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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L |
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管理番号 | 1338100 |
異議申立番号 | 異議2017-700489 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-16 |
確定日 | 2018-01-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6027259号発明「タイガーストライプ改良剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6027259号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14、16及び17〕並びに15について訂正することを認める。 特許第6027259号の請求項1ないし5、7、8及び11ないし15に係る特許を維持する。 特許第6027259号の請求項6、9、10、16及び17に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6027259号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2013年11月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年11月29日、欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年10月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年5月16日付け(受理日:同年5月17日)で特許異議申立人 藤江 桂子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、当審において同年7月13日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年10月16日に特許権者 ポレアリス・アクチェンゲゼルシャフト(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年10月18日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年11月21日付け(受理日:同年11月22日)に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正の請求による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「ポリオレフィン(PO)と、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物であって、 ポリオレフィン(PO)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[PO/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、ポリオレフィン(PO)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、」とあるのを、「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、」に訂正し、「(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d)」とあるのを、「(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f)」に訂正する。 併せて、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項3ないし5、7、8及び11ないし14についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「ポリオレフィン(PO)と、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物であって、 ポリオレフィン(PO)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[PO/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、ポリオレフィン(PO)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、」とあるのを、「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、」に訂正し、「(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d)」とあるのを「(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f)」に訂正する。 併せて、特許請求の範囲の請求項2を引用する請求項3ないし5、7、8及び11ないし14についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から請求項6」とあるのを、「請求項1から請求項5」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から請求項7」とあるのを、「請求項1から請求項5及び請求項7」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から請求項8」とあるのを、「請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8」に訂正し、「請求項1から請求項10」とあるのを、「請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8」にする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から請求項11」とあるのを、「請求項1から請求項5、請求項7、請求項8及び請求項11」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、ポリオレフィン(PO)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但しポリオレフィン(PO)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする。」とあるのを、「請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、異相プロピレンコポリマー(HECO2)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有し; 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内であり; 前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但し異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする。」に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲15に「充填時間1.50秒で作成した210x148x3mm^(3)の大きさのプラークについて求められる平均二乗誤差が7.4未満である場合に、フローマークの減少が達成されているものとする、請求項14に記載の使用。」