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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1337711
審判番号 不服2016-14038  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-20 
確定日 2018-02-20 
事件の表示 特願2014-561091「導波光効果を低減させる低屈折率材料層を有する発光ダイオード」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月12日国際公開、WO2013/134432、平成27年 3月30日国内公表、特表2015-509669〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月30日に手続補正書が提出され、平成27年8月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月13日付け(同年同月20日送達)で拒絶査定がされた。これに対して、同年9月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、同年12月28日に提出された手続補正書により、審判請求書の請求の理由が補正されたものである。

第2 平成28年9月20日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月20日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?34を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?32と補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項1は、次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
少なくとも1つのnドープ層と、
少なくとも1つのpドープ層と、
複数の量子井戸と量子障壁を含み、前記少なくとも1つのnドープ層と前記少なくとも1つのpドープ層との間に配置された活性領域と、
前記少なくとも1つのnドープ層と前記活性領域の間、又は前記活性領域と前記少なくとも1つのpドープ層の間に配置され、該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層とを含む発光ダイオード。」

(補正後)
「【請求項1】
少なくとも1つのnドープ層と、
少なくとも1つのpドープ層と、
複数の量子井戸と量子障壁を含み、前記少なくとも1つのnドープ層と前記少なくとも1つのpドープ層との間に配置された活性領域と、
前記少なくとも1つのnドープ層と前記活性領域の間、又は前記活性領域と前記少なくとも1つのpドープ層の間に配置され、該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層とを含み、
前記活性領域は、発光波長により特徴付けられ、前記低屈折率材料層は、前記活性領域の発光波長内に設置される、発光ダイオード。」(下線は補正箇所に付加したもの。)

2 本件補正についての検討
(1)補正事項の整理
本件補正を整理すると次のとおりである。
[補正事項1]
補正前の請求項1に記載の「含む発光ダイオード」を、「含み、前記活性領域は、発光波長により特徴付けられ、前記低屈折率材料層は、前記活性領域の発光波長内に設置される、発光ダイオード」とすること。
[補正事項2]
補正前の請求項26に記載の「電子ブロッキング層とを含む発光ダイオード」を、「電子ブロッキング層とを含み、前記活性領域は、発光波長により特徴付けられ、前記超格子及び前記電子ブロッキング層の少なくとも一方は、前記活性領域の発光波長内に設置される、発光ダイオード」とすること。
[補正事項3]
補正前の請求項28に記載の「含む発光ダイオード」を、「含み、前記少なくとも1つの低屈折率材料層は2つ以上の低屈折率材料層を含み、前記低屈折率材料層の少なくとも1つは前記活性領域の上に位置し、前記低屈折率材料層の少なくとも1つは前記活性領域の下に位置している、発光ダイオード」とすること。
[補正事項4]
補正前の請求項30に記載の「前記nドープ層を覆う活性領域を形成し、該活性領域は、インジウム-ガリウム窒化物ベースの材料によって形成された1つ以上の層を含み」を、「前記nドープ層を覆う活性領域を形成し、該活性領域は、インジウム-ガリウム窒化物ベースの材料によって形成された1つ以上の層を含むと共に発光波長を有し」とするとともに、補正前の請求項30に記載の「少なくとも1つの低屈折率材料層を形成することを含み、該少なくとも1つの低屈折率層は、ガリウム窒化物の屈折率より低い屈折率を有することを特徴とし、前記低屈折率層は、前記活性領域による導波光を前記活性領域から発光される全光のうち10%未満に低減させるように構成されている」を、「少なくとも1つの低屈折率材料層を形成することを含み、該少なくとも1つの低屈折率材料層は、ガリウム窒化物の屈折率より低い屈折率を有することを特徴とし、前記少なくとも1つの低屈折率材料層は前記活性領域の発光波長内に設置され、前記少なくとも1つの低屈折率材料層は、前記活性領域による導波光を前記活性領域から発光される全光のうち10%未満に低減させるように構成されている」とすること。
[補正事項5]
補正前の請求項33及び34を削除すること。

(2)新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討
以下、補正事項1?5について検討する。

ア 補正事項1について
(ア)補正事項1により補正された事項は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)の段落【0029】に記載されているから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項1は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「低屈折材料層」について、構成を追加して、限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

イ 補正事項2について
(ア)補正事項2により補正された事項は、当初明細書等の段落【0029】、【0041】?【0045】に記載されているから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項2は、補正前の請求項26に係る発明の発明特定事項である「前記超格子及び前記電子ブロッキング層の少なくとも一方」について、構成を追加して、限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

