• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1337639
審判番号 不服2017-5471  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-17 
確定日 2018-02-22 
事件の表示 特願2012-237136「ガスタービン設備」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月3日出願公開、特開2013-199925〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成24年10月26日(優先権主張平成24年2月21日)の出願であって、平成28年7月19日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年9月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年1月5日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月17日)、これに対し、同年4月17日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に請求項の削除を目的として手続補正がされたものである。
そして、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年4月17日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
圧縮機と、前記圧縮機から圧縮空気が送られてくると共に燃料ラインを通して燃料ガスが供給されて燃焼ガスを発生する燃焼器と、前記燃焼ガスにより回転駆動すると共に前記圧縮空気の一部を分岐したタービン翼冷却用の圧縮空気が圧縮空気ラインを通って送られてきてタービン翼の冷却をするタービンとを備えたガスタービン設備において、
前記タービン翼冷却用の圧縮空気から熱を奪ってこの圧縮空気の冷却をし、奪った熱を熱伝達媒体を介して伝達し、伝達した熱を前記燃料ガスに与えてこの燃料ガスを予熱する熱交換部を備え、
前記熱伝達媒体は超臨界圧の水であり、
前記熱交換部は、
熱伝達媒体を循環流通させる循環ラインと、
前記循環ライン及び前記圧縮空気ラインに接続されており、前記熱伝達媒体により前記タービン翼冷却用の圧縮空気を冷却する冷却空気冷却器と、
前記循環ライン及び前記燃料ラインに接続されており、前記熱伝達媒体により前記燃料ガスを予熱する燃料ガス加熱器と、
前記循環ラインの前記熱伝達媒体を冷却する熱交換器と、を有し、
前記熱交換器は、前記循環ラインのうちで、前記熱伝達媒体の流れ方向に関して前記燃料ガス加熱器よりも下流側かつ前記冷却空気冷却器よりも上流側に接続されていることを特徴とするガスタービン設備。」

第2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平5-340269号公報(以下「刊行物」という。)には、「ガスタービン装置、並びにガスタービンにおける伝熱装置及び冷却方法」に関して、図面(特に、図1、図2参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

1 「【0009】
【実施例】図面を参照すれば、図1にはガスタービン装置1の長手方向における断面図が示されている。ガスタービンは3つの主たる構成要素、即ち圧縮機部2と、燃焼部3と、タービン部4とを備える。ロータ5はこのガスタービン内に中央配置されおり、これ等の3つの部を通って延びている。圧縮機部2は静翼7及び動翼8の交互列を取り囲む円筒体6を備える。静翼7は円筒体6に固着され、動翼8はロータ5に固着されている。
【0010】燃焼部3はチャンバーを形成する円筒体9を備え、そのチャンバー内には複数の燃焼器10及びダクト11が配置されており、該ダクトは該燃焼器をタービン部4に連結している。燃料供給管23が、各燃焼器10におけるノズル25に燃料を分配する燃料マニホルド24に連結されている。ロータ5の一部が燃焼部3を通って延在し、該燃焼部3内でハウジング12によって取り囲まれている。以下に更に詳述する冷却空気戻り管13及び14が上記円筒体9を貫いて上記チャンバーに延在し、上記ハウジング12の一部を囲むマニホルド15で終了している。
【0011】タービン部4は内筒17を取り囲む外筒16を備える。内筒17は静翼18及び動翼19の交互列を取り囲んでいる。静翼18は内筒17に固着され、動翼19はタービン部のロータ5を形成する複数の回転円板20に固着されている。
【0012】作動に際し、圧縮機は周囲空気21をその入口内に導き、圧縮空気22を円筒体9によって形成されたチャンバー内へ放出する。チャンバー内における空気の殆ど全ては、燃焼器10へ複数の穴(図示せず)を通って入る。燃焼器10内では、後述する如くに加熱された燃料26が圧縮空気22中に噴射されて同圧縮空気と混合され、燃焼されて、高温の圧縮ガス27を形成する。この高温の圧縮ガス27はダクト11を貫流し、タービン部4における静翼18及び動翼19の交互列を通って流れ、そこで同圧縮ガスは膨張して、ロータ5に連結された負荷(図示せず)を駆動する動力を発生する。膨張ガス28はそれからタービン部を出て大気中に排気されるか、或は、後述する熱回収蒸気発生器へ指向されることができる。
【0013】タービン部における動翼19及び回転円板20は、燃焼器10からの1,090゜C(2,000゜F)以上となり得る高温の圧縮ガス27に曝され、それらの回転によってそれらに働く遠心力の結果として、高い応力を受ける。動翼及び回転円板を応力に耐えるように形成する材料の能力は温度の上昇と共に劣化するので、これ等の構成要素の温度を許容レベル以内に維持するような適切な冷却を行うことが重要である。好ましい実施例においては、この冷却は、円筒体9によって形成されたチャンバーからの圧縮空気22の一部分29をロータ5のタービン部へ偏向することによって達成される。この偏向は、円筒体9から出ている外部ブリード管30(管路手段)を通して空気を取り出すことによって達成される。以下に説明する如く、冷却された後、冷却済み冷却空気31は戻り管13及び14を通じてガスタービンに再び入る。これ等の戻り管は冷却空気をマニホルド15へ指向させるものであり、その後、該冷却空気は複数の穴50を通じてハウジング12の内部に入り、該ハウジング12とロータ5の間に形成された環状ギャップ52に入り込む。それから冷却空気は複数の穴51を通じてロータ5に入り込み、所望の冷却を達成するために回転円板及び動翼における複数の複雑な冷却通路(図示せず)を貫流することになる。」

