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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1337695
審判番号 不服2017-2101  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-14 
確定日 2018-03-13 
事件の表示 特願2014-541953「イメージセンサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日国際公開、WO2014/061274、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)10月17日(優先権主張 平成24年10月18日、日本、平成25年3月7日、日本)を国際出願日とする出願であって、平成28年4月20日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年6月24日付けで手続補正がされ、平成28年11月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年4月13日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月8日付け拒絶査定)の概要は、以下のとおりである。

本願請求項1-16に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2009-135914号公報
引用文献2.特開2011-44336号公報
引用文献3.特開2011-182370号公報
引用文献4.特開平9-261409号公報
引用文献5.特開2011-188231号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年2月14日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した事項により特定される発明であり、下記のとおりである。
なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A、構成Bなどと称する。

(本願発明)
(A)それぞれが、
被読取物に光を照射する主走査方向に延在する照明部、前記被読取物からの光を結像するロッドレンズアレイ、およびこのロッドレンズアレイで結像された光を電気信号に変換する受光部を具備し、
前記照明部は、1つの発光体から発する、前記被読取物の第1照明領域に対して前記被読取物の法線方向から照射する法線光と、前記第1照明領域から副走査方向に離れた第2照明領域に対して前記被読取物の法線方向から定められた角度だけ傾斜させた傾斜光とにより前記被読取物を照明する
イメージセンサ、の対を備え、
(B)前記イメージセンサの対は前記被読取物を挟んで対向し、前記イメージセンサは相互に、一方の前記イメージセンサの前記法線光を照射する前記照明部が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイに対向して配置され、一方の前記イメージセンサの前記照明部が前記法線光で照明する前記第1照明領域が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸上の領域であって、他方の前記イメージセンサの前記照明部が前記傾斜光で照明する前記第2照明領域であると共に、一方の前記イメージセンサの前記照明部から発する前記法線光の光軸と、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸とが一致しており、
(C)一方の前記イメージセンサの前記照明部と他方の前記イメージセンサの前記照明部とは互いに異なるタイミングで点灯し、
(D)一方の前記イメージセンサの前記照明部の点灯タイミングにおいて、一方の前記イメージセンサの前記受光部で前記傾斜光が前記被読取物で反射した反射光を電気信号に変換し、他方の前記イメージセンサの前記受光部で前記法線光が前記被読取物を透過した透過光を電気信号に変換する
(E)イメージセンサ装置。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2009-135914号公報)には、「画像読取装置及びその制御方法、並びに記憶媒体」(発明の名称)として、図面とともに以下の記載がなされている(下線は強調のため当審で付与した。)。

(1)「【0001】
本発明は、原稿の画像を読取るスキャナ等の画像読取装置及びその制御方法、並びに記憶媒体に関する。」

(2)「【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置を説明するための断面図である。
【0020】
本実施形態の画像読取装置は、図1に示すように、原稿台7に積載された原稿8が、ピックアップローラ6に当接するまで原稿台7が上昇すると、ピックアップローラ6によってピックアップされ、給送ローラ4によって給送される。
【0021】
ピックアップローラ6にて1度に2枚以上の原稿8をピックアップした場合、分離ローラ11により原稿を分離し、1枚ずつ給送する。そして、原稿8は、表面(一方の面)の画像が読取ユニット(第1読取手段)1aによって読み取られ、裏面(他方の面)の画像が読取ユニット(第2読取手段)1bによって読み取られる。読取ユニット1a及び読取ユニット1bは原稿8の搬送路10を挟んで略対向する位置に設けられているが、原稿8の表面を読み取る読取位置と裏面を読み取る読取位置との間は原稿8の搬送方向に所定の距離だけ離れている。」

