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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29B
管理番号 1338068
審判番号 不服2016-4990  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-05 
確定日 2018-03-08 
事件の表示 特願2012-185319「オレフィン系重合体ペレット及びその移送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 43008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月24日の出願であって、平成27年5月28日付で拒絶理由が通知され、同年7月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月24日付で拒絶査定がされ、これに対し、平成28年4月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年5月17日に当該審判の請求の理由を補充する手続補正書が提出され、同年7月21日付けで審査官により前置報告書が作成され、その後、当審において平成29年4月25日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年7月7日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年8月18日付けで審尋がされ、これに対し同年9月29日に回答書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明は、平成29年7月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が135℃以上150℃以下、
(b)引張弾性率が30MPa以上120MPa以下
を満たし、プロピレンを65mol%以上含有するプロピレン系重合体であるオレフィン系重合体と、シリコーンオイルとからなり、
シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含むことを特徴とするオレフィン系重合体ペレット。」


第3 当審の拒絶理由
当審の平成29年4月25日付け拒絶理由通知は、概略、以下の1及び2の拒絶の理由を含むものである。

1 この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用文献等一覧
1.特開2008-150624号公報
2.特開2011-178056号公報
3.特開2007-23116号公報
4.特開2007-153979号公報
5.特開2007-297203号公報
(これら引用文献1、2及び4は、本審決において、以下それぞれ「引用例1」、「引用例2」及び「引用例4」という。)


第4 当審の判断
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準について
特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載について、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要件として規定している。
そして、特許請求の範囲が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2) 本願明細書の発明の詳細な説明の記載について
本願明細書の発明の詳細な説明には、おおむね、次の記載がある。なお、下線は合議体によるものである。


「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーバルブ等の可動部を有する輸送経路で好適に移送できるオレフィン系重合体ペレット、その移送方法、及び、その製造方法に関する。」


「【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体ペレットをサイロ間で移送するときや、成形機のホッパーへ投入・排出するときにロータリーバルブを使う方法が知られている。ロータリーバルブは、数枚の羽根(ブレード)を放射状に取り付けたローターを、水平円筒(ケーシング)内で回転させる、粉粒体の供給・排出機械である。ブレードによって区切られた部屋に、上方の開口部から粉粒体を受け入れて、下方の排出口から排出させる構造となっている。
【0003】
ロータリーバルブの構造上、ブレードとケーシングの間にはわずかな隙間がある。オレフィン系重合体ペレットの中でも、エラストマーや低立体規則性重合体、軟質EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)などの軟質なペレットをロータリーバルブで輸送する際には、ロータリーバルブのローター(ブレード、バルブシリンダー)とケーシングの隙間にペレットが噛み込んで排出不良になることがある。また、ペレット同士のブロッキングにより、ホッパーやサイロからの排出不良が発生することがある。
これらの問題の改良を目的として、ペレットに帯電防止剤を付着させて用いることが知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、軟質EVAペレットなどの粘着性を有するエチレン系共重合体ペレットを空送する際の圧力損失の低減、および空送配管中のロータリーバルブへのペレットの噛み込み防止を目的として、空送段階の複数個所で、500?10000wtppmと多量に、ペレット表面にアンチブロッキング剤を塗布・付着させるペレットの後処理方法が開示されている。しかしながらこの方法では、アンチブロッキング剤のペレット表面への付着を、多段階で行う必要があり処理が煩雑である上、アンチブロッキング剤としてタルクや変性ポリオレフィンなどを多量に用いることより、移送後のペレットを成形に用いた場合に得られる成形体の透明性が劣るといった問題があった。
【0005】
特許文献2には、低分子量低規則性のポリプロピレンのペレットを造粒する際に、エマルジョンタイプのシリコーンオイルを添加して、造流したペレットのブロッキングを防止することが開示されているが、ペレットの移送性については開示されていない。
【0006】
特許文献3には、シリコーンオイル添加によるポリオレフィンのペレット同士の互着性改良の開示があるが、低分子量・低融点のオレフィン重合体における単なるペレット同士の互着を抑制させることを目的としておりペレット移送性に関する示唆は認められない。
【0007】
特許文献4には、ホッパー排出口スライドダンパーの構造を変更によるペレット噛み込み防止の開示がある。スライドダンパーの構造変更は、現有設備に適用できないおそれがあることや、適用できるとしても設備改造のために一時的に操業を停止しなければならないことが指摘される。
【0008】
特許文献5には、低融点の1-ブテン重合体などの軟質ポリオレフィンを水中造粒法でペレタイズする時に、造粒された造粒物(ペレット)同士の再融着を防止することを目的として、水中造粒法の冷却水にシリコーンを添加することについて開示がある。
【0009】
軟質系樹脂の中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、焼却時のダイオキシン発生などの問題を生じないため、軟質ポリ塩化ビニル樹脂などに代えてその使用が拡大しているが、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に匹敵する透明性を求める場合には、結晶化度の高い高融点成分を含有するものが好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-153979号公報
【特許文献2】特開2011-178056号公報
【特許文献3】特開2008-246854号公報
【特許文献4】特開2006-256208号公報
【特許文献5】特開2006-328350号公報」


「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、高融点成分を含んだ特定の軟質オレフィン系樹脂は、ペレット同士が付着することなく貯蔵でき、アンチブロッキング特性に優れるとされるものであっても、ロータリーバルブを有する輸送経路で使用すると、ローター(ブレード、バルブシリンダー)とケーシングの隙間にペレットが噛み込んだ際にローターが偏心し、噛み込んだ反対側でローターとケーシングに傷が生じる齧りトラブルが発生し易いという問題点を有することを見出した。
【0012】
上述の特許文献には、高融点成分を含む特定の軟質オレフィン系樹脂を、ロータリーバルブを有する輸送経路で輸送した場合に特異的な問題を解決する方法については教示されていない。
【0013】
本発明は、このような問題を解決し、ロータリーバルブを有する輸送経路で輸送した場合に、輸送経路側の構造変更を行うことなく、輸送経路内で噛み込みを生じずに円滑にペレットを輸送でき、しかも輸送後のペレットを成形した際に成形品への悪影響がないような、高融点成分を含む特定の軟質系樹脂からなるペレット、およびその移送方法を提供することを課題としている。」


「【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題につき鋭意検討した結果、高融点成分を含む特定の軟質系樹脂のペレットに、ごく少量のシリコーンオイルを共存させることで、ロータリーバルブを有する輸送経路で輸送した場合に、輸送経路側の構造変更を行うことなく、効果的に噛み込みを防止できると共に、成形体の外観不良も起こさないという、相反する要求を高いレベルで両立できることを見出し、上記課題を解決した。」