とあるのを、「下記(1)から(8)のいずれか1つの記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、ポリオレフィン(PO)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、充填時間1.50秒で作成した210x148x3mm^(3)の大きさのプラークについて求められる平均二乗誤差が7.4未満である場合に、フローマークの減少が達成されているものとする、前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但しポリオレフィン(PO)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする; (1) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数4】(式省略) 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である; (2): 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数5】(式省略) 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)であり; (3): 上記(1)又は(2)において、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内である; (4) 上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量が20.0重量%未満である; (5) 上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5である; (6): 上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分画分の量が、35.0重量%未満である; (7): 上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記コモノマーがエチレンである; (8): 上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、不等式(Ia)を満たし、 【数6】(式省略) 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。」に訂正する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「ポリオレフィン(PO)」を、「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2)」に減縮し、さらに、訂正前の請求項1に係る発明に「異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である」及び「(d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり」という発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の【0100】、【0101】、【0099】、【0026】、【0029】及び【0167】の【表2】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2について、上記訂正事項1と同様の訂正を行うものである。 したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1から請求項6を引用する記載であったのを、訂正事項3により訂正前の請求項6が削除されたことに伴い、引用関係を整理したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1から請求項7を引用する記載であったのを、訂正事項3により訂正前の請求項6が削除されたことに伴い、引用関係を整理したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項1から請求項8及び訂正前の請求項1から請求項10を引用する記載であったのを、訂正事項3、6及び7により訂正前の請求項6、9及び10が削除されたことに伴い、引用関係を整理したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項1から請求項11を引用する記載であったのを、訂正事項3、6及び7により訂正前の請求項6、9及び10が削除されたことに伴い、引用関係を整理したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項14に係る発明の「ポリオレフィン(PO)」を「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有」する「異相プロピレンコポリマー(HECO2)」に減縮し、さらに、訂正前の請求項14に係る発明に「異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内であり」という発明特定事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項10は、訂正前の請求項14が訂正前の請求項1から請求項8を引用する記載であったのを、訂正事項3により訂正前の請求項6が削除されたことに伴い、引用関係を整理したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。 さらに、訂正事項10は、願書に添付した明細書の【0100】、【0101】及び【0099】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらにまた、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の請求項1及び2に記載された発明特定事項並びに訂正前の請求項1及び2を引用する訂正前の請求項3ないし8に記載された発明特定事項を、訂正前の請求項15に追加することにより、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)訂正事項12について 訂正事項12は、訂正前の請求項16を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項12は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (13)訂正事項13について 訂正事項13は、訂正前の請求項17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項13は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (14)一群の請求項 本件訂正の請求による訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1ないし17についてされたものである。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに対してされたものである。 3 むすび 以上のとおり、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正の請求は適法なものである。 