2 「【0015】本発明に従えば、圧縮機から吐出された空気22から取り出される冷却空気29の量は該空気を冷却することによって低減され、それによって、サイクルから放出された熱を失うことなくタービン構成要素から熱を吸収し且つ該タービン構成要素を冷却するその空気の能力を増大することになる。このことは、高温の冷却空気29を、図1に示すような多管円筒形とし得る冷却空気用の熱交換器53(伝熱手段)へ指向させることによって達成され、その場合、以下に詳述する如く、円筒体77は冷却空気29の流路を形成し、複数の管75は中間伝熱流体57の流路を形成する。冷却空気用のこの熱交換器53は閉ループ配管系統55(循環手段)によって、非加熱状態の気体燃料56が供給される燃料用の熱交換器54(伝熱手段)に連結される。図1に示されるように、燃料用の熱交換器54もまた多管円筒形でよく、その場合、円筒体78は気体燃料56の流路を形成し、複数の管76は中間伝熱流体57の流路を形成する。注目されるべきことは、両方の熱交換器53及び54は複数の管75及び76が該熱交換器を貫流する各流体の間の流通を妨げる間接形であることである。
【0016】本質的には水であり或は少なくとも実質的に水であり得る中間伝熱流体57、即ちグリコール/水の混合物は、配管系統55におけるポンプ63(循環手段)によって熱交換器53及び54を通るように循環させられる。従って、冷却空気29は熱を中間伝熱流体57に放出することによって冷却され、次いで該中間伝熱流体は熱を燃料56に放出することによって冷却され、それによって該燃料を加熱する。加熱された燃料26は燃焼器10に噴出されて燃焼されるので、該燃料が冷却空気29から熱交換器54を介して間接的に吸収した熱はサイクルに戻されて、タービンに入る圧縮ガス27の所望温度を得るために燃やされなければならない燃料の量を減じることになる。その結果、前述したように冷却空気を冷却する従来の方法とは異なり、本発明によれば、上述の冷却の結果、ガスタービンの熱効率を著しく低下させることにはならない。
【0017】熱交換器53及び54に漏れが発生した場合、複数のタービン構成要素を損傷することがないよう、水が冷却空気31或は燃料26に入り込まないように確保することが重要である。従って、好適な実施例において、中間伝熱流体57の圧力は冷却空気29や燃料56の圧力以下に維持されるので、熱交換器内に形成される如何なる漏れ路も空気或は燃料の中間伝熱流体57への流入となって、その逆となることがない。本発明に従えば、中間伝熱流体57の温度変化によるその体積種々の振れによって該中間伝熱流体の圧力が冷却空気及び燃料の圧力以上に上昇しないように、配管系統55に膨張タンク62を組み込むことによって圧力維持が確保されている。」

