• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01S
管理番号 1338090
異議申立番号 異議2017-700348  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-10 
確定日 2018-01-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6007238号発明「ファイバレーザ装置およびレーザ光照射位置の位置決め方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6007238号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。 特許第6007238号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6007238号の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成28年9月16日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 畑中 悦子(以下、単に「申立人」という。)より請求項1?16に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月16日付けで取消理由が通知され、平成29年8月18日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年9月26日に申立人から意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
特許権者は、「特許第6007238号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?16について訂正することを求める。」との趣旨で訂正を請求したものであって、具体的な訂正事項は以下の訂正事項1ないし9に示すとおりである。(以下、これら訂正事項1ないし9をまとめて「本件訂正」という。)

(訂正事項1)特許請求の範囲の請求項1に「前記導入部は、前記光共振器の前段側または出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」と記載されているのを「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」に訂正する。

(訂正事項2)特許請求の範囲の請求項2に「前記導入部は、前記光共振器の前段側または出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」と記載されているのを「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」に訂正する。

(訂正事項3)特許請求の範囲の請求項2に「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバまたは前記出力用光ファイバのコアに導入され、」と記載されているのを「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、」に訂正する。

(訂正事項4)特許請求の範囲の請求項3に「前記導入部は、前記光共振器の前段側または出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」と記載されているのを「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」に訂正する。

(訂正事項5)特許請求の範囲の請求項4に「前記導入部は、前記光共振器の前段側または出力側に設けられ且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」と記載されているのを「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」に訂正する。

(訂正事項6)特許請求の範囲の請求項4に「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバまたは前記出力用光ファイバのコアに導入され、」と記載されているのを「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、」に訂正する。

(訂正事項7)特許請求の範囲の請求項6に「前記導入部は、前記光共振器の前段側または出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」と記載されているのを「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、」に訂正する。

(訂正事項8)特許請求の範囲の請求項6に「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバまたは前記出力用光ファイバのコアに導入され、」と記載されているのを「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバのコアに導入され、」に訂正する。

(訂正事項9)特許請求の範囲の請求項11に「前記光共振器は、前記増幅用光ファイバの両側にFBGを備えることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」と記載されているのを「前記光共振器は、前記光共振器の増幅用光ファイバの両側にFBGを備えることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1?8に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲中に「・・・または・・・」の形式で記載した、2つの態様のいずれかの態様を採り得るとした内容のものを、訂正により片方の態様を削除し一つの態様のみを採ると限定することを内容とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、新規事項の追加に明らかに該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項9に係る訂正は、「両側にFBGを備える」とした対象を「前記増幅用光ファイバ」とした訂正前の事項を、訂正により「前記光共振器の増幅用光ファイバ」へと変更するものである。これは、訂正前に「前記増幅用光ファイバ」とされたものが、光共振器の一部を構成するものだけではなく、光共振器の出力側にも別途同一表記で存在していた関係から正確さを欠いたものであったものを、「光共振器の」増幅用光ファイバであると正すことにより明瞭でない記載の釈明を図るものと認められるので、当該訂正事項による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、当該訂正された内容は、明細書の【0029】-【0030】、図5、図12、図14に記載乃至図示した内容に沿うものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、訂正前の請求項1、5?16は、請求項5?16が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にある。さらに、訂正前の請求項2、8、9、15?16は、請求項8、9、15?16が、訂正の請求の対象である請求項2の記載を引用する関係にある。その上、訂正前の請求項3、5?16は、請求項5?16が、訂正の請求の対象である請求項3の記載を引用する関係にある。また、訂正前の請求項4、8、9、15?16は、請求項8、9、15?16が、訂正の請求の対象である請求項4の記載を引用する関係にある。
以上総合すると、これらの請求項の関係は、訂正前において一群の請求項に該当し、本件訂正により一群ごとに訂正するものである。したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?16について訂正を認める。


3.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 訂正後の請求項1ないし16に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし16に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。

本件発明1「シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」

本件発明2「シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とするレーザ光源装置。」

本件発明3「基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。」

本件発明4「基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とするレーザ光源装置。」

本件発明5「前記導入部は、前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入するとともに、前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播して前記可視レーザ光源に入射される戻り光を減衰することを特徴とする請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」

本件発明6「前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とする、請求項5に記載のレーザ光源装置。」

本件発明7「前記戻り光は、不可視レーザ光波長を有するとともに、前記不可視レーザ光によってその長波側に発生するラマン散乱光または前記不可視レーザ光波長に近接して発生するブリユアン散乱光のうち少なくとも1つを含む不可視光からなることを特徴とする、請求項5に記載のレーザ光源装置。」

