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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07D
管理番号 1337443
審判番号 不服2016-7679  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-25 
確定日 2018-02-07 
事件の表示 特願2013-511391「フェニルモルホリンおよびその類似体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日国際公開、WO2011/146850、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526583〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2011年5月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2010年5月21日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成25年 1月16日 特許協力条約第34条補正の翻訳文提出
平成25年 1月23日 手続補正
平成27年 3月17日付け 拒絶理由通知
平成27年 9月24日 意見書提出・手続補正
平成28年 1月20日付け 拒絶査定
平成28年 5月25日 審判請求・手続補正
平成29年 1月24日 上申書提出
平成29年 5月18日付け 拒絶理由通知・平成28年5月25日付け の手続補正についての補正の却下の決定
平成29年 8月23日 意見書提出・手続補正

第2 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成29年8月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1、4?6は次のとおりである。

「【請求項1】下記式を有する化合物であって、

式中、
R_(1)は、フェニル基であって、前記フェニル基のメタ位又はパラ位がH、OMe、Me、Cl、F又はCF_(3)から選択される置換基によって置換されている、フェニル基であり、
R_(2)は、Hであり、
R_(3)は、Hであり、
R_(4)は、メチル基であり、
R_(5)は、Hであり、
R_(6)は、Hであり、
前記化合物が2S-5S鏡像異性体を含有する、化合物、
又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。」

「【請求項4】請求項1?3のうちいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は、ドーパミン放出剤、ノルエピネフリン放出剤、セロトニン放出剤、ドーパミン取り込み阻害剤、ノルエピネフリン取り込み阻害剤およびセロトニン取り込み阻害剤のうちの1種以上として使用される、化合物。
【請求項5】請求項1?4のうちいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は、ドーパミン放出剤またはセロトニン/ドーパミン二重放出剤として使用される、化合物。
【請求項6】請求項1?5のうちいずれか1項に記載の化合物であって、前記化合物は、5HT_(2B)受容体において不活性である、化合物。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

ここで、請求項1に記載の「前記化合物が2S-5S鏡像異性体を含有する、化合物」(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)とは、2S-5S鏡像異性体を「含有する」ことから、それ以外の立体異性体も含んでいる混合物であるとも解される。
しかし、請求項1の前記記載は、上記化合物が「前記化合物が2S-5S鏡像異性である、化合物」である場合を包含することが明らかであるから、以下では、これを意味するものとして検討する。

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、理由1?3からなる。
その理由1の概要は、請求項1?22に記載された特許を受けようとする発明が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない、というものであり、その(3)として、請求項12に記載の「ドーパミン放出剤、ノルエピネフリン放出剤、セロトニン放出剤、ドーパミン取り込み阻害剤、ノルエピネフリン取り込み阻害剤およびセロトニン取り込み阻害剤のうちの1種以上である」、請求項13に記載の「ドーパミン放出剤またはセロトニン/ドーパミン二重放出剤である」及び請求項14に記載の「5HT_(2B)受容体において不活性である」という記載は、請求項12?14に記載された特許を受けようとする発明が「化合物」であるにもかかわらず、化合物のどのような構造を特定しようとしているのか明確でないことを指摘したものである。
その理由3の概要は、本件出願の請求項1?22に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1、2に記載された発明及び刊行物3、4に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

第4 当審の判断
当審は、当審が通知した拒絶の理由のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
また、請求項4?6は理由1の拒絶理由の(3)が通知された請求項12?14に対応するものであるところ、請求項4?6に記載された特許を受けようとする発明が明確ではなく、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないと判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 理由3(特許法第29条第2項)について

(1)刊行物
刊行物1:J.Org.Chem., 2010年[Publication Date(Web):April 12, 2010], Vol.75, p.3461-3464
刊行物2:J.Med.Chem., 1996年, Vol.39, p.347-349

(2)刊行物に記載された事項

ア 刊行物1
訳文にて示す。
1a「シス及びトランス-2,5-二置換モルホリンのエナンチオ選択的化学酵素合成」(3461頁 標題)

1b「

エナンチオマーとして純粋なシス及びトランス-2,5-二置換モルホリンの多様な合成が記載される。ヒドロキシニトリルリアーゼ媒介によるアルデヒドへのシアノ基付加は、実質的に定量的収率及び優れたエナンチオ選択性でシアノヒドリンを生成した。続いて3ステップ、すなわち、ワンポット還元-トランスイミネーション-還元シーケンスに続く還元及び同時保護を経てジアステレオマー的に純粋なアミノエステルが形成され、環化前駆体を提供した。最後に、環化及びSmI_(2)媒介還元脱トシレーションにより、良好な収率及び優れたジアステレオ選択性で、シス及びトランス-2,5-二置換モルホリンを合成した。」(3461頁 左欄 化学反応式及びその下1?12行)