「【0063】
・シリコーンオイル
本発明のオレフィン系重合体ペレット中、シリコーンオイルは、0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含まれる。シリコーンオイルの含有量の下限は好ましくは0.2質量ppm、より好ましくは0.3質量ppm、上限は好ましくは20質量ppm、より好ましくは10質量ppmである。
【0064】
上記下限値を下回ると、本発明の課題が十分に解決できず、オレフィン系重合体ペレットをロータリーバルブを用いて移送する際に、噛み込みが生じるなどの不具合が生じる恐れがある。また上記上限値を超えると、製品への悪影響を及ぼす場合があり、またコストの増加につながる場合がある。
【0065】(省略)
【0066】
シリコーンオイルは、本発明のオレフィン系重合体ペレットの内部にまで存在してもよいが、表面のみに付着しているのが好ましい。
本発明のオレフィン系重合体ペレットを調製する際に用いるシリコーンオイルは、どのような形態であってもよいが、エマルジョンタイプのものを用いると、冷却水等への分散がよく、ペレット表面に均一に付着させやすいため好ましい。
【0067】(省略)
【0068】(省略)
【0069】
本発明のオレフィン系重合体ペレットが添加剤を含有する場合、ペレットを構成するオレフィン系重合体を製造する過程で添加してもよく、オレフィン系重合体を造粒してペレット化する段階で添加してもよく、また、ペレット化したオレフィン系重合体上にシリコーンオイルとともにまたは別個に付着させるよう添加してもよい。
【0070】
・ペレットの形状および製造方法
本発明のオレフィン系重合体ペレットは、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状であり、大きさは、通常、直径が1?20mm、長さが1?20mmである。
【0071】
オレフィン系重合体ペレットの形状および大きさがこのような範囲であると、成形時などの操作性に優れる上、ロータリーバルブを具備した移送手段を用いて好適に移送することができる。前記範囲から外れると、製造側や顧客側の操作性が低下することがある。これらのペレット形状、大きさは、ペレット作製時の樹脂ストランドの切断時間間隔などにより制御できる。
【0072】
ペレットの製造方法としては、軟質樹脂をペレット化する公知の方法をいずれも採用することができ、例えば、押出機のダイスノズルより押出された溶融状態のオレフィン系重合体を、連続的に冷却・固化・切断する方法が用いられる。具体的には、例えば、溶融オレフィン系重合体を押出機のダイスから冷却水中に押出して樹脂ストランドを形成し、冷却・固化させると同時にカッター刃でペレット状に切断するアンダーウォーターカット法、押出された溶融オレフィン系重合体をストランド状に引き取り、冷却水で固化・カッター刃でペレット状に切断するストランドカット法が挙げられる。
【0073】
またシリコーンオイルはペレット表面に付着させることが好ましい。その付着方法としては、ペレット化時の冷却水中へシリコーンオイルを添加してペレット化時に付着させる方法や、ペレット化後にシリコーンオイルを噴霧する方法、ペレット貯蔵サイロに添加、ブレンドする方法が挙げられる。
【0074】
このようにしてペレットへシリコーンオイルを付着させる量は、オレフィン系重合体全量に対し、シリコーンオイル0.1質量ppm以上40質量ppm以下であり、好ましくは0.2質量ppm以上20質量ppm以下、より好ましくは0.3質量ppm以上10質量ppm以下である。ペレットに付着するシリコーンオイルの量は、冷却水中へのシリコーンオイル添加方法では、シリコーンオイルの添加量、冷却水の温度や、ペレットと冷却水の脱水条件で制御可能である。」


「【0106】
[実施例1]
製造例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-1)を調製した後、アンダーウォーターカットによるペレット化の際の冷却水中にエマルジョンタイプのジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製SH7024)を3000ppm添加してペレット化した。ペレット中のシリコーンオイル含量は、2.8ppmであった。
このペレットのRVの運転性を、前記の方法で評価したところ、ロータリーバルブの駆動モーター電流値の振れ幅はモーター電流値平均の3%以内であり、非常に安定した運転が可能であった。
【0107】
[実施例2]
実施例1と同様にして、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-2)ペレット化した。ペレット中のシリコーンオイル含量は、2.9ppmであった。
このペレットのRVの運転性を、前記の方法で評価したところ、ロータリーバルブの駆動モーター電流値の振れ幅はモーター電流値平均の3%以内であり、安定した運転が可能であった。
【0108】
[実施例3?5、比較例1,2]
製造例3において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A-3)を調製した後、アンダーウォーターカットによるペレット化の際の冷却水中に添加するエマルジョンタイプのジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社 製SH7024)の濃度を変化させてペレット化することにより、表2に示す量のシリコーンオイルを含有するプロピレン-エチレンブロック共重合体ペレットを得た。なお比較例1は、製造例3で製造したペレットであって、シリコーンオイルを含有しない冷却水を用いて得たものである。
得られた各ペレットについて、ロータリーバルブの運転性を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0109】
[実施例6]
比較例1のペレット40kgと、ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社 製SH7024)1%を含む水40mLとをブレンドし、そのままペレットを乾燥して、シリコーンオイルを8.7ppm含むペレットを得た。得られたペレットについて、ロータリーバルブの運転性を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0110】
【表2】

【0111】
実施例1?4で、シリコーンオイルを特定量以上含有させることで、ロータリーバルブの駆動モーターも、その定格アンペア(約4A)を超えることなく、安定した運転が可能であった。一方、シリコーンオイルを使用しない(比較例1)あるいは含有量が少ないとき(比較例2)では、ロータリーバルブのブレードとケーシング間にペレットが噛み込んで、ロータリーバルブの駆動モーターの定格アンペアを超過して過負荷となり停止し、安定運転を行うことができなかった。」

(3) 本願発明1の課題について
本願明細書の記載アに基づくと、本願発明1は、ロータリーバルブ等の可動部を有する輸送経路で好適に移送できるオレフィン系重合体ペレットに関するものであり、同記載イに基づくと、従来から、オレフィン系重合体ペレットの中でも軟質のペレットをロータリーバルブで輸送する際には、ロータリーバルブのローターとケーシングの隙間にペレットが噛み込んで排出不良になることがあり、またペレット同士のブロッキングにより、ホッパーやサイロからの排出不良が発生することが問題であったと認められる。また、本願明細書の記載ウ(段落【0011】)に基づくと、高融点成分を含んだ特定の軟質オレフィン系樹脂は、ロータリーバルブを有する輸送経路で使用すると、ローター(ブレード、バルブシリンダー)とケーシングの隙間にペレットが噛み込んだ際にローターが偏心し、噛み込んだ反対側でローターとケーシングに傷が生じる齧りトラブルが発生し易いという特異的な問題点を有することが見出された。
そして、本願明細書の記載ウ(段落【0012】?【0013】)に基づくと、本願発明1は、高融点成分を含む特定の軟質オレフィン系樹脂を、ロータリーバルブを有する輸送経路で輸送した場合に生じる特異的な問題を解決するものであり、具体的には、本願発明1が解決しようとする課題は、
「ロータリーバルブを有する輸送経路内で噛み込みを生じずに円滑にペレットを輸送でき、しかも輸送後のペレットを成形した際に成形品への悪影響がないような、高融点成分を含む特定の軟質系樹脂からなるペレットを提供すること」
であると認められる。

(4) サポート要件の適合性について
本願明細書の記載エには、高融点成分を含む特定の軟質系樹脂のペレットに、ごく少量のシリコーンオイルを共存させることで、上記の課題を解決できる旨が記載されているところ、本願発明1のシリコーンオイルについては、「シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含む」との特定がされているだけで、オレフィン系重合体のペレットにおいて、シリコーンオイルをいかなる態様で含むのかについては特定されていない。
このため、当該シリコーンオイルを「含む」との態様として、ペレットの表面に付着した態様のみならず、ペレットの内部に主に存在する態様も包含されていると解するのが相当である。
そして、このことは、本願明細書の記載オ等、並びに、平成29年7月7日提出の意見書における次の主張、
「シリコーンオイルが重合体ペレットの内部まで存在する態様としては、各種添加剤を含有する場合と同様に、たとえば、オレフィン系重合体を製造する過程でシリコーンオイルを添加して得られたペレット、オレフィン系重合体を造粒してペレット化する段階でシリコーンオイルを添加して得られたペレット等が挙げられます。」
及び、平成29年9月29日提出の回答書における次の主張、
「したがって、オレフィン系重合体を調製する途中の組成物中にシリコーンオイルが含有される場合についても、シリコーンオイルをペレットの表面に付着させた場合と同様に、本願発明の課題を解決することができます。」
とも符合する。
ここで、本願発明1に係るペレットのうち、シリコーンオイルが主にペレットの内部に存在する態様のものとして、例えば、造粒前のオレフィン系樹脂組成物の段階でシリコーンオイルを所定の濃度で予め添加した後、造粒して得られるペレット(以下、かかるペレットを「シリコーン内添ペレット」という。)に着目して、シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含むシリコーン内添ペレットが、前記発明の課題を解決できると理解できるかどうかについて以下検討する。(なお、特にシリコーンオイルを0.1質量ppmの量で含むシリコーン内添ペレットが、発明の課題を解決できるかどうかについて、下記(6)にあるとおり合議体から審尋も行っている。)

