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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1337567
審判番号 不服2016-18528  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-09 
確定日 2018-02-15 
事件の表示 特願2012-115435「電子モジュール及び電子モジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-243251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年5月21日の出願であって、平成28年2月4日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年3月25日付けで手続補正がなされたが、同年9月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月9日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、当審の平成29年9月11日付け拒絶理由通知に対し、請求人からは何らの応答もなされなかったものである。

2.本願特許請求の範囲について
本願の特許請求の範囲は、平成28年12月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1ケース部材と第2ケース部材からなる複数のケース部材を当接させることで構成されるとともに一方の面に第1の開口を形成された内部空間を有しており、前記複数のケース部材を離間させることで前記第1の開口とは異なる方向に開放された第2の開口が表れる本体ケースと、
電子部品を実装されており前記本体ケースの内部空間に収容される基板と、
前記本体ケースの内部空間に充填して固化又は硬化させることで前記基板を被覆する樹脂体とを備えており、
前記樹脂体が連結材となって前記複数のケース部材と前記基板とが一体化するように構成した電子モジュールであって、
前記本体ケースの内部空間において前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで前記基板を保持するガイド部を備えるとともに、
前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで前記第2ケース部材を保持するガイド部を備えており、
これらのガイド部によって、前記基板と前記第2ケース部材とを平行に保持していることを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記ケース部材の少なくとも1つに、外部との間で電気信号を授受するため接続部を設け、当該接続部と前記基板との間を電気的接続したことを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記ケース部材の少なくとも1つに、外部に対して本体ケースを固定するための固定部を設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記ケース部材の少なくとも1つが弾性材料により形成されており、これを他のケース部材の内部に挿入することで、前記第2の開口を封止するように構成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記本体ケースにおける内部空間の壁面を構成するケース部材の少なくとも1つが、その内面に、前記樹脂体を充填する前に前記ケース部材同士の離間が可能となる方向と交差する方向の凹部を形成したことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の電子モジュール。
【請求項6】
一方の面に第1の開口を形成された内部空間を有しており、第1ケース部材と第2ケース部材からなる複数のケース部材より構成される本体ケースを、前記複数のケース部材同士を離間させることで前記第1の開口とは異なる方向に開放された第2の開口が表れた状態とした上で、前記内部空間内に基板を挿入するステップと、
前記複数のケース部材を組み合わせることで前記第2の開口を封止するステップと、
前記第1の開口を通じて液体状態又は軟化状態にある樹脂体を前記内部空間に充填するステップと、
この樹脂体を固化又は硬化させるステップと、
を含み、前記本体ケースの内部空間において前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで前記基板を保持するガイド部を備えるとともに、
前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで前記第2ケース部材を保持するガイド部を備えており、
これらのガイド部によって、前記基板と前記第2ケース部材とを平行に保持していることを特徴とする電子モジュールの製造方法。」

3.当審の拒絶の理由
当審において平成29年9月11日付けで通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
3-1.理由1(特許法第29条第2項)
本件出願の請求項1?4、6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2001-111240号公報
2.特開2001-237557号公報

3-2.理由2(特許法第36条第6項第1号違反)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項5において、「前記本体ケースにおける内部空間の壁面を構成するケース部材の少なくとも1つが、その内面に、前記樹脂体を充填する前に前記ケース部材同士の離間が可能となる方向と交差する方向の凹部を形成した」とあり、かかる記載によれば、凹部は、第1ケース部材のみに形成したものであっても良いと解されるところ、発明の詳細な説明(段落【0113】?【0122】、図10)には、第2ケース部材741に凹部741bが形成されることが記載されているのみであり、ケース部材603(第1ケース部材)に凹部が形成されることは記載されていない。
よってこの点において、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求するものであるといえる。

4.当審の判断
4-1.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)引用例
(1-1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用された特開2001-111240号公報(以下、「引用例1」という。)には、「基板の位置決め構造」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0021】図1に示すように、加速度センサ10は、加速度検出回路を構成するプリント基板1と、基板1から延びる複数の電線3と、基板1を収装するケース2等を備える。基板1には所定方向の加速度に応じた信号を出力する半導体素子が配設され、その出力信号が電線3を介して取り出される。
【0022】ケース2は基板1を収装する収装室21を有する箱形をしている。基板1は収装室21に樹脂等を充填してモールドされる。
【0023】ケース2には電線3を通す切り欠き22が形成され、切り欠き22に嵌められるグロメット(電線係止手段)4を備える。グロメット4の外周部には切り欠き22の開口縁部に係合する溝41が形成される。各電線3はグロメット4を貫通し、グロメット4は電線3の途中をケース2に係止する。そしてグロメット4はモールド樹脂の充填時にモールド樹脂が切り欠き22を通って洩れ出すことを防止する。
【0024】基板1の位置決めを行うため、図2に示すように、ケース2の内壁には一対の溝23が互いに対向して形成され、基板1の両側部11を各溝23に係合させるとともに、基板1の下端面12をケース2の底面25に当接させる。各溝23は垂直方向に延び、基板1を垂直に立たせた位置に支持するようになっている。」