1c「置換モルホリンは、膨大な数の治療上及び生物学的に活性な化合物が存在することにより、かなりの関心を集めている^(1)。例えば、強力な抗うつ薬でノルエピネフリンの再取込みを選択的に阻害するレボキセチンは、その薬理学的特性について広く研究されている^(2)。・・・新たな医薬的に活性な化合物への進行中の探索において重要な用途を有し得る化合物クラスであるC-官能化モルホリン誘導体の合成には、あまり注意を向けられていなかった。結果として、C-官能化モルホリンの効率的な合成経路の開発は、過去数十年に渡り調査の重要な課題であった。様々なクラスのキラルC-官能化二置換モルホリン誘導体が合成されている^(1、5、6)。我々の知る限りでは、トランス-2,5-二置換モルホリンへのエナンチオ選択的合成経路が2つだけ存在し^(1b、7)、シス及びトランス-2,5-二置換モルホリンの両方へのアクセスを提供する経路が1つだけ存在する^(8)。しかし、これらの3つの方法はいずれもその置換パターンにおいてかなり制限されているか、又は中程度のジアステレオ選択性を有する標的モルホリンを生成する。」(3461頁 左欄 下から9行?右欄26行)

1d「スキーム1. キラルなモルホリンの逆合成ルート

表1 HNL媒介シアノヒドリン形成と保護

a クロマトグラフィー後の単離された収率 b 遊離シアノヒドリン4のHPLC分析により決定 c モッシャー酸塩化物による誘導体化及びそのラセミ体から調製されたジアステレオマーエステルとの比較により決定 d 立体化学的配置は(S)-HNLと予測されるが、カーン-インゴルド-プレローグ順位則に従い優先順位が変更されるため、生成物は(R)-立体配置を有する。 」(3462頁 左欄 表1)

1e「合成は、エナンチオマー的に純粋なシアノヒドリンの調製から開始した。ヒドロキシニトリルリアーゼ(HNL)は、事実上シアノヒドリンを対応するアルデヒド及びシアン化水素に変換する酵素である。しかし、クエン酸緩衝液(pH5)及びメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)からなる二相性水性-有機溶媒系を大過剰のKCNと組み合わせて使用すると、平衡がシアノヒドリンに傾く。4つの異なるアルデヒドから出発し、プルヌス アミダルス由来の(R)-選択的HNL(PaHNL)^(11)及びへベア ブラシリエンシス由来の(S)-選択的HNL(HbHNL)^(12)を触媒として用い、対応するシアノヒドリン4を粗生成物として得た。アルデヒドとの平衡によるラセミ化を防止するために必須の、続くヒドロキシル基保護(MIP保護基)により、実質的に定量的収率及び優れた鏡像体過剰率でシアノヒドリン6-9(表1)を得た。」(3461頁 右欄下から2行?3462頁 左欄末行)

1f「表2 3ステップ、ワンポットカップリング及び還元

^(a)クロマトグラフィー後の単離された収率 」(3462頁 右欄 表2)

1g「Van der Genら^(13)の結果に触発され、シアンヒドリン6を三段階ワンポット還元-トランスイミネーション-還元シーケンスで反応させてN-置換β-アミノエステル10を調製した。-78℃で5倍過剰のDIBALHで処理し、続いて得られたイミン-アルミニウム錯体を乾燥メタノールでプロトン化することにより、中間体第1級イミンを得た。過剰のグリシンメチルエステル及びEt_(3)Nを用いた続くトランスイミネーションは、NH_(3)の喪失時により安定な第2級イミンの迅速な形成をもたらした。最後に、トランスイミネーション生成物を0℃で水素化ホウ素ナトリウムでその場で還元し、全体収率48%で化合物10にした(エントリー1、表2)。・・・最適条件を決定する過程で、我々はMIP保護基の使用が重要であることに気付いた。・・・対照的に、MIP保護基は軽度の酸性条件下で容易に除去し得た。これらの結果に満足し、我々は様々な市販の(S)-アミノ酸メチルエステルを用いてシアノヒドリン7-9にワンポット反応シーケンスを適用した。満足のいくことに、所望のアミノエステルは、3ステップシーケンスとして良好ないし中程度の収率で単離し得た。 ・・・
標準的な条件下(THF中LiAlH_(4), 0℃)でのメチルエステル10?17の還元は、全ての場合において進行し、対応するアミノアルコールを高収率で得た。・・・」(3462頁 右欄1行?3463頁 左欄4行)

