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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1337386
審判番号 不服2017-1414  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-01 
確定日 2018-02-27 
事件の表示 特願2014-239619「エッチングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月 2日出願公開、特開2016-103504、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年11月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年11月26日 審査請求
平成28年 1月21日 拒絶理由通知(起案日)
平成28年 2月29日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年 8月16日 最後の拒絶理由通知(起案日)
平成28年10月 5日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年11月10日 補正却下の決定及び拒絶査定(起案日)
平成29年 2月 1日 審判請求及び手続補正書の提出
平成29年 9月25日 当審拒絶理由通知(起案日)
平成29年11月22日 意見書及び手続補正書の提出


第2 原査定の概要
1 原査定
平成28年11月10日付けの拒絶査定(以下「原査定」という。)の概要は次のとおりである。
「この出願については,平成28年 8月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
●理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項 1-3
・引用文献等 1-2
平成28年10月 5日付け手続補正は,本拒絶査定と同日付けで補正却下となった。

次に,出願人の主張について検討する。
出願人は,上記意見書において以下の主張を行っている。
(主張1)「引用文献1に係る発明がエッチング液を加圧式濾過装置で濾過する際に凝集剤によって凝集体を形成する必要性がある技術背景があるのに対して,引用文献2に係る発明ではエッチング液を加圧式濾過装置で濾過する際に凝集剤によって凝集体を形成する必要性がない技術背景があり,技術背景が相違しております。このため引用文献2の記載内容に触れた当業者が,引用文献2に記載の加圧濾過装置の配置を,わざわざ引用文献1に記載の加圧濾過装置に適用しようと試みることはないと思料いたします。」
(主張2)「本願の明細書段落0003?0006にも記載されているとおり,本願発明は,排液ラインでの使用には適しているが循環ラインでの使用には不適と従来考えられていた加圧式濾過装置を,循環ラインにて効率的に使用することを目的としております。特に,本願発明は,ガラス基板から溶解したケイ素系の化合物やアルミ系の化合物を捕捉するような,凝集剤によって凝集体を形成させてからでないと加圧式濾過装置を好適に使用することができないと従来考えられていた状況においても,凝集剤を用いることなく加圧式濾過装置を効率的に使用可能にするものです。このような技術的思想は,引用文献1および2のいずれにおいても開示されておらず,その示唆すらもされていないと解釈するのが妥当かと思料いたします。」

上記の主張について検討する。
(主張1-2について)
まず,引用文献1には,SSの濃縮液をフィルタープレス型の脱水機で脱水する際に凝集剤を用いることについて記載も示唆もされていない。また,加圧式濾過装置に関する技術常識を考慮しても,凝集剤の使用は濾過効率の向上を目的とする手段の一つに過ぎないし,引用文献2には加圧式濾過装置において凝集剤を用いずに濾過効率を向上させエッチング液を循環利用する手段が開示されていることから,加圧式濾過装置による濾過技術において,凝集剤によって凝集体を形成する必要性がある技術背景があるとは言えない。
したがって,引用文献1-2に記載された発明の技術背景が異なっているため,引用文献2に記載された発明を引用文献1に記載された発明に適用する動機付けが無い,及び,凝集剤を用いることなく加圧式濾過装置を効率的に使用可能にする技術的思想が引用文献1-2に開示も示唆もされていないとする出願人の主張は認められず,上記意見書における出願人の主張は,採用できない。

よって,請求項1-3に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,依然として,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2008-127585号公報
2.特開2013-107380号公報」

2 最後の拒絶理由
原査定の根拠となった平成28年8月16日付けの最後の拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1
・引用文献等 1-2
・備考
請求項1に係る発明は,補正前の請求項2に,循環ラインが「凝集剤を用いない循環ライン」であるという点が付加されたものである。
この点に対して検討する。
請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明は,以下の点で相違する。
(相違点)請求項1に係る発明では,凝集剤を用いない循環ライン上に膜式濾過装置及び加圧式濾過装置が配置されるのに対し,引用文献1に記載された発明では,加圧式濾過装置が循環ライン上ではなく廃棄用のラインに配置される点。
上記相違点について検討する。

引用文献2の段落0069-0071及び図3には,エッチング処理を行う処理槽44(「エッチング液槽」に相当)と,処理槽44のアルカリ液48(「エッチング液」に相当)を循環使用するための循環ライン50,組成濃度調整ライン52及び濾過ライン54(「循環ライン」に相当)が記載されている。
また,引用文献2の段落0078-0083には,濾過ライン54が,濾過膜を備えた濾過装置76(「膜式濾過装置」に相当)を備えることが記載されており,段落0102-0106には,濾過装置76の後段に,濾過された固形物を固液分離するためのベルト式脱液機(「加圧式濾過装置」に相当)が配置されることと,ベルト式脱液機で濾過されたアルカリ液48がアルカリ液貯留槽46に戻されて再利用されることが記載されている。
ここで,引用文献2の段落0089-0098には,濾過装置76におけるアルカリ液48中の固形物除去量を増加させる目的で,アルカリ液48に,バミストンとケイ砂からなる研磨剤を濾過助剤として添加することが記載されているが,この研磨剤が凝集剤に該当しないことは明らかである。
そして,引用文献1-2に記載された発明は,共にエッチング液の循環利用という共通の機能を有するものであるから,引用文献1に記載された発明の加圧式濾過装置の構成を,引用文献2に記載された加圧式濾過装置の構成とすることで,加圧式濾過装置で濾過されたエッチング液を再利用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
その他の点は,平成28年1月21日付け拒絶理由通知書の理由2に記載した通りである。
よって,請求項1に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 2
・引用文献等 1-2
・備考
請求項2に係る発明は,補正前の請求項3に,循環ラインが「凝集剤を用いない循環ライン」であるという点が付加されたものである。
この点については,上述した通り,引用文献2に,循環ラインにおいて凝集剤を用いずにエッチング液を再利用することと,ベルト式脱液機(加圧式濾過装置)で濾過されたエッチング液がアルカリ液貯留槽46(「膜式濾過装置の前段」に相当)に返送されることが記載されている。
その他の点については,上述した請求項1に係る発明の進歩性についての判断と同様である。
よって,請求項2に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 3
・引用文献等 1-2
・備考
請求項3については,平成28年1月21日付け拒絶理由通知書の理由2に記載した通りである。
よって,請求項3に係る発明は,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得たものである。

<最後の拒絶理由通知とする理由>

この拒絶理由通知は,最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。


<引用文献等一覧>
1.特開2008-127585号公報
2.特開2013-107380号公報(新たに引用された文献)」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2009-16648号公報
2.特開2008-127585号公報
3.国際公開第2014/181552号

・請求項 ;1
・引用文献等:1?3
・備考
……(中略)……
したがって,文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ガラス基板に処理液を供給する液供給手段と,
前記液供給手段に貯溜される洗浄処理液を,水平姿勢又は傾斜姿勢で搬送されるガラス基板に対して,シャワーノズル12により供給するチャンバ10と,
前記液供給手段により前記ガラス基板に供給された処理液を回収して前記液供給手段に循環供給する循環供給経路を含む循環供給手段と,
前記処理液による前記ガラス基板の処理に伴って生じる処理残渣を,前記循環供給経路内を循環する処理液中から分離する分離手段と,
前記分離手段により分離された処理残渣を,前記循環供給経路の外部に排出する排出手段と,
を備えたガラス基板処理装置において,
前記分離手段は,
前記循環供給経路を流通する処理液中の処理残渣を粗分離する粗分離手段と,
前記粗分離手段により粗分離された処理残渣をさらに処理液と処理残渣とに分離する精密分離手段と,
前記精密分離手段により分離された処理液を前記循環供給路に戻す液戻し流路と,
を有しており,前記粗分離手段により粗分離された処理液を前記液供給手段に戻すように構成されていることを特徴とするガラス基板処理装置。」