(3)「【0027】
次に、図2を参照して、読取ユニット1a,1bについて詳述する。
【0028】
読取ユニット1aは、枠体100の搬送路10を向く側に、透明なガラスや樹脂等で形成されたカバー部材101が取り付けられている。枠体100内には、光源110、結像手段120及び撮像手段130が配置されている。撮像手段130は、受光素子132と、それを実装したPCB131からなり、原稿からの反射光を出力信号に変換して出力する。
【0029】
読取ユニット1bは、枠体200の搬送路10を向く側に、透明なガラスや樹脂等で形成されたカバー部材201が取り付けられている。枠体200内には、光源210、結像手段220及び撮像手段230が配置されている。撮像手段230は、受光素子232と、それを実装したPCB231からなり、原稿からの反射光を出力信号に変換して出力する。
【0030】
また、枠体200の搬送路10側を向く部位には、光学的開口部202が読取ユニット1aの結像手段120の光軸121上に位置して設けられている。光源210の光の一部が光学的開口部202を通過して読取ユニット1aの結像手段120に向けて入射する。そして、受光素子132の受光結果、即ち、受光素子132が光源210の光を受光して出力する出力信号に基づいて制御部14による原稿8の検出処理が行なわれる。

(4)「【0033】
図4は、図1又は図3の読取ユニット1aの出力信号生成のタイミングチャートである。
【0034】
図4に示すように、まず、LED等の3色の光源110のうち1色ずつR、G、Bの順番で点灯させる。これにより、それぞれ赤、緑、青の読取情報に対応する出力信号が時間tの間に順次撮像手段130から出力され、該出力信号を基に読取画像の1ライン分が取得される。
【0035】
一方、原稿8を1ライン分搬送するのに要する時間Tに対して時間tを短くして、次のラインの読込み開始までにtwの待ち時間を設けており、対向する読取ユニット1bの光源210をこの時間tw中のOXのタイミングで点灯させる。このとき、原稿8が光を遮っていない場合は、光源210からの光は搬送路を通過して結像手段120に到達し、原稿8に光が遮られている場合、原稿8を透過した僅かな光だけが結像手段120に到達する。
【0036】
すなわち、原稿8の外形形状が影絵のように結像手段120を介して撮像手段130に投影される。撮像手段130は、この画像を読取って出力信号を出力し、この出力信号を基に、制御部14は透過画像の1ライン分を取得する。続いて、読取ユニット1aは、次のラインの読取を開始する。
【0037】
なお、制御部14は、透過画像のうちのあるラインについて1ライン全ての画素が閾値以上の明るさを有していると判断した場合は、このラインを読取ったときに原稿8は読取位置には存在していないと認識する。また、制御部14は、透過画像に閾値以下の明るさの画素が存在すると判断した場合に、例えば閾値を通過する明るさの変化のあった画素は原稿外形画素であると認識する。このような処理を繰り返すことで、原稿8の全幅と全長にわたって読取画像の情報と原稿の外形形状の情報とを得ることができる。」

【図4】



(5)「【0053】
次に、図11を参照して、本発明の第3の実施形態である画像読取装置について説明する。なお、本実施形態の画像読取装置の構成は上記第1の実施形態と同様であるので、重複する部分については図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、読取ユニット1a,1bの光源110,210としてLEDを使用し、LEDが放出する光を原稿8の全幅にわたって照射するために導光体150,250を用いる。
【0055】
光源である不図示のLEDは、図11において導光体150,250の紙面に対して手前側又は奥側の端部に配置されている。導光体150,250は、光を撮像手段130,230の読取幅全体に導く導光部151,251と、光を原稿8に向けて照射する照射部152,252とを有する。
【0056】
そして、本実施形態では、読取ユニット1b側の導光部251を、該読取ユニット1bの光学的開口部202を介して読取ユニット1aの結像手段120の光軸121上に配置する。導光部151,251は、LEDから入射した光線を照射部152,252に略全量導いて射出すると同時に、導光部151,251は、対向する読取ユニットに光線のわずかな部分を射出するように設計されている。また、本実施形態では、導光部251からの光を原稿8の外形形状を検出するための光源として利用できるように、導光部251を読取ユニット1aの結像手段120の光軸121上に配置している。また、導光体には導光部からの射出がほとんどないように設計されたものもある。このような導光体でも完全に射出をなくすことが出来ず、漏れ光を射出している場合には、この漏れ光を光源として用いても良い。
(略)
【0059】
また、本実施形態では、読取ユニット1b側に光学的開口部202を設けたが、これに代えて、読取ユニット1a側に光学的開口部を設けてもよく、更に、図12に示すように、読取ユニット1a,1bの両方にそれぞれ光学的開口部102,202を設けてもよい。」

