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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1338084
審判番号 不服2017-8799  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-16 
確定日 2018-03-08 
事件の表示 特願2015-149690号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年2月9日出願公開、特開2017-29233号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月29日に出願されたものであって、平成28年9月30日付けで手続補正がなされ、同年11月7日付け拒絶理由通知に対して平成29年1月16日付けで手続補正がなされたところ、同年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成29年6月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年6月16日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成29年1月16日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域に設けられた始動入賞口と、
当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示装置と、
画像が表示される演出表示装置と、
遊技の基本動作を主に制御する主制御装置と、
遊技の演出的動作を主に制御する副制御装置と、を備える弾球遊技機であって、
前記主制御装置は、
前記始動入賞口への入球を契機として前記当否判定のための抽選値を取得する抽選値取得手段と、
前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する当否判定手段と、
前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する変動パターン決定手段と、
前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって、前記図柄を前記図柄表示装置に変動表示させる図柄表示制御手段と、
前記当否判定の結果が当りとなった場合に、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する特別遊技制御手段と、
前記抽選値取得手段により前記抽選値が取得された場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで当該抽選値を保留球として保留する保留制御手段と、
前記始動入賞口への入球があった場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報を事前判定情報として前記副制御装置へ通知する通知手段と、を備え、
前記副制御装置は、
前記演出表示装置に表示させる演出用の画像を決定する演出決定手段と、
前記演出決定手段により決定された演出用の画像を前記演出表示装置に表示する演出制御手段と、を備え、
前記演出制御手段は、事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として前記演出表示装置に表示可能であり、
前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて、当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示し、
前記演出表示装置に表示されている保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能であり、
保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を表示し、
前記事前判定情報が特別遊技移行に係る情報である場合又は特定変動パターンに係る情報である場合の方が、前記事前判定情報が特別遊技非移行に係る情報である場合又は前記特定変動パターンとは異なる所定変動パターンに係る情報である場合よりも、少なくとも、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される確率、又は、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出が実行される可能性が高く、
保留球画像は、同一の事前判定情報に係る保留球画像が段階的に変化する第1変化態様により変化する場合と、異なる事前判定情報に係る1又は複数の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合があり、
前記演出制御手段は、前記保留変化示唆画像が表示された場合であっても前記保留球画像の態様を変化させないように制御可能である弾球遊技機。」
は、審判請求時に提出された手続補正書(平成29年6月16日付け)における、
「【請求項1】
遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域に設けられた始動入賞口と、
当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示装置と、
画像が表示される演出表示装置と、
遊技の基本動作を主に制御する主制御装置と、
遊技の演出的動作を主に制御する副制御装置と、を備える弾球遊技機であって、
前記主制御装置は、
前記始動入賞口への入球を契機として前記当否判定のための抽選値を取得する抽選値取得手段と、
前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する当否判定手段と、
前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する変動パターン決定手段と、
前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって、前記図柄を前記図柄表示装置に変動表示させる図柄表示制御手段と、
前記当否判定の結果が当りとなった場合に、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する特別遊技制御手段と、
前記抽選値取得手段により前記抽選値が取得された場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで当該抽選値を保留球として保留する保留制御手段と、
前記始動入賞口への入球があった場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報を事前判定情報として前記副制御装置へ通知する通知手段と、を備え、
前記副制御装置は、
前記演出表示装置に表示させる演出用の画像を決定する演出決定手段と、
前記演出決定手段により決定された演出用の画像を前記演出表示装置に表示する演出制御手段と、を備え、
前記演出制御手段は、事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として前記演出表示装置に表示可能であり、
前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて、当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示し、
前記演出表示装置に表示されている保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能であり、
保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能であり、保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される弾球遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)

2.本件補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、以下に挙げる補正事項を含むものである。
ア 補正事項1
補正前の「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を表示し」を、「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能であり」とする補正。

イ 補正事項2
補正前の
「T1 前記事前判定情報が特別遊技移行に係る情報である場合又は特定変動パターンに係る情報である場合の方が、前記事前判定情報が特別遊技非移行に係る情報である場合又は前記特定変動パターンとは異なる所定変動パターンに係る情報である場合よりも、少なくとも、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される確率、又は、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出が実行される可能性が高く、
T2 保留球画像は、同一の事前判定情報に係る保留球画像が段階的に変化する第1変化態様により変化する場合と、異なる事前判定情報に係る1又は複数の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合があり、
T3 前記演出制御手段は、前記保留変化示唆画像が表示された場合であっても前記保留球画像の態様を変化させないように制御可能である」を、
「T 保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される」とする補正。(「T」、「T1」?「T3」は分説のため当審にて付与した。以下「構成T」などという。)

(2)新規事項の有無についての検討
ア 補正事項1
本件出願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の【0194】には、「保留球画像724の表示領域720には、保留球画像724が表示されるとともに、保留球画像724が変更される場合に表示態様が変更される複数の保留変化示唆画像が、それぞれ対応する保留球画像724の近傍に表示される。保留変化示唆画像は、保留球画像724が表示される位置を示すための枠、図形、画像などであってもよいし、その他の任意の画像であってもよい。」なる記載があり、また、【0203】?【0204】、及び該各段落で参照される図27(a)?(b)には、新たに入球した3個目の保留球について、保留球画像を変更する保留球変化演出の実行が決定された場合に、保留球画像の表示領域720の最も左に表示されている1個目の保留球の周囲の表示枠を爆弾の態様728に変更し、該爆弾の態様を、該1個目の保留球に対応する変動表示が終了し、保留球画像が一つずつ左へ移動し、2個目の保留球に対応する変動表示が開始されても、引き続き該2個目の保留球に対応する最も左の保留球画像の周囲の表示枠を爆弾の態様とすることが記載されており、前記「爆弾の態様」は保留球画像の「周囲」すなわち近傍に表示されるものであるし、該「爆弾の態様」は少なくとも1個目及び2個目の各保留球画像に対応する図柄の変動表示にわたって表示されているから、当該記載事項は、上記補正事項1により加入された「保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示」することに対応する。
よって、上記補正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。

イ 補正事項2
当初明細書の【0204】には「更に次の図柄の変動表示が開始されると、図27(c)に示すように、保留球画像が更に1つずつ左へ移動され、変更対象である特定保留球の保留球画像726が爆弾の態様728で表示されている保留球画像枠に移動される。このとき、演出表示制御手段305は、保留変化示唆画像としての保留球画像枠が保留球画像に干渉する様子の例として、爆弾が爆発した画像730を表示し、保留球画像が変更されることを遊技者に報知する。爆発が終了すると、図27(d)に示すように、特定保留球の保留球画像726の種類が変更される。」と記載されており、ここで、変更対象である特定保留球が「爆弾の態様」の保留球画像枠内に移動してきたことが、もともと保留球画像枠に表示されていた「爆弾の態様728」が「爆弾が爆発した画像730」となることが、上記補正後の構成Tの「保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合」に対応し、当該「爆弾が爆発した画像730」となった保留球画像枠内の保留球画像726が「爆発が終了すると・・・変更される」ことは、「爆弾が爆発した画像730」となった保留球画像枠と、該爆発後に変化する保留球画像とが対応していることから、上記構成Tの「保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される」ことに対応する。
よって、上記補正事項2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。

(3)補正の目的要件違反についての検討
ア 補正事項1について
補正事項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「保留変化示唆画像を表示」することについて、該表示が「保留球画像の近傍」であることと「複数回の図柄の変動表示にわたって」行われることとを限定するものであり、補正前後において産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるといえるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正であるといえる。

イ 補正事項2について
補正事項2に係る補正前の構成T1?T3と補正後の構成Tとは、共に「演出制御手段」による「演出表示装置」に対する表示処理に関する点で共通するものの、補正前の構成T1では「特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される確率、又は、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出が実行される可能性」についての場合分けについて、同構成T2では「保留球画像」の変化態様の複数種別について、同構成T3では「保留変化示唆画像」が表示される場合と「保留球画像の態様」の「変化」が実行される場合との関係について、それぞれ特定していたところ、補正後の構成Tでは、「保留球変化示唆画像」と変更される「保留球画像」との位置関係について特定しており、前記補正前の構成T1?T3のいずれの発明特定事項とも直接関係しない。
よって、当該補正事項2は、「演出制御手段」による「演出表示装置」に対する表示処理に関し、補正前の構成T1?T3に係る発明特定事項を削除すると共に、補正後の構成Tに係る発明特定事項を新たに追加したものということができ、少なくとも補正前の発明特定事項の削除、または補正前後における発明特定事項の変更を伴う点で、補正が特許請求の範囲を減縮するものであること、補正が補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項を限定するものであること、との要件を満たさず、特許法第17条の2第5項第2号の限定的減縮を目的とするものであるとはいえない。
また、当該補正事項2が、同項第1、3、4各号に規定する請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない事項の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。

ウ 以上のとおりであるから、上記本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

エ しかしながら、事案に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第3項及び第5項の規定に違反しないものと仮定して、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を続けることとする。

3.本件補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本件補正発明について
本件補正発明は、上記1.の本件補正の概要に示した次のとおりのものである(A?Uは、分説のため当審にて付与した。)

「A 遊技領域が形成された遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられた始動入賞口と、
C 当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示装置と、
D 画像が表示される演出表示装置と、
E 遊技の基本動作を主に制御する主制御装置と、
F 遊技の演出的動作を主に制御する副制御装置と、を備える弾球遊技機であって、
G 前記主制御装置は、
前記始動入賞口への入球を契機として前記当否判定のための抽選値を取得する抽選値取得手段と、
H 前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する当否判定手段と、
I 前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する変動パターン決定手段と、
J 前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって、前記図柄を前記図柄表示装置に変動表示させる図柄表示制御手段と、
K 前記当否判定の結果が当りとなった場合に、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する特別遊技制御手段と、
L 前記抽選値取得手段により前記抽選値が取得された場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで当該抽選値を保留球として保留する保留制御手段と、
M 前記始動入賞口への入球があった場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報を事前判定情報として前記副制御装置へ通知する通知手段と、を備え、
N 前記副制御装置は、
前記演出表示装置に表示させる演出用の画像を決定する演出決定手段と、
O 前記演出決定手段により決定された演出用の画像を前記演出表示装置に表示する演出制御手段と、を備え、
P 前記演出制御手段は、事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として前記演出表示装置に表示可能であり、
Q 前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて、当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示し、
R 前記演出表示装置に表示されている保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能であり、
S 保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能であり、
T 保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される
U 弾球遊技機。」

(2)刊行物1に記載された発明
ア 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-141535号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【請求項1】
始動領域を遊技媒体が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立に基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示部を備え、該可変表示部に特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させる遊技機であって、
前記始動領域を遊技媒体が通過したときに、数値データを抽出する数値データ抽出手段と、
前記始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず前記開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数を限度に、前記数値データ抽出手段が抽出した前記数値データを保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
前記数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データに基づく前記開始条件が成立する以前に、当該数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データを用いて、可変表示が所定の第1状態となるか否か、及び、可変表示が該第1状態と異なる所定の第2状態となるか否かを判定する判定手段と、
前記数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データに基づく前記開始条件が成立したときに、当該数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データを用いて、可変表示を前記第1状態とするか否か、及び、可変表示を前記第2状態とするか否かを決定する開始時状態決定手段と、
前記保留記憶の数の保留表示を所定の表示態様で表示する保留表示制御手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記第1状態となる可能性があることを予告する第1予告演出と前記第2状態となる可能性があることを予告する第2予告演出とについて、前記判定手段による判定の対象となった前記数値データに基づく前記開始条件が成立する以前に実行するか否かを決定する予告演出決定手段と、
前記予告演出決定手段によって前記予告演出を実行すると決定されたことに基づいて、該予告演出を実行する予告演出実行手段と、を含み、
前記予告演出実行手段は、前記第1予告演出を実行すると決定されたことに基づいて、前記保留表示の表示態様を第1表示態様に変化させると共に、該保留表示の表示態様を前記第1表示態様に変化させるときに当該保留表示に対して第1保留演出を実行し、前記第2予告演出を実行すると決定されたことに基づいて、前記保留表示の表示態様を前記第1表示態様と異なる第2表示態様に変化させると共に、該保留表示の表示態様を前記第2表示態様に変化させるときに当該保留表示に対して第2保留演出を実行することを特徴とする遊技機。」