文献1には,「循環供給手段」で,「処理液」に「凝集剤」等の材料を添加することは,記載も示唆もされていない。
したがって,本願の請求項1に係る発明と引用発明とを対比すると,
引用発明において,「液供給手段」から「回収」した「処理液」を最初に「処理液と処理残渣とに分離する」のは「粗分離手段」(実施例ではサイクロン分離器20)であり,前記「粗分離手段」で分離された「処理液」をさらに「処理液と処理残渣とに分離する」のは「精密分離手段」(実施例では沈殿分離装置24A及び24B)であるのに対して,本願発明において,「エッチング液槽」から取り出した「エッチング液」を最初に濾過する手段が「導入されたエッチング液を濾過する浸漬膜を備えた膜式濾過装置」であり,前記「膜式濾過装置」の後段に配置されるのは「前記浸漬膜にて捕捉されたスラリーを受け入れて固液分離するように構成された加圧式濾過装置」である点で相違し,
その余の点では一致している。

しかしながら,ガラス基板をエッチングするためのエッチング装置において,エッチング処理済みのエッチング液を,まず,「導入されたエッチング液を濾過する浸漬膜を備えた膜式濾過装置」によって処理済みエッチング液と処理残渣とに分離し,前記「膜式濾過装置」によって分離された処理済みエッチング液をさらに「加圧式濾過装置」によって処理済みエッチング液と処理残渣とに分離することは,文献2の段落【0026】?【0030】,文献3の段落[0219]?[0220]及び段落[0249]?[0252]に記載され,周知技術にすぎない。

・請求項 ;2
・引用文献等:1?3
・備考
文献2及び文献3には,「膜式濾過装置」は浸漬膜を備えたフィルタ式濾過装置であり,「加圧式濾過装置」としてフィルタプレスを用いることが記載されている。」


第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成29年11月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に対してエッチング処理を実行するエッチングシステムであって,
少なくともエッチング液槽を備え,エッチング液槽に収容されたエッチング液を,1枚ずつ連続的に搬送されるガラス基板に対して噴射することによりエッチング処理を行うように構成された枚葉式かつスプレー式のエッチング装置と,
前記エッチング液槽のエッチング液を外部に取り出すとともに,ガラス基板から溶解した化合物を捕捉するためにガラス基板と接触したエッチング液を濾過して前記エッチング液槽に返送するように構成された,凝集剤を用いない循環ラインと,
前記循環ラインに配置され,導入されたエッチング液を濾過する浸漬膜を備えた膜式濾過装置であって,前記循環ラインの後段で効率的に固液分離を行うための膜式濾過装置と,
前記循環ラインにおける前記膜式濾過装置の後段に配置され,前記浸漬膜にて捕捉されたスラリーを受け入れて固液分離するように構成された加圧式濾過装置と,
を備え,
前記膜式濾過装置および前記加圧式濾過装置で濾過されたエッチング液が,それぞれ前記エッチング液槽に返送され,かつ,
前記膜式濾過装置がMF膜濾過装置であり,前記加圧式濾過装置がフィルタープレスであることを特徴とするエッチングシステム。」


第5 引用例,引用発明等
1 引用例1
(1)引用例1の記載事項
当審拒絶理由通知において「文献1」として引用された特開2009-16648号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は参考のため,当審において付したもの。以下同様である。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板に処理液を供給する液供給手段と,この液供給手段によりガラス基板に供給された処理液を回収して前記液供給手段に循環供給する循環供給経路を含む循環供給手段とを備えたガラス基板処理装置において,
前記処理液によるガラス基板の処理に伴って生じる処理残渣を,前記循環供給経路内を循環する処理液中から分離する分離手段と,
この分離手段により分離された処理残渣を,前記循環供給経路の外部に排出する排出手段と,を備えていることを特徴とするガラス基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガラス基板処理装置において,
前記分離手段は,循環供給経路を流通する処理液中の処理残渣を粗分離する粗分離手段と,この粗分離手段により粗分離された処理残渣をさらに処理液と処理残渣とに分離する精密分離手段と,この精密分離手段により分離された処理液を前記循環供給路に戻す液戻し流路とを備えていることを特徴とするガラス基板処理装置。」
イ 「【0025】
図1は,本発明に係るガラス基板処理装置を示す概略図である。同図に示すガラス基板処理装置は,LCD用ガラス基板等のガラス基板S(以下,基板Sという)の表面に処理液(フッ酸等)を供給することにより基板Sに所定の処理(エッチング等)を施すもので,大略的には,装置本体1と,この装置本体1で使用される処理液中の処理残渣を除去する除去装置2とを含んでいる。
【0026】
装置本体1は,基板Sに処理液を供給するための箱形のチャンバ10と,このチャンバ10に対して処理液を循環させる循環系統(循環供給手段)とから構成されている。
【0027】
チャンバ10の内部には,基板搬送用の搬送ローラ11とシャワーノズル12(液供給手段)等が配備されており,搬送ローラ11の駆動により基板Sを水平姿勢又は傾斜姿勢で搬送しながら,その上面にシャワーノズル12から処理液を供給する構成となっている。
【0028】
処理液の循環系統は,処理液を貯溜するタンク14と,これに貯溜される洗浄液をシャワーノズル12に供給するための,ポンプ16を具備する液供給管15と,前記チャンバ10から使用済みの処理液を導出してタンク14に戻す液回収管18とから構成されており,これによって処理液を循環させるようになっている。
【0029】
なお,液供給管15の途中部分には循環フィルタ17が介設されており,処理液中の微小パーティクル等がこの循環フィルタ17により捕捉されるようになっている。
【0030】
一方,除去装置2は,液供給管15に介設されるサイクロン分離器20,一対の沈殿分離装置24A,24B(精密分離手段),残渣回収タンク40およびこれらを接続する配管類等から構成されている。
【0031】
サイクロン分離器20は,タンク14からシャワーノズル12に供給される処理液中の不溶性物質等,処理に伴って生じた処理残渣を分離するもので,前記液供給管15の途中部分,具体的にはポンプ16と循環フィルタ17との間の部分に介設されている。
【0032】
このサイクロン分離器20は,詳しく図示していないが,逆円錐台形の容器を有し,ポンプ16から吐出される処理液をこの容器内に導入して高速回転させることにより,処理液中に含まれる処理残渣を遠心力によって壁面近傍に集めつつ容器下端部から後記沈殿分離装置24A,24Bへの連絡管22に吐出させる一方,容器中心部分の処理残渣を殆ど含まない処理液を容器上方から前記液供給管15に吐出させる構成となっている。なおこの例では,サイクロン分離器20およびポンプ16が本発明の粗分離手段に相当する。
【0033】
沈殿分離装置24A,24B(必要な場合には第1沈殿分離装置24A,第2沈殿分離装置24Bという)は,サイクロン分離器20で粗分離された処理残渣,つまり,循環中の処理液からその一部と共に分離された処理残渣を,さらに重力(自然)沈殿法により処理残渣と処理液とに精密分離するものである。
……(中略)……
【0038】
廃液管47は,残渣回収タンク40に接続されており,残渣貯溜部32aに溜まった処理残渣を残渣回収タンク40に導入可能な構成となっている。なお,この例では,廃液管47,残渣回収タンク40および後記洗浄液導入管44等が本発明に係る排出手段に相当する。
【0039】
一方,第2戻り配管28は,前記タンク14に接続されている。この第2戻り配管28に通じる前記導出口35にはストレーナ35aが嵌め込まれており,従って,残渣貯溜部32aに残った処理残渣に含まれる処理液が濾過されつつ第2戻り配管28を通じてタンク14に戻される構成となっている。
【0040】
ここで,各沈殿分離装置24A,24Bは,装置本体1および残渣回収タンク40よりも高位置に配置されており,沈殿分離装置24A,24Bで分離された処理液がその自重でもって戻り配管25,28を通じてタンク14に戻り,また,処理残渣がその自重でもって廃液管47を通じて残渣回収タンク40に流下するように構成されている。これら沈殿分離装置24A,24Bが配置される高さ位置は,サイクロン分離器20から吐出される処理残渣が,その該吐出圧により到達可能な高さ位置に設定されており,これによって専用の動力を用いること無く,サイクロン分離器20で粗分離された処理残渣を沈殿分離装置24A,24Bに給送できる構成となっている。」
ウ 「【0055】
なお,サイクロン分離器20の動力源としてのポンプに関しては,勿論,専用のポンプを設けてもよい。図3はその場合の一構成例を示している。すなわち,この例では,シャワーノズル12に対して処理液を給送するためのポンプ16とは別に,サイクロン分離器20の動力源としてポンプ50が設けられ,このポンプ50が導出管51を介してタンク14に接続されている。そして,サイクロン分離器20で粗分離された処理残渣を,前記連絡管22を通じて沈殿分離装置24A,24Bに給送する一方,サイクロン分離器20で分離された処理液を,戻り配管52を通じてタンク14に戻すように構成されている。このような構成によれば,装置本体1の作動状態に拘わらず,除去装置2において処理残渣の分離,除去を独立して行うことが可能となる。つまり,必要な場合にだけ除去装置2を作動させることが可能となる。従って,例えば処理残渣が請じ難く,常時,除去装置2を作動させる必要がないような場合には有用な構成となる。また,この構成によれば,同図に破線で示すように除去装置2を装置本体1から完全に独立した構成とすることができるので,当該除去装置2を単体で構成しておき,これを既存の基板処理装置に組み込むことも可能になるという利点がある。」