【図12】


2.引用発明
上記引用文献1に記載された発明について検討する。
(1)上記1.(1)及び(2)によれば、引用文献1には、原稿の画像を読み取る画像読取装置について記載され、当該画像読み取り装置は、表面の画像を読み取る一方の読取ユニットである第1読取手段と、裏面の画像を読み取る他方の読取ユニットである第2読取手段とが、原稿を挟んで略対向する位置に配置されており、表面の読取位置と裏面の読取位置とは搬送方向に所定の距離だけ離れているものである。
よって、引用文献1には、
「原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
表面の画像を読み取る一方の読取ユニットである第1読取手段と、
裏面の画像を読み取る他方の読取ユニットである第2読取手段とが、
原稿を挟んで略対向する位置に配置され、
表面の読取位置と裏面の読取位置とは搬送方向に所定の距離だけ離れている」
画像読取装置が記載されていると認められる。

(2)上記1.(3)によれば、読取ユニット(以下、「読取手段」との表記を用いる。)には、光源と、結像手段と、撮像手段とが配置されていること、前記撮像手段は、受光素子を備え、原稿からの反射光を出力信号に変換して出力すること、また、第2の読取手段の搬送路側には、光学的開口部が、第1の読取手段の結像手段の光軸上に位置して設けられ、第2の読取手段の光源からの光を、第1の読取手段の撮像手段の受光素子により受光すること、が記載されている。
また、上記1.(5)によれば、読取手段の光源について、光を原稿に向けて照射する照射部と、光を撮像手段の読取幅全体に導く導光部とを備えた導光体を設け、第2の読取手段の導光部を、光学的開口部を介して、第1の読取手段の結像手段の光軸上に配置すること、及び、光学的開口部を、読取ユニットの両方に設けることが記載されている。
さらに、図12の記載によれば、照射部により照射する光は、導光部により光学的開口部に導かれる光に対して、所定の角度傾斜していること、及び、一方の読取手段の光源及び導光体は、照射部により照射する光により、当該一方の読取手段の読取位置を照明し、導光部により導かれた光により、光学的開口部を介して、他方の読取手段の読取位置を、原稿に対して垂直に照明する構成が看取される。
よって、引用文献1に記載の画像読み取り装置は、
「両方の読取手段には、光源と、結像手段と、撮像手段とが配置され、
前記撮像手段は、受光素子を備え、前記結像手段で結像させた光を出力信号に変換して出力し、
各読取手段の搬送路側には、対向する他の読取手段の結像手段の光軸上に、光学的開口部が設けられ、
前記光源は、光源からの光を、原稿に向けて照射する照射部と、撮像手段の読取幅全体に導く導光部と、を備えた導光体を有し、
一方の読取手段の前記導光部により導かれる光は、光学的開口部を介して、他方の読取手段の読取位置を、原稿に対して垂直に照明し、
前記照射部により照射する光は、前記導光部により光学的開口部に導かれる光に対して、所定の角度傾斜して、一方の読取手段の読取位置を照明する」
ものであると認められる。

(3)上記1.(4)によれば、画像読取装置は、第1読取手段において、光源を点灯させ、撮像手段により原稿の反射光を読み取り、1ライン分の読取画像を取得した後、次のラインの読取開始前に、第2の読取手段の光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により、原稿の透過光を読み取り、1ライン分の透過画像として外形形状の情報を取得することが記載されている。
よって、引用文献1に記載の画像読み取り装置は、
「第1読取手段において、光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により原稿の反射光を読み取り、1ライン分の読取画像を取得した後、次のラインの読取開始前に、第2読取手段の光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により、原稿の透過光を読み取り、1ライン分の透過画像として外形形状の情報を取得する」
ものであると認められる。