(イ)「【0007】
まず手段1に係る発明は、
始動領域(第1始動入賞口13又は第2始動入賞口14)を遊技媒体が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立(第1特別図柄及び第2特別図柄のいずれの可変表示も実行されておらず、かつ大当り遊技状態でもないこと)に基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示部(第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8b)を備え、該可変表示部に特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に移行させる遊技機であって、・・・。」

(ウ)「【0025】
・・・そして、可変表示装置に変動表示される図柄の表示結果が特定の表示結果でない場合には「はずれ」となり、変動表示状態は終了する。遊技者は、大当りをいかにして発生させるかを楽しみつつ遊技を行う。」

(エ)「【0030】
(手段11)本発明による遊技機は、第1の始動領域(例えば、第1始動入賞口13)を遊技媒体(例えば、遊技球)が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立(例えば、第1特別図柄および第2特別図柄のいずれの可変表示も実行されておらず、かつ大当り遊技状態でもないこと)にもとづいて、各々を識別可能な複数種類の第1の識別情報(例えば、第1特別図柄)の可変表示を行い表示結果を導出表示する第1の可変表示部(例えば、第1特別図柄表示器8a)と、第2の始動領域(例えば、第2始動入賞口14)を遊技媒体が通過した後に、開始条件の成立にもとづいて、各々を識別可能な複数種類の第2の識別情報(例えば、第2特別図柄)の可変表示を行い表示結果を導出表示する第2の可変表示部(例えば、第2特別図柄表示器8b)とを備え、第1の可変表示部または第2の可変表示部に特定表示結果(例えば、大当り図柄)が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)に移行させる遊技機であって、遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560)と、遊技制御手段からの情報にもとづいて第1の可変表示部および第2の可変表示部における可変表示に対応した演出(例えば、演出図柄の変動表示)を実行する演出装置(例えば、演出表示装置9)を制御する演出制御手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100)と、を備え、遊技制御手段は、第1の始動領域または第2の始動領域を遊技媒体が通過したときに、数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1)、変動パターン種別判定用乱数(ランダム2)および変動パターン判定用乱数(ランダム3))を抽出する数値データ抽出手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS1216,S1227を実行する部分)と、第1の始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数(例えば、4)を限度に、数値データ抽出手段が抽出した数値データを保留記憶として記憶する第1の保留記憶手段(例えば、図20(B)に示す第1保留記憶バッファ)と、第2の始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数(例えば、4)を限度に、数値データ抽出手段が抽出した数値データを保留記憶として記憶する第2の保留記憶手段(例えば、図20(B)に示す第2保留記憶バッファ)と、数値データ抽出手段によって抽出された数値データにもとづく開始条件が成立する以前に、当該数値データ抽出手段によって抽出された数値データを用いて、可変表示が所定の状態(例えば、スーパーリーチ)となるか否かを判定する判定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS1217,S1228を実行する部分)と、第1の保留記憶手段または第2の保留記憶手段が記憶する保留記憶が増加したことを認識可能に保留記憶情報(例えば、始動入賞指定コマンド、合算保留記憶数指定コマンド)を送信する保留記憶情報送信手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS1220,S1221,S1231,S1232を実行する部分)と、判定手段の判定結果を示す判定結果情報(例えば、図柄指定コマンド、変動カテゴリコマンド)を送信する判定結果情報送信手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS1218、S1219,S1229,S1230を実行する部分)と、数値データ抽出手段によって抽出された数値データにもとづく開始条件が成立したときに、当該数値データ抽出手段によって抽出された数値データを用いて、可変表示を所定の状態とするか否かを決定する開始時状態決定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS61,S62,S74,S91?S105を実行する部分)と、を含み、演出制御手段は、判定結果情報にもとづいて、所定の状態となる可能性があることを予告する予告演出(例えば、先読み予告演出)を、判定手段による判定の対象となった数値データにもとづく開始条件が成立する以前に実行するか否かを決定する予告演出決定手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS6011,S6027,S8010を実行する部分)と、予告演出決定手段によって予告演出を実行すると決定されたことにもとづいて、該予告演出を実行する予告演出実行手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS6016,S6017,S8108を実行する部分)と、保留記憶情報に含まれる第1の保留記憶手段と第2の保留記憶手段とのうちいずれの保留記憶が増加したかを特定可能な保留記憶手段特定情報を正常に受信することができなかった場合に、予告演出の実行を制限する予告演出制限手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS6004,S6006でNのときにステップS6033を実行して先読み予告設定制限期間を開始し、ステップS8002,S8003でYのときにステップS8005を実行して先読み予告設定制限期間を終了する部分)と、を含むことを特徴とする。そのような構成により、保留記憶情報に含まれる保留記憶手段特定情報を正常に受信することができなかった場合には予告演出の実行を制限するので、可変表示を行う前に実行可能な予告演出の信頼性が低下することを防止することができる。」

(オ)「【0035】(手段16)手段11から手段15のうちのいずれかにおいて、演出制御手段は、保留記憶情報にもとづいて第1の保留記憶手段と第2の保留記憶手段とが記憶する保留記憶の数を特定し、該特定した保留記憶の数の保留表示を所定の表示態様(例えば、第1通常表示(赤色の丸形表示)、第2通常表示(青色の丸形表示))で表示する保留表示制御手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS6021,S6022を実行する部分)を含み、・・・」

(カ)「【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。」

(キ)「【0039】
・・・ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。なお、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている。
【0040】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9の表示画面には、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示に同期した演出図柄の可変表示を行う演出図柄表示領域がある。よって、演出表示装置9は、演出図柄の可変表示を行う可変表示装置に相当する。演出図柄表示領域には、例えば「左」、「中」、「右」の3つの装飾用(演出用)の演出図柄を可変表示する図柄表示エリアがある。図柄表示エリアには「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリアがあるが、図柄表示エリアの位置は、演出表示装置9の表示画面において固定的でなくてもよいし、図柄表示エリアの3つ領域が離れてもよい。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。」

(ク)「【0049】
遊技盤6における下部の左側には、識別情報としての第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aが設けられている。この実施の形態では、第1特別図柄表示器8aは、0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第1特別図柄表示器8aは、0?9の数字(または、記号)を可変表示するように構成されている。遊技盤6における下部の右側には、識別情報としての第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bが設けられている。第2特別図柄表示器8bは、0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第2特別図柄表示器8bは、0?9の数字(または、記号)を可変表示するように構成されている。
・・・
【0054】
演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられている。
第1始動入賞口13に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第1始動口スイッチ13aによって検出される。
【0055】
また、第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14を有する可変入賞球装置15が設けられている。第2始動入賞口(第2始動口)14に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第2始動口スイッチ14aによって検出される。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が第2始動入賞口14に入賞可能になり(始動入賞し易くなり)、遊技者にとって有利な状態になる。可変入賞球装置15が開状態になっている状態では、第1始動入賞口13よりも、第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。また、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、遊技球は第2始動入賞口14に入賞しない。従って、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、第2始動入賞口14よりも、第1始動入賞口13に遊技球が入賞しやすい。なお、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態において、入賞はしづらいものの、入賞することは可能である(すなわち、遊技球が入賞しにくい)ように構成されていてもよい。」

(ケ)「【0061】
また、演出表示装置9の表示画面の下部には、第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数)を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられている。この実施の形態では、合計数を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられていることによって、可変表示の開始条件が成立していない実行条件の成立数の合計を把握しやすくすることができる。なお、この実施の形態では、合算保留記憶表示部18cにおいて、第1保留記憶と第2保留記憶とが第1始動入賞口13および第2始動入賞口14への入賞順に並べて表示されるとともに、第1保留記憶であるか第2保留記憶であるかを認識可能な態様で表示される(例えば、第1保留記憶は白の保留球で表示され、第2保留記憶はグレーの保留球で表示される)。」

(コ)「【0081】
なお、遊技制御用マイクロコンピュータ560においてCPU56がROM54に格納されているプログラムに従って制御を実行するので、以下、遊技制御用マイクロコンピュータ560(またはCPU56)が実行する(または、処理を行う)ということは、具体的には、CPU56がプログラムに従って制御を実行することである。このことは、主基板31以外の他の基板に搭載されているマイクロコンピュータについても同様である。」

(サ)「【0091】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、および演出図柄プロセスフラグ等の演出に関する情報を記憶するRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。
・・・
【0093】
演出制御用CPU101は、受信した演出制御コマンドに従ってCGROM(図示せず)から必要なデータを読み出すための指令をVDP109に出力する。CGROMは、演出表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データ、具体的には、人物、文字、図形や記号等(演出図柄を含む)、および背景画像のデータをあらかじめ格納しておくためのROMである。VDP109は、演出制御用CPU101の指令に応じて、CGROMから画像データを読み出す。そして、VDP109は、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行する。」

(シ)「【0152】
CPU56は、所定の時期に、乱数回路503のカウント値を抽出して抽出値を大当り判定用乱数(ランダムR)の値とするのであるが、・・・」

(ス)「【0203】
この実施の形態では、後述する入賞時演出処理(図21参照)において、遊技制御用マイクロコンピュータ560は、始動入賞時に、大当りとなるか否かや、小当りとなるか否か、大当りの種別、変動パターン種別判定用乱数の値がいずれの判定値の範囲にとなるかを判定する。そして、図柄指定コマンドのEXTデータに、大当りや小当りとなることを指定する値や、大当りの種別を指定する値を設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する制御を行う。」

(セ)「【0226】
ステップS300?S310の処理は、以下のような処理である。
【0227】
特別図柄通常処理(ステップS300):特別図柄プロセスフラグの値が0であるときに実行される。遊技制御用マイクロコンピュータ560は、特別図柄の可変表示が開始できる状態になると、保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数(合算保留記憶数)を確認する。保留記憶バッファに記憶される数値データの記憶数は合算保留記憶数カウンタのカウント値により確認できる。また、合算保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS301に応じた値(この例では1)に更新する。なお、大当りフラグは、大当り遊技が終了するときにリセットされる。
【0228】
変動パターン設定処理(ステップS301):特別図柄プロセスフラグの値が1であるときに実行される。また、変動パターンを決定し、その変動パターンにおける変動時間(可変表示時間:可変表示を開始してから表示結果を導出表示(停止表示)するまでの時間)を特別図柄の可変表示の変動時間とすることに決定する。また、決定した変動パターンに応じた変動パターンコマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する制御を行い、特別図柄の変動時間を計測する変動時間タイマをスタートさせる。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS302に対応した値(この例では2)に更新する。
【0229】
表示結果指定コマンド送信処理(ステップS302):特別図柄プロセスフラグの値が2であるときに実行される。演出制御用マイクロコンピュータ100に、表示結果指定コマンドを送信する制御を行う。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS303に対応した値(この例では3)に更新する。
【0230】
特別図柄変動中処理(ステップS303):特別図柄プロセスフラグの値が3であるときに実行される。変動パターン設定処理で選択された変動パターンの変動時間が経過(ステップS301でセットされる変動時間タイマがタイムアウトすなわち変動時間タイマの値が0になる)すると、演出制御用マイクロコンピュータ100に、図柄確定指定コマンドを送信する制御を行い、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS304に対応した値(この例では4)に更新する。なお、演出制御用マイクロコンピュータ100は、遊技制御用マイクロコンピュータ560が送信する図柄確定指定コマンドを受信すると演出表示装置9において第4図柄が停止されるように制御する。
【0231】
特別図柄停止処理(ステップS304):特別図柄プロセスフラグの値が4であるときに実行される。大当りフラグがセットされている場合に、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS305に対応した値(この例では5)に更新する。また、小当りフラグがセットされている場合には、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS308に対応した値(この例では8)に更新する。大当りフラグおよび小当りフラグのいずれもセットされていない場合には、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS300に対応した値(この例では0)に更新する。なお、この実施の形態では、特別図柄プロセスフラグの値が4となったことにもとづいて、後述するように、特別図柄表示制御処理において特別図柄の停止図柄を停止表示するための特別図柄表示制御データが特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定され(図29参照)、ステップS22の表示制御処理において出力バッファの設定内容に応じて実際に特別図柄の停止図柄が停止表示される。
【0232】
大入賞口開放前処理(ステップS305):特別図柄プロセスフラグの値が5であるときに実行される。大入賞口開放前処理では、大入賞口を開放する制御を行う。具体的には、カウンタ(例えば、大入賞口に入った遊技球数をカウントするカウンタ)などを初期化するとともに、ソレノイド21を駆動して大入賞口を開放状態にする。また、大入賞口開放中指定コマンドを演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する制御を行うとともに、タイマによって大入賞口開放中処理の実行時間を設定し、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS306に対応した値(この例では6)に更新する。なお、大入賞口開放前処理は各ラウンド毎に実行されるが、第1ラウンドを開始する場合には、大入賞口開放前処理は大当り遊技を開始する処理でもある。また、大入賞口開放中指定コマンドはラウンドごとにそのラウンドを指定する値がEXTデータに設定されて送信されるので、ラウンドごとに異なる大入賞口開放中指定コマンドが送信される。例えば、大当り遊技中の第1ラウンドを実行する際には、ラウンド1を指定する大入賞口開放中指定コマンド(A101(H))が送信され、大当り遊技中の第10ラウンドを実行する際には、ラウンド10を指定する大入賞口開放中指定コマンド(A10A(H))が送信される。」