(2)引用発明1
以上の記載事項から,引用例1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「処理液を貯留するタンクと,
内部に搬送ローラとシャワーノズルが配備され,前記搬送ローラの駆動によりLCD用ガラス基板等のガラス基板を水平姿勢又は傾斜姿勢で搬送しながら,前記処理液を前記シャワーノズルにより前記ガラス基板の表面に供給することにより,前記ガラス基板にエッチングを施すチャンバと,
前記タンクと,前記タンクに貯溜される前記処理液を前記シャワーノズルに供給するための液供給管と,前記チャンバから使用済みの処理液を導出して前記タンクに戻す液回収管とから構成される前記処理液の循環供給経路と,
前記処理液による前記ガラス基板の処理に伴って生じる処理残渣を,前記循環供給経路内を循環する処理液中から分離する分離手段と,
前記分離手段により分離された処理残渣を,前記循環供給経路の外部に排出する排出手段と,
を備えたガラス基板処理装置において,
前記分離手段は,
導出管を介して前記タンクに接続され,前記タンクに貯留される前記処理液中の処理残渣を粗分離するサイクロン分離器と,
前記サイクロン分離器により粗分離された処理残渣を,さらに処理液と処理残渣とに精密分離する沈殿分離装置と,
前記サイクロン分離器で分離された処理液を前記タンクに戻す戻り配管と,前記沈殿分離装置で分離された処理液を前記タンクに戻す戻り配管とからなる液戻し流路と,
を有していることを特徴とするガラス基板処理装置。」

2 引用例2
(1)引用例2の記載事項
当審拒絶理由通知において「文献2」として引用され,原査定の根拠となった平成28年8月16日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献1」として引用された特開2008-127585号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【背景技術】
【0002】
近年,テレビ,コンピュータ,または携帯電話等のディスプレイ(表示装置)の薄型化が進んでいる。ディスプレイは,例えばガラス基板のような透明基板,偏光板,およびカラーフィルタ等の板状の部材を積層して構成され,ディスプレイの薄型化に伴って,ディスプレイを構成する部材についても小型化・薄型化への要求が高まっている。中でも,ガラス基板のような透明基板は,液晶等の表示用流体を挟み込む基板として用いられるだけでなく,カラーフィルタの基板としても用いられるので,透明基板を薄型化することはディスプレイ全体を薄型化することに大きく寄与する。このため,透明基板を薄型化するために,透明基板に対して高い精度でエッチングできる技術が求められている。
【0003】
従来,用いられているエッチング方法には,薬液中に被処理物を浸漬して化学反応により被処理物を溶解させるウエットエッチングと,薬液に代えて反応性の気体やイオン等を用いて乾燥状態でエッチングを行うドライエッチングとがある。ウエットエッチングは,ディスプレイ用板状部材のエッチングに限らず,プリント配線板,およびシリコンウエハ等のエッチングにも用いられている。
……(中略)……
【0006】
ところで,ウエットエッチング処理では,被処理物とエッチング液とが反応して析出物等の懸濁物質(以下,「SS」とする)が発生する。エッチング液中のSSは,被処理物表面に凹凸を生じさせる原因となるばかりでなく,特許文献1のように曝気攪拌を行う場合には,気泡を発生させる小孔を閉塞させる原因ともなる。」
イ 「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では,被処理部材をエッチング液に浸漬させてエッチング処理を行うエッチング槽からエッチング液を取り出し,循環させ,循環途中で浸漬膜を用いた濾過を行う。より具体的には,本発明は以下を提供する。
【0012】
(1) エッチング槽内のエッチング液に被処理部材を浸漬してエッチングするエッチング方法であって, 前記エッチング槽から前記エッチング液を取り出し,浸漬膜を備える濾過槽に導入し吸引濾過処理し濾液を前記エッチング槽に送るエッチング方法。
(2) 前記エッチング槽を複数,直列に並べて互いに接続して前記エッチング液が最前段のエッチング槽から最後段のエッチング槽へ流れるようにし,当該エッチング液を当該最後段のエッチング槽から当該最前段のエッチング槽に循環させる(1)に記載のエッチング方法。
(3) 前記エッチング液は酸性溶液であり,前記被処理部材はアルミニウムを含むガラス基板である(1)または(2)記載のエッチング方法。
(4) エッチング液を保持し被処理部材を当該エッチング液中に浸漬してエッチングする1または2以上のエッチング槽と, 前記エッチング液を前記エッチング槽から取り出して循環させる循環ラインと, 前記循環ラインを流れる前記エッチング液を濾過する浸漬膜を備える濾過槽と,を備えるエッチング装置。
(5) 前記エッチング槽が2以上,接続管を介して直列に互いに接続されている(4)に記載のエッチング装置。
(6) 前記循環ラインを流れる前記エッチング液の液温を調整する液温調整機構をさらに備える(4)または(5)に記載のエッチング装置。
(7) 前記複数のエッチング槽はそれぞれ,槽内の前記エッチング液を曝気攪拌する散気機構を備える(4)から(6)のいずれかに記載のエッチング装置。」
ウ 「【0022】
図1は,本発明の第1実施形態に係るエッチング装置1の全体模式図である。エッチング装置1は,エッチング槽10,濾過槽20,およびエッチング槽10と濾過槽20とを接続してエッチング液を循環させる循環ライン30を含む。
【0023】
