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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
管理番号 1337753
審判番号 不服2016-10828  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-19 
確定日 2018-02-21 
事件の表示 特願2011-170604「発電システム内の故障検出及び故障緩和のための熱制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月23日出願公開、特開2012- 36894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月4日(パリ条約による優先権主張 2010年8月5日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年7月30日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、平成29年5月8日付けで当審において拒絶理由が通知され、これに対し、同年8月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年8月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「熱交換器内へと至る流体流路に沿った少なくとも1つの導管に向けて第1の視野を配向するように構成された、前記少なくとも1つの導管の第1の温度を示す第1の信号を出力するように構成された第1の放射センサと、
前記第1の放射センサに通信可能に結合されており、前記第1の信号に基づいて前記第1の温度を判定し、前記第1の温度と閾値範囲とを比較して、前記第1の温度が前記閾値範囲から外れる場合に、前記流体流路又は前記少なくとも1つの導管を通る流体流を調節するように構成されたコントローラと、
前記コントローラに通信可能に結合し、複数の部品を有する第1の電気筺体の内部に向けて第2の視野を配向し、第1の電気筺体の内部の第2の温度を示す第2の信号を出力するように構成された第2の放射センサと、
を備え、
前記コントローラは、前記第2の信号に基づいて前記複数の部品の電気的な故障を検出し、前記電気的な故障が検出されると第2の電気筺体に送電経路を変更するように構成され、
前記コントローラは、前記第1の温度を経時的に解析することにより、前記熱交換器内の故障を特定するように構成される、
システム。」

第3 引用刊行物
1 刊行物1
(1)刊行物1の記載事項
当審における拒絶理由に引用された刊行物であって、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-157502号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本発明はボイラのボイラチューブの温度を監視する装置に係り、特に広い範囲のボイラチューブの温度分布を監視しボイラチューブリーク等の異常の早期発見と運転支援をする予防保全に好適なボイラチューブ温度監視装置に関する。」(2ページ左上欄13ないし17行)

イ 「上記従来技術におけるボイラチューブ温度の測定は、ボイラチューブの各管寄部の温度を熱電対で測定したり、チューブ内部の蒸気温度で代表させたりしている程度であり、燃焼ガスが接触するボイラチューブの温度の、広い範囲に亙っての測定は行われていないので、ボイラチューブの温度管理は、運転員の経験と勘によって行われていた。しかし、最近の火力発電所では、深夜の起動停止と大幅かつ急速な負荷変動を伴う中間負荷運用が多くなり、大幅な温度変化を伴うボイラチューブは洩れ等のトラブルも発生し、ボイラチューブの予防保全のための、チューブの温度分布を計測する等の温度管理が重要となってきている。
本発明の課題は、ボイラチューブの温度を適確に監視し、予防保全及び寿命診断に役立てるにある。」(2ページ右上欄13行ないし同ページ左下欄8行)

ウ 「上記の課題は、ボイラチューブが放射する光を取り込む撮像手段と、該撮像手段が取り込んだ光を電気信号に変換する変換手段と、該電気信号を画像データとして記憶する記憶装置と、該記憶装置に接続され前記画像データに基いてボイラチューブ温度を演算する計算機と、該計算機に接続され前記計算機の演算結果を表示する表示装置と、を含んでなるボイラチューブ温度監視装置により達成される。
撮像手段が、対物レンズ及び受像レンズを備えた光繊維束である請求項1に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
変換手段が、光をアナログ電気信号に変える光電変換装置と、アナログ電気信号をディジタル電気信号に変えるアナログ/ディジタル変換装置と、を備えている請求項1または2に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
撮像手段が、冷却管に挿入されており、該冷却管が火炉壁に装着されている請求項1乃至3に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
撮像手段と変換手段の間に、撮像された光を分岐させる分光器と該分光器に接続された波長透過フィルタが設けられ、該波長透過フィルタに前記変換手段が接続されている請求項1乃至4に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
計算機が、温度分布計算手段,設定温度と測定温度との比較演算手段,該比較演算手段の演算結果に基いて警報を出力する手段,温度分布彩色データ作成手段,プラント量変更メッセージ出力手段,余寿命診断手段のうちのいずれかひとつ以上の手段及びその手段によって得られたデータを表示装置に出力する手段を備えている請求項1乃至5に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
プラント量が、燃料量、空気量、給水量、排ガス再循環量、バーナ角度、スートブロワのうちのいずれかひとつ以上である請求項6に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
余寿命診断手段が、測定されたボイラチューブ温度とボイラ運転時間とに基いて、余寿命診断のための余寿命指標を演算する請求項6に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
〔作用〕
ボイラチューブは、その温度に応じた輻射エネルギを表面から放射している。この輻射エネルギが光の形で撮像手段に画像として取り込まれ、この画像の各画素の輻射エネルギの大きさが、変換手段で電気信号に変換される。変換された電気信号は、画像データとして記憶装置に記憶される。すなわち、記憶装置には、撮像されたボイラチューブの各位置が放射している輻射エネルギの大きさに対応する値を備えた画素からなる画像データが記憶される。
この輻射エネルギの大きさを示す画像データに基いて、計算機が画像データの各画素の値を温度に変換し、表示装置に信号出力する。出力された信号は表示装置に表示され、運転支援と余寿命診断に供される。」(2ページ左下欄10行ないし3ページ右上欄7行)