(ソ)「【0242】
次いで、CPU56は、乱数回路503やソフトウェア乱数を生成するためのカウンタから値を抽出し、それらを、第1保留記憶バッファ(図20(B)参照)における保存領域に格納する処理を実行する(ステップS1216)。」

(タ)「【0249】
次いで、CPU56は、乱数回路503やソフトウェア乱数を生成するためのカウンタから値を抽出し、それらを、第2保留記憶バッファ(図20(B)参照)における保存領域に格納する処理を実行する(ステップS1227)。」

(チ)「【0253】
図21は、ステップS1217,S1228の入賞時演出処理を示すフローチャートである。入賞時演出処理では、CPU56は、まず、ステップS1216,S1227で抽出した大当り判定用乱数(ランダムR)と図8(A)の左欄に示す通常時の大当り判定値とを比較し、それらが一致するか否かを確認する(ステップS220)。この実施の形態では、特別図柄および演出図柄の変動を開始するタイミングで、後述する特別図柄通常処理において大当りや小当りとするか否か、大当り種別を決定したり、変動パターン設定処理において変動パターンを決定したりするのであるが、それとは別に、遊技球が第1始動入賞口13や第2始動入賞口14に始動入賞したタイミングで、その始動入賞にもとづく変動表示が開始される前に、入賞時演出処理を実行することによって、あらかじめ大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別、変動パターン種別判定用乱数の値がいずれの判定値の範囲にとなるかを確認する。そのようにすることによって、演出図柄の変動表示が実行されるより前にあらかじめ変動表示結果や変動パターン種別を予測し、後述するように、入賞時の判定結果にもとづいて、演出制御用マイクロコンピュータ100によって演出図柄の変動表示中に大当りやスーパーリーチとなることを予告する先読み予告演出を実行する。」

(ツ)「【0333】
図29は、主基板31に搭載される遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)が実行する特別図柄表示制御処理(ステップS32)のプログラムの一例を示すフローチャートである。特別図柄表示制御処理では、CPU56は、特別図柄プロセスフラグの値が3であるか否かを確認する(ステップS3201)。特別図柄プロセスフラグの値が3であれば(すなわち、特別図柄変動中処理の実行中であれば)、CPU56は、特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う(ステップS3202)。この場合、CPU56は、特別図柄ポインタが示す方の特別図柄(第1特別図柄または第2特別図柄)の変動表示を行うための特別図柄表示制御データを設定または更新する。例えば、変動速度が1コマ/0.2秒であれば、0.2秒が経過する毎に、出力バッファに設定される特別図柄表示制御データの値を+1する。そして、その後、表示制御処理(ステップS22参照)が実行され、特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファの内容に応じて特別図柄表示器8a,8bに対して駆動信号が出力されることによって、特別図柄表示器8a,8bにおける特別図柄の変動表示が実行される。」

(テ)「【0423】
(保留球変化の先読み予告演出)
ここで本実施形態における「保留球変化」の先読み予告演出について、図59?図61を用いて説明する。本実施形態では、保留球変化の先読み予告演出について、予告の対象が異なる複数(2つ)の演出系統が存在する。1つは大当りの可能性(大当り期待度)を示唆する演出系統であり、もう1つはスーパーリーチの可能性(スーパーリーチ期待度)を示唆する演出系統である。図59(a)に示すように、大当り期待度は保留球の色によって異なる。大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)、大当り期待度が中程度であれば先読み予告演出によって保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球の色は赤になる。また、図59(b)に示すように、スーパーリーチ期待度は保留球の形状によって異なる。スーパーリーチ期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球は変化せず(割れず)、スーパーリーチ期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球が割れる(さらに割れた保留球からSという文字が出現する)。
【0424】
本実施形態では、保留球の色又は形状を変化させる際の演出として、所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、保留球の色又は形状を変化させようとする。ここで、図59(c)に示すように、小人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し易いように演出の割り振りが行われている。また、小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し難く)、保留球の形状が変化し難い(即ち割れ難い)ように演出の割り振りが行われており、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し易く)、保留球の形状が変化し易い(即ち割れ易い)ように演出の割り振りが行われている。
・・・
【0426】
図60に、本実施形態における保留球変化の予告演出の一例を示す。図60の例では、合算保留記憶表示部18cに保留球が3個表示されており、演出図柄が変動表示されている状態で、保留球変化の先読み予告演出が行われる。図60(1)に示すように、演出表示装置9に刷毛1110とペンキ入りのバケツ1120を持った小人のキャラ1100が表示され、このキャラ1100が左から3つめの保留球1000に近づく。次いで図60(2)に示すように、保留球1000に対して、小人が刷毛1110によってバケツ1120のペンキを使用して色を塗る動作を行う。本例では白の保留球1000が赤に塗り替えられたものとする。そして図60(3)に示すようにペンキを塗り終えた小人のキャラ1100は去り、演出表示装置9に表示されなくなる。この例では、白の保留球1000が赤に変化したため、遊技者は大当り期待度が高いことを認識し、大当りの期待感及び興味を持って遊技を行うことができる。」

(ト)「【0436】
本実施形態では、演出制御用CPU101は、図62(a)に示す色変化決定時の振り分けテーブルに基づいて、保留球変化の先読み予告演出を経た後(即ちキャラ出現後)の保留球の色を決定する。ここで、演出制御用CPU101は、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンド(例えばC401(H)、C402(H)、又はC403(H))を受信したときには、保留球の色が高確率で青又は赤となる判定値のテーブル(図62(a)上段)を選択し、上記以外の図柄指定コマンド(例えばC400(H)等)を受信したときには、保留球の色が高確率で変化しない判定値のテーブル(図62(a)下段)を選択する。なお図62、並びに後述する図63及び図64に示す各テーブルは、演出制御用CPU101がアクセス可能なROMに記憶されているものとする。
【0437】
本例では、演出制御用CPU101が、いわゆる実質出玉有り大当りである2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムXの値が1?5の範囲であれば保留球の色を変化させず、6?30の範囲であれば保留球の色を青とし、31?100の範囲であれば保留球の色を赤とする。従って、キャラ出現後の保留球の色は5%の確率で変化せず、25%の確率で青に変化し、70%の確率で赤に変化する。一方、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムXの値が1?96の範囲であれば保留球の色を変化させず、97?99の範囲であれば保留球の色を青とし、100であれば保留球の色を赤とする。従って、キャラ出現後の保留球の色は96%の確率で変化せず、3%の確率で青に変化し、1%の確率で赤に変化する。」

(ナ)「【0440】
この演出番号は、図63に示すように保留球の色変化に対応して付されており、本例では演出番号A0Xは保留球の色変化なし、演出番号A1Xは保留球の色を青に変化、演出番号A2Xは保留球の色を赤に変化させる演出である。従って、ステップS6018Cにおいて、演出制御用CPU101は、RAMの保留球表示処理用テーブルを参照することで、ステップS6018Bにおける決定色より期待度の高い色の保留球を表示しているか否か(又は表示するか否か)を確認することができる。例えば決定色が「変化なし」の場合に、演出番号A1X(青に対応)又はA2X(赤に対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6018CでYESと判定する。また、例えば決定色が「青」の場合に、演出番号A2X(赤に対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6018CでYESと判定する。S6018CでYESと判定すると、そのまま処理を終了する。このように、期待度の高い先読み予告演出が行われる場合には、これより期待度の低い先読み予告演出を行わない。従って、先読み予告が頻繁に生じることで遊技者が煩わしさをおぼえることを防止し、期待度の低い先読み予告によって遊技の興味が削がれることを防止することができる。」

(ニ)「【0445】
また、本例では、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?50の範囲であれば演出番号A22を選択し、51?90の範囲であれば演出番号A23を選択し、91?100の範囲であれば演出番号A24を選択する。一方、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?60の範囲であれば演出番号A22を選択し、61?99の範囲であれば演出番号A23を選択し、100であればA24を選択する。なお、演出番号A21は、小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が赤の場合に30%(左テーブル及び右テーブル)の確率で出現するステップアップ演出となっている。」

(ヌ)「【0454】
この演出番号は、図64に示すように保留球の形状変化に対応して付されており、本例では演出番号B0Xは保留球の形状変化なし(割れない)、演出番号B1Xは保留球の形状変化有り(割れる)の演出である。従って、ステップS6019Cにおいて、演出制御用CPU101は、RAMの保留球表示処理用テーブルを参照することで、ステップS6019Bにおける決定形状より期待度の高い形状の保留球を表示しているか否かを確認することができる。例えば決定形状が「割れない」の場合に、演出番号B1X(割れるに対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6019CでYESと判定する。S6019CでYESと判定すると、そのまま処理を終了する。このように、期待度の高い先読み予告演出が行われる場合には、これより期待度の低い先読み予告演出を行わない。従って、先読み予告が頻繁に生じることで遊技者が煩わしさをおぼえることを防止し、期待度の低い先読み予告によって遊技の興味が削がれることを防止することができる。」

(ネ)「【0633】
上記の実施形態において、保留球変化の先読み予告演出の対象となる保留記憶が生じてから(始動入賞が生じてから)、当該保留記憶に係る変動が開始されるまでの期間は、演出表示装置9に表示される背景画面を、所定の特殊画面とするようにしても良い。即ち、演出制御用マイクロコンピュータ100は、保留球変化の先読み予告実行中フラグがセットされている期間は特殊画面を表示するようにすると良い。ここで特殊画面は、保留球変化の演出系統(色変化演出であるか形状変化演出であるか)に応じて異ならせるようにすると良い。例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、始動入賞時に保留球表示処理用テーブル(例えば図65及び図66参照)を参照して、当該始動入賞に係る演出番号がAXX(色変化)であれば、第1特殊画面(例えば晴天画面)を表示し、当該始動入賞に係る演出番号がBXX(形状変化)であれば、第2特殊画面(例えば豪雨画面)を表示するようにすると良い。これによれば保留球変化の先読み予告演出が実行されるときに背景画像も特殊背景となるため演出効果を高めることができる。また第1保留演出(色変化)であるか第2保留演出(形状変化)であるかによって背景画像を異ならせることで、保留球変化のみの場合と比較して当該先読み予告が大当り期待度に関するものであるのか又はスーパーリーチ期待度に関するものであるのかを遊技者が把握しやすくなり、演出効果がさらに高まる。
【0634】
また、上記のように始動入賞が生じてから当該始動入賞に基づく保留記憶に係る変動が開始されるまでの期間は、演出表示装置9に表示される背景画面を、所定の特殊画面とするようにした場合、図67に示すように始動入賞直後の変動表示Bが短縮変動であるときに、保留球変化の演出は次変動(変動表示C)に持ち越されるが、短縮変動の場合であっても特殊画面を表示させることは可能であるため、変動表示Bのときに背景画面を特殊画面とすることは可能である。このように保留球変化に先立って特殊画面による先読み予告演出を実行することも可能となる。この場合、遊技者は変動表示Bのときに背景画像が特殊画面となったことで保留球変化の先読み予告が実行されることを期待し、次変動の変動表示Cのときに実際に保留球変化の演出が実行されることになる。このように異なる態様の先読み予告演出を段階的に実行することで演出を多様化し、演出効果を高めることができる。」

