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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1337441
審判番号 不服2016-6135  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-25 
確定日 2018-02-07 
事件の表示 特願2015-518351「無線通信システムにおいてSCTP接続及びX2インタフェースを設定する方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 8日国際公開、WO2014/069954、平成27年 8月20日国内公表、特表2015-524232〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明・優先権

(1)手続の経緯
本願は、2013年11月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月2日 米国、2013年1月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年1月20日付けで拒絶査定されたところ、同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年3月17日付けで拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、同年5月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

(2)本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年5月31日付けで補正された特許請求の範囲の請求項3、及び請求項3が引用する請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める。

(本願発明)
「 【請求項1】
無線通信システムにおいて、ゲートウェイがX2メッセージを処理する方法であって、
前記ゲートウェイが、第1eノードB(eNB)からX2設定要求メッセージ及び第1ターゲット情報を受信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記の受信した第1ターゲット情報に基づいて、前記の受信したX2設定要求メッセージを第2eNBに送信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記第2eNBからX2設定応答メッセージ及び第2ターゲット情報を受信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記の受信したX2設定応答メッセージを、前記の受信した第2ターゲット情報に基づいて前記第1eNBに送信するステップと、を有し、
前記第1ターゲット情報は、前記X2設定要求メッセージの追加情報であり、
前記第2ターゲット情報は、前記X2設定応答メッセージの追加情報である、方法。
【請求項3】
前記第1ターゲット情報は、ターゲット無線ネットワーク層識別子(RNL ID)を含む、請求項1に記載の方法。」

(3)本願の優先権について
本願の優先権の主張の基礎となる米国特許出願61/721,512号(以下、「優先基礎出願1」という。)、及び、米国特許出願61/753,856号(以下、「優先基礎出願2」という。)の出願書類の全体により、本願発明を特定する事項である以下の点が明らかにされていない。

「前記第1ターゲット情報は、ターゲット無線ネットワーク層識別子(RNL ID)を含む」こと。

また、請求人からは優先権基礎出願における具体的な記載等の根拠は何ら示されていない。
したがって、上記優先基礎出願1、及び優先基礎出願2に基づく本願発明についての優先権主張の効果は認められず、以下に検討する特許法第29条第2項に規定する進歩性の判断基準日は、本願の現実の出願日である2013年11月4日とする。


2.引用発明
当審拒絶理由に引用された「Nokia Siemens Networks,X2 setup between eNB and HeNB,3GPP TSG RAN WG3 #78 meeting,3GPP,2012年11月16日,R3-122501」(以下、「引用例」という。)には「eNBとHeNB間のX2セットアップ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。引用例は少なくとも会議の最終日である2012年11月16日までに、電気通信回線を通じて利用可能となったものである。なお、3GPPのホームページ(www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg3_iu/TSGR3_78/Docs/)によれば2012年11月2日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったといえる。

ア.「1 Introduction
This contribution analyzes how to setup X2 between eNB and HeNB with the presence of the X2-GW.」
(当審訳: 1はじめに
この寄稿は、X2-GWの存在によってeNBとHeNBとの間でX2をセットアップする方法を分析します。)