ウ 補正事項3について
(ア)補正事項3により補正された事項は、当初明細書等の段落【0033】に記載されているから、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項3は、補正前の請求項28に係る発明の発明特定事項である「少なくとも1つの低屈折材料層」について、構成を追加して、限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項3は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

エ 補正事項4について
(ア)補正事項4により補正された事項は、当初明細書等の段落【0029】、【0051】に記載されているから、補正事項4は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項4は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項4は、補正前の請求項30に係る発明の発明特定事項である「少なくとも1つの低屈折材料層」について、「低屈折率層」との2箇所の誤記を訂正するとともに、構成を追加して、限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項4は、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするもの、及び同法同条同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

オ 補正事項5について
補正事項5は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。
また、補正事項5が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすことは明らかである。

新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下において検討する。

(3)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。

イ 引用例の記載と引用発明
(ア)引用例1:特開2008-243904号公報
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-243904号公報(以下「引用例1」という。)には、「半導体発光素子およびその製造方法ならびに発光装置」(発明の名称)に関して、図1?20とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。

a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子およびその製造方法ならびに発光装置に関する。」

b 「【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子は広く表示装置、照明装置、記録装置等に用いられている。特に誘導放出を用いない半導体発光ダイオード(LED)は輝度が高いために表示装置として用いられている。また、最近新たな応用としてLEDを照明として用いる試みがなされている。例えば、蛍光灯の代替照明として、GaNを始めとする窒化物系半導体を用いた緑色から紫外域にかけての短波長の半導体発光素子と、蛍光体を組み合せた固体照明の技術開発と実用化が盛んに進められている。ここで、窒化物系半導体を用いた発光ダイオード(LED)等の発光素子と蛍光体の組み合わせ方を最適化し、太陽光に近い自然な白色光を得ることは、従来の固体照明の代替化という意味で非常に重要な要素となる。
【0003】
一般的な白色光を得る組み合わせとして青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせたものがあるが、近紫外LEDチップとRGB蛍光体とを組み合わせたものは太陽光に最も近く、前者より高演色性を得ることが可能である。
…(略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、従来の白色光を得るための発光素子と蛍光体の組み合わせは複雑な工程を有し、波長制御のための高いIn組成を有する発光素子を得るためには、高度に制御された製造技術を必要とした。
【0009】
また、演色性の高い半導体発光素子は今までのところ知られていない。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、演色性の高い半導体発光素子およびその製造方法ならびに発光装置を提供することを目的とする。」

