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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C02F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1337377
審判番号 不服2016-16738  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-08 
確定日 2018-02-28 
事件の表示 特願2012-182466号「水処理方法及び水処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月6日出願公開、特開2014-39895号、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成24年8月21日の出願であって、平成27年7月31日に刊行物等提出書が提出され、平成28年1月6日付けの拒絶理由を通知したところ、同年3月11日に意見書が提出され、同年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、平成29年1月13日付けで特許法第164条第3項に基づく報告(前置報告)がなされ、同年2月10日に刊行物等提出書が提出され、その後、同年8月1日付けの当審の拒絶理由を通知したところ、同年9月29日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、平成29年9月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水を、ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する水処理方法であって、
前記被処理水に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態、かつ、前記被処理水に酸を添加した状態で、前記膜ろ過処理及び脱塩処理をし、この際、前記還元剤を添加した後に、前記酸を添加し、
前記酸の添加量を、前記脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する水処理方法。
【請求項2】
前記被処理水に対して前記添加量の前記酸を添加することにより、シリカスケールの析出を抑制した状態にすることを特徴とする請求項1記載の水処理方法。
【請求項3】
前記還元剤を、前記脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように添加することを特徴とする請求項1又は2記載の水処理方法。
【請求項4】
前記ろ過膜として、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の水処理方法。
【請求項5】
金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水の処理を行う水処理装置であって、
前記被処理水に還元剤を添加するための還元剤添加手段と、
前記被処理水に酸を添加するための酸添加手段と、
前記還元剤及び前記酸が添加された前記被処理水に膜ろ過処理を行い、不溶性物質を除去するためのろ過膜と、
前記膜ろ過処理後の前記被処理水に脱塩処理を行うための逆浸透膜とを含み、
前記還元剤添加手段は、前記酸が添加される前の前記被処理水に対し、前記還元剤を添加し、
前記酸添加手段は、前記脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように前記酸を添加する水処理装置。
【請求項6】
前記酸添加手段は、シリカスケールの析出が抑制される状態になるように前記酸を添加することを特徴とする請求項5記載の水処理装置。
【請求項7】
前記還元剤添加手段は、前記脱塩処理に伴う濃縮水又は透過水に溶存酸素が実質的に含まれなくなるように前記還元剤を添加することを特徴とする請求項5又は6記載の水処理装置。
【請求項8】
前記ろ過膜は、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜であることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の水処理装置。」

第3 原査定の拒絶理由について
原査定の拒絶理由の概要は、刊行物として、「1.特開2010-137209号公報、2.特開平07-163979号公報(周知技術を示す文献)、3.特開平09-001141号公報(周知技術を示す文献)、4.特開平11-138162号公報(周知技術を示す文献)、5.特開2003-001255号公報(周知技術を示す文献)」を引用し、(願書に添付した)特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第4 当審の拒絶理由について
当審の拒絶理由の概要は、(平成28年11月8日付け手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、「被処理水に酸を添加して該被処理水のpHを所定の範囲に維持した状態」にすることを発明特定事項(以下、「発明特定事項A」という。)にし、同請求項5ないし8に係る発明は、「被処理水に酸を添加し、被処理水のpHを所定の範囲に維持する」ことを発明特定事項(以下、「発明特定事項B」という。)にするものであるところ、本願明細書に記載された具体的事項(脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように被処理水に酸を添加すること)のみから、これの上位概念に当たる発明特定事項AおよびBにまで、一般化又は拡張することはできないので、特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は、本願明細書に記載されている範囲を超えるものであり、よって、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。

