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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K |
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管理番号 | 1337898 |
審判番号 | 不服2016-1234 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-28 |
確定日 | 2018-02-28 |
事件の表示 | 特願2013-196804「液晶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 51662〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2008年(平成20年)5月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年5月25日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2010-508739号の一部を、平成25年9月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年 9月24日 :特許出願 平成25年10月10日 :手続補正書の提出 平成26年 9月12日付け:拒絶理由の通知 平成27年 3月19日 :意見書、手続補正書の提出 平成27年 9月25日付け:拒絶査定 平成28年 1月28日 :審判請求書、手続補正書の提出: 平成28年 4月22日付け:前置報告 平成29年 1月25日付け:拒絶理由の通知 平成29年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出 2.本願発明について 本願の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。まとめて、「本願発明」ということもある。)は、平成29年7月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は、以下のとおりのものと認められる。 「[請求項1] (1)式CPGP-n-mの少なくとも1種類の化合物と、 (2)式CY-n-(O)m(ただし式CY-n-(O)mは、式CY-n-OmまたはCY-n-mを表す。)の化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物と、 (3)式CPY-n-(O)m(ただし式CPY-n-(O)mは、式CPY-n-OmまたはCPY-n-mを表す。)の化合物群より選択される少なくとも1種類の化合物と を含有し、 ただし、液晶媒体全体における式CY-n-(O)mおよびCPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも30重量%であり、 ただし、液晶媒体全体における式CPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも11重量%である液晶媒体。 [化1] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1?6の整数を表す。) [化2] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1?6の整数を表す。) [化3] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1?6の整数を表す。)」 3.引用文献等に記載された事項 平成29年1月25日付け当審拒絶理由通知において引用した引用文献等のうち、4a及び4bは以下のものである。 <引用文献等一覧> 4a.特願2006-164256号(特開2008-19425号) 4b.特開2008-19425号公報(引用文献等4aの公開公報) (1)4a及び4bに記載された事項 引用文献4b、及び本願の原出願の国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年(平成19年)5月25日)前の特許出願(国内優先権主張:特願2006-164256号(優先日 平成18年6月14日))であって、本願の原出願の出願後に出願公開(引用文献4b)された特願2007-147836号の、上記国内優先権主張の基礎となる特願2006-164256号(以下、「先願4a」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等4a」という。)には、以下の事項が記載されている。 (4-1)「[請求項1] 第一成分として式(1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2-1)、式(2-2)および式(2-3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 式(1)、式(2-1)、式(2-2)および式(2-3)において、R^(1)、R^(2)、R^(3)、およびR^(5)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R^(4)は独立して炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Bは独立して、1,4-フェニレンまたは1,4-シクロへキシレンであり;Z^(1)、Z^(2)、Z^(3)およびZ^(4)は独立して、単結合、-(CH_(2))_(2)-、-CH_(2)O-、または-OCH_(2)-であり;そして、X^(1)、X^(2)、X^(3)、およびX^(4)は独立して水素またはフッ素であり、X^(1)とX^(2)は同時にフッ素ではなく;X^(5)、X^(6)、X^(7)、X^(8)、X^(9)およびX^(10)は独立して、フッ素または塩素であり、X^(5)とX^(6)は同時に塩素ではなく、X^(7)とX^(8)は同時に塩素ではなく、X^(9)とX^(10)は同時に塩素ではない。 [請求項2] 第一成分として式(1-1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2-1-1)、式(2-1-2)、式(2-1-3)、式(2-2-1)、式(2-2-2)および式(2-3-1)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物を含有し、そして負の誘電率異方性を有する液晶組成物。 