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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1337969
審判番号 不服2017-9046  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-21 
確定日 2018-03-27 
事件の表示 特願2013-121458「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-238522、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年6月10日を出願日とする特許出願であって、平成29年2月3日付けで手続補正がされ、同年3月15日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年6月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要

原査定に係る拒絶理由の概要は、次のとおりである。

1.原査定時の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.原査定時の請求項2ないし7に係る各発明は、下記の引用文献1ないし8に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2002-116603号公報
2.特開平7-325490号公報
3.特開2013-92668号公報
4.特開2011-237486号公報
5.特開2013-19962号公報
6.特開2011-59189号公報
7.特開2009-210938号公報
8.特開2011-95315号公報

第3 平成29年6月21日付けの手続補正について

以下のとおり、平成29年6月21日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までに規定されている要件に違反するものではない。

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の記載の請求項5、7を削除すると共に、補正前の請求項1を補正前の請求項5を引用する補正前の請求項6の発明特定事項に限定するものであって、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除と同法同項第2号の請求項の減縮を目的とするものに該当する。

なお、「第4 本願の発明」から「第7 むすび」までに示されているように、補正後の請求項1ないし4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願の発明

本願の請求項1ないし4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成29年6月21日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。

「【請求項1】
トナー像を形成する画像形成部と,
前記画像形成部により形成されたトナー像の最終媒体への転写を行う転写ニップを形成するベルト部材とを有する画像形成装置において,
前記ベルト部材上のトナーを回収するベルトクリーナーを有し,
前記ベルト部材は,弾性層,および,前記弾性層よりも硬いとともに最外周に位置する表面層を有し,複数の支持ローラーに巻き掛けられて回転駆動されるものであり,
前記ベルト部材の外周面に,前記弾性層をオゾンから保護する保護剤を供給する保護剤供給部を有し,
前記保護剤供給部は,正規帯電トナーの帯電極性と同極性に帯電した前記保護剤を供給するものであり,
前記ベルト部材の外周面の前記保護剤供給部により保護剤が供給される供給位置に,保護剤を,前記保護剤供給部から前記ベルト部材に引き付ける向きの電界を発生させるバイアス電圧を印加するバイアス印加部を有し,
前記ベルト部材は,
前記画像形成部よりトナー像の1次転写を受けて最終媒体への2次転写を行う中間転写ベルトであり,
前記ベルト部材の進行方向について,
前記ベルトクリーナーは,前記2次転写が行われる位置よりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置でトナーを回収するものであり,
前記保護剤供給部は,前記ベルトクリーナーよりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置に前記保護剤を供給するものであることを特徴とする画像形成装置。」

なお、本願発明2ないし4は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2002-116603号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は、審決で付した。以下同じ。)

(1)「【0004】ところが、このような画像形成装置では、用いられる中間転写体が加熱による熱酸化や、除電/帯電コロトロンによる放電、記録媒体や各種ロール等からの剥離時に起こる放電等から酸化されていると予測されうる現象により、表面エネルギーが増し、記録媒体との剥離が困難となるという問題点があった。そこで、特開平9-269679号公報や特開平11-24425号公報には、最外層に酸化防止剤を含有した中間転写体を用いることが提案されている。しかしながら、添加された酸化防止剤は、中間転写体の酸化を防止する代わりに自らが化学変化してその効力を失うため、中間転写体に含有された酸化防止剤がすべて化学変化すると酸化防止機能が働かなくなり、効果の持続性に欠けるといった問題点がある。」

(2)「【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 中間転写体を備えたカラー画像形成装置において、酸化防止機能を有する物質(以下、「酸化防止剤」と呼ぶことがある。)を付着させたドナーシートを、中間転写体に接触する部位まで移送し、該中間転写体に接触溶融又は接触させることにより、前記酸化防止機能を有する物質を該中間転写体に供給する手段(以下、「酸化防止剤供給手段」と呼ぶことがある。)を備えることを特徴とするカラー画像形成装置である。」

(3)「【0011】本発明のカラー画像形成装置の一実施形態を図面を参照して説明するが、本発明はこの実施形態に何ら限定されるものではない。図1は、本発明のカラー画像形成装置の一例を示す構成図である。図1に示すカラー画像形成装置には、矢印A方向に循環移動する無端ベルト状の中間転写体22、その中間転写体22を駆動する駆動ロール4、中間転写体22上にトナー像を担持させる感光体1-1?1-4、中間転写体22上のトナー像を加熱溶融する加熱板8、中間転写体22上のトナー像が転写同時定着部に搬送されるタイミングに合わせて、シート状の記録媒体を該転写同時定着部に搬送する給紙装置7、中間転写体22上のトナー像を記録媒体上に転写するとともに定着(転写同時定着)するための加熱加圧ロール対2、画像が形成された記録媒体のこしを利用して、中間転写体22からその記録媒体を剥離するための剥離ロール5、中間転写体22を加熱しつつ張架するための加熱ロールテンショナー3等が配置されている。
【0012】加熱加圧ロール対2の中央には、それぞれ、熱源となるハロゲンランプが配置されている。更に、加熱加圧ロール対2と剥離ロール5との間には、中間転写体22とトナー像と記録媒体とを重ねたまま冷却するための冷却ファン29が配置されている。剥離ロール5と、中間転写体22上にトナー像を担持させる感光体1-1?1-4との間には、本発明の特徴である酸化防止剤供給装置28(酸化防止剤供給手段)が配置されている。酸化防止剤供給装置28の配置される位置は、特に制限されることはないが、中間転写体の移動方向に対して、トナー像が定着された記録媒体と中間転写体とを分離する手段より下流の位置であって、かつ中間転写体の表面に複数色のトナー像を担持させる手段より上流の位置に配置されることが、酸化防止剤を中間転写体表面に直接付着させることが可能である点で好ましい。酸化防止剤供給装置28の詳細については後述する。」

(4)「【0016】図2は、本発明のカラー画像形成装置に用いられる酸化防止剤供給装置(酸化防止剤供給手段)の一例を示す構成図である。図2に示す酸化防止剤供給装置28は、ドナーシート供給ロール31からドナーシート巻取りロール34まで、2つのロール32を介して酸化防止剤を付着させたドナーシート36を移動させる。酸化防止剤供給装置28は、ドナーシート36が中間転写体22に接触する位置にサーマルヘッド33を備え、サーマルヘッド33によりドナーシート36を、酸化防止剤の融点を超える温度まで加熱することにより、中間転写体22の全面にわたって酸化防止剤をドナーシート36から供給するだけでなく、所望の部位、例えば用紙サイズの内側や、外側を選択して酸化防止剤を中間転写体22に供給可能としている。ドナーシート供給ロール31には、所望の長さのドナーシート36が巻き付けられているが、巻きつけられた総てのドナーシート36が使用された場合には、新たなドナーシート供給ロール31及びドナーシート巻取りロール34に交換し、繰り返し酸化防止剤の供給を行うことが可能である。本発明における酸化防止剤供給装置28は、酸化防止剤供給時に、ドナーシート36を中間転写体22に接触させ、その後、ドナーシート36を中間転写体22から離脱させる機能をもたせることが好ましい。」

