導電性カラー50,52,54が最良のアーク抑制を達成しないことを示している。例1,2及び4では,内側の導電性カラー52は,その半径方向巾が5.7mmであり(104mm外半径から98.2mm内半径を引いたもの),そのうちの4mmは,ウェハの周囲を越えて半径方向に(即ち外側に)延びており,1.7mmは,ウェハの背後に(即ち下に)あり,即ち100mm半径のウェハが静電チャックの周囲を1.7mmだけオーバーハングしている。例1の外側導電性カラー50及び例3の平らな導電性カラー54は,外半径が134mmであり,従って,例1及び2の導電性カラーは,100mm半径ウェハの周囲を越えて34mm延びる全半径方向巾を有する。 【0058】 ウェハの周囲を越える半径方向巾は,導電性カラーの最も重要な寸法であると考えられる。これらのテストは,カラーが,図3の実施形態のようにウェハの周囲を越えて少なくとも4mm,好ましくは,少なくとも8mm延びる場合に,導電性カラーのアーク抑制性能が良好になることを指示している。図2の実施形態のようにカラーがウェハの周囲を越えて少なくとも34mm延びるときにはアーク抑制が完全であった。 【0059】 上記テストに使用された要素の他の特性は,次の通りであった。導電性外側カラー50は,ウェハの平面より上の(前方の)持ち上がりが6mmであった。静電チャックの誘電体26は,10mm厚みの窒化アルミニウムであった。誘電体シールドは,石英で,内側カラー52の下の厚みが6.3mmであり,外側カラー50の下の厚みが11.4mmであった。 【0060】 上記テストに使用されたエッチングプロセスの条件は,次の通りであった。電源32により供給されるRF電力は,13.56MHzの周波数において1500ワットであり,これは,接地されたチャンバー壁に対して-1500ボルトのDCバイアスをペデスタル本体22に発生した。チャック電源28は,接地点に対して-800ボルトをチャック電極24に供給した。 【0061】 チャンバーの圧力は,150ミリtorrであり,エッチングプロセスガスの流量は,50sccmCF_(4),30sccmCHF_(3),10sccmSF_(6),10sccmN_(2),及び100sccmArであった。」 ウ 本願発明の課題 本願明細書の記載(前記イ)によれば,本願発明の課題は,「ワークピースの周囲の露出金属からアークが発生するおそれを効果的に減少又は排除すること」を目的とするものと認められる。(【0010】) (3)検討 ア 前記(2)アのとおり,本願発明は,「半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって,誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと,抵抗率が0.1Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある導電性カラーとを備え,上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる,プロセスキット」であること等を発明特定事項とする発明である。 イ 一方,前記(2)イの記載から,以下の事項が理解される。 ・ワークピースがその周囲付近に露出金属を有し,この露出金属の位置に大きな電界が存在する場合には,露出金属と,チャック電極又は金属ペデスタル本体との間に電気的アークが時々発生し得ること。(【0006】) ・アーク発生の確率を高める要因は,カソードにかかる高いDCバイアス電圧,高いチャック電圧,及びチャンバー内のプラズマ密度を向上させるための磁界の使用を含むこと。(【0006】) ・半導体ウェアのようなワークピース即ち基板が,通常,カソード電極として機能する金属本体を有するペデスタルの実質的に平らな前面に取り付けられること。(【0015】) ・ワークピース即ち基板10がその周囲付近に露出金属を有し,この露出金属の位置に大きな電界が存在する場合には,露出金属と,プロセスキット又はチャック電極との間に電気的アークが時々発生し得ること。(【0037】) ・アーク発生の主たる原因は,ワークピースの周囲付近に強い半径方向成分を有する電界であると考えられ,この半径方向電界は,カソードと接地点との間のRF電圧と,カソードDCバイアス電圧と,チャック電圧との組合せにより発生されると考えられること。(【0041】) ・本発明においては,従来の誘電体シールド40の上に横たわり且つワークピースの周囲を厳密に取り巻く高導電性カラーにより,アーク発生のおそれが劇的に減少され又は排除され,この導電性カラーとワークピースの周囲との間のギャップは,できるだけ僅かであるか又はゼロであるのが好ましく,これは,導電性カラーの内半径(即ち半径方向内側の境界)がワークピースの外半径(即ち周囲)以下であって,ワークピースの周囲が導電性カラーの半径方向内側部分に接触するか又は重畳する場合に達成されること。(【0042】) ・本発明は,このような理論に限定されないが,導電性カラーがアーク発生を防止するメカニズムは,次の通りであると考えられること。すなわち,導電性カラーは,導電率が高いので,その全面にわたってほぼ等しい電位を課し,これは,ワークピースの縁付近で半径方向電界を減少するときに,(i)カラーがワークピースの周囲から半径方向外方に延びる距離にわたり,電界は,カラーの表面においてゼロに近づくこと,及び,(ii)カラーは,ワークピースを取り巻き,ワークピースの周囲にわたりほぼ等しい電位を課するので,ワークピースの平面に沿った電界が減少されること,という少なくとも2つの利点を有すること。(【0047】) ・200mm直径のシリコンウェハにパッド用の開口を形成するために酸化シリコン及び窒化シリコンの誘電体層をエッチングする従来の磁気増強型プラズマ補助プロセスを実行しながら, 誘電体層の下にパターン化された金属特徴部を有するテストウェハを使用して, 電源により供給されるRF電力は,13.56MHzの周波数において1500ワットであり,これは,接地されたチャンバー壁に対して-1500ボルトのDCバイアスをペデスタル本体に発生するものであり,チャック電源は,接地点に対して-800ボルトをチャック電極24に供給し,チャンバーの圧力は,150ミリtorrであり,エッチングプロセスガスの流量は,50sccmCF_(4),30sccmCHF_(3),10sccmSF_(6),10sccmN_(2),及び100sccmArであるエッチングプロセスの条件のもとで, アーク発生についてテストしたこと。(【0049】,【0060】,【0061】) ・導電性の外側カラー50,及び, 軸方向厚みが3.6mm(1.8mm)であって,その半径方向巾が5.7mmであり,そのうちの4mmは,ウェハの周囲を越えて半径方向に(即ち外側に)延びており,1.7mmは,ウェハの背後に(即ち下に)ある内側カラー52を, ドープされたシリコンの抵抗率が0.008から0.012Ωcmの範囲となるような硼素濃度でドープされたシリコンで構成して, 上記エッチングプロセス及び上記テストウェハを用いた場合には,アークは全く観察されなかったこと。(【0051】,【0054】,【0057】) ・抵抗率が約2Ωcmの軽くドープされたシリコン,あるいは,10^(5)Ωcmの非常に高い抵抗率を有する炭化シリコンで構成された従来の外側カラー50及び内側カラー52に置き換えて,上記エッチングプロセス及び上記テストウェハを使用した場合には,アーク発生の多数の実例を検出したこと。(【0052】,【0053】) ・ウェハの周囲を越える半径方向巾は,導電性カラーの最も重要な寸法であると考えられ,カラーが,ウェハの周囲を越えて少なくとも4mm,好ましくは,少なくとも8mm延びる場合に,導電性カラーのアーク抑制性能が良好になり,カラーがウェハの周囲を越えて少なくとも34mm延びるときにはアーク抑制が完全であったこと。(【0058】) ウ そうすると,前記イから,導電率を高めた導電性カラーを,従来の誘電体シールドの上に,ワークピースの周囲を厳密に取り巻くように,且つ,この導電性カラーとワークピースの周囲との間のギャップをできるだけ僅かであるか又はゼロであるように(すなわち,導電性カラーの内半径がワークピースの外半径以下であってワークピースの周囲が導電性カラーの半径方向内側部分に接触するか又は重畳するように)横たわらせることで,周囲付近に露出金属を有するワークピースの前記露出金属と,チャック電極又は金属ペデスタル本体との間に電気的アークが発生することを抑制することができること,具体的には, 200mm直径のシリコンウェハにパッド用の開口を形成するために酸化シリコン及び窒化シリコンの誘電体層をエッチングする従来の磁気増強型プラズマ補助プロセスを実行する場合において,前記導電性カラーが,抵抗率が0.008から0.012Ωcmの範囲となるように硼素濃度でドープされたシリコンで構成されたものであって,導電性の外側カラー50,及び,軸方向厚みが3.6mm(1.8mm)であって,半径方向巾が5.7mmであり,そのうちの4mmは,ウェハの周囲を越えて半径方向に(即ち外側に)延びており,1.7mmは,ウェハの背後に(即ち下に)ある内側カラー52からなるものである場合に,アークが全く観察されなかったことが理解される。 エ 一方,本願発明の「導電性カラー」は,その形状を,「中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある」とのみ特定するものである。 そうすると,本願発明の「導電性カラー」は,その内縁を特定しないから,本願発明に係るプロセスキットは,例えば,導電性カラーの内周径が,ワークピースの外周径の2倍であって,導電性カラーとワークピースの周囲との間に大きなギャップ有するものを含有するといえる。 