式(1-1)、式(2-1-1)、式(2-1-2)、式(2-1-3)、式(2-2-1)、式(2-2-2)および式(2-3-1)において、R^(1)、R^(2)、R^(3)、およびR^(5)は独立して炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R^(4)は独立して、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。」(引用文献4bの請求項1、2、先願明細書等4aの請求項1、2) (4-2)「[請求項9] 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の含有割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第二成分の割合が30重量%から95重量%の範囲である請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。 [請求項10] 第一成分および第二成分に加えて、第三成分として式(3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。 式(3)において、R^(1)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R^(2)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;環Bは1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)およびZ^(2)は独立して、単結合、-(CH_(2))_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-COO-、または-OCO-である。 [請求項11] 第三成分が、式(3-1)、式(3-2)、式(3-3)および式(3-4)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項10に記載の液晶組成物。 式(3?1)、式(3?2)、式(3?3)および式(3?4)において、R^(1)およびR^(2)は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルである。 [請求項12] 第三成分が、式(3?2)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項10または11に記載の液晶組成物。 [請求項13] 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が5重量%から30重量%の範囲である請求項10から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。」(引用文献4bの請求項9?13、先願明細書等4aの請求項9?13) (4-3)「[請求項14] 第一成分、第二成分および第三成分に加えて、第四成分として式(4)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、請求項10から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。 式(4)において、R^(1)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシまたは炭素数2から12のアルケニルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R^(2)は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルであり;X^(1)は水素またはフッ素であり;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレンまたは3-フルオロ-1,4-フェニレンであり;Z^(1)は単結合、-(CH_(2))_(2)-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-COO-、または-OCO-である。 [請求項15] 第四成分が、式(4-1)および式(4?2)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。 式(4-1)および式(4?2)において、R^(1)およびR^(2)は独立して炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。 [請求項16] 第四成分が、式(4-2)で表される化合物群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項15に記載の液晶組成物。 [請求項17] 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から30重量%の範囲である請求項14から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。」(引用文献4bの請求項14?17、先願明細書等4aの請求項14?17) (4-4)「[請求項19] 請求項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。 [請求項20] 液晶表示素子の動作モードが、VAモードまたはIPSモードであり、液晶素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項19に記載の液晶表示素子。」(引用文献4bの請求項19、20、先願明細書等4aの請求項19、20) (4-5)「[0042] 第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aはその他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2-1)、化合物(2-2)、化合物(2-3)、化合物(3)および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。