本件発明8「前記波長選択合分波素子は、ファイバ溶融型または研磨型であることを特徴とする請求項2、4または6に記載のレーザ光源装置。」

本件発明9「前記可視レーザ光源と、前記波長選択合分波素子との間には、前記波長選択合分波素子から一方の前記入力端子に伝播される前記戻り光を減衰する、可視光を通過帯域としたフィルタが設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のレーザ光源装置。」

本件発明10「前記導入部は、前記可視レーザ光源の出射部と前記増幅用光ファイバのコアとを接続する光ファイバを有していることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」

本件発明11「前記光共振器は、前記光共振器の増幅用光ファイバの両側にFBGを備えることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」

本件発明12「前記導入部は、前記可視レーザ光源の出射部と前記増幅用光ファイバのクラッドとを接続する励起光合波器を有していることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。」

本件発明13「前記可視レーザ光源と前記導入部との間にコア光を減衰するコア光減衰部が配置されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。」

本件発明14「前記可視レーザ光源と前記導入部との間に前記可視レーザ光を透過し、前記不可視レーザ光を減衰させる光学フィルタが配置されていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。」

本件発明15「前記増幅用光ファイバのクラッドを伝播する光を減衰するクラッド光減衰部を有することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。」

本件発明16「前記可視レーザ光の波長は赤色または緑色に対応する波長を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。」


イ 取消理由の概要
平成29年6月16日付け取消理由通知書に記した取消理由は、概略以下のとおりである。

取消理由1.特許法第29条第2項
甲第 1号証:特開2003-285189号公報
甲第 2号証:特開2003-8114号公報
甲第 3号証:特開2010-129886号公報
甲第 4号証:特開2007-123594号公報
甲第 5号証:特開2010-167433号公報
甲第 6号証:特開2008-147389号公報
甲第 7号証:特表2009-512208号公報
甲第 8号証:特開2010-1193号公報
甲第 9号証:特開2009-69492号公報
甲第10号証:特開2008-276233号公報
甲第11号証:特開2009-16804号公報
甲第12号証:特開2007-81076号公報
甲第13号証:特開2007-173346号公報
甲第14号証:特開2007-42981号公報
甲第15号証:特開2009-212441号公報
甲第16号証:特開2010-147108号公報
甲第17号証:特開2010-232650号公報
甲第18号証:特開2009-178720号公報
甲第19号証:特開2010-171322号公報
甲第20号証:特開2008-187100号公報
甲第21号証:特開昭61-200503号公報
甲第22号証:国際公開第2008/123609号
甲第23号証:特開2008-268747号公報
甲第24号証:特開2007-240258号公報
(1)請求項1、3、5?16に係る発明は、上記甲第1号証?甲第23号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1、3、5?16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項1、3、5?16に係る発明は、上記甲第2号証?甲第24号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1、3、5?16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項2、4、8、9、15、16に係る発明は、上記甲第2号証?甲第17号証、甲第19号証、甲第20号証及び甲第22号証?甲第24号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項2、4、8、9、15、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)請求項2に係る発明は、請求項1、5を引用する請求項6に係る発明と実質的に同一となることから、請求項2、8、9、15、16に係る発明は、上記(1)ないし(2)の理由と同様に、上記甲第1号証?甲第23号証に記載された発明、又は甲第2号証?甲第24号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項2、8、9、15、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)請求項4に係る発明は、請求項3、5を引用する請求項6に係る発明と実質的に同一となることから、請求項4、8、9、15、16に係る発明は、上記(1)ないし(2)の理由と同様に、上記甲第1号証?甲第23号証に記載された発明、又は甲第2号証?甲第24号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項4、8、9、15、16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

取消理由2.特許法第36条第6項第2号
甲第25号証:山下真司著、「イラスト・図解 光ファイバ通信のしくみがわかる本」、初版、株式会社技術評論社、平成14年4月25日発行、p.80-83
甲第26号証:末松安晴、伊賀健一著、「光ファイバ通信入門」、改訂4版、株式会社オーム社、平成18年3月20日発行、p.18-27

