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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1337399
審判番号 不服2017-681  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-17 
確定日 2018-02-27 
事件の表示 特願2014-507787「電気機器の制御方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日国際公開、WO2014/050067、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年9月24日(パリ条約に基づく優先権主張 2012年9月28日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月1日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年10月7日付けで手続補正がなされ、平成28年11月7日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年9月29日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年10月31日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年10月31日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電気機器の制御方法であって、
ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれが携帯する端末の移動経路を算出する経路算出ステップと、
前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、第1の間隔で地点ごとに記録され、前記移動経路上の気象に関する情報を含む第1気象情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を所定の計算式に適用することにより、前記第1の間隔より小さい第2の間隔ごとの各地点における第2気象情報を取得する補間ステップと、
前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップと、
前記累積気象情報に基づいて前記ユーザおよび当該ユーザの家族のすべてが気象から受けた影響の大きさを算出し、算出した前記大きさに応じて前記電気機器を制御するための設定を前記電気機器に行う機器設定ステップとを含み、
前記取得ステップにおいて取得された前記第1気象情報は、当該第1気象情報を観測した地点における大気中の飛散物の量と、風量および湿度の少なくとも一方とを含み、
前記補間ステップでは、前記風量が所定の値以上である地点の重みを大きくする、または、前記湿度が所定の値以上である地点の重みを小さくすることにより、前記各地点における大気中の飛散物の量を、前記第2気象情報として算出する、
電気機器の制御方法。」

なお、本願発明2-15の概要は以下のとおりである。

本願発明2-14は本願発明1を減縮した発明である。
本願発明15は、本願発明1-14に係る電気機器の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する発明であり、本願発明1-14とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第3 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-288873号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は、衣類に付着した粉塵の除去ができるランドリー機器を備えたランドリーシステムに関する。」

イ.「【0009】
(第1の実施形態)
・・・(中略)・・・
【0034】
ここで、気象情報サーバ9から環境状態情報サーバ7に送信される気象情報は、粉塵の飛散量を判断可能な気象情報例えば全国の降水量、湿度、気温、風速、風向、紫外線量、花粉飛散量、黄砂飛来量、光化学スモッグ発生量などである。これら例示した気象情報の種類が多いほど粉塵飛散量を正確に得られるが、少なくとも1種類以上の気象情報があればよい。ただし、より直接的な粉塵情報である花粉飛散量、黄砂飛来量および光化学スモッグ発生量を含んでいることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0043】
図7は、洗濯乾燥機4の制御装置58が実行する運転制御のフローチャートである。
スタートキーがオンされると、制御装置58は、上述したようにステップS1で環境状態情報サーバ7に対し環境状態情報要求を送信し、ステップS2で環境状態情報サーバ7から送られてくる環境状態情報を受信する。制御装置58は、ステップS3において環境状態情報が示す粉塵飛散量がレベル0(飛散なし)か否かを判断し、レベル0である(YES)と判断すると、後述する粉塵除去行程を行うことなくステップS7に移行して洗濯行程の中の注水行程を開始する。
【0044】
一方、制御装置58は、ステップS3において粉塵飛散量がレベル0でない(NO)と判断すると、ステップS4に移行して粉塵飛散量がレベル1からレベル7の範囲内であるか否かを判断する。ここで、「YES」と判断するとステップS5に移行して、レベルに応じた時間(実施量に相当)だけ粉塵除去行程を実行する。また、「NO」と判断するとステップS6に移行して、予め決められた最大時間だけ粉塵除去行程を実行する。粉塵除去行程が終了すると、ステップS7の洗濯行程に移行する。」