本願明細書に記載された実施例(記載カ)をみると、アンダーウォーターカット法でペレットを調製する際の冷却水中にシリコーンを添加することで、当該ペレットの表面にシリコーンオイルを付着させて得られたペレットを得たことが記載され、シリコーンオイル濃度が0.02ppmのもの(比較例2)はRV運転性の評価が「×」で、0.5ppmのもの(実施例3)は評価が「○」となっている。そうすると、シリコーンオイルをペレットの表面に付着させる方法で得られたペレットであって、シリコーンオイルが濃度0.5ppm以上で含まれるペレットについては、当該表面に付着したシリコーンのうちのどの程度の割合がペレット内部に浸透してしまうのかは不明であるものの、本願発明1の課題を解決できることが実験的に確認されたと認められる。
しかし、上記実施例の結果に基づくと、シリコーンオイル濃度がある程度低くなってしまうと、本願発明1の課題が解決できなくなると理解できるところ、ペレットの表面にシリコーンオイルを付着させる方法で得られるペレットについてさえ、本願発明1におけるシリコーンオイルの含有量の下限値である濃度0.1質量ppmの量で含むものとした具体例が実施例に記載されておらず、ましてや、シリコーン内添ペレットについては調製したことの記載すらなく、評価結果の記載もない。したがって、本願明細書には、0.1質量ppmの濃度で調製したシリコーン内添ペレットについて、実験に基づいた直接的な実証結果は記載されていない。
そして、本願明細書の実施例以外の部分をみても、例えば本願明細書の記載オに、「本発明のオレフィン系重合体ペレット中、シリコーンオイルは、0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含まれる。」との記載、及び「ペレットを構成するオレフィン系重合体を製造する過程で添加してもよく、オレフィン系重合体を造粒してペレット化する段階で添加してもよく、また、ペレット化したオレフィン系重合体上にシリコーンオイルとともにまたは別個に付着させるよう添加してもよい。」との記載はあるものの、そのような形式的な記載があるだけでは、0.1質量ppmの濃度で調製したシリコーン内添ペレットが本願発明1の課題を解決できると理解するための具体的な根拠にはなり得ない。
また、通常、シリコーンオイルはペレットの内部にのみ存在するだけでは、ロータリーバルブにおける噛み込みを防止する機能を発揮できず、ペレットの表面に一定量存在することで初めて所期の機能が発揮されるものと推認されるところ、明細書中には、かかるシリコーン内添ペレットについて、ペレット調製初期においてその表面にどの程度の割合のシリコーンが存在するのか、内部に存在するシリコーンがペレットの表面に滲出してくるのか否か、及び内部から滲出するとしてもどの程度の量が表面に滲出してくるのか等といった、本願発明の課題を解決できると当業者が認識するための手がかりとなり得る理論的な説明はない。
そして、前述のとおり、本願明細書には、ペレットの表面にシリコーンオイルを付着させる方法で得られるペレットであってシリコーンオイルを0.02質量ppmの濃度で含むペレットでは、RV運転性の評価が「×」となり、本願発明1の課題を解決できないことが示されているところ、ペレット内部にシリコーンオイルが多く存在すると推認される、濃度0.1質量ppmのシリコーン内添ペレットについては、仮にそのシリコーンオイルの一部が表面に滲出したとしても、本願発明1の課題を解決するのに充分な量であると理解できるような根拠は、実施例の記載を含む本願明細書の記載全体をみても見出せないし、それが本願出願時の技術常識に照らして明らかであるとも認められない(なお、現実的にはあり得ないが、仮に0.1質量ppmのシリコーンオイルの全量がペレット表面に滲出したとしても同様である。)。

以上検討したとおり、本願発明1は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない、シリコーンオイルを0.1質量ppmの濃度で含むシリコーン内添ペレットを少なくとも含んでいることから、明細書の発明の詳細な説明及び技術常識に照らして、発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えた発明であるといえる。

(5) 審判請求人の意見書での主張について
平成29年4月25日付けの当審拒絶理由通知に対して、審判請求人は、平成29年7月7日提出の意見書において、概略以下の主張をしている。
(主張)
「オレフィン系重合体を製造する過程でシリコーンオイルを添加して得られたペレット、あるいは、オレフィン系重合体を造粒してペレット化する段階でシリコーンオイルを添加して得られたペレットでは、当初からペレット表面にシリコーンオイルの一部が存在することが合理的に予測されるうえ、時間の経過によりシリコーンオイルが表面にブリードアウトして、シリコーンオイルがペレット表面に付着した態様となります。時間の経過に伴って、拡散、浸透、ブリードアウト等によりシリコーンオイルがペレット内を移動する現象は当業者の常識です。
・・・(中略)・・・
そして本願明細書の記載および当業者の技術常識によれば、オレフィン系重合体を調製する途中の組成物中に含有される場合、ならびにシリコーンオイルがペレット内部に存在する場合についても、シリコーンオイルがオレフィン系重合体ペレット中に、0.1質量ppm以上40質量ppm以下という特定量で含まれるときには、本願発明の課題を解決できることがわかります。」

上記主張について検討する。
シリコーン内添ペレットにおいて、時間の経過によりシリコーンオイルが表面にブリードアウトして、シリコーンオイルがペレット表面に付着した態様となるのかどうかについて、単に「当業者の常識です」と述べるにとどまっており、そのことを裏付ける根拠が何ら示されていないため、技術常識であるとは直ちには認められない。仮に、時間の経過によりシリコーンオイルが表面にブリードアウトして、シリコーンオイルがペレット表面に付着した態様となるとしても、どの程度の割合が表面に付着した態様になるのかが依然として不明であるため、ロータリーバルブの噛み込みを防止するのに十分な量、例えば、本願の明細書の実施例で得られたシリコーンオイル含有量が0.5ppmであるペレットと同じ或いはそれ以上の量が、シリコーンオイル含有量が例えば0.1質量ppmであるシリコーン内添ペレットにおいて実現しているとは到底認められない。
したがって、上記意見書の主張は、本願発明1がサポート要件を充足することの根拠にならない。

(6) 合議体からの審尋に対する審判請求人の回答について
本願発明1のサポート要件について、合議体としてより慎重な判断をすべく、平成29年8月18日付けで、概略次に示す審尋をした。
(審尋事項)
オレフィン系重合体を含む樹脂組成物中に、例えば0.1質量ppmの濃度でシリコーンオイルを添加した後にペレット化したもの(つまり、シリコーン内添ペレット)において、どの程度の割合がペレット表面に表出してくるのかについて、それを算出するための技術常識を提示するか、又は必要な実験結果を提示されたい。

かかる審尋事項に対して、審判請求人は、平成29年9月29日に提出された回答書において、
「重合体ペレットの表面にシリコーンオイルを付着させるようにして本願発明のオレフィン系重合体ペレットを製造した場合にも、また、オレフィン系重合体を製造する過程またはオレフィン系重合体を造粒してペレット化する過程においてシリコーンオイルを添加した場合にも、得られた本願発明のオレフィン系重合体ペレットは、一部のシリコーンオイルがその表面に存在する一方、一部のシリコーンオイルはペレットの内部に存在すると考えられます。」
と述べた上で、本願に係るオレフィン系重合体などの軟質樹脂中において、シリコーンオイルなどの低分子量物が、樹脂の表面と内部とを移動することが、本願出願以前から当業者に周知の事象でであることの証拠として、特開平11-115124号公報(以下、「刊行物A」という。)及び特開2010-196053号公報(以下、「刊行物B」という。)という刊行物を提示した。