その他の液晶性化合物の中で、シアノ化合物は熱または紫外線に対する安定性の観点から少ない方が好ましい。シアノ化合物のさらに好ましい割合は0重量%である。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。」(引用文献4bの[0042]、先願明細書等4aの[0042]) (4-6)「[0044] 第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類である。 [0045] 表2 化合物の特性 」(引用文献4bの[0044]?[0045]、先願明細書等4aの[0044]?[0045]) (4-7)「[0047] 第三に、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。第一成分の好ましい割合は、上限温度を上げ、そして光学異方性を上げるために5重量%以上であり、下限温度を下げるために40重量%以下である。さらに好ましい割合は10重量%から25重量%の範囲である。特に好ましい割合は7重量%から20重量%の範囲である。 [0048] 第二成分の好ましい割合は、誘電率異方性の絶対値を上げるために30重量%以上であり、下限温度を下げるために95重量%以下である。さらに好ましい割合は30重量%から80重量%の範囲である。特に好ましい割合は35重量%から75重量%の範囲である。 [0049] 第三成分の好ましい割合は、粘度下げるために5重量%から30重量%の範囲である。さらに好ましい割合は5重量%から20重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から15重量%の範囲である。 [0050] 第四成分は、特に小さな粘度を有する組成物の調製に適している。この成分の好ましい割合は5重量%から30重量%の範囲である。さらに好ましい割合は5重量%から25重量%の範囲である。特に好ましい割合は5重量%から20重量%の範囲である。 [0051] 組成物Aにおいて、第一成分、第二成分、第三成分および第四成分の合計の好ましい割合は、良好な特性を得るために70重量%以上である。さらに好ましい割合は90%以上である。組成物Bにおける四つの成分の合計は100重量%である。」(引用文献4bの[0047]?[0051]、先願明細書等4aの[0047]?[0051]) (4-8)「[0066] 第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(5-1)から化合物(5-4)である。光学活性な化合物の好ましい割合は5重量%以下である。さらに好ましい割合は0.01重量%から2重量%の範囲である。 [0067] [0068] 大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく高い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。 [0069] 酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(6)などである。化合物(6)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは1または7である。nが1である化合物(6)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。nが7である化合物(6)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく高い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように600ppm以下である。さらに好ましい割合は、100ppmから300ppmの範囲である。 [0070] 紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように10000ppm以下である。さらに好ましい割合は100ppmから10000ppmの範囲である。 [0071] GH(Guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、0.01重量%から10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、1ppmから500ppmの範囲である。」(引用文献4bの[0066]?[0071]、先願明細書等4aの[0066]?[0071]) (4-9)「[0074] 最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、-10℃以下の下限温度、70℃以上の上限温度、そして0.07?0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、0.08?0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには0.10?0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。 [0075] この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。VAまたはIPSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。」(引用文献4bの[0075]?[0075]、先願明細書等4aの[0074]?[0075]) (4-10)「[0097] 実施例1 5-HBB(3F)B-2 (1-1) 5% 5-HBB(3F)B-3 (1-1) 3% 3-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 18% 5-HB(2F,3F)-O2 (2-1) 10% 5-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 15% 2-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 12% 3-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 12% 5-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 10% 3-HBB-2 (3-1) 8% 3-BB(3F)B-2 (3-2) 2% 3-HB-O2 (4-1) 5% NI=84.3℃;Tc≦-30℃;Δn=0.136;Δε=-5.1. 