イ 刊行物1の図面には以下の事項が記載されている。
(ア)図1には、遊技盤6の遊技領域7の下方に、第1始動入賞口13と第2始動入賞口14とが配置されることが記載されているといえる。

ウ 上記アの各記載事項及び上記イで認定した図面の記載事項から、以下の事項が導かれる。
(あ)上記【0039】には「遊技盤6の前面には、打ち込まれた遊技球が流下可能な遊技領域7が形成されている」と記載されている。
よって、刊行物1には、「遊技領域7が形成された遊技盤6」を備えることが記載されているといえる。

(い)上記【0040】には「遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている」と記載され、上記【0054】、【0055】にはそれぞれ、「演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられている」、「第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14を有する可変入賞球装置15が設けられている」と記載されている。また、図1には上記イ(ア)のとおり、「遊技盤6の遊技領域7の下方に、第1始動入賞口13と第2始動入賞口14とが配置される」ことが記載されている。
これらの各記載事項から、刊行物1には、「遊技領域7に設けられた第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14」が記載されているといえる。

(う)上記【0049】には「遊技盤6における下部の左側には、識別情報としての第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aが設けられている。・・・遊技盤6における下部の右側には、識別情報としての第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bが設けられている。」と記載されている。また、上記【0007】には「始動領域(第1始動入賞口13又は第2始動入賞口14)を遊技媒体が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立・・・に基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示部(第1特別図柄表示器8a,第2特別図柄表示器8b)を備え、該可変表示部に特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(大当り遊技状態)に移行させる」と記載されている。また、上記【0025】には、「可変表示装置に変動表示される図柄の表示結果が特定の表示結果でない場合には「はずれ」となり」と記載されている。
前記各記載事項から、刊行物1には、「可変表示がなされ、大当たり遊技状態に移行する大当り図柄である特定表示結果、または該特定表示結果でない表示結果が導出表示される、第1特別図柄表示器8a及び第2特別図柄表示器8b」を備えることが記載されているといえる。

(え)上記【0040】には「遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。・・・演出表示装置9は、演出図柄の可変表示を行う可変表示装置に相当する。」と記載されている。
よって、刊行物1には、「演出図柄の可変表示を行う演出表示装置9」を備えることが記載されているといえる。

(お)上記【0030】には「本発明による遊技機は、・・・遊技機であって、遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560)と、・・・を備え」と記載されている。
また、上記【0081】には「遊技制御用マイクロコンピュータ560(またはCPU56)が実行する(または、処理を行う)ということは、具体的には、CPU56がプログラムに従って制御を実行することである」と記載されていることから、実行手段としての「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は「CPU56」といいかえることができる(以下同様。)。
よって、前記各記載事項から、刊行物1には、「遊技の進行を制御する遊技制御手段としてのCPU56」を備えることが記載されているといえる。

(か)上記【0030】には「遊技制御手段からの情報にもとづいて第1の可変表示部および第2の可変表示部における可変表示に対応した演出(例えば、演出図柄の変動表示)を実行する演出装置(例えば、演出表示装置9)を制御する演出制御手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100)」と記載されている。
また、上記【0091】には「演出制御基板80は、演出制御用CPU101、および・・・演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している」と記載され、上記【0081】には「遊技制御用マイクロコンピュータ560(またはCPU56)が実行する(または、処理を行う)ということは、具体的には、CPU56がプログラムに従って制御を実行することである。このことは、主基板31以外の他の基板に搭載されているマイクロコンピュータについても同様である。」と記載されている。よって、演出制御基板80の演出制御用マイクロコンピュータ100についても、具体的には演出制御用CPU101がプログラムに従って制御を実行しているといえ、実行手段としての「演出制御用マイクロコンピュータ100」は「CPU101」といいかえることができる。
一方、上記【0037】には「本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。」と記載されていることから、刊行物1に記載された発明はパチンコ遊技機に関するものであるといえる。
よって、前記各記載事項から、刊行物1には、「演出図柄の変動表示などの演出を実行する演出表示装置9などの演出装置を制御する演出制御手段としてのCPU101、を備えるパチンコ遊技機」が記載されているといえる。

(き)上記【0030】には「遊技制御手段は、第1の始動領域または第2の始動領域を遊技媒体が通過したときに、数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1)・・・を抽出する数値データ抽出手段」と記載され、同段落には「第1の始動領域(例えば、第1始動入賞口13)」、「第2の始動領域(例えば、第2始動入賞口14)」とも記載されている。
よって、刊行物1には、「CPU56は、第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14を遊技媒体が通過したときに、数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1)を抽出する数値データ抽出手段としての機能」を備えることが記載されているといえる。

(く)上記【0030】には「遊技制御手段は・・・数値データ抽出手段によって抽出された数値データを用いて、可変表示が所定の状態(例えば、スーパーリーチ)となるか否かを判定する判定手段(例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ560におけるステップS1217,S1228を実行する部分)・・・を含み」と記載されている。
また、上記【0253】には、「図21は、ステップS1217,S1228の入賞時演出処理を示すフローチャートである。入賞時演出処理では、CPU56は、まず、ステップS1216,S1227で抽出した大当り判定用乱数(ランダムR)と図8(A)の左欄に示す通常時の大当り判定値とを比較し、それらが一致するか否かを確認する(ステップS220)。・・・遊技球が第1始動入賞口13や第2始動入賞口14に始動入賞したタイミングで、その始動入賞にもとづく変動表示が開始される前に、入賞時演出処理を実行することによって、あらかじめ大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別・・・を確認する。」と記載されている。
前記各記載事項から、刊行物1には、CPU56の、「数値データ抽出手段としての機能によって抽出された数値データを用いて入賞時演出処理として大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別を確認する判定手段としての機能」が記載されているといえる。

(け)上記【0333】には「CPU56は、特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う(ステップS3202)。この場合、CPU56は、特別図柄ポインタが示す方の特別図柄(第1特別図柄または第2特別図柄)の変動表示を行うための特別図柄表示制御データを設定または更新する。」と記載されている。
よって、刊行物1には、CPU56の、「特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う機能」が記載されているといえる。

(こ)上記【0333】には「CPU56は、特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う(ステップS3202)。この場合、CPU56は、特別図柄ポインタが示す方の特別図柄(第1特別図柄または第2特別図柄)の変動表示を行うための特別図柄表示制御データを設定または更新する。例えば、変動速度が1コマ/0.2秒であれば、0.2秒が経過する毎に、出力バッファに設定される特別図柄表示制御データの値を+1する。そして、その後、表示制御処理(ステップS22参照)が実行され、特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファの内容に応じて特別図柄表示器8a,8bに対して駆動信号が出力されることによって、特別図柄表示器8a,8bにおける特別図柄の変動表示が実行される。」と記載されている。
よって、刊行物1には、CPU56の、「CPU56により出力バッファに設定または更新された特別図柄表示制御データの内容に応じて特別図柄表示器8a,8bにおける特別図柄の変動表示を実行する機能」が記載されているといえる。

(さ)上記【0227】?【0232】には、「遊技制御用マイクロコンピュータ560は、・・・合算保留記憶数カウンタのカウント値が0でなければ、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する。大当りとする場合には大当りフラグをセットする。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS301に応じた値(この例では1)に更新する。・・・特別図柄プロセスフラグの値が1であるとき・・・変動パターンを決定し、・・・特別図柄の変動時間を計測する変動時間タイマをスタートさせる。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS302に対応した値(この例では2)に更新する。・・・特別図柄プロセスフラグの値が2であるとき・・・演出制御用マイクロコンピュータ100に、表示結果指定コマンドを送信する制御を行う。そして、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS303に対応した値(この例では3)に更新する。・・・特別図柄プロセスフラグの値が3であるとき・・・変動パターンの変動時間が経過・・・すると、・・・内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS304に対応した値(この例では4)に更新する。・・・特別図柄プロセスフラグの値が4であるときに実行される。大当りフラグがセットされている場合に、内部状態(特別図柄プロセスフラグ)をステップS305に対応した値(この例では5)に更新する。・・・特別図柄プロセスフラグの値が5であるとき・・・大入賞口を開放する制御を行う。」なる、「遊技制御用マイクロコンピュータ560」即ちCPU56による一連の制御が記載されている。
ここで、「遊技制御用マイクロコンピュータ560は・・・第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示の表示結果を大当りとするか否かを決定する」ことは、上記(く)の「判定手段としての機能」に該当する。
よって、前記各記載事項から、刊行物1には、CPU56の、「判定手段としての機能により大当りと決定され大当たりフラグがセットされている場合に、大入賞口を開放する制御を行う機能」が記載されているといえる。

(し)上記【0030】には「数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1)」及び「第1の始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数(例えば、4)を限度に、数値データ抽出手段が抽出した数値データを保留記憶として記憶する第1の保留記憶手段(例えば、図20(B)に示す第1保留記憶バッファ)と、第2の始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数(例えば、4)を限度に、数値データ抽出手段が抽出した数値データを保留記憶として記憶する第2の保留記憶手段(例えば、図20(B)に示す第2保留記憶バッファ)」と記載されている。
また、上記【0152】には「CPU56は、・・・乱数回路503のカウント値を抽出して抽出値を大当り判定用乱数(ランダムR)の値とする」と記載され、上記【0242】、【0249】にはそれぞれ「CPU56は、乱数回路503やソフトウェア乱数を生成するためのカウンタから値を抽出し、それらを、第1保留記憶バッファ・・・における保存領域に格納する処理を実行する」、「CPU56は、乱数回路503やソフトウェア乱数を生成するためのカウンタから値を抽出し、それらを、第2保留記憶バッファ・・・における保存領域に格納する処理を実行する」と記載されている。
ここで、前記【0242】、【0249】の記載から、前記【0030】の記載における、第1保留記憶バッファ及び第2保留記憶バッファに対し数値データ抽出手段が抽出した数値データを記憶する処理は、「CPU56」によるものであるといえる。
また、前記【0030】に記載されたとおり「数値データ」には「ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)」や、「ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数」が含まれ、前記【0242】、【0249】の記載における「乱数回路503」から抽出される値とは、前記【0152】の記載から「大当り判定用乱数(ランダムR)」であるから、該【0242】、【0249】の記載における「乱数回路503やソフトウェア乱数を生成するためのカウンタから」の「値」とは、前記【0030】の記載における「数値データ」に対応するといえる。
さらに、上記【請求項1】には、「前記始動領域を遊技媒体が通過したにもかかわらず前記開始条件が成立していない可変表示について、所定の上限数を限度に、前記数値データ抽出手段が抽出した前記数値データを保留記憶として記憶する保留記憶手段」及び「前記数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データに基づく前記開始条件が成立したときに、当該数値データ抽出手段によって抽出された前記数値データを用いて、可変表示を前記第1状態とするか否か、及び、可変表示を前記第2状態とするか否かを決定する開始時状態決定手段」が記載されており、これらの記載から、「開始条件が成立していない」場合に保留記憶として保留記憶手段に保留された「数値データ」は、「開始条件が成立したとき」にそれを用いて可変表示が実行される、すなわち、保留記憶として保留記憶手段に記憶された「数値データ」は、可変表示の開始条件成立まで保留記憶手段に記憶されるといえる。

以上の記載事項から、刊行物1には、CPU56の、「数値データ抽出手段としての機能により、開始条件が成立していない可変表示についての数値データが抽出された場合、可変表示の開始条件成立まで保留記憶として記憶する機能」が記載されているといえる。

