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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
管理番号 1338093
異議申立番号 異議2017-700442  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-01 
確定日 2018-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6027749号発明「油溶性酸化防止剤及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6027749号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6027749号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6027749号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成24年2月7日に特許出願され、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人村瀬 典子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。当審において、平成29年7月26日付けで取消理由を通知したところ、特許権者より平成29年9月22日に意見書と訂正請求書が提出されたものである。以下、平成29年9月22日付けの訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。
なお、平成29年9月29日付けで、申立人に上記取消理由通知の写し、上記訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲の副本、及び上記取消理由通知に対応する意見書副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に申立人から意見書は提出されなかった。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。

(訂正事項)

特許請求の範囲の請求項1に「カテキン類の乳化物粒子の平均粒子径が40?120nmである」と記載されているのを、「カテキン類を含有する水相成分の粒子の平均粒子径が40?120nmである」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。
請求項1を引用している請求項2?7も請求項1に連動して訂正される。

2 本件訂正の適否について

(1) 本件訂正前の請求項1に係る発明には、「カテキン類の乳化物粒子」及び「水相成分として天然物由来の水溶性の抗酸化成分であるカテキン類とHLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分として炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライドとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有した乳化物」という2つの「乳化物」という記載が存在しており、技術常識を参酌するに、前者の「カテキン類の乳化物粒子」と、後者の「乳化物」とが別のものであるのか同じものであるのか不明確であったが、前記訂正事項は、前者の「カテキン類の乳化物粒子」を「カテキン類を含有する水相成分の粒子」と訂正することにより、両者の関係を明らかにするものであるから、前記訂正事項に係る本件訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。

そして,本件特許明細書の実施例の製造例1(【0039】?【0041】)より、水相部(34g)と油相部(66g)を別々に調製し、次いで、水相部と油相部を混合して乳化し、油溶性酸化防止剤を製造しており、本件特許発明の油溶性酸化防止剤は水相部と油相部を混合して得られる乳化物であり、水粒子が油中に分散するW/O型のエマルションであることが明らかであるから、「カテキン類の乳化物粒子」は、実質的に「カテキン類を含有する水相成分の粒子」であると認められる。

よって、前記訂正事項は、新規事項を追加するものではなく、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

さらに、上記訂正事項に係る訂正前の請求項1?7について、請求項2?7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、上記訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

加えて、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、独立特許要件は課されない。

(2) 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明

前記第2のとおり,本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?11に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。

「【請求項1】
水相成分として天然物由来の水溶性の抗酸化成分であるカテキン類とHLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分として炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライドとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有した乳化物であって、カテキン類を含有する水相成分の粒子の平均粒子径が40?120nmである、油脂中に透明に分散可能な油溶性酸化防止剤。
【請求項2】
水相成分はカテキン類100質量部に対して、HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステル10?80質量部及び水60?360質量部からなり、油相成分は炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル25?34,000質量部からなる、請求項1に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項3】
さらに天然物由来の抽出トコフェロールが油相成分に含まれる請求項1又は2に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項4】
天然物由来の抽出トコフェロールの配合量が、炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して0.2?53,000質量部である、請求項3に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項5】
天然物由来の水溶性の抗酸化成分が、緑茶由来のカテキン類である請求項1?4のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項6】
HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルが、デカグリセリンモノカプリレート、デカグリセリンモノカプレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート及びデカグリセリンモノオレエートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1?5のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤を含む食用油脂又は油脂含有食品。
【請求項8】
緑茶由来のカテキン類、水及びHLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して水相部を得る工程、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及び炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライドを混合して油相部を得る工程、及び、
前記水相部100質量部に対して前記油相部を100?500質量部を添加し乳化することを特徴とする、茶カテキン類を含有する油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項9】
水相部がカテキン類100質量部に対して、HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステル10?80質量部及び水60?360質量部を混合して調製され、及び、油相部が炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル25?34,000質量部を混合して調製される、請求項8に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項10】
油相部を得る工程において、さらに天然物由来の抽出トコフェロールを混合する、請求項8又は9に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項11】
天然物由来の抽出トコフェロールの配合量が、炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して0.2?53,000質量部である、請求項10に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成29年7月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、その記載が以下のア?エの4つの点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