あるいは,ワークピースの外周の形が矩形であって,導電性カラーの内周の形が円形であるため,導電性カラーとワークピースの周囲との間の一部に,ギャップ有するものを含有するといえる。 また,本願発明の「導電性カラー」は,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にあることを特定するだけで,その程度を特定しないから,本願発明に係るプロセスキットは,例えば,導電性カラーの外周が,ワークピースの外周を,0.1mm程度超えて,半径方向外側に延びるものを含有する。 あるいは,本願発明に係るプロセスキットは,例えば,導電性カラーの厚さが,数オングストローム程度であって,単原子層から構成されるものを含有するといえる。 しかしながら,上記ウの理解に照らして,このような構造を有するプロセスキットによって,本願発明に係る,「ワークピースの周囲の露出金属からアークが発生するおそれを効果的に減少又は排除すること」という課題を解決することができると認識することはできない。 オ さらに,発明の詳細な説明の記載から,抵抗率が0.008から0.012Ωcmの範囲となるようにドープされた導電性カラーを用いた場合に,アークが観察されなかったことが理解されるとしても,本案発明で特定する,「抵抗率が0.1Ωcm」の場合に,アークが観察されないとまでは,直ちに認識することはできない。 カ しかも,本願発明は,「上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわる」ものであるから,導電性カラーの一部が,誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわるものを含有するといえる。 そうすると,本願発明は,導電性カラーの底面の大部分がペデスタルを構成するカソード電極として機能する金属本体に直接接触し,導電性カラーの外周部近傍の底面の一部が,誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわるものを含有するといえるが,このようなプロセスキットにおいては,導電性カラーの抵抗率が0.1Ωcm以下であるという高導電性によって,導電性カラーが電極として機能するものと認められ,本願発明の課題は解決されないといえる。 キ すなわち,請求項の記載には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,あるいは,請求項の記載は,発明の詳細な説明において効果があることが示された範囲を超えている。 したがって,本願明細書の記載(ないし示唆)はもとより,本願出願当時の技術常識に照らしても,請求項1ないし15の記載によって特許を請求しようとする範囲の全てにおいて,本願発明の課題を解決できると当業者が認識することはできないというべきである。 そうすると,本願の特許請求の範囲の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。 <<上申書における補正の示唆について>> 審判請求人は,平成29年5月10日に提出した上申書において,各独立請求項において,「・・・,プロセスキット」を,「・・・,上記ワークピースからの電気的アークが低減される,プロセスキット」と補正することを示唆する。 しかしながら,前記「上記ワークピースからの電気的アークが低減される」との記載が,プロセスキットという物品の,どのような形状・構造等を特定しようとするものであるかを明確に理解することはできない。 したがって,上記補正をした場合には,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないものとなるので,補正にあたっては留意されたい。 第4 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,平成29年12月25日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されている事項により特定される発明であり,独立形式で記載された請求項に係る発明である,本願発明1ないし本願発明3は,以下のとおりである。 「【請求項1】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.1Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記導電性カラーの下側面の全体を覆うようになっており, 上記導電性カラーが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。 【請求項2】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられ,上記ワークピースからの電気的アークを低減するためのプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.012Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記導電性カラーの下側面の全体を覆うようになっており, 上記導電性カラーが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。 【請求項3】 半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられ,上記ワークピースからの電気的アークを低減するためのプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 抵抗率が0.008?0.012Ωcmの範囲の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある導電性カラーとを備え, 上記導電性カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記導電性カラーの下側面の全体を覆うようになっており, 上記導電性カラーが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。」 第5 特許法第29条第2項(進歩性)について 1 引用文献,引用発明等 (1)引用文献1について 当審拒絶理由で引用した引用文献1(国際公開99/14788号:原査定の引用文献2)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。) 「43. A plasma-enhanced process for etching a spin-on glass layer on a workpiece, comprising the steps of: providing into the interior of a plasma chamber a process gas mixture for etching said spin-on glass layer; forming a plasma from at least a portion of the process gas mixture within the chamber; providing within the chamber a cathode electrode having an upper surface facing the plasma; holding said workpiece adjacent the upper surface of the cathode electrode; positioning a shield, composed of dielectric material, so as to encircle the perimeter of the workpiece; and positioning a ring overlying at least a portion of the dielectric shield, wherein the ring is composed of a non-dielectric material which is more resistant than the dielectric material to erosion by chemical species contained in the plasma. 44. A process according to claim 43, wherein the shield is composed of silicon dioxide and the ring is composed of silicon.」(第31ページ第10-23行)(日本語訳:43. ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスであって, 前記スピン-オンガラス層をエッチングするプロセスガス混合物をプラズマチャンバの内側に供給するステップと, 前記チャンバ内の前記プロセスガス混合物の少なくとも1部からプラズマを形成するステップと, 前記プラズマに面する上面を有する陰極電極を前記チャンバ内に供給するステップと, 前記陰極電極の上面に隣接して前記ワークピースを保持するステップと, 前記ワークピースの周辺を取り巻くように,誘電体物質で構成されるシールドを配置するステップと, 前記誘電体シールドの少なくとも1部分の上に重なるリングを配置するステップとを含み, 前記リングが,前記プラズマに含有される化学種による腐食に対して前記誘電体物質よりも耐性を有する非誘電体物資で構成されるプラズマ強化半導体製造プロセス。 