(す)上記【0203】には「遊技制御用マイクロコンピュータ560は、始動入賞時に、大当りとなるか否かや、小当りとなるか否か、大当りの種別、変動パターン種別判定用乱数の値がいずれの判定値の範囲にとなるかを判定する。そして、図柄指定コマンドのEXTデータに、大当りや小当りとなることを指定する値や、大当りの種別を指定する値を設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する制御を行う」と記載されている。
この制御は「始動入賞」が契機となっており、変動表示開始条件の充足有無は実行条件となっていないから、図柄の変動表示(可変表示)の開始条件を充足しているか否かにかかわらず実行される制御であるといえる。
よって、刊行物1には、CPU56の、「始動入賞時に、図柄の変動表示(可変表示)の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、大当りや小当りとなることを指定する値や大当りの種別を指定する値を、図柄指定コマンドのEXTデータに設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する制御を行う機能」が記載されているといえる。

(せ)上記【0093】には「演出制御用CPU101は、受信した演出制御コマンドに従ってCGROM(図示せず)から必要なデータを読み出すための指令をVDP109に出力する。CGROMは、演出表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データ、具体的には、人物、文字、図形や記号等(演出図柄を含む)、および背景画像のデータをあらかじめ格納しておくためのROMである。」と記載されている。
よって、刊行物1には、「演出制御用CPU101は、演出表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データをあらかじめ格納したCGROMから必要なデータを読み出すための指令をVDP109に出力する機能」を備えることが記載されているといえる。

(そ)上記【0093】には「VDP109は、演出制御用CPU101の指令に応じて、CGROMから画像データを読み出す。そして、VDP109は、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行する。」と記載されている。
よって、刊行物1には、演出制御用CPU101の、「VDP109に対し、CGROMから画像データを読み出し、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行させる機能」が記載されているといえる。

(た)上記【0035】には「演出制御手段は、保留記憶情報にもとづいて第1の保留記憶手段と第2の保留記憶手段とが記憶する保留記憶の数を特定し、該特定した保留記憶の数の保留表示を所定の表示態様(例えば、第1通常表示(赤色の丸形表示)、第2通常表示(青色の丸形表示))で表示する保留表示制御手段(例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるステップS6021,S6022を実行する部分)を含み」と記載され、上記【0061】には「演出表示装置9の表示画面の下部には、第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数)を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられている。・・・合算保留記憶表示部18cにおいて、第1保留記憶と第2保留記憶とが第1始動入賞口13および第2始動入賞口14への入賞順に並べて表示され・・・。」と記載されている。
また、上記【0423】には「大当り期待度は保留球の色によって異なる。大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)、大当り期待度が中程度であれば先読み予告演出によって保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球の色は赤になる。」と記載されていることから、大当たり期待度に応じて色が異なる保留球が表示されるといえる。
以上から、刊行物1には、「演出制御用CPU101は、保留記憶の大当たり期待度に応じて色が異なる保留球の画像を、演出表示装置9に表示する」ことが記載されているといえる。

(ち)上記【0436】?【0437】には「演出制御用CPU101は、図62(a)に示す色変化決定時の振り分けテーブルに基づいて、保留球変化の先読み予告演出を経た後(即ちキャラ出現後)の保留球の色を決定する。ここで、演出制御用CPU101は、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンド・・・を受信したときには、保留球の色が高確率で青又は赤となる判定値のテーブル(図62(a)上段)を選択し、上記以外の図柄指定コマンド・・・を受信したときには、保留球の色が高確率で変化しない判定値のテーブル(図62(a)下段)を選択する。・・・演出制御用CPU101が、いわゆる実質出玉有り大当りである2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムXの値が1?5の範囲であれば保留球の色を変化させず、6?30の範囲であれば保留球の色を青とし、31?100の範囲であれば保留球の色を赤とする。従って、キャラ出現後の保留球の色は5%の確率で変化せず、25%の確率で青に変化し、70%の確率で赤に変化する。一方、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムXの値が1?96の範囲であれば保留球の色を変化させず、97?99の範囲であれば保留球の色を青とし、100であれば保留球の色を赤とする。従って、キャラ出現後の保留球の色は96%の確率で変化せず、3%の確率で青に変化し、1%の確率で赤に変化する。」と記載されている。
ここで、保留球の色が変化した後は、その色の保留球の画像が表示されるのであり、該色は保留球の色が変化する演出を実行するにあたっての大当たり等の確率によって決まったものであるといえる。
よって、刊行物1には、演出制御用CPU101が、「CPU56から図柄指定コマンドが送信されたときには、それが2R、10R、又は15R確変大当たりの場合に送信される図柄変動コマンドであるか否かに応じた色の保留球の画像を決定し、それに応じて保留球の色を変化させる」ことが記載されているといえる。

(つ)上記(ち)において、演出制御用CPU101による各保留球の画像の色変化は、個々の保留球に対応する図柄変動コマンドの内容に応じて、かつ該内容によって異なる確率で行われるのであるから、保留球の画像が複数表示されている場合において、そのうち色変化の生じる保留球は選択的であるといえる。
よって、刊行物1には、演出制御用CPU101が、「演出表示装置9に表示される複数の保留球の画像を選択的に異なる色に変化させ」ることが記載されているといえる。

(て)上記【0424】には「保留球の色又は形状を変化させる際の演出として、所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、保留球の色又は形状を変化させようとする。ここで、図59(c)に示すように、小人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し易いように演出の割り振りが行われている。」と記載されている。
ここでの「所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出」は、「保留球の色又は形状を変化させる際の演出」であり、「小人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し易いように演出の割り振りが行われている」のであるから、当該小人または巨人の演出の出現や、小人又は巨人のいずれの演出が出現するかにより、保留球の色又は形状が変化する割合、すなわち期待度が相違するのであり、よって、該演出は保留球の画像の色が変化することを示唆する演出であるといえる。

また、上記【0426】には「図60の例では、合算保留記憶表示部18cに保留球が3個表示されており、演出図柄が変動表示されている状態で、保留球変化の先読み予告演出が行われる。図60(1)に示すように、演出表示装置9に刷毛1110とペンキ入りのバケツ1120を持った小人のキャラ1100が表示され、このキャラ1100が左から3つめの保留球1000に近づく。次いで図60(2)に示すように、保留球1000に対して、小人が刷毛1110によってバケツ1120のペンキを使用して色を塗る動作を行う。本例では白の保留球1000が赤に塗り替えられたものとする。」と記載されている。
この記載によると、小人のキャラが近づいた保留球(の画像)1000の色が塗り替えられる、すなわち変化するのであるから、小人のキャラは、色が変化する(可能性がある)保留球の近傍に表示されているといえる。
また、刷毛を持った巨人が出現する演出については直接の言及がないが、該「刷毛」は前記「ペンキを使用して色を塗る」ためのものであるから、小人と同様に、色を塗る対象の、すなわち色が変化する保留球の画像の近傍に巨人が近づく演出がなされると推認できる。

また、上記【0633】には「保留球変化の先読み予告演出の対象となる保留記憶が生じてから(始動入賞が生じてから)、当該保留記憶に係る変動が開始されるまでの期間は、演出表示装置9に表示される背景画面を、所定の特殊画面とするようにしても良い。即ち、演出制御用マイクロコンピュータ100は、保留球変化の先読み予告実行中フラグがセットされている期間は特殊画面を表示するようにすると良い。・・・例えば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、始動入賞時に保留球表示処理用テーブル(例えば図65及び図66参照)を参照して、当該始動入賞に係る演出番号がAXX(色変化)であれば、第1特殊画面(例えば晴天画面)を表示し、・・・」と記載され、続く【0634】には「上記のように始動入賞が生じてから当該始動入賞に基づく保留記憶に係る変動が開始されるまでの期間は、演出表示装置9に表示される背景画面を、所定の特殊画面とするようにした場合、図67に示すように始動入賞直後の変動表示Bが短縮変動であるときに、保留球変化の演出は次変動(変動表示C)に持ち越されるが、短縮変動の場合であっても特殊画面を表示させることは可能であるため、変動表示Bのときに背景画面を特殊画面とすることは可能である。」と記載されている。
前記【0633】?【0634】の記載事項(以下単に「前記記載事項」ということがある。)における「保留球変化の先読み予告演出」及び「保留球変化の演出」は、上記【0424】の「保留球の色又は形状を変化させる際の演出として、所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、保留球の色又は形状を変化させようとする。」なる記載における「保留球の色又は形状を変化させる際の演出」に対応することが明らかであるから、前記【0633】の「保留球変化の先読み予告演出が実行されるときに背景画像も特殊背景となるため演出効果を高めることができる。」なる記載からみて、背景画面を特殊画面とする演出は、前記【0424】に記載された「所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る」演出と重複して実行される得るものであるといえる。
また、前記記載事項において、「背景画面を、所定の特殊画面とする」演出は、「当該始動入賞に係る演出番号がAXX(色変化)であれば、第1特殊画面(例えば晴天画面)を表示」するものであるから、前記【0424】に記載された「所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る」演出と同様に、入賞した保留球の大当たりの期待度に応じて実行される演出であるということができる。
さらに、前記記載事項における「背景画面を、所定の特殊画面とする」演出における「特殊画面」は、「保留球変化の先読み予告演出の対象となる保留記憶が生じてから(始動入賞が生じてから)、当該保留記憶に係る変動が開始されるまでの期間」に跨がって実行されるものであるから、複数回の変動表示にわたって表示可能な画像であるといえる。
また、表示装置において「背景画面」といえば一般に画面の全域の背景にわたって表示される画像を意味することが技術常識に照らし明らかであることから、前記記載事項において「特殊画面」とされる「背景画面」は、前記「晴天画面」のような「特殊画面」が演出表示装置9の全域の背景として描画される場合を少なくとも含むと解される。そうすると、該記載事項において、「特殊画面」を背景画面に変更する演出が実行される場合は、当然に演出表示装置9の一部に表示される保留球の画像の近傍の背景も前記「特殊画面」に変更されることとなるから、当該「特殊画面」の画像は保留球の画像の近傍に表示されるものであるといえる。

以上から、刊行物1には、演出制御用CPU101が、「保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像と、背景画面としての特殊画面の画像とを、保留球の画像の近傍に表示し、さらに、前記背景画面としての特殊画面の画像は、複数回の変動表示にわたって表示可能である」ことが記載されているといえる。

(と)上記(て)から、「保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像」は、「色が変化する(可能性がある)保留球の近傍に表示」されるのであるから、逆に、刷毛を持った小人又は巨人の画像、または背景画像としての特殊画面の画像が表示された場合には、当該刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された近傍の保留球の画像の色が変更されることが記載されているといえる。
よって、刊行物1には、「刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された場合には、当該刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された近傍の保留球の画像の色が変更されることが示唆される」ことが記載されているといえる。

エ 上記アの各記載事項、上記イ、ウの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?uは、本件補正発明のA?Uに対応させて付与した。)。