循環ライン30は,エッチング槽10からエッチング液を濾過槽20に送る液送出管31,濾過槽20から濾液としてのエッチング液をエッチング槽10に戻す戻し配管32,および戻し配管32の途中に設けられた循環槽33を含む。戻し配管32は,濾過槽20と循環槽33とを接続する第1戻し配管32aと第2戻し配管32bとで構成されている。液送出管31と第2戻し配管32bの途中には,循環用のポンプPがそれぞれ設けられている。
【0024】
エッチング槽10に循環導入されるエッチング液の成分および濃度の調整は,例えば,循環槽33に薬液を供給管35から添加することにより行う。
……(中略)……
【0026】
図2は,濾過槽20の構成を模式的に示す斜視図であり,図3は,図2のX-X線で示す方向での濾過槽20断面を示す模式図である。これらの図に示すように,濾過槽20内には複数のほぼ四角形板状の平型浸漬膜21と,散気機構である膜面洗浄用ディフューザ22とが配置されている。複数の浸漬膜21は,隣接する浸漬膜21の平面同士が向かい合うように互いに平行に並列配置されている。洗浄用ディフューザ22の本体は,濾過槽20底部であって浸漬膜21の下に配置されている。この構成により,濾過槽20では洗浄用ディフューザ22からの曝気によって膜面洗浄を行いながらSSを含むエッチング液を濾過する。
【0027】
浸漬膜20は,実質的に四角形枠状のフレーム26を支持体として,濾過膜27がこのフレーム26に張られ,互いに向かい合う一対の膜面が形成されている。この一対の膜面に挟まれた浸漬膜20内部は,膜面を通過して濾過された濾液が入る濾液室28となっている。濾液室28には第1戻し配管32aの一端縁が接続され,吸引濾過が行われ,濾液室28内の濾液が第1戻し配管32aを介して循環槽33に送られる。なお,図2では,第1戻し配管32aを省略している。
【0028】
濾過膜27としては,孔径が0.1?10μm程度の精密濾過(MF)膜等が挙げられる。膜材質は特に限定されないが,ポリフッ化ビニリデン,ポリオレフィン,ポリスルホン,セラミック等は耐酸性があるため,酸を含むエッチング液を使用する場合に好適に使用できる。
【0029】
浸漬膜21は,被処理液中に浸漬された状態で用いられ,膜モジュールとしては本実施形態の平型以外に,ポッティング部を耐酸性とした中空糸型のものを用いてもよい。ポッティング部を耐酸性とする手段としては,ポッティング部の材質を耐酸性の素材(例えばエポキシ樹脂)とする方法等が挙げられる。浸漬膜21を用いれば,浸漬膜21内部から清澄化された濾液が取り出される一方,濾過槽20内部にはSSが濃縮された濃縮液が残る。濃縮液は,濾過槽20底部に設けた引抜管24(図2,3には不記載)から槽外へ排出される。槽外へ排出された濃縮液は,脱水機で脱水して含水率を低下させ脱水ケーキとして廃棄すればよく,これにより,エッチング処理過程から廃液が排出されることによる廃棄物発生量を低減できる。脱水機としては,ベルトプレス型,フィルタープレス型,およびスクリュープレス型等が例示される。
【0030】
平型または中空糸状の浸漬膜21は,ひとつの濾過槽20内に通常,複数(例えば,膜濾過速度が0.2?2.0m^(3)-濾過量/m^(2)-膜面積/日となるような数)設けられるので,浸漬膜21を用いる場合,濾過膜の膜面全体で吸引濾過が行われる。このため,筒(ベッセル)内部にフィルタを充填した従来の加圧濾過器を用いる場合に比べ,濾過膜の目詰まりが生じにくく,逆洗も容易であるため,長期に渡って濾過膜(フィルタ)を交換しなくてよい。特に,本実施形態のように浸漬膜21の底部から曝気をすることにより膜面に揺動を与えながら濾過するようにすると,濾過膜の目詰まりをさらに効果的に防止できる。
【0031】
エッチング槽10のエッチング液中には,ガラス基板5がエッチングされることにより発生するアルミ化合物等に由来するSSが含まれる。そこで,循環ライン30を設けて循環途中のエッチング液を濾過槽20に導入し,浸漬膜21を用いた吸引濾過を行うことでSSを除去して濾液をエッチング槽10に戻す。本発明では,SS除去の手段として浸漬膜21を使用するため,高いSS除去効果を得,また,濾過手段として用いる濾過膜の取替え頻度を少なくできる。さらに,適宜,新しいエッチング液を追加しながらエッチング液を循環させることで,エッチング槽10内のエッチング液の濃度,温度,成分を一定に保つことが容易となる。」
エ 「【0034】
図4は,本発明の第2実施形態に係るエッチング装置2の全体構成を示す。第2実施形態に係るエッチング装置2は,第1実施形態のエッチング装置1とほぼ同様であるので,以下,相違点について説明する。
【0035】
このエッチング装置2では,循環ライン30aは,液取出管31,第2戻し管32b,および液取出管31と第2戻し配管32bとの間に設けられた接続された循環槽33を含む。すなわち,エッチング槽10と循環槽33とが,液取出管31と第2戻し配管32bとで互いに接続され,エッチング液の循環経路が形成されている。濾過槽20は第1実施形態のエッチング装置1と同様の構成であるが,エッチング槽10とは接続されず,第1SS液管34aおよび第2SS液管34bを介して循環槽33と接続されている。
【0036】
すなわち,第1実施形態のエッチング装置1では,濾過槽20は循環ライン30の途中に設けて循環されるエッチング液を全量濾過しているが,第2実施形態のエッチング装置2では,循環ライン30aの途中に循環槽33を設けてこの循環槽33からエッチング液の一部を濾過槽20に取り出して濾過するように構成している。ただし,どちらの実施形態においてもエッチング液を循環させ,循環の途中でSSを含むエッチング液が吸引濾過処理されるように構成している。第2実施形態のエッチング装置2では濾過槽20で吸引濾過され得られた濾液は,第1SS管34aから循環槽33に戻す。
【0037】
第2実施形態のエッチング装置2では,沈殿槽を循環槽33として沈殿した底部に汚泥引抜管(図示せず)を設けて沈殿したSSを引き抜くとよい。」

