• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60W
管理番号 1337511
審判番号 不服2017-5431  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-17 
確定日 2018-03-06 
事件の表示 特願2014-559442「ハイブリッド車両の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月7日国際公開、WO2014/118950、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年1月31日を国際出願日とする出願であって、平成27年7月8日に国内書面が提出され、平成28年5月20日付けで拒絶理由が通知され、平成28年8月8日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成29年1月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年4月17日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年1月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

●理由(特許法第29条第2項)について

・請求項1
・引用文献等1ないし4
引用文献1には、エンジン22と、モータ40とを走行用動力源として備え、内燃機関1のエンジントルクと電動機31のモータトルクとがギア群を含むプラネタリギヤ30を経由して駆動輪66a,66bに出力されるハイブリッド車両に適用される制御装置において、騒音が抑制されるようにエンジン22の回転数Ne及びエンジントルクで定義された前記エンジン22の動作点を制限する騒音抑制制御を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70を備えるハイブリッド車両の制御装置の発明が記載されている(特に、段落【0030】、図4及び5を参照)。
引用文献2には、空燃比をリーン側へ移行可能なエンジン1を走行用動力源として備える車両に適用される制御装置において、前記エンジン1の空燃比を変更することにより前記リーン側へ移行し、前記エンジン1の燃料消費率を算出するECU9と、を備え、前記ECU9は、前記燃料消費率が、所定量以上に悪化した場合にエンジン1をリーン側へ移行する車両の制御装置の発明が記載されている(特に、段落【0068】及び【0069】を参照)。
請求項1に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者の相違点は、以下のとおりである。
請求項1に係る発明は、理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼とストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な内燃機関を備え、内燃機関の空燃比を変更することによりリーン燃焼とストイキ燃焼との間で内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段を有するのに対し、引用文献1に記載された発明は、かかる特定がされていない点(以下、「相違点ア」という。)。
請求項1に係る発明は、リーン燃焼及びストイキ燃焼のそれぞれの場合において動力伝達機構で生じる騒音が抑制されるようにエンジン回転数及びエンジントルクで定義された内燃機関の動作点を制限する騒音抑制制御を実行する騒音抑制制御手段を有するのに対し、引用文献1に記載された発明は、リーン燃焼及びストイキ燃焼のそれぞれの場合において騒音抑制制御を実行する手段を有しない点(以下、「相違点イ」という。)。
請求項1に係る発明は、リーン燃焼で騒音抑制制御を実行した場合及びストイキ燃焼で騒音抑制制御を実行した場合のそれぞれの場合の内燃機関の熱効率を算出する熱効率算出手段を有し、熱効率算出手段が算出した熱効率が、内燃機関の運転モードを維持して騒音抑制制御を実行する場合よりも内燃機関の運転モードを切り替えて騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合に内燃機関の運転モードを切り替えるのに対し、引用文献1に記載された発明は、かかる特定がされていない点(以下、「相違点ウ」という。)。
相違点アについて検討すると、リーン燃焼とストイキ燃焼との間で内燃機関の運転モードを切り替えることは周知技術であり(例えば、引用文献3の段落【0037】、【0041】、引用文献4の段落【0025】、【0037】等を参照)、引用文献1に記載された発明と当該周知技術を組み合わせ、引用文献1に記載された発明のエンジン22を、ストイキ燃焼とリーン燃焼とを切り替え可能なものとすること、また、引用文献1に記載された発明のハイブリッド用電子制御ユニット70に、エンジン22のリーン燃焼とストイキ燃焼との間で運転モードを切り替える制御手段を設けることは、当業者が容易に想到し得るものである。
相違点イについて検討すると、引用文献1に記載された発明と上記周知技術を組み合わせ、引用文献1に記載された発明のエンジン22をリーン燃焼及びストイキ燃焼を切り替え可能なものとする場合において、引用文献1に記載された発明のハイブリッド用電子制御ユニット70に、リーン燃焼であるかストイキ燃焼であるかにかかわらず、リーン燃焼及びストイキ燃焼のそれぞれの場合において騒音抑制制御を実行する制御手段を設けることは、当業者が容易に想到し得るものである。
相違点ウについて検討すると、引用文献1に記載された発明と上記周知技術を組み合わせ、引用文献1に記載された発明のエンジン22をリーン燃焼及びストイキ燃焼を切り替え可能なものとする場合において、引用文献2に記載された発明にかんがみ、引用文献1に記載された発明のハイブリッド用電子制御ユニット70に、リーン燃焼及びストイキ燃焼のそれぞれの場合のエンジン22の熱効率を算出する制御手段を設け、エンジン22の熱効率が、エンジン22の運転モードを維持して騒音抑制制御を実行する場合よりもエンジン22の運転モードを切り替えて騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合にエンジン22の運転モードを切り替える制御手段を設けることは、当業者が容易に想到し得るものである。