(4)以上まとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成a、構成bなどと称する。

(引用発明)
(a)原稿の画像を読み取る画像読取装置であって、
(b)表面の画像を読み取る一方の読取ユニットである第1読取手段と、 裏面の画像を読み取る他方の読取ユニットである第2読取手段とが、原稿を挟んで略対向する位置に配置され、表面の読取位置と裏面の読取位置とは搬送方向に所定の距離だけ離れており、
(c)両方の読取手段には、光源と、結像手段と、撮像手段とが配置され、前記撮像手段は、受光素子を備え、前記結像手段で結像させた光を出力信号に変換して出力し、
(d)各読取手段の搬送路側には、対向する他の読取手段の結像手段の光軸上に、光学的開口部が設けられ、
(e)前記光源は、光源からの光を、原稿に向けて照射する照射部と、撮像手段の読取幅全体に導く導光部と、を備えた導光体を有し、一方の読取手段の前記導光部により導かれる光は、光学的開口部を介して、他方の読取手段の読取位置を、原稿に対して垂直に照明し、前記照射部により照射する光は、前記導光部により光学的開口部に導かれる光に対して、所定の角度傾斜して、前記一方の読取手段の読取位置を照明し、
(f)第1読取手段において、光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により原稿の反射光を読み取り、1ライン分の読取画像を取得した後、次のラインの読取開始前に、第2読取手段の光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により、原稿の透過光を読み取り、1ライン分の透過画像として外形形状の情報を取得する
(a)画像読取装置

3.引用文献2?5の記載
(1)引用文献2、3
引用文献2(特開2011-44336号公報:段落〔0018〕?〔0038〕、図1?3、6等)、引用文献3(特開2011-182370号公報:段落〔0014〕?〔0030〕、図1?3、6、7等)には、以下の技術事項が開示されている。
「原稿読取装置に用いられる光源装置において、導光体の端部から入射した光を反射及び散乱させて導光体の光出射領域から光を出射する主走査方向に2列の光反射パターンを設け、光源から2方向に向けて光を出射させる技術」

(2)引用文献4
引用文献4(特開平9-261409号公報:段落〔0022〕?〔0026〕、図1等)には、以下の技術事項が開示されている。
「カラー画像読取装置において、互いに波長の異なる複数の光源と、それぞれの波長の光を読み取る複数列の光電変換素子群とを設ける技術」

(3)引用文献5
引用文献5(特開2011-188231号公報:段落〔0057〕?〔0062〕、図9、10等)には、以下の技術事項が開示されている。
「画像読取装置において、蛍光体励起による白色光源と、セルフォックレンズを搭載したイメージセンサとを設ける技術」

4.その他の文献について
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2001-320551号公報:図8等)、引用文献7(特開昭60-146386号公報:図1等)には、以下の技術事項が開示されている。
「一つの光源からの光で、第1照明領域と、該第1照明領域から副走査方向に離れた第2照明領域とを照明し、第1照明領域を透過した透過光を結像手段を介して受光部に導くと共に、第2照明領域で反射した反射光を他の結像手段を介して他の受光部に導く技術」

第5 対比・判断
1.本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明の構成A、Bと、引用発明の構成b?eとの対比
ア.引用発明における「原稿」は、そのイメージが、読取手段の撮像手段により読み取られるから、本願発明における「被読取物」に相当する。

イ.引用発明における「結像手段」は、原稿からの光を結像するから、本願発明における「被読取物からの光を結像するロッドレンズアレイ」に相当するといえ、引用発明における「撮像手段」は、結像手段で結像された光を電気信号に変換するから、本願発明における「ロッドレンズアレイで結像された光を電気信号に変換する受光部」に相当するといえる。