(1)請求項3、4の「低次モード」は不明確である。よって、請求項3、4、及び、これに従属する請求項5?16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)請求項2、4の記載は不明確である。よって、請求項2、4、及び、これに従属する請求項8、9、15、16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)請求項6の記載は不明確である。よって、請求項6、及び、これに従属する請求項8、9、15、16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ウ 取消理由1(特許法第29条第2項違反)について
a. 各甲号証の記載
取消理由通知において引用し、特許異議申立書で主たる証拠とされている甲第1号証には、レーザ加工装置と題して、コア径25μm、先端をレーザ光出力端面13とし、後端が反射端面14とされた能動光ファイバ12に、励起装置である半導体レーザ発振器16から励起レーザ光を照射することにより、該能動光ファイバ12で波長が約1.06μmであるファイバレーザ光を発振させるファイバレーザ発振装置11を前記加工装置が備え、前記ファイバレーザ発振装置11のレーザ光出力端面13には、加工ヘッド20が受動光ファイバ(パワー伝送用光ファイバ)を介して接続され、該加工ヘッド20は、先端部に加工ノズル26を有すると共に第1集光光学系24を備えるものであり、前記ファイバレーザ発振装置11の反射端面14には、第2集光光学系34と波長0.633μmの可視光であるHeNeレーザ発振装置32とからなる加工開始前に集光点の位置決めを行う集光点位置決め装置30が接続されていることが記載されている。以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「レーザ加工装置であって、
前記レーザ加工装置は、
コア径25μm、先端をレーザ光出力端面13とし、後端が反射端面14とされた能動光ファイバ12に、励起装置である半導体レーザ発振器16から励起レーザ光を照射することにより、該能動光ファイバ12で波長が約1.06μmである不可視のファイバレーザ光を発振させるファイバレーザ発振装置11と、
前記ファイバレーザ発振装置11のレーザ光出力端面13に接続された、受動光ファイバと、
前記受動光ファイバの先に接続された加工ヘッド20と、
前記ファイバレーザ発振装置11の反射端面14に接続された、第2集光光学系34と波長0.633μmの可視光であるHeNeレーザ発振装置32とからなる加工開始前に集光点の位置決めを行う集光点位置決め装置30と、
からなり、
該加工ヘッド20は、先端部に加工ノズル26を有すると共に第1集光光学系24を備えるものとされる、
レーザ加工装置。」

同じく、取消理由通知において引用し、特許異議申立書で主たる証拠とされている甲第24号証には、レーザ光LBを出力するレーザ光源であるファイバレーザ1と、可視光であるガイド光の光源3と、該ガイド光源3からの可視光をデリバリファイバ2内のコアに導入する導入タップ4及び該デリバリファイバ2のコアを介して反射される反射ガイド光RGLを取り出すための取出タップ6とを備えるデリバリファイバ2と、該デリバリファイバ2の出力端2a近傍に配置され、デリバリファイバ2から出射される可視光であるガイド光の一部を反射ガイド光RGLとして反射してデリバリファイバ2のコアに返すとともにレーザ光LBは反射することなく通過させる反射体5と、該取出タップ6からの反射ガイド光RGLが入射されその強度を検出する検出部7とを有するレーザ加工装置であって、デリバリファイバ2の破断を、前記検出部7の強度が低下あるいはゼロとなることで検知できること、及び、可視光である照射されたガイド光GLの位置から、操作者がレーザ光LBの位置を視認し把握できることが記載されている。以上の記載によれば、甲第24号証には以下の発明(以下、「甲24発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲24発明)
「加工用レーザを出力して材料の加工を行うレーザ加工装置に付設され、レーザ加工装置が有するデリバリファイバ2の破断を検知する検知システムであって、
前記レーザ加工装置は、
レーザ光LBを出力するレーザ光源であるファイバレーザ1と、
ファイバレーザ1の出力端に接続されるデリバリファイバ2と、
可視光であるガイド光の光源3と、
該デリバリファイバ2に接続されかつ該ガイド光源3からの可視光を当該デリバリファイバ2内のコアに導入する導入タップ4と、からなり、
前記検知システムは、
該デリバリファイバ2の出力端2a近傍に配置され、デリバリファイバ2から出射される可視光であるガイド光の一部を反射ガイド光RGLとして反射してデリバリファイバ2のコアに返すとともにレーザ光LBは反射することなく通過させる反射体5と、
該デリバリファイバ2のコアを介して反射される反射ガイド光RGLを取り出すために該デリバリファイバ2に設けられる取出タップ6と、
該取出タップ6からの反射ガイド光RGLが入射されその強度を検出する検出部7と、からなり、
前記デリバリファイバ2の破断は、前記検出部7に入力される反射ガイド光RGLの強度が低下あるいはゼロとなることで検知可能であり、
前記ガイド光源3によって照射されるガイド光GLの位置から、操作者がレーザ光LBの位置を視認し把握できる
検知システム。」