第5 前置報告について
前置報告の概要は、拒絶査定において引用された刊行物の「1.特開2010-137209号公報、2.特開平07-163979号公報(周知技術を示す文献)、3.特開平09-001141号公報(周知技術を示す文献)、4.特開平11-138162号公報(周知技術を示す文献)、5.特開2003-001255号公報(周知技術を示す文献)」(引用例1ないし5)に加えて、「6.特開2005-230731号公報(周知技術を示す文献)、7.特開2011-31146号公報(周知技術を示す文献)、8.特開平10-85764号公報(周知技術を示す文献)」を新たに引用し、(平成28年11月8日付け手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、文献1に記載の発明及び文献2?8に例示されるような周知ないし汎用の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第6 刊行物等提出書について
平成27年7月31日に提出された刊行物等提出書(以下、「刊行物等提出書1」という。)における主張の概要は、特開2010-137209号公報、特開平7-163979号公報、国際公開第2008/059824号、特開2002-96068号公報それぞれに記載された発明からみて、本願は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当することにより、また、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、平成29年2月10日に提出された刊行物等提出書(以下、「刊行物等提出書2」という。)における主張の概要は、特開2010-137209号公報、特開平7-163979号公報、特開平9-1141号公報、特開2011-189242号公報それぞれに記載された発明からみて、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

第7 当審の判断
第7-1 原査定の拒絶理由について
本願発明1ないし4は、「金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水を、ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する」ことにおいて、「金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水」「に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態、かつ、被処理水に酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する」「際、還元剤を添加した後に、酸を添加し、」「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことを発明特定事項(以下、「本願特定事項」という。)にするものであるところ、「シリカを含む被処理水」「に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態(後に)、かつ、被処理水に酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する」「際、還元剤を添加した後に、酸を添加」することを、上記「本願特定事項」の前提(以下、「本願前提事項」という。)にし、かつ、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことにより、「逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制することができる」(【0039】)ことを、上記「本願特定事項」の作用機序(以下、「本願作用機序」という。)にするものである。(当審注:下線は当審が付与した。)
以下、拒絶査定において引用された刊行物それぞれについて検討する。
特開2010-137209号公報に記載された発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)は、【実施例1】【0033】ないし【0043】、【実施例2】【0048】ないし【0052】、【図1】等からして、「金属イオン、シリカ、不溶性物質を含む被処理水に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属イオンの酸化析出を抑制した状態で、ろ過膜により膜ろ過処理して不溶性物質を除去した後、逆浸透膜により脱塩処理する」ものであるところ、「還元剤を添加した状態で、ろ過膜により膜ろ過処理」するものであるものの、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではなく、また、実施例2の【0049】【表1】をみると、処理後の水に含まれるイオン状シリカ、コロイド状シリカの量は原水からみて極めて少なくなっているものの、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことにより、「逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制」しようとするものではないので、引用例1記載の発明は、上記「本願前提事項」および「本願作用機序」を欠くものである。