3 「【0018】図1に示される実施例では、気体燃料26だけが燃焼器10に噴射されている。しかしながら、他の多くの適用例においては、水或は蒸気等の他の流体を燃焼器10へ注入して大気汚染物と考えられる高温の圧縮ガス27中における窒素酸化物(NOx)の形成を低減する必要がある。従って、図2に示されるように、本発明は気体燃料56よりもむしろ水69を熱交換器54に通すよう向かわせることによって利用され得る。NOxを低減すべく加熱された水70が燃焼部3内に注入されると、その水が中間伝熱流体57から吸収した熱はサイクルに戻される。
【0019】NOx制御のための水70をガスタービンに注入することが望ましくないか或は不必要である場合が時々あり得る。そのような場合、中間伝熱流体57からの熱が放出され得る熱交換器54を貫流する流体が全くなくなることになる。しかしながら、それにもかかわらず冷却空気29は依然冷却されなければならないので、該冷却空気の熱が伝達され得る代替的な媒体を見い出さなければならない。本発明に従えば、この問題は補助的な熱交換器66の使用によって解決され、該補助的な熱交換器は図2に示されるように熱交換器54と並列となるべく連結され得る。配管系統における複数の弁67を作動することによって、ポンプ63は熱交換器54よりはむしろ補助的な熱交換器66を通るように中間伝熱流体57を循環させることになる。第2のポンプは、発電所用の補助的な冷却水であり得る第2の伝熱流体68を補助的な熱交換器66に通すように循環させているので、中間伝熱流体57からの熱はこの第2の伝熱流体68に放出される。
【0020】多くのガスタービンは気体燃料での運転から、液体燃料、典型的にはNo.2留出油での運転へ切り替わる能力を有する。遺憾ながらそのような液体燃料を加熱することは不適当であるかもしれない。更に、多くの発電所では液体燃料を用いての操業は年間のうちたった数週間しかないので、液体燃料の使用に適する追加的な熱交換器に出資することは不経済であるかもしれない。従って、図2に示されたような補助的な熱交換器66を図1に示された実施例に組み入れることができるので、ガスタービンが液体燃料で作動している際、中間伝熱流体57からの熱は第2の伝熱流体68に放出されることが可能であろう。
【0021】本発明は、図2にその一部が示されている複合サイクルのガス及び蒸気タービン発電所で作動するガスタービンにおいて使用するのに特に有利である。そのようなシステムで典型的なように、ガスタービンのタービン部4から吐出されたガスは熱回収蒸気発生器63を貫流し、そこでは吐出ガスがその熱の多くを給水68に放出して蒸気タービン(図示せず)に使用される蒸気65を生産する。本発明に従えば、図1に示された実施例に関して議論されたような気体燃料26か、或は図2に示されたようにNOx制御のための水70であり得る燃焼部噴射流体の加熱が望まれない場合、補助的な熱交換器66が中間伝熱流体57を冷却するために使用される。この実施例において、熱交換器66には図2に示されるように熱回収蒸気発生器63用の給水68が供給される。従って、中間伝熱流体57から放出された熱は給水68の加熱に供されるので、冷却空気から伝達された熱は、ガスタービン側というよりは蒸気タービン側へであるが、前述のようにサイクルに戻される。
【0022】冷却空気31を冷却することは、タービン構成要素の平均温度を低減する利点を有しており、従って、タービン構成要素の強度を改善するが、過度に低い冷却空気温度は、その冷却空気に直接に露出されたタービン構成要素の各種の部分で、望ましくないほど高い局部的な熱応力となる熱勾配を生じさせる。従って、冷却空気31の温度を所定の範囲内に維持するように該冷却空気温度を制御することが往々にして望ましい。従って、以上で議論したように、燃焼部噴射流体が加熱されない場合、補助的な熱交換器66を熱交換器54の代わりに単に用いるというよりは、この補助的な熱交換器66は中間伝熱流体57の温度、それ故にタービンに戻る冷却空気31の温度を制御すべく、熱交換器54と共に用いることもできる。これは、補助的な熱交換器66を熱交換器54と少なくとも部分的に直列に連結するように、且つ中間伝熱流体57の制御量が、熱交換器54を通るのと同様に、補助的な熱交換器66を貫流するよう、配管系統における複数の弁67を調整を調節することによって達成される。流量調節の技術分野において周知の如く、図2に示されるように冷却された冷却空気31の温度を検知するためにセンサ82を利用することができる。センサ82からの信号は、冷却空気31の温度を上記所定範囲内に維持するように弁67を調節するコントローラ81に伝達される。」