1h「スキーム2 N-トシル保護された2-フェニルモルホリンの合成

表3 同時スルホニル化及び脱保護

^(a)クロマトグラフィー後の単離された収率
^(b) n.d.は検出せず ^(c)2ステップ後の収率 」(3463頁 左欄 スキーム1、表3)

1i「・・・対照的に、18を0℃ジクロロメタン中の塩化p-トルエンスルホニル(1.1当量)及びトリエチルアミン(2.0当量)へ供与し、N-トシル化アミノアルコール26を選択的に収率82%で得た(スキーム2)。この生成物を、穏やかな酸性条件下(pH2?3)でMIP脱保護し、次いでTHF中過剰の水素化ナトリウムを含む第1級アルコールの選択的トシル化を経由し、続いて0℃でp-トルエンスルホニルイミダゾールを1工程で環化した。幸いにも、これによりN-トシルモルホリン誘導体28を収率83%で得た。
スキーム2に要約されたシーケンスは非常に効率的であったが、2,5-二置換モルホリン(R^(1)=メチル、ベンジル、アリル;化合物19-25、表3)を調製するため同じシーケンスを適用する試みは、アミノ基の立体障害の増加の結果として、明らかに選択的O-トシル化を提供しただけであった。トリエチルアミンを含むピリジン中のp-トルエンスルホニルクロライド(4.0当量)の存在下で化合物19-25を撹拌することにより、より価値のある結果が得られ、それにより表3に要約された29-35が得られた^(16)。生成物の精製を容易にするために、エチレンジアミンを加え過剰量の塩化p-トルエンスルホニルを除去した。さらに、場合によっては、これらの状況下でMIP保護基の切断も起こった(エントリー6及び7)。他の場合は、その後のヒドロキシル基の脱保護が高収率で円滑に進行し、粗製モルホリン前駆体36?42を次の工程のためにさらに精製することなく使用した。」(3463頁 左欄5行?右欄6行)

1j「表4 閉環及びSmI_(2)媒介脱保護

^(a)クロマトグラフィー後の単離された収率」(3463頁 右欄 表4)

1k「引き続く0℃でのTHF中のNaHの影響下での環化は、N-トシル保護モルホリン28及び43-49を高収率で首尾よく提供した(表4)。最後に、脱保護により、保護されていないシス及びトランス-2,5-二置換モルホリン50-57の合成を完了した。一般に、スルホンアミドの強靭性は、遊離アミンへの脱保護において問題となり得る。リチウム又はナトリウムのような単一電子供与体を含む伝統的な脱保護方法は、これらのシステムにとってしばしば過酷である。Anknerら^(15)によって開発された最近の方法論を適用すると、SmI_(2) / Et_(2)N / H_(2)Oの組み合わせを使用することにより、N-トシル保護モルホリン28及び43-49が清浄で瞬間的な脱保護を受けることがわかった。」(3463頁 右欄7?19行)

1L「実験セクション
メチル(S)-2[[(R)-2-[(2-メトキシプロパン-2-イル)オキシ]-2-フェニルエチル]アミノ]プロパノエート(11)
乾燥Et_(2)O(75mL)中の6(500mg, 2.44mmol)の溶液を-78℃に冷却し、DIBALH(12.2mL1.0Mヘキサン溶液,12.2mmol,5.0当量)を滴下した。反応混合物を-78℃で30分間撹拌した。混合物を乾燥MeOH(70mL)でクエンチした後、(S)-アラニンメチルエステル塩酸塩(850mg,2.5当量)及びEt_(3)N(850μL,2.5当量)を添加した。反応混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。次いで、混合物を0℃に冷却し、NaBH _(4)(370mg, 4.0当量)を添加した。0℃で2時間後、混合物を飽和NaHCO _(3)水溶液(30mL)でクエンチし、生成物をEtOAc(3×60mL)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥させ(Na_(2)SO_(4))、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン、1:2→1:1)で精製して11(233mg,収率32%)を無色の油状物として得た:R_(f) 0.76(EtOAc/ヘプタン,1:1); [α]_(D) -96.2 (c 1.21, CH_(2)Cl_(2)); IR (ATR)2984, 2360, 1738, 1206 cm^(-1); ^(1)H NMR(CDCl_(3), 400MHz)δ7.35-7.21(m, 5H), 4.81(dd, J = 4.5, 8.1 Hz, 1H), 3.69 (s, 3H), 3.34 (q, J = 6.9 Hz, 1H), 3.14 (s, 3H), 2.85 (dd, J = 8.1, 11.9 Hz, 2H), 2.61 (dd, J = 4.5, 11.9 Hz, 2H), 1.85 (br s, 1H), 1.42, (s, 3H), 1.26 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 1.14, (s, 3H); ^(13)C NMR (CDCl_(3), 75 MHz)δ175.8, 143.2, 128.1, 127.1, 126.4, 101.1, 73.2, 56.4, 55.1, 51.6, 49.2, 26.0, 25.1, 18.7; HRMS(ESI)m/z C_(16)H_(25)NO_(4)(M + H)^(+) 計算値296.1862, 実測値296.1849.

