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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1337418
審判番号 不服2017-5021  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-07 
確定日 2018-02-27 
事件の表示 特願2012-132764号「ヘッドレスト用のエアバック」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月15日出願公開、特開2013-154867号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月12日(優先権主張平成24年1月5日)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年4月22日付け :拒絶理由の通知
平成28年5月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年6月9日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年9月30日付け :拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成28年10月12日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年12月20日付け:平成28年10月12日の手続補正につい ての補正却下の決定、拒絶査定(以下、「 原査定」という。)
平成29年4月7日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、請求項2に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、当業者が容易に発明できたものであり、また、請求項3-8に係る発明は、以下の引用文献1、4に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-270403号公報
2.特開2006-223836号公報
3.米国特許出願公開第2011/0169318号明細書
4.特開2009-167840号公報

第3 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年4月7日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車輌シートのシートバックに設けられる、このシートバックの略全体に添設され、かつシートバックと相似形で、かつ略同寸法となった下部ユニットと、この下部ユニットの一端に設けた帯状のダクトと、この帯状のダクトに設けた逆止弁装置と、また、このダクトの他端に設け、かつヘッドレストに設けられる上部ユニットとで構成したヘッドレスト用のエアバックであり、
このヘッドレスト用のエアバックは、前記下部ユニットに対する衝撃圧力で、この下部ユニット内の気体を、前記帯状のダクトを介して、前記上部ユニットに送り、この上部ユニットが、前記ヘッドレストと頭部との隙間を無くすように膨張可能とする構成のヘッドレスト用のエアバックであって、
前記上部ユニットに、この上部ユニットを収縮するために、当該上部ユニットの袋部の空気排気用の排気口と、この排気口を閉める栓とを有することを特徴としたヘッドレスト用のエアバック。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッドレスト用のエアバックであって、
前記逆止弁装置は、前記ダクトに設けた弁部と、この弁部に設けた二枚の逆止弁と、この逆止弁の戻りを司るスプリング、錘、アクチュエータでなる戻り機構と、前記上部ユニット、又は前記ダクトの何れかに設けた操作部とで構成したヘッドレスト用のエアバック。」

第4 引用文献及び引用文献に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面(特に、図3、図4)とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(i)「【0013】図3ないし図5は、その乗用車30のそのドライバ・シート20に適するようにさらに改良されたこの発明のむち打ち症を抑制する安全具の具体例40を示し、そして、そのむち打ち症を抑制する安全具40では、エア・ヘッド・マット41が、そのドライバ・シート20のそのヘッド・レストレイント24のその前面25をほぼ覆う大きさに設計されてそのヘッド・レストレイント24のその前面25でその運転者31のその頭部32を受け可能にされ、また、エア・ボディ・マット44が、そのドライバ・シート20のそのシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計され、そして、そのエア・ヘッド・マット41に連通されてそのシート・バック22の前面23でその運転者31の背中33を受け、さらに、ヘッド・レストレイント巻付け帯48が、一端側をそのシート・バック22のそのセンタ部分23の上方に伸長させて他端側をそのヘッド・レストレイント24に巻き付け可能にする適宜の長さでその他端に複数のフック50,50を有し、そして、長さ方向の略中間にそのエア・ヘッド・マット41を、その一端側にそのエア・ボディ・マット44をそれぞれ取り付け、またさらに、逆止弁がそのエア・ヘッド・マット41とそのエア・ボディ・マット44との連通箇所に配置され、さらには、複数のステイ穴54,54付きの止めぎれ53が、そのエア・ヘッド・マット44とそのエア・ボディ・マット44との間のそのヘッド・レストレイント巻付け帯48に縫い付けられる。