c 「【0100】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態による半導体発光素子を説明する。
【0101】
一般に、半導体発光素子の構造ではキャリヤを閉じこめるために発光層はその周りの層であるコンタクト層やクラッド層よりもエネルギーバンドギャップが小さい材料を用いていた。通常の材料では屈折率の大きさとエネルギーバンドギャップの大きさは逆の傾向を示すので、屈折率分布は発光層の付近が高屈折率でその周りが低屈折率な構造となっていた。このような構造では発光層で発生した光のうち、水平方向に近い光は、発光層とクラッド層との界面で全反射し発光層内を導光されていく。
【0102】
これに対して、本実施形態の半導体発光素子においては、発光層の屈折率が発光層の周りの層の屈折率よりも小さく、屈折率の高低関係が、今までの構造とは逆になっており、発光層内を導光される光は極端に少ない。本実施形態の半導体発光素子は発光ダイオードであって、その断面を図17に示す。本実施形態の発光ダイオードは、膜厚が150μmのn型GaN基板200と、このGaN基板200上に形成された膜厚が300nmのn型GaN層202と、GaN層202の第1の領域上に形成され、正孔のオーバーフローを防止する膜厚が10nmのn型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなるオーバーフロー防止層204と、オーバーフロー防止層204上に形成され、障壁層と井戸層とが交互に積層された多重量子井戸構造の発光層206と、発光層206上に形成されたp型GaNからなる膜厚が80nmのコンタクト層208と、このコンタクト層208上に設けられたp側電極210と、GaN層202の第1の領域と異なる領域上に形成されたn側電極212と、を備えている。
【0103】
発光層206を構成する障壁層は膜厚が10nmのIn_(0.005)Al_(0.05)Ga_(0.945)Nからなっており、井戸層は膜厚が2.5nmのIn_(0.15)Al_(0.005)Ga_(0.845)Nからなっている。本実施形態の半導体発光素子のエネルギーバンドを図18(a)に示し、屈折率を図18(b)に示す。図18(a)、18(b)からわかるように、本実施形態においては、障壁層と井戸層の平均屈折率がその上下にある層(例えば、オーバーフロー防止層204、n型GaN層202、p型GaNからなるコンタクト層208)の平均屈折率よりも低くなっている。さらにこの場合、n型GaN基板200の平均屈折率よりも低くなっている。本明細書では、m(≧1)個の層からなる構造の平均屈折率Naveとは、
層厚で重み付けした平均屈折率を意味し、すなわち、i(1≦i≦m)番目の層の屈折率をn_(i)、その層厚をd_(i)とすると、
Nave=(n_(1)・d_(1)+・・・+n_(m)・d_(m))/(d_(1)+・・・+d_(m))
で表される値である。
【0104】
従来の構造では、正孔の有効質量が電子の有効質量に比べて重いため、発光層を乗り越えて無効電流となる原因は電子のオーバーフローにあった。しかし、本実施形態のように、膜厚が10nmのIn_(0.005)Al_(0.05)Ga_(0.945)Nからなる障壁層と、膜厚が2.5nmのIn_(0.15)Al_(0.005)Ga_(0.845)Nからなる井戸層とによって発光層を形成すると、量子井戸構造の障壁層のバンドギャップが大きいため、図19の矢印で示した電子および正孔の流れのうち発光層を乗り越え、無効電流を生じさせる原因は正孔であることが本発明者達によって知見された。そこで、本実施形態では、従来の場合と逆にn側に正孔のオーバーフローを防止するオーバーフロー防止層204を設けることにより、発光効率を向上させる構造としている。なお、図19は、本実施形態の半導体発光素子のエネルギーバンド図であり、破線は量子井戸中の量子準位を示し、電子と正孔が再結合することにより発光していることを示す。また、本実施形態においては、オーバーフロー防止層は、バンドギャップが障壁層よりも大きくなるように構成されている。
【0105】
本実施形態においては、図20(a)に示すように、発光層の屈折率が発光層の周りの層の屈折率よりも小さく、屈折率の高低関係が、今までの構造とは逆になっている。このため、図20(b)に示すように、発光層内を導光される光は極端に少なく、さらに半導体発光素子の最外周で反射してきた光は、ある角度より浅い光の場合に発光層に戻ることなく、発光層とその外側の層との間で反射し、外に取り出される。すなわち、本実施形態においては、発光層に戻る光の割合が極端に少なくなり、半導体発光素子の外部に取り出される光が飛躍的に向上する。これに対して、従来は、発光層で発光した光が全方位に放射され、膜面方向に近い方位に放射される光は発光層に戻り、発光層で吸収されることとなる。このため、注入した電流に対して発光し、素子外部に取り出される光が減少する。」

d 図17?20は、以下のとおりである。


(イ)引用発明
上記(ア)の摘記事項cの段落【0104】の記載及び図19並びに技術常識から、引用例1には、発光層206からの発光の波長は、量子井戸中の量子準位により特徴付けられることは当業者には明らかである。

したがって、図17?20を参酌してまとめると、引用例1には、第7実施形態として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「膜厚が300nmのn型GaN層202と、GaN層202の第1の領域上に形成され、正孔のオーバーフローを防止する膜厚が10nmのn型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなるオーバーフロー防止層204と、オーバーフロー防止層204上に形成され、障壁層と井戸層とが交互に積層された多重量子井戸構造の発光層206と、発光層206上に形成されたp型GaNからなる膜厚が80nmのコンタクト層208とを備えており、
膜厚が10nmのIn_(0.005)Al_(0.05)Ga_(0.945)Nからなる障壁層と、膜厚が2.5nmのIn_(0.15)Al_(0.005)Ga_(0.845)Nからなる井戸層とによって発光層を形成し、
発光層206からの発光の波長は、量子井戸中の量子準位により特徴付けられており、
オーバーフロー防止層は、バンドギャップが障壁層よりも大きくなるように構成されており、
障壁層と井戸層の平均屈折率がその上下にある層(例えば、オーバーフロー防止層204、n型GaN層202、p型GaNからなるコンタクト層208)の平均屈折率よりも低くなっているため、発光層内を導光される光は極端に少なく、さらに半導体発光素子の最外周で反射してきた光は、ある角度より浅い光の場合に発光層に戻ることなく、外に取り出され、半導体発光素子の外部に取り出される光が飛躍的に向上する、発光ダイオード。」