エ 「以下、本発明の一実施例である2次過熱器の温度監視装置を第1図により説明する。火炉1の上部に2次過熱器2が装着され、火炉壁1の該2次過熱器2とほぼ同じ高さに冷却管3が装着されている。冷却管3には、撮像手段である対物レンズ系および受像レンズ系を備えた光繊維束12が、対物レンズを前記2次過熱器2に対向させて挿入され、該光繊維束12の他端は火炉外に配置された分光器4の入力端に接続されている。該分光器4の2個に分岐した出力端の一方には波長λ_(1)透過フィルタ5が接続され、他方の出力端には波長λ_(2)透過フィルタ6が接続されている。波長λ_(1)透過フィルタ5および波長λ_(2)透過フィルタ6の出力側は、それぞれ光電変換装置7に接続され、光電変換装置7の出力側は信号ケーブル13を介して、アナログ/ディジタル変換装置8の入力側にそれぞれ接続されている。光電変換装置とアナログ/ディジタル変換装置とが変換手段をなしている。光電変換装置7は、モノクロITVカメラのγ補正を解除したものである。アナログ/ディジタル変換装置8の出力側には、ディジタル画像記憶装置9,計算機10,表示装置11が、この順で直列に信号ケーブル13で接続されている。
上記構成の温度監視装置において、2次過熱器2の表面の輻射エネルギ分布が、前記光繊維束12により、画像として分光器4へ伝送される。分光器4に伝送された輻射エネルギ分布の画像は、分光器4に接続された波長λ_(1)透過フィルタ5および波長λ_(2)透過フィルタ6により、波長λ_(1)と波長λ_(2)の輻射エネルギ分布に分光され、それぞれ光電変換装置7でアナログ電気信号に変換されてアナログ画像データとなる。それぞれの波長のアナログ画像データは、アナログ/ディジタル変換装置8でディジタル電気信号に変換されて、ディジタル画像データになり、ディジタル画像記憶装置9に記憶される。ディジタル画像記憶装置9に記憶されている波長λ_(1),λ_(2)のディジタル画像は計算機10に読み込まれ、2色高温計法の原理により、温度分布が求められる。求められた温度分布は、あらかじめ定められている設定温度と比較され、その差の大小に基いてプラント量変更の指示が、計算機10から信号の出力手段である信号ケーブル13を介して、表示装置11に伝送される。表示装置11は伝送された指示に基いてプラント量変更指示の表示を行う。また、表示装置11は、計算機10で演算された2次過熱器2の温度分布を任意の設定温度範囲毎に表示することもできる。」(3ページ右上欄9行ないし同ページ右下欄16行)

オ 「以下、計算機10が備えている処理手段の動作の詳細を第2図を用いて説明する。
(a)温度分布計算手段10a。各波長λ_(1),λ_(2)の輻射エネルギと温度との関係は、Wienの式により、(1),(2)式で示される。
・・・省略・・・
光電変換装置7は、輻射エネルギをリニアにアナログ電気信号に変換するが、輻射エネルギの絶対量を測定しているのではなく、相対強度を測定しているため、温度は、下記(3)式に示すように、波長λ_(1),λ_(2)の輻射エネルギの比を用いて算出される。
・・・省略・・・
前記(3)式を用いることにより、ボイラの起動停止,負荷変化等で火炉1内の酸素濃度等が変化し、波長の実効放射率が変化しても、波長λ_(1),λ_(2)の実効放射率の差の変動は小さいと考えられるので、誤差は最少に抑えられる。また、多少誤差は含まれるが、第3図に示すように、波長λ_(1)透過フィルタ5のみを対物レンズ14に接続し、該波長λ_(1)透過フィルタ5に接続された光電変換装置7により、波長λ_(1)の輻射エネルギの相対強度を計測して、下記(4)式により輻射エネルギの絶対量に補正したのち、前記(1)式により温度を求めてもよい。
・・・省略・・・」(3ページ右下欄17行ないし4ページ左下欄3行)

カ 「(b)温度分布彩色作成手段10b。任意の温度範囲毎に色が設定され、ボイラチューブの温度分布を、表示装置11で疑似カラー表示するためのデータが作成される。例えばT_(1)?T_(2)の温度範囲を青,T_(3)?T_(4)の温度範囲を白,に彩色表示する場合は、温度分布データの各座標点の温度を上記彩色温度範囲と対応させ対応する色に従って、表1に示すようにR,G,B各メモリにデータを設定する。この各座標点のR,G,B情報が表示装置に転送され、彩色が行われる。
・・・表1は省略・・・
(c)設定温度との比較手段10c。
設定温度とボイラチューブ各点の温度を比較する。具体的には下記(5)式に示すように設定温度T_(0)と測定された温度Tの偏差が求められる。
またボイラチューブの温度分布よりその最高温度,最低温度,平均温度が求められる。
ΔT_(t)(i・j)=T_(ot)-T_(t)(i・j) ・・・(5)
但し、ΔT_(t)(i・j);時刻tの(i・j)座標の温度偏差
T_(ot);時刻tの設定温度
T_(t)(i・j);時刻tの(i・j)座標の温度
ボイラの起動停止,負荷変化時等には設定温度は例えば、起動停止からの経過時間により変化するため該経過時間に対する設定温度が、負荷変化率,過去の運転実績等から設定される。
(5)式を用いて設定温度と測定温度とが比較された結果に基き、設定温度以上の温度領域であるボイラチューブの面積が下記(6)式を用いて計算される。
S=Kn ・・・(6)
但し、S;設定温度以上の温度領域面積(m^(2))
n;設定温度以上の温度領域画素数
K;面積換算係数(K=・・・省略・・・)
l;光繊維束対物レンズ系からボイラチューブまでの距離(m)
θ;光繊維束対物レンズ系視野角度
P;計測視野全画素数
(d)プラント量変更メッセージ出力手段10dおよび警報出力手段10f。
上記(c)で設定温度以上の領域があった場合は警報を出力し、ボイラチューブの最高温度,最低温度,平均温度,設定温度以上の領域面積と“2次過熱器温度高”,“燃料量を減らして下さい”,“バーナ角度を下げて下さい”,“排ガス再循環量を減らして下さい”,“2次空気量を減らして下さい”,“バーナゾーンのスートブロワを起動して下さい”,“給水流量を増やして下さい”等のメッセージを表示装置に出力する。
この表示により運転員はボイラの運転状態を考慮してプラント量を変更する。警報の場合は、単なる画像表示のみでなく、音声,点滅信号等も併用してよい。」(4ページ左下欄4行ないし5ページ右上欄2行)