ウ.「【0056】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図8を参照しながら説明する。
本実施形態のランドリーシステムは、使用者の移動した経路(軌跡)をトレースし、その使用者の着用している衣類への粉塵の付着量をより正確に推定するものである。
【0057】
図8は、ランドリーシステム全体の構成を概略的に示すもので、図1と同一部分には同一符号を付している。この図8において、インターネット5には、位置情報データベース12を伴った位置情報サーバ11が接続されている。位置情報サーバ11には、携帯電話機14から送信される電波を受信する基地局13が複数接続されている(図8では1つのみを示す)。
【0058】
携帯電話機14は、GPS受信機を備えており、4つ以上のGPS衛星15a、15b、…からの測位電波を同時に受信し、その測位電波に基づく演算を行うことにより現在の位置(緯度、経度、高度)を検出するようになっている。この検出された位置情報は、所定時間ごとにまたは通話やメール送受信の際に基地局13に自動送信され、位置情報サーバ11は、受信した位置情報をデータベース12に格納するようになっている。
【0059】
さて、上記構成を備えたランドリーシステムで用いられる使用者の位置情報とは、洗濯乾燥機4が設置されている位置情報ではなく、使用者に通常携帯されている携帯電話機14の位置情報である。環境状態情報サーバ7は、ユーザ登録(初期登録)において、使用者が指定した携帯電話機14を登録し、位置情報サーバ11との間で携帯電話機14の位置情報を取得するための認証手続きを行う。
【0060】
ユーザ登録後、環境状態情報サーバ7は、洗濯乾燥機4から送信されたユーザIDと環境状態情報要求を受信すると、第1の実施形態と同様に要求元の洗濯乾燥機4を識別し、気象情報サーバ9から前日またはその日の気象情報を取得する。さらに、環境状態情報サーバ7は、位置情報サーバ11から前日またはその日の携帯電話機14の位置情報、すなわち携帯電話機14を携帯している使用者が移動した軌跡のトレース情報を取得する。
【0061】
環境状態情報サーバ7は、これら位置情報と気象情報とに基づいて、携帯電話機14(使用者)の移動軌跡に沿って各時間における粉塵飛散量を積算し、その積算値に基づいて環境状態情報を生成する。従って、この環境状態情報の粉塵飛散量は、使用者の衣類に付着した粉塵付着量をより正確に表している。環境状態情報サーバ7は、生成した環境状態情報をその要求元である洗濯乾燥機4に送信する。洗濯乾燥機4が実行する運転制御は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
本実施形態によれば、携帯電話機14の位置情報を利用した使用者のトレース情報と粉塵飛散量を判断可能な気象情報とに基づいて使用者が受ける粉塵量を求めるので、非常に精度の高い環境状態情報を生成できる。その結果、洗濯乾燥機4は、上記環境状態情報に基づいてより的確に粉塵除去運転を制御でき、運転コストの増大を極力抑えながら衣類に付着した粉塵をより確実に除去することができる。」

エ.「【0071】
第2の実施形態においては以下のように変形して実施してもよい。
・・・(中略)・・・
【0073】
環境状態情報サーバ7は、複数の位置情報に基づいて環境状態情報を生成してもよい。例えば、家族のそれぞれが携帯電話機14を有している場合には、それぞれの携帯電話機14のトレース情報と気象情報とに基づいて求めた各人の粉塵量のうち最大のまたは平均の粉塵量を環境状態情報としてもよい。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「携帯電話機14は、現在の位置を検出し、検出された位置情報を送信し(【0058】)、
位置情報サーバ11は、受信した位置情報をデータベース12に格納し(【0058】)、
環境状態情報サーバ7は、洗濯乾燥機4から送信されたユーザIDと環境状態情報要求を受信すると、要求元の洗濯乾燥機4を識別し、気象情報サーバ9から前日またはその日の気象情報を取得し(【0060】)、
当該気象情報は、粉塵の飛散量を判断可能な気象情報であって、全国の降水量、湿度、気温、風速、風向、紫外線量、花粉飛散量、黄砂飛来量、光化学スモッグ発生量の少なくとも1種類以上であって、より直接的な粉塵情報である花粉飛散量、黄砂飛来量および光化学スモッグ発生量を含むことが好ましく(【0034】)、
位置情報サーバ11から前日またはその日の携帯電話機14の位置情報、すなわち、携帯電話機14を携帯している使用者が移動した軌跡のトレース情報を取得し(【0060】)、
環境状態情報サーバ7は、これら位置情報と気象情報とに基づいて、携帯電話機14(使用者)の移動軌跡に沿って各時間における粉塵飛散量を積算し、その積算値に基づいて環境状態情報を生成し、粉塵飛散量は、使用者の衣類に付着した粉塵付着量を表し(【0061】)、
環境状態情報サーバ7は、家族のそれぞれが携帯電話機14を有している場合には、それぞれの携帯電話機14のトレース情報と気象情報とに基づいて求めた各人の粉塵量のうち最大のまたは平均の粉塵量を環境状態情報とし(【0073】)、
環境状態情報サーバ7は、生成した環境状態情報を洗濯乾燥機4に送信し(【0061】)、
洗濯乾燥機4の制御装置58は、環境状態情報が示す粉塵飛散量がレベル0であると判断すると、粉塵除去行程を行うことなく注水行程を開始し(【0043】)、
洗濯乾燥機4の制御装置58は、粉塵飛散量がレベル0でないと判断すると、レベル1からレベル7の範囲内であるか否かを判断し、当該範囲内と判断するとレベルに応じた時間(実施量に相当)だけ粉塵除去行程を実行し、当該範囲内でないと判断すると、予め決められた最大時間だけ粉塵除去行程を実行する(【0044】)、方法。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-184285号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車載ナビゲーション制御部(以下、ナビ制御部という)と室内環境制御部とを備えた車両の協調制御システムに関する。」