b. 対比・判断
上記「イ 取消理由の概要」の「取消理由1.」に掲げた(1)?(5)の順に、対比及び判断を行う。
(1)本件発明1及び本件発明3、5?16が、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第23号証に記載の公知の技術的事項に基づいて容易想到であるか否かについて(申立書「4-3」)
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「コア径25μm、先端をレーザ光出力端面13とし、後端が反射端面14とされた能動光ファイバ12」は、本件発明1の「光共振器」に相当すると共に、甲1発明の「前記ファイバレーザ発振装置11のレーザ光出力端面13に接続された、受動光ファイバ」は、本件発明1の「出力用光ファイバ」に相当する。
また、不可視レーザ光を増幅する増幅用光ファイバに対して、可視レーザ光を導入するという点では、甲1発明の「波長0.633μmの可視光であるHeNeレーザ発振装置32」を含む「集光点位置決め装置30」は、導入箇所とされる「増幅用光ファイバのコア」及び「光共振器の出力側」との特定を除き、本件発明1の「前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光」を「導入する導入部」に相当する。
以上により明らかなように、訂正の結果、可視光であるレーザ光の導入部は、光共振器の出力側に設けられることに特定されているので、少なくとも両者は可視レーザ光をレーザ光源装置内に導入する箇所に関して、相違が生じている。
当該相違に関し、特許異議申立書に添付した他の証拠を見渡すと、本件発明1が採用している、加工用の不可視レーザ光と、加工位置の位置決めに用いる可視のレーザ光とを同一のファイバコアに伝播させることを前提とした技術を開示した証拠は、わずかに甲第24号証しか存在せず、当該甲第24号証は取消理由1.(1)では、証拠として用いられてはいない。
よって、上述の相違点とされる、可視レーザ光をレーザ光源装置内に導入する箇所を光共振器の出力側とする点に関し、当業者が容易に想到できたとすることができないので、本件発明1は取消理由1.(1)によっては取り消すことができない。
また、本件発明3は、増幅用ファイバに関する特定事項が、本件発明1では「シングルモードコアを有する」とされているのに対して、本件発明3では「基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する」とされている違いを有する他は、共通する構成とされている関係上、上述の判断と同様、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第23号証に記載の公知の技術的事項によってはこれを、当業者が容易に想到できたとすることができない。
さらに、本件発明1または3を引用する本件発明5?16についても、取消理由1.(1)によっては取り消すことができない。

<理由1.(1)の小括>
本件発明1及び本件発明3、5?16はいずれも、取消理由1.(1)によっては取り消すことができない。

(2)本件発明1及び本件発明3、5?16が、甲24発明及び甲第2号証ないし甲第23号証に記載の公知の技術的事項に基づいて容易想到であるか否かについて(申立書「5-3」)
本件発明1と甲24発明とを対比する。
甲24発明の「レーザ光LBを出力するレーザ光源であるファイバレーザ1」は、不可視レーザ光を生成する点で一致し、共振器を構成している点を除く限りにおいて、本件発明1の「不可視レーザ光を発生」するとされた「光共振器」に相当し、
以下、同様に、
「デリバリファイバ2」は、「出力用光ファイバ」に、
「可視光であるガイド光の光源3」は、「可視レーザ光を発生する可視レーザ光源」に、
「該ガイド光源3からの可視光を」「コアに導入する導入タップ4」は、「前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を」「コアに導入する導入部」に各々相当する。
両者の一致点、相違点は、各々以下のとおり。
(一致点)
不可視レーザ光を、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する手段と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光をコアに導入する導入部と
を有するレーザ光源装置。
(相違点)
相違点1
本件発明1のレーザ光源装置は、「シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅」するのに対して、甲24発明の検知システムに含まれるレーザ加工装置は、レーザ光LBの光源になる「ファイバレーザ1」や「デリバリファイバ2」を有するのみであって、レーザ光LBを増幅する別途の増幅用光ファイバを有していない点。
相違点2
本件発明1の「導入部」は、「可視レーザ光」を「前記増幅用光ファイバのコア」に「導入する」とし、かつ、「前記光共振器の出力側に設けられる」としているのに対して、甲24発明の「導入タップ4」は、前記相違点1で指摘したとおり別途の増幅用光ファイバを備えていない関係から、可視光であるガイド光をデリバリファイバ2内のコアへ導入するとし、その接続箇所もレーザ光源1とは別個のデリバリファイバ2に接続するとしている点。
相違点3
本件発明1の「光共振器」は、その記載のとおり共振器の構成を有する、不可視レーザ光の発生手段であるのに対して、甲24発明の「レーザ光LBを出力するレーザ光源であるファイバレーザ1」は、光共振器の態様を備えるとは明示していない点。
相違点4
本件発明1のレーザ光源装置は、「加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部」を有するのに対して、甲24発明のシステムは、係る事項を有するか明らかでない点。