ア 訂正前の請求項1に記載された複数の「乳化物」がそれぞれ意味するものが不明確である。
イ 訂正前の請求項1の記載では、「乳化物」が水中油型なのか油中水型であるのか不明確であり、結果として「カテキン類の乳化物粒子」が示すものが不明確である。
ウ 訂正前の請求項1の記載では、「乳化物」が意味するものが不明確であり、結果として「油溶性酸化防止剤」が意味するものが不明確である。
エ 訂正前の請求項1に記載された平均粒子径が、「水相成分」の粒子、「油相成分」の粒子、水相中の「カテキン類」の粒子、及び、これらすべてを含む「油溶性酸化防止剤」自体の粒子、若しくは、その他の粒子のいずれの平均粒子径を規定しているのかが不明確である。

また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?7に係る発明も同様に不明確である。

3 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
訂正後の請求項1に係る発明の油溶性酸化防止剤は、以下のとおり、特許請求の範囲の記載は明確であるから、取消理由は解消され、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。

ア 訂正後の請求項1に記載された「乳化物」は、「カテキン類を含有する水相成分の粒子」を有する乳化物であることが明らかであるから、特許請求の範囲の記載は、明確である。
イ 訂正後の請求項1に記載された「乳化物」は、「カテキン類を含有する水相成分の粒子」を有する乳化物であることが明確となり、当該「乳化物」が油中水型であることが明らかである。
ウ 訂正後の請求項1に記載された「油溶性酸化防止剤」は、「カテキン類を含有する水相成分の粒子」を有する乳化物であることが明らかである
エ 訂正後の請求項1に記載された平均粒子径は、「カテキン類を含有する水相成分の粒子」の平均粒子径であることが明らかである。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1?11は、本件特許の出願日前に頒布された刊行物(甲1号証)に記載された発明と甲2,4号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その特許は取り消すべきものであると主張する(以下、「申立理由1」という。)。
また、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?7は、「油中水型乳化物」であり、かつ、水相成分と油相成分との量比が明記されていないが、通常、乳化物においては、連続相の量が分散相の量よりも多いことが一般的であり、また、本件特許明細書の段落【0060】の製造例6には、連続相である油相成分の量が分散相である水相部の量よりも少ない場合に、平均粒子径は測定不能と評価されているから、連続相である油相成分の量が分散相である水相部の量よりも少ない場合でも請求項1に記載された平均粒子径が40?120nmとなる乳化物を調製できることは開示されていない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本件発明1?7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、本件発明1?7は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであると主張する(以下、「申立理由2」という。)。

ア 申立理由1について
(ア)申立人は、主たる証拠として特開平6-279758号公報(以下「刊行物1」という。)及び従たる証拠として特開平6-254378号公報(以下「刊行物2」という。)、特開2007-202401号公報(以下「刊行物3」という。)、特開2002-142673号公報(以下「刊行物4」という。)を提出し、請求項1?11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?11に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(イ)刊行物1?4の記載事項について(下線は当審が付した。)
刊行物1(特開平6-279758号公報)には、以下のことが記載されている。
記載事項1-A
「【請求項1】 (A)カテキン類1?40重量部、
(B)水または/およびアルコール1?40重量部、
(C)HLBが6?14の乳化剤1?35重量部、
(D)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5?70重量部、ならびに
(E)酵素分解レシチン0.5?30重量部
を含む組成物であって、前記(A)、(B)、および(C)成分を含む水相部が、前記(D)成分中に可溶化状態で分散していることを特徴とする抗酸化剤組成物。
【請求項2】 (A)カテキン類1?40重量部、
(B)水または/およびアルコール1?40重量部、ならびに
(C)HLBが6?14の乳化剤1?35重量部
を混合して得られた水相部と、
(D)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5?70重量部と、
(E)酵素分解レシチン0.5?30重量部とを混合し、前記水相部を前記(D)成分中に可溶化状態で分散させることを特徴とする抗酸化剤組成物の製造方法。」

記載事項1-B
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を解決するため、油脂に不溶のカテキン類を白濁させることなく容易に油脂に可溶化でき、しかも抗酸化効果が優れた抗酸化剤組成物を提供することである。本発明の別の目的は、上記抗酸化剤組成物を簡単に効率よく製造することができる抗酸化剤組成物の製造方法を提案することである。」