(5)「【0018】次に、本発明で用いられる酸化防止剤を付着させたドナーシートについて説明する。該ドナーシートは、少なくとも、支持体上に酸化防止剤層を有してなり、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。その他の層としては、例えば、支持体と酸化防止剤層との界面(支持体/酸化防止剤層)を接着させる接着剤層等が挙げられる。前記ドナーシートの支持体としては、従来公知のプラスチックフィルム等のシート状の材料を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、トリアセテート等のプラスチックフィルムが挙げられる。また、熱により溶融した酸化防止剤層が転写されるため、適度の耐熱性、寸法安定性の優れる材料が好ましく、取扱いの観点からポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等が好適であるが、特にこれらに限定されるものではない。また、支持体の透明性については限定されるものではない。また、支持体の厚みは特に限定されないが、作業性等の観点から、好ましくは5?100μmであり、より好ましくは10?50μmである。」

(6)「【0020】前記酸化防止剤は、一般に熱劣化や、光劣化防止を目的にプラスチックやゴムに添加して用いられる酸化防止剤をさし、フェノール系化合物、アミン系化合物、りん系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、酸化防止剤だけでなく、他の酸化防止機能を有しない物質と組み合わせて用いてもよい。前記酸化防止剤としては、なかでも、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、及びりん系化合物が好ましい。」

(7)「【0027】中間転写体22は、ベース層と表面層の2層から構造される周長2112mmのエンドレスフィルム状のものを用いた。ベース層は、カーボンブラックを添加した厚さ80μmのポリイミドフィルムを用いた。体積抵抗率を調整するためにカーボンブラックを20重量%添加した。表面層は、厚さ50μmの付加重合型シリコーンゴムを用いた。本実施例に用いたトナーは、イエロー、マゼンタ、シアン等の色素を含有した熱可塑性のポリエステル系バインダ樹脂で構成し、平均粒子径が7μmのものを用いた。加熱板8は、背面にシリコーンラバーヒータを備え、中間転写体22の移動方向の長さが160mmであり、半径900mmに曲面加工したアルミニウム板を用いた。加熱加圧ロール対2は、アルミニウム製の芯がねロールにシリコーンゴムを2mm被覆し、外径を50mmとしたものを用いた。」

(8)「【0033】・・・27 トナークリーナー・・・」

(9)図1は次のものである。


(10)図1をみると、中間転写体22の回転方向に対して、感光体1-1?1-4、加熱加圧ロール対2、トナークリーナー27、酸化防止剤供給装置28の順で配置されている。

(11)前記各記載を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「中間転写体が酸化されていると予測されうる現象により、表面エネルギーが増し、記録媒体との剥離が困難となるという問題点を解決するための手段として、酸化防止剤供給手段を備えるものであり、無端ベルト状の中間転写体22、その中間転写体22を駆動する駆動ロール4、中間転写体22上にトナー像を担持させる感光体1-1?1-4、中間転写体22上のトナー像を記録媒体上に転写するとともに定着するための加熱加圧ロール対2、剥離ロール5等が配置され、剥離ロール5と、中間転写体22上にトナー像を担持させる感光体1-1?1-4との間には、酸化防止剤供給装置28が配置され、酸化防止剤供給装置28は、ドナーシート36が中間転写体22に接触する位置にサーマルヘッド33を備え、サーマルヘッド33によりドナーシート36を、酸化防止剤の融点を超える温度まで加熱することにより、中間転写体22の全面にわたって酸化防止剤をドナーシート36から供給し、該ドナーシートは、支持体上に酸化防止剤層を有してなり、酸化防止剤は、一般に熱劣化や、光劣化防止を目的にプラスチックやゴムに添加して用いられる酸化防止剤をさし、フェノール系化合物、アミン系化合物、りん系化合物、チオエーテル系化合物等であり、中間転写体22は、ベース層と表面層の2層から構造され、ベース層は、カーボンブラックを添加したポリイミドフィルム、表面層は、付加重合型シリコーンゴムからなり、中間転写体22の回転方向に対して、感光体1-1?1-4、加熱加圧ロール対2、トナークリーナー27、酸化防止剤供給装置28の順で配置されているカラー画像形成装置。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開平7-325490号公報)には、次の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置に関する。」

(2)「【0021】(7).(2)又は(3)又は(4)又は(5)又は(6)において、塗布装置は、中間転写体の移動方向に対して、前記中間転写体のクリーニング装置の下流側で、かつ、像担持体から前記中間転写体への転写部の上流側に設置してあり、前記クリーニング装置の接離手段を有し、前記中間転写体に前記クリーニング装置が当接した時刻をTA、前記中間転写体の走行時に前記クリーニング装置の当接位置が前記塗布装置の入口位置に到達するまでの時間をt1、前記当接位置が前記塗布装置の出口位置を通過するまでの時間をt2、前記クリーニング装置が離間した時刻をTBとしたとき、前記塗布装置の動作開始時刻TCが、TC=TA+t2、前記塗布装置の動作終了時刻TDが、TD=TB+t1のタイミングに前記クリーニング装置及び前記塗布装置の接離手段をそれぞれ動作させることとした(請求項7)。」

(3)「【0037】ベルトクリーニングユニット4よりも更に上流であって、駆動ローラ30が配置されている部位には、紙転写ユニット5が設けられている。この紙転写ユニット5は、紙転写バイアスローラ5-1、ローラークリーニングブレード5-2、及び、偏芯カム5-4を使用したベルトからの接離機構5-3等により構成されている。」

(4)「【0054】(2).請求項2に対応する説明
本例は、潤滑性付与剤の塗布装置の構成に係る。塗布装置は、図2に示すように、潤滑性付与剤を固形化した板状の塗布材12を凹部に支持する支持手段12aと、この支持手段を保持するフレーム12bと、この塗布材12に接触し該塗布材表面に摺擦する関係位置に設けられたブラシローラ13と、このブラシローラ13の、中間転写ベルト2への食い込み量を規制するコロ19a,bから構成されている。」

(5)「【0057】本例では、ステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑性付与剤を溶融し、冷却個化させたものを塗布材として用いている。図2において、ブラシローラ13は軸13Jと連結されたモータからの動力伝達により、反時計まわりの向きに回転するようにしてある。更に、ブラシ接離手段としての、偏芯カム42を回転させることにより、塗布装置全体を図示省略のガイドに添わせて中間転写ベルト2に対して接離させることができる。偏芯カム42の駆動により、図2中の2点鎖線で示す位置に塗布装置を移動させ、ブラシローラ13を中間転写ベルト2から離間させることができる。」

(6)「【0062】(3).請求項3に対応する説明
本例では、図3に示すように、フェルトに潤滑性付与剤としてのステアリン酸亜鉛を含浸させて固形化したフェルトローラ17を用いる。この構成では、中間転写ベルト2の表面に直接、フェルトローラ17を摺接させることになるが、該ローラ表面にはフェルト部分と塗布材部分が共存しており、この両者の比率、すなわち、フェルトの植毛密度によって塗布量の調節を行うことができる。」