(2)引用発明2
以上の記載事項から,引用例2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「エッチング槽内のエッチング液にディスプレイ用のガラス基板を浸漬してエッチングするエッチング装置であって,
前記エッチング槽からエッチング液を液取出管を介して濾過槽に送るとともに,前記濾過槽から濾液としてのエッチング液を第2戻し管を介して前記エッチング槽に戻す循環ラインと,
第1SS液管及び第2SS液管を介して前記循環槽と接続され,前記循環槽からエッチング液の一部を前記第2SS液管を介して取り出して,精密濾過(MF)膜等の濾過膜により濾過して得られた前記濾液を,前記第1SS液管から前記循環槽に戻す濾過槽と,
前記濾過槽の底部に設けた引抜管から槽外へ排出される濃縮液を脱水して含水率を低下させ脱水ケーキとして廃棄するための,ベルトプレス型,フィルタープレス型,およびスクリュープレス型等の脱水機と,
を備えることを特徴とするエッチング装置。」

3 引用例3
(1)引用例3の記載事項
当審拒絶理由通知において「文献3」として引用された国際公開第2014/181552号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[0060] (実施の形態1)
本発明のガラス研磨方法および装置が研磨対象とするのは,アルミノホウケイ酸塩ガラスである。より具体的には,SiO_(2)を主体として,Al_(2)O_(3),B_(2)O_(3),BaO,CaO,MgO,Na_(2)O,SrOを含み,高い引張強度と高い軟化点を有する強度ガラスである。アルミニウムを含むガラスであるといってよい。以下「Al含有ガラス」ともいう。研磨液は,フッ化水素酸を主として,塩酸,硝酸,硫酸といった無機酸が含まれる。加えて,界面活性剤,消泡剤,キレート剤等の添加剤が含まれる場合もある。
[0061] アルミノホウケイ酸塩ガラスを研磨した際に発生するスラッジは,アルミノホウケイ酸塩ガラス中の元素と,研磨液中のフッ化水素酸由来のフッ素が結合した錯体のうち,研磨液中から析出した物質である。本願の発明者は,アルミノホウケイ酸塩ガラスを研磨した際に発生するスラッジは,SrとAlとFの化合物(Sr-Al-F析出物)と,CaとAlとFの化合物(Ca-Al-F析出物)と,MgとAlとFの化合物(Mg-Al-F析出物)およびBaとAlとFの化合物(Ba-Al-F析出物)であることを確認した。」
イ 「[0101] <凝集剤>
Al-F錯イオンを減少させた研磨液中からスラッジを除去することで,再生研磨液を得ることができる。しかし,反応後研磨液中のスラッジは,微粒子のものが多い。従って,フィルタだけでこれを除去すると,フィルタが短時間で目詰まりを起こす。微細なスラッジを凝集させ大きな塊とすることができれば,フィルタの交換時期を延ばすことができる。また,短時間で沈殿させることも可能になる。沈殿によって,固液分離ができれば,フィルタへの負荷も軽くなり,経済的である。そこで,以下のようにして,反応後研磨液中のスラッジの凝集剤の効果について確認を行った。
……(中略)……
[0104] <ガラス研磨装置>
以上の検討に基づき,本発明に係るガラス研磨装置の構成を図6(F1-6)に示す。本発明のガラス研磨装置1は,被研磨物90を移送する移送手段24を有する研磨槽10と,被研磨物90を研磨する研磨部13と,研磨液を貯留する貯留部12と,Al-F錯体除去装置21と,固液分離部25と,再生研磨液タンク32を含む。また,新液供給部35を有していてもよい。
[0105] 被研磨物90の構造を図7(a)(F1-7a)に示す。被研磨物90は,2枚のアルミノホウケイ酸塩ガラス等のアルミニウムを含有するガラス部91a,91bで液晶94を挟持した液晶表示デバイスである。また,液晶表示デバイスに限定されることなく,少なくとも1面にアルミニウム含有ガラスが用いられていればよい。」
ウ 「[0182] 本発明において使用する「研磨反応槽」は,上述の研磨液をガラスと反応させてガラスを研磨(すなわち溶解)するための反応槽である。研磨反応槽の構成については以下の「ガラス基板の製造装置」において詳しく説明するが,本発明では,従来公知の研磨反応槽,例えば研磨液にガラスを浸漬せしめて研磨を行う浸漬型の研磨反応槽や,ガラスに研磨液をスプレー噴霧して研磨を行う噴霧型の研磨反応槽など,従来公知の研磨反応槽を何ら制限なく使用することができる。」
エ 「[0212] かかる凝集剤を被処理液に添加することによって,凝集剤に含まれる重合体が水素結合などの相互作用によりスラッジと結合し,あるいは凝集剤がスラッジを吸着せしめることによって,スラッジよりも粒径の大きな凝集体を研磨液中にて形成することができる。そして,このような大きな粒径の凝集体は,上記のストークスの式に従って,より高い沈降速度で沈降することができる。
[0213] また,かかる凝集体を形成することによって,その粒径はスラッジよりも大きくなることから,従来のようにフィルタなどの物理的な分離手段を用いた場合においても,目詰まりを起こす可能性は大幅に低減することができる。
……(中略)……
[0219] さらに,固液分離処理後に得られるスラッジ凝集体(例えば,沈降後に上澄み液などの液相部分を除去した後に得られる固相部分)は,例えば以下にて詳しく説明する脱水装置(例えばフィルタプレスなどの脱水機)を用いて脱水処理することができる。このとき回収される濾液(研磨液を含む)は,上述の固液分離処理後の処理液と同様にして研磨反応槽へと返送されるか,あるいは上述の固液分離処理後の処理液と混合して研磨反応槽へと返送され,ガラス研磨液として循環利用することもできる(例えば図17(F2-1)参照)。また,このときフッ酸や必要に応じて他の酸などの成分を脱水装置からの濾液に補充してガラス研磨液を再生してもよい。
[0220] このようにして上記の好ましい実施形態においてはスラッジ凝集体含有研磨液からスラッジ凝集体を自然沈降によって固液分離する方法について詳しく述べてきたが,本発明では,上述のようにスラッジ凝集体含有研磨液からスラッジ凝集体を沈降させることなく,例えば以下にて詳細に説明するフィルタを含む濾過機などの固液分離装置を用いて,凝集反応装置から得られるスラッジ凝集体含有研磨液を直接に固液分離してスラッジ凝集体を研磨液から分離して除去してもよい。このとき,スラッジ凝集体はスラッジ自体よりも粒径が大きいので,従来の方法(例えば特許文献3(特開2003-12305号公報)参照)と比べて,フィルタの目詰まりを起こす可能性は大幅に低減され得る。
[0221] また,この場合も固液分離処理後の処理液は,上記と同様にして研磨反応槽へと返送することもできる。
[0222] このようにして,本発明のガラス基板の製造方法では,スラッジを凝集体として研磨液から効率よく迅速に分離して除去することができる。また,本発明の方法ではスラッジ凝集体が除去された後の処理液をガラス研磨液として再び研磨反応槽に戻して循環させることができるので,本発明はガラス研磨液の循環プロセスとして極めて有益である。
[0223] 以下,本発明のガラス基板の製造方法を実施することのできるガラス基板の製造装置について詳しく説明する。
[0224] [ガラス基板の製造装置]
本発明のガラス基板の製造装置は,上述のフッ酸を含むpH3未満の研磨液とガラスとを反応させてガラスを研磨することによりガラス基板を得るための研磨反応槽と,上記研磨反応槽にて生成されたスラッジを含む研磨液の少なくとも一部を上記研磨反応槽より取り出して被処理液とするための引抜ラインと,上記被処理液に凝集剤を添加してスラッジ凝集体含有研磨液を得るための凝集反応装置と,上記スラッジ凝集体含有研磨液を処理液とスラッジ凝集体とに分離するための固液分離装置と,上記処理液を上記研磨反応槽に返送するための返送ラインとを少なくとも含むものである。
[0225] 本発明のガラス基板の製造装置の一実施形態を図17(F2-1)に例示する。」
オ 「[0249] あるいは,本発明では上述の固液分離装置としてフィルタを含む濾過機などを直接的に使用して固液分離処理を行ってもよい。この場合には上述のように沈殿槽を用いてスラッジ凝集体を沈殿させる必要がないので,さらに迅速にスラッジ凝集体を分離して除去することができる。また,本発明ではスラッジを粒径の大きなスラッジ凝集体として分離することができるので,濾過機に含まれるフィルタの目詰まりは従来よりも大幅に低減することができる。従って,本発明の装置は,従来の装置(例えば特許文献3(特開2003-12305号公報)参照)と比べて,その維持および管理が極めて簡便となる。
[0250] 濾過機としては,スラッジ凝集体含有研磨液からスラッジ凝集体を濾別して分離することができるものであれば特に制限はない。例えば,フィルタやバッグフィルタなどのフィルタ式濾過機,フィルタプレスやスクリュープレスなどの加圧式濾過機,真空回転式濾過機,プリコート式濾過機などが挙げられる。
[0251] 次に上述の固液分離装置で処理された処理液は,返送ラインを介して,研磨反応槽へと戻される。
[0252] 「返送ライン」(以下,「第1の返送ライン」と呼ぶ場合もある)は,固液分離装置からの処理液を上述の研磨反応槽に返送するためのものであり,例えば耐酸性の配管などから構成することができる。かかる返送ラインを配置することにより,図17(F2-1)に示すように「研磨反応槽」と「凝集反応装置」と「固液分離装置」との間において,研磨液からスラッジを除去しながら,効率よく研磨液を循環させることができ,その結果,研磨反応槽内においてガラスをさらに効率よく連続して研磨してガラス基板を製造することが可能となる。」