しかしながら、刊行物Aの例えば段落【0011】において、ポリプロピレン樹脂層から帯電防止剤及び滑剤が別の層へ移行することが記載されているものの、帯電防止層の具体例が記載された段落【0015】にも、滑剤の具体例が記載された【0016】にも、シリコーンオイルは記載されていない。また同様に、刊行物Bの例えば段落【0004】において、界面活性剤などの低分子型帯電防止剤はポリマー中における拡散速度が大きいため経時的にポリオレフィン系フィルム表面に滲出することが記載されているものの、当該低分子型帯電防止剤がシリコーンオイルであるかどうかは不明である。したがって、刊行物A及びBの記載を考慮しても、依然として、オレフィン系重合体を含むシリコーン内添ペレットにおいて、シリコーンオイルが表面に滲出することが技術常識であるとする根拠が見出せない。さらには、仮に、オレフィン系重合体を含むシリコーン内添ペレットにおいて、シリコーンオイルが表面に滲出することが技術常識であるとしても、かかるペレットに含まれるシリコーンオイルのうちどの程度の割合がペレット表面に滲出してくるのかについて、経時的な変化の様子も含めて、何ら証拠が示されていないゆえ、本願発明1の課題を解決するのに十分な量がペレット表面に存在しているとは依然として認められない。
したがって、上記回答書の主張内容を考慮しても、本願発明1がサポート要件を充足するものとは認められない。

(7) 小括
以上のことから、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が前記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとは認められず、また、出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとも認められないため、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 特許法第29条第2項について
(1) 引用例1の記載事項
引用例1には、以下のア?サが記載されている。(なお、記載事項中の下線は合議体によるものである。)


「【特許請求の範囲】
【請求項1】(省略)
【請求項2】
下記要件(ア)?(エ)を満足することを特徴とする軟質プロピレン系樹脂組成物。
要件(ア):JIS K 7113に準拠して測定した引張弾性率が10MPa 以上、300MPa以下。
要件(イ):JIS K 7105に準拠して測定した内部平行光線透過率が70% 以上、100%以下。
要件(ウ):DSCで測定したピークのピークトップ温度が100℃以上、165℃以下の範囲に存在する。
要件(エ):JIS K 7365にしたがって測定したかさ密度が0.3g/cm^(3)以上である軟質プロピレン系樹脂の粒子から実質的になること。」


「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた柔軟性、透明性および耐熱性を兼ね備えると共に、べたつきが少ない新規な軟質ポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。」


「【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
[軟質プロピレン系樹脂組成物]
本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物は、実質的に以下に説明するブロック(I) およびブロック(II)から構成され、ブロック(I) およびブロック(II)がそれぞれ単位重合鎖上に存在する、いわゆる真のブロック共重合体、両ブロックの物理的混合物あるいはこれらの混合物のいずれをも含む。」


「【0017】
ブロック(I)のプロピレン系重合体とは、プロピレンを含む重合体で実質的に構成されており、具体的には例えば、(i)プロピレンの単独重合体、ならびに(ii)プロピレンと、エチレンおよび/または炭素数4?20のα-オレフィンとの共重合体を意味する。好ましいプロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体およびプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0018】
プロピレン系重合体が共重合体である場合には、プロピレン単位以外のオレフィン単位の含有量は少ない方が最終的に得られる軟質プロピレン系樹脂組成物のべたつきが抑えられるため好ましい。すなわち、ブロック(I)を構成するプロピレン系共重合体中のプロピレン単位以外のオレフィン単位の含有率として通常10mol%以下であって、5mol%以下が好ましく、3mol%以下がさらに好ましい。」


「【0040】
<ブロック(II)>
ブロック(II)は、プロピレンおよびエチレンを共重合成分として含有し、必要に応じて炭素数4?20のα-オレフィンを共重合成分として含有するもので、ブロック(I)とは異なる共重合体である。該共重合体中のエチレンと必要に応じて用いられる炭素数4?20のα-オレフィンとの含量の合計は0.1?40mol%である。エチレンと炭素数4?20のα-オレフィンとの比率は特に限定されず、目的とする共重合体に応じて適宜調製する。該共重合体の好ましい様態としては、プロピレン・エチレン共重合体や、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体などが挙げられる。ブロック(II)の共重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量で通常5万以上、好ましくは10万以上であって、通常200万以下、好ましくは100万以下である。該共重合体の分子量とは、本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物がブロック(I)とブロック(II)との真のブロック共重合体である場合、該樹脂組成物を構成する一の共重合体に含まれるブロック(II)の共重合体に由来する部分のトータルの分子量を意味し、両ブロックの物理的混合物である場合、ブロック(II)の共重合体の分子量を意味する。
【0041】
共重合体中のエチレンと必要に応じて用いられる炭素数4?20のα-オレフィンとの含量の合計が0.1?40mol%でない場合には、物性の低下が起きる。例えば、共重合体中のエチレンと、必要に応じて用いられる炭素数4?20のα-オレフィンとの含量の合計が40mol%を越えると、柔軟性は得られるものの透明性の低下が起こりやすくなるため、40mol%以下とするのが好ましい。より好ましい含量は5?40mol%であり、更に好ましくは7?30mol%、特に好ましくは10?25mol%である。」


「【0042】
[軟質プロピレン系樹脂組成物の組成]
本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物は、実質的にブロック(I)とブロック(II)から構成される軟質プロピレン系樹脂であるが、実質的には、本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物が、必須成分としてブロック(I)およびブロック(II)を含有し、両者の合計量が、少なくとも軟質プロピレン系樹脂組成物全体の80重量%以上であることであり、軟質プロピレン系樹脂組成物全体に対して通常20重量%以下、なかでも10重量%以下であれば、従来公知の添加剤、フィラー、顔料、ミネラルオイル、樹脂改質材などの任意成分の添加を妨げるものではない。
【0043】
ブロック(I)とブロック(II)の比率については、ブロック(I)を、ブロック(I)とブロック(II)の合計に対して、通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であって、通常95重量%以下、好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下含む。そして、ブロック(II)を、ブロック(I)とブロック(II)の合計に対して、通常5重量%以上、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上であって、通常95重量%以下、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下含む。」


「【0104】
要件(ウ)は、耐熱性に関する要件であり、本発明の組成物が優れた耐熱性を有することを示す。DSCによる融点ピークのピークトップ温度は、DuPont社製熱分析システムTA2000を使用して、以下の方法で求める。
試料(約5?10mg)を200℃で3分間融解後、10℃/minの速度で30℃まで降温した後に、10℃/minで200℃まで昇温することにより融解曲線を得て、最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点として求める。
【0105】
融点ピークのピークトップ温度は100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であって、165℃以下、好ましくは162℃以下、より好ましくは160℃以下である。融点ピークのピークトップ温度が100℃未満では、耐熱性が不十分であり、加熱して使用する用途において、該樹脂の使用が困難になり好ましくない。一方、融点ピークトップ温度が165℃を超えると、柔軟性が損なわれる傾向にあるとともに、透明性も悪化する傾向にあるため好ましくない。」


「【0115】
係る軟質ポリプロピレン系樹脂組成物は、例えば既知の方法でステレオブロック構造を有する樹脂組成物を形成し、それを粉砕したり、造粒する等して、かさ密度の要件を満たすことにより製造できる。一例を挙げると、アイソタクチックペンタッド(mmmm)が 90%未満のポリプロピレンをメタロセン触媒を用いて製造し、別途、低エチレン含量のプロピレン・エチレン共重合体をチーグラーナッタ触媒もしくはメタロセン触媒などで製造し、これらを押出機などを用いて混練する。この際、必要に応じて、チーグラーナッタ触媒で製造したホモポリプロピレンを同時に混練してもよい。混練後、ペレタイザーを用いて造粒する。なお、造粒後、さらに粉砕処理してもよい。」