(7)前記各記載を総合すると、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「塗布装置は、中間転写体の移動方向に対して、前記中間転写体のクリーニング装置の下流側で、かつ、像担持体から前記中間転写体への転写部の上流側に設置し、中間転写ベルト2の回動方向上、感光体と接している転写領域よりも上流の位置にはベルトクリーニングユニット4が設けられ、ベルトクリーニングユニット4よりも更に上流であって、駆動ローラ30が配置されている部位には、紙転写ユニット5が設けられ、潤滑性付与剤の塗布装置は、ステアリン酸亜鉛を主成分とする潤滑性付与剤を固形化した板状の塗布材12に接触し該塗布材表面に摺擦する関係位置に設けられたブラシローラ13を用いるもの、又は、フェルトに潤滑性付与剤としてのステアリン酸亜鉛を含浸させて固形化したフェルトローラ17を用いるもののいずれかからなる画像形成装置。」

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2013-92668号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0019】
図1には、本発明に好適に用いられる中間転写ベルトの一実施形態における層構成を示す。ただし、この構成に限定されるものではない。
本実施形態では、比較的屈曲性が得られる剛性な基層11の上に柔軟な弾性層12が積層され、必要に応じてその最表面(基層11と反対側の最表面)には表層13が積層されている。
なお、後述するように図示を省略しているが弾性層12の側面(基層11との接着面が主面であり、この主面に対して垂直な面である。)には表面処理が施されている。」

(2)「【0045】
(表層13)
次に、上記弾性層12の上に積層させた表層13について説明する。弾性層12の表面に何らかの表面処理を施すことによってトナー転写性や耐久性を向上させられることが分かっている。」

(3)「【0083】
図10は、本発明に係る中間転写ベルトを装備する画像形成装置を説明するための要部模式図である。
図10に示す中間転写ユニット500は、複数のローラに張架された中間転写体である中間転写ベルト501などにより構成されている。この中間転写ベルト501の周りには、2次転写ユニット600の2次転写電荷付与手段である2次転写バイアスローラ605、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーニングブレード504、潤滑剤塗布手段の潤滑剤塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ505などが対向するように配設されている。」

(4)「【0093】
このようにして感光体ドラム200上に順次形成されたBk、C、M、Yのトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に順次位置合わせされて1次転写される。これにより、中間転写ベルト501上に最大で4色が重ね合わされたトナー像(トナー画像513;フルカラー画像)が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ610のニップで待機している。
そして、2次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501と2次転写バイアスローラ605によりニップが形成された2次転写部に、上記中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ610が駆動されて、転写紙ガイド板601に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
【0094】
このようにして、転写紙Pが2次転写部を通過すると、2次転写電源802によって2次転写バイアスローラ(転写手段)605に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト501上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(2次転写)される。この転写紙Pは、転写紙ガイド板601に沿って搬送されて、2次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ606との対向部を通過することにより除電された後、ベルト構成部であるベルト搬送装置210により定着装置270に向けて送られる。
【0095】
そして、この転写紙Pは、定着装置270の定着ローラ271、272のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置270は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
【0096】
一方、上記ベルト転写後の感光体ドラム200の表面は、感光体クリーニング装置201でクリーニングされ、上記除電ランプ202で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を2次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、帯電チャージャ503により帯電された後にベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。該ベルトクリーニングブレード504は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
【0097】
このベルトクリーニングブレード504の上記中間転写ベルト501の移動方向上流側には、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材502が設けられている。このトナーシール部材502は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード504から落下した落下トナーを受け止めて、該落下トナーが上記転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材502は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード504とともに、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離される。
【0098】
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布される。該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト501のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ505及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離されるようになっている。」

(5)前記各記載を総合すると、引用文献3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「中間転写ベルトは、比較的屈曲性が得られる剛性な基層11の上に柔軟な弾性層12が積層され、必要に応じてその最表面(基層11と反対側の最表面)には表層13が積層され、表層13は、弾性層12の表面に何らかの表面処理を施すことによってトナー転写性や耐久性を向上させるものであり、感光体ドラム200上に順次形成されたトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に1次転写され、2次転写部に、中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかり、2次転写され、トナー像を2次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされ、残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布され、該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている画像形成装置。」

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献4(特開2011-237486号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0006】
また、近年、弾性転写ベルトを有する画像形成装置の使用に際して、坪量の大きい厚紙や超厚紙等の記録媒体が用いられるようになった。弾性転写ベルトを有する画像形成装置に、厚紙や超厚紙等の坪量の大きい記録媒体が使用された場合には、多色トナー画像を記録媒体に2次転写する際に、弾性転写ベルトの外周面上において、記録媒体に接触する部分と接触しない部分との間に圧力差が生じ、特に、記録媒体周縁の外周面において、大きなひずみが発生する。
【0007】
画像形成装置の使用に際して、弾性転写ベルトにこのようなひずみ差の発生が繰り返されると、弾性転写ベルトの弾性層にクラックが発生し、画像乱れが発生してしまうという問題があった。」

(2)「【0016】
本願発明の画像形成装置によれば、記録媒体が2次転写ニップ部において挟持される際、すなわち、弾性層を有する転写ベルト上のトナー画像が2次転写される際に、記録媒体に隣接する転写ベルトの外周面上の領域において記録媒体の坪量に応じた担持量の無色トナーMTを担持することができるので、弾性層を有する転写ベルトに発生するひずみ差を軽減することによって、転写ベルトにクラックが発生することを防止でき、これにより、記録媒体の画像乱れを防止することができる。」

(3)「【0020】
画像形成装置1は、図1に示されるように、中間転写ベルト17を備えており、この中間転写ベルト17の外周面領域には、中間転写ベルト17の搬送方向Tに沿って、各々、無色トナー画像、イエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像及びブラックトナー画像を形成する5つの画像形成ユニット30L、30Y、30M、30C及び30Kが並ぶよう設けられている。さらに、中間転写ベルト17の搬送方向Tにおける最下流位置の画像形成ユニットであるブラックトナーに係る画像形成ユニット30Kより下流側の位置には、2次転写部14が設けられており、中間転写ベルト17の搬送方向Tにおける2次転写部14より下流側の位置には、中間転写ベルト17上における未転写トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング手段18Tが設けられている。また、2次転写部14における記録媒体搬送方向下流側(図1中上方側)の位置には、定着装置21が設けられている。また、画像形成装置1は、各画像形成工程を制御する制御部50と、各画像形成工程において必要なデータを記憶するメモリ501とを有する。」