ウ 対比
補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「n型GaN層202」、「p型GaNからなるコンタクト層208」、「井戸層」、「障壁層」、「発光層206」は、それぞれ補正発明の「nドープ層」、「pドープ層」、「量子井戸」、「量子障壁」、「活性領域」に相当する。

(イ)引用発明では、「n型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなるオーバーフロー防止層204」について、「オーバーフロー防止層は、バンドギャップが障壁層よりも大きくなるように構成されて」おり、図18にも示されているように、屈折率が「低屈折率」の層であるから、引用発明の当該「オーバーフロー防止層204」は、補正発明の「低屈折率材料層」に相当する。

(ウ)引用発明では、「発光層内を導光される光は極端に少なく、さらに半導体発光素子の最外周で反射してきた光は、ある角度より浅い光の場合に発光層に戻ることなく、外部に取り出され」るものであるから、発光層から発光される全光のうち一部が発光層によって導光されるように構成されたものであるといえる。
したがって、補正発明と引用発明は、「該活性領域から発光される全光のうち一部が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層」を含む点で共通する。

(エ)以上をまとめると、補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも1つのnドープ層と、
少なくとも1つのpドープ層と、
複数の量子井戸と量子障壁を含み、前記少なくとも1つのnドープ層と前記少なくとも1つのpドープ層との間に配置された活性領域と、
前記少なくとも1つのnドープ層と前記活性領域の間に配置され、該活性領域から発光される全光のうち一部が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層とを含む、発光ダイオード。」

<相違点1>
低屈折率材料層について、補正発明では、「該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層」であるのに対し、引用発明では、オーバーフロー防止層204は、「正孔のオーバーフローを防止する膜厚が10nmのn型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなるオーバーフロー防止層204」であり、「発光層内を導光される光は極端に少なく、さらに半導体発光素子の最外周で反射してきた光は、ある角度より浅い光の場合に発光層に戻ることなく、外に取り出され、半導体発光素子の外部に取り出される光が飛躍的に向上する」ものの、引用発明では、オーバーフロー防止層204について、補正発明の上記のような特定はなされていない点。

<相違点2>
低屈折率材料層の設置位置について、補正発明では、「前記活性領域は、発光波長により特徴付けられ、前記低屈折率材料層は、前記活性領域の発光波長内に設置される」のに対し、引用発明では、オーバーフロー防止層204について、そのような特定はなされていない点。

エ 判断
上記相違点1、相違点2について検討する。
(ア)相違点1について
相違点1について、以下のように、相違点1-1と相違点1-2に分けて予備的に検討してから、総合的に検討する。

<相違点1-1>
補正発明では、「該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光される」ものであるのに対し、引用発明では、発光層206(活性領域)から発光される全光のうち、発光層によって導光される割合の数値範囲が特定されていない点。

<相違点1-2>
低屈折率材料層の構成について、補正発明では、「(活性領域による導波光を実質的に低減させるように構成され、)該活性領域から発光される全光のうち一部のみが前記活性領域によって導光されるように構成された」ものであるのに対し、引用発明では、オーバーフロー防止層204(低屈折率材料層)について、発光層206(活性領域)から発光される全光を低減させてうち一部のみが発光層206によって導光されるように構成されたものであるか否かが特定されていない点。

a 先ず、相違点1-1について検討する。
(a)引用発明では、「『発光層内を導光される光は極端に少なく』、『半導体発光素子の外部に取り出される光が飛躍的に向上する』」ものであるから、発光層206から発光される全光のうち、発光層によって導光される光の割合(以下、「発光層206から発光される全光のうち、発光層によって導光される光の割合」を「導光割合η_(act)」という。)をできるだけ低くしようとすることは、当業者が当然に想到し得たことである。

(b)次に、補正発明における、活性領域から発光される全光のうち、「該活性領域によって導光される」割合の上限値である「10%」について検討する。
本願の明細書の発明の詳細な説明には、活性領域内で導光される光の割合の数値範囲、導波光の量(割合)、又は、デバイスの正味の抽出効率について、以下のように記載されている。