「【0116】
[軟質プロピレン系樹脂組成物の改質]
本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物には、その優れた柔軟性、透明性、耐熱性を損なわない範囲で、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィンブロック共重合体等の各種プロピレン系重合体や、高圧法ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体等のエチレン系重合体、ポリブテン-1、スチレンとブタジエンのブロック共重合体の水添物等を添加してもよい。
【0117】
また、プロピレン系重合体の透明性向上に常用されるα-晶結晶核剤、β-晶結晶核剤を添加しても良い。さらには、柔軟性等を付与するために配合される鉱物油等のゴム用軟化剤が配合されてもよい。本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物には、さらに、その他の各種樹脂やゴム、ガラス繊維、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、マイカ、クレー等の充填材、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃材、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、中和剤、石油樹脂等の粘着剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤が、必要に応じて配合されてもよい。
【0118】
本発明の軟質プロピレン系樹脂組成物は、その用途に応じて従来公知の架橋剤、架橋助剤の存在下、動的に架橋することもでき、また、無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸を有機過酸化物の存在下にグラフトすることもできる。」


「【0171】
実施例4
(1) 粘土鉱物の化学処理
300ml丸底フラスコに、脱塩水(94ml)、硫酸リチウム1水和物(14.5g)および硫酸(21.9g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL,30.5g)を分散させ、10分間かけて沸騰するまで昇温し、沸点(105℃)で120分間攪拌を行った。その後、脱塩水200mlを加えて冷却し、得られたスラリーを濾過してウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000mlビーカーにて、脱塩水(500ml)を用いて再度スラリー化し、濾過を行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、空気下100℃で3時間乾燥し、化学処理モンモリロナイト(26.2g)を得た。
【0172】
(2) 予備重合
実施例4(1)で得られた化学処理モンモリロナイト(1.56g)を200℃で2時間減圧乾燥した。これに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.50mmol/ml,6.0ml)を加え、室温で30分間撹拌した。この懸濁液にトルエン(25ml)を加え、撹拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返して粘土スラリーを得た。
【0173】
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.047mmol)と、実施例3(1)で得られたジクロロ{1,1’-ジメチルシリレン[2-メチルベンゾ[e]インデニル][2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル]}ハフニウム(exo-syn/exo-anti=5/1(mol比),16.48mg,23.4μmol)を加え、トルエン溶液とした。この錯体溶液全量を上記粘土スラリーに加え、室温で1時間撹拌し、触媒スラリーを得た。
【0174】
次に、内容積2リッターの誘導撹拌式オートクレーブ内に、上記触媒スラリーを全量導入した。トリイソブチルアルミニウム(0.043mmol)を含有するトルエン(100ml)を導入し、オートクレーブ内に、30℃で液化プロピレン(30ml)を導入し、30℃で120分間予備重合を行った。得られた予備重合触媒スラリーを200ml丸底フラスコに回収し、上澄みを除いた後、トリイソブチルアルミニウム(0.018mmol)を含有したトルエン(70ml)で洗浄した。この予備重合触媒は、固体触媒成分1gあたりポリプロピレン4.3gを含有していた。
【0175】
(3) 気相 2段重合
内容積2リッターの誘導撹拌式オートクレーブ内に、100℃で乾燥した大粒径ポリプロピレン110gを導入し、減圧窒素置換した。その後、トリイソブチルアルミニウム(0.20mmol)を導入し、オートクレーブ内に装着した触媒フィーダー内に、上記予備重合触媒を固体触媒成分として67.2mg導入した。オートクレーブを加熱し、50℃で、触媒フィーダーから予備重合触媒をオートクレーブ内に導入し、プロピレンを導入しながらさらに加熱した。65℃まで昇温後、圧力を1.8MPaとし、同温度で180分間反応を継続した。反応中は、圧力一定となるようにプロピレンガスを導入した。反応終了後、未反応モノマーをパージして重合を停止し、プロピレンの単独重合体(ブロック(I))を得た。オートクレーブの重合前後の重量変化から収量を測定したところ、68gであった。
【0176】
オートクレーブを60℃まで昇温し、プロピレンおよびエチレンを導入してプロピレンとエチレンの共重合、すなわちブロック(II)の重合を開始した。なお、モノマー組成は、エチレン29mol%、プロピレン71mol%とし、圧力は2.1MPaとした。反応中は、モノマー組成および圧力が一定となるようにエチレンおよびプロピレンの混合ガスを導入した。60℃で120分間反応を行った後、未反応モノマーをパージして重合を停止した。重合停止後、篩い分けにより最初に加えた大粒径ポリプロピレンと、目的とする気相2段重合品による軟質プロピレン系樹脂組成物とを分別し、軟質プロピレン系樹脂組成物を粒子状の重合体として得た。収量は146gであり、かさ密度は0.37g/cm^(3)であった。
【0177】
(4) 物性評価
実施例4(3)で得られたブロック(II)に関する解析を行った。収量より、得られたプロピレン系樹脂組成物中のブロック(II)の含量は、53.4wt%であった。これと^(13)C-NMRにて測定した該プロピレン系樹脂組成物中のエチレン含量より、ブロック(II)中のエチレン含量を求めたところ10.5mol%であった。さらに、実施例4(3)で得られた軟質プロピレン系樹脂組成物粒子を用いて、前記した方法により混練およびプレスシート作成を行い、該プレスシートの物性評価を行った。真密度=0.8780g/cm^(3),D硬度=47,引張弾性率=113MPa,引張破断点伸び=1074%,内部光線透過率=84.5%,融点148.9℃であった。得られたプレスシートは、柔軟性・透明性・耐熱性ともに良好であり、かつ、べたつきもなかった。
【0178】
(5) ブロック(I) の構造解析
実施例4(3)と同様にして、別途、ブロック(I)の重合を行った。得られた重合体を^(13)C-NMRにて解析したところ、以下の結果を得た。head to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のミクロタクティシティは、mmmm=73.2%,mmmr=8.0%,rmmr=0.8%,mmrr=8.1%,mmrm+rmrr=3.9%,rmrm=1.6%,rrrr=0.5%,rrrm=1.1%,mrrm=2.8%であり、ステレオブロックポリプロピレンであった。また、Sに対するS_(1)の比率は73.2%、4+2S_(1)/S_(2)=22.3であった。また、全プロピレン挿入に対し、プロピレンの2,1-挿入に基づく位置不規則単位の量は0.1%、プロピレンの1,3-挿入に基づく位置不規則単位の量は0.2%であった。」