そして、特許権者から、訂正後の請求項15について訂正が認められるときは請求項1ないし14とは別途訂正することの求めがあり、訂正後の請求項16及び17は削除されており、訂正後の請求項15とは引用関係にないので、訂正後の請求項〔1ないし14、16及び17〕並びに15について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14、16及び17〕並びに15について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成29年10月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数1】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 組成物。 【請求項2】 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数2】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 組成物。 【請求項3】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量が20.0重量%未満である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項5】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 前記コモノマーがエチレンである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項8】 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、不等式(Ia)を満たし、 【数3】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 請求項1から請求項5及び請求項7のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 組成物中に、請求項1から請求項5、請求項7、請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、5重量%から30重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から請求項5、請求項7、請求項8のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項12】 請求項1から請求項5、請求項7、請求項8及び請求項11のいずれか1項に記載の組成物を有する射出成形品。 【請求項13】 自動車の物品である、請求項12に記載の射出成形品。 【請求項14】 請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、異相プロピレンコポリマー(HECO2)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有し; 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内であり; 前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但し異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする。 【請求項15】 下記(1)から(8)のいずれか1つの記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、ポリオレフィン(PO)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、充填時間1.50秒で作成した210x148x3mm^(3)の大きさのプラークについて求められる平均二乗誤差が7.4未満である場合に、フローマークの減少が達成されているものとする、前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但しポリオレフィン(PO)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする; (1) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数4】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である; (2): 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数5】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)であり; (3): 上記(1)又は(2)において、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内である; (4) 上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量が20.0重量%未満である; (5) 上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5である; (6): 上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分画分の量が、35.0重量%未満である; (7): 上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記コモノマーがエチレンである; (8): 上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、不等式(Ia)を満たし、 【数6】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除)」 2 取消理由の概要 取消理由の概要は次のとおりである。 「1.(新規性)本件特許の請求項1ないし8、10ないし14、16及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8、10ないし14、16及び17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.(進歩性)本件特許の請求項1ないし14、16及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし14、16及び17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 第1 手続の経緯 ・・・ 第2 本件特許発明 ・・・ 第3 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 1 本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献等 甲第3号証.再公表特許 国際公開第2009/060738号 甲第4号証.特表2012-521461号公報 (甲第3及び4号証は、平成29年5月16日付け(受理日:同年5月17日)で特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に甲第3及び4号証として添付されたものである。) ・・・ 3 対比・判断 (1)本件特許発明1について ・・・ したがって、本件特許発明1は、甲3発明と実質的な相違点がないことから、甲第3号証に記載された発明であり、また、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・・・ 4 むすび 以上のとおり、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、本件特許発明9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 さらに、本件特許発明10ないし14、16及び17は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件特許の請求項1ないし14、16及び17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」 3 取消理由についての判断 (1)甲第3及び4号証の記載等 ア 甲第3号証の記載等 (ア)甲第3号証の記載 甲第3号証には、次の記載(以下、総称して「甲第3号証の記載」という。)