44. 前記シールドが,二酸化ケイ素で構成され,前記リングが,シリコンで構成される請求項43に記載のプロセス。) 「Figure 2 is a schematic longitudinal sectional view of a plasma chamber according to the invention having a dielectric shield comprising a thick outer dielectric shield and a thin inner dielectric shield, and having a non-dielectric collar covering the inner shield.」(第4ページ第17-19行)(日本語訳:図2は,厚いアウタ誘電体シールドと薄いインナ誘電体シールドとを備える誘電体シールドを有し,且つインナシールドをカバーする非誘電カラーを有する本発明によるプラズマチャンバの概略長手方向断面図である。) 「2. Protective Ring to Prevent Erosion of Dielectric Shield Figures 2 and 3 show a protective ring or erosion-resistant ring 50 overlying the radially inner portion 38 of the dielectric shield 30, that is, overlying the dielectric closest to the perimeter of the wafer 20. The dielectric shield or collar 30 and the protective ring 50 together constitute the "process kit" which must be periodically replaced when either of these two components becomes noticeably eroded.」(第6ページ第7-12行)(日本語訳:2.誘電体シールドの腐食を保護する保護リング 図2及び図3は,誘電体シールド30の半径方向インナ部分38の上に広がる,即ち,ウェーハ20の周辺に密接する誘電体の上に広がる保護リング又は耐腐食リング50を示している。 誘電体シールド又はカラー30,及び保護リング50は,これら2つのコンポーネントの何れかが,顕著に腐食されたとき,定期的に取り換えられる必要がある「プロセスキット」を共に構成する。) 「In a silicon oxide etch chamber, the protective ring 50 preferably is composed of pure silicon. Silicon is advantageous because it is resistant to erosion by reactive species generally used in oxide etch processes, and because it readily can be obtained in forms having extremely low impurity concentrations to as to avoid the release of contaminants into the chamber. Single crystal silicon is preferred because it can be obtained with the highest purity.」(第7ページ第21-25行)(日本語訳:二酸化ケイ素腐食チャンバにおいて,保護リング50は,純シリコンで構成されることが好ましい。シリコンは,酸化物腐食プロセスに一般に使用される反応種による腐食に耐性であるので,またそれは,チャンバに汚染物質を放出するのを回避するように,非常に低い不純物濃度を有する形状で使用可能であるので,好都合である。単一の結晶シリコンは,高純度で使用できるので,好ましい。) FIG.2は,厚いアウタ誘電体シールドと薄いインナ誘電体シールドとを備える誘電体シールドを有し,且つインナシールドをカバーする非誘電体カラーを有する引用文献1に記載された発明によるプラズマチャンバの概略長手方向断面図であって,引用文献1の上記記載を参酌すれば,同図から,以下の構造を見て取ることができる。 「ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスで用いられるプラズマチャンバ内において,ワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールド30と, 純シリコンで構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある保護リング50とを備え, 上記保護リング50が,上記誘電体シールド30の少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールド30が上記保護リング50の下側面の全体を覆うようになっており, 上記保護リング50が,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。」 したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (2)引用発明1 「ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスで用いられるプラズマチャンバ内において,ワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 純シリコンで構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある保護リングとを備え, 上記保護リングが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記保護リングの下側面の全体を覆うようになっており, 上記保護リングが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。」 (3)引用文献2ないし5について ア 当審拒絶理由で引用した引用文献2(特開平10-64882号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,半導体ウェハ等の加工物を,ポリマ前駆体ガスなどのエッチング選択性向上前駆体材料(etch selectivity-enhancing precursor material)を用いる処理でもって処理するためのプラズマリアクタに関する。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】・・・加熱されたポリマ硬化前駆体(例えば,シリコン)部品の材料は,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比,フッ素に対する水素の処理ガス成分比,及び,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比を温度増加の関数として変化させることによって,重合に有利に関与し,その結果として生じるポリマが実質的に強化される。リアクタチャンバ内のポリマ硬化前駆体材料部品が加熱されて,重合温度(ポリマ前駆体材料が表面上に凝縮することができる温度)を超えてより高い温度範囲までに達したとき,エッチング選択性は温度上昇とともに高まる。このように,本発明の基本的な方法は,(シリコン,炭素,炭化珪素又は窒化珪素,とりわけ好適にはシリコンのような)ポリマ硬化前駆体材料部品を,エッチング処理中に,炭化フッ素,フッ化炭化水素ガスと共にリアクタチャンバに提供し,当該ポリマ硬化前駆体材料部品を加熱して,重合温度を十分に上回る温度(すなわち,より高い温度範囲)にして,これまで得られたシリコンに対する酸化物のエッチング選択性が所望の増加をすることが達成されることである。」 「【0009】ポリマ硬化前駆体(例えばシリコン)部品は,リアクタチャンバの壁部及び/又は天井部の一部と一体となっていてもよい。しかしながら,それは,できれば別体の迅速取外し可能消耗部品であるものが好ましく,また,加熱/冷却装置は,伝導又は遠隔方式でポリマ硬化前駆体部品を加熱する任意の適当なタイプのものでよい。」 「【0013】好ましい実施形態において,ポリマ硬化前駆体消耗部品は,ウェハ支持体すなわちウェハチャックの周縁部から,半径方向外向きにチャンバ側壁部に向かって延びる平らなシリコン環状体又はベースプレートである。(更に,もし必要ならば,シリコンベースプレートはシールドにも役立ち,ある種のプラズマリアクタに用いられるウェハペデスタル上のウェハを保持する下のセラミッククランプ(又は静電チャック)が,プラズマから保護されることができる。)好ましい実施形態において,シリコンベースプレートは,下にあるコイルによって誘導加熱されるが,他の任意の適当な遠隔加熱技術,例えば赤外線放射加熱を用いることができる。この目的のために,適当な抵抗率を有するシリコン材料が,加熱シリコン部品用として選択されて,その下にあるコイルによる効率的な誘導加熱と少なくともほぼ完全な誘導磁界の吸収が確保され,シリコン部品が熱シールドだけでなく,プラズマシールドとしても機能するようになる。」 