4 上記2の「本質的には水であり或は少なくとも実質的に水であり得る中間伝熱流体57、即ちグリコール/水の混合物は、配管系統55におけるポンプ63(循環手段)によって熱交換器53及び54を通るように循環させられる。従って、冷却空気29は熱を中間伝熱流体57に放出することによって冷却され、次いで該中間伝熱流体は熱を燃料56に放出することによって冷却され、それによって該燃料を加熱する。」(段落【0016】)との記載及び図1からみて、刊行物には、動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22から熱を奪ってこの圧縮空気22の冷却をし、奪った熱を中間伝熱流体57を介して伝達し、伝達した熱を気体燃料56に与えてこの気体燃料56を加熱する循環路が形成されているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、図1に示される実施例に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「圧縮機部2と、前記圧縮機部2から圧縮空気22が送られてくると共に燃料供給管23を通して気体燃料56が供給されて高温の圧縮ガス27を発生する燃焼器10と、前記圧縮ガス27により回転駆動すると共に前記圧縮空気22の一部分29を分岐した、タービン部4における動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22が外部ブリード管30及び冷却空気戻り管13,14を通って送られてきて前記動翼19及び回転円板20の冷却をするタービン部4とを備えたガスタービン装置1において、
前記動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22から熱を奪ってこの圧縮空気22の冷却をし、奪った熱を中間伝熱流体57を介して伝達し、伝達した熱を前記気体燃料56に与えてこの気体燃料56を加熱する循環路を備え、
前記中間伝熱流体57は水であり、
前記循環路は、
中間伝熱流体57を循環流通させる閉ループ配管系統55と、
前記閉ループ配管系統55及び前記外部ブリード管30及び冷却空気戻り管13,14に接続されており、前記中間伝熱流体57により前記動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22を冷却する熱交換器53と、
前記閉ループ配管系統55及び前記燃料供給管23に接続されており、前記中間伝熱流体57により前記気体燃料56を加熱する熱交換器54と、を有するガスタービン装置1。」

また、刊行物には、上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、図2に示される実施例に関して、次の事項(以下「刊行物に記載された事項」という。)が記載されている。

「配管系統は、配管系統の中間伝熱流体57を冷却する補助的な熱交換器66を有し、前記補助的な熱交換器66は、前記配管系統のうちで、前記中間伝熱流体57の流れ方向に関して燃焼器10へ注入する水69を加熱する熱交換器54よりも下流側かつ圧縮空気22を冷却する熱交換器55よりも上流側に接続されていること。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「圧縮機部2」は前者の「圧縮機」に相当し、以下同様に、「圧縮空気22」は「圧縮空気」に、「燃料供給管23」は「燃料ライン」に、「気体燃料56」は「燃料ガス」に、「高温の圧縮ガス27」は「燃焼ガス」に、「燃焼器10」は「燃焼器」に、「圧縮空気22の一部分29」は「圧縮空気の一部」に、「タービン部4」は「タービン」に、「タービン部4における動翼19及び回転円板20」は「タービン翼」に、「外部ブリード管30及び冷却空気戻り管13,14」は「圧縮空気ライン」に、「ガスタービン装置1」は「ガスタービン設備」に、「中間伝熱流体57」は「熱伝達媒体」に、「前記動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22から熱を奪ってこの圧縮空気22の冷却をし、奪った熱を中間伝熱流体57を介して伝達し、伝達した熱を前記気体燃料56に与えてこの気体燃料56を加熱する循環路」は「前記タービン翼冷却用の圧縮空気から熱を奪ってこの圧縮空気の冷却をし、奪った熱を熱伝達媒体を介して伝達し、伝達した熱を前記燃料ガスに与えてこの燃料ガスを予熱する熱交換部」に、「閉ループ配管系統55」は「循環ライン」に、「前記動翼19及び回転円板20冷却用の圧縮空気22を冷却する熱交換器53」は「前記タービン翼冷却用の圧縮空気を冷却する冷却空気冷却器」に、「前記気体燃料56を加熱する熱交換器54」は「前記燃料ガスを予熱する燃料ガス加熱器」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「圧縮機と、前記圧縮機から圧縮空気が送られてくると共に燃料ラインを通して燃料ガスが供給されて燃焼ガスを発生する燃焼器と、前記燃焼ガスにより回転駆動すると共に前記圧縮空気の一部を分岐したタービン翼冷却用の圧縮空気が圧縮空気ラインを通って送られてきてタービン翼の冷却をするタービンとを備えたガスタービン設備において、
前記タービン翼冷却用の圧縮空気から熱を奪ってこの圧縮空気の冷却をし、奪った熱を熱伝達媒体を介して伝達し、伝達した熱を前記燃料ガスに与えてこの燃料ガスを予熱する熱交換部を備え、
前記熱伝達媒体は水であり、
前記熱交換部は、
熱伝達媒体を循環流通させる循環ラインと、
前記循環ライン及び前記圧縮空気ラインに接続されており、前記熱伝達媒体により前記タービン翼冷却用の圧縮空気を冷却する冷却空気冷却器と、
前記循環ライン及び前記燃料ラインに接続されており、前記熱伝達媒体により前記燃料ガスを予熱する燃料ガス加熱器と、を有するガスタービン設備。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、熱伝達媒体が「超臨界圧の」水であるのに対し、
引用発明は、「超臨界圧の」水ではない点。