実施例1の組成物は、比較例1のそれと比較して、大きな屈折率異方性を有した。」(引用文献4bの[0097]、先願明細書等4aの[0097]) (4-11)「[0102] 実施例6 5-HBB(3F)B-2 (1-1) 4% 5-HBB(3F)B-3 (1-1) 4% 3-HB(2F,3F)-O2 (2-1) 5% 3-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 14% 5-HB(2F,3F)-O2 (2-1) 10% 5-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 10% 3-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 10% 3-HBB(2F,3F)-O4 (2-2) 5% 4-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 10% 5-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 14% 3-HHB(2F,3F)-1 (-) 4% 3-HHB(2F,3F)-O2 (-) 5% 5-HHB(2F,3F)-O2 (-) 5% NI=102.4;Tc≦-20℃;Δn=0.132;Δε=-4.6;Vth=2.01V;η=53.4mPa・s;VHR-1=99.0%;VHR-2=97.9%.」(引用文献4bの[0102]、先願明細書等4aの[0102]) (4-12)「[0106] 実施例10 5-HBB(3F)B-2 (1-1) 5% 3-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 11% 5-HB(2F,3F)-O2 (2-1) 11% 5-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 11% 2-HBB(2F,3F)-1 (2-2) 8% 3-HBB(2F,3F)-1 (2-2) 7% 3-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 9% 5-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 9% 3-BB(3F)B-2 (3-2) 5% 7-HB-1 (4-1) 10% V-HHB-1 (-) 10% V2-HHB-1 (-) 4% NI=82.7℃;Tc≦-20℃;Δn=0.128;Δε=-3.6;Vth=2.16V;η=29.0mPa・s;VHR-1=99.2%;VHR-2=98.3%.」(引用文献4bの[0106]、先願明細書等4aの[0106]) (4-13)「[0108] 実施例12 5-HBB(3F)B-2 (1-1) 10% 3-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 18% 5-HB(2F,3F)-O2 (2-1) 10% 5-HB(2F,3F)-O4 (2-1) 15% 2-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 12% 3-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 12% 3-HBB-2 (3-1) 8% 3-BB(3F)B-2 (3-2) 2% 3-HB-O2 (4-1) 3% 3-HHB(2F,3F)-O2 (-) 10% NI=91.8℃;Tc≦-30℃;Δn=0.132;Δε=-3.6;Vth=2.21V;η=47.9mPa・s;VHR-1=99.2%;VHR-2=98.3%.」(引用文献4bの[0108]、先願明細書等4aの[0108]) (4-14)「[0109] 実施例13 5-HBB(3F)B-2 (1-1) 10% 3-H2B(2F,3F)-O2 (2-1) 15% 3-H2B(2F,3F)-O4 (2-1) 10% 5-H2B(2F,3F)-O2 (2-1) 15% 3-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 8% 5-HBB(2F,3F)-O2 (2-2) 7% 2-BB(3F)B-3 (3-2) 4% 1V-HBB-2 (3-1) 4% 5-HBB(2F)-3 (3-3) 4% 5-BB-2 (4-2) 4% 5-BB(2F)-2 (4) 4% V-HHB-1 (-) 5% 1O1-HBBH-4 (-) 5% 5-HB(3F)BH-3 (-) 5% NI=95.7℃;Tc≦-20℃;Δn=0.140;Δε=-2.8;Vth=2.74V;η=41.5mPa・s;VHR-1=98.9%;VHR-2=97.8%.」(引用文献4bの[0111]、先願明細書等4aの[0111]) (2)先願明細書等4a及び引用文献4bに記載された発明 先願明細書等4a及び引用文献4bには、「第一成分として式(1)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として式(2-1)、式(2-2)および式(2-3)で表される化合物群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し(各式及び定義は摘記(4-1)を参照。)、液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から40重量%の範囲であり、第二成分の割合が30重量%から95重量%の範囲であり(摘記4-2、4-7)、そして負の誘電率異方性を有する(摘記4-1)液晶組成物」(以下、「引用発明4-i」という。)が記載されている。 先願明細書等4aに記載された引用発明4-iは、引用文献4bにより公開された発明であるから、適法に優先権主張がされた(優先権が有効である)発明である。また、先願4aの発明者は本願の発明者と同一ではなく、本願の出願の時において、その出願人は先願4aの出願人と同一でもない。 4.特許法第29条の2について (1)本願発明1と先願明細書等4aに記載された発明との対比 本願発明1と、引用発明4-iとを対比する。 