「【0027】・・・そのような交換可能なポリマ硬化前駆体部品は,容易に作成可能な任意の形状(例えば平面環状,平面リング状,中実リング状,円筒状,板状等々)とすることができ,リアクタチャンバ内の任意の場所に置くことができる。しかし,図4(A)の実施形態では,ポリマ硬化前駆体消耗部品が,ウェハペデスタル16の周辺を取り囲む(シリコンのような)ポリマ硬化前駆体材料からなる薄い平らな環状リング60になっている。このリング60は,チャンバ内の任意の適当な平面に置くことができるが,従来のウェハ搬送機構によるアクセスを可能にするため,このシリコンリング60はウェハペデスタル16上に保持されたウェハ17の面のやや下方又は近傍に置かれる。 【0028】ポリマ硬化前駆体リング60と温度直接制御装置との一体化又は機械的結合の必要性を排除するため,直接伝導以外の(例えば放射又は誘導)加熱方法を用いることが望ましい。タングステンハロゲンランプ又は放電ランプ等の放射熱源を用いることができる。放射又は誘導熱源は例えば,リング60から離さずに内部に,或いは,例えば透明窓部を介してリング60から離して外部に置くことができる。図4(A)の実施形態においては,外部誘導ヒータを用いて,少なくとも誘導結合の目的のためにはほぼ透明である石英のような材料製の窓部64によってポリマ硬化前駆体リング60から離した誘導コイル62を構成している。最も効率のよい誘導加熱を行うためは,ポリマ硬化前駆体リング60を,抵抗率が十分に低い,例えば0.01Ω-cm程度のシリコンで形成する。」 イ 上記記載から,引用文献2には,エッチング処理中に,炭化フッ素,フッ化炭化水素ガスをリアクタチャンバに提供して,半導体ウェハ等の加工物を,エッチング処理するためのプラズマリアクタにおいて,シリコンリングをウェハペデスタル上に保持されたウェハの面のやや下方又は近傍に置き,当該リングを,温度直接制御装置との一体化又は機械的結合の必要性を排除するために誘導加熱方法を用いて加熱することで,加熱された前記シリコンが,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比,フッ素に対する水素の処理ガス成分比,及び,フッ素に対する炭素の処理ガス成分比を温度増加の関数として変化させて重合に有利に関与することによって,シリコンに対する酸化物のエッチング選択性,あるいは,フォトレジスト選択比を高めることができること,及び, シリコンベースプレートが,下にあるコイルによって誘導加熱される目的のために,適当な抵抗率を有するシリコン材料を,加熱シリコン部品用として選択する必要があるところ,最も効率のよい誘導加熱を行うためは,ポリマ硬化前駆体リングを,抵抗率が十分に低い,例えば0.01Ω-cm程度のシリコンで形成することが望ましいという技術的事項が記載されていると認められる。 ウ 当審拒絶理由で引用した引用文献3(特開平10-150021号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,ポリマー前駆ガス等の選択エッチング促進前駆物質を用いたプロセスにより半導体ウエハ等のワークピースを処理するためのプラズマリアクタに関する。」 「【0015】例えば,シリコン対シリコン酸化物エッチング選択比におけるのと同様の向上も達成されるが(本明細書において後に記載されるように),本発明によって達成されるフォトレジスト選択比に本発明の効力が見出される。」 「【0019】ポリマー硬化前駆物質リング60を温度制御装置に統合するか又は機械的に直接結合するか,いずれかの必要性を除くため,直接伝導(例えば,輻射加熱又は誘導加熱)以外の他の方法による加熱を採用するのが好ましい。タングステンハロゲンランプ又は放電ランプなどの輻射加熱源が使用されてもよい。例えば,輻射又は誘導加熱源は透過窓によってリング60から分離された内部にある平面状環状リング60から分離されるか又は,加熱源が外部にある。第4A図の実施例では,少なくとも誘導結合の目的のためほぼ透明なクオーツなどの材料の窓64によりポリマー硬化前駆物質リング60から分離された誘導コイル62を構成する外部誘導加熱体が採用される。最も効率的な誘導加熱を提供するため,ポリマー硬化前駆物質リング60が十分低い固有抵抗,例えば,0.01Ω-cmの桁のシリコンから形成される。(省略)」 エ 上記記載から,引用文献3には,シリコン対シリコン酸化物選択比,あるいは,フォトレジスト選択比の向上を達成するために,ポリマー硬化前駆物質リングを,最も効率的な誘導加熱が提供される,十分低い固有抵抗,例えば,0.01Ω-cmの桁のシリコンによって形成して,前記ポリマー硬化前駆物質リングを誘導加熱するという技術的事項が記載されていると認められる。 オ 当審拒絶理由で引用した引用文献4(国際公開第01/01445号:原査定の引用文献1)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「FIG. 4 illustrates a plasma processing apparatus 400 according to one embodiment of a third aspect of the invention. The plasma processing apparatus 400 includes a wafer processing chamber 402 having an electrostatic chuck (ESC) 404. The chuck 404 acts as an electrode and supports a wafer 406 (i.e.. substrate) during fabrication. An inner RF coupled edge ring 408 borders a notch 410 of the chuck 404 and provides a RF coupled region the extends beyond the edges of the wafer 406. An outer edge ring 412 borders the inner RF coupled edge ring 408 and an outer edge of the chuck 404. The inner RF coupled edge ring 408 is used to shield the notch 410 of the chuck 404 from ion bombardment such as during etch processes. As shown in FIG. 4, the notch 410 of the chuck 404 is adjacent an inner surface 414 and a bottom surface 416 of the inner RF coupled edge ring 408. The inner surface 414 is also within the outer edge of the wafer 406. An outer surface 418 of the inner RF coupled edge ring 408 extends beyond the outer edge of the wafer 406 and beyond an outer edge 420 of the chuck 404. An upper portion of the inner surface 414 of the RF coupled edge ring 408 includes a recessed area 414. The wafer 406 sits in the recessed area 414 and covers the seam between the inner surface 414 of the inner RF coupled edge ring 408 and the outer surface of the chuck 404 that is adjacent the inner RF coupled edge ring 408. A top surface 422 of the inner RF coupled edge ring 408 is substantially at the same height as a top surface of the wafer 406. The outer surface 418 of the inner RF coupled edge ring 408 is at a predetermined distance X from the edge of the wafer 406. The predetermined distance X can vary depending on implementation and particular processes being performed. Typically, 1 -2 centimeters is a suitable for the predetermined distance X for most processes. The outer edge ring 412 is used to shield the outer surface 418 of the chuck 404. The arrangement of the outer edge ring 412 and the inner RF