4 引用例4
(1)引用例4の記載事項
原査定の根拠となった平成28年8月16日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献2」として引用された特開2013-107380号公報(以下「引用例4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版用支持体の製造方法及び製造装置に係り,特に低純度のアルミニウムウェブをアルカリエッチングしてもエッチング性能が低下しない粗面化技術に関する。」
イ 「【0069】
[アルカリエッチング装置]
図3は,アルカリエッチング装置42の全体構成図である。
【0070】
図3に示すように,アルカリエッチング装置42は,主として,エッチング処理を行う処理槽44と,該処理槽44とアルカリ液貯留槽46との間でアルカリ液48を循環使用する循環ライン50と,循環使用されているアルカリ液48の組成濃度を一定に保つ組成濃度調整ライン52と,循環使用されているアルカリ液48を濾過する濾過ライン54と,で構成される。
【0071】
処理槽44には,複数のガイドローラ56がVの字状に配置される。これにより,連続走行するアルミニウムウェブ12は,処理槽44に進入したあと処理槽44から進出する。また,処理槽44には,アルミニウムウェブ12の走行経路に沿って,アルカリ液48をアルミニウムウェブ12面に吹き付ける複数のノズル58,58…が配設される。なお,図4では,アルカリ液48をアルミニウムウェブ12面に吹き付けるようにしたが,処理槽44内のアルカリ液48にアルミニウムウェブ12を浸漬させながら走行するようにしてもよい。」
ウ 「【0078】
また,アルカリ液貯留槽46の側面から第4配管74が濾過装置76の入口に延設されるとともに,第4配管74には,ポンプ75が設けられる。そして,濾過装置76で濾過された濾過済みアルカリ液48が濾過装置76の出口から第5配管78を介してアルカリ液貯留槽46の上部に戻される。濾過装置76の近傍には,濾過助剤を濾過装置76に添加する濾過助剤添加装置77が設けられる。この濾過助剤添加装置77には,前記した機械的粗面化装置の受け容器43Aから配管43Bが延設されている。なお,本実施の形態では,濾過助剤添加装置77から機械的粗面化装置で使用済みの研磨剤を使用するようにしたが,使用前の新しい研磨剤を使用することもできる。
【0079】
第5配管78の途中には,コンプレッサ80からの圧縮エアを導入する第1エア配管82が接続される。これにより,濾過装置76の運転を停止して,コンプレッサ80を運転すると,圧縮エアが濾過装置76内に送り込まれ,ろ材である濾過膜のエア逆洗が行われる。即ち,濾過膜に付着した固形物が剥離され,濾過装置76の底部に落下する。なお,図示しないが,エア逆洗を行う場合には,第5配管78のアルカリ液貯留槽46近傍に設けられたバルブ(図示せず)を閉じる。
【0080】
濾過装置76の底部には,落下した固形物を外部に排出する開閉弁つきの排出口84が設けられ,開閉弁を開くことによって,アルカリ液48を含んだ固形物が濾過装置76から受け容器86に排出される。これにより,アルカリ液48の濾過ライン54が形成される。
【0081】
濾過装置76としては,ろ材として濾布や中空糸膜等の濾過膜を用いた濾過膜方式を好適に使用することができる。しかし,この方式に限定するものではなく,アルカリ液48中に析出する固形物を効率的に濾過できる方式であれば,どのような方式でもよく,カートリッジ,金網,濾過助剤,粒状,繊維状の濾過や磁性分離などの各種方式を採用してもよい。
【0082】
アルカリエッチング処理において,アルミニウムウェブ12からアルカリ液48中に溶けだして析出する固形物の粒径は,5?100μmの間で分布しており,平均粒径が20μm程度である。したがって,濾過膜方式の場合,濾過膜の孔径は1?30μmの範囲で適宜選択することが好ましい。濾過膜の孔径のより好ましい範囲は5?30μmの範囲で
あり,特に好ましくは5?20μmの範囲である。
【0083】
固形物としては,アルミニウムウェブ12に含まれる微量金属(Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Zn等)の水酸化物が主たるものである。」
エ 「【0089】
アルミ濃度が低純度のアルミニウムウェブ12を使用すると,アルカリ液を1時間循環使用するとエッチング性能に悪影響のでる固形物濃度に達してしまう。これは,低純度のアルミニウムウェブ12の場合には,高純度のアルミニウムウェブ12に比べて上記した微量金属(Si,Fe,Cu,Mn,Mg,Zn等)の含有量が多く,アルカリエッチング処理によってアルカリ液中に溶け出して析出する固形物量が多くなるためである。
【0090】
したがって,低純度のアルミニウムウェブ12を使用する場合には,アルカリ液中の固形物除去量を多くする必要があり,濾過装置76を備えたアルカリエッチング装置42が特に有効となる。また,アルカリエッチング装置16及び18は,アルカリエッチング装置20に比べて濾過装置76で濾過する固形物の除去量を多くする必要がある。
【0091】
固形物の除去量が多い場合,例えばアルカリ液中の固形物濃度が200?1500ppm範囲では,濾過膜が目詰まりし易く短時間で濾過速度が低下し易い。したがって,濾過助剤添加装置77から濾過助剤として研磨剤をアルカリ液48に添加させることが好ましい。
【0092】
濾過助剤として使用する研磨剤の種類は,機械的粗面化装置で説明したスラリー液38中に含有される研磨剤と同様である。研磨剤の種類の中でも特にパミストンとケイ砂が好ましい。濾過助剤として好ましいパミストンの組成は次の通りである。
【0093】
・シリカ(ケイ酸分:SiO_(2))…70?80質量%
・アルミナ(Al_(2)O_(3))…10?20質量%
・酸化鉄(Fe_(2)O_(3))…3質量%以下
・*その他の成分…100質量%の残り
研磨剤の粒径としては,メジアン径で3?50μmの範囲が好ましく,6?45μmの範囲がより好ましい。研磨剤のメジアン径は濾過速度と関係し,3?50μmの範囲が濾過速度の低下を抑制する効果が大きい。また,3?50μmの範囲の研磨剤は濾材(濾過膜)からの剥離性もよい。
【0094】
研磨剤の粒径分布は,1?200μmの分布範囲が好ましく,5?100μmの分布範囲であることが特に好ましい。
【0095】
アルカリ液48に添加する研磨剤の添加量としては,0.03?1.00g/Lの範囲であることが好ましく,0.05?0.30g/Lの範囲がより好ましい。研磨剤の添加量が0.03?1.00g/Lの範囲において,濾過速度の低下抑制効果が比較的大きなレベルから大きなレベルに維持でき,且つ濾過膜上に堆積する研磨剤の堆積量も小さく濾過膜の洗浄頻度を少なくできるからである。
【0096】
また,濾過助剤として使用する研磨剤は,未使用の研磨剤を使用してもよいが,上記したように,機械的粗面化装置で使用した使用済みの研磨剤を使用することがより好ましい。これは,機械的粗面化装置で使用することにより,研磨剤の粒体の角が取れて丸みをおびるため,研磨剤で濾過膜を傷つけ難くなる。また,研磨剤が丸みをおびることによって,濾過膜上に堆積した研磨剤同士の間に空隙が形成され易くなり,固形物と研磨剤が混ざった濾過ケーク層による目詰まりを抑制できる。更には研磨剤の有効利用にも寄与する。
【0097】
この場合,珪藻土やパーライトのような通常の濾過助剤でもある程度の濾過速度低下抑制効果を得ることはできるが,通常の濾過助剤よりも硬い研磨剤を使用することで一層の改善を図ることができる。また,珪藻土やパーライトは,アルカリ液濃度が20?35質量%,アルカリ液温度が50?80℃のアルカリエッチング条件下でアルカリ液に対して溶解性を有する。これにより,アルカリエッチングの性能に悪影響をもたらす懸念がある。これに対して,上記した種類の研磨剤は,珪藻土やパーライトに比べてアルカリ液への溶解性が極めて小さく,アルカリエッチングに悪影響をもたらす懸念もない。
【0098】
このように,アルカリ液48中の固形物の濾過を行う際の濾過助剤として研磨剤を使用することにより,濾過膜上に固形物と研磨剤とが混ざった濾過ケークが形成される。濾過ケーク中の研磨剤は硬いため,高い濾過圧が加わっても濾過ケークが圧縮されず,アルカリ液が通過する空隙が確保され易くなる。これによって,長時間の濾過においても濾過速度の低下を抑制できる。この場合,濾過装置76に対してアルカリ液を1回だけ通過させることに限定されず,ポンプ75によって複数回の循環濾過を行うこともできる。特に,濾過開始時には,十分な厚みの濾過ケークが形成されていないので,複数回の循環濾過を行うことが好ましい。」
オ 「【0102】
また,濾過ライン54には,図3に示すように,濾過された固形物からアルカリ液48を脱液する脱液ライン88を併設することが好ましい。
【0103】
即ち,受け容器86からは第6配管90が脱液機92まで延設されるとともに,第6配管90には受け容器86の固形物を脱液機92に送るポンプ94が設けられる。脱液機92としては,固形物からアルカリ液48を脱液できるものであればどのようなものでもよいが,例えばベルト式脱液機を好適に使用できる。
【0104】
ベルト式脱液機は,横方向に長尺な脱液用容器96の入口96A側と出口96B側とに設けた一対のローラ98,98同士の間に無端状の帯状不織布100を掛け渡し,帯状不織布100が回転走行するように構成する。更に,脱液用容器96の天井面から第2エア配管102が前記したコンプレッサ80まで延設される。これにより,帯状不織布100の上に乗って搬送される固形物中のアルカリ液48は,重力及びコンプレッサからの圧縮エアによって帯状不織布100を透過し,脱液用容器96の底部に溜まる。この結果,固形物中のアルカリ液48が脱液されるとともに,脱液された固形物は出口96Bの下方に設けられた固形物受け容器104内に落下する。
【0105】
また,脱液用容器96の底部に溜まったアルカリ液48は,ポンプ105を有する第7配管106を介してアルカリ液貯留槽46に戻される。これにより,固形物中に残存するアルカリ液を再利用するための脱液ライン88が形成される。
【0106】
この脱液ライン88では,固形物のアルカリ含有量が80質量%以下,好ましくは60質量%以下になるように脱液することが好ましい。」