イ.「【0073】
このように、これから先途中で雨が上がり晴れる確率が高くなり、最適経路が花粉飛散エリアを通過することが判明したときに、協調予測制御部30(CPU30b;経路変更指令手段)はナビ制御部8(CPU8b)に対して再経路探索信号を出力する。ナビ制御部8では、花粉濃度予測に応じて道路ノードのコストに係数を掛ける処理を行った上で最適経路の探索がなされるので、花粉飛散の少ないルートを新たな最適経路とすることができる。なお、走行途中に健康上の不利益を引き起こすおそれのある原因として、上記花粉の他に光化学スモッグ等を例示することができる。」

したがって、上記引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。

<引用文献2の記載事項>
「車載ナビゲーション制御部(ナビ制御部)を備えた車両の協調制御システムにおいて(【0001】)、
最適経路が花粉飛散エリアを通過することが判明したときに、協調予測制御部30はナビ制御部8に対して再経路探索信号を出力し(【0073】)、
ナビ制御部8は、花粉濃度予測に応じて道路ノードのコストに係数を掛ける処理を行った上で最適経路を探索し、花粉飛散の少ないルートを新たな最適経路とする(【0073】)、
協調制御システム。」

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2006-98007号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は、換気空調システムおよび換気空調制御方法、特に、対象空間の空気と外部の空気とを入れ替えるための換気装置によって換気を行う換気空調システムおよび換気空調制御方法に関する。」

イ.「【0043】
(室内センサ)
室内センサ40は、図1に示すように、COセンサ41、CO_(2)センサ42、室内ダストセンサ43、室内清浄度検出部45等とから構成されている。なお、COセンサ41およびCO_(2)センサ42によって検出される汚染要素は、上述した換気装置10の換気対象要素となっている。また、室内ダストセンサ43によって検出される汚染要素は、上述した空気清浄装置20の清浄対象要素となっている。
【0044】
COセンサ41は、室内SIにおけるCOを検出する。CO_(2)センサ42は、室内SIにおけるCO_(2)を検出する。室内ダストセンサ43は、室内SIにおけるダストを検出する。室内清浄度検出部45は、COセンサ41、CO_(2)センサ42および室内ダストセンサ43から得られる検出状況から、CO濃度、CO_(2)濃度および室外ダスト濃度の各濃度を求め、制御装置60に対して室内清浄度データを送信する。
【0045】
(室外センサ)
室外センサ50は、図1に示すように、花粉センサ51、NOxセンサ52、室外ダストセンサ53、室外清浄度検出部55等とから構成されている。なお、花粉センサ51、NOxセンサ52および室外ダストセンサ53の各センサによって検出される汚染要素は、上述した空気清浄装置20の清浄対象要素となっている。
【0046】
花粉センサ51は、室外SOの花粉を検出する。NOxセンサ52は、室外SOのNOxを検出する。室外ダストセンサ53は、室外SOのダストを検出する。室外清浄度検出部55は、花粉センサ51、NOxセンサ52および室外ダストセンサ53から得られる検出状況から、花粉濃度、NOx濃度および室外ダスト濃度の各濃度を求め、制御装置60に対して室外清浄度データを送信する。
【0047】
(制御装置)
制御装置60は、換気空調システムのブロック構成図の図2に示すように、CPU61と、メモリ65等を有しており、換気装置10,空気清浄装置20,コントローラ30,室内センサ40,室外センサ50等と通信線によって接続されている。この制御装置60は、コントローラ30から設定データを受信し、室内センサ40と室外センサ50とからそれぞれ室内清浄度データ、室外清浄度データおよび風量センサ11の検出データ等を受信する。そして、制御装置60のCPU61は、受信した設定データ、室内清浄度データおよび室外清浄度データに基づいて演算処理を行うことで、換気装置10の換気制御と空気清浄装置20の清浄制御とを連動して制御する。」