coupled edge ring 408 also prevent any open seams to the chuck 404. The material used for the outer edge ring 412 is an insulator or dielectric material (e.g.. ceramic, quartz, and polymer). In one embodiment, the material for the outer edge ring 412 does not provide any significant RF coupling from the chuck 406. Hence, the outer edge ring 412 should not be significantly consumed during etch processing. In another embodiment, a filler layer of dielectric (or insulator) material can be provided between the chuck 404 and the outer edge ring 412 so as to insure the outer edge ring 412 is not RF coupled to the chuck 406. As an example, the material for the filler layer can be chosen from a variety of appropriate materials, including ceramic, quartz, Teflon, or polymers. Application of RF power to the chuck 406 results in the formation of an electric field and in turn a sheath 424 above the wafer 406. The electric field associated with the sheath 424 promotes the acceleration of ions toward the top surface of the wafer 406. The inner RF coupled edge ring 408 is made of material with suitable properties so that a portion of the RF energy provided to the chuck 404 is RF coupled through the inner RF coupled edge ring 408. RF coupled edge ring 408 can be made from a variety of materials that will not contaminate the plasma processing. Examples of suitable materials include semiconducting materials (e.g., Silicon Carbide) or dielectric materials, wherein the conductivity of the material can be controlled through doping and the like. The material and its conductivity of the inner RF coupled edge ring 408 are chosen depending on the degree of the RF coupling desired. Typically, RF coupling can be improved by either using a thinner, inner RF coupled edge ring 408 or increasing the conductivity of the material used as the inner RF coupled edge ring 408. Given that the inner RF coupled edge ring 408 will be etched as the wafer 406 is etched, it should not produce contaminants and should not be too expensive of a material because it will require periodic replacement. On the other hand, in one embodiment, the material for the outer edge ring 412 does not provide any significant RF coupling from the chuck 406 and thus should not require periodic replacement for the most part.」(第9ページ第28行-第11ページ第12行)(日本語訳::図4は,本発明の第三の態様の一実施形態によるプラズマ処理装置400を示している。このプラズマ処理装置400は,静電チャック(ESC)404を有するウェーハ処理チャンバ402を含む。このチャック404は電極として機能し,製造中,ウェーハ406(つまり基板)を支持する。内側高周波結合エッジリング408はチャック404のノッチ410に隣接し,ウェーハ406のエッジを超えて延びる高周波結合領域を提供する。外側エッジリング412は内側高周波結合エッジリング408とチャック404の外部エッジとに隣接する。 内側高周波結合エッジリング408は,エッチングプロセス中等にチャック404のノッチ410をイオン衝撃から保護するために使用される。図4に示すように,チャック404のノッチ410は内側高周波結合エッジリング408の内部表面414及び底面416に隣接する。更に内部表面414はウェーハ406の外部エッジの内側にある。内側高周波結合エッジリング408の外部表面418は,ウェーハ406の外部エッジを超え,チャック404の外部エッジ420を超えて延びる。内側高周波結合エッジリング408の内部表面414の上部は陥凹領域414を含む。ウェーハ406は陥凹領域414に置かれ,内側高周波結合エッジリング408の内部表面414と,内側高周波結合エッジリング408に隣接するチャック404の外部表面と,の間の継ぎ目を覆う。内側高周波結合エッジリング408の上面422は,ウェーハ406の上面とほぼ同じ高さにある。内側高周波結合エッジリング408の外部表面418は,ウェーハ406のエッジから所定の距離Xの位置にある。所定の距離Xは,実装品と,実行される特定のプロセスと,に応じて変化する。通常,ほとんどのプロセスに関して,所定の距離Xには1乃至2センチメートルが最適である。 外側エッジリング412は,チャック404の外部表面418を保護するために使用される。更に外側エッジリング412及び内側高周波結合エッジリング408は,チャック404との間に隙間のある継ぎ目ができないように配置される。外側エッジリング412に使用される材料は絶縁すなわち誘電材料である(例えば,セラミック,石英,ポリマ)。一実施形態において,外側エッジリング412の材料は,チャック406からの任意の有効な高周波結合を提供しない。したがって,外側エッジリング412は,エッチング処理中,大きく消耗しないことになる。別の実施形態においては,外側エッジリング412がチャック406と誘電結合しないことを保証するために,チャック404と外側エッジリング412との間に,誘電(すなわち絶縁)材料の充填層を設けることができる。例えば,充填層の材料は,セラミック,石英,テフロン(登録商標),又はポリマを含む幅広い適切な材料から選択することができる。 チャック406に高周波電力を加えることで,電場が生成され,次にウェーハ406の上にシース424が生じる。シース424に伴う電場は,ウェーハ406の上面に向かうイオンの加速を促進する。内側高周波結合エッジリング408は,チャック404に提供される高周波エネルギの一部が内側高周波結合エッジリング408を通じて高周波結合されるように,適切な特性を有する材料で作られる。高周波結合エッジリング408は,プラズマ処理を汚染しない様々な材料で作ることができる。適切な材料の例には,半導体材料(炭化ケイ素等)又は絶縁材料が含まれ,この材料の導電性はドーピング等を通じて制御することができる。内側高周波結合エッジリング408の材料とその導電性は,望ましい高周波結合の度合いに応じて選択することができる。 通常,高周波結合は,薄い内側高周波結合エッジリング408を使うこと,或いは内側高周波結合エッジリング408として使用する材料の導電性を増加させることで,高めることができる。内側高周波結合エッジリング408がウェーハ406のエッチングに伴ってエッチングされる場合は,汚染物質が生成されるべきではなく,かつ,過度に高価な材料にするべきではない。定期的な交換が必要になるためである。一方,一実施形態において,外側エッジリング412の材料はチャック406からの任意の有効な高周波結合を提供せず,その結果,大体において定期的な交換を必要としないことになる。) FIG.4は,引用文献4に記載された発明の第三の態様の一実施例による,内側高周波結合エッジリングと外側エッジリングとを含むプラズマ処理装置を示す図であって,引用文献4の上記記載を参酌すれば,同図から,以下の構造を見て取ることができる。 