引用文献等一覧

1.特開2005-199971号公報
2.特開2007-9835号公報
3.特開2006-37774号公報
4.特開平8-294205号公報

第3 本願発明

本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成29年4月17日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに国際出願時の図面の記載からみて、次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と前記ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な内燃機関と、電動機とを走行用動力源として備え、前記内燃機関のエンジントルクと前記電動機のモータトルクとがギア群を含む動力伝達機構を経由して駆動輪に出力されるハイブリッド車両に適用される制御装置において、
前記内燃機関の空燃比を変更することにより前記リーン燃焼と前記ストイキ燃焼との間で前記内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段と、
前記リーン燃焼及び前記ストイキ燃焼のそれぞれの場合において前記動力伝達機構で生じる騒音が抑制されるようにエンジン回転数及びエンジントルクで定義された前記内燃機関の動作点を制限する騒音抑制制御を実行する騒音抑制制御手段と、
前記リーン燃焼で前記騒音抑制制御を実行した場合及び前記ストイキ燃焼で前記騒音抑制制御を実行した場合のそれぞれの場合の前記内燃機関の熱効率を算出する熱効率算出手段と、を備え、
前記燃焼切替手段は、前記熱効率算出手段が算出した前記熱効率が、前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼に維持して前記騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼に切り替えるとともに、前記熱効率算出手段が算出した前記熱効率が、前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼に維持して前記騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼に切り替えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記騒音抑制制御手段は、前記騒音抑制制御の実行中に前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼へ切り替わる場合に前記内燃機関の前記動作点を高回転側に移動させ、
前記燃焼切替手段は、前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼へ切り替える場合、前記騒音抑制制御手段が前記内燃機関の前記動作点を高回転側に移動を開始させた後に、前記内燃機関の前記空燃比を変更する請求項1の制御装置。
【請求項3】
前記騒音抑制制御手段は、前記騒音抑制制御の実行中に前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼へ切り替わる場合に前記内燃機関の前記動作点を低回転側に移動させ、
前記燃焼切替手段は、前記内燃機関の運転モードを前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼へ切り替える場合、前記騒音抑制制御手段が前記内燃機関の前記動作点を低回転側に移動させる前に、前記内燃機関の前記空燃比の変更を開始する請求項1又は2の制御装置。
【請求項4】
前記ストイキ燃焼に対応する第1騒音抑制ラインと、前記第1騒音抑制ラインよりも高回転低トルク側に位置し、前記リーン燃焼に対応する第2騒音抑制ラインとが、エンジン回転数とエンジントルクとに対応付けられて設定されており、
前記騒音抑制制御手段は、前記内燃機関の前記動作点を前記第1騒音抑制ライン又は前記第2騒音抑制ラインのいずれか一方のライン上に制限することにより前記騒音抑制制御を実行し、かつ前記内燃機関の前記動作点を前記内燃機関の前記運転モードの切り替えに応じて前記第1騒音抑制ライン又は前記第2騒音抑制ラインのいずれか一方のライン上から前記第1騒音抑制ライン又は前記第2騒音抑制ラインのいずれか他方のライン上へ移動させる請求項1の制御装置。
【請求項5】
前記燃焼切替手段は、前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼へ切り替える場合、前記騒音抑制制御手段が前記内燃機関の前記動作点を前記第1騒音抑制ライン上から前記第2騒音抑制ラインへ向かって移動を開始させた後に、前記内燃機関の前記空燃比を変更する請求項4の制御装置。
【請求項6】
前記燃焼切替手段は、前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼へ切り替える場合、前記騒音抑制制御手段が前記内燃機関の前記動作点を前記第2騒音抑制ライン上から前記第1騒音抑制ラインへ向かって移動させる前に、前記内燃機関の前記空燃比の変更を開始する請求項4又は5の制御装置。
【請求項7】
前記燃焼切替手段は、前記内燃機関の前記動作点を、前記第1騒音抑制ラインと前記第2騒音抑制ラインとを結ぶ等パワーラインに沿って移動させる請求項4?6のいずれか一項の制御装置。」

第4 引用文献、引用発明等

1 引用文献1の記載事項

原査定に引用され、本願の国際出願日前に頒布された特開2005-199971号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「自動車」について、次の事項が図面(特に、図1、図4及び図5参照。)とともに記載されている。