「【0179】
実施例5
(1) 粘土鉱物の化学処理
300ml丸底フラスコに、脱塩水(94ml)、硫酸リチウム1水和物(14.5g)および硫酸(22.1g)を採取し、攪拌下に溶解させた。この溶液に、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL,29.4g) を分散させ、20分間かけて沸騰するまで昇温し、103℃で120分間攪拌を行った。その後、脱塩水400mlを加えて冷却し、得られたスラリーを遠心分離後、上澄み液をデカンテーションしてウェットケーキを回収した。回収したケーキを1,000mlビーカーにて、脱塩水(400ml)を用いて再度スラリー化し、同様に遠心分離及びデカンテーションを行った。この操作を2回繰り返した。最終的に得られたケーキを、空気下100℃で3時間乾燥し、化学処理モンモリロナイト(23.8g)を得た。
【0180】
(2) 予備重合
実施例5(1)で得られた化学処理モンモリロナイト(0.52g)を200℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後の重量は、0.48gであった。これに、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.45mmol/ml,2.1ml)を加え、室温で30分間撹拌した。この懸濁液にトルエン(20ml)を加え、撹拌後、上澄みを除いた。この操作を2回繰り返して粘土スラリーを得た。
【0181】
別のフラスコに、東ソー・アクゾ社製トリイソブチルアルミニウム(0.36mmol)と、実施例3(1)で得られたジクロロ{1,1’-ジメチルシリレン[2-メチルベンゾ[e]インデニル][2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル]}ハフニウム(exo-syn/exo-anti=10/1mol比,123.6mg,175.6μmol)を加え、あらかじめ反応させトルエン溶液とした。この錯体溶液(2.96μmol/ml,2.4ml)を上記粘土スラリーに加え、室温で10分間撹拌し、トルエンを追加して濃度調製を行い、触媒スラリー(50.0mg/ml)を得た。
【0182】
次いで、精製窒素で置換された、いかり型攪拌翼を内蔵する2リッターの誘導攪拌式オートクレーブに、上記触媒スラリーを3.0ml、およびトルエン50mlを導入した。さらに、トリイソブチルアルミニウム(0.25mmol)を含有するトルエン(2.5ml)をオートクレーブ内に装着した触媒フィーダ内に導入し、オートクレーブ内に、30℃で液化プロピレン(50g)を導入し、30℃で10分間予備重合を行った。予備重合終了後、オートクレーブ内に残留したプロピレンをパージし、触媒フィーダ内のトリイソブチルアルミニウムを圧入した。
【0183】
(3) プロピレン単独重合 (ブロック(I)の重合)
実施例5(2)で得られた予備重合触媒入りオートクレーブに、トルエン650mlおよび液化プロピレン150gを装入した。その後50℃まで昇温し、重合開始とした。50℃におけるオートクレーブ内圧は0.7MPaであった。50℃で120分間、内圧0.7MPaが保持されるように液化プロピレンをフィードした。120分後、オートクレーブの内温を40℃まで急冷した。この間、モノマーのパージは行わなかった。
【0184】
(4) プロピレン・エチレン共重合 (ブロック(II)の重合)
あらかじめ別の2リッターの誘導攪拌式オートクレーブをエチレン/プロピレン混合ガス用バッファータンクとして準備した。このタンクにエチレン0.50MPaおよび液化プロピレン250gを装入し、タンクの全重量を秤量した。このタンクを加熱して65℃に保温した。実施例5(3)に引き続き、実施例5(3)で用いた誘導攪拌式オートクレーブの内温を40℃に調整後、液化プロピレン75gを装入した。さらにエチレンをエチレン分圧として0.60MPa装入後、40℃で重合開始とした。重合開始時のオートクレーブ内圧は1.0MPaであった。40℃で90分間、内圧1.0MPaが保持されるように、バッファータンクから混合ガスをフィードした。90分後、メタノールを圧入して重合を停止し、モノマーをパージした。内容物を回収し、溶媒を除去したところ、ブロック(I) および(II)の組成物として重合体243gが得られた。プロピレン・エチレン共重合時のエチレン/プロピレン混合ガスの消費量は198gであった。なお、重合中、気相部のエチレン濃度をガスクロマトグラフにより求めたところ、平均22.1mol%であった。
【0185】
得られた重合体を分析したところ、以下の結果が得られた。
ブロック(II)におけるエチレン含量をIRにて求めたところ、4.2mol%であった。また、ブロック(I)および(II)からなる組成物のMFR は、10.0g/10minであった。ブロック(I)および(II)からなる組成物のDSC測定を行ったところ、融点ピークは 145.7℃、結晶融解熱量は11.2J/gであった。なお、該組成物は、ゴム状の塊状物として得られ、かさ密度の測定はできなかった。
【0186】
(5) 物性測定
実施例5(4)で得られた重合体を、前記した方法にて、ラボプラストミルを用いて溶融混練し、軟質プロピレン系樹脂組成物を得た。ここで得られた軟質プロピレン系樹脂組成物を用いて、前記した方法にて、プレス成形機を用いてプレスシートサンプルを作成し、得られたプレスシートの物性測定を行った。真密度=0.8694g/cm^(3),D硬度=82,引張弾性率=34MPa,引張破断点伸び>941%,内部光線透過率=85.5%,融点=147.0℃であった。得られたプレスシートは、柔軟性・透明性・耐熱性ともに良好であり、かつ、べたつきもなかった。
【0187】
(6) ブロック(I) の構造解析
実施例5(3)と同様にしてブロック(I)の重合を行った。得られた重合体を^(13)C-NMRで測定した結果、head to tail結合からなるプロピレン単位連鎖部のミクロタクティシティは、mmmm=69.4%,mmmr=7.8%,rmmr=1.0%,mmrr=7.7%,mmrm+rmrr=5.3%,rmrm=2.7%,rrrr=0.9%,rrrm=1.6%,mrrm=3.5%であり、ステレオブロックポリプロピレンであった。また、Sに対するS_(1)の比率は69.4%、4+2S_(1)/S_(2)=21.8であった。また、全プロピレン挿入に対し、プロピレンの2,1-挿入に基づく位置不規則単位の量は0.4%、プロピレンの1,3-挿入に基づく位置不規則単位の量は0.3%であった。なお、MFR は、3.5g/10minであった。また、DSC測定を行ったところ、融点ピークは 146.5℃、結晶融解熱量は38.9J/g であった。」

(2) 引用発明
引用例1の請求項2には、
「【請求項2】
下記要件(ア)?(エ)を満足することを特徴とする軟質プロピレン系樹脂組成物。
要件(ア):JIS K 7113に準拠して測定した引張弾性率が10MPa 以上、300MPa以下。
要件(イ):JIS K 7105に準拠して測定した内部平行光線透過率が70% 以上、100%以下。
要件(ウ):DSCで測定したピークのピークトップ温度が100℃以上、165℃以下の範囲に存在する。
要件(エ):JIS K 7365にしたがって測定したかさ密度が0.3g/cm^(3)以上である軟質プロピレン系樹脂の粒子から実質的になること。」
と記載されている。
また、引用例1の記載クには、混練後、樹脂組成物をペレタイザーを用いて造粒して、かさ密度を満たすことにより製造できることが記載されている。
よって、引用例1には、上記【請求項2】に記載された軟質プロピレン系樹脂組成物からペレタイザーを用いて造粒したものが記載されているといえるから、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「下記要件(ア)?(エ)を満足する、軟質プロピレン系樹脂組成物を造粒して得られたペレット。
要件(ア):JIS K 7113に準拠して測定した引張弾性率が10MPa以上、300MPa以下。
要件(イ):JIS K 7105に準拠して測定した内部平行光線透過率が70%以上、100%以下。
要件(ウ):DSCで測定したピークのピークトップ温度が100℃以上、165℃以下の範囲に存在する。
要件(エ):JIS K 7365にしたがって測定したかさ密度が0.3g/cm^(3)以上である。」

(3) 対比・判断
引用発明の軟質プロピレン系樹脂組成物は、本願発明1のプロピレン系重合体であるオレフィン系重合体に相当する。
引用発明の要件(ウ)におけるピークのピークトップ温度とは、引用例の記載キによると、融解曲線を得て、最後の昇温段階における主吸熱のピークのピークトップ温度を融点として求めるものである。そうすると、引用発明の要件(ウ)はDSCで測定したピークのピークトップ温度すなわち融点が100℃以上、165℃以下の範囲に存在するところ、本願発明1に係るオレフィン系重合体の示差走査熱量計で測定した融点(Tm)が135℃以上150℃以下であるから、両者は135℃以上150℃の範囲で重複している。そして、引用例1の記載コの実施例4及び記載サの実施例5には、融点がそれぞれ148.9℃及び147.0℃の樹脂組成物が得られたことが記載されていることも踏まえると、両発明の融点については、135℃以上150℃以下の範囲で重複一致しているといえる。
引用発明の要件(ア)は、JIS K 7113に準拠して測定した引張弾性率が10MPa以上、300MPa以下の範囲であるところ、本願発明1に係るオレフィン系重合体の引張弾性率が30MPa以上120MPa以下であるから、両者は30MPa以上、120MPa以下の範囲で重複している。そして、引用例1の記載コの実施例4及び記載サの実施例5には、引張弾性率がそれぞれ113MPa及び34MPaである樹脂組成物が得られたことが記載されていることも踏まえると、両発明の引張弾性率については、30MPa以上120MPa以下の範囲で重複一致しているといえる。
さらに、引用発明の「軟質プロピレン系樹脂組成物を造粒して得られたペレット」は、本願発明1の「オレフィン系重合体ペレット」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明は、次の点で一致している。
一致点:
「(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が135℃以上150℃以下、
(b)引張弾性率が30MPa以上120MPa以下
を満たす、プロピレン系重合体であるオレフィン系重合体を含む、
オレフィン系重合体ペレット。」