(4)「【0030】
1次転写部15Lは、中間転写ベルト17を介して像担持体10Lの表面に押圧された状態で1次転写ニップ部を形成するよう配設された1次転写部材と、この1次転写部材に接続された、例えば、定電流電源よりなる転写電流供給装置(図示せず)とにより構成されている。1次転写部材は、例えば、ローラー形状である1次転写ローラー151Lとすることができる。
【0031】
1次転写ローラー151Lは、中間転写ベルト17が1次転写ニップ部を通過する方向に直行する方向、すなわち、中間転写ベルト17の幅方向に垂直に配置することができる。なお、ここでの垂直とは、略垂直を含む概念である。
【0032】
また、1次転写ニップ部とは、1次転写が行われる転写ニップ部のことであり、例えば、中間転写ベルト17と、一方向に伸びた形状である1次転写ローラー151等の転写部材とによって形成されるニップ部のことである。
【0033】
1次転写部15Lは、例えば、転写電流供給装置によって1次転写ローラー151Lに1次転写電流が供給されることにより、像担持体10L上に形成された無色トナー像を、中間転写ベルト17に転写する、いわゆる接触転写方式とすることができる。なお、記録媒体Pに画像を転写する際には、例えば、1次転写ニップ部に搬送された記録媒体Pの種別に応じた適切な転写電流となるように、制御部50によって1次転写ローラー151Lに印加される電圧が調節される。
【0034】
像担持体クリーニング手段18Lは、クリーニングブレードを有する。クリーニングブレードは、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分が支持部材によって支持されると共に、先端部分が像担持体10Lの表面に当接されるよう設けられている。クリーニングブレードの基端側から伸びる方向は、当接箇所における像担持体10Lの回転による搬送方向Tと反対方向である、いわゆるカウンター方向とすることができる。
【0035】
なお、画像形成ユニット30Lは、例えば、像担持体10Lと、帯電装置11Lと、現像部13Lとを一体として不図示のフレームに支持され、着脱可能な構成とすることができる。
【0036】
他の画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kの各々については、イエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像及びブラックトナー画像(有色トナー画像)を形成する現像部13Y、13M、13C及び13Kが、現像剤として、無色トナーを含む現像剤の代わりにそれぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー(有色トナー)を含む現像剤が用いられることの他は、無色トナー画像に係る画像形成ユニット30Lと同様の構成とされている。」

(5)「【0039】
中間転写ベルト17は、基層173と、基層173上に弾性材料より形成される弾性層172と、弾性層172上に樹脂材料により形成される表面層を有しており、例えば、表面抵抗率が1×10^(4)?1×10^(12)Ω/□である半導電性を有する無端状のベルトにより構成される。中間転写ベルト17の表面抵抗率は、抵抗測定器「ハイレスターIP」(油化電子製)を用い、常温常湿(温度20±1℃、湿度50±2%)環境下において、電圧100Vを10秒間印加した後の計測値である。
【0040】
基層173は、ポリイミドに、カーボンブラックや金属粉末などを含む導電性付与剤を添加し、遠心成型することによって形成される。例えば、ポリイミドとしては、熱硬化性ポリイミド、変性ポリイミドなどを用いることができる。また、基層173は、例えば、ポリアミドイミド、ポリカーボネート等の樹脂に導電性付与剤を添加することにより形成してもよい。
【0041】
弾性層172は、基層173に、NBRゴム(アクリロニトリルブタジエンゴム)にカーボンブラックや金属粉末などを含む導電性付与剤を添加したものを塗布することで形成される。また、弾性層172は、例えば、クロロプレン、ウレアゴム、シリコンゴム及びEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)等の伸縮性を有する弾性材料から形成してもよい。弾性層172の厚さは、100μm?200μmの範囲とすることができ、弾性層172のヤング率は、1MPa?7MPaの範囲とすることができる。
【0042】
表面層171は、弾性層172の表面にPTFE(ポリ4フッ化エチレン)等の離型性フィラーを含有したウレタン樹脂をスプレー塗布することで形成される。表面層の厚さは、2μm?20μmの範囲とすることができる。」(審判註:前記「表面抵抗率が1×10^(4)?1×10^(12)Ω/□」の「□」は文字化けしたものと解されるが、公報の原文のままとした。)

(6)「【0055】
なお、このような表面層171及び弾性層172のひずみは、記録媒体Pにおける2次転写ニップ部の伸びる方向と直行する辺、つまり、記録媒体Pの搬送方向に平行な辺において多く発生する。これは、記録媒体Pが2次転写ニップ部において挟持される際に、記録媒体Pにおける2次転写ニップ部の伸びる方向と直行する辺の方が記録媒体Pの搬送方向に平行な辺よりも、記録媒体Pからの圧力を受ける時間が相対的に長いことによる。
【0056】
画像形成装置1において、制御部50は、記録媒体Pが2次転写ニップ部において挟持される際、すなわち、2次転写ベルト17上の多色トナー画像が2次転写される際に、図4及び図5に示されるような、記録媒体Pにおける2次転写ニップ部の伸びる方向(ベルト幅方向)と直行する辺に隣接する表面層171上の領域(図4、以下、第2領域DNR)及び記録媒体Pの搬送方向に平行な辺に隣接する表面層171上の領域(図5、以下、第1領域DIR)に無色トナーMTを担持させる。」

(7)前記各記載を総合すると、引用文献4には以下の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「トナー画像を記録媒体に2次転写する際に、弾性転写ベルトの外周面上において、記録媒体に接触する部分と接触しない部分との間に圧力差が生じ、特に、記録媒体周縁の外周面において、大きなひずみが発生し、弾性転写ベルトの弾性層にクラックが発生するので、弾性層を有する転写ベルト上のトナー画像が2次転写される際に、記録媒体に隣接する転写ベルトの外周面上の領域において記録媒体の坪量に応じた担持量の無色トナーMTを担持することで、弾性層を有する転写ベルトに発生するひずみ差を軽減し、転写ベルトにクラックが発生することを防止するものであり、中間転写ベルト17の搬送方向Tに沿って、各々、無色トナー画像、イエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像及びブラックトナー画像を形成する5つの画像形成ユニット30L、30Y、30M、30C及び30Kが並ぶよう設けられ、画像形成ユニット30Kより下流側の位置には、2次転写部14が設けられ、2次転写部14より下流側の位置には、中間転写ベルトクリーニング手段18Tが設けられ、1次転写部15Lは、転写電流供給装置によって1次転写ローラー151Lに1次転写電流が供給されることにより、像担持体10L上に形成された無色トナー像を、中間転写ベルト17に転写し、画像形成ユニット30Lは、像担持体10Lと、帯電装置11Lと、現像部13Lとを一体としてフレームに支持され、他の画像形成ユニット30Y、30M、30C、30Kの各々については、イエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像及びブラックトナー画像(有色トナー画像)を形成する現像部13Y、13M、13C及び13Kが、現像剤として、無色トナーを含む現像剤の代わりにそれぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー(有色トナー)を含む現像剤が用いられることの他は、無色トナー画像に係る画像形成ユニット30Lと同様の構成とされ、中間転写ベルト17は、基層173と、弾性層172と、樹脂材料により形成される表面層を有し、表面層171は、弾性層172の表面にPTFE(ポリ4フッ化エチレン)等の離型性フィラーを含有したウレタン樹脂をスプレー塗布することで形成され、2次転写ベルト17上の多色トナー画像が2次転写される際に記録媒体Pにおける2次転写ニップ部の伸びる方向と直行する辺に隣接する表面層171上の領域及び記録媒体Pの搬送方向に平行な辺に隣接する表面層171上の領域に、無色トナーMTを担持させる画像形成装置。」