「プラズマ処理装置400の,電極として機能する静電チャック(ESC)404を有するウェーハ処理チャンバ402内でウェーハ406の付近に取り付けられる内側高周波結合エッジリング408と,該内側高周波結合エッジリング408に隣接する外側エッジリング412であって, 誘電材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ウェーハの外縁よりも外側にある外側エッジリング412と, 適切な材料の例には,半導体材料(炭化ケイ素等)又は絶縁材料が含まれ,この材料の導電性はドーピング等を通じて制御することができる材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも,通常,ほとんどのプロセスに関して1乃至2センチメートル外側にある内側高周波結合エッジリング408とを備え, 上記内側高周波結合エッジリング408の一部が,上記外側エッジリング412の一部分の上に横たわり,上記外側エッジリング412が上記内側高周波結合エッジリング408の下側面の一部を覆うようになっており,さらに,上記内側高周波結合エッジリング408は,上記静電チャック404のノッチ410に隣接し,ウェーハ406のエッジを超えて延びる高周波結合領域を提供するものであり, 上記内側高周波結合エッジリング408が,上記ウェーハ406の領域の外縁の内側にある半径方向内側の境界を有しており, 前記内側高周波結合エッジリング408は,定期的な交換が必要になり,外側エッジリング412は,大体において定期的な交換を必要としない, 内側高周波結合エッジリング408と,該内側高周波結合エッジリング408に隣接する外側エッジリング412とからなる構造。」 上記記載から,引用文献4には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 カ 引用発明2 「プラズマ処理装置の,電極として機能する静電チャックを有するウェーハ処理チャンバ内でウェーハの付近に取り付けられる内側高周波結合エッジリングと,該内側高周波結合エッジリングに隣接する外側エッジリングであって, 誘電材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ウェーハの外縁よりも外側にある外側エッジリングと, 適切な材料の例には,半導体材料(炭化ケイ素等)又は絶縁材料が含まれ,この材料の導電性はドーピング等を通じて制御することができる材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも,通常,ほとんどのプロセスに関して1乃至2センチメートル外側にある内側高周波結合エッジリングとを備え, 上記内側高周波結合エッジリングの一部が,上記外側エッジリングの一部分の上に横たわり,上記外側エッジリングが上記内側高周波結合エッジリングの下側面の一部を覆うようになっており,さらに,上記内側高周波結合エッジリングは,上記静電チャックのノッチに隣接し,ウェーハのエッジを超えて延びる高周波結合領域を提供するものであり, 上記内側高周波結合エッジリングが,上記ウェーハの領域の外縁の内側にある半径方向内側の境界を有しており, 前記内側高周波結合エッジリングは,定期的な交換が必要になり,外側エッジリングは,大体において定期的な交換を必要としない, 内側高周波結合エッジリングと,該内側高周波結合エッジリングに隣接する外側エッジリングとからなる構造。」 キ 当審拒絶理由で引用した引用文献5(国際公開第99/14796号:原査定で引用した周知文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。 「A collar ring 230 is positioned on the conductor 210 in direct electrical contact with its peripheral portion 228. The collar ring 230 has an electrical field absorption sufficiently low to allow RF power from the peripheral portion 228 of the conductor 210 to couple to the plasma through the collar ring and extend the plasma sheath beyond the perimeter of the substrate 130. This significantly reduces anomalies or discontinuities in the plasma sheath at the edge or perimeter of the substrate 130 and provides more uniform plasma processing rates or characteristics across the substrate.」(第12ページ第19-26行)(日本語訳:カラーリング230が,導体210の上に導体210の周辺部228と直接接触するように配置されている。そのカラーリング230は,十分に小さい電界吸収能を持ち,これにより導体210の周辺部228からのRFはそのカラーリングを介してプラズマと結合することができ,そして,そのプラズマシースが基板130の周縁部を越えて広がることを可能にしている。これにより,基板130の端部あるいは周縁部における,プラズマシースの異常あるいは切れ目がかなり少なくなり,そして,さらに均一なプラズマ処理速度を可能としあるいは基板全体にわたる特性を均一化することが可能となる。) 「In a preferred embodiment, the collar ring 230 is made from a semiconducting dielectric material that has low electrical resistance that allows DC field components to be transmitted or conducted through the collar ring 230. By semiconducting dielectric it is meant that the material has a higher electrical conductivity than insulator materials, and a lower electrical conductivity than metals. The semiconducting dielectric material also comprises a resistivity sufficiently low to allow DC electric field components to be electrically coupled from the conductor 210 to the collar ring 230 to provide a more consistent and uniform plasma sheath above the perimeter of the substrate. These DC field components even or balance out the DC potential at the edge of the substrate where edge effects are normally highly pronounced. The more balanced or level DC field potential across the substrate perimeter also reduces the possibility of electrical arcing at the edge of the electrode 155b. Preferably, the semiconducting dielectric collar ring 230 comprises a resistivity of about 10^(-3) Ω to about 10 ^(2) Ω cm, and more preferably from about 10 ^(-3) Ω cm to about 10^( 1 ) Ω cm. Suitable semiconducting ceramic materials for fabricating the collar ring 230 include for example, "doped" ceramic materials, such as mixtures of the ceramic materials described herein, such as aluminum oxide and titanium oxide, or aluminum nitride and other conduction additives, as well as silicon, silicon carbide and silicon nitride.」(第16ページ第10行-第17ページ第2行)(日本語訳:好ましい実施形態では,カラーリング230を通ってDC電界成分が伝えられあるいは誘導されるように,カラーリング230は低い電気抵抗を有する半導体性誘電体物質で作られる。