キ 「上記実施例によれば、ボイラチューブの表面温度分布を監視できるので、ボイラチューブの温度管理が容易となり、ボイラの起動停止,負荷変化時のボイラチューブの温度分布が分るため、運転の信頼性が向上した。また、温度異常部等も早期に発見できるため、安全性が向上すると共に、運転員の負担も軽減される。さらに、本実施例の装置で得られるデータを対比することにより、余寿命診断が可能となった。」(5ページ左下欄8行ないし同欄16行)

ク 「本発明によれば、ボイラチューブが発する輻射エネルギに基いて、該ボイラチューブの表面温度が演算されるので、撮像手段の視野範囲内のボイラチューブの表面温度が同時に監視され、監視点の増加が容易であるとともに、高温部,低温部の検出が容易になって、ボイラチューブの事故防止の効果がある。」(5ページ右下欄12行ないし同欄18行)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
ア 上記(1)アないしク及び第1ないし3図の記載によれば、刊行物1には、撮像手段、光電変換装置7、アナログ/ディジタル変換装置8及びディジタル画像記憶装置9からなる輻射エネルギを測定する装置と、計算機10とを備える温度監視装置が記載されていることが分かる。

イ 上記(1)アないしエ、キ及びク並びに第1及び3図の記載によれば、輻射エネルギを測定する装置は、2次過熱器2内へと至る燃焼ガスの流路に沿った少なくとも1つのボイラチューブに向けて所定の視野を配向するように構成されたことが分かる。

ウ 上記(1)ウないしオ及び第1ないし3図の記載によれば、輻射エネルギを測定する装置は、少なくとも1つのボイラチューブの各点の温度を示すディジタル電気信号を出力するように構成されたことが分かる。

エ 上記(1)エ及び第1ないし3図の記載によれば、計算機10は、輻射エネルギを測定する装置におけるディジタル画像記憶装置9と信号ケーブル13により接続されているから、輻射エネルギを測定する装置に通信可能に結合されていることが分かる。

オ 上記(1)エ及びカ並びに第1ないし3図の記載によれば、計算機10は、ディジタル画像記憶装置9からのディジタル電気信号に基づいてボイラチューブ各点の温度を求め、前記ボイラチューブ各点の温度と設定温度とを比較して、前記ボイラチューブ各点の温度と前記設定温度との偏差に基づいて、前記燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は前記少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量を変更する指示を出力するように構成されたことが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)を総合して、本願発明の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「2次過熱器2内へと至る燃焼ガスの流路に沿った少なくとも1つのボイラチューブに向けて所定の視野を配向するように構成された、前記少なくとも1つのボイラチューブの各点の温度を示すディジタル電気信号を出力するように構成された撮像手段、光電変換装置7、アナログ/ディジタル変換装置8及びディジタル画像記憶装置9からなる輻射エネルギを測定する装置と、
前記輻射エネルギを測定する装置に通信可能に結合されており、前記ディジタル電気信号に基づいてボイラチューブ各点の温度を求め、前記ボイラチューブ各点の温度と設定温度とを比較して、前記ボイラチューブ各点の温度と前記設定温度との偏差に基づいて、前記燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は前記少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量を変更する指示を出力するように構成された計算機10と、
を備える温度監視装置。」

2 刊行物2
(1)刊行物2の記載事項
当審における拒絶理由に引用された刊行物であって、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-315930号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【要約】
【目的】 配電盤等の内部の温度異常を自動的、かつ比較的簡単な構成で検知する。
【構成】 発熱体の温度を遠隔的に測定する放射温度計1と、放射温度計1をして測定範囲を面走査させる走査手段(2,4,5)と、上記測定範囲内の各測定ポイントを示す座標P_(X),P_(Y)、該座標における限界温度Tと放射率を設定する設定手段と7、該設定手段7で設定された設定データを記憶する設定データ記憶手段3と、上記放射温度計1により測定された温度を上記放射率で補正して発熱体温度とする補正手段2と、該発熱体温度と上記限界温度とを比較する比較手段2と、該比較手段2による比較結果から異常の有無を判別する判別手段2とを備えて成る。」(【要約】)