第6 対比・判断
1 引用発明1を主たる引用発明としたときの検討
(1) 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「処理液を貯留するタンク」と「内部に搬送ローラとシャワーノズルが配備され,前記搬送ローラの駆動によりLCD用ガラス基板等のガラス基板を水平姿勢又は傾斜姿勢で搬送しながら,前記処理液を前記シャワーノズルにより前記ガラス基板の表面に供給することにより,前記ガラス基板にエッチングを施すチャンバ」及び「処理残渣」は,それぞれ,本願発明の「エッチング液槽」と「エッチング液槽に収容されたエッチング液を,1枚ずつ連続的に搬送されるガラス基板に対して噴射することによりエッチング処理を行うように構成された枚葉式かつスプレー式のエッチング装置」及び「スラリー」に相当する。
また,引用発明1の「前記タンクと,前記タンクに貯溜される前記処理液を前記シャワーノズルに供給するための液供給管と,前記チャンバから使用済みの処理液を導出して前記タンクに戻す液回収管とから構成される前記処理液の循環供給経路」は,前記「タンク」を備えることで「前記処理液による前記ガラス基板の処理に伴って生じる処理残渣を,前記循環供給経路内を循環する処理液中から分離」している。そして,引用発明1の「循環供給経路」内で凝集剤を用いることは,引用例1には記載も示唆もされていない。
したがって,引用発明1の前記「循環供給経路」と,本願発明の「前記エッチング液槽のエッチング液を外部に取り出すとともに,ガラス基板から溶解した化合物を捕捉するためにガラス基板と接触したエッチング液を濾過して前記エッチング液槽に返送するように構成された,凝集剤を用いない循環ライン」とは,「前記エッチング液槽のエッチング液を外部に取り出すとともに,ガラス基板から溶解した化合物を捕捉するために,ガラス基板と接触したエッチング液」からスラリーを分離して「前記エッチング液槽に返送するように構成された,凝集剤を用いない循環ライン」である点で共通する。
そして,引用発明1の「ガラス基板処理装置」は,「LCD用ガラス基板」に「エッチングを施す」ことができる装置であるから,以下の相違点を除き,本願発明の「フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に対してエッチング処理を実行するエッチングシステム」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明1とは,次の一致点で一致するとともに,次の相違点で相違する。
(一致点)
「フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に対してエッチング処理を実行するエッチングシステムであって,
少なくともエッチング液槽を備え,エッチング液槽に収容されたエッチング液を,1枚ずつ連続的に搬送されるガラス基板に対して噴射することによりエッチング処理を行うように構成された枚葉式かつスプレー式のエッチング装置と,
前記エッチング液槽のエッチング液を外部に取り出すとともに,ガラス基板から溶解した化合物を捕捉するために,ガラス基板と接触したエッチング液からスラリーを分離して前記エッチング液槽に返送するように構成された,凝集剤を用いない循環ラインと,
前記循環ラインに配置され,導入されたエッチング液を前記循環ラインの後段で固液分離を行うための第1の固液分離装置と,
前記循環ラインにおける前記第1の固液分離装置の後段に配置され,前記第1の固液分離装置にて捕捉されたスラリーを受け入れて固液分離するように構成された第2の固液分離装置と,
を備え,
前記第1の固液分離装置および前記第2の固液分離装置で固液分離されたエッチング液が,それぞれ前記エッチング液槽に返送されることを特徴とするエッチングシステム。」

(相違点)
(相違点1)本願発明は,前記第1の固液分離装置として「導入されたエッチング液を濾過する浸漬膜を備えた膜式濾過装置」を備えるのに対し,引用発明1は,前記第1の固液分離装置として「前記処理液中の処理残渣を粗分離するサイクロン分離器」を備える点。
(相違点2)本願発明は,前記第2の固液分離装置として「加圧式濾過装置」を備えるのに対し,引用発明1は「粗分離された処理残渣を,さらに処理液と処理残渣とに精密分離する沈殿分離装置」を備える点。
(相違点3)本願発明の「循環ライン」は「ガラス基板と接触したエッチング液を濾過して前記エッチング液槽に返送する」のに対し,引用発明1の「循環供給経路」は「使用済みの処理液」から「前記ガラス基板の処理に伴って生じる処理残渣」を「分離」して「前記タンクに戻す」点。
(相違点4)本願発明は「前記膜式濾過装置がMF膜濾過装置であり,前記加圧式濾過装置がフィルタープレスである」という構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,相違点4について検討する。

イ 引用例2には,第5の2(1)ウ及びエで摘記したように,「循環ライン30aの途中に循環槽33を設けてこの循環槽33からエッチング液の一部」を「取り出して濾過」する「濾過槽20」(段落【0036】)は「孔径が0.1?10μm程度の精密濾過(MF)膜等」である「濾過膜27」(段落【0028】)によりエッチング液を濾過すること,前記「濾過槽20底部に設けた引抜管24(図2,3には不記載)から槽外へ排出」される「濃縮液」を「ベルトプレス型,フィルタープレス型,およびスクリュープレス型等」の加圧式濾過装置である「脱水機」で「廃棄」する(段落【0029】)こと,が記載されている。
すなわち,引用例2において,前記「ベルトプレス型,フィルタープレス型,およびスクリュープレス型等」の加圧式濾過装置である「脱水機」は,前記「精密濾過(MF)膜等」である「濾過膜27」を有する膜式濾過装置の後段に配置されているものの,前記「循環ライン30a」に配置されていない。
そうすると,共に「循環供給経路内」に配置された引用発明1の「サイクロン分離器」と「前記サイクロン分離器により粗分離された処理残渣」を「精密分離する沈殿分離装置」とを,引用例2の「循環ライン30a」に配置された前記「精密濾過(MF)膜等」を備えた膜式濾過装置と前記「循環ライン30a」に配置されていない前記「フィルタープレス型」等の加圧式濾過装置とに置き換えて,相違点4に係る構成とすることを,当業者が想起できたとは認められない。

ウ 一方,第5の3(1)ウで摘記した,引用例3の「本発明において使用する「研磨反応槽」は,上述の研磨液をガラスと反応させてガラスを研磨(すなわち溶解)するための反応槽である。……本発明では,従来公知の研磨反応槽,例えば研磨液にガラスを浸漬せしめて研磨を行う浸漬型の研磨反応槽や,ガラスに研磨液をスプレー噴霧して研磨を行う噴霧型の研磨反応槽など,従来公知の研磨反応槽を何ら制限なく使用することができる。」(段落[0182])という記載から,前記「研磨」とは実質的にはエッチング処理を意味すると認められるから,前記「研磨液」はエッチング液に相当する。
そして,第5の3(1)エ及びオで摘記したように,引用例3には,「上記研磨反応槽より取り出して被処理液とするための引抜ライン」と「上記処理液を上記研磨反応槽に返送するための返送ライン」とからなる循環ラインに,「上記被処理液に凝集剤を添加してスラッジ凝集体含有研磨液を得るための凝集反応装置」と,「上記スラッジ凝集体含有研磨液を処理液とスラッジ凝集体とに分離するための固液分離装置」を設けること(段落[0224])が,さらに,前記循環ラインにおける前記「固液分離装置」の後段には「フィルタプレスなどの脱水機」を設けること(段落[0219])が記載されている。そして,前記「固液分離装置」は,「フィルタを含む濾過機」(段落[0249]),あるいは,「フィルタやバッグフィルタなどのフィルタ式濾過機,フィルタプレスやスクリュープレスなどの加圧式濾過機,真空回転式濾過機,プリコート式濾過機など」であること(段落[0250])が記載されている。
しかしながら,第5の3(1)イで摘記した「反応後研磨液中のスラッジは,微粒子のものが多い。従って,フィルタだけでこれを除去すると,フィルタが短時間で目詰まりを起こす。微細なスラッジを凝集させ大きな塊とすることができれば,フィルタの交換時期を延ばすことができる。」(段落[0101]),第5の3(1)エで摘記した「凝集剤を被処理液に添加することによって,凝集剤に含まれる重合体が水素結合などの相互作用によりスラッジと結合し,あるいは凝集剤がスラッジを吸着せしめることによって,スラッジよりも粒径の大きな凝集体を研磨液中にて形成することができる。」(段落[0212])という記載から,上記の循環ラインに「上記被処理液に凝集剤を添加してスラッジ凝集体含有研磨液を得るための凝集反応装置」を設けることは,引用例3において必須の構成である。
したがって,「循環供給経路」内で凝集剤を用いることは記載も示唆もされていない引用発明1に,循環ラインにおいてエッチング液である「被処理液に凝集剤を添加」することが必須である引用例3に記載された技術を適用する動機付けがあるとは認められない。
また,引用例3には,前記「フィルタを含む濾過機」あるいは「フィルタやバッグフィルタなどのフィルタ式濾過機である「固液分離装置」として「MF膜濾過装置」を用いることは,記載も示唆もされていない。したがって,仮に引用発明1に引用例3に記載された技術を適用することを想起できたとしても,前記「MF膜濾過装置」を「フィルタプレス」と組み合わせて用いるという相違点4に係る本願発明の構成を当業者が容易に想到できたとは認められない。