【0014】そのエア・ヘッド・マット41は、空気注入口43が一体的に結合されたエア・バッグ42を用い、そして、そのエア・バッグ42は、その空気注入口43から空気を注入および排出して適宜に脹らませられる。
【0015】そのエア・ボディ・マット44は、同様に空気注入口46が一体的に結合されたエア・バッグ45を用い、そして、そのエア・バッグ45は、その空気注入口46から空気を注入および排出して適宜に脹らませられる。さらに、このエア・バッグ45は、短いホース47でそのエア・バッグ42に接続され、そして、その短いホース47に配置されたその逆止弁52でそのエア・バッグ42に空気の流れを許す状態においてそのエア・バッグ42に連通される。」
(ii)「【0018】そのむち打ち症を抑制する安全具40は、次の手順でそのドライバ・シート20にセットされて使用される。最初に、その止めぎれ53が、そのステイ穴54,54をそのヘッド・レストレイント24のそのステイ26,26にはめ合わせてそのヘッド・レストレイント巻付け帯48が、その止めぎれ53でそのステイ26,26に止められ、次に、そのヘッド・レストレイント巻付け帯48が、そのエア・バッグ42をそのヘッド・レストレイント24のその前面25に、そのエア・バッグ45をそのシート・バック22のその前面23にそれぞれ位置させながらその他端側をそのヘッド・レストレイント24の外側に縦巻きに巻き付けられ、そして、そのフック50,50をそのステイ26,26に引っ掛けてその他端でそのステイ26,26に止められる。そのようにして、そのエア・バッグ42は、そのヘッド・レストレイント巻付け帯48でそのヘッド・レストレイント24のその前面25、そのエア・バッグ45はそのヘッド・レストレイント巻付け帯48で、そのシート・バック22のその前面23にそれぞれ取り付けられるので、それからそのエア・バッグ42,45には空気がその対応する空気注入口43,46から注入されてそのエア・バッグ42,45は適宜に脹らませられる。そうすると、そのフック50,50はそのエア・バッグ42の脹らみで緩みなしにそのステイ26,26に止められる。
【0019】そのむち打ち症を抑制する安全具40は、そのようにそのドライバ・シート20に簡単にセットされてそのエア・バッグ42でそのヘッド・レストレイント24とその運転者31のその頭部32との間の間隔を邪魔にならない程度に適宜に狭め、後面衝突時、最初にその運転者31の背中33がそのエア・バッグ45に押し付けられるので、空気がその逆止弁52を開き、そして、その連通ホース47を通ってそのエア・バッグ45からそのエア・バッグ42に流れてそのエア・バッグ42が大きく脹らませられてそのヘッド・レストレイント24とその運転者31のその頭部32との間の間隔を可及的速やかにさらに狭める。それからその運転者31のその頭部32は、その大きく脹らませられたエア・バッグ42で後方移動を積極的に減衰され、そして、そのヘッド・レストレイント24に受け止められる。その結果、その運転者31はけい部傷害が効果的に軽減されてむち打ち症が積極的に抑制される。また、この安全具40は、既に提案されたむち打ち症を抑制するための装置のようにそのヘッド・レストレイント24にアクティブ・ヘッドレスト機能を付与できてその装置に比べて構造が簡単でシートに別体に作られ、そして、シートのコストを高くしない。」

したがって、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「エア・ヘッド・マット41が、ドライバ・シート20のヘッド・レストレイント24の前面25をほぼ覆う大きさに設計されてヘッド・レストレイント24の前面25で運転者31の頭部32を受け可能にされ、
エア・ボディ・マット44がドライバ・シート20のシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計され、
エア・ボディ・マット44は、空気注入口46が一体的に結合されたエア・バッグ45を用い、
エア・ヘッド・マット41は、空気注入口43が一体的に結合されたエア・バッグ42を用い、
エア・バッグ45は、短いホース47でエア・バッグ42に接続され、そして、短いホース47に配置された逆止弁52でエア・バッグ42に空気の流れを許す状態においてエア・バッグ42に連通される、安全具40であって、
後面衝突時、最初に運転者31の背中33がエア・バッグ45に押し付けられるので、空気が逆止弁52を開き、そして、連通ホース47を通ってエア・バッグ45からエア・バッグ42に流れてエア・バッグ42が大きく脹らませられてヘッド・レストレイント24と運転者31の頭部32との間の間隔を可及的速やかにさらに狭めるものである、
安全具40。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ドライバ・シート20のシート・バック20」は、本願発明1の「車両シートのシートバック」に相当する。引用発明の「エア・ボディ・マット44は、空気注入口46が一体的に結合されたエア・バッグ45を用い」るものであり、また「ドライバ・シート20のシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計され」るものである。したがって、引用発明の「エア・ボディ・マット44」は、機能的、構造的に本願発明1の「下部ユニット」に相当する。