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配電盤内部、その他発熱体を備えた部位の温度を自動的、かつ遠隔的に測定して異常の有無の判別ないしは異常箇所の監視を可能にする温度監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】放射温度計やサーモグラフィのアプリケーションの1つとして、配電盤内部の温度異常チェックが考えられる。
【0003】従来、温度を自動的に測定する技術として、電力機器に対してX軸,Y軸に沿ってスキャンされる放射温度計、該電気機器の負荷状態と発熱量温度をパラメータとして設定するパラメータ設定器及び電力検出器を用い、周囲温度条件と運転状態とを加味して温度の異常上昇を検知するものが提案されている(特開昭62-162637号公報)。
【0004】また、特開昭59-50322号公報には、電子部品が組み込まれた基板全体をサーモグラフィで撮像し、予め記憶された正常時のパターンと比較することにより温度異常を検知する装置が記載されている。
更に、特公昭58-254号公報には、電子部品間の接続部を黒色頭部の凹面状ボルトで締め付け、該ボルト頭部からの赤外光を赤外線検出素子で検出することにより異常を検知する装置が記載されている。また、実開昭60-158299号公報には、螺旋状の走行レール、赤外線強度検出器及びデータ処理器を具備し、検出信号の絶対値、あるいは検出信号の微分値と基準値とを比較して異常を検知する設備監視装置が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記特開昭62-162637号公報記載の装置では、放射温度計の他に多くの部材が必要となり、装置の大型化を招いている。また、異常発生箇所を座標データからしか確認出来ないため、具体的な箇所を把握することが困難である。
【0006】特開昭59-50322号公報記載の装置では、正常パターンと測定時のパターンとの比較を正確に同期して行わすための構成が別途要求され、また、特公昭58-254号公報記載の装置では、接続部の数だけの検出素子が必要となり、装置の複雑化を招き、しかも具体的に異常箇所を把握することは困難である。
【0007】実開昭60-158299号公報記載の装置では、走行部の構成が大掛かりとなり、装置の大型化が避けられないとともに、異常箇所を具体的に把握することが困難である。
【0008】それ故、本発明の目的は、簡易な構成にて自動的、かつ確実に温度検出及び異常検出を行い、更に異常箇所を具体的に把握可能にすることである。」(段落【0001】ないし【0008】)

ウ 「【0012】
【作用】請求項1記載の発明によれば、放射温度計は、走査手段によって測定範囲内を面走査させられ、該測定範囲内の発熱体からの放射温度を遠隔的に測定する。測定範囲内の測定すべき測定ポイントを示す座標、該座標における限界温度と放射率の各設定データは予め設定手段により入力され、これらの設定データは設定データ記憶手段に記憶される。そして、上記放射温度計により測定された温度は発熱体の放射率が加味されて補正され、補正後の発熱体温度と上記限界温度とが比較手段で比較される。比較手段による比較結果から測定ポイントの発熱温度が異常かどうかが判別される。
【0013】請求項2記載の発明によれば、第1の比較手段による発熱体温度と上記限界温度との比較に加えて、発熱体温度と温度計により検知された外部温度との温度差と上記限界温度差とが第2の比較手段により比較される。そして、前記第1の比較手段及び第2の比較手段による比較結果から測定ポイントの発熱温度が異常かどうかが判別される。
【0014】請求項3記載の発明によれば、判別手段が異常と判断した測定ポイントは位置記憶手段に順次記憶される。そして、指示手段により、例えばキー操作等で指示されると、走査手段は異常と判断された測定ポイントを放射温度計が測定を行うように作動される。
【0015】請求項4記載の発明によれば、設定手段により設定された材質は内部で放射率に変換され、補正手段は変換された放射率を用いて放射温度計で得られた温度の補正を行う。」(段落【0012】ないし【0015】)