記載事項1-C
「【0005】本発明で使用するカテキン類(A)としては、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等があげられ、合成品、天然抽出品、いずれも用いることができる。これらは単品、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0006】天然抽出品は日本茶等の非発酵茶、ウーロン茶等の半発酵茶、紅茶等の発酵茶などから、エタノール、酢酸エチル、クロロホルム、ヘキサン等の有機溶剤や、水、超臨界二酸化炭素などで抽出することにより得られる。天然抽出品中にはカテキン類の他に糖質などの不純物が含まれているが、これらの不純物を分離することなく用いることができる。また必要に応じて溶媒留去等による濃縮や、HPLC法、溶媒分画法、カラム精製法等、通常用いられる精製法を用いて精製したものを用いることもできる。さらに天然抽出品としては、抽出媒体を完全に除去したものの他に、抽出媒体に溶解した状態のものも使用できる。ただしこの場合は、酢酸エチル、クロロホルム等の食品にとって好ましくない抽出媒体は除去しておく必要がある。
【0007】カテキン類(A)の抗酸化剤組成物中の含有量は、不純物や抽出媒体を含まないカテキン類として1?40重量部、好ましくは1?30重量部である。カテキン類(A)の含有量が1重量部未満の場合、抗酸化剤としての機能を充分に発揮せず、また40重量部を超えると抗酸化剤組成物中でカテキン類を完全に溶解させることができないため、均一な抗酸化剤組成物となり得ない。」

記載事項1-D
「【0009】本発明で使用するHLBが6?14の乳化剤(C)としては、市販の各種のアニオン系、非イオン系、カチオン系、両性系の種々の乳化剤を使用することができるが、食品に用いる場合には特にテトラグリセリンモノオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適である。HLBは8?14のものが好ましい。」

記載事項1-E
「【0020】好ましい製造方法としては、次のような方法がある。まず水または/およびエタノール(B)で完全に溶解したカテキン類(A)に、HLBが6?14の乳化剤(C)を混合して溶解する。次にこの混合溶解物を水相部とし、これにポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)を添加して乳化し、乳化剤中水型乳化液を形成する。この乳化液に酵素分解レシチン(E)を添加して十分に混合し、乳化液を可溶化して本発明の抗酸化剤組成物を得る。調製に際しては、必要に応じて加熱したり、また粘度を低下させるために油脂等で希釈してもよい。
【0021】上記のような製造方法の場合、水相部に(D)成分を加えて乳化した際、カテキン類(A)、水または/およびアルコール(B)ならびにHLBが6?14の乳化剤(C)を含む水相部が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)により内相に含み込まれ、外相がポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)となった乳化剤中水型乳化液、すなわちポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル中水型乳化液が形成される。この乳化液に酵素分解レシチン(E)を加えることにより、乳化液の界面活性が低下して可溶化状態となり、一相の均一な組成物が得られる。
【0022】このようにして得られた抗酸化剤組成物は、そのまま、または油脂で希釈したものを油脂に添加して抗酸化剤として利用できる。油脂への添加濃度は限定されず、使用目的、効果に応じて適宜選択すればよく、例えば0.0001?99重量%の濃度で添加できる。本発明の抗酸化剤組成物は油脂に添加した場合、透明に溶解し、白濁しない。また長期間保存しても分離が生じない。さらに、カテキン類の優れた抗酸化効果が発揮される。」

記載事項1-F
「【0023】
【発明の効果】以上の通り、本発明の抗酸化剤組成物は、特定量のカテキン類、水または/およびアルコール、ならびに乳化剤を含む溶液が、特定量の酵素分解レシチンの存在下に、特定量のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル中に可溶化状態で分散しているので、油脂に不溶のカテキン類を白濁させることなく容易に油脂に可溶化でき、しかもカテキン類の優れた抗酸化効果を有している。」