そこで、上記相違点について各々検討する。
相違点1に係る「シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅」するとした点についてみると、高出力のレーザ光を必要とするレーザ加工装置として、加工用のレーザ光源の直後に増幅用の光ファイバを備えるとした構成の採用は、例えば甲第3号証の図9の増幅側とされた図示や、甲第5号証の図1中の光ファイバ11B及び【0043】並びに図7中の光ファイバ11Cで見られるとおり、当業者にとり周知慣用の構成にすぎない。また、光ファイバにはシングルモードコアとマルチモードコアの2つの態様が存在することが技術常識として知られており、どちらを採用するかは技術内容に応じて選択されているところ、本件発明1でシングルモードコアが選択されている点に関して、本件明細書の【0029】に記載されているとおり、特段の制限等の事情はないことからみて、単なる慣用態様の中からの選択でなし得ると認められる。
そうすると、相違点1に係る構成は、レーザ加工装置の分野で通常見られる周知の態様というべきであるから、甲24発明と甲第3号証または甲第5号証に記載の周知技術に基づき、当業者が容易に想到し得ると認められる。
相違点2については、前記相違点1に係る判断で示した、増幅用光ファイバの採用が容易であるとした結果を勘案して検討する。
甲24発明の「導入タップ4」の設置箇所について具体的な明示はなされていないものの、デリバリファイバに導入部たる導入タップは連結される事項は存在している。
そうすると、ファイバレーザ1の仕様が、周知技術とされる増幅用光ファイバの仕様とされる場合には、甲24発明の導入タップ4の設置箇所は、ファイバレーザ1の出力端に増幅用光ファイバが位置し、増幅用光ファイバの出力端にデリバリファイバ2が置かれることとなる。
ところが、導入タップ4はデリバリファイバ2の破断を検知するための目的に使用される部材であるから、デリバリファイバ2の所用の箇所に設ければよいのであって、可視レーザ光を増幅用光ファイバのコアに導入する理由がない。
結果、相違点1に係る装置の変更に伴い導入タップ4の設置箇所は、上記相違点2で本件発明1が要件とする「前記光共振器の出力側に設けられる」を満たさない。この点は特許権者が提出した意見書8ページ第3行の「また、第2に・・・」にも指摘されているところであり、これに対して申立人が提出した意見書では容易想到となしえる有効な反論はなされず、特許異議申立書で述べた主張を繰り返すに留まる。
そうすると、相違点2に係る構成は、甲24発明と甲第3号証または甲第5号証に記載の周知技術、並びに技術常識によっては、当業者が容易想到であると認めることができない。

以上により本件発明1と甲24発明との相違は、少なくとも相違点2に係る構成を容易想到とできない以上、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、取消理由1.(2)によっては取り消すことができない。
また、本件発明3は、増幅用ファイバに関する特定事項が、本件発明1では「シングルモードコアを有する」とされているのに対して、本件発明3では「基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する」とされている違いを有する他は、共通する構成とされている関係上、上述の判断と同様、甲24発明及び甲第2号証ないし甲第23号証に記載の公知の技術的事項によってはこれを、当業者が容易に想到できたとすることができない。
さらに、本件発明1または3を引用する本件発明5?16についても同様に取消理由1.(2)によっては取り消すことができない。

<理由1.(2)の小括>
以上纏めると、本件発明1、3、5?16は、申立人が挙げた証拠と理由によってはこれを当業者が容易想到であるとすることはできない。

(3)本件発明2及び本件発明4、8、9、15、16が、甲24発明及び甲第2号証ないし甲第23号証に記載の公知の技術的事項に基づいて容易想到であるか否かについて(申立書「6-3」)
本件発明2と甲24発明とを対比する。
甲24発明の「レーザ光LBを出力するレーザ光源であるファイバレーザ1」は、共振器を構成する点を除き、本件発明2の「不可視レーザ光を発生する光共振器」に相当し、
以下、同様に、
「デリバリファイバ2」は、「出力用光ファイバ」に、
「可視光であるガイド光の光源3」は、「可視レーザ光を発生する可視レーザ光源」に、
「該ガイド光源3からの可視光を」「デリバリファイバ2のコアに導入する導入タップ4」は、「前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部」に各々相当する。
両者の一致点、相違点は、各々以下のとおり。
(一致点)
出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を出力用光ファイバのコアに導入する導入部と
を有するレーザ光源装置。
(相違点)
相違点1
本件発明2のレーザ光源装置は、「シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅」するのに対して、甲24発明の検知システムに含まれるレーザ加工装置は、レーザ光LBの光源になる「ファイバレーザ1」や「デリバリファイバ2」を有するのみであって、レーザ光LBを増幅する別途の増幅用光ファイバを有していない点。
相違点2
本件発明2の「導入部」は、「前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰される」としているのに対して、甲24発明の「導入タップ4」は、係る事項を有さない点。
相違点3
本件発明2のレーザ光源装置は、「加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部」を有するのに対して、甲24発明のシステムは、係る事項を有するか明らかでない点。