エ 「【0016】
【実施例】図2は、本発明に係る温度監視装置が配電盤内部に装備された状態を示す図である。図において、配電盤20は内部に多数の電力機器が配備され、更に機器間を接続する配線が施されており、放射温度計1はかかる部位の温度を遠隔的に測定するもので、該配電盤20の前面側適所に、後述するようにして配設されている。
【0017】すなわち、配電盤20の前面一方側にはY軸レール30が立直して配置され、該Y軸レール30には水平方向に向けられたX軸レール40が設けられている。このX軸レール40の一方端には上記Y軸レール30の軸方向に摺動可能な構造が形成されている。上記放射温度計1は上記X軸レール40の軸上を水平方向に摺動可能に取り付けられている。また、放射温度計1のセンサ面は所要の指向幅を有して常時配電盤に向けて固定されている。従って、放射温度計1は配電盤20の前面をX軸、Y軸方向に走査、すなわち面走査が可能になされている。
【0018】図3は放射温度計1をX軸、Y軸方向に移動させる具体的な機構を示すものである。31はY軸レール30に貫通する孔を有し、該Y軸レール30の軸方向に摺動可能にされた移動ボックスである。また、Y軸レール30の両端にはプーリ32,33が取り付けられており、その間にワイヤ34が無端状に張架されている。ワイヤ34が無端ワイヤのときはその一点で、一本のワイヤのときはその両端で上記移動ボックス31に固定されている。モータ51は上記プーリ33の回転軸に連結されており、モータ51が回転駆動されると、その駆動力が該プーリ33、ワイヤ34を介して移動ボックス31に伝達され、該移動ボックス31がY軸レール30の軸方向に移動される。移動ボックス31はモータ51の回転方向を切り換えることにより、両方向に移動可能とされる。
【0019】X軸レール40の一方端は上記移動ボックス31に直角、すなわち水平方向に向けて取付け固定されており、移動ボックス31と一体でY軸方向に移動されるようになっている。41はX軸レール40に貫通する孔を有し、該X軸レール40の軸方向に摺動可能にされた移動ボックスである。また、X軸レール40の両端にはプーリ42,43(但し、プーリ43は移動ボックス31に内蔵され、見えていない)が取り付けられており、その間にワイヤ44が無端状に張架されている。このワイヤ44は前記ワイヤ34と同様に上記移動ボックス41に固定されている。なお、図には示していないが、前記移動ボックス31の内部には上記内部プーリ43の回転軸に連結されたモータ52が内設されており、該モータ52が回転駆動されると、その駆動力がプーリ43、ワイヤ44を介して移動ボックス41に伝達され、該移動ボックス41がX軸レール40の軸方向に移動される。移動ボックス41はモータ52の回転方向を切り換えることにより、両方向に移動可能とされる。
【0020】図4は、放射温度計1自身が移動するタイプに代えて、他の部材を移動させることにより放射温度計1による温度測定を可能にするタイプを示している。
【0021】すなわち、図4において、X軸レール40の軸上を移動可能な移動ボックス41にはX軸上に45°回転傾斜されたミラー45が固定配置され、一方、Y軸レール30の上端には他のX軸レール46が上記X軸レール40と平行して取付け固定されている。47はこのX軸レール46に貫通する孔を有し、該X軸レール46の軸方向に摺動可能にされた移動ボックスである。この移動ボックス47には下方ミラー45からの光を反射させてY軸レール30方向へ水平に導くべくXY平面の法線軸上に45°回転傾斜されたミラー48が固定配置されている。移動ボックス41と47とはX軸方向で同じ座標となるように連動構造を備えている。例えば図示しない機構により一体に連結されており、あるいは移動ボックス41と同期的に駆動される駆動源を移動ボックス47に内蔵または外設するようにしてもよい。また、放射温度計1は上記X軸レール46の延長線上の静止位置に配置されている。かかる構成を採ることで、配電盤20内の各測定ポイントからの熱輻射がミラー45,48で反射されて放射温度計1に正確に導かれる。また、このように放射温度計1を配電盤20の隅に配置することで、測定ポイント以外の箇所からの熱輻射の影響を受けず、測定精度の向上が図れる。」(段落【0016】ないし【0021】)