イ.「2.1 How to perform routing of X2 Setup Req
It seems that the basic property of any solution is the way how routing of X2 Setup Req messages across the X2-GW is performed.
- Option 1: TNL adr based routing:
The most obvious method is to attach to the X2 Setup Req the signalling TNL (IP) address of the peer (H)eNB and send it to the X2-GW that would need to act more or less as a IP router, with the essential difference that the targets IP address is carried in the application layer.
・・・・・・
- Option 2: RNL ID based routing
Another possibility would be to perform routing along RNL node identifier (the (H)eNB identity), in which case the X2-GW would need to translate an RNL node identifier into a signalling TNL address. The RNL node identifier may be explicitly included in the X2 Setup Req message.
・・・・・・・
Proposal 1: RNL ID is used in X2-GW for routing.」
(当審訳: 2.1 X2 Setup Reqのルーティングを実行する方法
任意のソリューションの基本的な特性は、X2-GWを介したX2 Setup Req messageのルーティングがどのように実行されるかということです。
- オプション1: TNL adrベースルーティング:
最も明らかな方法は、ピア(H)eNBのシグナリングTNL(IP)アドレスをX2 Setup Reqにアタッチし、IPルータとしておおよそ動作する必要があるX2-GWに送信することです。ここでは、ターゲットIPアドレスがアプリケーション層で搬送されるという本質的な違いがあります。
・・・・・・・
- オプション2: RNL IDベースルーティング
別の可能性は、RNLノード識別子((H)eNB識別情報)に沿ったルーティングを実行することであり、その場合、X2-GWは、RNLノード識別子をシグナリングTNLアドレスに変換する必要があります。 RNLノード識別子は、X2 Setup Req messageに明示的に含まれてもよいです。
・・・・・・・
提案1:ルーティングのためにX2-GWでRNL IDが使用されます。)

ウ.「The X2 msg can contains the RNL ID of the target HeNB (or eNB), and the status of the SCTP association towards target HeNB (or eNB), i.e. available, or unavailable. 」(「2.2 SCTP availability information」の項の第1段落参照。)
(当審訳: X2 msgは、ターゲットHeNB(又はeNB)のRNL IDと、ターゲットHeNB(又はeNB)に対するSCTPアソシエーションのステータス(すなわち、利用可能又は利用不可能)を含むことができます。)

エ.図2(「Figure 2 - X2 Setup example」)として以下の図面が記載されている。


上記図2において、HeNB2からX2-GW1に向かう矢印と、X2-GW1からeNB1に向かう矢印に、「7. X2 Setup Req(target: eNB1)」と付記され、eNB1からX2-GW1に向かう矢印と、X2-GW1からHeNB2に向かう矢印に、「8. X2 Setup Rsp(target: HeNB2)」と付記されている。

オ.「7.HeNB initiates the X2 Setup procedure. The msg includes the ID of eNB1. X2-GW know the SCTP with eNB1 is available, the X2-GW forward the X2 Setup Req msg to eNB1.
8.eNB1 accept the X2 Setup Req, and replies with the X2 Setup Rsp msg.」(Figure 2中の符号1?11の説明参照。)
(当審訳: 7. HeNBはX2セットアップ手順を開始します。 msgはeNB1のIDを含みます。 X2-GWはeNB1のSCTPを使用可能なことを知っており、X2-GWはX2 Setup Req msgをeNB1に転送します。
8. eNB1はX2 Setup Reqを受け入れ、X2 Setup Rsp msgで応答します。)

上記摘記事項の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、

a.上記ア.及びオ.に摘記された事項によれば、引用例は、X2-GW1の存在によってHeNB2とeNB1との間でX2をセットアップする方法であるということができる。

b.上記エ.に摘記した図2と、それを説明した記載箇所である上記オ.に摘記された事項によれば、「7.」の手順において、X2-GW1はHeNB2から、eNB1のIDを含むX2 Setup Req msgを受信し、eNB1に転送しているといえる。また、「8.」の手順についてみると、X2-GW1は、eNB1からX2 Setup Rsp msgを受信し、HeNB2に転送しているということができる。

したがって、上記摘記した引用例の記載及び図面を総合すると、引用例には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「 X2-GW1の存在によってHeNB2とeNB1との間でX2をセットアップする方法であって、
前記X2-GW1は、前記HeNB2から、前記eNB1のIDを含むX2 Setup Req msgを受信し、
前記X2-GW1は、前記X2 Setup Req msgを前記eNB1に転送し、
前記X2-GW1は、前記eNB1から、X2 Setup Rsp msgを受信し、
前記X2-GW1は、前記X2 Setup Rsp msgを前記HeNB2に転送する方法。」