引用発明4-iにおける第一成分の「式(1)」で表される化合物、第二成分の「式(2-1)」で表される化合物及び第二成分の「式(2-2)」で表される化合物は、その定義及び具体例の記載(摘記4-1の請求項2等を参照。)からみて、それぞれ本願発明1における「(1)式CPGP-n-m」、「(2)式CY-n-(O)m」、「(3)式CPY-n-(O)m」の化合物を包含するものである。また、引用発明4-iにおける「液晶組成物」は、本願発明1における「液晶媒体」に相当する。さらに、引用発明4-iにおける第二成分の割合は「30重量%から95重量%の範囲」であるが、この数値範囲は本願発明1における「ただし、液晶媒体全体における式CY-n-(O)mおよびCPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも30重量%」との要件と重複する。 そうすると、両者は、 「第一成分として「(1)式CPGP-n-m」(定義は2.「本願発明について」の請求項1を参照。)の化合物群を包含する「式(1)」(定義は摘記(4-1)を参照。)で表される化合物群から選択された少なくとも1種類の化合物と、 第二成分として「(2)式CY-n-(O)m」及び「(3)式CPY-n-(O)m」(いずれも定義は2.「本願発明について」の請求項1を参照。)の化合物群を包含する「式(2-1)」、「式(2-2)」および「式(2-3)」(定義はいずれも摘記(4-1)を参照。)で表される化合物群から選択された少なくとも1種類の化合物と を含有し、 ただし、液晶媒体全体における第二成分の総割合が30重量%から95重量%の範囲である液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点1:本願発明1においては、「(1)式CPGP-n-m」の少なくとも1種類の化合物を含有することが特定されているのに対して、引用発明4-iにおいては、「式(1)」が当該化合物に限られていない点、 相違点2:本願発明1においては、「(2)式CY-n-(O)m」の少なくとも1種類の化合物及び「(3)式CPY-n-(O)m」の少なくとも1種類の化合物を含有することが特定されているのに対して、引用発明4-iにおいては、「式(2-1)」、「式(2-2)」および「式(2-3)」から選ばれるものとされ、上記各化合物に限られていない点 相違点3:本願発明1においては、「ただし、液晶媒体全体における式CPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも11重量%である」ことが特定されているのに対し、引用発明4-iにおいては、そのようなことが明らかでない点 そこで、上記相違点について検討する。 (2)相違点1?3について 先願明細書等4aに記載された実施例1(摘記4-10)について検討すると、実施例1の組成物に含まれる「第一成分」に相当する化合物は、「5-HBB(3F)B-2」及び「5-HBB(3F)B-3」であり、これらはいずれも本願発明1の「(1)式CPGP-n-m」の化合物に相当する。また、実施例1の組成物に含まれる「第二成分」に相当する化合物は「3-HB(2F,3F)-O4」、「5-HB(2F,3F)-O2」及び「5-HB(2F,3F)-O4」という二環型化合物と、「2-HBB(2F,3F)-O2」、「3-HBB(2F,3F)-O2」及び「5-HBB(2F,3F)-O2」という三環型化合物であるところ、前者の二環型化合物はいずれも本願発明1の「(2)式CY-n-Om」の化合物に相当し、後者の三環型化合物はいずれも本願発明1の「(3)式CPY-n-Om」の化合物に相当する。さらに、実施例1の組成物に含まれる上記「第二成分」に相当する三環型化合物の総割合は、12+12+10=34重量%であるから、本願発明1の「ただし、液晶媒体全体における式CPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも11重量%である」という要件を満たしている。なお、念のため、実施例1の組成物に含まれる上記「第二成分」に相当する二環型化合物及び三環型化合物の総割合も確認すると、18+10+15+12+12+10=77重量%であるから、本願発明1の「ただし、液晶媒体全体における式CY-n-(O)mおよびCPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも30重量%」という要件も満たしている。そうすると、先願明細書等4aには、上記相違点1?3に係る構成をすべて満たす具体例が記載されているものと認められる。 同様に、先願明細書等4aに記載された実施例6、10、12(摘記4-10?4-13)について検討すると、いずれも上記相違点1?3に係る構成をすべて満たす具体例であると認められる。 そうすると、上記相違点1?3は、いずれも実質的なものではなく、本願発明1は先願明細書等4aに記載された発明と同一であるといえる。よって、本願発明1は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 5.本願発明の優先権主張の有効性について 当審が通知した平成29年1月25日付け拒絶理由通知においては、特許請求の範囲(平成28年1月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?30)の一部の請求項に係る発明については、優先権主張が有効なものとは認められない旨の判断を示していたところ、その後、平成29年7月27日に提出された手続補正書により特許請求の範囲が補正されたので、改めて、補正後の本願発明1の優先権主張の有効性について検討する。 (1)本願の原出願の優先権主張の基礎出願について 本願の原出願は、2007年(平成19年)5月25日付け欧州特許出願第07010478.1号(以下、「優先基礎出願」という。)を基礎としたパリ条約による優先権主張を伴うものである。優先基礎出願の明細書には、液晶混合物の実施例として、以下のような実施例1?3が記載されており、これら以外の実施例は記載されていない。 「 」(優先基礎出願明細書の第39頁19行?第40頁末行) (2)本願発明1について 本願発明1においては、「ただし、液晶媒体全体における式CPY-n-(O)mの化合物の総割合が少なくとも11重量%である」ことが特定されている。当該発明特定事項は、請求人が平成27年3月19日に提出した意見書において釈明しているとおり、本願明細書に記載された例4、9、10及び13の液晶混合物の組成(下記参照)を根拠として、特許請求の範囲に加入されたものと認められる。 