「【0021】
図4は、いくつかの実施形態による、LEDの活性領域内で導光される光の割合を量子井戸数の関数としてモデル化した結果を示す図である。このモデル化では、GaNとInGaNとの間に0.2の屈折率段差が用いられている。この値は、当該分野において公知のように、現実的な値である。図4に示すように、8個を超える量子井戸を用いる場合、合計で20%までの出射光が導光される。量子井戸が多数有る場合、GLARの一部が漸近値25%を超える。そのため、LEDの合計出力の有意な部分をGLARとして出射することができ、最終的に吸収されて失われるため、LED性能が低下する。そのため、GLARを回避するか、または合計出射光の5%未満を示すGLAR値にその大きさを制限することが望ましい。」
「【0068】
図22は、図21の構造について、導波光の量2200をLEDの発光波長の関数として示す。図22は、GLAR中に出射される合計出射光の割合をLED発光波長の関数として示す。GLARの割合は、発光波長の増加と共に増加する。これは、量子井戸とGaNとの間の屈折率コントラストが増大することに起因する。図22は、単純な青色発光LED構造にはGLARの問題があることで性能が制限される様子を示す。
【0069】
図23は、図21および図22と構造が同様であるがLIM層を備えた構造について、導波光の量2200をLED発光波長の関数として示す。図23で検討する構造は、Al_(05)GaN/In_(04)GaN超格子、Al_(15)GaN量子井戸障壁および厚さ20nmのAl_(20)GaNEBLを含んでいる。これらの層は全て、他の実施形態において述べたように、LIM層を構成する。導波光の割合は、図22の場合よりも図23の場合の方が実質的に低い。450nmで発光するLEDの場合、GLARの割合は10倍低減できる。
【0070】
このように、本願に記載した技術は、多様な波長範囲およびLED構造に関係している。これらの技術は、市販のLEDエピタキシャルスタックを実質的に超えて性能を向上させることができる。さらに、GLARの割合を低減するためにLIMを用いることにより、LED性能に有意な影響を及ぼすことができる。特定の実施形態において、LIMを用いることにより、デバイスの正味の抽出効率にパーセントで1ポイント以上(例えば、1%?3%、1%?5%、または1%?10%)影響を与えることができる。
【0071】
図24は、LEDについてのモデル化された正味の抽出効率2400を構体中の量子井戸数の関数として示す。検討したLEDは、粗面を有するバルクGaNLEDである。導波光および活性領域再吸収が全く無い場合、その抽出効率は約77%である。LIM層の設計に配慮していない標準的なエピタキシャル構造の場合、抽出効率2402は、実質的に量子井戸数によって影響を受ける。6個の量子井戸を用いると、抽出が約4%だけ低下する。良好に設計されたLIM層を用いると、量子井戸数による抽出効率2404への影響は、ごくわずかである。すなわち、この場合における唯一の影響は、伝播光が量子井戸によって吸収される点である。図24は、本発明の実施形態により、LED性能を1%または数%だけ向上させることが可能であることを示す。」

以上の、本願の明細書の記載及び図4、図22、図23を含めた、本願の明細書及び図面全体の記載を勘案しても、補正発明において、活性領域によって導光される割合を、「該活性領域から発光される全光のうち10%」未満とすることにより、格別の効果を奏することを当業者が認識できる記載は見出せない。
したがって、補正発明における「該活性領域によって導光される」割合の上限値である「10%」が臨界的な意義を有するものとは認められない。

以上のとおりであるから、上記(a)で検討したように、引用発明において、導光割合η_(act)をできるだけ低くして、結果として、当該導光割合η_(act)の数値範囲を、「10%未満」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(c)よって、引用発明において、補正発明のように、「該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光される」ものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

b 次に、相違点1-2について検討する。
引用発明のオーバーフロー防止層204の構成と、発光層206(活性領域)内の導光について、検討する。

(a)引用発明では、「障壁層と井戸層の平均屈折率がその上下にある層(例えば、オーバーフロー防止層204、n型GaN層202、p型GaNからなるコンタクト層208)の平均屈折率よりも低くなっているため、発光層内を導光される光は極端に少なく」されており、発光層206は、「障壁層と井戸層とが交互に積層された多重量子井戸構造」である。すなわち、発光層206の平均屈折率が、「その上下にある層」(発光層206の上下にある層)の平均屈折率よりも低くなっているものである。