記載事項1-G
「【0025】
【実施例】次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0026】実施例1
テアフラン30A(商品名、株式会社伊藤園製の茶抽出物、カテキン類31.4%含有)10g、蒸留水15g、およびテトラグリセリンモノラウレート(SYグリスターML310、商品名、HLB=10.3、阪本薬品工業株式会社製)10gをプロペラミキサーで十分に攪拌、混合しながら50℃まで加熱し、完全に溶解した。この溶液にポリグリセリン縮合リシノレート(SYグリスターCR-ED、商品名、阪本薬品工業株式会社製)35gを添加して十分に攪拌、混和し、乳化剤中水型乳化液とした。この乳化剤中水型乳化液に対して酵素分解レシチン(エルマイザーA、商品名、協和発酵工業株式会社製)10gを添加し、再び50℃まで加熱しながら混合し、抗酸化剤組成物80gを得た。
【0027】マグロ油(日本油脂株式会社製、DHA=24.7%、EPA=7.1%、POV=0)100gに、上記の抗酸化剤組成物0.2gを添加し、混合した。この油脂を25ml容サンプルビンに5g採取し、フタをして25℃の恒温槽にて一定期間放置後、POVを基準油脂分析試験法に従って測定した。結果を図1に示す。
・・・
【0035】実施例4?7
表1に示す配合で抗酸化剤組成物を作成し、ラード(日本油脂株式会社製、トコフェロール〔Eオイル400、商品名、理研ビタミン株式会社製〕0.02%既添加)に0.2重量%添加し、その抗酸化性をAOM試験法(基準油脂分析法2.4.28.1-81)に基づいて測定した。結果を表2に示す。
・・・
【0037】比較例5?9
表1に示す配合で抗酸化剤組成物を作成し、実施例4?7と同様にラードに0.2重量%添加し、その抗酸化性を実施例4?7と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】



刊行物2(特開平6-254378号公報)には、以下のことが記載されている。
記載事項2-A
「【請求項1】 (A)カテキン類を除く水溶性化合物1?40重量部、
(B)水または/およびアルコール1?40重量部、
(C)HLBが6?14の乳化剤1?35重量部、
(D)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5?70重量部、ならびに
(E)酵素分解レシチン0.5?30重量部
を含む製剤であって、前記(A)、(B)および(C)成分を含む水相部が、前記(D)成分中に可溶化状態で分散していることを特徴とする水溶性化合物油溶化製剤。
【請求項2】 (A)カテキン類を除く水溶性化合物1?40重量部、
(B)水または/およびアルコール1?40重量部、ならびに
(C)HLBが6?14の乳化剤1?35重量部を混合して得られた水相部と、
(D)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル5?70重量部と、
(E)酵素分解レシチン0.5?30重量部と
を混合し、前記水相部を前記(D)成分中に可溶化状態で分散させることを特徴とする水溶性化合物油溶化製剤の製造方法。」

記載事項2-B
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を解決するため、油脂に不溶の水溶性化合物を白濁させることなく透明な状態で、しかも容易に油脂に可溶化できる水溶性化合物油溶化製剤を提供することである。本発明の別の目的は、上記水溶性化合物油溶化製剤を簡単に効率よく製造することができる水溶性化合物油溶化製剤の製造方法を提案することである。」

記載事項2-C
「【0016】酵素分解レシチン(E)の水溶性化合物油溶化製剤中の含有量は0.5?30重量部、好ましくは5?30重量部である。酵素分解レシチン(E)の含有量が0.5重量部未満の場合、水溶性化合物油溶化製剤は油脂に可溶化せず、乳化剤中水型乳化のままとなり、これを溶解した油脂は白濁する。また30重量部を超えると水溶性化合物油溶化製剤が経時的に二相に分離するなど水溶性化合物油溶化製剤の安定性が低下するとともに、水溶性化合物油溶化製剤を添加した油脂中で、水溶性化合物油溶化製剤が経時的に沈澱する恐れがある。
【0017】本発明の水溶性化合物油溶化製剤においては、(C)成分の乳化剤は水溶性化合物(A)とポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)との相溶性を高める役割を果たしていると推定される。またポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)は水溶性化合物(A)を油脂中に均一に分散させる役割を果たしていると推定される。さらに酵素分解レシチン(E)はポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(D)と水溶性化合物(A)との乳化剤中水型乳化物の界面活性を低下させ、均一な可溶化物とする役割を果たしていると推定される。」

記載事項2-D
「【0024】
【発明の効果】以上の通り、本発明の水溶性化合物油溶化製剤は、特定量の水溶性化合物、水または/およびアルコール、ならびに乳化剤を含む溶液が、特定量の酵素分解レシチンの存在下に、特定量のポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル中に可溶化状態で分散しているので、油脂に不溶の水溶性化合物を白濁させることなく容易に油脂に可溶化できる。」

記載事項2-E
「【0030】実施例2
200ml容ガラスビーカーに没食子酸10gを、蒸留水10gおよびエタノール10gに溶解し、テトラグリセリンモノラウレート(前記SYグリスターML310、HLB=10.3)20gを添加し、50℃に加熱しながらプロペラミキサーで十分に攪拌し、混合溶解した。この溶液にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(前記SYグリスターCR-ED)20gを添加して、再び加熱攪拌、混和して乳化剤中水型乳化液とした。この乳化液に、10gの酵素分解レシチン(前記エルマイザーA)および中鎖脂肪酸トリグリセライド15gを添加し、再び加熱しながら攪拌混合して、没食子酸油溶化製剤95gを得た。得られた没食子酸油溶化製剤をコーン油に溶解したところ、0.001重量%から10重量%の範囲内で透明に可溶化した。」