ウ.引用発明における「導光体」を有する「光源」は、「光源からの光を、撮像手段の読取幅全体に導く導光部」を備えているから、本願発明における「被読取物に光を照射する主走査方向に延在する照明部」に相当するといえる。
また、引用発明において、一方の読取手段に備わる「導光体」を有する「光源」は、その導光部により、「当該読取手段の搬送路側に設けられ」た「光学的開口部」を介して、「原稿に対して垂直に照明」するとともに、照射部により、読取位置を「前記導光部により光学的開口部に導かれる光に対して、所定の角度傾斜して照明」するものである。
したがって、引用発明の「導光体」を有する「光源」は、本願発明の「照明部」と、「1つの発光体から発する、前記被読取物の第1照明領域に対して前記被読取物の法線方向から照射する法線光と、前記第1照明領域から副走査方向に離れた第2照明領域に対して前記被読取物の法線方向から定められた角度だけ傾斜させた傾斜光とにより前記被読取物を照明する」点で共通するといえる。

エ.上記ア.?ウ.より、引用発明における「光源」と「結像手段」と「撮像手段」を備える「読取手段」は、本願発明の「照明部」と「ロッドレンズアレイ」と「受光部」を具備する「それぞれの」、「イメージセンサ」に相当するといえ、引用発明の「第1の読取手段」と「第2の読取手段」は、本願発明における、「イメージセンサ、の対」に相当するといえる。
また、引用発明の「第1の読取手段」と「第2の読取手段」は、原稿を挟んで略対向する位置に配置されているから、本願発明の「イメージセンサ、の対」が、「被読取物を挟んで対向」する点で一致する。

オ.引用発明において、「読取手段の搬送路側に設けられ」た「光学的開口部」は、「対向する他の読取手段の結像手段の光軸上」に設けられており、一方の読取手段の光源は、その導光部により、当該光学的開口部を介して、当該読取手段の読取位置とは搬送方向に所定の距離だけ離れ、他方の読取手段の光源が、その照射部により照明する「他方の読取手段の読取位置」を照明するから、引用発明の第1読取手段と第2読取手段との位置関係は、本願発明の「前記イメージセンサは相互に、一方の前記イメージセンサの前記法線光を照射する前記照明部が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイに対向して配置され、一方の前記イメージセンサの前記照明部が前記法線光で照明する前記第1照明領域が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸上の領域であって、他方の前記イメージセンサの前記照明部が前記傾斜光で照明する前記第2照明領域であると共に、一方の前記イメージセンサの前記照明部から発する前記法線光の光軸と、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸とが一致しており、」との構成に相当する位置関係にあるといえる。

カ.よって、引用発明の構成b?eは、本願発明の構成A、Bに相当するといえる。

(2)本願発明の構成C、Dと、引用発明の構成fとの対比
引用発明の構成fは、「第1読取手段において、光源を点灯させ、第1読取手段の撮像手段により原稿の反射光を読み取」る動作を含むから、本願発明の構成Dとは、「一方の前記イメージセンサの前記照明部の点灯タイミングにおいて、一方の前記イメージセンサの前記受光部で前記傾斜光が前記被読取物で反射した反射光を電気信号に変換」する点で共通するといえる。
ただし、引用発明においては、原稿の透過光を読み取る動作は、1ライン分の読取画像を取得した後、次のラインの読取開始前に行われるから、第1の読取手段により反射光を読み取る際に、第2の読取手段により透過光を読み取る動作は行わない。
また、引用発明は、原稿の反射光の読み取りのために、第1読取手段の光源の点灯と、第2読取手段の光源の点灯とが、互いに異なるタイミングであるかどうかが特定されていない。
よって、本願発明の構成C、Dと、引用発明の構成fとは、「一方の前記イメージセンサの前記照明部の点灯タイミングにおいて、一方の前記イメージセンサの前記受光部で前記傾斜光が前記被読取物で反射した反射光を電気信号に変換」する点では共通するものの、その余の点では相違する。