オ 「【0026】図1は本発明に係る温度監視装置のブロック図である。放射温度計1は所定の指向幅を有するように構成されており、発熱体が輻射する赤外光の内、上記指向幅内に輻射される赤外光を受光し、その光強度に応じた電気信号に変換して出力するものである。変換された電気信号は中央演算処理装置(以下、CPUという)2に導かれるようになされている。
【0027】このCPU2は本装置全体を統括的に制御するもので、各部で得られた信号を取り込んだり、所要の部分に制御信号を出力するものである。
【0028】4はモータ駆動回路、5はモータ部である。モータ駆動回路4はCPU2からの制御信号を受けてモータ5部を駆動させ、放射温度計1をX軸,Y軸座標上の測定ポイントに指向させるべく面走査させるものである。モータ部5は前記モータ51,52の双方を含み、駆動されるモータの選択及び駆動量は上記CPU2により指定される。6は配電盤20外部の温度を測定する周囲温度検出器で、測定温度はCPU2に取り込まれるようになされている。7は、図9に示す各種キーを備え、後述する各種設定データの入力設定を行う各種設定キー部である。
【0029】記憶回路3は前記取り込まれた信号、上記各種設定データ、CPU2での演算処理結果を格納するとともに、CPU2の実行すべきプログラムが予め書き込まれているものである。表示器8はLCD,LEDあるいはCRT等からなり、上記設定データの設定のための画面や測定温度状態を必要に応じて、図10に示すように表示するものである。警報器9は温度異常が検知されたときに、ブザー、点灯その他の手段により警告を発するものである。
【0030】信号変換器10は測定結果等必要なデータを電話回線で伝送可能にすべく信号変換を行うもので、変換された信号は遠隔の中央監視室内の表示器11に伝送され、表示されるようになっている。
【0031】次に、各種設定キー部7の詳細について、図9を用いて説明する。各種設定キー部7は、DOWNキー,UPキー,MODEキー,SELECTキー,START/STOPキー及び異常箇所検出キーで構成されている。
【0032】DOWNキー,UPキーは数値等を変更するときに用いられるキーで、DOWNキーが押されると、後述するように表示器8に表示される数値が小さい方向に変更され、逆にUPキーが押されると大きい方向に変更される。MODEキーは表示モードを変更するときに用いられるキー、SELECTキーは変更された数値等を設定するためのキー、START/STOPキーは本装置における放射温度計1による走査を開始あるいは停止させるためのトグル操作キーである。また、異常箇所検出キーは異常箇所があった場合に、放射温度計1を異常箇所に指向させるためのキーで、該異常箇所検出キーが押されることにより異常箇所が具体的に示される。
【0033】図10は、表示器9の表示内容を示すもので、図(A)?図(E)は各表示モードを示している。
【0034】図(A)は基本モードの画面で、本装置の電源が投入されると表示器8の表示画面上に表示される。この基本モードではスキャン(面走査)間隔が表示され、その間隔は前記DOWNキー,UPキーにより適宜の時間間隔に設定することが出来る。図の例では放射温度計1による測定範囲内の面走査が2時間毎に繰り返されるように設定されている。
【0035】図(A)の状態でMODEキーが押されると、図(B)の画面に移る。
【0036】図(B)は温度異常の検出を行うための各種の条件を設定する設定モードで、温度検出を行う測定ポイント(位置PX,PY)、異常温度検出のための限界温度値T、周囲温度に対する限界温度差ΔT及び該測定ポイントに存在する測定対象である発熱体の材質がDOWNキー,UPキーにより設定される。
【0037】通常、図(B)に示すようにX軸上の位置を示すPXが点滅し、この状態でDOWNキー,UPキーを用いてモータ部5(ここではモータ52)を正転、逆転駆動させ、放射温度計1のX座標を、希望する測定ポイントのX座標に一致するまで移動させる。なお、図4のタイプではモータ52によりミラー45,48が移動されて放射温度計1が所定の測定ポイントを指向することとなるが、以後、説明の便宜上、放射温度計1が移動するタイプで説明する。
【0038】そして、放射温度計1を測定ポイントのX座標に一致させてSELECTキーを押すとX軸位置が確定し、その値が表示され、続いて次の入力項目であるPYが点滅する。X軸の場合と同様にしてY軸位置の設定が行われる。座標PX,PYは具体的なセンチメートル(cm)で表示させるようにしてもよい。このようにして設定された測定ポイントのX,Y座標は記憶回路5に記憶される。上記SELECTキーが押されると、次に、限界温度値Tの箇所が点滅し、DOWNキー,UPキーを用いて限界温度値が変更され、所定の値が表示されたところでSELECTキーを押すことにより限界温度値が設定される。このSELECTキーが押されたことにより、続いて、限界温度差ΔTの箇所が点滅し、DOWNキー,UPキーを用いて限界温度差ΔTが変更され、所定の値が表示されたところでSELECTキーを押すことにより限界温度差ΔTが設定される。
【0039】ここで、限界温度値Tと限界温度差ΔTとを設定する意味について述べる。電子機器は、部品がある一定温度以上に上昇したとき異常と判断してよい場合と、周囲温度との温度差がある値以上になったとき異常と判断してよい場合の両方が考えられる。例えば、電子機器、材料の過負荷あるいは接触不良による過熱等は周囲温度に対する相対的な異常温度までの上昇を検出することで検知できる。一方、部品の劣化が生じると、周囲温度との差よりも部品の温度上昇自体が問題となり得る。従って、上記の各判断内容に対して判別を行い、いずれか一方に異常が生じたときは異常と判断するのが実際的である。但し、一方について異常判別を行うことも、上記したように意義を有する。
【0040】最後に、測定ポイントに存在する発熱体の材質をDOWNキー,UPキーを用いて設定する。表示器8には各種の材質が表示され、上記DOWNキー,UPキーを押すことにより材質を適宜変更し、該当する材質が表示されたところで、SELECTキーが押され、材質が設定される。
【0041】ここで、材質を設定する意味について述べる。非接触による温度測定では測定対象物の放射率を考慮する必要がある。すなわち、物体は自己の発熱温度に対して100%の熱輻射を行うものではなく、物体の表面特性に応じた割合の放射エネルギーでもって熱輻射を行うため、赤外線放射温度計で測定した温度は物体の実際の温度に比して低いものとなっている。従って、発熱体の放射率を入力しておき、放射温度計で得られた温度を該放射率で補正する必要がある。各物質はそれぞれ固有の放射率を有し、それらは殆ど知られている。そこで、予め測定ポイントの発熱体の放射率を入力しておくようにしている。
【0042】電力機器の内部はケーブル類、プラスチック類、銅、アルミニウムなどで構成されており、また屋内配線用電線の場合種類は多いが、表面材質はビニール樹脂混合物である。上記の各放射率は、プラスチックが約0.9、銅やアルミニウムの場合表面状態で多少異なるものの0.3程度、ビニール樹脂混合物は約0.9である。
【0043】この場合、放射率自体を数値入力してもよく、また、かかる方法に代えて表示面に各材質を上記DOWNキー,UPキーでサイクリックに表示させ、その内から所要のものをSELECTキーで選択するようにしてもよい。後者の方法では、設定操作が容易、迅速となるが、装置内部に以下の構成が必要となる。すなわち、発熱体の材質と放射率とが対応付けられて予め記憶された記憶手段と、材質から放射率へ変換する変換手段とが備えられている。
【0044】以下、上述と同様な設定操作を繰り返すことで、1番目の測定ポイント,2番目の測定ポイント,……が順次設定される。なお、図(A)に示す基本モードへの復帰は、放射温度計1の走査休止期間中にMODEキーを押すことで行うことが出来るようになされており、これにより走査間隔及び各種設定値の変更が可能となる。
【0045】次に、MODEキーが押されると、図(C)に示す測定の表示モードの画面に移る。ここでは、放射温度計1で測定された温度値の過去における最大値maxと最新の測定値Tとが各測定ポイント毎に対比して表示される。また、表示画面の下側には前記図(B)の設定モードで設定された異常検出条件に従って異常を検知した場合の異常の個数が表示される。CPU2は放射温度計1が走査されて各測定ポイントで得られた測定値に対して異常の有無を判別し、異常と判断したときはその異常の数を積算してその数値及び当該測定ポイントのX,Y座標を記憶回路5に記憶させる。異常の個数が0以外であるときは、異常箇所検知キーを押すことにより、放射温度計1を当該測定ポイントに移動させることが出来るようになされており、これにより具体的な異常箇所を確認することが出来る。異常の個数が2以上のときは、続いて異常箇所検知キーを押すことで、次の異常箇所の測定ポイントに放射温度計1を移動させることが出来るようになされている。なお、図8に示すように配電盤20が二重蓋構造になっている場合には、放射温度計1が移動して停止した位置から該当する異常箇所を容易に確認することが出来る。
【0046】また、図4に示すミラー45,48が移動するタイプのものでは、放射温度計1の場所にLED等の光源を配置しておき、記憶されている異常箇所のX,Y座標にミラーを移動させ、この状態で上記光源を点灯させると、ミラー48,45を経て異常箇所にスポット的に光が導かれ、該異常箇所が的確に指示される。
【0047】なお、上記において、測定ポイントの経時変化をグラフ表示するようにしてもよい。図10(D)はグラフ表示モードの画面で、図(C)の状態で、DOWNキー,UPキーにより表示すべき測定ポイントの選択を行った後、SELECTキーを押すことによりこのモードに移る。図(D)では測定ポイント1が選択されている。このグラフ表示モードでは、上記DOWNキー,UPキーを押すことにより時間軸を拡張、縮小することが出来る。図(E)は時間軸を日単位に拡張した表示例である。なお、SELECTキーを押すと、図(C)の測定表示モードに戻るようになされている。
【0048】また、異常が検知されると警報器9で異常が報知させ、かつ/または信号変換器10から電話回線等を介し中央監視室に異常発生を知らせるようにしてもよく、また測定値を中央監視室へ伝送して表示器11に表示することも出来る。」(段落【0026】ないし【0048】)