そして、本願発明1と引用発明は、次の点で相違している。
(相違点1)
オレフィン系重合体におけるプロピレンの含有量について、本願発明1では、「プロピレンを65mol%以上含有する」ことが特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含む」ことが特定されているのに対し、引用発明では、シリコーンオイルを含むとの特定がされていない点。

上記相違点1について検討する。
引用発明の軟質プロピレン系樹脂組成物は、引用例1の記載ウによれば、実質的にブロック(I)とブロック(II)から構成されるものであるところ、引用例1の記載エには、ブロック(I)におけるプロピレン単位以外のオレフィン単位の含量について、また、引用例1の記載オには、ブロック(II)におけるプロピレン単位以外のオレフィン単位の含量について、それぞれ記載されている。
そして、引用例1の記載カの段落【0043】には、ブロック(I)とブロック(II)の比率は、ブロック(I)を、ブロック(I)とブロック(II)の合計に対して、通常5重量%以上、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上であって、通常95重量%以下、好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下含むと記載されている。
ここで、引用例1の記載エの段落【0018】及び記載オの段落【0041】において、ブロック(I)及び(II)それぞれのプロピレン単位以外のオレフィン単位の含有量について最も好ましい例として記載されている例に着目すると、ブロック(I)については、「さらに好ましい」例として「3mol%以下」と記載され、ブロック(II)については、「特に好まし」い例として「10?25mol%」と記載されている。
よって、これらの例を採用した場合、ブロック(I)と(II)から構成される軟質プロピレン系樹脂組成物において、当該ブロック(I)と(II)の比率がどのようなものであっても、プロピレン単位以外のオレフィン単位の含有量は25mol%を超えることはない。すなわち、プロピレン単位が75mol%を下回ることはない。
また、引用例1の記載コに記載された実施例4では、ブロック(I)はプロピレンのみから調製し、分析の結果、プロピレン系樹脂組成物中のブロック(II)の含有量が53.4wt%(段落【0177】)であり、ブロック(II)のエチレン含量が10.5mol%であったことが記載されている。よって、実施例4で得られたプロピレン系樹脂組成物中のプロピレン含有量は、約94.4mol%[計算式:100%×(1-0.534)+89.5%×0.534]である。さらに、引用例1の記載サに記載された実施例5でも、ブロック(I)はプロピレンのみから調製し、ブロック(II)についても分析の結果エチレン含量が4.2mol%(段落【0185】)であることが記載されているから、ブロック(I)とブロック(II)の存在比は不明であるものの、プロピレン系樹脂組成物中のプロピレン含有量は、少なくとも95.8mol%を超える値である。
してみると、本願発明1のオレフィン系重合体おいて「プロピレンを65mol%以上含有する」のに対して、引用発明におけるオレフィン系重合体中のプロピレン単位の含有量が最も好ましいものとして記載されている範囲から計算すると75mol%を下回ることはなく、かつ引用発明の実施態様を表す実施例においてもプロピレン含有量が約94.4mol%或いは95.8%超のものが実際に得られているのであるから、相違点1に関しては、引用発明は本願発明1の範囲に包含されているといえ、実質的な相違点ではない。
なお、仮に相違点1が実質的な相違点であるとしても、引用例1の記載エ及びオに基づいてオレフィン系重合体を調製することによって、オレフィン系重合体におけるプロピレンの含有量を65mol%以上とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

上記相違点2について検討する。
引用例2は、ポリオレフィンの造粒方法に関する文献であり、その特許請求の範囲の請求項1及び段落【0004】?【0005】によれば、溶融状態のオレフィン系重合体を押出機によりダイスノズルより押出し、ペレット状に切断するとともに、シリコーンオイルを含有する冷却水で固化する方法において、シリコーンオイルを十分に分散させるために、冷却水としてエマルジョンタイプのシリコーンオイルを100質量ppm以上10000質量ppm以下で含有する水を用いる造粒方法が記載されている(以下、かかる造粒方法を「引用例2の造粒方法」という。)。
ここで、前記引用例2の段落【0002】の「背景技術」の記載のみならず、本願出願前に頒布された刊行物である特開2009-29844号公報(以下、「周知例1」という。例えば段落【0084】参照。)、特開2007-177151号公報(以下、「周知例2」という。例えば段落【0034】参照。)、特開2006-328350号公報(以下、「周知例3」という。例えば段落【0016】参照。)、特開2011-57721号公報(以下、「周知例4」という。例えば段落【0032】参照。)等にも記載されているとおり、ポリプロピレン系の共重合体をペレット化する際に、シリコーンオイルを適用してブロッキングを防止すること、すなわちシリコーンオイルをアンチブロッキング剤として用いることは、本願出願前において当業者によく知られた技術である。特に、周知例1及び周知例2では、高融点のポリプロピレン系共重合体を含む樹脂組成物をペレット化する際であっても、ブロッキングを防止する目的でシリコーンオイルを適用することが記載されており、例えば周知例1の実施例1においては、融点が138℃のペレットにシリコーンオイルを適用したことが記載されている(表1参照。)。
すなわち、引用例2及び周知例1?4は、ポリプロピレン系樹脂組成物のブロッキングを防止することを課題とし、その課題解決手段としてシリコーンオイルを適用するという点において技術的に共通する刊行物であり、これらの記載に基づくと、ポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化するに当たり、ペレットのブロッキングを防止する目的でシリコーンオイルを適用することは、当業者にとって周知慣用技術であるといえ(以下、これを「周知慣用技術」という。)、かかる周知慣用技術は樹脂組成物の融点の高低に関わらず採用されているものと認められる。
したがって、引用発明においても、ペレット化したときのブロッキングの問題は一般的に当業者が当然想起するものであるから、上記周知慣用技術に基づいて、シリコーンオイルを適用すればブロッキングを防止できると理解し、ブロッキングをより確実に防止することを目的として、シリコーンオイルが十分に分散してペレットに付着するよう、引用例2の造粒方法を適用してペレット表面にシリコーンオイルを付着させることは、当業者が容易になし得た事項である。そしてその際に、引用例2の造粒方法を適用すると、ペレットに含まれるシリコーンオイル濃度は、自ずと0.1質量ppm以上40質量ppm以下の範囲のものとなることについて以下説明する。
まず、本願明細書の実施例における冷却水中のエマルジョンタイプシリコーンの濃度とそれによって得られたペレット中のシリコーンオイル含有量の関係に着目すると、次のとおりの対応関係となる。
冷却水中濃度(ppm) ペレット中の含有量(ppm)
実施例1: 3000 2.8
実施例2: 3000 2.9
実施例3: 30 0.5
実施例4: 300 1.1
実施例5: 3000 2.9
かかる本願明細書の実施例によれば、冷却水中のエマルジョンタイプシリコーンオイル濃度が高ければ、得られるペレット中のシリコーンオイル含有量も高くなる傾向にあると理解できる。
一方、引用例2には、ペレット中にいかなる濃度でシリコーンオイルを含むかについて明示的な数値の記載はないが、同引用例2の請求項1には、冷却水としてエマルジョンタイプのシリコーンオイルを100質量ppm以上10000質量ppm以下で含有する水を用いることが記載され、また、段落【0048】に記載された実施例1及び2では、冷却水中のエマルジョンタイプシリコーンオイルの濃度を1000質量ppm及び5000質量ppmとしたことが記載されている。
ここで、エマルジョンタイプシリコーンオイルを冷却水中に含ませるという手段によってオレフィン系樹脂組成物のペレット表面にシリコーンオイルを付着させるという点において、本願明細書の実施例1?5の方法と引用例2の造粒方法は同じであるから、そこから得られるペレットに含まれるシリコーンオイルの濃度についても通常同じ傾向を示すことが類推できる。すなわち、例えば、本願明細書の実施例4及び5の記載から類推すると、引用例2の実施例1で冷却水中のエマルジョンタイプシリコーンオイルの濃度を1000質量ppmとしたときは、得られるペレットに含まれるシリコーンオイル濃度は、1.1質量ppmと2.9質量ppmの間の値になると認められる。また、引用例2の請求項1に記載された冷却水中の濃度「100質量ppm以上10000質量ppm以下」という範囲全般に渡ってみても、本願明細書の実施例に照らせば、ペレット中のシリコーンオイル含有量が0.1質量ppm以上40質量ppm以下の範囲のものが得られると解するのが自然である。
したがって、引用発明において、シリコーンオイルをペレットに十分に分散させる方法である引用例2の造粒方法を適用したときには、自ずと、ペレット中のシリコーンオイル含有量が0.1質量ppm以上40質量ppm以下の範囲のペレットが得られるものと認められる。