(3)本願発明の構成Eと、引用発明の構成aとの対比
引用発明の「画像読取装置」は、原稿の画像を読み取る点で、本願発明の「イメージセンサ装置」に相当する。

(4)一致点、相違点
以上のとおりであるから、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
それぞれが、
被読取物に光を照射する主走査方向に延在する照明部、前記被読取物からの光を結像するロッドレンズアレイ、およびこのロッドレンズアレイで結像された光を電気信号に変換する受光部を具備し、
前記照明部は、1つの発光体から発する、前記被読取物の第1照明領域に対して前記被読取物の法線方向から照射する法線光と、前記第1照明領域から副走査方向に離れた第2照明領域に対して前記被読取物の法線方向から定められた角度だけ傾斜させた傾斜光とにより前記被読取物を照明する
イメージセンサ、の対を備え、
前記イメージセンサの対は前記被読取物を挟んで対向し、前記イメージセンサは相互に、一方の前記イメージセンサの前記法線光を照射する前記照明部が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイに対向して配置され、一方の前記イメージセンサの前記照明部が前記法線光で照明する前記第1照明領域が、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸上の領域であって、他方の前記イメージセンサの前記照明部が前記傾斜光で照明する前記第2照明領域であると共に、一方の前記イメージセンサの前記照明部から発する前記法線光の光軸と、他方の前記イメージセンサの前記ロッドレンズアレイの光軸とが一致しており、
一方の前記イメージセンサの前記照明部の点灯タイミングにおいて、一方の前記イメージセンサの前記受光部で前記傾斜光が前記被読取物で反射した反射光を電気信号に変換する、
イメージセンサ装置。

<相違点>
本願発明においては、「一方のイメージセンサの照明部と他方のイメージセンサの照明部とは互いに異なるタイミングで点灯」し、「一方のイメージセンサの照明部の点灯タイミングにおいて、一方のイメージセンサの前記受光部で傾斜光が被読取物で反射した反射光を電気信号に変換」する際に、「他方のイメージセンサの受光部で透過光を電気信号に変換」するのに対して、引用発明においては、原稿の反射光の読み取りのために、第1の読取手段の光源と第2の読取手段の光源とが互いに異なるタイミングで点灯するとは特定されておらず、第1の読取手段の光源の点灯タイミングにおいて、第1の読取手段の撮像手段で原稿の反射光を読み取る際には、第2の読取手段の撮像手段で透過光を読み取る動作を行わない点。

2.相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記第4の3.のとおり、引用文献2?5には、画像読取装置についての技術事項が記載されているが、照明部と受光部を具備するイメージセンサを、対として、被読取物を挟んで対向させて用いることは記載されていない。
してみれば、いずれの文献も上記相違点に係る構成を開示しておらず、その示唆も見当たらない。
また、上記相違点に係る構成が、当業者にとって自明であるともいえない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?5に記載の技術事項に基づき、当業者が容易に発明し得たものとすることができない。

なお、前置報告書で引用された引用文献6、7には、上記第4の4.のとおり、被読取物を挟むよう配設された複数の受光素子により、反射光と透過光とを受光する技術が記載されているものの、引用文献6に記載のものは、照明部が一つであるから、被読取物を挟んで対向する二つの照明部を点灯させるタイミングについての開示はない。
また、引用文献7に記載のものは、照明部を二つ有するものの、一方の面に対する照明部及び読取部と他方の面に対する照明部及び読取部とが互いに離間して配置されており、二つの照明部を点灯させるタイミングについて、何ら開示されていない。
してみれば、引用文献6、7は、上記相違点に係る構成を周知技術として開示しているとはいえず、上記相違点に係る構成を採用することは、当業者であっても、引用文献6、7に記載された周知技術に基づき、容易に想到し得るとはいえない。

よって、本願発明は、当業者であっても、引用発明、引用文献2?5に記載された技術事項又は引用文献6、7に記載のような周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明は、上記相違点に係る構成を有するものであるから、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-26 
出願番号 特願2014-541953(P2014-541953)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 篠原 功一
渡辺 努
発明の名称 イメージセンサ装置  
代理人 村上 加奈子  
代理人 倉谷 泰孝  
代理人 伊達 研郎  
代理人 松井 重明  

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