したがって、上記引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。

<引用文献3の記載事項>
「室内センサ40は、COセンサ41、CO_(2)センサ42、室内ダストセンサ43、室内清浄度検出部45から構成され(【0043】)、室内清浄度検出部45は、COセンサ41、CO_(2)センサ42および室内ダストセンサ43から得られる検出状況から、CO濃度、CO_(2)濃度および室外ダスト濃度の各濃度を求め、制御装置60に対して室内清浄度データを送信し(【0044】)、
室外センサ50は、花粉センサ51、NOxセンサ52、室外ダストセンサ53、室外清浄度検出部55とから構成され(【0045】)、室外清浄度検出部55は、花粉センサ51、NOxセンサ52および室外ダストセンサ53から得られる検出状況から、花粉濃度、NOx濃度および室外ダスト濃度の各濃度を求め、制御装置60に対して室外清浄度データを送信し(【0046】)、
制御装置60は、コントローラ30から設定データを受信し、室内センサ40と室外センサ50とからそれぞれ室内清浄度データ、室外清浄度データを受信し、受信した設定データ、室内清浄度データおよび室外清浄度データに基づいて演算処理を行うことで、換気装置10の換気制御と空気清浄装置20の清浄制御とを連動して制御する(【0047】)、
換気空調システム。」

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2011-33400号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は、地域や時間毎に変化する環境に関する情報を、ユーザの現在の状況または将来の状況に応じて、該ユーザに提供する環境情報提供装置および環境情報提供システムに関する。」

イ.「【0048】
ステップS201およびステップS202では、ユーザの現在地が取得され、ユーザの現在地における花粉飛散量/空中花粉濃度が取得される。本実施形態において用いられる携帯端末9には、自動トラッキング機能が搭載されており、携帯端末9は、GPSおよび/または通信中の基地局を用いて現在位置情報を自動測位し、コンテンツサーバ2に対して自動送信する。」

ウ.「【0049】
コンテンツサーバ2の情報取得部23は、取得されたユーザの現在位置が含まれる地域の現在の花粉飛散量/空中花粉濃度を、データサーバ3に要求する(ステップS202)。データサーバ3は、コンテンツサーバ2からの花粉飛散量/空中花粉濃度の取得要求を受けると、該当する地域を含む地点に設置されたセンサ5から測定データを収集する測定データ収集装置4から報告された、最新の花粉飛散量/空中花粉濃度を、コンテンツサーバ2に返信する。」

エ.「【0050】
ステップS203およびステップS204では、アラートの送信要否が判定され、必要であればアラートが送信される。ステップS202において、ユーザの現在地における現在の花粉飛散量/空中花粉濃度が取得されると、コンテンツサーバ2の判定部28は、ユーザの閾値をユーザデータベースから読み出し、この閾値と、取得した花粉飛散量/空中花粉濃度と、を比較する(ステップS203)。比較の結果、取得された花粉飛散量/空中花粉濃度が閾値を下回る場合、アラートは送信されず、本フローチャートに示された処理は終了する。これに対して、取得された花粉飛散量/空中花粉濃度が閾値以上である場合、コンテンツサーバ2の送信部25は、花粉症の症状がユーザに発現する可能性が高いことを知らせるためのアラートを作成し、該当ユーザの携帯端末9に対して送信する(ステップS204)。」