がある。 ・「【請求項1】 (A-1)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1?200g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(1))5?30重量%とからなり、前記D_(insol)(1)を^(13)C-NMRで測定したときのアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97%以上であり、前記D_(sol)(1)を135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が4?10dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体 14?39重量%、 (A-2)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1?200g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(2))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(2))5?30重量%とからなり、前記D_(insol)(2)を^(13)C-NMRで測定したときのアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97%以上であり、前記D_(sol)(2)を135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が1.5?4dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体 20?60重量%、 (B)エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム 5?30重量%、 (C)無機充填剤 10?30重量%、 (ただし、(A-1)、(A-2)、(B)、(C)の合計は100重量%)を含んでなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項3】 前記プロピレン系ブロック共重合体(A-1)の、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が、2?1000g/10分であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形することにより得られる射出成形体。 【請求項6】 自動車用部品である、請求項5に記載の射出成形体。」 ・「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、特定のポリプロピレン系樹脂組成物からなる自動車材用ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、剛性、耐衝撃性に優れ、ウエルドおよびフローマークの発生が少なく、外観に優れる射出成形品が得られる自動車材用の射出成形品に好適なポリプロピレン系樹脂組成物に関する。」 ・「【0013】 本発明に係る(A-1)プロピレン系ブロック共重合体を、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(1))とに分別したとき、前記D_(insol)(1)の割合は70?95重量%、好ましくは75?95重量%、さらに好ましくは82?92重量%であり、前記D_(sol)(1)の割合は5?30重量%、好ましくは5?25重量%、さらに好ましくは8?18重量%である。」 ・「【0015】 また、前記D_(insol)(1)は、メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が、好ましくは2?1000g/10分であり、より好ましくは20?400g/10分、更に好ましくは50?300g/10分、特に好ましくは80?250g/10分である。」 ・「【0016】 前記D_(sol)(1)は、135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が4?10dl/g、好ましくは5?9dl/gである。 また、^(13)C-NMR測定から求められる前記D_(sol)(1)中の、エチレン由来の構造単位の含有率は、通常20?60モル%、好ましくは30?50モル%である。」 ・「【0024】 成分(A-1)?(A-3)の製法 本発明に係る各成分(A-1)?(A-3)は、公知のチタン触媒を用いて製造することができる。チタン触媒の好ましい例としては、チタン、マグネシウム、ハロゲンの各原子を含む固体状チタン触媒成分およびアルミニウム化合物を主たる成分とする重合用固体触媒が挙げられる。 【0025】 本発明で用いるプロピレン系ブロック共重合体(A-1)および(A-2)を製造する方法として、たとえば、特開平11-107975号公報や特開2004-262993号公報に記載されている方法に準じて、高立体規則性ポリプロピレン製造用触媒の存在下に、多段重合により製造する方法が挙げられる。すなわち、プロピレン系ブロック共重合体は、(i)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(ii)有機金属化合物触媒成分と、(iii)ドナー成分とから形成される高立体規則性ポリプロピレン製造用の重合用触媒の存在下に、第1段で実質的に水素の存在下もしくは非存在下でプロピレンを重合させるプロピレン単独重合体部を、最終的に得られるプロピレン系ブロック共重合体全体の75?95重量%製造する段と、エチレンおよびプロピレンを共重合させてエチレン・プロピレンランダム共重合体部を、最終的に得られるプロピレン系ブロック共重合体全体の5?25重量%製造する段とを含む2段以上の多段重合により製造することができる。プロピレン系ブロック共重合体(A-1)および(A-2)のMFRおよび極限粘度[η]は、重合条件などを調節することで適宜調整することができ、特に制限されないが、分子量調整剤として水素を使用する方法が好ましい。 【0026】 各段の重合は、連続的に行うこともできるし、バッチ式あるいは半連続式に行うこともできるが、連続的に行うのが好ましい。また重合は、気相重合法、あるいは溶液重合、スラリー重合、バルク重合などの液相重合法など、公知の方法で行うことができる。第2段目以降の重合は、前段の重合に引き続いて、連続的に行うのが好ましい。バッチ式で行う場合、1器の重合器を用いて多段重合することもできる。」 ・「【0035】 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中の、前記各成分の配合割合は、(A-1)、(A-2)、(B)、(C)の合計量を100重量%としたとき、(A-1)プロピレン系ブロック共重合体の含有量が、14?39重量%、好ましくは20?35重量%であり、(A-2)プロピレン系ブロック共重合体の含有量が、20?60重量%、好ましくは30?50重量%であり、(B)エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴムの含有量が、5?30重量%、好ましくは10?20重量%であり、(C)無機充填剤の含有量が、10?30重量%、好ましくは15?25重量%である。」 ・「【0058】 各成分の組成および物性値 実施例に用いたポリプロピレン系樹脂組成物の各成分は、以下に示すものである。 なお、下記(1)?