そこで、事案に鑑みまず相違点2を検討する。
相違点2に係る、可視レーザ光の導入に「波長選択合分波素子」を用い、かつ、当該素子を「光共振器の出力側に設け」て、「一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰される」とした事項は、甲第13号証に記載の公知手段である「波長分割多重結合器」と比べてみると、当該「波長分割多重結合器」は、ファイバーレーザーのゲインピーク波長の光を分離するデバイスである(甲第13号証の【0010】、【0030】参照)から、複数の波長の光を分離する機能を有するものであって、当該相違点2に係る、不可視レーザ光と可視レーザ光とを合波するものではないため、仮に甲24発明の導入タップに甲第13号証の波長選択合分波素子を用いたとしても、ファイバレーザーのゲインピークの波長λ3を、波長分割多重結合器は分離することができるとは理解されるものの、加工に供されるレーザー光であるλ2はそのままになるため、減衰は起こらないことになる。つまり、光源の保護が自明の課題であるという前提を置いた上で光24発明と甲第13号証に記載の技術的事項とを組み合わせた場合を想定したとしても、組み合わせた結果の装置はガイド光源3への不可視レーザ光を減衰する結果を生まず、本件発明2と同じ構成には至り得ない。
よって、相違点2は実質的な相違点であり、当業者は甲24発明及び甲第13号証に基づいて本件発明2の相違点2に係る構成部分を容易に想到できない。

以上のとおりであるから、他の相違点1、3,4を検討するまでもなく、本件発明2は、甲24発明及び公知の技術的事項を用いても、相違点2が解消できない実質的な相違点となることから、当業者が容易に想到できたものとは認められないので、その特許は取り消されるべきものとは認められない。
また、本件発明4、8、9、15、16についても検討する。
本件発明4は本件発明2に対して僅かに増幅用光ファイバが異なる仕様である点のみであって、本件発明2の構成のうち上述の相違点に係る事項と共通部分を有する関係にあるから、同様に当該取消理由1の(3)とされた理由と証拠によっては、これを容易想到であるとはできない。
本件発明8、9、15、16も同様に、当該取消理由1の(3)とされた理由と証拠によっては、これを容易想到であるとはできない。

<理由1.(3)の小括>
以上纏めると、本件発明2、4、8、9、15、16は、申立人が挙げた証拠と理由によってはこれを当業者が容易想到であるとすることはできない。

(4)本件発明2が本件発明6の請求項1、5を引用する部分と同一となることをもって、本件発明2を(1)ないし(2)の理由と同様に容易想到であるとできるか否か(申立書「8-6」)
当該取消理由に対して、本件訂正により、請求項2の導入部の出力端子から出射されるレーザ光が導入されるコアとして、出力用光ファイバに限定する訂正がなされるとともに、請求項6の導入部の出力端子から出射されるレーザ光が導入されるコアとして、増幅用光ファイバに限定する訂正がなされた。その結果、請求項1、5を引用する請求項6はもはや請求項2と同一とならなくなったので、当該理由1の(4)はその前提がもはや成り立たない。
そうすると、当該理由1の(4)はその理由の基礎を欠くものとされ、成り立たない。

(5)本件発明4が本件発明6の請求項3、5を引用する部分と同一となることをもって、本件発明4を(1)ないし(2)の理由と同様に容易想到であるとできるか否か(申立書「8-7」)
当該理由に対して、上記(4)と同じく、本件訂正により請求項4の導入部の出力端子から出射されるレーザ光が導入されるコアとして、出力用光ファイバに限定する訂正がなされるとともに、請求項6の導入部の出力端子から出射されるレーザ光が導入されるコアとして、増幅用光ファイバに限定する訂正がなされた。その結果、請求項3、5を引用する請求項6はもはや請求項4と同一とならなくなったので、当該理由1の(5)はその前提がもはや成り立たない。
そうすると、当該理由1の(5)はその理由の基礎を欠くものとされ、成り立たない。

c.取消理由1のむすび
上記(1)?(5)の結論をまとめると、本件発明1?16は、取消理由1の(1)ないし(5)のいずれによっても、当業者にとり容易に想到できたものとは認められない。