イ 引用発明の「エア・ヘッド・マット41」は、「ドライバ・シート20のヘッド・レストレイント24の前面25をほぼ覆う大きさに設計されてヘッド・レストレイント24の前面25で運転者31の頭部32を受け可能にされ」るものである。したがって、引用発明の「エア・ヘッド・マット41」は、機能的、構造的に本願発明1の「上部ユニット」に相当する。
ウ 引用発明の「短いホース47」によって、「エア・バッグ45は、」「エア・バッグ42に接続され」るものであるから、「短いホース47」は「エア・バッグ45」の一端に設けられており、また、「短いホース47」の他端には、「エア・バッグ42」が設けられているといえる。そして、「エア・バッグ45は、」「短いホース47に配置された逆止弁52でエア・バッグ42に空気の流れを許す状態においてエア・バッグ42に連通される」ものであるから、引用発明の「短いホース47」は、本願発明1の「帯状のダクト」との対比において、「連通路」という限度において共通する。
エ 引用発明の「短いホース47」には、「逆止弁52」が配置されているいるところ、引用発明の「逆止弁52」は本願発明1の「逆止弁装置」に相当する。
オ 引用発明の「ヘッド・レストレイント24」は、本願発明1の「ヘッドレスト」に相当する。そして、引用発明の「安全具40」は、「後面衝突時、最初に運転者31の背中33がエア・バッグ45に押し付けられるので、空気が逆止弁52を開き、そして、連通ホース47を通ってエア・バッグ45からエア・バッグ42に流れてエア・バッグ42が大きく脹らませられてヘッド・レストレイント24と運転者31の頭部32との間の間隔を可及的速やかにさらに狭めるものである」から、本願発明1の「ヘッドレスト用のエアバック」に相当するといえる。
カ ア?オより、引用発明の「エア・ヘッド・マット41が、ドライバ・シート20のヘッド・レストレイント24の前面25をほぼ覆う大きさに設計されてヘッド・レストレイント24の前面25で運転者31の頭部32を受け可能にされ、
エア・ボディ・マット44がドライバ・シート20のシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計され、
エア・ボディ・マット44は、空気注入口46が一体的に結合されたエア・バッグ45とされ、
エア・ヘッド・マット41は、空気注入口43が一体的に結合されたエア・バッグ42とされ、
エア・バッグ45は、短いホース47でエア・バッグ42に接続され、そして、短いホース47に配置された逆止弁52でエア・バッグ42に空気の流れを許す状態においてエア・バッグ42に連通される、安全具40」は、本願発明1の「車輌シートのシートバックに設けられる、このシートバックの略全体に添設され、かつシートバックと相似形で、かつ略同寸法となった下部ユニットと、この下部ユニットの一端に設けた帯状のダクトと、この帯状のダクトに設けた逆止弁装置と、また、このダクトの他端に設け、かつヘッドレストに設けられる上部ユニットとで構成したヘッドレスト用のエアバック」との対比において、「車輌シートのシートバックに設けられる、下部ユニットと、この下部ユニットの一端に設けた連通路と、この連通路に設けた逆止弁装置と、また、この連通路の他端に設け、かつヘッドレストに設けられる上部ユニットとで構成したヘッドレスト用のエアバック」の限度で一致する。
キ 上記ア?カを踏まえれば、引用発明の「後面衝突時、最初に運転者31の背中33がエア・バッグ45に押し付けられるので、空気が逆止弁52を開き、そして、連通ホース47を通ってエア・バッグ45からエア・バッグ42に流れてエア・バッグ42が大きく脹らませられてヘッド・レストレイント24と運転者31の頭部32との間の間隔を可及的速やかにさらに狭める」ことは、本願発明1の「前記下部ユニットに対する衝撃圧力で、この下部ユニット内の気体を、前記帯状のダクトを介して、前記上部ユニットに送り、この上部ユニットが、前記ヘッドレストと頭部との隙間を無くすように膨張可能とする」こととの対比において、「前記下部ユニットに対する衝撃圧力で、この下部ユニット内の気体を、連通路を介して、前記上部ユニットに送り、この上部ユニットが、前記ヘッドレストと頭部との隙間を無くすように膨張可能とする」との限度で共通する。
ク 引用発明の「エア・ヘッド・マット41」は「空気注入口43が一体的に結合されたエア・バッグ42を用い」るものであり、「空気注入口43」は、ここから空気を注入および排出するものとされる(引用文献1の段落【0014】参照。)から、引用発明の「空気注入口43」及び「エア・バッグ42」は、本願発明1の「排気口」及び「袋部」に相当するとえる。したがって、引用発明の「エア・ヘッド・マット41」の「エア・バッグ42」は、空気排気用の排気口を有するといえる。そして、エア・バッグ42から空気が排気されるとエア・バッグ42は収縮されることは明らかである。
よって、引用発明の「エア・ヘッド・マット41は、空気注入口43が一体的に結合されたエア・バッグ42を用い」ることは、本願発明1の「前記上部ユニットに、この上部ユニットを収縮するために、当該上部ユニットの袋部の空気排気用の排気口と、この排気口を閉める栓とを有する」こととの対比において、「前記上部ユニットに、この上部ユニットを収縮するために、当該上部ユニットの袋部の空気排気用の排気口を有する」という限度で共通する。
ケ 以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりとなるといえる。
<一致点>
「車輌シートのシートバックに設けられる、下部ユニットと、この下部ユニットの一端に設けた連通路と、この連通路に設けた逆止弁装置と、また、この連通路の他端に設け、かつヘッドレストに設けられる上部ユニットとで構成したヘッドレスト用のエアバックであり、