エ これに対して,本願発明は,相違点4に係る構成を備えることで,従来は「加圧式濾過装置は,排液ラインにて使用するには適しているが,循環ラインにて使用するには不都合があった。その理由は,加圧式濾過装置にて効率的に固液分離を行うためには,一般的に導入される使用済エッチング液に凝集剤を添加する手段が用いられるからである。凝集剤を添加してしまうと,固液分離を効果的に行うことが可能になる反面,濾過後のエッチング液にエッチングに悪影響を与える可能性がある成分が溶解する可能性が高くなり,濾過後のエッチング液を再利用しにくくなるという不都合がある。」(本願明細書の段落【0005】)とされていたところ,「マイクロフィルタ184により捕捉された汚泥はスラリー状で,凝集剤を添加せずともフィルタープレス20にとって最適な汚泥が回収される。よって,上述したように,凝集剤を用いない循環ライン15においても効率の良い濾過を行うことができる。また,フィルタープレス20は,濾過圧力が高いため,低含水率のケーキを得ることができる。そのためエッチング液をより多く再利用できる他に,汚泥等の産廃費用を低く抑えることができる。」(本願明細書の段落【0024】)という格別の効果を奏するものである。

オ したがって,相違点1ないし3について検討するまでもなく,本願発明は,当業者であっても,引用発明1及び引用例2ないし3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 引用発明2を主たる引用発明としたときの検討
(1) 対比
本願発明と引用発明2とを対比すると,両者は,次の一致点で一致するとともに,次の相違点で相違する。
(一致点)
「フラットパネルディスプレイ用ガラス基板に対してエッチング処理を実行するエッチングシステムであって,
少なくともエッチング液槽を備え,エッチング液槽に収容されたエッチング液によりエッチング処理を行うように構成されたエッチング装置と,
前記エッチング液槽のエッチング液を外部に取り出すとともに,ガラス基板から溶解した化合物を捕捉するためにガラス基板と接触したエッチング液を濾過して前記エッチング液槽に返送するように構成された,凝集剤を用いない循環ラインと,
前記循環ラインに配置され,導入されたエッチング液を濾過する浸漬膜を備えた膜式濾過装置であって,前記循環ラインの後段で効率的に固液分離を行うための膜式濾過装置と,
を備え,
前記膜式濾過装置で濾過されたエッチング液が前記エッチング液槽に返送され,かつ,
前記膜式濾過装置がMF膜濾過装置であることを特徴とするエッチングシステム。」

(相違点)
(相違点5)本願発明の「エッチング装置」は「1枚ずつ連続的に搬送されるガラス基板に対して噴射することによりエッチング処理を行うように構成された枚葉式かつスプレー式」のものであるのに対して,引用発明2の「エッチング装置」は「エッチング槽内のエッチング液にディスプレイ用のガラス基板を浸漬してエッチングする」点。
(相違点6)本願発明は「前記循環ラインにおける前記膜式濾過装置の後段に配置され,前記浸漬膜にて捕捉されたスラリーを受け入れて固液分離するように構成された加圧式濾過装置」を備えるのに対し,引用発明2は,そのような構成を備えていない点。
(相違点7)本願発明は「前記加圧式濾過装置で濾過されたエッチング液」を「前記エッチング液槽に返送」するのに対し,引用発明2は,そのような構成を備えていない点。
(相違点8)本願発明は「前記加圧式濾過装置がフィルタープレス」であるのに対し,引用発明2は,そのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,相違点6ないし8について検討する。

イ 引用例4には,第5の4(1)ウで摘記したように,「濾過装置76で濾過された濾過済みアルカリ液48が濾過装置76の出口から第5配管78を介してアルカリ液貯留槽46の上部に戻される」(段落【0078】)という循環ラインには,「ろ材として濾布や中空糸膜等の濾過膜」(段落【0081】)を利用した「濾過装置」を設けることしか記載されていない。
そして,第5の4(1)オで摘記したように,引用例4には「固形物からアルカリ液48を脱液」できる「ベルト式脱液機」(段落【0103】)を備えることは記載されているが,当該「ベルト式脱液機」は加圧式濾過装置であるとしても「フィルタープレス」ではなく,また,上記の循環ラインに設けられるものではない。
したがって,引用例4には,「循環ラインにおける前記膜式濾過装置の後段」に「加圧式濾過装置」である「フィルタープレス」を「配置」して「前記加圧式濾過装置で濾過されたエッチング液」を「前記エッチング液槽に返送」するという相違点6ないし8に係る本願発明の構成は何ら記載されていない。
そうすると,仮に引用例4に記載された技術を引用発明2に適用することを想起したとしても,相違点6ないし8に係る本願発明の構成を得ることはできない。

ウ なお,第6の1(2)イで検討したように,引用例3には,「上記研磨反応槽より取り出して被処理液とするための引抜ライン」と「上記処理液を上記研磨反応槽に返送するための返送ライン」とからなる循環ラインに,種々の形式の「濾過機」が採用可能な「固液分離装置」と,当該「固液分離装置」の後段に「フィルタプレスなどの脱水機」を設けることが記載されている。
しかし,上記の循環ラインに「上記被処理液に凝集剤を添加してスラッジ凝集体含有研磨液を得るための凝集反応装置」を設けることは,引用例3において必須の構成である。
したがって,第6の1(2)イの検討と同様に,引用例3に記載の技術を引用発明2に適用する動機付けがあるとは認められない。
また,引用例3には,前記「フィルタを含む濾過機」あるいは「フィルタやバッグフィルタなどのフィルタ式濾過機である「固液分離装置」として「MF膜濾過装置」を用いることは,記載も示唆もされていない。したがって,仮に引用発明2に引用例3に記載された技術を適用することを想起できたとしても,前記の「循環ラインにおける前記膜式濾過装置の後段」に「加圧式濾過装置」である「フィルタープレス」を「配置」して「前記加圧式濾過装置で濾過されたエッチング液」を「前記エッチング液槽に返送」するという相違点6ないし8に係る本願発明の構成を,当業者が想到できたとは認められない。

エ これに対して,本願発明は,相違点6ないし8に係る構成を備えることで,「マイクロフィルタ184により捕捉された汚泥はスラリー状で,凝集剤を添加せずともフィルタープレス20にとって最適な汚泥が回収される。よって,上述したように,凝集剤を用いない循環ライン15においても効率の良い濾過を行うことができる。また,フィルタープレス20は,濾過圧力が高いため,低含水率のケーキを得ることができる。そのためエッチング液をより多く再利用できる他に,汚泥等の産廃費用を低く抑えることができる。」という,本願明細書の段落【0024】に記載された格別の効果を奏するものである。

オ したがって,相違点5について検討するまでもなく,本願発明は,当業者であっても,引用発明2及び引用例3ないし4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断
第6の2で記載した理由から,本願発明は,当業者であっても,引用発明2及び引用例4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由によっては,もはや本願を拒絶することはできない。


第8 当審拒絶理由についての判断
第6の1で記載した理由から,本願発明は,当業者であっても,引用発明1及び引用例2ないし3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,平成29年9月25日付けの当審拒絶理由は解消した。


第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-14 
出願番号 特願2014-239619(P2014-239619)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杢 哲次鈴木 聡一郎齊田 寛史  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 鈴木 匡明
加藤 浩一
発明の名称 エッチングシステム  

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