「a 遊技領域7が形成された遊技盤6と、(ウ(あ))
b 遊技領域7に設けられた第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14と、(ウ(い))
c 可変表示がなされ、大当たり遊技状態に移行する大当り図柄である特定表示結果、または該特定表示結果でない表示結果が導出表示される、第1特別図柄表示器8a及び第2特別図柄表示器8bと、(ウ(う))
d 演出図柄の可変表示を行う演出表示装置9と、(ウ(え))
e 遊技の進行を制御する遊技制御手段としてのCPU56と、(ウ(お))
f 演出図柄の変動表示などの演出を実行する演出表示装置9などの演出装置を制御する演出制御手段としてのCPU101、を備えるパチンコ遊技機であって、(ウ(か))
g CPU56は、第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14を遊技媒体が通過したときに、数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1))を抽出する数値データ抽出手段としての機能と、(ウ(き))
h 前記数値データ抽出手段としての機能によって抽出された数値データを用いて入賞時演出処理として大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別を確認する判定手段としての機能と、(ウ(く))
i 特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う機能と、(ウ(け))
j 前記CPU56により出力バッファに設定または更新された特別図柄表示制御データの内容に応じて特別図柄表示器8a,8bにおける特別図柄の変動表示を実行する機能と、(ウ(こ))
k 前記判定手段としての機能により大当りと決定され大当たりフラグがセットされている場合に、大入賞口を開放する制御を行う機能と、(ウ(さ))
l 前記数値データ抽出手段としての機能により、開始条件が成立していない可変表示についての数値データが抽出された場合、可変表示の開始条件成立まで保留記憶として記憶する機能と、(ウ(し))
m 始動入賞時に、図柄の変動表示(可変表示)の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、大当りや小当りとなることを指定する値や大当りの種別を指定する値を、図柄指定コマンドのEXTデータに設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する制御を行う機能、とを備え、(ウ(す))
n 演出制御用CPU101は、演出表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データをあらかじめ格納したCGROMから必要な画像データを読み出すための指令をVDP109に出力する機能と、(ウ(せ))
o VDP109に対し、CGROMから画像データを読み出し、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行させる機能と、を備え、(ウ(そ))
p 演出制御用CPU101は、保留記憶の大当たり期待度に応じて色が異なる保留球の画像を、演出表示装置9に表示し、(ウ(た))
q CPU56から図柄指定コマンドが送信されたときには、それが2R、10R、又は15R確変大当たりの場合に送信される図柄変動コマンドであるか否かに応じた色の保留球の画像を決定し、それに応じて保留球の色を変化させ、(ウ(ち))
r 演出表示装置9に表示される複数の保留球の画像を選択的に異なる色に変化させ、(ウ(つ))
s 保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像を、保留球の画像の近傍に表示し、さらに、前記背景画面としての特殊画面の画像は、複数回の変動表示にわたって表示可能であり、(ウ(て))
t 刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された場合には、当該刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された近傍の保留球の画像の色が変更されることが示唆される、(ウ(と))
u パチンコ遊技機。(ウ(か))」

(3)対比
ア 刊行物1発明の構成aの「遊技領域7が形成された遊技盤6」が本件補正発明の構成Aの「遊技領域が形成された遊技盤」に相当することは明らかである。
よって、前記構成aの「遊技領域7が形成された遊技盤6」は前記構成Aの「遊技領域が形成された遊技盤」に相当する。

イ 刊行物1発明の構成bの「遊技領域7に設けられた第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14」が、本件補正発明の構成Bの「前記遊技領域に設けられた始動入賞口」に相当することは明らかである。
よって、前記構成bの「 遊技領域7に設けられた第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14」は前記構成Bの「前記遊技領域に設けられた始動入賞口」に相当する。

ウ 刊行物1発明の構成cの「可変表示がなされ、大当たり遊技状態に移行する大当り図柄である特定表示結果、または該特定表示結果でない表示結果が導出表示される」ことは、本件補正発明の構成Cの「当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される」ことに相当する。
よって、前記表示を行う前記構成cの「第1特別図柄表示器8a及び第2特別図柄表示器8b」は前記構成Cの「図柄表示装置」に相当する。
したがって、前記構成cの「可変表示がなされ、大当たり遊技状態に移行する大当り図柄である特定表示結果、または該特定表示結果でない表示結果が導出表示される、第1特別図柄表示器8a及び第2特別図柄表示器8b」は、前記構成Cの「当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示装置」に相当する。

エ 刊行物1発明の構成dの「演出図柄の可変表示を行う演出表示装置9」が本件補正発明の構成Dの「画像が表示される演出表示装置」に相当することは明らかである。
よって、前記構成dの「演出図柄の可変表示を行う演出表示装置9」は前記構成Dの「画像が表示される演出表示装置」に相当する。

オ 刊行物1発明の構成eの「遊技の進行を制御する」機能が、本件補正発明の構成Eの「遊技の基本動作を主に制御する」機能に相当することが明らかである。
よって、前記構成eの「遊技の進行を制御する遊技制御手段としてのCPU56」は機能が共通する前記構成Eの「遊技の基本動作を主に制御する主制御装置」に相当し、前記構成eは前記構成Eに相当する。

カ 刊行物1発明の構成fの「パチンコ遊技機」は、本件補正発明の構成F、Uの「弾球遊技機」に相当する。
また、前記構成fの「演出図柄の変動表示などの演出を実行する演出表示装置9などの演出装置を制御する」機能が、前記構成Fの「遊技の演出的動作を主に制御する」機能に相当することは明らかである。
よって、前記構成fの「CPU101」は機能が共通する前記構成Fの「副制御装置」に相当し、前記構成fの「演出図柄の変動表示などの演出を実行する演出表示装置9などの演出装置を制御する演出制御手段としてのCPU101、を備えるパチンコ遊技機」は前記構成Fの「遊技の演出的動作を主に制御する副制御装置と、を備える弾球遊技機」に相当する。

キ 刊行物1発明の構成gの「第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14を遊技媒体が通過したとき」、「数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1))」は、それぞれ本件補正発明の構成Gの「前記始動入賞口への入球を契機として」、「前記当否判定のための抽選値」に相当するといえる。
よって、前記構成gのCPU56の「CPU56は、第1始動入賞口13及び第2始動入賞口14を遊技媒体が通過したときに、数値データ(例えば、ハードウェア乱数であるランダムR(大当り判定用乱数)や、ソフトウェア乱数である大当り種別判定用乱数(ランダム1))を抽出する数値データ抽出手段としての機能」を有することは、前記構成Gの「前記主制御装置は、/ 前記始動入賞口への入球を契機として前記当否判定のための抽選値を取得する抽選値取得手段」の機能を有することに相当する。(「/」は改行をあらわす。以下同様。)

ク 刊行物1発明の構成hの「前記数値データ抽出手段としての機能によって抽出された数値データ」、「入賞時演出処理として大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別を確認する」こと、は、それぞれ、本件補正発明の構成Hの「前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値」、「前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する」こと、に相当することが明らかであるから、前記構成hのCPU56の「判定手段としての機能」は、前記構成Hの「当否判定手段」の機能に相当するといえる。
よって、前記構成hの「前記数値データ抽出手段としての機能によって抽出された数値データを用いて入賞時演出処理として大当りや小当りとなるか否かや、大当りの種別を確認する判定手段としての機能」は、前記構成Hの「前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する当否判定手段」の機能に相当する。

ケ 刊行物1発明の構成iの「特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理」は、本件補正発明の構成Iの「前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する」に相当する。
よって、前記構成iの「特別図柄変動表示用の特別図柄表示制御データを特別図柄表示制御データ設定用の出力バッファに設定または更新する処理を行う機能」は、前記構成Iの「前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する変動パターン決定手段」の機能に相当する。

コ 刊行物1発明の構成jの「前記CPU56により出力バッファに設定または更新された特別図柄表示制御データの内容に応じて」、「特別図柄表示器8a,8b」、「特別図柄の変動表示を実行する」こと、は、それぞれ、本件補正発明の構成Jの「前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって」、「前記図柄表示装置」、「変動表示させる」に相当するといえる。
よって、前記構成jの「前記CPU56により出力バッファに設定または更新された特別図柄表示制御データの内容に応じて特別図柄表示器8a,8bにおける特別図柄の変動表示を実行する機能」は、前記構成Jの「前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって、前記図柄を前記図柄表示装置に変動表示させる図柄表示制御手段」の機能に相当する。

サ 刊行物1発明の構成kの「前記判定手段としての機能により大当りと決定され大当たりフラグがセットされている場合」、「大入賞口を開放する制御を行う」こと、は、それぞれ、本件補正発明の構成Kの「前記当否判定の結果が当りとなった場合」、「通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する」こと、に相当するといえる。
よって、前記構成kの「前記判定手段としての機能により大当りと決定され大当たりフラグがセットされている場合に、大入賞口を開放する制御を行う機能」は、前記構成Kの「前記当否判定の結果が当りとなった場合に、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する特別遊技制御手段」の機能に相当する。

シ 刊行物1発明の構成lの「開始条件が成立していない可変表示についての数値データが抽出された場合」、「可変表示の開始条件成立まで」、「保留記憶として記憶する」は、それぞれ、本件補正発明の構成Lの「前記抽選値が取得された場合」、「前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで」、「当該抽選値を保留球として保留する」に相当するといえる。
よって、前記構成lの「前記数値データ抽出手段としての機能により、開始条件が成立していない可変表示についての数値データが抽出された場合、可変表示の開始条件成立まで保留記憶として記憶する機能」は、前記構成Lの「前記抽選値取得手段により前記抽選値が取得された場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで当該抽選値を保留球として保留する保留制御手段」の機能に相当する。

ス 刊行物1発明の構成mの「始動入賞時」、「図柄の変動表示(可変表示)の開始条件を充足しているか否かにかかわらず」、「大当りや小当りとなることを指定する値や大当りの種別を指定する値」、「図柄指定コマンドのEXTデータに設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する」は、それぞれ、本件補正発明の構成Mの「前記始動入賞口への入球があった場合」、「前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず」、「当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報」、「前記副制御装置へ通知する」に相当するといえる。
また、刊行物1発明の構成qによると、「CPU56から図柄指定コマンドが送信されたときには、それが2R、10R、又は15R確変大当たりの場合に送信される図柄変動コマンドであるか否かに応じた色の保留球の画像を決定し、それに応じて保留球の色を変化させる」のであるから、前記構成mの「図柄指定コマンド」は、演出制御用CPU101側において、変動前の段階で保留球の色変化として当該保留が大当たりであることを示唆するために用いられるのであり、よって、該「図柄指定コマンド」は変動前の判定すなわち「事前判定」のための情報として用いられるものといえる。
したがって、前記構成mの「始動入賞時に、大当りや小当りとなることを指定する値や大当りの種別を指定する値を、図柄指定コマンドのEXTデータに設定し、演出制御用マイクロコンピュータ100に対して送信する制御を行う機能」は、前記構成Mの「前記始動入賞口への入球があった場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報を事前判定情報として前記副制御装置へ通知する通知手段」の機能に相当する。

セ 刊行物1発明の構成nの「キャラクタ画像データや動画像データ」は本件補正発明の構成Nの「演出用の画像」に相当する。
また、前記画像データを「あらかじめ格納したCGROMから必要な画像データを読み出すための指令をVDP109に出力する」ことは、読み出す対象となる画像データを複数の中から都度選択、決定する処理を当然に含むから、本件補正発明の「演出用の画像を決定する」ことに相当するといえる。
よって、前記構成nの「演出表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データをあらかじめ格納したCGROMから必要な画像データを読み出すための指令をVDP109に出力する機能」は、前記構成Nの「前記演出表示装置に表示させる演出用の画像を決定する演出決定手段」の機能に相当する。

ソ 刊行物1発明の構成oの「CGROMから」「読み出」される「画像データ」は、上記構成nにおいて、演出制御用CPU101による「CGROMから必要な画像データを読み出すための指令」に基づくものであり、該「指令」を「VDP109に出力する」処理が画像データの選択、決定処理を含むことは上記セで説示したとおりである。よって、前記構成oで「CGROMから」「読み出」される画像データは演出制御用CPU101により決定されたものであるといえ、前記構成oの「CGROMから・・・読み出した画像データ」は、本件補正発明の構成Oの「前記演出決定手段により決定された演出用の画像」に相当する。
また、前記構成oの「VDP109に対し・・・表示制御を実行させる」ことが、前記構成Oの「前記演出表示装置に表示する」ことに相当することは明らかである。
以上のとおりであるから、前記構成oの「VDP109に対し、CGROMから画像データを読み出し、読み出した画像データにもとづいて表示制御を実行させる機能」は、前記構成Oの「前記演出決定手段により決定された演出用の画像を前記演出表示装置に表示する演出制御手段」の機能に相当する。

タ 刊行物1発明の構成pの「大当たり」が本件補正発明の構成Pの「特別遊技移行」に相当すること、及び構成pの「事前判定情報」に関する上記スの説示から、前記構成pの「保留記憶の大当たり期待度」は、前記構成Pの「事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度」に相当するといえる。
また、前記構成pで保留球の画像が「保留記憶の大当たり期待度に応じて色が異なる」ことは、保留球の画像の色によって、当該保留球の大当たり期待度を示唆しているといえるから、前記構成pの「保留記憶の大当たり期待度に応じて色が異なる保留球の画像」を表示することは、前記構成Pの「事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として」表示することに相当するといえる。
よって、前記構成pの「演出制御用CPU101は、保留記憶の大当たり期待度に応じて色が異なる保留球の画像を、演出表示装置9に表示」することは、前記構成Pの「前記演出制御手段は、事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として前記演出表示装置に表示可能」であることに相当する。