刊行物3(特開2007-202401号公報)には、以下のことが記載されている。
記載事項3-A
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
即席揚げ麺の製造法において、油揚げ用油脂としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル以外の乳化剤の1種または2種以上とを0.01?1重量%含有し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルと該乳化剤の比率が1:1?10である油脂組成物を用いることを特徴とする即席揚げ麺の製造方法。
【請求項2】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル以外の乳化剤がHLB6?14のポリグリセリン脂肪酸エステルおよび/または有機酸モノグリセリドである請求項1の即席揚げ麺の製造方法。」

記載事項3-B
「【0025】
表1、2中、下記のものを用いた。
パーム油:精製パーム抽((株)カネカ製)
ペンタゲリセリントリオレエート:サンソフトA-173E(太陽化学(株)製)、HLB=7.0
ヘキサグリセリンモノラウレート:SYグリスターML-500(阪本薬品工業(株)製)、HLB=13.5
クエン酸モノグリセリド:サンソフト623M(太陽化学(株)製)
ジグリセリンモノオレエート:ポエムDO-100V(理研ビタミン(株)製)、HLB=8.0
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:SYグリスターCR-ED(阪本薬品工業(株)製)、HLB=1.0
テトラグリセリンペンタオレエート:SYグリスターPO-310(阪本薬品工業(株)製)、HLB=3.0
デカグリセリンモノラウレート:SYグリスターML-750、(阪本薬品工業(株)製)、HLB=14.8
ジグリセリド高含有油脂:エコナクッキングオイル(花王(株)製)」

刊行物4(特開2002-142673号公報)には、以下のことが記載されている。
記載事項4-A
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 没食子酸、水溶性抗酸化剤および油溶性抗酸化剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤。
【請求項2】 水溶性酸化防止剤がビタミンC、クエン酸、クロロゲン酸およびその誘導体、糖アミノ反応物、プロアントシアニジン、フラボン誘導体、茶抽出物、ブドウ種子抽出物およびルチンから選ばれる少なくとも1種または2種以上である請求項1記載の酸化防止剤。」

記載事項4-B
「【0007】従って本発明の目的は、光、熱などによる油脂調理食品の酸化劣化を効果的に防止することのできる油脂調理食品の親油性酸化防止剤およびその製造方法を提供することである。」

記載事項4-C
「【0015】本発明の親油性酸化防止剤を調製する方法は特に限定されないが、例えば、上記した油溶性抗酸化剤および親油性乳化剤を油脂類に混合した油層部に、上述の没食子酸および水溶性抗酸化剤を水性溶媒に溶解した水層部を添加して、適宜な乳化手段を用いて油中水型に乳化することにより得ることができる。かかる油脂類としては特に限定されないが、例えば、大豆油、米油、ゴマ油、ピーナッツ油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油などの植物油脂類及びそれらの硬化油;牛脂、豚脂、魚油などの動物油脂類及びそれらの硬化油;中鎖脂肪酸トリグリセライドなどを挙げることができる。また、水性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコールなどの多価アルコール類などを挙げることができる。」

(ウ)刊行物1に記載の発明
刊行物1には、水相成分として(A)水などで抽出した天然抽出品であるカテキン類と(C)HLBが6?14であるポリグリセリン脂肪酸エステルと(B)水、油相成分として(D)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、を含む乳化剤中水型乳化液を形成し、この乳化液に(E)酵素分解レシチンを添加して十分に混合して得られた抗酸化剤組成物が記載されているといえる(記載事項1-A、1-C、1-D、1-E、1-G)。また、当該抗酸化剤組成物は、油脂に添加した場合、透明に溶解し、白濁しない抗酸化剤であるから、油脂中に透明に分散可能な油溶性抗酸化剤であるといえる(記載事項1-E)。
したがって、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「水相成分として水などで抽出した天然抽出品であるカテキン類とポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、を含む乳化液を形成し、この乳化液に酵素分解レシチンを添加して十分に混合して得られた、油脂中に透明に分散可能な油溶性抗酸化剤。」