(1)「【0013】
本発明の自動車において、前記内燃機関の出力軸または前記車両の車軸に直接または間接に動力を入出力可能な電動機を備え、前記制御手段は、前記内燃機関と前記変換伝達手段とに加えて前記電動機も制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関からの動力に加えて電動機からの動力を用いて走行することができる。」(段落【0013】。下線は、理解の一助のために当審で付した。以下同様。)


(2)「【0021】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト24に接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30に接続された発電可能なモータ40と、プラネタリギヤ30に接続されると共にディファレンシャルギヤ64を介して駆動輪66a,66bに接続された無段変速機としてのCVT50と、装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。」(段落【0021】。)

(3)「【0023】
プラネタリギヤ30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35と備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35とを回転要素として差動作用を行なう。プラネタリギヤ30のサンギヤ31にはエンジン22のクランクシャフト24が、キャリア35にはモータ40の回転軸41がそれぞれ連結されており、エンジン22の出力をサンギヤ31から入力すると共にキャリア35を介してモータ40と出力のやりとりを行なうことができる。キャリア35はクラッチC1により、リングギヤ32はクラッチC2によりCVT50のインプットシャフト51に接続できるようになっており、クラッチC1およびクラッチC2を接続状態とすることにより、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35の3つの回転要素による差動を禁止して一体の回転体、即ちエンジン22のクランクシャフト24とモータ40の回転軸41とCVT50のインプットシャフト51とを一体の回転体とする。なお、プラネタリギヤ30には、リングギヤ32をケース39に固定してその回転を禁止するブレーキB1も設けられている。」(段落【0023】)

(4)「【0030】
続いて、エンジン22の回転数Neを閾値Nrefと比較する(ステップS130)。この比較は、エンジン22の運転ポイントを設定する際の動作ラインとして用意された燃費用動作ラインとNV用動作ラインとのうちいずれを用いるかを選択するために行なわれる。ここで、燃費用動作ラインは同じ出力でもエンジン22の効率が最もよくなる運転ポイントを連続したラインとしたものであり、NV用動作ラインは燃費用動作ライン上の運転ポイントでエンジン22を運転するとこもり音や振動が生じる領域を回避するよう運転ポイントを設定したものである。図4に燃費用動作ラインの一例を示し、図5にNV用動作ラインの一例を示す。通常のガソリンエンジンの場合、こもり音や振動が生じる領域はエンジンの運転ポイントのうち比較的低回転数から中回転数で中トルクから高トルクの領域となる場合が多いため、実施例では、図5に示すように、こうした領域を回転数の増加に対してリニアにトルクを変化させて避けるようにNV用動作ラインを設定している。このため、NV用動作ラインにおける比較的低回転数から中回転数で中トルクから高トルクの領域では、回転数の変化量に対してトルクの変化量の比(変化率)が燃費用動作ラインより大きくなっている。実施例の閾値Nrefは、こうしたこもり音や振動が生じる領域の上限の回転数として設定している。」(段落【0030】)

(5)「【0033】
ステップS130でエンジン22の回転数Neが閾値Nref未満と判定されたときには、NV用動作ラインと車両要求パワーP*とを用いてインプットシャフト51の目標回転数Ni*(エンジン22の目標回転数Ne*)を設定すると共に(ステップS160)、NV用動作ラインとエンジン22の回転数Neとを用いてエンジン22の目標トルクTe*を設定する(ステップS170)。目標回転数Ni*の設定に車両要求パワーP*を用いる理由と目標トルクTe*の設定にエンジン22の回転数Neを用いる理由については燃費用動作ラインを用いて設定する場合と同様である。続いて、CVT50の変速比γを閾値γrefと比較して(ステップS180)、変速比γが閾値γrefより大きいときには設定した目標トルクTe*になまし処理を施す(ステップS190)。エンジン22の回転数NeとNV用動作ラインとにより目標トルクTe*を設定すると、図4および図5を比較すると解るように、エンジン22の回転数Neの変化に対して目標トルクTe*の変化量は燃費用動作ラインを用いて設定する場合に比して大きくなる。したがって、エンジン22の回転数Neが振動すると、この振動に伴って目標トルクTe*も振動することになる。こうした目標トルクTe*の振動は、CVT50を介して駆動輪66a,66bに伝達されるから、車両の加速度として現われ、車両を振動させ、乗り心地の悪化を招く。実施例では、こうしたエンジン22の回転数Neの振動に伴って目標トルクTe*が振動することによって生じ得る車両の振動を抑制するために、目標トルクTe*になまし処理を施して目標トルクTe*の振動を抑制するのである。なお、CVT50の変速比γが小さいときには、目標トルクTe*に振動が生じても、この振動の車両加速度への影響は小さくなるから、目標トルクTe*になまし処理を施す必要がなくなる。実施例では、このことを考慮してCVT50の変速比γが閾値γref以下のときには目標トルクTe*になまし処理を施さないのである。なお、閾値γrefは、目標トルクTe*の振動に伴って生じ得る車両の振動として許容される程度の変速比γとして設定されるものであり、実験などにより求めることができる。」(段落【0033】)