(S)-2-[[(R)-2-[(2-メトキシプロパン-2-イル)オキシ]-2-フェニルエチル]アミノ]プロパン-1-オール(19)
乾燥THF(9mL)中のLiAlH_(4)(36mg, 2.0当量)の懸濁液を0℃に冷却し、乾燥THF(5mL)中の11(0.14g、0.47mmol)の溶液を滴下した。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。水(42μL, 5.0当量)でクエンチした後、混合物を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー(CH_(2)Cl_(2)/MeOH, 0.99:0.01→0.90:0.10)で精製して19(0.12g,収率92%)を 無色油状物として得た: R_(f) 0.76 (CH_(2)Cl_(2)/MeOH, 0.9:0.1); [α]_(D) -47.4 (c 1.10, CH_(2)Cl_(2)); IR (ATR)3304, 2920, 1038 cm^(-1); ^(1)H NMR (CDCl_(3), 400MHz)δ7.36-7.30 (m, 4H), 7.27-7.23 (m, 1H), 4.81 (dd, J = 6.3, 6.3 Hz, 1H), 3.53 (dd, J = 4.1, 10.6 Hz, 1H), 3.20 (dd, J = 7.2, 10.6 Hz, 1H), 3.13 (s, 3H), 2.93 (dd, J = 5.6, 12.0 Hz, 1H), 2.82-2.75 (m, 2H), 2.07 (br s, 1H), 1.42 (s, 3H), 1.15 (s, 3H), 1.00 (d, J = 6.5 Hz, 3H); ^(13)C NMR (CDCl_(3), 75 MHz)δ143.0, 128.2, 127.2, 126.5, 101.2, 72.7, 65.2, 54.1, 53.5, 49.3, 25.8, 25.1, 16.9; HRMS(ESI)m/z 計算値C_(15)H_(25)NO_(3)(M + H)^(+) 268.1913, 実測値268.1909.

(2R,5S)-5-メチル-4-(4-メチルベンゼンスルホニル)-2-フェニルモルホリン(43)
THF(5mL)中の36(48mg, 0.10mmol)の溶液を0℃に冷却し、NaH(3.4mgの60%NaH /油,1.5当量)を添加した。得られた混合物を室温まで温め1時間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、飽和NH_(4)Cl水溶液(1mL)を滴下してクエンチした。得られた溶液をEtOAc(30mL)で希釈し、飽和NaHCO_(3)水溶液及びブライン(2×20mL)の1:1混合物で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(Na_(2)SO_(4))、濾過し、真空中で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘプタン, 1:2)で精製して43(32mg, 96%収率)を無色油状物として得た。: R_(f) 0.44 (EtOAc/ヘプタン, 1:1); [α]_(D) -88.2(c 1.45, CH_(2)Cl_(2)); IR(ATR)2855, 1349, 1166 cm^(-1); ^(1)H NMR (CDCl_(3), 400 MHz) δ 7.65-7.63 (m, 2H), 7.35-7.25 (m, 7H), 4.69 (dd J = 2.3, 9.1 Hz, 1H), 3.94 (dd, J = 2.6, 12.1 Hz, 1H), 3.81 (dd, J = 3.2, 11.7 Hz, 1H), 3.47 (dd, J = 9.0, 11.6 Hz, 1H), 2.92-2.84 (m, 1H), 2.66 (dd, J = 9.2, 12.0 Hz, 1H), 2.43 (s, 3H), 1.36 (d, J = 6.4 Hz, 3H); ^(13)C NMR (CDCl_(3), 75 MHz) δ 143.7, 138.4, 133.7, 129.7, 128.4, 128.1, 127.6, 126.1, 77.1, 71.7, 52.3, 51.9, 21.4, 16.1; HRMS (ESI) m/z C_(18)H_(21)NO_(3)S(M + H)^(+) 計算値332.1320, 実測値332.1309.

