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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62K |
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管理番号 | 1337708 |
審判番号 | 不服2015-9540 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-05-22 |
確定日 | 2018-02-20 |
事件の表示 | 特願2009-134519号「改良され簡素化されたオートバイ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月17日出願公開、特開2009-292467号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成21年6月3日(パリ条約による優先権主張2008年6月4日、イタリア(IT))の出願であって、平成25年6月14日付けで拒絶理由が通知され、平成26年1月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月19日付けで拒絶理由が通知され、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年5月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後当審において、平成28年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年11月15日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月17日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2.当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。 [理由1] 平成28年11月15日になされた手続補正は、下記の点が願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を併せて「当初明細書等」という。)又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 平成28年11月15日になされた補正により、補正前の請求項1の「前記箱型部(20)は、前記舵取り主軸(11)用貫通穴(36)を有する前方部分(35)を備え」は、「前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の先端が開口し」と補正された。 そして、出願人は、平成28年11月15日提出の意見書において、上記補正の根拠として、当初図面の図5を挙げている。 しかしながら、当初明細書を併せて参酌しても、図5の記載からは、「前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の先端が開口し」という事項まで読み取ることはできない。同様に、上記補正により、本願明細書の段落【0016】に、「図5の断面図に明確に示されているように、箱型部20の前方部分35は、前端に横断壁がないことから分かるように、先端が開口しており、オートバイの運転中、空気は、箱型部20内に前方部分35から取り込まれる。」との事項が追加されたが、図5の記載からは、「箱型部20の前方部分35は、前端に横断壁がないことから分かるように、先端が開口しており、オートバイの運転中、空気は、箱型部20内に前方部分35から取り込まれる。」との事項まで読み取ることはできない。 [理由2]この出願は、特許請求の範囲の記載下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定す要件を満たしていない。 記 本願請求項1には、「前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の先端が開口し」と記載されているが、「その(箱型部)の前方部分(35)の先端」とは、どの方向(上下方向、左右方向、前後方向等)における先端を意味しているのか不明である。 よって、本願請求項1に係る発明、及び、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2-11に係る発明は、明確ではない。 第3.当審の判断 1.補正の内容 平成29年6月2日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を補正することを含むものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (補正前の請求項1) 「【請求項1】 エンジン(2)と、サドル支持体(3)と、後輪(5)用支持体(4)と、オートバイの前輪(6)の支持手段(12)に作用的に組み付けられる舵取り主軸(11)と一体化されるハンドルを有する前方方向制御部(10)とを備えるオートバイ(1)において、前方方向制御部(10)は、フィルタボックスの機能が組み込まれた箱型部(20)に接続され、箱型部は、前方方向制御部(10)に箱型部を介してエンジンを接続することによりエンジンに拘束されてエンジンを支持し、後輪(5)用支持体(4)と、サドル支持体(3)とは、エンジン(2)に拘束され、オートバイには、エンジンを前方方向制御部に拘束するための他の部材を備えず、前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の先端が開口し、前記箱型部(20)は、前記エンジン(2)に面する箇所に開口(24)を備えることを特徴とするオートバイ。」 (補正後の請求項1) 「【請求項1】 エンジン(2)と、サドル支持体(3)と、後輪(5)用支持体(4)と、オートバイの前輪(6)の支持手段(12)に作用的に組み付けられる舵取り主軸(11)と一体化されるハンドルを有する前方方向制御部(10)とを備えるオートバイ(1)において、前方方向制御部(10)は、フィルタボックスの機能が組み込まれた箱型部(20)に接続され、箱型部は、前方方向制御部(10)に箱型部を介してエンジンを接続することによりエンジンに拘束されてエンジンを支持し、後輪(5)用支持体(4)と、サドル支持体(3)とは、エンジン(2)に拘束され、オートバイには、エンジンを前方方向制御部に拘束するための他の部材を備えず、前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の前後方向における先端が開口し、前記箱型部(20)は、前記エンジン(2)に面する箇所に開口(24)を備えることを特徴とするオートバイ。」 2.当審拒絶理由の[理由2]について 本件補正は、補正前の「その前方部分(35)の先端が開口し」との事項を、補正後に「その前方部分(35)の前後方向における先端が開口し」と補正するものであり、当審拒絶理由の[理由2]を解消するために、明りょうでない記載の釈明を目的としている。そして、本件補正により、「その前方部分(35)の先端」が「その前方部分(35)の前後方向における先端」であることが明確になったので、当審拒絶理由の[理由2]は解消した。 3.当審拒絶理由の[理由1]について (1)請求人の主張 上記補正された「前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の前後方向における先端が開口し」との事項(以下「事項A」という。)に関し、請求人は、次のように主張してる。 主張ア.平成28年11月15日に提出された意見書の「1.1-2.」において、概ね以下のとおり主張している。 「『図5の断面図に明確に示されているように、箱型部(20)の前方部分(35)は、前端に横断壁がないことから分かるように、先端が開口しており、オートバイの運転中、空気は、箱型部(20)内に前方部分(35)から取り込まれる』旨の事項は、いずれも、図1及び図5から当業者であれば、直ちに理解する事項であるので、新規事項の加入に当たらないと確信します。」 主張イ.平成29年6月2日に提出された意見書の「1.1-2.」において、概ね以下のとおり主張している。 「図1、図2、図3及び図5のいずれにも、箱型部(20)の上壁、下壁及び側壁のいずれにも開口が形成されることを示していません。このことから、エンジン(2)に面する箇所における開口(24)に空気が流れるには、図1、図2、図3及び図5に示す箱型部の前後方向先端は、開口しているに違いないと、当業者は容易に理解するはずです。したがって、『前記箱型部(20)は、その前方部分(35)の前後方向における先端が、開口し』という事項は、新規事項でないと確信いたします。」 (2)検討 請求人は上記(1)のとおり主張するので、上記「事項A」が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否か〔参考判決:知財高裁 平成20年5月30日特別部判決 平成18年(行ケ)第10563号〕について、以下検討する。 (2-1)当初明細書等の記載事項 「事項A」に関する記載として、当初明細書等には次の記載がある。(下線は当審で付与した。) ア.「【0003】 こうした構成は、最適ではあっても、エンジンを適切に冷却できるように、フレームの機械的剛性、フレームの質量、「内部」空気力学(″inner″ aerodynamics)に関して、注意深い考慮を必要とする。これらの要素(剛性、質量及び空気力学)は、こうした考慮を払うのに必要な費用の増加に加えて、相応する制限を設計上の自由性にもたらしている。」 イ.「【0007】 もう一つの目的は、エンジンに向かって通常のラジエータを下向きに流れる空気流が、ラジエータ自体との熱交換を増加するのを最適化する、空気力学的に改良されたオートバイを提供することにある。 【0008】 もう一つの目的は、公知のオートバイに比べて改良され強化された構成を備えるオートバイを提供することにある。 【0009】 さらに、もう一つの目的は、電気回路の配置、冷却回路の配置等において種々の部品の配置を合理化し改善する構成を実現できるオートバイを提供することにある。」 ウ.「【0015】 本発明によれば、エンジン2は、前方方向制御部10に、オートバイに独特な箱型部20によって組み付けられる。好ましくは、この箱型部20は、エアクリーナボックス、すなわちフィルタボックスの機能が組み込まれ、内部空間22(実施形態では、取り入れ空気用フィルタを複数個収容するのに適するもの)を構成する周囲壁21を備え、エンジン2に空気を送る複数個の開口24を備える。こうした内部空間自体は、公知であるので、詳述しない。開口24は、周囲壁21の、下方にあるエンジン2の方を向く部分21Aにエンジンから離れて形成される。」 エ.「【0018】 こうして、箱型部20(通常、図示していないタンクも備える)は、前方方向制御部10に拘束され、エンジン2を支持する。エンジンには、サドル用支持体3と後輪5用支持体4とが、こうして組み付けられる。これは、複数本のボルト30を用いて行う。本発明によるオートバイでは、前輪からエンジン2へ負荷を伝える作用が、箱型部20により行われる一方で、エンジンが、後輪からの負荷と、運転者及び同乗者がいれば同乗者による動的負荷とを支持する。