例4([0136]) 「表10 」 例9([0141]) 「表15 」 例10([0142]) 「表16 」 例13([0145]) 「表19 」 ここで、上記例4、9、10及び13は、優先基礎出願の明細書に記載された実施例1?3(上記3.(1)を参照。)のいずれとも異なる実施例であり、本願の原出願の国際出願時の明細書に初めて記載された実施例である。また、優先基礎出願に記載されていた実施例1?3は、いずれも、「CPY-n-(O)m」に相当する化合物を含まない例である。加えて、優先基礎出願の明細書には、CPY-n-(O)m及びその一般式に相当する出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された式IIで表される化合物の配合割合の下限値が11重量%であることを明示した記載は見出せない。 そうすると、例4、9、10及び13を根拠として補正された事項を含む本願発明1については、優先基礎出願の明細書に記載されていた発明とはいえないから、優先基礎出願に基づく優先権主張は有効なものとは認められない。 よって、以下、本願発明1について、本願の原出願の国際出願日(平成20年5月21日)を新規性等の判断の基準日として、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項についても検討する。 6.特許法第29条第1項第3号について (1)本願発明1と引用文献4bに記載された発明との対比 引用文献4bは、本願の原出願の国際出願日(平成20年5月21日)より前の平成20年1月31日に出願公開された特許文献である。そして、上記3.「引用文献等に記載された事項」の(1)及び(2)において検討したとおり、引用文献4bには、「引用発明4-i」が記載されているものと認められる。 そこで、本願発明1と引用発明4-iとを対比すると、上記4.(1)「本願発明1と先願明細書等4aに記載された発明との対比」に記載したのと同様の理由により、両者は上記「相違点1」?「相違点3」の点で一応相違するが、上記4.(2)「相違点1?3について」に記載したのと同様の理由により、相違点1?3はいずれも実質的なものではなく、本願発明1は引用文献4bに記載された発明であるといえる。 よって、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 7.特許法第29条第2項について (1)本願発明1について 仮に、本願発明1と引用発明4-iとが上記相違点1?3の点で相違するものであるとしても、引用文献4bには、液晶組成物に配合される第一成分?第四成分の主要な特性、及びこれらの化合物が液晶組成物の特性に及ぼす主要な効果が説明されており(摘記4-6)、第一成分?第四成分のそれぞれについて、好ましいとされる配合割合とその根拠が記載されており(摘記4-7)、具体的には各成分の配合割合の調整により、液晶組成物の光学異方性、上限温度、下限温度、誘電率異方性の絶対値、粘度、比抵抗等を調整できることが記載されている(摘記4-6、4-7)。また、引用発明4-iの大部分の組成物は-10℃以下の下限温度、70℃以上の上限温度、0.07?0.20の光学異方性を有し、この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有し、アクティブマトリックス素子への使用に適することが記載されており(摘記4-9)、これらの調整項目及び用途は、本願発明と共通するものである。さらに、引用文献4bには、本願発明1における「(1)式CPGP-n-m」、「(2)式CY-n-(O)m」及び「(3)式CPY-n-(O)m」の化合物に相当するすべての化合物を含有する具体例として実施例1、6、10及び12が記載されており、上記の特性値の測定データも記載されている(摘記4-10?4-14)。そうすると、引用文献4bの記載に基づいて、引用発明4-iにおける配合成分の種類及び配合割合を選択、調整することにより、本願発明1に相当する液晶媒体を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、本願明細書に記載された実験データ等を参酌しても、本願発明1が格別顕著な効果を有するものとは認められない。 よって、本願発明1は引用文献4bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 請求人は平成29年7月27日付け意見書において、本願発明の実施例の透明点(cp)及び複屈折率(Δn)の実験データに基づいて、本願発明が「80℃程度以上の高い透明点を実現でき」、「本願実施例においては最低でも84.5℃との高い透明点が実現され」ている旨、及び「本願実施例においては複屈折率(Δn)が0.1088?0.1072で、本願新請求項・・・で規定する0.08?0.13の非常に好ましい範囲内である」旨を主張しているが、引用文献4bに記載された実施例1、6、10、12における透明点(NI=82.7℃?102.4)及び複屈折率(Δn=0.128?0.132)の実験データと比べても、本願発明が格別顕著な効果を奏するものであるとまではいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 8.むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないか、又は第29条第1項第3号に該当し、若しくは同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-28 |
結審通知日 | 2017-10-03 |
審決日 | 2017-10-16 |
出願番号 | 特願2013-196804(P2013-196804) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(C09K)
P 1 8・ 121- WZ (C09K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 努 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
原 賢一 天野 宏樹 |
発明の名称 | 液晶媒体 |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 伊藤 克博 |