したがって、上記引用文献4には、次の事項が記載されていると認められる。

<引用文献4の記載事項>
「地域や時間毎に変化する環境に関する情報を、ユーザの現在の状況または将来の状況に応じて、該ユーザに提供する環境情報提供システムであって(【0001】)、
ユーザの携帯端末9は、現在位置情報を自動測位し、コンテンツサーバ2に対して自動送信し(【0048】)、
コンテンツサーバ2は、取得されたユーザの現在位置が含まれる地域の現在の花粉飛散量/空中花粉濃度を、データサーバ3に要求し(【0049】)、
データサーバ3は、コンテンツサーバ2からの花粉飛散量/空中花粉濃度の取得要求を受けると、該当する地域を含む地点に設置されたセンサ5から測定データを収集する測定データ収集装置4から報告された、最新の花粉飛散量/空中花粉濃度を、コンテンツサーバ2に返信し(【0049】)、
コンテンツサーバ2は、ユーザの閾値をユーザデータベースから読み出し、取得された花粉飛散量/空中花粉濃度が閾値以上である場合、花粉症の症状がユーザに発現する可能性が高いことを知らせるためのアラートを、該当ユーザの携帯端末9に対して送信する(【0050】)、
環境情報提供システム。」

第4 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の環境状態情報サーバ7は、位置情報サーバ11から「携帯電話機14を携帯している使用者が移動した軌跡のトレース情報を取得」し、また、「家族のそれぞれが携帯電話機14を有している場合には、それぞれの携帯電話機14のトレース情報と気象情報とに基づいて求めた各人の粉塵量のうち最大のまたは平均の粉塵量を環境状態情報」とする。
家族のそれぞれが携帯電話機を有している場合に、それぞれの携帯電話機のトレース情報を取得することは、本願発明1の「ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれが携帯する端末の移動経路を算出する経路算出ステップ」に相当する。

イ.引用発明の環境状態情報サーバ7は、「気象情報サーバ9から前日またはその日の気象情報を取得」する。この気象情報は、家族それぞれの移動軌跡に沿った粉塵飛散量の積算に用いられることから、「ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して」取得される「移動経路上の気象に関する情報」といえる。
したがって、引用発明の環境状態情報サーバ7が「気象情報サーバ9から前日またはその日の気象情報を取得」することと、本願発明1の「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、第1の間隔で地点ごとに記録され、前記移動経路上の気象に関する情報を含む第1気象情報を取得する取得ステップ」は、「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記移動経路上の気象に関する情報を含む気象情報を取得する取得ステップ」の点で共通する。

ウ.引用発明の環境状態情報サーバ7は、「これら位置情報と気象情報とに基づいて、携帯電話機14(使用者)の移動軌跡に沿って各時間における粉塵飛散量を積算し、その積算値に基づいて環境状態情報を生成」し、また、「家族のそれぞれが携帯電話機14を有している場合には、それぞれの携帯電話機14のトレース情報と気象情報とに基づいて求めた各人の粉塵量のうち最大のまたは平均の粉塵量を環境状態情報」とする。
気象情報には花粉飛散量などの粉塵情報が含まれ、この気象情報に基づいて家族それぞれの「粉塵飛散量を積算」することは、「ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、気象情報を経路算出ステップで算出した移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出」することといえる。
また、「平均の粉塵量」は、家族の粉塵量を合算してその人数で割ったものであるから、累積気象情報を合算するといえる。
したがって、引用発明の「家族のそれぞれが携帯電話機14を有している場合には、それぞれの携帯電話機14のトレース情報と気象情報とに基づいて求めた各人の粉塵量のうち最大のまたは平均の粉塵量を環境状態情報」とすることと、本願発明1の「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」は、「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」の点で共通する。