(6)上記(1)ないし(3)及び図面の記載より分かること

ア 上記(1)、(2)及び図1の記載によれば、エンジン22とモータ40は、走行のための動力源であることが分かる。

イ 上記(1)ないし(3)及び図1の記載によれば、エンジン22の出力とモータ40の出力とがプラネタリギヤ30を介して駆動輪66a,66bに伝達されることが分かる。

ウ 上記(2)の記載によれば、ハイブリッド用電子制御装置ユニット70は、ハイブリッド自動車20をコントロールするものであることが分かる。

(7)引用発明

上記(1)ないし(6)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「エンジン22とモータ40とを、走行のための動力源として備え、エンジン22の出力とモータ40の出力とが、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35とを備えたプラネタリギヤ30を介して駆動輪66a,66bに伝達されるハイブリッド自動車20をコントロールするハイブリッド用電子制御装置ユニット70において、
エンジン22の回転数Neを閾値Nrefと比較し、エンジン22の回転数Neが閾値Nref未満と判定されたときには、燃費用動作ライン上の運転ポイントでエンジン22を運転するとこもり音や振動が生じる領域を回避するよう運転ポイントを設定したNV用動作ラインと車両要求パワーP*とを用いてインプットシャフト51の目標回転数Ni*を設定すると共に、NV用動作ラインとエンジン22の回転数Neとを用いてエンジン22の目標トルクTe*を設定するハイブリッド用電子制御装置ユニット70。」

2 引用文献2の記載事項

原査定に引用され、本願の国際出願日前に頒布された特開2007-9835号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「内燃機関の制御装置」について、次の事項が図面(特に、図1参照。)とともに記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、自動車等に搭載される内燃機関(エンジン)の制御装置に係る。特に、本発明は、複数気筒を有する内燃機関のアイドリング運転時における振動を抑制するための制御動作の改良に関する。」(段落【0001】)

(2)「【0040】
本エンジン1は、例えばマイクロコンピュータを有して構成されるECU9を備えている。このECU9には、上記各センサ81?84の出力信号がそれぞれ取り込まれている。そして、ECU9は、これら各信号に基づいてクランク角CAや、エンジン回転速度NE、現在の運転気筒(例えば現在膨張行程を迎えている気筒)、吸気管内圧力PM等を演算するとともに、エンジン1がアイドル状態にあるか否かを判断し、これらに基づいて後述するアイドル回転数制御動作を実行するようになっている。」(段落【0040】)

(3)「【0068】
(第2変形例)
次に、本発明の第2の変形例について説明する。本変形例は、上述した実施形態及び第1変形例のようにアイドル回転数制御を行った場合において、燃料消費率や排気エミッションの悪化を回避するための制御動作を付加したものである。
【0069】
具体的には、上記アイドル回転数制御の実行中に、燃料消費率が所定量以上に悪化した場合や、排気エミッションが所定量以上に悪化した場合に、各気筒の空燃比の相互間の比率を維持したまま全気筒の空燃比をリーン側に移行させるように制御するものである。例えば、上記アイドル回転数制御によって各気筒の空燃比の相互間の比率が、♯1:♯2:♯3:♯4=1:1.2:1.2:1となっているような場合には、この比率を維持したまま空燃比をリーン側に移行させるように、燃料噴射量の減量や上記バイパス通路68を流れる空気量(バイパス空気量)の調節(ISCV制御)が行われるようになっている。
【0070】
これによれば、各気筒のアイドル回転数が略均等に低下していくことになるため、アイドル運転時の振動抑制効果を維持したまま、燃料消費率の悪化の抑制や排気エミッションの悪化の抑制を図ることができる。」(段落【0068】ないし【0070】)

(4)上記(1)ないし(3)の記載より分かること

ア 上記(1)及び(2)の記載によれば、ECU9は、エンジン1を制御することが分かる。

イ 上記(1)ないし(3)の記載によれば、ECU9は、アイドル回転数制御の実行中に、燃料消費率が所定量以上に悪化した場合や、排気エミッションが所定量以上に悪化した場合に、各気筒の空燃比の相互間の比率を維持したまま全気筒の空燃比をリーン側に移行させるように制御するものであることが分かる。