チ 刊行物1発明の構成qの「CPU56から図柄指定コマンドが送信されたとき」、「2R、10R、又は15R確変大当たりの場合に送信される図柄変動コマンドであるか否かに応じた色の保留球の画像を決定し、それに応じて保留球の色を変化させ」ること、は、それぞれ、本件補正発明の構成Qの「前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて」、「当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示」することに相当するといえる。
よって、前記構成qの「CPU56から図柄指定コマンドが送信されたときには、それが2R、10R、又は15R確変大当たりの場合に送信される図柄変動コマンドであるか否かに応じた色の保留球の画像を決定し、それに応じて保留球の色を変化させ」ることは、前記構成Qの「前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて、当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示」することに相当する。

ツ 刊行物1発明の構成rの「複数の保留球の画像を選択的に異なる色に変化させ」ることは、本件補正発明の構成Rの「保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能」であることに相当するといえる。
よって、前記構成rの「演出表示装置9に表示される複数の保留球の画像を選択的に異なる色に変化させ」ることは、前記構成Rの「前記演出表示装置に表示されている保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能であ」ることに相当する。

テ 刊行物1発明の構成sの「保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像を、保留球の画像の近傍に表示」することは、本件補正発明の構成Sの「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に」「表示可能であ」ることに相当する。
また、前記構成sの、保留球の画像の色が変更されることを示唆する画像のうち、背景画面としての特殊画面の画像が「複数回の変動表示にわたって表示可能」であることは、前記構成Sの「複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能」に相当する。
よって、前記構成sの「保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像を、保留球の画像の近傍に表示し、さらに、前記背景画面としての特殊画面の画像は、複数回の変動表示にわたって表示可能」であることは、前記構成Sの「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能」であることに相当するといえる。

ト 刊行物1発明の構成tの「刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された場合」、「当該刷毛を持った小人又は巨人の画像が表示された近傍の保留球の画像の色が変更される」こと、は、それぞれ、本件補正発明の構成Tの「保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合」、「保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更される」に相当するといえる。
よって、前記構成tの「刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された場合には、当該刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像が表示された近傍の保留球の画像の色が変更されることが示唆される」ことは、前記構成Tの「保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される」ことに相当する。

ナ 上記ア?トによれば、本件補正発明と刊行物1発明とは、下記(ア)の点で一致し、両者の間に相違点はない。

(ア)一致点
「A 遊技領域が形成された遊技盤と、
B 前記遊技領域に設けられた始動入賞口と、
C 当否判定の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示装置と、
D 画像が表示される演出表示装置と、
E 遊技の基本動作を主に制御する主制御装置と、
F 遊技の演出的動作を主に制御する副制御装置と、を備える弾球遊技機であって、
G 前記主制御装置は、
前記始動入賞口への入球を契機として前記当否判定のための抽選値を取得する抽選値取得手段と、
H 前記抽選値取得手段により取得された前記抽選値に基づいて前記当否判定を実行する当否判定手段と、
I 前記図柄の変動表示における変動パターンを決定する変動パターン決定手段と、
J 前記変動パターン決定手段により決定された変動パターンにしたがって、前記図柄を前記図柄表示装置に変動表示させる図柄表示制御手段と、
K 前記当否判定の結果が当りとなった場合に、通常遊技より遊技者に有利な状態である特別遊技を実行する特別遊技制御手段と、
L 前記抽選値取得手段により前記抽選値が取得された場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足するまで当該抽選値を保留球として保留する保留制御手段と、
M 前記始動入賞口への入球があった場合、前記図柄の変動表示の開始条件を充足しているか否かにかかわらず、当該入球を契機として実行される図柄変動に関する情報を事前判定情報として前記副制御装置へ通知する通知手段と、を備え、
N 前記副制御装置は、
前記演出表示装置に表示させる演出用の画像を決定する演出決定手段と、
O 前記演出決定手段により決定された演出用の画像を前記演出表示装置に表示する演出制御手段と、を備え、
P 前記演出制御手段は、事前判定情報に対応する抽選値に係る特別遊技移行期待度を示唆するための画像を保留球画像として前記演出表示装置に表示可能であり、
Q 前記通知手段から前記保留制御手段により保留されている抽選値に対応する事前判定情報が通知されたことに基づいて、当該通知された事前判定情報に応じた保留球画像を表示し、
R 前記演出表示装置に表示されている保留球画像のうちのいずれかを異なる種類の画像に変更可能であり、
S 保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能であり、
T 保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される
U 弾球遊技機。」

(イ)仮の相違点(構成S)
上記刊行物1発明の認定では、構成sとして「保留球の画像の色が変更されることを示唆する、刷毛を持った小人又は巨人の画像または背景画面としての特殊画面の画像を、保留球の画像の近傍に表示し、さらに、前記背景画面としての特殊画面の画像は、複数回の変動表示にわたって表示可能であり」なる構成を認定したことに基づいて、本件補正発明の構成Sと一致すると認定したが、仮に該構成sにおいて、「背景画面としての特殊画面の画像」が保留球の近傍に表示されるとまで認定できないとすると、該「背景画面としての特殊画面の画像」は、構成S、Tにおける「保留変化示唆画像」としての要件を満たさず、本件補正発明における「保留変化示唆画像」に相当しないこととなる。
そうすると、刊行物1には、該「背景画面としての特殊画面の画像」のほかに、複数の図柄の変動表示にわたって保留球の画像の変化を示唆する画像を表示する演出について開示がないから、両発明は下記の点で相違する。

[仮の相違点]
本件補正発明では、保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を「複数回の図柄の変動表示にわたって」表示可能であるのに対し、刊行物1発明はそのような構成を備えない点。

(4)判断
ア 仮の相違点について
パチンコ遊技機における液晶などの表示装置で行われる、保留球が大当たりである可能性を示唆する予告演出(構成P)において、示唆対象の保留球の画像が当該保留球の大当たり可能性に応じて変化する演出を行う際に(構成R)、当該変化が起きることを示唆する演出として、当該保留球の画像の近傍に当該変化を示唆する画像(構成Sの「保留変化示唆画像」に対応)を複数回の変動にわたって表示する(構成S)ことは、例えば本願出願日前に周知の技術事項である。
この点に関し、例えば特開2013-158559号公報(以下「周知例1」ともいう。)には、保留球の個数表示部H1?H3に通常表示態様「●」で表示されている保留球のひとつ(例えば個数表示部H3に表示された3個目の保留球)について、それが大当たりの場合に相対的に高確率で保留球画像を「キャラクタ画像」などの特別表示態様に変更させる決定をし(【0078】)、該決定に伴い、1回目の図柄変動が実行されると、「演出キャラクタY」を当該保留球画像が位置する個数表示部H3の直上にパラシュートで降下して着地する演出を行い(【0083】?【0084】、【0088】?【0089】、図13)、該着地に引き続き当該保留球の表示態様を通常表示態様から特別表示態様である「キャラクタ画像」に変化させ(【0090】、図14(a))、次いで次の2回目の図柄変動が実行されると、「キャラクタ画像」の保留球はH2の位置に移動し、それに伴って前記「演出キャラクタY」も個数表示部H2の直上に移動され(【0091】、図14(a)?(b))ることが記載されており、前記「演出キャラクタY」が本件補正発明の「保留変化示唆画像」に対応し、当該「保留変化示唆画像」が1?2回目の図柄変動にわたって表示されているといえる。
また、特開2014-23552号公報(以下「周知例2」ともいう。)には、図柄変動の開始に合わせて(【0173】)個別表示領域H1?H3に表示される保留画像のうちH3に表示されるものの画像を青色(【0022】;変化前の色)から紫色へと変化させ、さらに次の図柄変動ゲームの開始に伴って赤色へと変化(再変化)させる保留変化演出において、青色(変化前)から紫色へ変化させる図柄変動ゲームで該変化に先立って武器画像G1が当該保留画像に突き刺さる「狙い撃ち演出」を行い、さらに次の図柄変動ゲームでも、前記再変化に先立って個別表示領域H2に移った当該保留球画像に対し同様の「狙い撃ち演出」を行う演出態様(【0179】、【0182】?【0183】、図12(a)?(c))が記載されており、ここでの連続する2つの図柄変動ゲームにおいて表示される「狙い撃ち演出」の画像は、対象となる保留球の図柄変動ゲームをまたいだ移動に伴って、当該移動する保留球の近傍に表示されているから、該両図柄変動ゲームにわたって表示されているといえる。

そして、刊行物1発明と前記周知の技術事項とは、遊技機における、特定の保留についての大当たり等を示唆する保留球変化演出の発生をさらに示唆する演出についてのものである点で共通する。
また、先読み演出の期待感をより高めることを課題とする点においても刊行物1発明と前記周知の技術事項とは共通する。
さらに、刊行物1発明は上記構成sとして「保留球の画像の色が変更されることを示唆する・・・背景画面としての特殊画面の画像を・・・複数回の変動表示にわたって表示」する構成を備えるから、複数回の変動表示にわたって表示する保留球の画像の色が変更されることを示唆する画像として、前記表示背景画像に代えて前記周知の技術事項を採用することに格別の阻害要因も有さない。

したがって、刊行物1発明に上記周知の技術事項を適用して上記仮の相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 請求人の主張について
請求人は審判請求書4.(3)において、刊行物1に記載された発明が、保留変化示唆画像を複数回の図柄の変動表示にわたって保留球画像の近傍に表示する演出について、刊行物1に開示が無い点で相違し、また、刊行物1における当該演出が制御を複雑化する旨の記載が当該演出を付加することに対する阻害要因となる旨主張している。

しかし、刊行物1発明は、保留球変化演出として、複数回の変動にわたり背景変化を行う構成を備え、当該構成が前記請求人が主張する相違点に相当するともいえるし、仮にそうとまでいえないとしても、この点に対し周知技術を適用することに阻害要因を有さないことは上記アで説示したとおりであるから、前記請求人の主張は採用できない。

ウ 小括
したがって、上記ア?イにおいて検討したように、本件補正発明は、刊行物1発明と同一であるか、または、該刊行物1発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、または同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年1月16日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2.原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願出願日前に公知になった上記刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.対比・判断
(1)補正事項
本願発明は、上記本件補正発明とは、上記第2の2.で検討したとおり、次のア、イの点で異なる。
ア 構成相違点1
上記構成Sの「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を保留球画像の近傍に複数回の図柄の変動表示にわたって表示可能であり」の下線部を省いたものに該当する「保留球画像が変更されることを示唆する保留変化示唆画像を表示し」なる構成(以下「構成S’」という。)を備える点。

イ 構成相違点2
上記構成Tの「保留球画像が変更されることを示唆する態様で保留変化示唆画像が表示された場合は、保留変化示唆画像の近傍に表示される保留球画像が変更されることが示唆される」のかわりに、
「T1 前記事前判定情報が特別遊技移行に係る情報である場合又は特定変動パターンに係る情報である場合の方が、前記事前判定情報が特別遊技非移行に係る情報である場合又は前記特定変動パターンとは異なる所定変動パターンに係る情報である場合よりも、少なくとも、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される確率、又は、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出が実行される可能性が高く、
T2-1 保留球画像は、同一の事前判定情報に係る保留球画像が段階的に変化する第1変化態様により変化する場合と、
T2-2 異なる事前判定情報に係る1又は複数の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合があり、
T3 前記演出制御手段は、前記保留変化示唆画像が表示された場合であっても前記保留球画像の態様を変化させないように制御可能である」
なる構成を備える点。
とする補正。(「S’」、「T1」?「T3」は分説のため当審にて付与した。)