5.引用文献5について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献5(特開2013-19962号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0022】
図1には、第1実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、上下方向(矢印V方向)の下側から上側へ向けて、記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12の上に設けられ用紙収容部12から供給される記録媒体の一例としての記録用紙Pに画像形成を行う画像形成部14と、画像形成部14の上に設けられ読取原稿Gを読み取る原稿読取部16と、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、を含んで構成されている。なお、以後の説明では、画像形成装置10の装置本体10Aの上下方向を矢印V方向、水平方向を矢印H方向と記載する。」

(2)「【0039】
また、中間転写ベルト68を挟んで感光体62の反対側には、感光体62の外周面に形成されたトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写させる一次転写ロール67が設けられている。一次転写ロール67は、感光体62と中間転写ベルト68とが接触する位置(これを一次転写位置QAとする)から中間転写ベルト68の移動方向下流側に離れた位置で、中間転写ベルト68の裏面に接触している。そして、一次転写ロール67は、電源(図示省略)から通電されることにより、接地されている感光体62との電位差で感光体62のトナー画像を中間転写ベルト68に一次転写するようになっている。
【0040】
さらに、中間転写ベルト68を挟んで補助ロール69の反対側には、中間転写ベルト68上に一次転写されたトナー画像を記録用紙Pに二次転写させる転写手段の一例としての二次転写ロール71が設けられており、二次転写ロール71と補助ロール69との間が記録用紙Pへトナー画像を転写する二次転写位置QBとされている。二次転写ロール71は、接地されると共に中間転写ベルト68の表面に接触しており、電源(図示省略)から通電された補助ロール69と二次転写ロール71との電位差で、中間転写ベルト68のトナー画像を記録用紙Pに二次転写するようになっている。なお、二次転写位置QBは、前述の搬送路28(図1参照)の途中に設定されている。
【0041】
また、中間転写ベルト68を挟んで駆動ロール61の反対側には、中間転写ベルト68の二次転写後の残留トナーを回収するクリーニングブレード59が設けられている。クリーニングブレード59は、開口部が形成された筐体(図示省略)に取り付けられており、クリーニングブレード59の先端部で掻き取られたトナーが、筐体内に回収されるようになっている。」

(3)「【0045】
図1に示すように、記録用紙Pの搬送方向における二次転写ロール71よりも下流側には、二次転写ロール71によってトナー画像が転写された記録用紙Pにトナー画像を定着させる定着装置100が設けられている。なお、定着装置100の詳細は後述する。また、記録用紙Pの搬送方向で定着装置100よりも下流側には、排紙部15又は反転部33へ向けて記録用紙Pを搬送する搬送ロール39が設けられている。」

(4)「【0048】
図3に示すように、定着装置100は、記録用紙Pが進入する開口部106Aと、記録用紙Pが排出される開口部106Bとが形成された筐体106を有している。筐体106内には、主要部として、トナー画像(現像剤像)を加熱して記録用紙Pに定着させる定着部材の一例としての定着ロール102と、定着ロール102とで記録用紙Pを挟んで加圧する加圧部材の一例としての加圧ロール104と、が設けられている。
【0049】
さらに、筐体106内には、主要部として、定着ロール102の外周面に接触して加熱する外部加熱ロール108と、外部加熱ロール108を定着ロール102の外周面に移動するリトラクト機構部140(図4参照)と、後述する塗布材112B(図5(B)参照)を定着ロール102の外周面に塗布する塗布装置の一例としての塗布ユニット110と、定着ロール102の外周面を清掃する清掃手段及び回転部材の一例としてのクリーニングロール120と、が設けられている。」

(5)「【0070】
図3に示すように、塗布ユニット110は、一例として、定着ロール102の外周面と接触して塗布材112B(図5(B)参照)を塗布する塗布ロール112と、塗布ロール112を回転駆動するモータ及びギヤ(図示省略)を有する駆動部113と、塗布ロール112を定着ロール102の外周面に移動するリトラクト機構部160と、を含んで構成されている。
【0071】
なお、塗布ユニット110は、塗布ロール112を定着ロール102から退避させる必要が無い構成では、リトラクト機構部160が設けられていなくてもよい。また、塗布ロール112を定着ロール102に対して従動回転させる構成の場合には、駆動部113が設けられていなくてもよい。塗布ロール112を従動回転させる構成の一例としては、塗布ロール112を回転可能に支持すると共に定着ロール112と接触させ、塗布ロール112の回転軸の端部に負荷を与える。これにより、定着ロール102と塗布ロール112との周速度差が生じる。
【0072】
図5(B)に示すように、塗布ロール112は、円柱状のステンレス鋼(SUS)からなる芯金112Aの外周面に、フッ素系の樹脂材料の一例としての架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分として含む塗布材112Bが保持された構成となっている。塗布材112Bの一例として、架橋ポリテトラフルオロエチレンを90wt%以上含み、厚さが100μmのものが挙げられる。」

(6)前記各記載を総合すると、引用文献5には以下の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

「中間転写ベルト68上に一次転写されたトナー画像を記録用紙Pに二次転写させ、中間転写ベルト68の二次転写後の残留トナーを回収するクリーニングブレード59が設けられ、記録用紙Pの搬送方向における二次転写ロール71よりも下流側には、二次転写ロール71によってトナー画像が転写された記録用紙Pにトナー画像を定着させる定着装置100が設けられ、定着装置100は、筐体106を有し、筐体106内には、定着ロール102と、加圧ロール104と、が設けられ、さらに、筐体106内には、塗布材112Bを定着ロール102の外周面に塗布する塗布ユニット110が設けられ、塗布ユニット110は、塗布ロール112と、駆動部113と、リトラクト機構部160と、を含み、定着ロール102と塗布ロール112との周速度差が生じ、塗布ロール112は、円柱状のステンレス鋼(SUS)からなる芯金112Aの外周面に、フッ素系の樹脂材料の一例としての架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分として含む塗布材112Bが保持された構成となっている画像形成装置。」

6.引用文献6について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献6(特開2011-59189号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0035】
ベルトクリーニングブレード10とイエローの感光体1Yの間、すなわち、感光体1Yよりもベルト回転方向上流側には、直鎖状の炭化水素構造を持つ、脂肪酸金属塩などで構成された潤滑剤11を中間転写ベルト5の表面に塗布する塗布部材となるブラシローラ12が、ベルト表面に接触するように配置されている。ブラシローラ12はSUS等の金属製芯金と、この上に、ポリエステルからなる植毛を接着したブラシ部から構成されている。ブラシローラ12の回転方向はベルト移動方向と同一方向で、その速度がベルト移動速度の1.2倍となるように図示しない駆動モータによって回転駆動される。潤滑剤11は、ブラシローラ12で削り取られるため、ばねのような弾性体で構成された潤滑剤加圧手段111によりブラシローラ12に圧接している。」