エ 取消理由2(特許法第36条第6項第2号違反)について
上記「イ 取消理由の概要」の「取消理由2.」に掲げた(1)?(3)の順に、以下検討する。

(1)について
当該記載不備とした理由は、請求項3及び4の「低次モード」なる記載が、相対的な表現であり、どの程度の次数を指すのかが明らかでないため、発明を明確に把握できないことを趣旨とするものである。
しかしながら、本件特許の請求項3及び4には各々、コアが伝播するとしたレーザが単に「低次モード」とされた場合であっても、他の発明特定事項の存在により、前記「低次モード」の意味する内容を把握できるものといえるので、当該記載によって直ちにその内容が不明瞭とはいえないと認められる。
なぜなら、本件特許の請求項3及び4にはいずれにも前記他の発明特定事項として、「加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射」との記載が存在しており、この特定事項によって本件特許発明が属する技術分野が、レーザによる加工技術であるとされる。そして、レーザによる加工技術における公知の技術的知見によれば、レーザによる加工技術である場合には、加工に使用するレーザはおおよそ基本モードに留まり、他のモードとして考えられるのは、当該基本モードに次数的に近い数個のモードに留まるというべきである。
当該技術的知見は、例えば甲第11号証、甲第9号証等に記載がある、コア径の大きなLMA(Large-Mode-Area)ファイバが対象とする、基本モードに近い次数の低い高次モードに限られるとの開示内容により裏付けられる。
よって、本件発明3及び4の特許請求の範囲に記載した「加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射」との発明特定事項により特定される内容に鑑みれば、「コア」が「伝播する」とした「低次モード」は、レーザ加工分野の技術常識から見て、自ずと甲第11号証や甲第9号証にて裏付けられる、いわゆるコア径の大きなLMA(Large-Mode-Area)ファイバが通し得る、基本モード以外にはたかだか少数の、基本モードに近い次数の低い高次モードに限られることが明らかといえる。
また、レーザ加工の分野で、レーザ光を伝播する光ファイバのコアに対して、単に「低次モード」という用語を使用することは、本件と同じくレーザ光による切断等の加工を対象とした甲第7号証の【0038】にも、本件と略同じ要領で「低次モード」なる用語が用いられているところから見ても、当業者にとり常識的な用語の使用であることが推認できる。
以上により当該(1)で挙げた「低次モード」の用語の使用が直ちに本件発明3及び4を不明確とするとした取消理由は、成り立たない。

(2)について
当該記載不備とした理由は、訂正前の請求項2の「・・・前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部・・・」なる記載と、「・・・前記導入部は・・・1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し・・・前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバ・・・のコアに導入され・・・」なる記載とが、矛盾すること(申立書の99?100ページの「8-1」)、及び、訂正前の請求項2の「・・・前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部・・・」なる記載と、「・・・前記導入部は、前記光共振器の前段側・・・に設けられ・・・」なる記載とが、矛盾すること(申立書の100?101ページの「8-2」)、並びに訂正前の請求項4の「・・・前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部・・・」なる記載と、「・・・前記導入部は・・・1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し・・・前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバ・・・のコアに導入され・・・」なる記載及び「・・・前記導入部は、前記光共振器の前段側・・・に設けられ・・・」なる記載とが、矛盾すること(申立書の101ページ「8-4」)を理由に、特許発明2、4、及び、これらに従属する本件特許発明8、9、15、16が不明確であることを趣旨とするものである。

しかしながら、これらの矛盾点は、いずれも上記訂正事項に係る訂正により解消され、特許異議申立人もなんら反論を示してもいないので、係る取消理由はもはや成り立たない。

(3)について
当該記載不備とした理由は、訂正前の請求項1、5を引用する請求項6の「前記導入部は・・・1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し・・・前記出力端子から出射されるレーザ光は・・・前記出力用光ファイバのコアに導入され・・・」なる記載と、同じく請求項1の「・・・前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部・・・」なる記載とが矛盾していること(申立書の102?103ページ「9-1」)、及び、訂正前の請求項3、5を引用する請求項6の「前記導入部は・・・1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し・・・前記出力端子から出射されるレーザ光は・・・前記出力用光ファイバのコアに導入され・・・」なる記載と、請求項3の「・・・前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部・・・」なる記載とが矛盾していること(申立書の103ページ「9-2」)を理由に、本件発明6、及び、これに従属する本件発明8、9、15、16が不明確であることを趣旨とするものである。
しかしながら、これらの矛盾点は、いずれも上記訂正事項に係る訂正により解消され、特許異議申立人もなんら反論を示してもいないので、係る取消理由はもはや成り立たない。