(4)のプロピレン系ブロック共重合体、および(5)、(6)のプロピレン系ホモ重合体は、いずれも特開平11-107975号公報および特開2004-262993号公報に記載の方法に準じて調製したものである。 (1)プロピレン系ブロック共重合体(A-1-1) ・D_(insol)(1)量(プロピレン単独重合体部): 91重量% ・D_(sol)(1)量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部): 9重量% ・D_(insol)(1)のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 98.0 ・D_(sol)(1)の極限粘度[η]: 8dl/g ・D_(sol)(1)中のエチレン含量: 38モル% ・ブロック共重合体のMFR: 95g/10分 (2)プロピレン系ブロック共重合体(A-1-2) ・D_(insol)(1)量(プロピレン単独重合体部): 90重量% ・D_(sol)(1)量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部): 10重量% ・D_(insol)(1)のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 97.6 ・D_(sol)(1)の極限粘度[η]: 5.5dl/g ・D_(sol)(1)中のエチレン含量: 40モル% ・ブロック共重合体のMFR: 55g/10分 (3)プロピレン系ブロック共重合体(A-2-1) ・D_(insol)(2)量(プロピレン単独重合体部): 93重量% ・D_(sol)(2)量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部): 7重量% ・D_(insol)(2)のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 97.5 ・D_(sol)(2)の極限粘度[η]: 3.5dl/g ・D_(sol)(2)中のエチレン含量: 35モル% ・ブロック共重合体のMFR: 135g/10分 (4)プロピレン系ブロック共重合体(A-2-2) ・D_(insol)(2)量(プロピレン単独重合体部): 77重量% ・D_(sol)(2)量(プロピレン・エチレンランダム共重合体部): 23重量% ・D_(insol)(2)のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 97.9 ・D_(sol)(2)の極限粘度[η]: 2.5dl/g ・D_(sol)(2)中のエチレン含量: 40モル% ・ブロック共重合体のMFR: 30g/10分 (5)プロピレン系ホモ重合体(A-3-1) ・アイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 97.4 ・MFR: 30g/10分 (6)プロピレン系ホモ重合体(A-3-2) ・アイソタクチックペンタッド分率(mmmm): 97.6 ・MFR: 200g/10分 (7)エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー(B-1) ダウ社製エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー(銘柄名:EG8842)であり、以下の特性を有する。 ・MFR: 2g/10分(190℃、荷重2.16kg) ・1-オクテン含有量: 18モル% ・密度: 0.857g/cm^(3) (8)エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー(B-2) ダウ社製エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー(銘柄名:EG8100)であり、以下の特性を有する。 ・MFR: 2g/10分(190℃、荷重2.16kg) ・1-オクテン含有量: 15モル% ・密度: 0.870g/cm^(3) (9)エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー(B-3) 三井化学社製エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー(銘柄名:A-0550S)であり、以下の特性を有する。 ・MFR: 0.5g/10分(190℃、荷重2.16kg) ・1-ブテン含有量: 20モル% ・密度: 0.860g/cm^(3) (10)微粉末タルク(C) 富士タルク社製(銘柄名:TP-A25)であり、以下の特性を有する。 ・平均粒径: 3.5μm [実施例1?4および比較例1?4] 表1に示した配合割合で成分(A-1)?(C)を、ヘンシェルミキサーでドライブレンドし、二軸混練機を用いて200℃で溶融混合後、造粒して各組成物のペレットを得た。これらの組成物ペレットを用いて、所定の試験片および角板を成形した。」 (イ)甲3発明 甲第3号証の記載を整理すると、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 「(A-1)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1?200g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(1))5?30重量%とからなり、前記D_(sol)(1)を135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が4?10dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体 14?39重量%、 (A-2)プロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(2))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(2))5?30重量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体 20?60重量%、 (C)無機充填剤 10?30重量%、 を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物。」 イ 甲第4号証の記載 甲第4号証には、次の記載がある。 ・「【請求項1】 - プロピレンホモポリマー又はプロピレンとエチレン若しくはC4-C10α-オレフィン類とからなるコポリマーであり、ISO 1133(230℃/2.16kg)に準じたMFR^(A)が15?70g/10分の範囲である成分(A)を70?90重量%;及び - 25?45重量%のエチレン誘導単位を含み、室温におけるキシレン可溶性画分の極限粘度値[η]が5?9dl/gであるプロピレン-エチレンコポリマーである成分(B)を10?30重量% を成すマスターバッチ組成物であって、当該マスターバッチ組成物の総MFRが4g/10分より高く、ISO法178に準じて測定した曲げ弾性率値が950?2000MPaであるマスターバッチ組成物。」 ・「【0001】 本発明は、比較的に大きな物品に射出成形するのに適したポリオレフィン組成物を製造するのに使用できるポリオレフィンマスターバッチに関する。さらに詳細には、前記ポリオレフィン組成物は、特に、トラ縞模様(tiger striping)及びゲルに関して改良した表面特性を示す大きな対象に射出成形できる。 【背景技術】 【0002】 ポリプロピレン及び熱可塑性ポリオレフィン類は、それらの顕著なコストパーフォーマンス特性のため、広く商業的に受け入れられてきた。例えば、これらのポリマーは、それらの良好な耐候性のため、モールド成形された着色応用に使用される。 【0003】 ポリプロピレン及び熱可塑性ポリオレフィン類は、一般に、様々な所望の物品に射出成形される。