(2)「【0039】
このような構成の画像形成装置では、図示しない操作部からの信号により各感光体上に各現像器によってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像がそれぞれ形成される。各トナー像は、駆動モータM1の作動により回転移動している中間転写ベルト5上に各感光体上から一次転写バイアスの作用によって重ね転写される。各色のトナー像が重ね転写された中間転写ベルト5が二次転写部に到達すると、図示しない給紙ユニットから二次転写部に搬送されてきた転写材の1つである転写紙15に、トナー像が一括転写される。トナー像が転写された転写紙15は、用紙搬送方向下流側に配置された定着装置30へ搬送され、ここで熱と圧力によってトナー像が定着され、図示しない排紙トレイへと排出される。
【0040】
二次転写を終えた中間転写ベルト5は、ベルトクリーニングブレード10によって、その表面に残留しているトナーや紙粉が掻き落とされて清掃されたのち、ブラシローラ12によって潤滑剤11が塗布され、新たなトナー像の転写へ備えられる。
【0041】
潤滑剤11の塗布にあたり、ブラシローラ12は対向ローラ13の対向部で回転するが、この回転により中間転写ベルト5に振動が発生していた。このため、中間転写ベルト5の振動は、ベルト移動方向において、ブラシローラ12の直下流に位置するイエローの感光体1Yの箇所まで伝播し、感光体1Yから中間転写ベルト5へのトナー像の転写時に、トナー像にバンディングを発生させる原因となっていた。本形態では4色のトナー像を用いるので、4つの感光体のうち、ベルト移動方向において最上流に位置する感光体1Yに中間転写ベルト5の振動が伝播されることになるが、カラー画像形成ではなく、モノクロ画像を形成する画像形成装置の場合には、ブラックのトナー像を形成する感光体に対して、ブラシローラ12との接触により発生する中間転写ベルト5の振動が伝播されることになる。」

(3)前記各記載を総合すると、引用文献6には以下の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。

「各トナー像は、中間転写ベルト5上に各感光体上から一次転写バイアスの作用によって重ね転写され、各色のトナー像が重ね転写された中間転写ベルト5が二次転写部に到達すると、転写紙15に、トナー像が一括転写され、二次転写を終えた中間転写ベルト5は、ベルトクリーニングブレード10によって、その表面に残留しているトナーや紙粉が掻き落とされて清掃されたのち、ブラシローラ12によって直鎖状の炭化水素構造を持つ、脂肪酸金属塩などで構成された潤滑剤11が塗布され、潤滑剤11の塗布にあたり、ブラシローラ12は対向ローラ13の対向部で回転する画像形成装置。」

7.引用文献7について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献7(特開2009-210938号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0017】
また、前述のようにスタートスイッチが押されると、図示しない駆動モータにより支持ローラ14、15、16の1つが回転駆動されるとともに、他の2つの支持ローラが従動回転され、中間転写ベルト10が矢印A方向に回転移送される。また、これと同時に、個々の画像形成手段18Y、18M、18C、18Kにおいて、ドラム状の感光体(第1像担持体)40Y、40M、40C、40Kが矢印E方向に回転される。感光体40Y、40M、40C、40Kの回転と共に、これらの感光体40Y、40M、40C、40Kの周囲にそれぞれ配設されている帯電装置37で感光体40Y、40M、40C、40Kの表面をそれぞれ一様に帯電させる。このように、表面が一様に帯電された感光体40Y、40M、40C、40K上に、前記スキャナ300で読取られた画像情報に基づいて変調されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色画像に対応するレーザ光Lがそれぞれ照射されて各色に対応する静電潜像を形成する。続いて、各感光体40Y、40M、40C、40K上に形成された静電潜像に対して、現像装置38Y、38M、38C、38Kからトナーを供給して静電潜像をトナー像化して現像する。このようにして、感光体40Y、40M、40C、40K上に形成された上記各色の単色画像は、中間転写ベルト10の移送とともに、それらの単色画像が中間転写ベルト10に1次転写ローラ62によって順次転写され、中間転写ベルト10上に合成カラー画像が形成される。」

(2)「【0019】
更に、前述のようにスタートスイッチが押されると、給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択的に回転され、ペーパーバンク43に多段に設けられた給紙カセット44の1つから転写材Sが繰り出される。繰り出された転写材Sは、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて給紙路46に導入され、搬送ローラ47で搬送されるとともに、複写機本体100内の給紙路48に導かれた後、レジストローラ49に突き当てられて止められる。また、手差トレイ51を用いる場合には、給紙ローラ50が回転され、手差トレイ51上の転写材Sが繰り出されるとともに、繰り出された転写材Sは、分離ローラ52で1枚ずつ分離された後、手差し給紙路53に導入され、同様にしてレジストローラ49に突き当てられて止められる。
その後、中間転写ベルト10上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ49が回転され、中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に転写材Sが送り込まれる。そして、2次転写ローラ22による転写によって、転写材S上にカラー画像が記録される。
【0020】
画像転写後の転写材Sは、2次転写ローラ22及び搬送ベルト24によって搬送されて定着装置25へと送り込まれ、定着装置25で熱と圧力とが加えられて転写画像が定着された後、切換爪55の切り換で排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。一方、両面コピーの場合、片面に画像が転写された転写材Sは、切換爪55の切り換えによってシート反転装置28に導入されて反転された後、再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像が記録され、その後、排出ローラ56によって排紙トレイ57上に排出される。
一方、画像転写後の中間転写ベルト10は、後述するように、中間転写ベルト用クリーニングユニット17により、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーが除去されると共に、中間転写ベルト表面10aに潤滑剤2を塗布してタンデム画像形成装置20による再度の画像形成に備える。」

(3)「【0024】
本実施形態による中間転写ベルト用クリーニングユニット17は、矢印A方向に移送される中間転写ベルト10の表面10a側に、図1で示すように、支持ローラ16とテンションローラ63との間に配設されている。そして、中間転写ベルト用クリーニングユニット17は、図2で示すように、前述の図9で示す従来の中間転写ベルト用クリーニングユニット17と同様に、クリーニングブレード17a、搬送スクリュー19及び潤滑剤塗布装置17bを備えている。
潤滑剤塗布装置17bは、図2に示すように、潤滑剤収容部の一例である潤滑剤収容凹部17c内に、潤滑剤塗布ユニット6が着脱自在に収容されている。潤滑剤塗布ユニット6は、図3に示すように、固形潤滑剤2を収容するケース7と、固形潤滑剤2をケース7内で潤滑剤2の摩耗方向と反対方向Cに移動自在に保持するホルダ8と、回転しながら潤滑剤2の表面2bと摺接して固形潤滑剤2から所要の量の潤滑剤を削り取って、中間転写ベルト表面10aに塗布する塗布ブラシローラ1とを備えている。」

(4)「【0030】
上記固形潤滑剤としては、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることが可能であり、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸基を持つものを用いることができる。また、同じ脂肪酸基であるオレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸銅や、パルチミン酸、亜鉛パルチミン酸コバルト、パルチミン酸銅、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸アルミニウム、パルチミン酸カルシウムを用いてもよい。他にも、カプリル酸鉛、カプロン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、及びリコリノレン酸カドミウム等の脂肪酸、脂肪酸の金属塩なども使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックス等も使用できる。
上記実施形態においては、潤滑剤塗布装置17bは、第2像担持体である中間転写ベルト10に対する塗布装置として使用されているが、前述の画像形成装置の画像形成手段18Y、18M、18C、18Kのクリーニングユニット39内の潤滑剤塗布装置として使用することもできる。」