(エ)申立理由1についての対比・判断
・本件発明1と引用発明との対比
引用発明の「水などで抽出した天然抽出品であるカテキン類」は、記載事項1-Cの【0007】より、抗酸化剤としての機能を発揮するものであることから、本件発明1の「天然物由来の水溶性の抗酸化成分であるカテキン類」に相当し、引用発明の「抗酸化剤」、「乳化液」は、本件発明1の「酸化防止剤」、「乳化物」にそれぞれ相当する。

したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

(一致点)
「水相成分として天然物由来の水溶性の抗酸化成分であるカテキン類とポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、を含む乳化物である、油脂中に透明に分散可能な油溶性酸化防止剤。」

(相違点1)
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBが、本件発明1は、「14?16」であるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

(相違点2)
油相成分として、本件発明1は、「炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド」をさらに含むのに対し、引用発明は、当該脂肪酸トリグリセライドを含むことが明らかでなく、酵素分解レシチンを含む点。

(相違点3)
カテキン類を含有する水相成分の粒子の平均粒子径が、本件発明1は、「40?120nmである」のに対し、引用発明は、そのようなことが明らかでない点。

・判断
事案に鑑みて、まず相違点3について検討する。
刊行物1の記載事項1-Eの段落【0021】には、水相成分として水などで抽出した天然抽出品であるカテキン類とポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分としてポリグリセリン脂肪酸縮合リシノレイン酸エステル、を含む乳化液を形成し、この乳化液に酵素分解レシチンを添加して十分に混合すると、酵素分解レシチンの添加により、乳化液の界面活性が低下して可溶化状態となり、一相の均一な組成物が得られる旨記載されており、引用発明の油溶性抗酸化剤の水相成分が粒子を形成しないことは明らかである。
また、刊行物2についても、刊行物2の記載事項2-Cの段落【0017】及び記載事項2-Dに、刊行物1と同様に、酵素分解レシチンを乳化液に添加すると、乳化物の界面活性を低下させ、均一な可溶化物が得られる旨記載されていることから、刊行物2の油溶化製剤も水相成分が粒子を形成しないことは明らかである。
そうすると、相違点3は、実質的な相違点であり、本件発明1は、引用発明及び刊行物2に記載の事項から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

次に、相違点2について検討する。
引用発明において、酵素分解レシチンを添加することは、刊行物1の記載事項1-B、1-E、1-F、1-Gの記載からみて、油脂に不溶のカテキン類を白濁させることなく容易に可溶化するという課題を達成するためには、欠かすことのできない発明特定事項であることは明らかである。
一方、刊行物2には、引用発明と同様の、油脂に不溶の水溶性化合物を白濁させることなく容易に可溶化するという課題(記載事項2-B、2-C、2-D)や「水相成分として水溶性化合物とポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、を含む乳化液を形成し、この乳化液に酵素分解レシチンを添加して十分に混合」して得られた抗酸化剤組成物(記載事項2-A)という刊行物1と類似の構成が記載されており、記載事項2-Eの実施例2に酵素分解レシチンと中鎖脂肪酸トリグリセライドとを合わせて添加する具体例があったとしても、引用発明において、追加の油相成分として、引用発明の油溶性酸化防止剤において発明に欠かすことのできない構成である酵素分解レシチンに代えて、中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加することは、動機付けがない。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点であり、本件発明1は、引用発明及び刊行物2から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

申立人は、特許異議申立書の17頁下から3行?18頁6行において、上記相違点2の酵素分解レシチンを用いない点について、本件特許発明の背景技術を引用し、酵素分解レシチンを用いる際は加熱する必要があるため、カテキンの抗酸化力を減少させるおそれがあるという技術常識が存在すると主張し、したがって、酵素分解レシチンを使用しない動機付けが存在する旨主張するが、仮にそのような技術常識が存在するとしても、上記相違点2の検討において述べたとおり、引用発明又は刊行物2に記載の発明においては、酵素分解レシチンは、油脂に不溶のカテキン類又は水溶性化合物を白濁させることなく油中に可溶化するという課題を解決するために欠かすことのできない発明特定事項であるから、それを使用しないようにすることには、阻害要因があると言わざるを得ない。