カ 「【0059】以上の実施例では、配電盤内部の温度を監視して異常をチェックするようにしたが、更に配電盤の運転状態を検知する電流検知器あるいは電力検知器を設け、これらの検知結果をCPU2に入力して異常の検知をするようにすることもできる。すなわち、電流量あるいは電力量が予め設定された値を越えた場合と、前述の温度異常が発生した場合のいずれか一方が発生した場合に異常と判断する。このようにすることで、配電盤の異常をより早期に検知することが可能となる。」(段落【0059】)

(2)刊行物2記載の技術
上記(1)アないしカ並びに図1ないし4、9及び10の記載によれば、刊行物2には、次の事項からなる技術(以下「刊行物2記載の技術」という。)が記載されていると認める。
「温度監視装置において、中央演算処理装置2に通信可能に結合し、複数の部品を有する配電盤20の内部に向けて所要の指向幅を有するセンサ面が固定されて面走査が可能にされ、配電盤20の内部の温度を示す赤外光の光強度に応じた電気信号を出力するように構成された放射温度計1を備え、前記中央演算処理装置2は、前記光強度に応じた電気信号に基づいて前記複数の部品の温度異常を検出する技術。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・後者における「2次過熱器2」は、前者における「熱交換器」に相当し、以下同様に、「燃焼ガスの流路」は「流体流路」に、「ボイラチューブ」は「導管」に、「所定の視野」は「第1の視野」に、「ボイラチューブの各点の温度」は「導管の第1の温度」に、「ディジタル電気信号」は「第1の信号」に、「撮像手段、光電変換装置7、アナログ/ディジタル変換装置8及びディジタル画像記憶装置9からなる輻射エネルギを測定する装置」又は「輻射エネルギを測定する装置」は「第1の放射センサ」に、

「計算機10」は「コントローラ」に、「温度監視装置」は「システム」に、それぞれ相当する。

・後者における「前記ディジタル電気信号に基づいてボイラチューブ各点の温度を求め」ることは、前者における「前記第1の信号に基づいて前記第1の温度を判定」することに相当する。

・後者における「前記燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は前記少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量」は、前者における「前記流体流路又は前記少なくとも1つの導管を通る流体流」に相当する。

したがって、両者は、
「熱交換器内へと至る流体流路に沿った少なくとも1つの導管に向けて第1の視野を配向するように構成された、前記少なくとも1つの導管の第1の温度を示す第1の信号を出力するように構成された第1の放射センサと、
前記第1の放射センサに通信可能に結合されており、前記第1の信号に基づいて前記第1の温度を判定するコントローラと、
を備えたシステム。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明においては、「前記第1の温度と閾値範囲とを比較して、前記第1の温度が前記閾値範囲から外れる場合に、前記流体流路又は前記少なくとも1つの導管を通る流体流を調節するように構成された」コントローラと、
「前記コントローラに通信可能に結合し、複数の部品を有する第1の電気筺体の内部に向けて第2の視野を配向し、第1の電気筺体の内部の第2の温度を示す第2の信号を出力するように構成された第2の放射センサと、を備え、前記コントローラは、前記第2の信号に基づいて前記複数の部品の電気的な故障を検出し、前記電気的な故障が検出されると第2の電気筺体に送電経路を変更するように構成され、前記コントローラは、前記第1の温度を経時的に解析することにより、前記熱交換器内の故障を特定するように構成される」のに対して、引用発明においては、「前記輻射エネルギを測定する装置に通信可能に結合されており、前記ディジタル電気信号に基づいてボイラチューブ各点の温度を求め、前記ボイラチューブ各点の温度と設定温度とを比較して、前記ボイラチューブ各点の温度と前記設定温度との偏差に基づいて、前記燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は前記少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量を変更する指示を出力するように構成された計算機10」を備える点(以下、「相違点」という。)。