(4) 本願発明1が奏する効果について
上記第4の「1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について」で説示したとおり、本願発明1は、シリコーンオイルをペレットの表面ではなく、樹脂組成物の調製時に0.1質量ppmの濃度で内部添加された態様をも包含しており、その場合には、ロータリーバルブにおける噛み込みトラブル防止の効果が発揮されるものとは認められないため、ロータリーバルブにおける噛み込みトラブル防止の効果は、本願発明1全体において奏せられる効果とはいえない。

なお、ロータリーバルブにおける噛み込みトラブル防止の効果が、本願発明1全体が奏する効果であると認められる場合についても一応検討する。
引用例4の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0001】には、ポリオレフィン製造プロセスの後処理工程において、ポリオレフィンペレット表面へアンチブロッキング剤を均一に付着せしめることで、ポリオレフィンペレットの空送圧力損失の低減およびロータリーバルブのブレードとケーシング間への噛み込み防止を行う後処理方法が記載されている。
上記引用例4(請求項1及び段落【0001】等。)に示されるように、ロータリーバルブへのペレットの噛み込みを防止するという課題と、アンチブロッキング剤を用いるという課題解決の方法が本願出願前に知られていたのであるから、アンチブロッキング剤であるシリコーンオイルを適用したことによって、ロータリーバルブへのペレットの噛み込みが防止されるという効果は、当業者にとって容易に予測できたものであるといえる。

(5) 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成29年7月7日提出の意見書において、概略次のとおり主張している。
(主張1)
本願で問題とするロータリーバルブ移送の運転性については、樹脂の融点Tmが135?150℃の場合に特に問題となる事項であり、このことは本願[0104]の表1に示されている。
(主張2)
引用例1には、「シリコーンオイルを0.1質量ppm以上40質量ppm以下の量で含むペレット」については、記載はもとより示唆すらされておらず、また、ロータリーバルブを用いてペレットを移送することについては何ら記載されておらず、ペレットの移送時の齧りの問題については何ら認識されていない。このような引用例1には、どのようなオレフィン系重合体が、アンチブロッキング特性に優れるにもかかわらず、ロータリーバルブを有する輸送経路で使用すると齧りトラブルが発生しやすいのかについては何ら教示されていない。また引用例1に記載の軟質プロピレン系樹脂組成物は、べたつきがない組成物であることから、さらにブロッキング等を防止する対処を行う必要がなく、シリコーンオイルを添加する動機づけもない。
(主張3)
引用例2には、当初よりべたつきやブロッキングの問題を有さない、アンチブロッキング特性に優れるオレフィン系重合体に対して、シリコーンオイルを含有する水と接触させて用いるという技術的思想は何ら教示されていない。そして当業者であれば、ブロッキングの問題を有さない樹脂ペレットに対して、不純物となるシリコーンオイルを敢えて添加する動機は有しない。
(主張4)
引用例4においては、「粘着性を有する樹脂ペレット」を移送の対象としているのであって、ブロッキングを生じず、ペレット同士の粘着がないオレフィン系重合体ペレットを、ロータリーバルブを用いて移送する場合において、噛み込みの問題は公知の課題ではなく、その解消方法は何ら検討されていない。また、引用例4には、ロータリーバルブでの移送温度については記載されておらず、本願発明で解決する問題点も認識されていない。

主張1について検討する。
ロータリーバルブの運転性の評価に関して、本願明細書の段落【0104】の【表1】を参照しても、融点のみに依存して運転性の問題が生じるとは直ちには認められず、例えば、MFRや引張弾性率の影響を受けている可能性は否定できない。したがって、ロータリーバルブの運転性について、単に「樹脂の融点Tmが135?150℃の場合に特に問題となる事項」であるとは認められないため、本願発明1に係るプロピレン系重合体の融点について、「135℃以上150℃以下」と特定することに、格別の技術的な困難性を見出すことができない。したがって、上記主張1については理由がない。

主張2及び3について検討する。
引用発明のペレットについて、引用例1の記載イによると、べたつきが少ないものであると認められるから、一般的にはブロッキングしにくいことは推測できるものの、まったくブロッキングしないこととは通常解されない。このことは、引用例1の記載ケにおいて、添加剤としてブロッキング防止剤を添加してもよいことが示唆されていることとも符合する。また、例えば周知例1や2の記載に基づけば、高融点成分を含むオレフィン系樹脂組成物に対しても、シリコーンオイルを適用してブロッキングを防止することが、本願出願前から行われていたことは先に述べたとおりである。
よって、引用発明のペレットに対して、アンチブロッキング剤がまったく不要であるとまではいえないのであるから、当業者にとって、一般的なブロッキング防止という課題に基づいて、シリコーンオイルを適用することは依然として容易に想到し得た事項である。
そして、アンチブロッキング剤であるシリコーンオイルを適用したポリオレフィン系重合体のペレットについて、ロータリーバルブを有する輸送経路で使用したときに噛み込みを防止できるとう効果については、引用例4の記載に基づいて、当業者が容易に予測可能であることは先に説示したとおりである。
したがって、上記主張2及び3については理由がない。

主張4について検討する。
引用例4は、粘着性を有するポリオレフィンペレットについての記載ではあるものの、このことから直ちに、引用発明に係るペレット、すなわちべたつきが少ないポリオレフィン系樹脂組成物のペレットに対してアンチブロッキング剤を適用しても、ロータリーバルブでの噛み込みを防止する効果が得られないとは解されず、むしろ粘着性を有するペレットに限らず、べたつきの少ないペレットであっても、アンチブロッキング剤を適用すれば、少なくとも一定程度の上記効果が得られると予測するのが自然である。
なお、引用例4には現に、粘着性を有するポリオレフィンペレットについて、ロータリーバルブでの噛み込みの問題が指摘されているのであるから、かかる問題が、本願発明1に係る高融点成分を含む軟質系樹脂に特有に発生するものとはいえない。
また、ロータリーバルブでの移送温度については、本願発明1の発明特定事項ではないため、請求項の記載に基づかない主張であるから、採用できない。
したがって、上記主張4については理由がない。

(6) 小括
以上のことからみて、本願発明1は、引用発明並びに引用例1、2、4の記載及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

上記第4で検討したとおり、本願の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこれらの理由により拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-28 
結審通知日 2018-01-09 
審決日 2018-01-22 
出願番号 特願2012-185319(P2012-185319)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B29B)
P 1 8・ 121- WZ (B29B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 佐久 敬
渕野 留香
発明の名称 オレフィン系重合体ペレット及びその移送方法  
代理人 特許業務法人SSINPAT  
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