エ.引用発明の「洗濯乾燥機4の制御装置58は、環境状態情報が示す粉塵飛散量がレベル0であると判断すると、粉塵除去行程を行うことなく注水行程を開始し、洗濯乾燥機4の制御装置58は、粉塵飛散量がレベル0でないと判断すると、レベル1からレベル7の範囲内であるか否かを判断し、当該範囲内と判断するとレベルに応じた時間(実施量に相当)だけ粉塵除去行程を実行し、当該範囲内でないと判断すると、予め決められた最大時間だけ粉塵除去行程を実行する」において、家族の平均である粉塵飛散量について「レベル」を判断することは、「累積気象情報に基づいてユーザおよび当該ユーザの家族のすべてが気象から受けた影響の大きさを算出」することといえる。
また、この「レベル」に応じて、洗濯乾燥機の粉塵除去行程を行わなかったり、レベルに応じた時間だけ粉塵除去行程を実行したり、最大時間だけ粉塵除去行程を実行したりすることは、「算出した大きさに応じて電気機器を制御するための設定を電気機器に行う」ことといえる。
したがって、引用発明の上記制御装置に係る手順は、本願発明1の「前記累積気象情報に基づいて前記ユーザおよび当該ユーザの家族のすべてが気象から受けた影響の大きさを算出し、算出した前記大きさに応じて前記電気機器を制御するための設定を前記電気機器に行う機器設定ステップ」に相当する。

オ.引用発明の気象情報は、「粉塵の飛散量を判断可能な気象情報であって、全国の降水量、湿度、気温、風速、風向、紫外線量、花粉飛散量、黄砂飛来量、光化学スモッグ発生量の少なくとも1種類以上であって、より直接的な粉塵情報である花粉飛散量、黄砂飛来量および光化学スモッグ発生量を含むことが好まし」いことから、花粉飛散量のような「大気中の飛散物の量」を含む。
ただし、気象情報が、「花粉飛散量」すなわち「大気中の飛散物の量」と共に「風量および湿度の少なくとも一方」も含むかどうかは不明である。また、気象情報が、「観測した地点における」ものかどうかも不明でる。
したがって、引用発明の気象情報と、本願発明1の「前記取得ステップにおいて取得された前記第1気象情報は、当該第1気象情報を観測した地点における大気中の飛散物の量と、風量および湿度の少なくとも一方とを含み」は、「前記取得ステップにおいて取得された前記第1気象情報は、大気中の飛散物の量を含み」の点で共通する。

カ.引用発明は洗濯乾燥機を制御するから、本願発明1の「電気機器の制御方法」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「電気機器の制御方法であって、
ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれが携帯する端末の移動経路を算出する経路算出ステップと、
前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記移動経路上の気象に関する情報を含む気象情報を取得する取得ステップと、
前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップと、
前記累積気象情報に基づいて前記ユーザおよび当該ユーザの家族のすべてが気象から受けた影響の大きさを算出し、算出した前記大きさに応じて前記電気機器を制御するための設定を前記電気機器に行う機器設定ステップとを含み、
前記取得ステップにおいて取得された前記気象情報は、大気中の飛散物の量を含む、
電気機器の制御方法。」

<相違点1>
取得ステップにおいて取得される気象情報が、本願発明1では「第1の間隔で地点ごとに記録され」た「第1」気象情報であり、さらに、「当該第1気象情報を観測した地点における大気中の飛散物の量と、風量および湿度の少なくとも一方とを含」むのに対し、引用発明では、「第1の間隔で地点ごとに記録され」たものではなく、「観測した地点」の気象情報かどうか不明であり、「大気中の飛散物の量」と共に「風量および湿度の少なくとも一方」も含むかどうか不明であり、また、「第2気象情報」を算出しないことから、「第1」気象情報でもない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を所定の計算式に適用することにより、前記第1の間隔より小さい第2の間隔ごとの各地点における第2気象情報を取得する補間ステップ」を有し、「前記補間ステップでは、前記風量が所定の値以上である地点の重みを大きくする、または、前記湿度が所定の値以上である地点の重みを小さくすることにより、前記各地点における大気中の飛散物の量を、前記第2気象情報として算出する」のに対し、引用発明は当該補間ステップを有しない点。