このヘッドレスト用のエアバックは、前記下部ユニットに対する衝撃圧力で、この下部ユニット内の気体を、前記連通路を介して、前記上部ユニットに送り、この上部ユニットが、前記ヘッドレストと頭部との隙間を無くすように膨張可能とする構成のヘッドレスト用のエアバックであって、
前記上部ユニットに、この上部ユニットを収縮するために、当該上部ユニットの袋部の空気排気用の排気口を有する、
ヘッドレスト用のエアバック。」

<相違点1>
下部ユニットに関して、本願発明1は、「このシートバックの略全体に添設され、かつシートバックと相似形で、かつ略同寸法となった」ものであるのに対し、引用発明は「エア・ボディ・マット44がドライバ・シート20のシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計され」たものである点。
<相違点2>
連通路に関して、本願発明1は、「帯状のダクト」であるのに対して、引用発明は、「短いホース47」である点。
<相違点3>
本願発明1は、「上部ユニットの袋部の空気排気用の排気口」に「排気口を閉める栓とを有する」のに対し、引用発明は、「エア・ヘッド・マット41」の「エア・バッグ42」の「空気注入口43」にはそのような特定がされていない点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用発明の安全具40は、エア・バッグ42を、ヘッド・レストレイント巻付け帯48でヘッド・レストレイント24の前面25に、エア・バッグ45を、ヘッド・レストレイント巻付け帯48でシート・バック22の前面23に取り付けた後、エア・バッグ42,45の空気注入口43,46から空気が注入されてエア・バッグ42,45は適宜に膨らませられ、その膨らみで緩みなしに取り付けられるものであり、後面衝突時、最初に運転者31の背中33がエア・バッグ45に押し付けられるので、空気が逆止弁52を開き、そして、連通ホース47を通ってエア・バッグ45からエア・バッグ42に流れてエア・バッグ42が大きく脹らませられてヘッド・レストレイント24と運転者31の頭部32との間の間隔を可及的速やかにさらに狭めるものである(上記引用文献1の摘示事項(ii)参照。)。
このように、引用発明の安全具40のエア・ヘッド・マット41のエア・バッグ42は、衝突前の状態においてもある程度膨らんでおり、衝突時に、エア・ボディ・マット44のエア・バッグ45のエアによりさらに膨らむという動作が予定されているものであり、衝突時におけるエア・ボディ・マット44からエア・ヘッド・マット41へ注入されるエアの量は、ある程度膨らんでいるエア・ヘッド・マット41をさらに膨らませる程度の量を予定して、それゆえ、エア・ボディ・マット44の大きさは、ある程度膨らんでいるエア・ヘッド・マット41をさらに膨らませることに十分な大きさである、ドライバ・シート20のシート・バック22のセンタ部分23の上方をほぼ覆う大きさに設計されているものと解される。
そうだとすれば、引用発明において、「エア・ボディ・マット44」の大きさを、さらに大きくして、シートバックの略全体に添設され、かつシートバックと相似形で、かつ略同寸法としようとする動機付けはないというべきである。
したがって、当業者であっても、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成と成すことは容易であったいうことはできない。
しかも、本願発明1においては、下部ユニット2を、シートバックA1と相似形で、かつ略同寸法とすることによって、本願発明1が奏する本来的効果に加え、複数個の突起、ヒータ、又は振動機構、並びにホルミシス効果の素材を、単独、又は選択して組合せ方式として下部ユニット2に設けることにより、例えば、突起は指圧効果に、ヒータは暖房に、又は振動機構は疲労回復、血行促進等に、或いは素材は治療、疲労回復等に役立て得る等の実用的な効果を発揮させるための構成を具備することが可能となるという更なる作用効果も企図しうる(本願明細書段落【0043】)ことも考慮すれば、引用発明において、上記相違点1係る本願発明1の構成と成すことは当業者にとって容易になし得たとはいえない。
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2-4のいずれにおいても、上記相違点1に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を減縮するものであるから、本願発明2と引用発明との間には、少なくとも上記相違点1が存在する。
したがって、上記「1.(2)」と同じ理由により、本願発明2は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」のとおり、本願発明1、2は、当業者であっても原査定において引用された引用文献1-4に基いて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶する理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-15 
出願番号 特願2012-132764(P2012-132764)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永冨 宏之三宅 龍平  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 出口 昌哉
尾崎 和寛
発明の名称 ヘッドレスト用のエアバック  
代理人 木村 満  
代理人 竹中 一宣  
代理人 榊原 靖  

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