(5)前記各記載を総合すると、引用文献7には以下の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。

「中間転写ベルト10上に合成カラー画像が形成され、その後、中間転写ベルト10と2次転写装置22との間に転写材Sが送り込まれ、2次転写ローラ22による転写によって、転写材S上にカラー画像が記録され、画像転写後の中間転写ベルト10は、中間転写ベルト用クリーニングユニット17により、画像転写後に中間転写ベルト10上に残留する残留トナーが除去されると共に、中間転写ベルト表面10aに潤滑剤2を塗布し、潤滑剤塗布装置17bは、固形潤滑剤2から所要の量の潤滑剤を削り取って、中間転写ベルト表面10aに塗布する塗布ブラシローラ1を備え、固形潤滑剤としては、ステアリン酸基を持つもの、脂肪酸基、脂肪酸、脂肪酸の金属塩ワックスなどが使用できるタンデム画像形成装置。」

8.引用文献8について

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献8(特開2011-95315号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0042】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式言い換えると間接転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の画像形成装置である。」

(2)「【0045】
転写ベルト11は、ベース層を伸びの少ない材質で構成し、ベース層の表面を平滑性の良い材質によって覆ったコート層とし、ベース層にコート層を重ねて形成した多層構造となっている。ベース層の材質としては、たとえばフッ素樹脂、PVDFシート、ポリイミド系樹脂が挙げられる。コート層の材質としては、たとえばフッ素系樹脂等が挙げられる。」

(3)「【0067】
潤滑剤塗布装置81は、2次転写ベルト65に潤滑剤を供給することで2次転写ベルト65を介して潤滑剤を転写ベルト11に供給するものである。
潤滑剤塗布装置81の詳細については後述する。」

(4)「【0075】
現像により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、順次、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に転写され、転写ベルト11上には合成カラー画像が形成される。」

(5)「【0077】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、レジストローラ対4が回転し、2次転写部57では、合成カラー画像が、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sに密着し、ニップ圧の作用によって転写紙Sに2次転写され、記録される。」

(6)「【0081】
2次転写を終えた2次転写部57通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード76によって転写後にその表面に残留した転写残トナーを除去されてクリーニングされ、次の転写に備える。」

(7)「【0093】
潤滑剤塗布装置81は、柱状に固形化された潤滑剤としての潤滑性物質82と、潤滑性物質82及び2次転写ベルト65に当接し潤滑性物質82を掻き取って2次転写ベルト65に供給し塗布する塗布部材としての塗布ブラシであるブラシローラ83と、潤滑性物質82を保持するとともにブラシローラ83に付勢する保持部材84と、ブラシローラ83を2次転写ベルト65との対向位置において2次転写ベルト65と同方向に回転駆動する図示しない駆動手段とを有している。」

(8)「【0096】
潤滑性物質82は、転写ベルト11、2次転写ベルト65の表面とその表面に接触する各色のトナーやトナーとともに現像剤に含まれている磁性キャリアなどの物質あるいはクリーニングブレード76と転写ベルト11との間の摩擦係数を低下させるためのものであって、その成分は、成膜性に優れた脂肪酸金属塩と、転写ベルト11に対するクリーニングブレード76の当接部において堰き止められニップを迅速に形成するダム効果が得られる無機潤滑剤とを併用したものとなっている。」

(9)前記各記載を総合すると、引用文献8には以下の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。

「転写ベルト11は、ベース層を伸びの少ない材質で構成し、ベース層の表面を平滑性の良い材質によって覆ったコート層とし、ベース層にコート層を重ねて形成した多層構造であり、ベース層の材質としては、たとえばフッ素樹脂、PVDFシート、ポリイミド系樹脂が挙げられ、コート層の材質としては、たとえばフッ素系樹脂等が挙げられ、潤滑剤塗布装置81は、2次転写ベルト65に潤滑剤を供給することで2次転写ベルト65を介して潤滑剤を転写ベルト11に供給するものであり、各色のトナー像は、回転している転写ベルト11上の同じ位置に転写され、転写ベルト11上には合成カラー画像が形成され、転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が、ニップ圧の作用によって転写紙Sに2次転写され、2次転写を終えた転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニングブレード76によって転写後にその表面に残留した転写残トナーを除去されてクリーニングされ、潤滑剤塗布装置81は、潤滑性物質82及び2次転写ベルト65に当接し潤滑性物質82を掻き取って2次転写ベルト65に供給し塗布する塗布部材としての塗布ブラシであるブラシローラ83を有し、潤滑性物質82の成分は、成膜性に優れた脂肪酸金属塩と、無機潤滑剤とを併用したものである画像形成装置。」

第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明1とを対比すると、後者の「中間転写体」は、前者の「「ベルト部材」及び「中間転写ベルト」」に相当し、以下同様に、「「駆動ロール4」及び「剥離ロール5」」は「複数の支持ローラー」に、「記録媒体」は「最終媒体」に、「感光体1-1?1-4」は「画像形成部」に、「表面層」は「表面層」に、「トナークリーナー27」は「ベルトクリーナー」に、「カラー画像形成装置」は、「画像形成装置」にそれぞれ相当する。

また、後者は、「中間転写体22上にトナー像を担持させる感光体1-1?1-4」と「中間転写体22上のトナー像を記録媒体上に転写するとともに定着するための加熱加圧ロール対2」の事項を備えているから、前者の「前記画像形成部よりトナー像の1次転写を受けて最終媒体への2次転写を行う中間転写ベルト」の事項を備えているといえる。

また後者の「加熱加圧ロール対2」の位置は、「2次転写が行われる位置」といえ、後者の「酸化防止剤供給装置28」は、「中間転写体22の全面にわたって酸化防止剤をドナーシート36から供給」するものであり、酸化防止剤も中間転写体22を保護するものといえるから、前者の「保護剤供給部」に相当する。
そして後者の「中間転写体22の回転方向に対して、感光体1-1?1-4、加熱加圧ロール対2、トナークリーナー27、酸化防止剤供給装置28の順で配置されている」との位置関係は、前者の「前記ベルト部材の進行方向について,
前記ベルトクリーナーは,前記2次転写が行われる位置よりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置でトナーを回収するものであり,
前記保護剤供給部は,前記ベルトクリーナーよりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置に前記保護剤を供給するもの」との位置関係に相当するといえる。

したがって、両者は、

「トナー像を形成する画像形成部と,
前記画像形成部により形成されたトナー像の最終媒体への転写を行う転写ニップを形成するベルト部材とを有する画像形成装置において,
前記ベルト部材上のトナーを回収するベルトクリーナーを有し,
前記ベルト部材は,最外周に位置する表面層を有し,複数の支持ローラーに巻き掛けられて回転駆動されるものであり,
前記ベルト部材の外周面に,保護剤を供給する保護剤供給部を有し,
前記ベルト部材は,
前記画像形成部よりトナー像の1次転写を受けて最終媒体への2次転写を行う中間転写ベルトであり,
前記ベルト部材の進行方向について,
前記ベルトクリーナーは,前記2次転写が行われる位置よりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置でトナーを回収するものであり,
前記保護剤供給部は,前記ベルトクリーナーよりも下流で前記画像形成部よりも上流の位置に前記保護剤を供給するものである画像形成装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1の「中間転写ベルト」である「ベルト部材は,弾性層,および,・・・表面層を有する」のに対して、引用発明1の「中間転写体22は、ベース層と表面層の2層から構造」される点で相違している。