イ.「【0030】以上のように構成されて、加速度センサ10の組み付け時に、ケース2の各溝23に渡って基板1を装着するとともに、切り欠き22にグロメット4を装着することにより、グロメット4が弾性変形して膨出部42が形成されるとともに、電線3が弾性変形して曲折部34が形成される。膨出部42と曲折部34に生じる弾性復元力F1とF2によって基板1が各溝23の側面24に押し付けられるとともに、曲折部34に生じる弾性復元力F3によって基板1の下端面12がケース2の底面25に押し付けられる。こうして、基板1のケース2に対する位置決めが行われた状態で、ケース2内にモールド樹脂を充填して基板1を固定することにより、基板1が各溝23の隙間の範囲内で傾いたままモールドされることが防止され、加速度センサ10の検出精度を確保できる。」

・上記「ア.」の段落【0022】?【0023】、「イ.」の記載事項、及び図1,2によれば、加速度センサ10は、加速度に応じた信号を出力する半導体素子が配設された基板1と、基板1から延びる電線3と、基板1を収装する収装室21を有するケース2を備え、基板1は収装室21にモールド樹脂を充填して固定されてなるものである。
そして、ケース2は、上方が開口した箱形のケースであって、側壁に切り欠き22が形成され、当該切り欠き22には、外周部に切り欠き22の開口縁部に係合する溝41が形成されたグロメット(電線係止手段)4が嵌められてなるものである。
・上記「ア.」の段落【0024】の記載事項、及び図1,2によれば、基板1は、基板1の両側部11が収装室21の内壁に対向して形成された一対の溝23にそれぞれ係合されることにより、垂直に立たせた位置に位置決め支持されるものである。

したがって、「加速度センサ」に係る発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「上方が開口した収納室を有する箱形のケースと、
前記ケースの側壁に形成された切り欠きに嵌められるグロメット(電線係止手段)と、
半導体素子が配設され、前記収装室に収装される基板と、
前記収装室に充填され、前記基板を前記収装室に固定するモールド樹脂とを備えた加速度センサであって、
前記収装室の内壁に対向して形成された一対の溝23を有し、
前記基板の両側部を前記一対の溝23に係合させることにより、前記基板を垂直に立たせた位置に位置決め支持するとともに、
前記グロメット(電線係止手段)の外周部に形成された溝41を前記ケースに形成された前記切り欠きの開口縁部に係合させて嵌めた、加速度センサ。」

(1-2)引用例2
同じく当審の拒絶の理由に引用された特開2001-237557号公報(以下、「引用例2」という。)には、「電子回路基板の収容ケース」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子回路基板の収容ケースに関し、より詳しくは、電子部品を搭載した電子回路基板を収容し、さらに収容した電子回路基板と内壁との間隙に樹脂を充填して電子回路基板を固定、保護する収容ケースに関する。」

イ.「【0031】収容ケース26、より具体的には、収容ケース本体28は略直方体を呈すると共に、上面に開口端14が形成される。
【0032】さらに、収容ケース本体28の内壁面には、前記電子回路基板16を所定位置に導入、固定するためのレール30が形成される。より具体的には、収容ケース本体28の内部底面および内部側壁面の適宜位置に、電子回路基板16と略同幅の溝を構成するよう2本のレール30が対向して形成される。また、前記開口端14付近には、後述する突起部32と係合する凹部34が形成される。
【0033】また、電子回路基板16にハンダ付けにより搭載された前記コネクタ18の側壁下部には、前記凹部34と係合する鍔状の突起部32が形成される。
【0034】前記収容ケース本体28に電子回路基板16をレール30を介して収容することで、より具体的には、対向した2本のレール30によって構成される溝に導入することで、電子回路基板16を所定の位置に固定することができる。尚、前記レール30の上端をテーパ状にすることで、電子回路基板16の導入(挿入)を容易にしている。さらに、前記凹部34と突起部32とが係合することで、電子回路基板16およびコネクタ18を所定の位置に、より確実に固定することができる。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の技術事項が記載されている。
「電子部品を搭載した電子回路基板を収容し、さらに収容した電子回路基板と内壁との間隙に樹脂を充填して電子回路基板を固定、保護する収容ケースにおいて、
前記電子回路基板を固定するガイド部材を、収容ケース本体の内壁面に形成された2本のレールとし、当該2本のレールで構成される溝(隙間)に前記電子回路基板を導入して固定するようにしたこと。」