第5 判断
1 相違点について
(1)先ず、本願発明と刊行物2記載の技術との対応関係について、その機能、構造又は技術的意義を考慮して検討する。
・後者における「温度監視装置」は前者における「システム」に相当し、以下同様に、「中央演算処理装置2」は「コントローラ」に、「配電盤20」は「第1の電気筺体」に、「所要の指向幅を有するセンサ面が固定されて面走査が可能にされ」は、「第2の視野を配向し」に、「配電盤20の内部の温度」は「第1の電気筐体の内部の第2の温度」に、「赤外光の光強度に応じた電気信号」は「第2の信号」に、「放射温度計1」は「第2の放射センサ」に、「複数の部品の温度異常」は、過負荷、接触不良及び部品の劣化に起因するものであるから、「複数の部品の電気的な故障」に、それぞれ相当する。

そうすると、刊行物2記載の技術は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項のうち次の事項を備えているといえる。
「システムにおいて、コントローラに通信可能に結合し、複数の部品を有する第1の電気筐体の内部に向けて第2の視野を配向し、第1の電気筐体の内部の第2の温度を示す第2の信号を出力するように構成された第2の放射センサを備え、前記コントローラは、前記第2の信号に基づいて前記複数の部品の電気的な故障を検出すること。」

(2)そして、刊行物1の「計算機が、温度分布計算手段,設定温度と測定温度との比較演算手段,該比較演算手段の演算結果に基いて警報を出力する手段,温度分布彩色データ作成手段,プラント量変更メッセージ出力手段,余寿命診断手段のうちのいずれかひとつ以上の手段及びその手段によって得られたデータを表示装置に出力する手段を備えている請求項1乃至5に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。
プラント量が、燃料量、空気量、給水量、排ガス再循環量、バーナ角度、スートブロワのうちのいずれかひとつ以上である請求項6に記載のボイラチューブ温度監視装置としてもよい。」(2ページ右下欄15行ないし3ページ左上欄7行)との記載によれば、引用発明の監視対象であるボイラチューブを備えた火炉において、燃料量、空気量、給水量、排ガス再循環量、バーナ角度、スートブロワ等のプラント量を所望の量にするにあたり、ファンやポンプ等の電気機械を使用するのは通常のことであるから、ファンやポンプ等の電気機械に電力供給するための配電盤を有していることは明らかである。
そうすると、引用発明において、配電盤の保守・点検を図るべく刊行物2記載の技術を適用することは、当業者が容易に想到できたことである。

(3)そして、複数の電気機器を備え、稼働中の電気機器の電気的な故障が検出されると他の電気機器に送電経路を変更することは、平成29年5月8日付け拒絶理由で引用された特開2008-271737号公報(特に、段落【0005】)を参照。)に記載されているように、本件出願の優先日前に周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
そして、周知技術1は、一部の電気機器の故障が装置全体への影響がないようにすることを可能とするものであるところ、引用発明において、上記周知技術1を適用して、配電盤(第1の電気筐体)の複数の部品に電気的な故障が検出されると他の配電盤(第2の電気筐体)に送電経路を変更するように構成することに、格別の困難性はない。

(4)また、システムにおいて、検出した温度と閾値範囲とを比較して、前記検出した温度が前記閾値範囲から外れる場合に、コントローラが導管を通る流体流を調節するように構成することは、本願の優先日前にごく普通に行われていること(以下、「慣用手段」という。例えば、熱交換器において、測定した導管を通る流体の温度と閾値範囲とを比較して、前記測定した導管を通る流体の温度が前記閾値範囲から外れる場合に、コントローラが導管を通る流体流を調節することにより、前記導管を通る流体の温度が前記閾値範囲から外れないように制御することが、特開2005-226665号公報(特に、段落【0021】ないし【0024】及び図1)、特開平6-281246号公報(特に、段落【0016】ないし【0019】及び図1)、特開2009-121734号公報(特に、段落【0012】及び図1)に示されているので参照のこと。)である。
そして、上記慣用手段により制御の自動化が図れるところ、引用発明は、ボイラチューブ各点の温度と設定温度との偏差に基づいて、燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量を変更する指示を出力するように構成されているから、引用発明において上記慣用手段を適用して、ボイラチューブ各点の温度(第1の温度)と閾値範囲とを比較して、前記ボイラチューブ各点の温度(第1の温度)が前記閾値範囲から外れる場合に、燃焼ガスの流路を通る排ガス流量又は少なくとも1つのボイラチューブを通る水流量(流体流路又は少なくとも1つの導管を通る流体流)を調節するように構成することに、格別の困難性はない。

(5)また、熱交換器の導管を通る流体の温度を経時的に解析することにより、前記熱交換器内の故障を特定することは、本願の優先日前に周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開平4-344064号公報(特に、段落【0011】ないし【0013】及び図1ないし3)を参照。)である。
そして、故障を特定することにより、故障した機器の修繕の容易化を図ることができるから、引用発明において、上記周知技術2を適用することに格別の困難性はない。

(6)そうすると、引用発明において、刊行物2記載の技術、周知技術1及び2並びに慣用手段を適用することにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2 効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術1及び2並びに慣用手段から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の技術、周知技術1及び2並びに慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-19 
結審通知日 2017-09-26 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2011-170604(P2011-170604)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 敏行  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 発電システム内の故障検出及び故障緩和のための熱制御システム  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  

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