以上のとおりであるから、取消理由2として示した上記(1)ないし(3)の理由によっては、本件発明1ないし16を取り消すことはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立理由はすべて取消理由通知において採用された。


4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?16に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
シングルモードコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項3】
基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項4】
基本モードと低次モードとを伝播するコアを有する増幅用光ファイバを用いて不可視レーザ光を増幅し、出力用光ファイバを介して出力するレーザ光源装置において、
前記不可視レーザ光を発生する光共振器と、
可視レーザ光を発生する可視レーザ光源と、
前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアに導入する導入部と、
加工対象に対する前記不可視レーザ光の照射位置の位置決めを行う場合に、前記可視レーザ光源を駆動し、前記可視レーザ光を前記出力用光ファイバのコアを介して出射させる駆動部と、を有し、
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記出力用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項5】
前記導入部は、前記可視レーザ光源によって発生された前記可視レーザ光を前記増幅用光ファイバのコアに導入するとともに、前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播して前記可視レーザ光源に入射される戻り光を減衰することを特徴とする請求項1または3に記載のレーザ光源装置。
【請求項6】
前記導入部は、前記光共振器の出力側に設けられ、且つ2の入力端子と1の出力端子を少なくとも有する波長選択合分波素子を有し、
一方の前記入力端子には前記可視レーザ光源からの可視レーザ光が入射され、前記出力端子から出射されるレーザ光は前記増幅用光ファイバのコアに導入され、
前記不可視レーザ光を発生中に前記コアを逆方向に伝播されて前記出力端子に入射される戻り光は他方の前記入力端子に伝播され、一方の前記入力端子に伝播される戻り光は減衰されることを特徴とする、請求項5に記載のレーザ光源装置。
【請求項7】
前記戻り光は、不可視レーザ光波長を有するとともに、前記不可視レーザ光によってその長波側に発生するラマン散乱光または前記不可視レーザ光波長に近接して発生するブリユアン散乱光のうち少なくとも1つを含む不可視光からなることを特徴とする、請求項5に記載のレーザ光源装置。
【請求項8】
前記波長選択合分波素子は、ファイバ溶融型または研磨型であることを特徴とする請求項2、4または6に記載のレーザ光源装置。
【請求項9】
前記可視レーザ光源と、前記波長選択合分波素子との間には、前記波長選択合分波素子から一方の前記入力端子に伝播される前記戻り光を減衰する、可視光を通過帯域としたフィルタが設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のレーザ光源装置。
【請求項10】
前記導入部は、前記可視レーザ光源の出射部と前記増幅用光ファイバのコアとを接続する光ファイバを有していることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。
【請求項11】
前記光共振器は、前記光共振器の増幅用光ファイバの両側にFBGを備えることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。
【請求項12】
前記導入部は、前記可視レーザ光源の出射部と前記増幅用光ファイバのクラッドとを接続する励起光合波器を有していることを特徴とする、請求項1または3に記載のレーザ光源装置。
【請求項13】
前記可視レーザ光源と前記導入部との間にコア光を減衰するコア光減衰部が配置されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。
【請求項14】
前記可視レーザ光源と前記導入部との間に前記可視レーザ光を透過し、前記不可視レーザ光を減衰させる光学フィルタが配置されていることを特徴とする、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。
【請求項15】
前記増幅用光ファイバのクラッドを伝播する光を減衰するクラッド光減衰部を有することを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。
【請求項16】
前記可視レーザ光の波長は赤色または緑色に対応する波長を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のレーザ光源装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-04 
出願番号 特願2014-265068(P2014-265068)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01S)
P 1 651・ 121- YAA (H01S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青木 正博  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 西村 泰英
柏原 郁昭
登録日 2016-09-16 
登録番号 特許第6007238号(P6007238)
権利者 古河電気工業株式会社
発明の名称 ファイバレーザ装置およびレーザ光照射位置の位置決め方法  
復代理人 佐尾山 和彦  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
復代理人 笹田 健  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 上島 類  
復代理人 佐尾山 和彦  
代理人 来間 清志  
復代理人 笹田 健  
代理人 来間 清志  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