[相違点2]
本願発明1の「表面層」が「弾性層よりも硬い」のに対して、引用発明1の「表面層」には「弾性層よりも硬い」ことが備わっていない点で相違している。

[相違点3]本願発明1は、「弾性層をオゾンから保護する保護剤を供給する」「保護剤供給部は,正規帯電トナーの帯電極性と同極性に帯電した前記保護剤を供給するものであり,
前記ベルト部材の外周面の前記保護剤供給部により保護剤が供給される供給位置に,保護剤を,前記保護剤供給部から前記ベルト部材に引き付ける向きの電界を発生させるバイアス電圧を印加するバイアス印加部を有し」ているのに対して、引用発明1は、「一般に熱劣化や、光劣化防止を目的にプラスチックやゴムに添加して用いられる酸化防止剤」を供給する「酸化防止剤供給装置28は、ドナーシート36が中間転写体22に接触する位置にサーマルヘッド33を備え、サーマルヘッド33によりドナーシート36を、酸化防止剤の融点を超える温度まで加熱することにより、中間転写体22の全面にわたって酸化防止剤をドナーシート36から供給」するものである点で相違している。

(2)判断

ア.相違点3について検討する。

(ア)引用発明2、3、6、7、8の「中間転写体」に塗布される「潤滑剤」は、相違点3に係る本願発明1の「弾性層をオゾンから保護する」「保護剤」ではない。
引用発明2、3、6、7、8は、「中間転写体」に「潤滑剤」を「ブラシ」又は「フェルトローラ」によって、塗布するものであり、相違点3に係る本願発明1の「前記保護剤供給部は,正規帯電トナーの帯電極性と同極性に帯電した前記保護剤を供給するものであり,
前記ベルト部材の外周面の前記保護剤供給部により保護剤が供給される供給位置に,保護剤を,前記保護剤供給部から前記ベルト部材に引き付ける向きの電界を発生させるバイアス電圧を印加するバイアス印加部を有し」ているものではない。
よって、引用発明2、3、6、7、8は、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えていない。

(イ)電子写真の技術分野において現像前(1次転写の前工程)にトナーが帯電されることは技術常識であるから、引用発明4においても「無色トナーMT」(中間転写ベルトに供給されるもの)は1次転写前に帯電されていると解され、引用発明4において「イエロートナー画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像及びブラックトナー画像(有色トナー画像)を形成する現像部13Y、13M、13C及び13Kが、現像剤として、無色トナーを含む現像剤の代わりにそれぞれイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー(有色トナー)を含む現像剤が用いられることの他は、無色トナー画像に係る画像形成ユニット30Lと同様の構成」であるから、前記「無色トナーMT」は、本願発明1の「正規帯電トナー」に相当する「イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナー(有色トナー)」の帯電極性と同極性に帯電されるといえ、引用発明4は、相違点3に係る本願発明1の中間転写ベルトに供給されるもの(保護材)を「正規帯電トナーの帯電極性と同極性に帯電」することを備えているといえる。
引用発明4の「1次転写部15Lは、転写電流供給装置によって1次転写ローラー151Lに1次転写電流が供給されることにより、像担持体10L上に形成された無色トナー像を、中間転写ベルト17に転写」することの「1次転写ローラー151L」、「像担持体10L」、「1次転写電流が供給されること」、は、それぞれ、本願発明1の「バイアス印加部」、「保護剤供給部」、「バイアス電圧を印加」に相当するから、引用発明4は、相違点3に係る本願発明1の中間転写ベルトに供給されるもの(保護材)を「前記保護剤供給部から前記ベルト部材に引き付ける向きの電界を発生させるバイアス電圧を印加するバイアス印加部を有」することを備えているといえる。
よって、中間転写ベルトに供給されるものが、引用発明4の「無色トナーMT」であることに対して、本願発明1では「弾性層をオゾンから保護する」「保護剤」であることで相違している以外は、引用発明4は、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を一応備えている。
しかしながら、引用発明4の「無色トナーMT」は、本願発明1の「弾性層をオゾンから保護する」「保護剤」ではなく、この点において、引用発明4は、相違点3に係る本願発明1の「弾性層をオゾンから保護する保護剤」の事項を備えていない。
よって、引用発明4は、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えていない。

(ウ)引用文献5には、「【0094】これにより、図8(B)に示すように、塗布材112Bで覆われた定着ロール102の外周面は、粗面102Dに比べて粗さの小さい滑面102Eとなるため、塗布材112Bを定着ロール102の外周面に塗布しない構成に比べて、定着ロール102の外周面の荒れが抑制される。また、塗布材112Bは、フッ素系の樹脂である架橋ポリテトラフルオロエチレンで構成されているため、シリコンゴムに比べてトナーTの離型性が高い。このため、定着ロール102の外周面に塗布された塗布材112Bは、新たな離型層として機能することになり、定着ロール102の離型層102Cが補強される。
【0095】さらに、定着装置100では、記録用紙P(A3サイズ)上の幅W2に相当する範囲にあるトナーTが、滑面102Eで加熱及び加圧され溶融するので、トナーTの硬化時の表面が、粗面102Dを用いたときと比べて滑らかになる。これにより、定着ロール102の外周面の荒れによる画質低下が抑制される。」と説明されているから、引用発明5の「塗布材112B」は、本願発明1のように中間転写ベルトの「弾性層をオゾンから保護する保護剤」ではない。
また、引用発明5の「円柱状のステンレス鋼(SUS)からなる芯金112Aの外周面に、フッ素系の樹脂材料の一例としての架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分として含む塗布材112Bが保持された構成となっている」「塗布材112Bを定着ロール102の外周面に塗布する」ものは、相違点3に係る本願発明1の「前記保護剤供給部は,正規帯電トナーの帯電極性と同極性に帯電した前記保護剤を供給するものであり,
前記ベルト部材の外周面の前記保護剤供給部により保護剤が供給される供給位置に,保護剤を,前記保護剤供給部から前記ベルト部材に引き付ける向きの電界を発生させるバイアス電圧を印加するバイアス印加部を有し」ているものではない。
よって、引用発明5は、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を備えていない。

(エ)よって、引用発明1ないし8には、前記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項は包含されていない。
また、前記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は前記相違点3に係る発明特定事項を備えることによって、「弾性層がオゾン劣化により硬くなることを防止することができ,ベルト部材のクラックの成長を抑制することができる」(段落【0013】)、「この電界の作用により,保護剤をより確実に,クラックの深い部分に供給することができる」(段落【0077】)」という作用効果を奏するものである。

イ.したがって、本願発明1は、前記相違点1、2について判断するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし4について

本願発明2ないし4は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明であり、これらの発明も、本願発明1の前記相違点3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、本願発明1ないし4は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2018-03-12 
出願番号 特願2013-121458(P2013-121458)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人コスモス特許事務所  

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