(2R,5S)-5-メチル-2-フェニルモルホリン(51)
アルゴン雰囲気下、SmI_(2)溶液(THF中0.1M溶液8.8mL, 0.88mmol, 10当量)及び水(47μL, 30当量)をアルゴン雰囲気下、化合物43(29mg, 0.088mmol)に加えた。続いて、ピロリジン(0.15mL, 20当量)を添加した。反応混合物は、アミンの添加により瞬間的に白色に変わった。得られた混合物を、混合物に空気を吹き込むことによってクエンチした。混合物を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(CH_(2)Cl_(2)/MeOH, 0.99:0.01→0.96:0.04)で精製し、化合物51(14mg, 92%収率)を無色油状物として得た:R_(f)0.65(CH_(2)Cl_(2)/MeOH, 0.9:0.1);[α]_(D)-7.9 (c0.75, CH_(2)Cl_(2)); IR(ATR) 3434, 2920, 2353, 1453, 1093cm^(-1); ^(1)H NMR(CDCl_(3), 400MHz)δ7.36-7.32(m, 5H), 5.98(brs, 1H), 5.00(dd, J=2.2, 12.7Hz, 1H), 1.47(d, J=6.6Hz, 3H); ^(13)C NMR(CDCl_(3), 75 MHz)δ137.2, 128.6, 126.0, 75.2, 70.4, 51.0, 49.4, 14.8; HRMS(ESI)m/z C_(11)H_(15)NO(M+H)^(+)計算値178.1232, 実測値178.1232」(3463頁 右欄下から6行?3464頁 右欄31行)

イ 刊行物2
訳文にて示す。
2a「2S,3S,5R-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-3,5-ジメチル-2-モルホリン:新規抗うつ剤及び選択的ノルエピネフリン取り込み阻害剤」(347頁 標題)

2b「BW 306Uの構造は最初化合物2の構造すなわち非環状ヒドロキシケトンであると報告された^(18,19)が、その後の報告で、BW 306Uは2-フェニルモルホリノール3であることが明らかとなった^(17,20)。ブプロピオンの臨床プロファイルにおける3の役割は未解決だが^(17,21,22)、最近3はうつ患者におけるブプロピオンの抗うつプロファイルに寄与していることが示唆されている^(23,24)。・・・
フェニルモルホリノールの研究により、強力な選択的ノルエピネフリン取り込み阻害物質である(3,5-ジフルオロフェニル)モルホリノール4(BW1555U88)が発見された。・・・化合物4は、抗うつ特性を有する、ノルエピネフリン取り込みの新規で強力な選択的阻害剤であり、そのようなものとして、臨床現場で現在使用されているセロトニン取り込み阻害剤に対する治療的代替物を提供し得るものである。
化学.化合物4は3,5-ジフルオロベンゾニトリル(5)から3ステップで調製される(スキーム1)。」(347頁左欄下から11行?右欄14行)

2c「

図1.

スキーム1^(a)

(a)EtMgBr, Et_(2)O; (b)ジオキサン・Br_(2),ジオキサン; (c) (R)-(-)-2-アミノ-1-プロパノール, 2,6-ルチジン, CH_(3)CN; (d) 40%水性NaOH, Et_(2)O; (e) Et_(2)O・HCl 」(348頁 図1、スキーム1)

2d「表1 4及び3つの臨床抗うつ薬の生物学的アミン取り込み阻害及び抗テトラベナジン活性

^(a)少なくとも5回の個別実験からのデータを用いてIC_(50)値±SEMを計算した。各実験において、IC_(50)値は参考文献28に記載されているように、重複サンプルを用いて濃度-効果曲線から決定した。^(b>)10はIC_(50)値が>10μMであることを意味する。^(c) NE =ノルエピネフリン、DA =ドーパミン、5HT =セロトニン^(d)化合物は参考文献29に記載されるように試験した。ED_(50)値±SEMは、個別実験においてED_(50)の少なくとも8回の測定からのデータを使用して計算した。各実験において、0.5?5.0μMの用量を最低5匹の動物/用量で評価した。^(e)100mg / kgの用量では、ブプロピオンはラットにおいてテトラベナジン誘発鎮静の50%の拮抗作用を示さなかった。」(348頁 表1)