(2)刊行物1に記載された発明
ア 上記第2の3.(2)アの各記載事項から、以下の事項が導かれる。
(あ)上記【0423】には「図59(a)に示すように、大当り期待度は保留球の色によって異なる。大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)、大当り期待度が中程度であれば先読み予告演出によって保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球の色は赤になる。また、図59(b)に示すように、スーパーリーチ期待度は保留球の形状によって異なる。スーパーリーチ期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球は変化せず(割れず)、スーパーリーチ期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球が割れる(さらに割れた保留球からSという文字が出現する)。」と記載されている。
ここで、「大当り期待度は保留球の色によって異なる。大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)、大当り期待度が中程度であれば先読み予告演出によって保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球の色は赤になる。」とは即ち、保留記憶の大当たり期待度が高い方が、白やグレーよりも、青や赤の保留球の画像が表示される可能性が高い」ことと言い換えられるが、このことはさらに、「保留記憶が大当たりである場合の方が、保留記憶が大当たり以外の場合よりも、保留球の色が青や赤になる演出が実行される可能性が高い」ことと言い換えることができるといえる。
同様に、前記「スーパーリーチ期待度は保留球の形状によって異なる。スーパーリーチ期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球は変化せず(割れず)、スーパーリーチ期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球が割れる(さらに割れた保留球からSという文字が出現する)。」とは、「保留記憶がスーパーリーチである場合の方が、保留記憶がスーパーリーチ以外の場合よりも、保留球が割れる演出が実行される可能性が高い」と言い換えることができるといえる。
よって、刊行物1には、「保留記憶が大当たりである場合の方が、保留記憶が大当たり以外の場合よりも、保留球の色が青や赤になる演出が実行される可能性が高く、保留記憶がスーパーリーチである場合の方が、保留記憶がスーパーリーチ以外の場合よりも、保留球が割れる演出が実行される可能性が高い」ことが記載されているといえる。

(い)上記【0445】には、「決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、・・・演出番号A21は、小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が赤の場合に30%(左テーブル及び右テーブル)の確率で出現するステップアップ演出となっている。」と記載されている。
ここで、「演出番号A21」は1?100まで取り得るランダム値が1?30の場合に選択される演出態様であるから、種々の演出番号が選択され得るなかで、該「演出番号21」の態様で保留球が変化する場合があるといえる。
よって、刊行物1には、「決定色が「赤」であって、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に、保留球を「青」に変化させ、次いで「赤」に変化させるステップアップ演出を行う場合がある」ことが記載されているといえる。

(う)上記【0440】には「ステップS6018Cにおいて、演出制御用CPU101は、RAMの保留球表示処理用テーブルを参照することで、ステップS6018Bにおける決定色より期待度の高い色の保留球を表示しているか否か(又は表示するか否か)を確認することができる。例えば決定色が「変化なし」の場合に、演出番号A1X(青に対応)又はA2X(赤に対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6018CでYESと判定する。また、例えば決定色が「青」の場合に、演出番号A2X(赤に対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6018CでYESと判定する。S6018CでYESと判定すると、そのまま処理を終了する。このように、期待度の高い先読み予告演出が行われる場合には、これより期待度の低い先読み予告演出を行わない。」と記載され、上記【0454】には「ステップS6019Cにおいて、演出制御用CPU101は、RAMの保留球表示処理用テーブルを参照することで、ステップS6019Bにおける決定形状より期待度の高い形状の保留球を表示しているか否かを確認することができる。例えば決定形状が「割れない」の場合に、演出番号B1X(割れるに対応)が保留球表示処理用テーブルに記憶されている場合には、S6019CでYESと判定する。S6019CでYESと判定すると、そのまま処理を終了する。このように、期待度の高い先読み予告演出が行われる場合には、これより期待度の低い先読み予告演出を行わない。」と記載されている。
これらの記載から、刊行物1には、「保留球表示の変化態様として、より大当たりやスーパーリーチの期待度が高い変化態様が既に記憶されている場合には、変化しない態様を含め、それらより低い期待度の変化態様を実行しないように制御すること」が記載されているといえ、このことから、対偶を考えれば、複数の変化態様を実行する制御を行われるのは、より大当たりやスーパーリーチの期待度が高い変化態様が既に記憶されていない場合であること、すなわち、「前回までの始動口入賞に伴って既に記憶されている変化態様があっても、今回の始動口入賞に伴う変化態様が前記既に記憶されているものよりも前記期待度がより大きい場合は、今回の始動口入賞に伴う変化態様が実行される場合があること」、が記載されているといえる。

(え)上記【0423】には「大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)」、及び「スーパーリーチ期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球は変化せず(割れず)」と記載されている。
よって、刊行物1には、「小人や巨人が出現する先読み予告演出によって、保留球の色が変化しない場合や割れない場合がある」ことが記載されているといえる。

イ 上記アの各記載事項から、刊行物1には、上記構成a?s、uとともに下記構成t1?t3を備える発明(以下「刊行物1-1発明」という。)が記載されていると認められる。
「t1 保留記憶が大当たりである場合の方が、保留記憶が大当たりである場合以外の場合よりも、保留球の色が青や赤になる演出が実行される可能性が高く、保留記憶がスーパーリーチである場合の方が、保留記憶がスーパーリーチ以外の場合よりも、保留球が割れる演出が実行される可能性が高く、
t2-1 決定色が「赤」であって、2R、10R、又は15R確変大当りの場合に、保留球を「青」に変化させ、次いで「赤」に変化させるステップアップ演出を行う場合があり、
t2-2 前回までの始動口入賞に伴って既に記憶されている変化態様があっても、今回の始動口入賞に伴う変化態様が前記既に記憶されているものよりも前記期待度がより大きい場合は、今回の始動口入賞に伴う変化態様が実行される場合があり、
t3 小人や巨人が出現する先読み予告演出によって、保留球の色が変化しない場合や割れない場合がある」

(3)対比
ア 構成相違点1について
上記構成相違点1に係る構成S’は、上記3.(1)アのとおり上記構成Sの一部特定事項を省いたものであるから、依然として上記刊行物1発明及び刊行物1-1発明の構成sがこれに相当する。

イ 構成相違点2について
(ア)構成T1について
上記刊行物1-1発明の構成t1の「保留記憶が大当たりである場合」、「保留記憶が大当たりである場合以外の場合」、「保留記憶がスーパーリーチである場合」、「保留記憶がスーパーリーチ以外の場合」はそれぞれ、上記本願発明の構成T1の「前記事前判定情報が特別遊技移行に係る情報である場合」、「前記事前判定情報が特別遊技非移行に係る情報である場合」、「特定変動パターンに係る情報である場合」、「前記特定変動パターンとは異なる所定変動パターンに係る情報である場合」に相当する。
また、上記構成t1の「保留球の色が青や赤になる演出」、「保留球が割れる演出」はそれぞれ、本願発明の構成T1の「特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される」演出、「特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出」に相当する。
よって、前記構成t1は前記構成T1に相当する。

(イ)構成T2-1について
上記刊行物1-1発明の構成t2-1の「決定色が「赤」であって、2R、10R、又は15R確変大当りの場合」は、ある単一の始動口入賞についての特定事項であるから、その場合に「保留球を「青」に変化させ、次いで「赤」に変化させるステップアップ演出を行う」ことは、上記本願発明の構成T2-1の「同一の事前判定情報に係る保留球画像が段階的に変化する」ことに相当するといえる。
よって、前記構成t2-1は前記構成T2-1に相当する。

(ウ)構成T2-2について
上記刊行物1-1発明の構成t2-2の「前回までの始動口入賞に伴って既に記憶されている」変化態様と「今回の始動口入賞に伴う」変化態様とは、相互に異なる始動口入賞に伴う変化態様であるから、該各変化態様による保留球画像の変化は、上記本願発明の構成T2-2の「異なる事前判定情報に係る・・・保留球画像が変化する第2の変化態様」に相当するといえる。
また、前記構成t2-2において、「既に記憶されている変化態様があっても・・・今回の始動口入賞に伴う変化態様が実行される場合」とは、例えば既に表示中のある保留球が白から青に変化していても、新たな始動口入賞に伴い保留球を白から赤(青よりも期待度が高い)に変更する変化態様が実行される場合を意味しており、この場合は複数の保留球に対して保留球画像が変化することとなり、こうした場合を前記構成t2-2は含むと言える。
よって、前記構成t2-2は、「異なる事前判定情報に係る複数の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合があり」の点で前記構成T2-2と共通する。

(エ)構成T3について
上記刊行物1-1発明の構成t3の「小人や巨人が出現する先読み予告演出」が演出制御用CPU101によるものであることは上記第2の3.(2)ウ(て)で説示したとおりである。
また、該構成t3の「保留球の色が変化しない場合や割れない場合がある」ことは本願発明の構成T3の「前記保留球画像の態様を変化させないように制御可能である」ことに相当する。
よって、該構成t3は前記構成T3に相当する。

(オ)上記ア及びイ(ア)?(エ)によれば、本願発明と刊行物1-1発明とは、前者の構成A?S、Uのほか、下記の点で一致する。(下線部は強調のため当審にて付与した。)
[一致点]
「T1 前記事前判定情報が特別遊技移行に係る情報である場合又は特定変動パターンに係る情報である場合の方が、前記事前判定情報が特別遊技非移行に係る情報である場合又は前記特定変動パターンとは異なる所定変動パターンに係る情報である場合よりも、少なくとも、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する種類の保留球画像が表示される確率、又は、特別遊技移行期待度が高いことを示唆する特定の演出群に含まれる演出が実行される可能性が高く、
T2-1 保留球画像は、同一の事前判定情報に係る保留球画像が段階的に変化する第1変化態様により変化する場合と、
T2-2’ 異なる事前判定情報に係る複数の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合があり、
T3 前記演出制御手段は、前記保留変化示唆画像が表示された場合であっても前記保留球画像の態様を変化させないように制御可能である」

(カ)また、本願発明と刊行物1-1発明とは、下記の点で一応相違する。(下線部は強調のため当審にて付与した。)
[相違点]
本願発明が、上記構成T2-2として「異なる事前判定情報に係る1の保留球画像が変化する第2の変化態様による変化する場合」を択一的に含むのに対し、刊行物1-1発明がそのような場合を含むことが明確でない点。

(4)判断
上記相違点に係る本願発明の構成が意味するところはその文言上必ずしも明確ではないが、平成29年1月16日付け意見書において補正の根拠とした【0207】の記載を参酌すると、「表示態様が変更された複数の保留球画像枠のうち、いすれか一つにおいて保留球画像が変更される場合」について特定することを意図したものとも推察される。
上記構成T2-2は「表示態様が変更された複数の保留球画像枠」すなわち「複数の保留変化示唆画像」が表示された場合との前提を欠いているために、単に複数の保留球画像のひとつのみが変化する場合とも解し得るが、仮にこれを前記【0207】に沿って前記推察のとおり解釈し、さらに、「表示態様が変更された複数の保留球画像枠が同時に表示されている場合であって、それらのうち、いすれか一つにおいて保留球画像が変更される場合」を指すと限定的に解釈すると、刊行物1-1発明はそのような構成を明示的に備えない。(下線部は強調のために付与した。)
しかし、刊行物1-1発明は、上記ア(う)で説示したとおり、「前回までの始動口入賞に伴って既に記憶されている変化態様があっても、今回の始動口入賞に伴う変化態様が前記既に記憶されているものよりも前記期待度がより大きい場合は、今回の始動口入賞に伴う変化態様が実行される」(構成t2-2)場合があること、及び、上記構成t3として「小人や巨人が出現する先読み予告演出によって、保留球の色が変化しない場合や割れない場合がある」構成を備える、すなわち、保留変化示唆演出が実行されても保留球を変化させない場合を含むことから、これらを組合わせ、複数の保留球に対し保留変化示唆演出を実行し、その一部の保留球については該示唆演出後に保留球を変化しないようにすることは、当業者であれば容易に相当しうる演出形態であるといえる。
以上のとおりであるから、仮に本願発明の構成t2-2を明細書の記載を参酌して限定的に解釈したとしても、それによる相違点の構成とすることは、当業者が刊行物1-1発明に基づいて容易になし得たことである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-28 
結審通知日 2018-01-09 
審決日 2018-01-23 
出願番号 特願2015-149690(P2015-149690)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 孝徳  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 樋口 宗彦
萩田 裕介
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 三木 友由  
代理人 森下 賢樹  
代理人 村田 雄祐  

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