この明細書では,半導体性誘電体とは,絶縁体物質より高い導電率を有するが,金属より低い導電率を有する物質をいう。半導体性誘電体物質は十分に低い電気抵抗をも有する。このため,直流電界成分を導体210からカラーリング230に電気的に結合させることができ,この結果,基板の周縁部の上により一致した均一なプラズマシースができる。普通,基板の端部においてはエッジ効果が顕著であるのであるが,これらの直流電界成分は,基板の端部における直流ポテンシャルを滑らかにそして均衡のとれたものにする。基板の周縁部のDC電界成分が均衡がとれたものあるいは平衡がとれたものであればあるほど,電極155bの端部におけるアークの発生の可能性が少なくなる。好ましくは,その半導体カラーリング230は,約10^(-3)Ωcm?約10^(2)Ωcm程度の抵抗値を持ち,もっと好ましくは,約10^(-3)Ωcm?約10^(1)Ωcmの抵抗値を持つ。カラーリング230を製造するのに適している半導体セラミック物質は,シリコン,シリコンカーバイドおよび窒化シリコンと同様に,例えば,以下に記載されたセラミック物質,つまり,酸化アルミニウム,酸化チタニウム,窒化アルミニウム,および他の導電性添加物の混合物等のドープされたセラミック物質を含む。) 「 What is claimed is: 1. A support for supporting a substrate in a plasma process chamber, the support comprising: (a) a dielectric member having an electrode embedded therein, and a receiving surface for receiving the substrate; (b) a conductor supporting the dielectric member, the conductor having a peripheral portion extending beyond the electrode in the dielectric member; (c) a voltage supply for supplying an RF bias voltage to the electrode embedded in the dielectric member to capacitively couple RF power from the electrode to the conductor; and (d) a collar ring on the peripheral portion of the conductor, the collar ring having a RF electrical field absorption sufficiently low to capacitively couple RF power from the peripheral portion of the conductor through the collar ring to a plasma in the plasma process chamber.」(第24ページ第1-15行)(日本語訳:【請求項1】プラズマ処理チャンバ内で基板を支持する支持体であって, (a)電極を埋め込まれ,且つ基板を受け取る受け取り面を有する誘電部材と, (b)誘電部材を支持し,誘電部材内の電極を越えて伸びる周縁部を有する導体と, (c)電極からのRFパワーを導体へ容量結合するため,RFバイアス電圧を誘電部材内に埋め込まれた電極へ供給する電源と, (d)導体の周縁部上にあるカラーリングであって,導体の周縁部からのRFパワーを,カラーリングを介してプラズマ処理チャンバ内のプラズマへ容量結合するのに十分低いRF電界吸収を有するカラーリングとを有する支持体。) ク 上記記載から,引用文献5には,電極を埋め込まれ,且つ基板を受け取る受け取り面を有する誘電部材と,該誘電部材を支持し,誘電部材内の電極を越えて伸びる周縁部を有する導体と,電極からのRFパワーを導体へ容量結合するため,RFバイアス電圧を誘電部材内に埋め込まれた電極へ供給する電源と,前記導体の周縁部上にあるカラーリングであって,導体の周縁部からのRFパワーを,カラーリングを介してプラズマ処理チャンバ内のプラズマへ容量結合するのに十分低いRF電界吸収を有するカラーリングとを有するプラズマ処理チャンバ内で基板を支持する支持体において,前記カラーリングを,前記導体上に導体の周辺部と直接接触するように配置し,好ましくは,約10^(-3)Ωcm?約10^(1)Ωcmの抵抗値を持つシリコン等の半導体で構成することで,基板の端部あるいは周縁部における,プラズマシースの異常あるいは切れ目がかなり少なくなり,そして,さらに均一なプラズマ処理速度を可能としあるいは基板全体にわたる特性を均一化することが可能となり,さらに,電極の端部におけるアークの発生の可能性が少なくなるという効果が奏されるという技術的事項が記載されていると認められる。 2 対比・判断 (1)本願発明1について ア 引用文献1を主引例とした進歩性の検討 (ア)対比 本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。 (i)引用発明1の「ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスで用いられるプラズマチャンバ」は,本願発明1の「半導体製造プロセスプラズマチャンバー」に相当する。 (ii)「純シリコン」は,半導体の一種であるといえる。 (iii)引用発明1の「保護リング」と,本願発明1の「導電性カラー」は,「カラー」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられるプロセスキットであって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールドと, 半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にあるカラーとを備え, 上記カラーが,上記誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記カラーの下側面の全体を覆うようになっており, 上記カラーが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,プロセスキット。」 (相違点) (相違点1)一致点に係る「カラー」が,本願発明1では,「抵抗率が0.1Ωcm以下」の「導電性カラー」であるのに対して,引用発明1では,「純シリコン」で構成される「保護リング」である点。 (相違点2)一致点に係る「カラー」の外縁が,本願発明1では,ワークピースの外縁よりも「少なくとも4mm」外側にあるのに対して,引用発明1では,そのような特定がされていない点。 (イ)相違点についての判断 ・相違点1について 純シリコンの抵抗率が高く,該抵抗率を下げるためには,前記純シリコンに不純物を導入する必要があることは技術常識である。 一方,引用文献1の上記「シリコンは,酸化物腐食プロセスに一般に使用される反応種による腐食に耐性であるので,またそれは,チャンバに汚染物質を放出するのを回避するように,非常に低い不純物濃度を有する形状で使用可能であるので,好都合である。単一の結晶シリコンは,高純度で使用できるので,好ましい。」との記載から,引用発明1は,保護リングを純シリコンで構成することによって,ワークピースのスピン-オンガラス層をエッチングするプラズマ強化プロセスにおける,前記プラズマに含有される化学種による腐蝕に対して耐性を高め,かつ,チャンバに汚染物質を放出するのを回避した発明であると理解される。 そうすると,引用発明1の純シリコンからなる保護リングにおいて,高い抵抗率を有する前記純シリコンの抵抗率を0.1Ωcm以下にして,導電性カラーとするために,前記純シリコンに不純物を導入することには,阻害事由が存在するといえる。 そして,本願発明1は,前記カラーが,抵抗率が0.1Ωcm以下の導電性カラーであることによって,本願明細書に記載された格別の効果を奏するものと認められる。 さらに,引用文献1ないし5のいずれにも,上記阻害事由が存在するにも関わらず,引用発明1において,上記相違点1について,本願発明1の構成を採用することを動機づける記載も示唆も認められない。 したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明1及び引用文献1ないし5に記載された発明または技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 イ 引用文献4を主引例とした進歩性の検討 (ア)対比 本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。 (i)引用発明2の「プラズマ処理装置のウェーハ処理チャンバ」,「ウェーハ」は,それぞれ,本願発明1の「半導体製造プロセスプラズマチャンバー」,「ワークピース」に相当する。 (ii)引用発明2の「内側高周波結合エッジリングと,該内側高周波結合エッジリングに隣接する外側エッジリングとからなる構造」と,本願発明1の「プロセスキット」は,「複数部材の組合せ構造」である点で一致する。 (iii)引用発明2の「誘電材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ウェーハの外縁よりも外側にある外側エッジリング」と,本願発明1の「誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある誘電体シールド」は,「誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁がワークピースの外縁よりも外側にある部材A」である点で一致する。 (iv)引用発明2の「適切な材料の例には,半導体材料(炭化ケイ素等)又は絶縁材料が含まれ,この材料の導電性はドーピング等を通じて制御することができる材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも,通常,ほとんどのプロセスに関して1乃至2センチメートル外側にある内側高周波結合エッジリング」と,本願発明1の「抵抗率が0.1Ωcm以下の半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある導電性カラー」は,「半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁がワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある部材B」である点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「半導体製造プロセスプラズマチャンバー内でワークピースの付近に取り付けられる複数部材の組合せ構造であって, 誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある部材Aと, 半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある部材Bとを備え, 上記部材Bが,上記部材Aの少なくとも一部分の上に横たわるようになっており, 上記部材Bが,上記ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,複数部材の組合せ構造。」 (相違点) (相違点3)一致点に係る「複数部材の組合せ構造」が,本願発明1では,「プロセスキット」であるのに対して,引用発明2では,そのような特定がされていない点。 (相違点4)一致点に係る「誘電体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある部材A」が,本願発明1では,「誘電体シールド」であるのに対して,引用発明2では,そのような特定がされていない点。 (相違点5)一致点に係る「半導体材料で構成され,中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある部材B」が,本願発明1では,「抵抗率が0.1Ωcm以下」の「導電性カラー」であるのに対して,引用発明2では,そのような特定がされていない点。 (相違点6)本願発明1では,「誘電体シールドが上記導電性カラーの下側面の全体を覆う」のに対して,引用発明2では,そのような特定がされていない点。 (イ)相違点についての判断 ・相違点3について 引用発明2において,「内側高周波結合エッジリング」は,定期的な交換が必要になるのに対して,「外側エッジリング」は,「大体において定期的な交換を必要としない」ものである。 そうすると,引用発明2において,これら交換の頻度がことなる部材を組み合わせて,「プロセスキット」とすることには,阻害事由が存在するといえる。 そして,引用文献1ないし5のいずれにも,上記阻害事由が存在するにも関わらず,引用発明2において,上記相違点3について,本願発明1の構成を採用することを動機づける記載も示唆も認められない。 したがって,引用発明2において,上記相違点3について本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 ・相違点5について 引用発明2において,内側高周波結合エッジリングの導電性は,望ましい高周波結合の度合いに応じて選択するところ,引用文献4には,その具体的な値は記載されていない。 そして,引用文献1ないし5のいずれにも,引用発明2において,前記内側高周波結合エッジリングの抵抗率を0.1Ωcm以下とする動機を見いだすことはできない。 したがって,引用発明2において,上記相違点5について本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 ・相違点6について 引用発明2において,「内側高周波結合エッジリング」は,静電チャックのノッチに隣接し,ウェーハのエッジを超えて延びる高周波結合領域を提供するものである。 そうすると,引用発明2において,外側エッジリングが,前記内側高周波結合エッジリングの下側面の全体を覆う構造となると,前記内側高周波結合エッジリングは,静電チャックのノッチに隣接することによって奏される,前記ウェーハのエッジを超えて延びる高周波結合領域を提供という機能を果たすことができなくなるといえる。 すなわち,引用発明2において,上記相違点6について,本願発明1の構成を採用することには阻害事由が存在するといえる。 そして,引用文献1ないし5のいずれにも,上記阻害事由が存在するにも関わらず,引用発明2において,上記相違点6について,本願発明1の構成を採用することを動機づける記載も示唆も認められない。 したがって,引用発明2において,上記相違点6について本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明2及び引用文献1ないし5に記載された発明または技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 (2)本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5は,いずれも,上記相違点1あるいは相違点1を更に限定した構成と,上記相違点3,5,及び6の構成とを備えるから,上記「(1)本願発明1について」と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明または技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について 当審では,「本願発明の『導電性カラー』は,その形状を,『中央開口部を有すると共に,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にある』とのみ特定するものである。そうすると,本願発明の『導電性カラー』は,その内縁を特定しないから,本願発明に係るプロセスキットは,例えば,導電性カラーの内周径が,ワークピースの外周径の2倍であって,導電性カラーとワークピースの周囲との間に大きなギャップ有するものを含有するといえる。・・・また,本願発明の『導電性カラー』は,その外縁が上記ワークピースの外縁よりも外側にあることを特定するだけで,その程度を特定しないから,本願発明に係るプロセスキットは,例えば,導電性カラーの外周が,ワークピースの外周を,0.1mm程度超えて,半径方向外側に延びるものを含有する。・・・しかしながら,上記ウの理解に照らして,このような構造を有するプロセスキットによって,本願発明に係る,『ワークピースの周囲の露出金属からアークが発生するおそれを効果的に減少又は排除すること』という課題を解決することができると認識することはできない。・・・そうすると,本願の特許請求の範囲の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。」との拒絶理由を通知しているが,平成29年12月25日付けの手続補正書による補正と,同日に提出された意見書における説明によって,この拒絶の理由は解消した。 第7 原査定についての判断 平成29年12月25日付けの手続補正書による補正により,補正後の請求項1ないし5は,「導電性カラーが,誘電体シールドの少なくとも一部分の上に横たわり,上記誘電体シールドが上記導電性カラーの下側面の全体を覆うようになっており,上記導電性カラーが,ワークピースの領域の外縁の内側にある又は上記ワークピースの領域の外縁に一致する半径方向内側の境界を有している,プロセスキット」における導電性カラーが,「抵抗率が0.1Ωcm以下(「0.012Ωcm以下」または「0.008?0.012Ωcmの範囲」)の半導体材料で構成され」,「その外縁が上記ワークピースの外縁よりも少なくとも4mm外側にある」という技術的事項を有するものとなった。 そして,当該技術的事項は,当審拒絶理由における引用文献4,1(すなわち原査定における引用文献1,2)には記載されておらず,本願優先権主張の日前における周知技術でもない。 したがって,本願発明1ないし5は,当審拒絶理由における引用文献4,1(すなわち原査定における引用文献1,2)に記載された発明,及び,周知技術(当審の引用文献5)に基づいて当業者が容易に発明をすることはできたものとも認められない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-19 |
出願番号 | 特願2013-237074(P2013-237074) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 溝本 安展、杢 哲次 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
大嶋 洋一 加藤 浩一 |
発明の名称 | プラズマチャンバーにおいて半導体ワークピースを取り巻く導電性カラー |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 鈴木 信彦 |