(5)引用文献2技術

上記(1)ないし(4)を総合すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。

<引用文献2技術>

「エンジン1を制御するECU9において、アイドル回転数制御の実行中に、燃料消費率が所定量以上に悪化した場合や、排気エミッションが所定量以上に悪化した場合に、各気筒の空燃比の相互間の比率を維持したまま全気筒の空燃比をリーン側に移行させるように制御する技術。」

3 引用文献3の記載事項

原査定に引用され、本願の国際出願日前に頒布された特開2006-37774号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「車輌の動力制御方法及びその動力制御装置」について、次の事項が図面(特に、図1参照。)とともに記載されている。

(1)「【0027】
このハイブリッド車輌には、図1に示す如く、原動機としての内燃機関1と、この内燃機関1から出力された機関動力Peを分割する動力分割機構11と、この動力分割機構11により分割された内燃機関1の機関動力で駆動する発電機21と、この発電機21の電力及び/又はバッテリ41の電力で駆動する電動機31とが設けられている。」(段落【0027】)

(2)「【0029】
また、このハイブリッド車輌には、各種動作を制御する制御手段が設けられている。本実施例1にあっては、その制御手段として、ハイブリッド車輌全体の動作を制御する電子制御装置(以下「メインECU」という。)71と、内燃機関1の動作を制御する電子制御装置(以下「機関ECU」という。)72と、電動機31の動作を制御する電子制御装置(以下「電動機ECU」という。)73とが設けられており、これらメインECU71,機関ECU72及び電動機ECU73が本発明に係る動力制御装置の機能を為す。」(段落【0029】)

(3)「【0032】
これら各センサ81?85の出力信号はメインECU71に入力され、このメインECU71は、その入力信号やバックアップRAMのマップデータ等に基づいて定常走行時等の運転状態に応じた駆動軸61における駆動力Ptの要求値(以下「駆動力要求値」という。)を求め、この駆動力要求値に相当する駆動力Ptを駆動軸61で発生させ得る内燃機関1と電動機31の動力及びその配分を設定し、その設定条件を機関ECU72と電動機ECU73に送る。
【0033】
例えば、発進時や低速走行時においては、電動機31の動力Pmのみで駆動軸61の駆動力Ptを発生させる。これが為、メインECU71は、内燃機関1のフューエルカット又は停止の制御条件値を機関ECU72に対して送ると共に、電動機31で発生させる動力Pmの要求値(以下「電動機動力要求値」という。)を駆動力要求値に基づき求めて電動機ECU73に対して送る。これにより、機関ECU72が内燃機関1をフューエルカット又は停止させると共に、電動機ECU73が電動機動力要求値に応じてインバータ42を制御し、バッテリ41からの供給電力で電動機31を駆動してその動力Pmで駆動軸61を駆動させる。」(段落【0032】及び【0033】)

(4)「【0037】
ところで、本実施例1の内燃機関1は、定常走行時においてはリーン空燃比(例えばA/F≧20)での燃焼(以下「リーン燃焼」という。)を行うものとする。これが為、この内燃機関1は、A/Fセンサ84からの入力信号に基づいた空燃比のフィードバック制御を行い、リーン空燃比の状態を維持しつつ定常走行時の動作線Ln上に沿った機関回転数Neと機関トルクTeの制御を行なう。」(段落【0037】)

(5)「【0041】
ここで、本実施例1の内燃機関1は、高負荷時においては理論空燃比(A/F≒14.7)での燃焼(以下「ストイキ燃焼」という。)を行うものとする。これが為、高負荷時の動作線Lh上に沿った機関回転数Neと機関トルクTeの制御は、理論空燃比を保ちつつ行われる。」(段落【0041】)

(6)「【0044】
本実施例1の内燃機関1においては、運転状態(空燃比)を切り替える場合に、機関ECU72の動作モード切替機能により、その動作点を運転状態に応じた適切な動力制御パターンの動作線上で制御できるよう動作モードの切替制御が行われる。例えば、上記の定常走行から高負荷走行(リーン燃焼からストイキ燃焼)へと運転状態を切り替える際には、内燃機関1の動作モードが定常走行時の動作線Lnによる動作モードから高負荷時の動作線Lhによる動作モードへと切り替えられる。また、高負荷走行から定常走行(ストイキ燃焼からリーン燃焼)へと切り替える際には、高負荷時の動作線Lhによる動作モードから定常走行時の動作線Lnによる動作モードへと切り替えられる。」(段落【0044】)

(7)上記(1)ないし(6)の記載より分かること

ア 上記(1)及び(3)の記載によれば、ハイブリッド車輌は、内燃機関1と電動機31を原動機として設けていることが分かる。

イ 上記(2)の記載によれば、メインECU71、機関ECU72及び電動機ECU73がハイブリッド車輌を制御することが分かる。

ウ 上記(4)ないし(6)の記載によれば、機関ECU72は、空燃比を切り替えることにより、リーン燃焼とストイキ燃焼との間で動作モードの切替制御を行うことが分かる。