特開平07-163979号公報に記載された発明(以下、「引用例2記載の発明」という。)は、【請求項1】、【0008】ないし【0018】等からして、「少なくとも硬度成分、シリカを含む被処理水に酸を添加した状態で、逆浸透膜により脱塩処理する際、酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.0?5.5になるように設定する」ものであり、これにより、「シリカが濃縮水流路や膜表面に析出する事がな」(【0008】【発明が解決しょうとする課題】)いようにするものであるところ、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例2記載の発明は、上記「本願作用機序」を包含するものであるとしても、上記「本願前提事項」を欠くものである。
特開平09-001141号公報に記載された発明(以下、「引用例3記載の発明」という。)は、【請求項1】、【0015】ないし【0022】等からして、「少なくとも硬度成分、シリカを含む被処理水に酸を添加した状態で、逆浸透膜により脱塩処理する際、酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが6以下になるように設定する」ものであり、これにより、「前段及び後段の逆浸透膜処理によって順次高められるシリカ、及び硬度成分濃度がそれらの溶解度を超える濃度の状態になっても長期間、安定に逆浸透膜の流束を低下させる事無く連続運転できる」(【0021】)ようにするものであるところ、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例3記載の発明は、上記「本願作用機序」を包含するものであるとしても、上記「本願前提事項」を欠くものである。
特開平11-138162号公報に記載された発明(以下、「引用例4記載の発明」という。)は、【請求項1】、【0018】、【0020】等からして、「夾雑物、シリカを含む被処理水に酸を添加した状態で、濾過膜により膜濾過処理した後、逆浸透膜により脱塩処理する際、酸の添加量を、シリカの場合には、逆浸透膜分離装置の原水のpHが3?4又は10?11の範囲になるように調整する」ものであり、これにより、「RO膜分離装置6では、回収率を高めると溶解性物質がその溶解度を超えてスケール析出により膜フラックス(透過流束)が低下する」(【0018】)ことを防ごうとするものであるところ、「酸を添加した状態で、ろ過膜により膜ろ過処理」するものであるものの、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例4記載の発明は、上記「本願作用機序」を包含するものであるとしても、上記「本願前提事項」を欠くものである。
特開2003-001255号公報に記載された発明(以下、「引用例5記載の発明」という。)は、【請求項1】、【0015】、【0016】、【0023】、【0024】、【0027】等からして、「シリカを含む循環冷却水(被処理水)にスライム防止剤とpH調整剤(酸)を添加した状態で、脱炭酸塔で脱炭酸処理した後に、濾過膜により膜濾過処理し、その後、被処理水にpH調整剤(酸)を添加した状態で、逆浸透膜により脱塩処理する際、pH調整剤(酸)の添加量を、逆浸透膜装置の入口側のpHが4.5?5.5となるように調整する」ものであり、これにより、「RO膜装置5におけるスケール障害防止」(【0027】)がなされるようにするものであるところ、「スライム防止剤とpH調整剤(酸)を添加した状態で、脱炭酸塔で脱炭酸処理した後に、濾過膜により膜濾過処理」するものであるものの、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例5記載の発明は、上記「本願作用機序」を包含するものであるとしても、上記「本願前提事項」を欠くものである。
そうすると、引用例1ないし5記載の発明のいずれもが、上記「本願前提事項」を欠くものである。
また、この「本願前提事項」が、本願出願前の周知技術であるということもできない。
したがって、上記「本願作用機序」、つまり、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことにより、「逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制することができる」ことが本願出願前の周知技術(引用例2ないし5)であるとしても、引用例1ないし5記載の発明から、上記「本願前提事項」を前提にする上記「本願特定事項」を導き出すことはできない。
よって、本願発明1ないし4は、引用例1ないし5記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、原査定の拒絶理由によって、本願発明1ないし4を拒絶することはできない。
そして、本願発明5ないし8は、本願発明1ないし4(方法の発明)を「装置の発明」に置き換えるものであることからして、上記で示した理由と同じ理由により、本願発明5ないし8についても、原査定の拒絶理由によって、拒絶することはできない。