(3)刊行物に記載された発明
刊行物1は、「シス及びトランス-2,5-二置換モルホリンのエナンチオ選択的化学酵素合成」(1a)に関し記載するものであって、合成されたシス及びトランス-2,5-二置換モルホリンの具体例の一つとして、刊行物1の表4には「生成物55」(1j)が記載されている。
また刊行物1には、具体的な合成方法については、該表4の「生成物51」の合成方法が示されている(1L)。この合成方法は、刊行物1の表2の合成スキームに従い、エントリー2として、出発物質6[表1の合成スキームに従い、エントリー1として得られた生成物6(1d、1e)]から生成物11、さらに同スキームに従い生成物19を得(1f、1g、1L)、さらに刊行物1の表3の合成スキームに従い、エントリー1として、該生成物19から生成物36を得(1h、1i)、さらに刊行物1の表4の合成スキームに従い、エントリー2として、該生成物36から生成物43、さらに同スキームに従い生成物51を得る(1j、1k、1L)というものである。
該表4の「生成物55」の合成方法は、前記生成物51の具体的な合成方法を参考に合成することができるものと認められる。すなわち、刊行物1の表2の合成スキームに従い、エントリー6として、出発物質8[表1の合成スキームに従い、エントリー3として得られた生成物8(1d、1e)]から生成物15、さらに同スキームに従い生成物23を得(1f、1g)、さらに刊行物1の表3の合成スキームに従い、エントリー5として、該生成物23から生成物40を得(1h、1i)、さらに刊行物1の表4の合成スキームに従い、エントリー6として、該生成物40から生成物47、さらに同スキームに従い生成物55を得られる(1j、1k)と認められる。
そして、該表4にはこの「生成物55」の収率も示されており(1j)、「生成物55」は実際に合成され取得されたものといえる。

したがって、この「生成物55」につき化学構造式を踏まえて表すと、刊行物1には、「

R=4-BrC_(6)H_(4)、R^(1)=Me、R^(3)=Hのシス-2,5-二置換モルホリン。」
の発明(以下「引用発明」といい、上記化合物を「引用化合物」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用化合物の2位の置換基の「R」は、4-BrC_(6)H_(4)であって、フェニル基の4位が臭素で置換されているものであるから、本願発明の

で示される式中の「R_(1)」とは、フェニル基であって、前記フェニル基のパラ位が置換基によって置換されているフェニル基である点で共通する。

イ 引用化合物の5位の置換基の「R^(1)」はMeであって、本願発明の前記式中の「R_(4)は、メチル基であり」に相当する。

ウ 引用化合物のNに結合する「R^(3)」はHであって、本願発明の前記式中の「R_(3)は、Hであり」に相当する。

エ 引用化合物の3位に結合するのがH2つであることは本願発明の前記式中の「R_(2)は、Hであり」に、及び、引用化合物の6位がH2つであることは本願発明の前記中の「R_(6)は、Hであり」に、それぞれ相当する。

オ 引用発明の「シス-2,5-二置換モルホリン」は、モルホリンの2位及び5位の不斉炭素についてシスの関係にあるもので、5位のキラル中心のまわりの4個の配位基の配列がS配置であり、2位のキラル中心のまわりの4個の配位基の配列もS配置であるから、2S-5S鏡像異性体といえる。
そして、引用化合物である「生成物55」の合成方法は、前記(3)で述べたように、「生成物51」の合成方法と同様であり、「生成物51」が実質的に一方の鏡像異性体を取得していることから(1L)、引用化合物も実質的に一方の鏡像異性体を取得していると考えられる。
そうすると、前記第2で述べたように、請求項1に記載の「前記化合物が2S-5S鏡像異性体を含有する、化合物」は、「前記化合物が2S-5S鏡像異性体である、化合物」を意味するものと判断することから、引用発明の「シス-2,5-二置換モルホリン」は、本願発明の「前記化合物が2S-5S鏡像異性体を含有する、化合物」に相当する。