(8)引用文献3技術

上記(1)ないし(7)を総合すると、引用文献3には次の技術(以下、「引用文献3技術」という。)が記載されている。

<引用文献3技術>

「理論空燃比でのストイキ燃焼とリーン空燃比でのリーン燃焼と切り替え可能な内燃機関1と、電動機31とを原動機として設けるハイブリッド車輌を制御するメインECU71、機関ECU72及び電動機ECU73において、空燃比を切り替えることにより、リーン燃焼とストイキ燃焼との間で動作モードの切替制御を行う機関ECU72を有する技術。」

4 引用文献4の記載事項

原査定に引用され、本願の国際出願日前に頒布された特開平8-294205号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「ハイブリッド車両」について、次の事項が図面(特に、図1及び図2参照。)とともに記載されている。

(1)「【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例について、添付図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施例を示すもので、ハイブリッド車両1の制御系を示すブロック図である。ハイブリッド車両1は、内燃機関および外燃機関で構成されるエンジン2と、エンジン2の発生するエンジントルクによって発電するとともに、駆動電力を受けてモータトルクを発生する発電機/モータ3と、発電機/モータ3にモータ駆動電力を供給する蓄電手段としてのバッテリー4と、エンジンの出力軸5と、駆動トルクを駆動輪まで最終的に伝達する駆動出力系6と、発電機/モータ3の出力軸7とエンジン2の出力軸5との間に介設されたクラッチ8とを備え、さらに上記エンジン2や発電機/モータ3の駆動を制御する制御系9を有している。
【0025】エンジン2は、高出力時に効率が最大となる状態と、低出力時に効率が最大となる状態とに、効率特性を変更可能なエンジンであって、本実施例の場合には、空燃比を変更することによって複数の効率特性を選択することのできるリーンバーンエンジンが用いられている。本実施例の車両では、燃焼する混合気体(燃料と空気の混合気体)の空燃比が、理論空燃比である状態(以下「ストイキ」という)と、希薄混合気状態(以下「リーン」という)との2つの状態に変更可能に設定されており、それぞれの状態で異なる効率特性を有する。以下、供給される混合気体の空燃比がストイキで駆動しているエンジンの状態をストイキ状態、リーンで駆動しているエンジンの状態をリーン状態と定義する。
【0026】図2に示されているように、本実施例では、リーン状態となる混合気体の空燃比は、エンジントルクの変動が、許容値を越える直前の、例えば22?23の範囲(A)内に設定されている。以下この範囲をリーン領域と定義し、同様に図2において、空燃比が理論空燃比付近である領域をストイキ領域と定義する。」(段落【0024】ないし【0026】)

(2)「【0030】次に、制御系9の説明をする。制御系9は、制御手段である車両制御装置10と、エンジン制御装置11と、モータ制御装置12とを備えている。各制御装置10、11、12は、例えばCPU(中央処理装置)、各種プログラムやデータが格納されたROM(リード・オン・メモリ)、ワーキングエリアとして使用されるRAM(ランダム・アクセス・メモリ)等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。
【0031】車両制御装置10は、最終的に駆動出力系6に伝達される駆動出力を制御する。トルクをアクセルセンサ13から入力されるアクセル開度に基づいて、最終的に駆動出力系6に伝達される駆動トルクを決定し、モータ電流指令値IMを上げて決定された駆動トルクを駆動出力系6に伝達されるように制御する。」(段落【0030】)

(3)「【0032】エンジン制御装置11は、車両制御装置10から入力されるスロットル開度信号を受けると、信号に応じたスロットル開度の調整を行い、エンジン出力を制御する。また、空燃比(A/F)選択指令信号を受けると、リーンとストイキのいずれかの空燃比を選択し、効率特性を制御する。」(段落【0032】)

(4)上記(1)ないし(3)の記載より分かること

ア 上記(1)の記載によれば、ハイブリッド車両1は、エンジン2と、発電機/モータ3とを動力源として有していることが分かる。

イ 上記(1)及び(2)の記載によれば、制御系9は、ハイブリッド車両1を制御することが分かる。

ウ 上記(1)及び(3)の記載によれば、エンジン制御装置11は、空燃比を選択することにより、リーン状態とストイキ状態との間でエンジンの状態を選択することが分かる。