また、申立人は、特許異議申立書の17頁において、刊行物4においても、茶抽出物などの水溶性抗酸化剤や油溶性抗酸化剤を親油性乳化剤で油中水型に乳化してなる親油性酸化防止剤の技術において、油相に中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加することが記載されているから、刊行物1に記載された発明においても、これらを採用する動機付けがあると主張しているが、上記のとおり、引用発明において酵素分解レシチンを使用しないようにすることに、そもそも阻害要因があるから、かかる主張も理由がない。

・本件発明2?7について
本件発明2?7は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件
発明1についての判断と同様の理由により、引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

・本件発明8について
本件発明8は、独立項であり、カテキン類、水及び特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して水相部を得、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及び特定の脂肪酸トリグリセライドを混合して油相部を得、水相部に油相部を添加し乳化する油溶性酸化防止剤の製造方法であるが、上記本件発明1についての判断で検討したとおり、引用発明において、追加の油相成分として、引用発明の油溶性酸化防止剤において発明に欠かすことのできない構成である酵素分解レシチンに代えて、中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加することには阻害要因が存在することから、本件発明8についても同じ理由により、引用発明及び刊行物2に記載された発明及び刊行物4に記載された事項から当業者が容易に発明できたものとはいえない。

・本件発明9?11について
本件発明9?11は、本件発明8を更に減縮したものであるから、上記本件発明8についての判断と同様の理由により、上記引用発明または刊行物2に記載された発明及び刊行物4に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。

イ 申立理由2について
上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法なものであることから、本件発明1?7の油溶性酸化防止剤自体が油中水型の乳化物であることが明確となり、カテキン類を含有する水相成分の粒子の平均粒子径が40?120nmであることも明確である。そして、本件特許明細書の記載に基づいて、当業者は上記のような分散形態を有する乳化物を実際に製造することができるものと認められる。
また、本件発明1?7において、水相成分と油相成分との量比が明記されていなくとも、上記のような分散形態を有さない乳化物が、本件発明1?7から排除されることも明らかである。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本件発明1?7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるから、申立理由2は理由がないものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?11を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?11を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相成分として天然物由来の水溶性の抗酸化成分であるカテキン類とHLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルと水、油相成分として炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライドとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有した乳化物であって、カテキン類を含有する水相成分の粒子の平均粒子径が40?120nmである、油脂中に透明に分散可能な油溶性酸化防止剤。
【請求項2】
水相成分はカテキン類100質量部に対して、HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステル10?80質量部及び水60?360質量部からなり、油相成分は炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル25?34,000質量部からなる、請求項1に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項3】
さらに天然物由来の抽出トコフェロールが油相成分に含まれる請求項1又は2に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項4】
天然物由来の抽出トコフェロールの配合量が、炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して0.2?53,000質量部である、請求項3に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項5】
天然物由来の水溶性の抗酸化成分が、緑茶由来のカテキン類である請求項1?4のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項6】
HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルが、デカグリセリンモノカプリレート、デカグリセリンモノカプレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート及びデカグリセリンモノオレエートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1?5のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤。
【請求項7】
請求項1?6のいずれかの項に記載の油溶性酸化防止剤を含む食用油脂又は油脂含有食品。
【請求項8】
緑茶由来のカテキン類、水及びHLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステルを混合して水相部を得る工程、
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル及び炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライドを混合して油相部を得る工程、及び、
前記水相部100質量部に対して前記油相部を100?500質量部を添加し乳化することを特徴とする、茶カテキン類を含有する油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項9】
水相部がカテキン類100質量部に対して、HLBが14?16であるポリグリセリン脂肪酸エステル10?80質量部及び水60?360質量部を混合して調製され、及び、油相部が炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル25?34,000質量部を混合して調製される、
請求項8に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項10】
油相部を得る工程において、さらに天然物由来の抽出トコフェロールを混合する、請求項8又は9に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。
【請求項11】
天然物由来の抽出トコフェロールの配合量が、炭素数が6?12である脂肪酸トリグリセライド100質量部に対して0.2?53,000質量部である、請求項10に記載の油溶性酸化防止剤の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-12 
出願番号 特願2012-23774(P2012-23774)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09K)
P 1 651・ 121- YAA (C09K)
P 1 651・ 536- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉岡 沙織  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 阪▲崎▼ 裕美
天野 宏樹
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6027749号(P6027749)
権利者 小川香料株式会社
発明の名称 油溶性酸化防止剤及びその製造方法  
代理人 竹林 則幸  
代理人 新井 信輔  
代理人 竹林 則幸  
代理人 新井 信輔  
代理人 結田 純次  
代理人 結田 純次  

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