第7-2 当審の拒絶理由について
当審の拒絶理由の概要は、上記「第5」で示したように、本願明細書に記載された具体的事項(脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように被処理水に酸を添加すること)のみから、上位概念の発明特定事項にまで、一般化又は拡張することはできないので、(平成28年11月8日付け手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載は、本願明細書に記載されている範囲を超えるものであるというものであるところ、平成29年9月29日付け手続補正書による手続補正により、本願発明1ないし8は、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことを発明特定事項にするものとなったので、上記不備は解消された。
したがって、当審の拒絶理由によっても、本願発明1ないし8を拒絶することはできない。

第7-3 前置報告について
上記「第7-1」で示したように、引用例1ないし5記載の発明のいずれもが、上記「本願前提事項」を欠くものである。
次に、上記「第5」で示した特開2005-230731号公報に記載された発明(以下、「引用例6記載の発明」という。)は、【請求項1】、【0019】、【0039】【表1】、【図1】等からして、「金属(Ca、Al、Mg)、シリカを含有する被処理水に還元剤を添加してオゾン酸化処理水に残留する酸化剤(過酸化水素等)を除去し、酸化剤が存在しない状態にした後に、かつ、被処理水に酸を添加した(pHを5?7程度の中性に調整した)状態で、ろ過膜により膜ろ過処理した後、逆浸透膜による処理を行う」ものであるところ、上記「被処理水に還元剤を添加してオゾン酸化処理水に残留する酸化剤(過酸化水素等)を除去し、酸化剤が存在しない状態」にすることは、オゾン酸化処理が行われた水を対象にするものであり、また、「このようにしてRO膜処理前の水の残留酸化剤を除去しておくことにより、後段のRO膜の酸化劣化を防止することができる。」(【0030】)からして、後段のRO膜の酸化劣化を防止すための処理であるといえるので、「(オゾン酸化処理が行われていない)被処理水」「に還元剤を添加して該被処理水中の溶存酸素を実質的に除去し、金属(Ca、Al、Mg)イオンの酸化析出を抑制した状態」にすることに当たるとはいえず、よって、引用例6記載の発明は、上記「本願前提事項」を欠くものである。
さらに、同特開2011-31146号公報に記載された発明(以下、「引用例7記載の発明」という。)および特開平10-85764号公報に記載された発明(以下、「引用例8記載の発明」という。)は、そもそも、被処理水がシリカを含むものであるか(シリカの析出を防止するものである)か不明であることからして、「シリカを含む被処理水」「に」「還元剤を添加した後に、酸を添加」するものであるとはいえないので、引用例7記載の発明は、上記「本願前提事項」を欠くものである。
そうすると、引用例1ないし8記載の発明のいずれもが、上記「本願前提事項」を欠くものである。
また、この「本願前提事項」が、本願出願前の周知技術であるということもできない。
したがって、上記「本願作用機序」、つまり、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことにより、「逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制することができる」ことが本願出願前の周知技術であるとしても、引用例1ないし8記載の発明から、上記「本願前提事項」を前提にする上記「本願特定事項」を導き出すことはできない。
よって、本願発明1ないし8は、引用例1ないし8記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、前置報告の理由によって、本願発明1ないし8を拒絶することはできない。