そうすると、両者は、
「下記式を有する化合物であって、

式中、
R_(1)は、フェニル基であって、前記フェニル基のメタ位又はパラ位が置換基によって置換されている、フェニル基であり、
R_(2)は、Hであり、
R_(3)は、Hであり、
R_(4)は、メチル基であり、
R_(5)は、Hであり、
R_(6)は、Hであり、
前記化合物が2S-5S鏡像異性体を含有する、化合物、
又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:前記式中のR_(1)のフェニル基のメタ位又はパラ位の置換基が、本願発明では、H、OMe、Me、Cl、F又はCF_(3)から選択される置換基であるのに対し、引用発明では、パラ位のBrである点

イ 判断

(ア)相違点について

a 動機付けについて
刊行物1には、置換モルホリンは、膨大な数の治療上及び生物学的に活性な化合物が存在するものであり、その置換モルホリンの代表例であるレボキセチンは、強力な抗うつ薬(ノルエピネフリン再取り込み選択的阻害剤)で該薬理学特性につき広く研究されているものであること、このような抗うつ薬をはじめ新たな医薬的活性化合物の探索により、様々なキラルC-官能化モルホリン誘導体が合成されていること(1c)が、従来技術として記載されている。
刊行物1は、このような従来技術の流れを受け、抗うつ薬等の候補化合物となり得る、キラルC-官能化モルホリン誘導体であるシス又はトランス2,5-二置換モルホリンの効率的な合成方法を提供するものである(1c)。
そして、引用化合物は、該効率的な合成方法により複数種類合成されたシス又はトランス2,5-二置換モルホリンのうち、シス2,5-二置換モルホリンの一具体例であり、抗うつ薬等の候補化合物となり得るものといえる。
そうすると、刊行物1に接した当業者は、該効率的な合成方法により、抗うつ薬等の候補化合物となり得る新たなシス又はトランス2,5-二置換モルホリンを開発しようと動機付けられるといえ、引用化合物を基に、抗うつ薬等の候補化合物となり得る更に新たなシス2,5-二置換モルホリンを取得しようとする動機付けがあると認められる。

b 構成の容易想到性について
刊行物2のスキーム1には、化合物4として、モルホリン誘導体である2S,3S,5R-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-3,5-ジメチル-2-モルホリンが記載され(2b)、これはノルエピネフリン取り込み選択的阻害活性を有する化合物で、抗うつ剤として利用可能なものであることが記載されている(2a、2b、2d)。また、刊行物2の図1には、前記化合物の従来技術のモルホリン誘導体である化合物3(BW 306U)(2b、2c)として、2S,2R,3S,5R-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリンが記載され(2c)、これも抗うつ剤として使用し得るものであることが記載されている(2b)。
これらの記載より、モルホリンの2位にフェニル基及び5位にメチル基を有する、抗うつ剤等に使用する化合物について、前記化合物4は2位のフェニル基と5位のメチル基の配置がトランス配置であったり、前記化合物3(BW 306U)は5位がジメチルであったりするものの、そのフェニル基にClやFのハロゲン置換基を有する化合物が現に知られているといえる。
そうすると、引用化合物も、シス配置ではあるものの、モルホリンの2位にフェニル基及び5位にメチル基を有する、抗うつ剤等に使用する化合物であり、そのフェニル基にハロゲン置換基であるBrを有する化合物であることから、前記aの動機付けに従い、抗うつ薬等の候補化合物となり得る更に新たなシス2,5-二置換モルホリンを取得しようとして、引用発明において、引用化合物のハロゲン置換基であるBrを、この種の化合物のハロゲン置換でよく用いられているClやFとしてみることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)効果について
a 本願発明の効果は、本願明細書の段落【0009】の【発明の概要】の記載、及び、段落【0206】の実施例4に、ドーパミン、セロトニン及びノルエピネフリン放出アッセイを行った結果が記載されていることからみて、ドーパミン、セロトニン及びノルエピネフリン等の1種以上のモノアミン神経伝達物質の放出剤又は再取り込み阻害剤として有用となり得る化合物を提供することであると認められる。

b(a)しかしながら、前記(ア)aで述べたように、引用化合物は、抗うつ薬等の候補化合物となり得るキラルC-官能化モルホリン誘導体であるシス又はトランス2,5-二置換モルホリンの効率的な合成方法により複数種類合成されたシス又はトランス2,5-二置換モルホリンの一具体例であり、抗うつ薬等の候補化合物となり得るものといえるものである。
そして、刊行物2の表1には、抗うつ薬候補である化合物4(モルホリンの2位にフェニル基及び5位にメチル基を有し、そのフェニル基にハロゲンのFを有する化合物)は、抗うつ薬の具体的な薬理活性として、ノルエピネフリン取り込み選択的阻害活性を有していることが示されている(2d、2b)。
そうすると、引用化合物のモルホリンの2位のフェニル基におけるハロゲン置換基であるBrを、単にClやFに代えた化合物も、刊行物2に記載される化合物4と同様に、抗うつ薬等の候補化合物となり得ることは、当業者の予測し得ることであり、そのような抗うつ薬等の候補化合物が、その抗うつ薬の具体的な薬理活性として、ノルエピネフリン取り込み選択的阻害活性を有する可能性のあることも、当業者の予測の範囲内といえる。