このように構成されたオートバイは、剛性/質量比の点で効率的な構造を有しながら、フレーム、格子構造フレームなどあらゆる形態のフレームを有しない。さらに、本発明によれば、エンジンの冷却が効率的になされ、冷却システム用並びにその他のオートバイの構造的及び/又は機能的部分用の電気回路の配線を合理化できる。」 オ.図1、図2、図3及び図5には、以下の図が示されている。 なお、Fig.5の「符号Aで示す箇所」は説明のために当審で付け加えた。 (2-2)判断 当初明細書の記載事項ア.?エ.には、上記事項Aは記載されていなし、請求人が補正の根拠としている図1、図2、図3及び図5にも、当該事項Aに係る構造は示されていない。 以下、「(1)請求人の主張」を踏まえて、上記事項Aについて検討する。 ア.主張ア.について 「図5の断面図に明確に示されているように、箱型部(20)の前方部分(35)は、前端に横断壁がないことから分かるように、先端が開口しており」と述べているが、図5を参酌しても横断壁があるか否か判断できない。請求人は、二重線で描かれている部分が横断壁であり、一重線で描かれている部分が開口としていると主張しているように見受けられるが、例えば開口(24)も二重線で描かれているから、一重線で描かれていることを根拠として、その部分が開口であるとはいえない。 イ.主張イ.について 「エンジン2に面する箇所における開口(24)に空気が流れるには、図1、図2、図3及び図5に示す箱型部の前後方向先端は、開口しているに違いないと、当業者は容易に理解する」との主張に対し、開口(24)に空気が流れるためには、箱型部(20)のいずれかの周囲壁(21)に開口を備えることまでは自明な範囲として認められるが、「箱型部の前後方向先端は、開口している」に関し、次の理由により自明とはいえない。 ウ.箱型部(20)の周囲壁(21)のうち、Fig.5において下から見たときの面である下壁及びFig.5において反対側からみた側壁を示す図面はないところ、周囲壁(21)の下壁及び反対側からみた側壁に開口が存在する余地が残るものである。特に下壁については、平成28年4月14日付けの拒絶理由で引用した引用文献1(特開平9-123973号公報)の図5に示されるように空気を取り入れるための開口(空気ダクト43)を箱型部(メインフレーム6)の下壁に設ける例も存在することから、Fig.5において当審が付け加えた、例えば符号Aで示す箇所に開口が存在することは排除されるものでなく、図1、図2、図3及び図5を参酌しても、箱型部(20)の前後方向先端に一義的に開口が形成されているとまではいえない。 エ.図1に示されているように、箱型部(20)は、その前方部分(35)で、舵取り主軸(11)用貫通穴(36)を中央部に有し、前方部分(35)は、入れ子式アーム(13)間に組み込まれている構造であるから、操舵により舵取り主軸(11)が回転する際には、入れ子式アーム(13)が箱型部(5)に干渉しないように、該箱型部(5)の前後方向先端は幅狭に設計する必要があるところ、さらに、該箱型部(5)の前方部分(35)には舵取り主軸(11)用貫通穴(36)を有することから、該貫通穴(36)と箱型部(5)の周囲壁(21)との間隙は小さく、箱型部(5)の前後方向における先端を開口したとしても、空気が効率良く箱型部(5)の内部空間(22)に導入される蓋然性が低いと考えられから、下壁や反対側からみた側壁に開口することなく、あえて箱型部(5)の前後方向における先端に開口する必然性は低いといえる。 オ.加えて、審判請求書の3.3-3.で「図5に具体的に示されているように、本発明に係るオートバイの箱型部(20)は、前記舵取り主軸(11)用貫通穴(36)を有する前方部分(35)を備えるため、オートバイの運転中、空気は、箱型部20内に前方部分(35)の貫通穴(36)から取り込まれます。」と述べているように、舵取り主軸(11)用貫通穴(36)から空気が取り込まれる態様も想定しており、このように請求人の主張は首尾一貫していないのは、先端に開口があることの明確な根拠が存在しないということの証左ということもできる。 以上の総合すると、箱型部(20)のいずれかの周囲壁(21)に開口を備えることは自明であったとしても、一義的に「事項A」を導きだすことはできない。 (3)まとめ したがって、「事項A」は、本願の当初明細書等に記載がなされているということはできず、また、上記「事項A」が、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできない。 よって、本件補正においても、当審拒絶理由の[理由1]は依然として解消していない。 第4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-08-03 |
結審通知日 | 2017-08-29 |
審決日 | 2017-09-11 |
出願番号 | 特願2009-134519(P2009-134519) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B62K)
P 1 8・ 121- WZ (B62K) P 1 8・ 561- WZ (B62K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千壽 哲郎、芦原 康裕、中村 則夫 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
島田 信一 出口 昌哉 |
発明の名称 | 改良され簡素化されたオートバイ |
代理人 | 小川 利春 |
代理人 | 泉名 謙治 |