また、上記ア.、イ.及びウ.に摘記された事項によれば、引用例には以下のような技術事項(以下、「引用技術」という。)が開示されていることが明らかである。

(引用技術)
「 X2-GWの存在によってHeNBとeNBとの間でX2をセットアップする方法において、X2 Setup ReqのルーティングにRNL IDベースルーティングを用いる。」


3.対比

本願発明を引用発明と対比すると、

a.引用例は3GPPのRAN(無線アクセスネットワーク)に対する寄稿であって、引用発明はHeNB2とeNB1との間でX2をセットアップするから、LTEなどの無線通信システムを前提としていることは明らかである。

b.本願明細書の【0054】?【0062】段落によれば、本願発明の「ゲートウェイ」は「X2ゲートウェイ」を含むといえる。そして、引用発明の「X2-GW1」は、HeNB2やeNB1との間で、X2 Setup Req msgやX2 Setup Rsp msgを受信したり転送したりする構成であるから、本願発明の「ゲートウェイ」に相当する。
そして、引用発明の「X2-GW1」はX2 Setup Req msgやX2 Setup Rsp msgを受信し転送する処理を行っているから、引用発明の「X2-GW1の存在によってHeNB2とeNB1との間でX2をセットアップする方法」は、本願発明の「ゲートウェイがX2メッセージを処理する方法」に相当するということができる。

c.本願明細書の【0057】、【0058】段落によれば、本願発明の「第1eNB」、「第2eNB」は、いずれもマクロeNB、HeNBを含むといえる。したがって、引用発明の「HeNB2」及び「eNB1」は、それぞれ本願発明の「第1eノードB(eNB)」及び「第2eNB」に対応する。

d.引用発明の「X2 Setup Req msg」は「eNB1のID」を含んでいるから、これら「X2 Setup Req msg」と「eNB1のID」は、それぞれ本願発明の「X2設定要求メッセージ」と「第1ターゲット情報」に相当することは明らかである。してみると、引用発明の「前記X2-GW1は、前記HeNB2から、前記eNB1のIDを含むX2 Setup Req msgを受信」する工程は、本願発明の「前記ゲートウェイが、第1eノードB(eNB)からX2設定要求メッセージ及び第1ターゲット情報を受信するステップ」に相当する。

e.本願発明では、「前記ゲートウェイが、前記の受信した第1ターゲット情報に基づいて、前記の受信したX2設定要求メッセージを第2eNBに送信する」のに対して、引用発明では「eNB1のID」に基づいて送信していることは明示されていない。しかしながら、ゲートウェイが、受信したX2設定要求メッセージを第2eNBに送信しているといえる点で、引用発明と本願発明は共通する。

f.引用発明の「X2 Setup Rsp msg」は、本願発明の「X2設定応答メッセージ」に相当する。してみると、引用発明では、「X2-GW1」が、「eNB1」から本願発明の「第2ターゲット情報」に相当する情報を受信しているかどうかは明らかではないものの、「X2設定応答メッセージ」(「X2 Setup Rsp msg」に相当)を受信している点で引用発明と本願発明は共通する。

g.引用発明では、「X2-GW1」が「X2 Setup Rsp msg」を「HeNB2」に転送するに際して、本願発明の「第2ターゲット情報」に相当する情報に基づいて転送しているかどうかは明らかではないものの、「X2設定応答メッセージ」(「X2 Setup Rsp msg」に相当)を「第1eNB」(「HeNB2」に相応)に送信しているといえる点で引用発明と本願発明は共通する。

h.引用発明において、「X2 Setup Req msg」は「eNB1のID」を含んでいるから、「eNB1のID」は「X2 Setup Req msg」の追加情報ということができる。

したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違するものと認められる。

(一致点)
「 無線通信システムにおいて、ゲートウェイがX2メッセージを処理する方法であって、
前記ゲートウェイが、第1eノードB(eNB)からX2設定要求メッセージ及び第1ターゲット情報を受信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記の受信したX2設定要求メッセージを第2eNBに送信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記第2eNBからX2設定応答メッセージを受信するステップと、
前記ゲートウェイが、前記の受信したX2設定応答メッセージを、前記第1eNBに送信するステップと、を有し、
前記第1ターゲット情報は、前記X2設定要求メッセージの追加情報である方法。」

(相違点1)
一致点の「前記ゲートウェイが、前記の受信したX2設定要求メッセージを第2eNBに送信するステップ」に関し、本願発明は、受信した第1ターゲット情報に基づいて、第2eNBへの送信を行っているのに対して、引用発明は「eNB1のID」(「第1ターゲット情報」に相当。)に基づいて送信していることが明らかにされていない点。

(相違点2)
一致点の「前記ゲートウェイが、前記第2eNBからX2設定応答メッセージを受信するステップ」に関し、本願発明は、X2設定応答メッセージの追加情報である第2ターゲット情報も受信し、それに伴い一致点の「前記ゲートウェイが、前記の受信したX2設定応答メッセージを、前記第1eNBに送信するステップ」に関し、当該受信した第2ターゲット情報に基づいて、第1eNBにX2設定応答メッセージを送信しているのに対して、引用発明には本願発明の「第2ターゲット情報」に相当する特定事項が明らかにされていない点。

(相違点3)
本願発明では「前記第1ターゲット情報は、ターゲット無線ネットワーク層識別子(RNL ID)を含む」のに対して、引用発明においては「eNB1のID」(「第1ターゲット情報」に相当。)が、どのようなIDであるのか明示されていない点。


4.当審の判断

上記相違点1について検討する。
ゲートウェイなどにおける情報の転送が、当該情報に付加される転送先を示す情報に基づいて行われることは、情報転送を行う上での常套手段にすぎない。してみると、引用発明において、X2-GW1が、受信したeNB1のIDに基づいてX2 Setup Req msgをeNB1に転送するように構成することは、当業者が、適宜なし得た事項にすぎない。

上記相違点2について検討する。
引用発明において、X2 Setup Rsp msgは、eNB1からHeNB2に送信される情報である。ここで、ルーティングのために送信先を示す情報を送信する情報に付加して送信することは、情報を送信する上での常套手段にすぎないことから、引用発明においてもX2 Setup Rsp msgに送信先として「HeNB2を示す情報」(本願発明の「第2ターゲット情報」)を付加して送信する構成とすることは、当業者が適宜設計できた事項にすぎないものであり、これを受信したX2-GW1は、送信先を示す「HeNB2を示す情報」に基づいてX2 Setup Rsp msgをHeNB2に転送することも適宜なし得た事項すぎない。また、X2 Setup Rsp msgに「HeNB2を示す情報」を付加すれば、HeNB2を示す情報はX2 Setup Rsp msgの付加情報ということができる。
したがって、相違点1とした本願発明に係る特定事項は、当業者が引用発明から容易に想到できた事項にすぎない。

次に、上記相違点3について検討する。
引用発明の「eNB1のID」として、RNL IDを採用することは、「X2-GWの存在によってHeNBとeNBとの間でX2をセットアップする方法において、X2 Setup ReqのルーティングにRNL IDベースルーティングを用いる。」との上記引用技術に接した当業者が容易になし得た事項にすぎない。
したがって、相違点2とした本願発明の特定事項は、当業者が引用発明及び引用技術から容易に想到できたものである。

そして、本願発明が奏する効果も、引用発明及び引用技術から、当業者が容易に予測できる範囲内のものである。


5.むすび

以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項3に係る発明は、引用発明及び引用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-04 
結審通知日 2017-09-05 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2015-518351(P2015-518351)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 山本 章裕
菅原 道晴
発明の名称 無線通信システムにおいてSCTP接続及びX2インタフェースを設定する方法及び装置  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 河合 章  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 健一  

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