ここにおいて、光は屈折率の高い領域に集まる性質をもっており、屈折率が高い活性層を屈折率が低いクラッド層で挟んだ構成の一般的なダブルへテロ構造の発光素子において、活性層で再結合発光した光は屈折率の高い活性層内を進行し(光閉じ込め効果)、活性層内に光波が閉じ込められることは、技術常識である(必要であれば、「光通信素子工学-発光・受光素子-、米津宏雄著、工学図書株式会社、昭和61年12月15日3版、164?167ページ、特に図4.1を参照。)。

(b)上記(a)における検討を勘案すると、引用発明では、発光層206の平均屈折率が「『その上下にある層』の平均屈折率よりも低くなっている」との構成によって、発光層から発光した光は、屈折率の高い、発光層の上下にある層に集まり、「発光層内を導光される光は極端に少なく」との構成となるものであることは明らかであり、かつ、「その上下にある層」は、オーバーフロー防止層204を含むものである。
したがって、引用発明の「発光層内を導光される光が極端に少なく」との構成は、オーバーフロー防止層204の構成にも依存しているといえる。
言い換えると、オーバーフロー防止層204は、発光層内を導光される光が極端に少なくなるように構成されたものであるといえる。

よって、引用発明において、オーバーフロー防止層204は、発光層206(活性領域)から発光される全光のうち一部のみが発光層206によって導光されるように構成されたものであるものと認められ、相違点1-2は実質的なものではない。

c 次に、「該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光されるように構成された少なくとも1つの低屈折率材料層」との相違点1に係る補正発明の構成について、総合的に検討する。

(a)先ず、引用発明において、オーバーフロー防止層204を、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものとすることの容易性について検討する。

(a1)上記b(b)において検討したように、引用発明では、発光層206の平均屈折率が「『その上下にある層』の平均屈折率よりも低くなっている」との構成によって、「『発光層内を導光される光は極端に少なく』、『半導体発光素子の外部に取り出される光が飛躍的に向上する』」との構成となるものであることは明らかであるから、当業者には、引用発明において、発光層、並びに/若しくはオーバーフロー防止層204及びその他の発光層206の上下にある層、それぞれを、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものとすることの動機付けがあるといえる。

(a2)一方、上記「イ(イ)」から、引用発明は、以下の構成を備えているといえる。
(1)発光層
障壁層(膜厚が10nmのIn_(0.005)Al_(0.05)Ga_(0.945)N)と井戸層(膜厚が2.5nmのIn_(0.15)Al_(0.005)Ga_(0.845)N)とが交互に積層された多重量子井戸構造の発光層206、
(2)発光層の上にある層
p型GaNからなる膜厚が80nmのコンタクト層208、
(3)発光層の下にある層
n型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nからなるオーバーフロー防止層204(膜厚が10nm)、
(4)オーバーフロー防止層204の下にある層
n型GaN層202(膜厚が300nm)、

引用発明は、以下の構成も有している。
(5)「オーバーフロー防止層は、バンドギャップが障壁層よりも大きくなるように構成」、
(6)「障壁層と井戸層の平均屈折率がその上下にある層(例えば、オーバーフロー防止層204、n型GaN層202、p型GaNからなるコンタクト層208)の平均屈折率よりも低くなっている」

上記(5)及び(6)の構成を満たしつつ、上記(a1)で当業者には動機付けがあるとされた、オーバーフロー防止層204を、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものとするためには、例えば、(6)における、「低くなっている」程度である、発光層の平均屈折率と、その上下にある層の平均屈折率との差が、必要十分な程度に大きくなるような構成とすればよいことは明らかである。
そのためには、例えば、(5)の構成を満たしつつ、(1)の発光層206の障壁層のInAlGaNのAl組成を大きくするなど変更して、屈折率を小さくする(バンドギャップを大きくする)、井戸層の膜厚に対する障壁層の膜厚を大きくするなどにより、発光層206の平均屈折率を小さくすることができることは明らかである。
及び/又は、(2)のp型GaN層及び(4)のn型GaN層を、GaNよりも屈折率が大きい材料(例えば、InGaN)に換えることにより、発光層206の上下にある層の平均屈折率を大きくすることができることは明らかである。

したがって、発光層の平均屈折率と、その上下にある層の平均屈折率との差を、必要十分な程度に大きくなるような構成とすることにより、オーバーフロー防止層204を導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成とすることは、技術的に可能である。