(2)対比
そこで、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「上方が開口した収納室を有する箱形のケースと、前記ケースの側壁に形成された切り欠きに嵌められるグロメット(電線係止手段)と」によれば、
(a)引用発明における「ケース」、「グロメット(電線係止手段)」が、それぞれ本願発明でいう「第1ケース部材」、「第2ケース部材」に相当し、 引用発明における「ケース」及び「グロメット(電線係止手段)」が、本願発明でいう「本体ケース」を構成するものであるといえる。
(b)引用発明における、「上方が開口」した「収装室」は、本願発明の一方の面に「第1の開口」を形成された「内部空間」に相当し、
また、引用発明における、側壁に形成された「切り欠き」は、「収装室」の上方の開口とは異なる方向に開口しているもの(引用例1の図1も参照。)であるから、本願発明でいう、第1の開口とは異なる方向に開放された「第2の開口」に相当するといえ、
本願発明と引用発明とは、「第1ケース部材と第2ケース部材からなる複数のケース部材を当接させることで構成されるとともに一方の面に第1の開口を形成された内部空間を有しており、前記複数のケース部材を離間させることで前記第1の開口とは異なる方向に開放された第2の開口が表れる本体ケースと」を備えるものである点で一致する。

イ.引用発明における「半導体素子が配設され、前記収装室に収装される基板と」によれば、
引用発明における「半導体素子」、「基板」は、それぞれ本願発明でいう「電子部品」、「基板」に相当し、
本願発明と引用発明とは、「電子部品を実装されており前記本体ケースの内部空間に収容される基板と」を備えるものである点で一致する。

ウ.引用発明における「前記収装室に充填され、前記基板を前記収装室に固定するモールド樹脂とを備えた加速度センサであって」によれば、
(a)引用発明における「モールド樹脂」は、本願発明でいう「樹脂体」に相当し、
(b)引用発明にあっても、充填されたモールド樹脂(なお、固化または硬化させることは技術常識である)によって、ケースとグロメット(電線係止手段)で形成される内部空間である収装室内に基板が固定され、これらが一体化して構成されてなるものであるといえる。
(c)そして、引用発明における「加速度センサ」は、本願発明でいう「電子モジュール」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記本体ケースの内部空間に充填して固化又は硬化させることで前記基板を被覆する樹脂体と」を備えるものである点、及び「前記樹脂体が連結材となって前記複数のケース部材と前記基板とが一体化するように構成した電子モジュール」である点で一致する。

エ.引用発明における「前記収装室の内壁に対向して形成された一対の溝23を有し、前記基板の両側部を前記一対の溝23に係合させることにより、前記基板を垂直に立たせた位置に位置決め支持するとともに」によれば、
引用発明においても、基板は、収納室の上方開口から当該収装室の内壁に対向して形成された一対の溝23の隙間に挿入されて位置決め支持されるものであることから、引用発明における、一対の「溝23」は、本願発明でいう「基板を保持するガイド部」に相当するといえ、
本願発明と引用発明とは、「前記本体ケースの内部空間において前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に隙間を形成して設けられ前記隙間に挿入することで前記基板を保持するガイド部」を備えるものである点で共通するということができる。
ただし、基板を保持するガイド部について、本願発明では、「対をなして」隙間を形成して「凸状に」設けられてなるものである旨特定するのに対して、引用発明は「溝」である点で相違している。

オ.引用発明における「前記グロメット(電線係止手段)の外周部に形成された溝41を前記ケースに形成された前記切り欠きの開口縁部に係合させて嵌めた」によれば、
引用発明における、切り欠きの「開口縁部」は、グロメット(電線係止手段)の外周部に形成された溝41を係合させ、グロメット(電線係止手段)を保持するものであり、本願発明でいう「第2ケース部材を保持するガイド部」に相当するとみることができ、
本願発明と引用発明とは、「前記第2ケース部材を保持するガイド部」を備えるものである点で共通するといえる。
ただし、第2ケース部材を保持するガイド部について、本願発明では、「前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで」第2ケース部材を保持するものである旨特定するのに対して、引用発明では、ケースの側壁に形成された切り欠きの「開口縁部」である点で相違している。