〔相違点2〕
本願発明は、熱交換部がさらに「前記循環ラインの前記熱伝達媒体を冷却する熱交換器」を有し、「前記熱交換器は、前記循環ラインのうちで、前記熱伝達媒体の流れ方向に関して前記燃料ガス加熱器よりも下流側かつ前記冷却空気冷却器よりも上流側に接続されている」のに対し、
引用発明は、かかる構成を備えていない点。

第4 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明における中間伝熱流体としてどのような流体を使用するかは、所要の熱伝達量や該流体の熱伝達率等の特性・性状等を考慮して、適宜設計する事項である。そして、本願の優先日前に、循環ラインを循環流通する超臨界圧の水を熱伝達媒体として用いることは、周知技術(例えば、特開2002-156492号公報の段落【0032】及び図1、特開2003-63801号公報の段落【0013】及び図2参照)である。
そうすると、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。

2 相違点2について
まず、上記刊行物に記載された事項を検討する。
本願発明と刊行物に記載された事項とを対比すると、後者の「配管系統」は前者の「熱交換部」及び「循環ライン」に相当し、以下同様に、「中間伝熱流体57」は「熱伝達媒体」に、「中間伝熱流体57を冷却する補助的な熱交換器66」は「熱伝達媒体を冷却する熱交換器」に、「圧縮空気22を冷却する熱交換器55」は「圧縮空気を冷却する冷却空気冷却器」にそれぞれ相当する。
また、後者の「燃焼器10へ注入する水69を加熱する熱交換器54」と前者の「燃料ガス加熱器」とは、「加熱器」という限りで共通する。
そうすると、刊行物に記載された事項は、本願発明の用語を用いると、「熱交換部は、循環ラインの熱伝達媒体を冷却する熱交換器を有し、前記熱交換器は、前記循環ラインのうちで、前記熱伝達媒体の流れ方向に関して加熱器よりも下流側かつ圧縮空気を冷却する冷却空気冷却器よりも上流側に接続されている」ものといえる。

そして、刊行物には、図1及び2に示された実施例に関して、「図2に示されたような補助的な熱交換器66を図1に示された実施例に組み入れることができるので、ガスタービンが液体燃料で作動している際、中間伝熱流体57からの熱は第2の伝熱流体68に放出されることが可能であろう。」(段落【0020】)との記載、「図1に示された実施例に関して議論されたような気体燃料26か、或は図2に示されたようにNOx制御のための水70であり得る燃焼部噴射流体の加熱が望まれない場合、補助的な熱交換器66が中間伝熱流体57を冷却するために使用される。この実施例において、熱交換器66には図2に示されるように熱回収蒸気発生器63用の給水68が供給される。」(段落【0021】)との記載、及び「この補助的な熱交換器66は中間伝熱流体57の温度、それ故にタービンに戻る冷却空気31の温度を制御すべく、熱交換器54と共に用いることもできる。これは、補助的な熱交換器66を熱交換器54と少なくとも部分的に直列に連結するように、且つ中間伝熱流体57の制御量が、熱交換器54を通るのと同様に、補助的な熱交換器66を貫流するよう、配管系統における複数の弁67を調整を調節することによって達成される。」(段落【0022】)との記載がある。
これらの記載によれば、引用発明に刊行物に記載された事項を適用する動機付けはある。

そうすると、刊行物に記載された事項の「圧縮空気22を冷却する熱交換器55」は引用発明の「圧縮空気22を冷却する熱交換器53」に相当し、同「燃焼器10へ注入する水69を加熱する熱交換器54」は同「気体燃料56を加熱する熱交換器54」に対応するから、引用発明において、刊行物に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。

3 効果について
本願発明が奏する効果は、引用発明、刊行物に記載された事項及び上記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物に記載された事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願発明は、引用発明、刊行物に記載された事項及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2017-12-14 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2012-237136(P2012-237136)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 孔徳  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 西山 智宏
冨岡 和人
発明の名称 ガスタービン設備  
代理人 松沼 泰史  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 山崎 哲男  
代理人 森 隆一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