<相違点3>
累積ステップにおいて累積される気象情報が、本願発明1では「前記補間ステップで取得した前記第2気象情報」であるの対し、引用発明では補間ステップを有しておらず、気象情報サーバから取得した気象情報である点。

(2)相違点についての判断

上記相違点1-3について検討すると、本願発明1は「前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を所定の計算式に適用することにより、前記第1の間隔より小さい第2の間隔ごとの各地点における第2気象情報を取得する補間ステップ」、「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」、「前記補間ステップでは、前記風量が所定の値以上である地点の重みを大きくする、または、前記湿度が所定の値以上である地点の重みを小さくすることにより、前記各地点における大気中の飛散物の量を、前記第2気象情報として算出する」という構成を有するが、引用文献2-4には、上記補間ステップと、当該補間ステップで取得した第2気象情報を累積する上記累積ステップは記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-15について

本願発明2-15も、本願発明1の「前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を所定の計算式に適用することにより、前記第1の間隔より小さい第2の間隔ごとの各地点における第2気象情報を取得する補間ステップ」、「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」、「前記補間ステップでは、前記風量が所定の値以上である地点の重みを大きくする、または、前記湿度が所定の値以上である地点の重みを小さくすることにより、前記各地点における大気中の飛散物の量を、前記第2気象情報として算出する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1-16について上記引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年1月17日付け手続補正により補正された請求項1-15は、「前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を所定の計算式に適用することにより、前記第1の間隔より小さい第2の間隔ごとの各地点における第2気象情報を取得する補間ステップ」、「前記補間ステップでは、前記風量が所定の値以上である地点の重みを大きくする、または、前記湿度が所定の値以上である地点の重みを小さくすることにより、前記各地点における大気中の飛散物の量を、前記第2気象情報として算出する」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-15は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第1号について

(1)当審では、請求項1の「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記取得ステップで取得した前記第1気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年10月31日付けの補正において、「前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれに対して、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報を前記経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って累積することで累積気象情報を算出し、前記ユーザおよび当該ユーザの家族それぞれの前記累積気象情報を合算する累積ステップ」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)請求項2の「前記累積ステップでは、前記第1気象情報を前記移動経路に沿って、対応する時刻ごとに累積することで累積気象情報を算出する」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年10月31日付けの補正において、「前記累積ステップでは、前記第2気象情報を前記移動経路に沿って、対応する時刻ごとに累積することで累積気象情報を算出する」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)請求項3の「前記累積ステップでは、前記取得ステップで取得した前記第1気象情報から気象値を抽出し、抽出した前記気象値を経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って加算することで累積気象値を算出し」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年10月31日付けの補正において、「前記累積ステップでは、前記補間ステップで取得した前記第2気象情報から気象値を抽出し、抽出した前記気象値を経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って加算することで累積気象値を算出し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(4)請求項4の「算出された前記複数の経路のそれぞれに沿って前記気象値を累積することで予測累積気象値を算出し、前記複数の経路のうち算出した前記予測累積気象値が最小となる最適経路を選択する経路選択ステップ」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年10月31日付けの補正において、引用する請求項3が前記(3)のとおり補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(5)請求項11の「前記累積ステップでは、前記取得ステップで取得した前記飛散量を経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って加算することで累積飛散量を算出し」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年10月31日付けの補正において、「前記補間ステップでは、前記飛散量を前記第1気象情報として用いて前記第2気象情報を取得し、前記累積ステップでは、前記補間ステップで前記飛散量を前記第1気象情報として用いて取得された前記第2気象情報を、経路算出ステップで算出した前記移動経路に沿って加算することで累積飛散量を算出し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2014-507787(P2014-507787)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 金子 幸一
相崎 裕恒
発明の名称 電気機器の制御方法、及び、プログラム  
代理人 寺谷 英作  
代理人 新居 広守  
代理人 道坂 伸一  

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