第7-4 刊行物等提出書について
上記「第6」で示した特開2000-137209号公報、特開平7-163979号公報、特開平9-1141号公報は、引用例1、2、3に該当し、これらは、上記「第7-1」で示したように、上記「本願前提事項」を欠くものである。
次に、同国際公開第2008/059824号に記載された発明(以下、「引用例9記載の発明」という。)は、「本発明の水処理装置および水処理方法は、原水をpH7以下でRO装置へ供給してRO処理水と濃縮水とを得るものである。RO装置の目詰まりやファゥリングを防止する目的で、前処理装置として図1に示すように活性炭塔1や濾過装置2を設けることが好ましい。濾過装置2としては、砂濾過装置、限外濾過装置、精密濾過装置、小型 濾過装置などを用いることができる。前処理装置としては更にプレフィルターを設けてもよく、また、凝集処理装置などを特に濾過装置2の前段に設けてもよい。」([0015])、 「RO装置4の前段にはpH調整槽3が設けられ、ここで、pH調整剤が添加されて原水のpHが7以下に調整され、その後、pH7以下に調整された原水はRO装置4に供給される。pH調整槽3では、通常はpH=4?7、好ましくはpH=4.5?6.0、特に 好ましくはpH=5に調整される。pHが低すぎると後述する阻止率向上剤で処理したRO膜を用いても十分に高い水質のRO処理水が得られず、また、装置の腐食やRO膜自体の劣化といった問題が生じる。また、pHが7を超えるとスケール障害や、鉄や アルミニウムなどの多価金属を給水が含有する場合にはこれら多価金属の水酸化物 の析出障害が発生する恐れがある。」([0016])からして、「逆浸透膜による処理の前に濾過膜による膜濾過処理を行うと共に、被処理水に酸を添加した(通常はpH=4?7、好ましくはpH=4.5?6.0、特に 好ましくはpH=5に調整した)状態で、逆浸透膜による処理を行う」ものであるところ、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例9記載の発明は、上記「本願前提事項」を欠くものである。
さらに、同特開2002-96068号公報に記載された発明(以下、「引用例10記載の発明」という。)は、【請求項1】、【請求項5】、【0029】、【0034】【表1】等からして、「カルシウムイオン、フッ化物イオンを含む被処理水に酸を添加した(逆浸透膜装置の濃縮水のpHを4?6.5に調整する)状態で、逆浸透膜による処理を行う」ものであるところ、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により膜ろ過処理」するものではないので、引用例10記載の発明は、上記「本願前提事項」を欠くものである。
そして、同特開2011-189242号公報に記載された発明(以下、「引用例11記載の発明」という。)は、【0016】、【0020】、【0021】、【0023】、【0027】ないし【0029】、【0034】、【0036】、【0041】、【図1】、【図2】等からして、「金属イオン、シリカ、砂等の固形粒子(不溶性物質)、微粒子等の懸濁物質(不溶性物質)を含む被処理水に還元剤を添加して還元した状態、かつ、被処理水に酸を添加した(pH値を6以下に調整する)状態で、遠心分離作用を有するサンドセパレータにより砂等の固形粒子(不溶性物質)を除去し、次いで、フィルタ(例えば、ワインド(糸巻き)フィルタ等)により微粒子等の懸濁物質(不溶性物質)を除去し、その後、逆浸透膜による処理を行う」ものであるところ、一般に、砂等の分離に「ろ過膜」を用いることは、先行技術文献を示すまでもなく、一般には行われないことである(一般には沈砂により分離がなされる)といえることからして、「還元剤を添加し」「た状態(後に)、かつ、」「酸を添加した状態で、」「ろ過膜により(砂等の)膜ろ過分離(処理)」を行うことを想定するものではないといえるので、引用例11記載の発明は、上記「本願前提事項」を欠くものである。
そうすると、刊行物等提出書1、2に示された刊行物に記載された発明(引用例1、2、3、9ないし11記載の発明)のいずれもが、上記「本願前提事項」を欠くものである。
また、この「本願前提事項」が、本願出願前の周知技術であるということもできない。
したがって、上記「本願作用機序」、つまり、「酸の添加量を、脱塩処理に伴う濃縮水のpHが4.5?5.5になるように設定する」ことにより、「逆浸透膜面へのシリカスケールの析出を安定して抑制することができる」ことが本願出願前の周知技術であるとしても、刊行物等提出書1、2に示された刊行物に記載された発明から、上記「本願前提事項」を前提にする上記「本願特定事項」を導き出すことはできない。
よって、刊行物等提出書1、2に示された刊行物に記載された発明(引用例1、2、3、9ないし11記載の発明)によって、本願発明1ないし8を拒絶することはできない。

第7-5 まとめ
上記「第7-1」ないし「第7-4」からして、本願発明1ないし8は、原査定の拒絶理由(引用例1ないし5記載の発明)、当審の拒絶理由、さらに、前置報告の理由(引用例1ないし8記載の発明)、刊行物等提出書1、2に示された刊行物に記載された発明(引用例1、2、3、9ないし11記載の発明)によって、拒絶されるものではなく、そして、上記「第7-1」ないし「第7-4」で示した引用例1ないし11記載の発明のすべてをみたとしても、これらの発明によって、拒絶されるものでもない。

第8 結論
本願は、平成24年8月21日の出願であって、その請求項1ないし8に係る発明は、平成29年9月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-15 
出願番号 特願2012-182466(P2012-182466)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (C02F)
P 1 8・ 121- WY (C02F)
P 1 8・ 537- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 豊永 茂弘
中澤 登
発明の名称 水処理方法及び水処理装置  
代理人 萼 経夫  
代理人 ▲高▼ 昌宏  

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