(a3)一方、上記b(a)で提示した技術常識を示す刊行物の171?172ページ、「図4.4 ダブルヘテロ接合レーザの屈折率分布,電界強度分布および光強度分布」の「(a)対称型DH」、「(b)非対称型DH」を参照するならば、(b)の非対称型DH構造においては、(a)の対称型DH構造と比べると、活性層の厚み方向yの光強度分布P_(x)(y)は、屈折率n_(ri)(y)が大きいp-クラッド層側にシフトすることが理解できる。

(a4)上記(a2)で検討したように、発光層206の平均屈折率と、その上下にある層の平均屈折率との差が、必要十分な程度に大きくなるような構成とするならば、上記(a3)の技術常識を勘案すると、引用例1の図20(a)(上記イ(ア)dを参照。)に示されている光の分布は、発光層の上方側にシフトすることとなるとの知見が当業者にはあるといえる。
したがって、(a1)の動機付け及び上記当業者の知見に基づくと、引用発明において、「その上下にある層(例えば、オーバーフロー防止層204、n型GaN層202、p型GaNからなるコンタクト層208)」として、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。

(a5)そして、上記b(b)において予備的に検討したように、引用発明の「発光層内を導光される光が極端に少なく」との構成は、オーバーフロー防止層204の構成にも依存しているといえるから、引用発明において、オーバーフロー防止層204として、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。

(b)次に、当該「極端に低くなる」ような導光割合η_(act)として、「10%未満」を選択することの容易性について検討する。
上記(a5)で検討したように、引用発明において、オーバーフロー防止層204として、導光割合η_(act)が極端に低くなるような構成のものを採用して、結果として、当該導光割合η_(act)の数値範囲を、「10%未満」とすることは、上記a(b)における予備的な検討と同様な理由で、当業者が適宜なし得たことであると認められる。
したがって、引用発明において、オーバーフロー防止層204として、導光割合η_(act)が「10%未満」となるような構成のものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。

(c)したがって、引用発明において、オーバーフロー防止層204として、補正発明のように、「該活性領域から発光される全光のうち10%未満が前記活性領域によって導光されるように構成された」ものを採用することは、当業者であれば容易になし得たことと認められる。

d 以上のとおりであるから、引用発明において、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことと認められる。

(イ)相違点2について
上記イ(ア)の摘記事項bを参照すると、引用発明は、青色LEDまたは近紫外LEDと蛍光体を用いるなどして、白色光を得ることを前提としているものと認められる。
また、引用発明では、「膜厚が10nmのIn_(0.005)Al_(0.05)Ga_(0.945)Nからなる障壁層と、膜厚が2.5nmのIn_(0.15)Al_(0.005)Ga_(0.845)Nからなる井戸層とによって発光層を形成し、発光層206からの発光の波長は、量子井戸中の量子準位により特徴付けられて」いるから、技術常識を勘案するとともに、引用例1の図19(上記イ(ア)dを参照。)を参照すると、引用発明において、発光波長は、井戸層のバンドギャップ波長より若干短波長であり、かつ、障壁層のバンドギャップ波長より長波長であることは明らかである。また、GaNのバンドギャップ波長は363nmである。
したがって、当該発光波長は、紫色から青色領域程度の波長(380?495nm)であると認められる。
そうすると、引用発明において、発光層206(活性領域)は、膜厚が10nmのオーバーフロー防止層204上に形成されたものであるから、オーバーフロー防止層204は、「活性領域の発光波長内に設置される」ものであることとなる。
したがって、相違点2は、実質的なものではない。
また、仮に、相違点2が実質的なものではないとまではいえないとしても、引用発明において、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(ウ)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、相違点1、2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであり、また、相違点1、2を総合判断しても、補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができない。

オ 独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

3 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?32に係る発明は、平成27年12月11日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?32に記載されている事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1 本件補正の内容」の「(補正前)」に記載したとおりの、その請求項1に記載されている事項により特定されるものである。

2 引用例の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-243904号公報(引用例1、再掲)には、「半導体発光素子およびその製造方法ならびに発光装置」(発明の名称)に関して、図1?20とともに上記「第2 2(3)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(3)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2 本件補正についての検討」で検討した補正発明における限定事項を省いたものである。
そうすると、上記「第2 2 本件補正についての検討」において検討したとおり、補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-27 
結審通知日 2017-09-29 
審決日 2017-10-11 
出願番号 特願2014-561091(P2014-561091)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金高 敏康  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
恩田 春香
発明の名称 導波光効果を低減させる低屈折率材料層を有する発光ダイオード  
代理人 舛谷 威志  

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