(b)当審は、平成29年5月18日付け拒絶理由通知において、本願発明の効果が示されている、本願明細書の【表5】(【0206】)の(2S,5S)-5-メチル-2-フェニルモルホリンのDA、5-HT及びNE放出活性の比較結果を理解すべく、審判請求人に、前記【表5】に示されている数値の算出方法や数値の意味について説明を求める審尋をした。
これに対し、平成29年8月23日付け意見書の「4-2.審尋について」において、審判請求人は、「当該段落0205において、表4のデータに関する説明として、「表4のデータは、%EC50の放出またはnMで計算したEC50値のいすれかで示されている」。との記載があります。この記載が、表5においてもそのまま適用されます。・・なお、表3の縦軸の「放出」に関する列項目「放出(EC50nmまたは10μMでの%)」との記載においても、同様にデータ内容を読み取ることができます。つまり、データおの読み取り方法については、表3から表5は一貫しています。上記説明により当業者であれば数値の意味を理解できるものと思料します。」と述べている。
しかし、本願明細書の表3の「10μMでの%」と表4の「%EC50」とは同一のものであることが発明の詳細な説明及び技術常識から明らかとはいえない。仮に、同一のものといえるとしても、その定義が発明の詳細な説明及び技術常識から明らかとはいえない。それ故、表5における%の付いた数値の意味が不明である。
そのため、本願明細書の【表5】(【0206】)の(2S,5S)-5-メチル-2-フェニルモルホリンのDA、5-HT及びNE放出活性の比較結果から本願発明が格別の効果を奏するものであるということもできない。
なお、審判請求人は、平成29年5月18日付け拒絶理由通知で通知した、特許法第29条第2項の拒絶理由に対し、実質的に何ら反論をしておらず、本願発明の効果が、刊行物1、2の記載からは予測し得ない顕著な効果を奏するものであることの主張もしていない。

(c)したがって、本願発明の効果は、ドーパミン、セロトニン及びノルエピネフリン等の1種以上のモノアミン神経伝達物質の放出剤又は再取り込み阻害剤として有用となり得る化合物を提供することであると認められるに留まるから、本願発明の効果は、刊行物1、2の記載から当業者が予測し得るものであり格別顕著なものであるということはできない。

(6)小括
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 理由1(特許法第36条第6項第2号)について
請求項4に記載の「ドーパミン放出剤、ノルエピネフリン放出剤、セロトニン放出剤、ドーパミン取り込み阻害剤、ノルエピネフリン取り込み阻害剤およびセロトニン取り込み阻害剤のうちの1種以上として使用される」、請求項5に記載の「ドーパミン放出剤またはセロトニン/ドーパミン二重放出剤として使用される」及び請求項6に記載の「5HT_(2B)受容体において不活性である」について、請求項4?6に記載された特許を受けようとする発明は、「化合物」の発明であるにもかかわらず、請求項4?6の前記各記載は、化合物の用途又は効果により特定しようとする記載であり、これらの記載により化合物自体が明確に特定されるものではないから、依然として不明りょうである。
また、審判請求人は、平成29年5月18日付け拒絶理由通知で通知した、特許法第36条第6項第2号の拒絶理由の(3)で指摘したことに対し、実質的に何ら反論をしていない。
したがって、請求項4?6に記載された特許を受けようとする発明は、明確でなく、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明すなわち請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、及び、この出願は、請求項4?6に記載された特許を受けようとする発明につき、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、その余の請求項について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-06 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-27 
出願番号 特願2013-511391(P2013-511391)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C07D)
P 1 8・ 113- WZ (C07D)
P 1 8・ 121- WZ (C07D)
P 1 8・ 575- WZ (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三上 晶子上村 直子  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 加藤 幹
齊藤 真由美
発明の名称 フェニルモルホリンおよびその類似体  
代理人 高岡 亮一  
代理人 高岡 亮一  

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