(5)引用文献4技術

上記(1)ないし(4)を総合すると、引用文献4には次の技術(以下、「引用文献4技術」という。)が記載されている。

<引用文献4技術>

「理論空燃比であるストイキ状態と空燃比がリーンであるリーン状態とを選択可能なエンジン2と、発電機/モータ3とを動力源として有するハイブリッド車両1を制御する制御系9において、空燃比を選択することによりリーン状態とストイキ状態との間でエンジンの状態を選択するエンジン制御装置11を有する技術。」

第5 対比・判断

1 本願発明1について

本願発明1と引用発明とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明における「エンジン22」は、本願発明1における「内燃機関」に相当し、以下同様に、「モータ40」は「電動機」に、「走行のための動力源」は「走行用動力源」に、「エンジン22の出力」は「内燃機関のエンジントルク」に、「モータ40の出力」は「電動機のモータトルク」に、「外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35」は「ギア群」に、「外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35と」「を備えた」ことは「ギア群を含む」ことに、「プラネタリギヤ30」は「動力伝達機構」に、「介して」は「経由して」に、「駆動輪66a,66b」は「駆動輪」に、「伝達される」ことは「出力される」ことに、「ハイブリッド自動車20」は「ハイブリッド車両」に、「ハイブリッド自動車20をコントロールするハイブリッド用電子制御装置ユニット70」は「ハイブリッド車両に適用される制御装置」に、それぞれ相当する。

してみると、本願発明1と引用発明とは、
「内燃機関と、電動機とを走行用動力源として備え、前記内燃機関のエンジントルクと前記電動機のモータトルクとがギア群を含む動力伝達機構を経由して駆動輪に出力されるハイブリッド車両に適用される制御装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明1は、「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と前記ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な」内燃機関を備え、「前記内燃機関の空燃比を変更することにより前記リーン燃焼と前記ストイキ燃焼との間で前記内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段と、
前記リーン燃焼及び前記ストイキ燃焼のそれぞれの場合において前記動力伝達機構で生じる騒音が抑制されるようにエンジン回転数及びエンジントルクで定義された前記内燃機関の動作点を制限する騒音抑制制御を実行する騒音抑制制御手段と、
前記リーン燃焼で前記騒音抑制制御を実行した場合及び前記ストイキ燃焼で前記騒音抑制制御を実行した場合のそれぞれの場合の前記内燃機関の熱効率を算出する熱効率算出手段と、を備え、
前記燃焼切替手段は、前記熱効率算出手段が算出した前記熱効率が、前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼に維持して前記騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼に切り替えるとともに、前記熱効率算出手段が算出した前記熱効率が、前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼に維持して前記騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼に切り替える」のに対し、引用発明1は、かかる構成を備えていない点(以下、「相違点」という。)。

ここで、上記相違点について検討する。

本願発明1及び引用文献2技術は、車両という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明1と引用文献2技術とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献2技術における「エンジン1」は、本願発明1における「内燃機関」に相当する。
また、引用文献2技術における「ECU9」は、本願発明1における「ハイブリッド車両に適用される制御装置」と、「制御装置」という限りにおいて一致している。
してみると、引用文献2技術は、本願発明1の用語を用いると、以下のものとなる。

「内燃機関を制御する制御装置において、アイドル回転数制御の実行中に、燃料消費率が所定量以上に悪化した場合や、排気エミッションが所定量以上に悪化した場合に、各気筒の空燃比の相互間の比率を維持したまま全気筒の空燃比をリーン側に移行させるように制御する技術。」

本願発明1及び引用文献3技術は、ハイブリッド車両という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明1と引用文献3技術とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献3技術における「理論空燃比でのストイキ燃焼」は、本願発明1における「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼」に相当し、以下同様に、「リーン空燃比でのリーン燃焼」は「ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼」に、「内燃機関1」は「内燃機関」に、「電動機31」は「電動機」に、「原動機」は「走行用動力源」に、「設ける」ことは「備え」ることに、「ハイブリッド車輌」は「ハイブリッド車両」に、「ハイブリッド車輌を制御するメインECU71、機関ECU72及び電動機ECU73」は「ハイブリッド車両に適用される制御装置」に、「空燃比を切り替えること」は「内燃機関の空燃比を変更すること」に、「動作モード」は「内燃機関の運転モード」に、「切替制御を行う」ことは「切り替える」ことに、「機関ECU72」は「燃焼切替手段」に、「有する」ことは「備え」ることに、それぞれ相当する。
してみると、引用文献3技術は、本願発明1の用語を用いると、以下のものとなる。

「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と前記ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な内燃機関と、電動機とを走行用動力源として備えるハイブリッド車両に適用される制御装置において、前記内燃機関の空燃比を変更することにより前記リーン燃焼と前記ストイキ燃焼との間で前記内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段を備える技術。」