カ.そして、上記「エ.」、「オ.」のとおり、引用発明における「基板」は、収装室の内壁に対向して形成された一対の溝23に垂直に立たせた状態で保持され、「グロメット(電線係止手段)」は、ケースの側壁に形成された切り欠きの開口縁部に保持されるものであり、両者は互いに平行保持される(引用例1の図1も参照。)ものであるということができ、
本願発明と引用発明とは、「これらのガイド部によって、前記基板と前記第2ケース部材とを平行に保持している」点で一致するといえる。

よって、本願発明と引用発明とは、
「第1ケース部材と第2ケース部材からなる複数のケース部材を当接させることで構成されるとともに一方の面に第1の開口を形成された内部空間を有しており、前記複数のケース部材を離間させることで前記第1の開口とは異なる方向に開放された第2の開口が表れる本体ケースと、
電子部品を実装されており前記本体ケースの内部空間に収容される基板と、
前記本体ケースの内部空間に充填して固化又は硬化させることで前記基板を被覆する樹脂体とを備えており、
前記樹脂体が連結材となって前記複数のケース部材と前記基板とが一体化するように構成した電子モジュールであって、
前記本体ケースの内部空間において前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に隙間を形成して設けられ前記隙間に挿入することで前記基板を保持するガイド部を備えるとともに、
前記第2ケース部材を保持するガイド部を備えており、
これらのガイド部によって、前記基板と前記第2ケース部材とを平行に保持していることを特徴とする電子モジュール。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
基板を保持するガイド部について、本願発明では、「対をなして」隙間を形成して「凸状に」設けられてなるものである旨特定するのに対して、引用発明では、「溝」である点。

[相違点2]
第2ケース部材を保持するガイド部について、本願発明では、「前記第1の開口から前記第1ケース部材の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ前記隙間に挿入することで」第2ケース部材を保持するものである旨特定するのに対して、引用発明では、ケースの側壁に形成された切り欠きの「開口縁部」である点。

(3)判断
上記[相違点1]及び[相違点2]について検討する。
引用例2には、電子部品を搭載した電子回路基板を収容し、さらに収容した電子回路基板と内壁との間隙に樹脂を充填して電子回路基板を固定、保護する収容ケースにおいて、前記電子回路基板を固定するガイド部材を、収容ケース本体の内壁面に形成された2本のレールとし、当該2本のレールで構成される溝(隙間)に前記電子回路基板を導入して固定するようにした技術事項が記載(上記(1-2)を参照)されており、本願明細書の段落【0064】の「凸状ガイド222a,224aは、基板5の位置決めを行うことが目的であるため、上記のように凸状に形成することは必須とはいえない。そのため、側壁222,224の内面に、基板5の対向辺を挿入するための凹状溝を形成してもよい。」なる記載も参照するに、ガイド部における隙間を、(凹状の)溝で形成するか、あるいは対をなす凸状で形成するかは当業者にとって設計的事項にすぎず、引用発明においても、基板を保持するガイド部を、(凹状の)溝に代えて、上記引用例2に記載の技術事項のように2本のレールとすること、すなわち対をなして隙間を形成して凸状に設けるという相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
また、第2ケース部材(グロメット(電線係止手段))を保持するガイド部についても、基板を保持するガイド部と同様の構成とすること、すなわち、上方の開口(第1の開口)から収装室の対向する側壁に対をなして隙間を形成して凸状に設けられ当該隙間にグロメット(電線係止手段)を挿入することで保持するという相違点2に係る構成とする(なおその場合、当然、グロメットの形状も相違点2に係る構成のガイド部に対応した形状となる)ことも当業者であれば容易になし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願発明が奏する効果は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4-2.理由2(特許法第36条第6項第1号違反)について
上記「3-2.」の(1)のとおりの記載不備に関する指摘に対して、請求人は特許請求の範囲について何ら補正することなく、また、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが提出されず、何ら反論もなされていない。
よって依然として、上記(1)の指摘事項に関する記載不備は解消しておらず、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるともいえる。

したがって、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-06 
結審通知日 2017-12-12 
審決日 2017-12-25 
出願番号 特願2012-115435(P2012-115435)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H05K)
P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 関谷 隆一
井上 信一
発明の名称 電子モジュール及び電子モジュールの製造方法  
代理人 大西 雅直  

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