本願発明1及び引用文献4技術は、ハイブリッド車両という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明1と引用文献4技術とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用文献4技術における「理論空燃比であるストイキ状態」は、本願発明1における「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼」に相当し、以下同様に、「空燃比がリーンであるリーン状態」は「ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼」に、「選択可能」は「切り替え可能」に、「エンジン2」は「内燃機関」に、「発電機/モータ3」は「電動機」に、「動力源」は「走行用動力源」に、「有する」ことは「備え」ることに、「ハイブリッド車両1」は「ハイブリッド車両」に、「ハイブリッド車両1を制御する制御系9」は「ハイブリッド車両に適用される制御装置」に、「空燃比」は「内燃機関の空燃比」に、「空燃比を選択する」ことは「内燃機関の空燃比を変更する」ことに、「エンジンの状態を選択する」ことは「内燃機関の運転モードを切り替える」ことに、「エンジン制御装置11」は「燃焼切替手段」に、それぞれ相当する。
してみると、引用文献4技術は、本願発明1の用語を用いると、以下のものとなる。

「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と前記ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な内燃機関と、電動機とを走行用動力源として備えるハイブリッド車両に適用される制御装置において、前記内燃機関の空燃比を変更することにより前記リーン燃焼と前記ストイキ燃焼との間で前記内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段を備える技術。」

そして、引用文献3技術及び引用文献4技術から、「理論空燃比又はその近辺の空燃比を目標とするストイキ燃焼と前記ストイキ燃焼の空燃比の目標よりもリーン側に設定された空燃比を目標とするリーン燃焼とを切り替え可能な内燃機関と、電動機とを走行用動力源として備えるハイブリッド車両に適用される制御装置において、前記内燃機関の空燃比を変更することにより前記リーン燃焼と前記ストイキ燃焼との間で前記内燃機関の運転モードを切り替える燃焼切替手段を備える技術」は、本願の出願前の周知技術である。
しかしながら、引用文献2技術は、燃料消費率が所定量以上に悪化した場合に、各気筒の空燃比の相互間の比率を維持したまま全気筒の空燃比をリーン側に移行させるものにすぎず、上記周知技術を踏まえても、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「リーン燃焼及びストイキ燃焼のそれぞれの場合において動力伝達機構で生じる騒音が抑制されるようにエンジン回転数及びエンジントルクで定義された内燃機関の動作点を制限する騒音抑制制御を実行する騒音抑制制御手段」との事項(以下、「発明特定事項1」という。)、及び、「リーン燃焼で騒音抑制制御を実行した場合及びストイキ燃焼で騒音抑制制御を実行した場合のそれぞれの場合の内燃機関の熱効率を算出する熱効率算出手段」との事項(以下、「発明特定事項2」という。)について、構成として有しておらず、その結果、「燃焼切替手段は、熱効率算出手段が算出した熱効率が、内燃機関の運転モードをストイキ燃焼に維持して騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードをリーン燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼から前記リーン燃焼に切り替えるとともに、前記熱効率算出手段が算出した前記熱効率が、前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼に維持して前記騒音抑制制御を実行する場合よりも前記内燃機関の前記運転モードを前記ストイキ燃焼に切り替えて前記騒音抑制制御を実行する場合の方が高い場合には前記内燃機関の前記運転モードを前記リーン燃焼から前記ストイキ燃焼に切り替える」との事項(以下、「発明特定事項3」という。)についても、構成として有していない。また、発明特定事項1ないし3は、本願の出願前の周知技術とはいえず、当業者にとって設計的事項ともいえない。

また、本願発明1は、相違点に係る発明特定事項を備えることにより、「この制御装置によれば、騒音抑制制御の実行中に内燃機関の運転モードを維持する場合の熱効率に比べて運転モードを切り替える場合の熱効率の方が高い場合は内燃機関の運転モードが切り替えられる。したがって、騒音抑制制御の実行中に内燃機関の熱効率が悪いまま運転モードが維持されることを回避できる。これにより、内燃機関の熱効率の悪化を抑制しつつ動力伝達機構で生じる騒音を抑制できる。」(段落【0007】)との効果を奏するものである。

そして、このような効果は、引用発明、引用文献2技術及び上記周知技術から、当業者が予測できるものではない。

よって、本願発明1は、引用発明、引用文献2技術及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし7について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、それぞれ、本願発明1と同様に、引用発明、引用文献2技術及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、引用発明、引用文献2技術及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2014-559442(P2014-559442)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 将一  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 八木 誠
佐々木 芳枝
発明の名称 ハイブリッド車両の制御装置  
代理人 山本 晃司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