自動車用バンパーや計器盤のように比較的大きな部品を得るための射出成形技術は、常温流れ、トラ縞模様及びゲルのような特に困難な課題を示す。「常温流れ}は、モールドに射出成形される溶融ポリマーが、該モールドがポリマーで完全に充填される前に、冷え、凝固を開始するときに起こる。「トラ縞模様」は、射出成形した物品の表面上の色や光沢変化を指し、溶融ポリマーをモールドに射出し所望の形体に形成するときに溶融ポリマーの不適切なモールド充填特性のために起こる。「ゲル」は、1種以上のポリマー成分の比較的不十分な分散が原因で起こる、最終形成物品表面の小斑点外観を指す。このようなトラ縞模様やゲルは、最終形成物品の表面外観を悪化させる作用がある。」 ・「【0006】 したがって、本発明の目的は、多くのゲルを実質的に減少させると共にトラ縞模様を減少させることにより、卓越した表面外観を有する最終形成物品を与えるポリオレフィン配合物中に分散されるのに特に適した価値ある物理的・機械的特性を備えたマスターバッチ組成物を提供することにある。」 ・「【0034】 本発明のマスターバッチ組成物は、抗酸化剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤や充填剤のような当業界で慣用的に使用される添加剤も含有することができる。 前述したように、本発明のマスターバッチ組成物は、追加のポリオレフィン類、特に、プロピレンホモポリマー類、ランダムコポリマー類や熱可塑性エラストマーポリオレフィン組成物類のようなプロピレンポリマー類と一緒に有利に配合することができる。 【0035】 したがって、本発明の別の態様は、上記定義したマスターバッチ組成物を含有する、射出成形に適した熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。好ましくは、当該熱可塑性ポリオレフィン組成物は、30重量%まで、好ましくは、8?25重量%、より好ましくは、10?20重量%の本発明のマスターバッチ組成物を含む。」 ・「【0046】 次いで、触媒系を、第1重合反応器中に導入させる前に、20℃で約5分間液体プロピレン中で懸濁状態に維持させることにより予備重合に付す。 重合 生成物をある反応器から直下の反応器に輸送する装置を具備する一連の三基の反応器中で連続的に行って、組成物を調製した。第1及び第2反応器バルクループ型反応器中で同じ条件下で操作して成分(A)を製造し、一方、第3慣用流動床気相反応器中で成分(B)を調製した。液体モノマー重合反応器中に、プロピレンホモポリマー(成分(A))を、表1に報告される条件にしたがって、連続且つ一定の流れでプロピレン流中に触媒成分、アルミニウムトリエチル(TEAL)、及び外部供与体としてジシクロペンチルジメトキシシラン、水素(分子量調整剤として使用)を別個に供給することにより生成した。 【0047】 第1反応器中で製造したポリプロピレンホモポリマーを連続流中に排出し、未反応モノマー類をパージした後、連続流中の該ポリプロピレンホモポリマーを、気相重合反応器中に、一定流の気相状態の水素、エチレン及びプロピレンと共に導入し、プロピレン/エチレンコポリマー(成分(B))を生成した。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 ・甲3発明における「(A-1)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1?200g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(1))5?30重量%とからなり、前記D_(sol)(1)を135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が4?10dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体 14?39重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)」及び「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し」に相当する。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(2))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(2))5?30重量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体 20?60重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2)」に相当する。 ・甲3発明における「(A-1)」と「(A-2)」の重量%からみて、(A-2)/(A-1)は、20/39から60/14、すなわち0.52/1から4.29/1となり、本件特許発明1における「重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲」と重複一致する。 ・甲3発明における「(A-1)」と「(A-2)」は、室温n-デカン可溶分の極限粘度[η]が異なることから、両者は異なるものである。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」中のプロピレン含有量については、甲第3号証の【請求項1】、【0019】及び【0022】の記載からみて、「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」に対して、本件特許発明1における「75.0重量%から90.0重量%」にある蓋然性が高い。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」のMFRは、甲第3号証の【請求項1】の記載からみて、1?200g/10分であるから、本件特許発明1における「3.0g/10分から120g/10分の範囲」と重複一致する。 ・甲3発明における「(C)無機充填剤 10?30重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「任意で無機充填剤(F)」に相当する。 ・甲3発明における「ポリプロピレン系樹脂組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「組成物」に相当する。 したがって、両者は、次の点で一致する。 「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではない、 組成物。」 そして、次の点で相違する。 <相違点1> 「異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)」に関して、本件特許発明1においては、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数1】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である」であるのに対し、甲3発明においては、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)」に相当する「(A-1)」が、「プロピレンホモポリマー(H-PP)」に相当する「プロピレン単独重合体部」及び「弾性プロピレンコポリマー(E)」に相当する「エチレン・プロピレンランダム共重合体部」を有するものの、条件(a)ないし(f)を満たすものかどうか明らかでない点。 (イ)判断 そこで、検討する。 甲第3号証には、条件(a)ないし(f)の全てを満たす実施例は記載されていないし、条件(a)ないし(f)の全てを満たすようにすることは、一般記載としてもない。 また、甲第4号証にも、条件(a)ないし(f)の全てを満たすようにすることは記載も示唆もない。 そして、本件特許発明1は、条件(a)ないし(f)の全てを満たすことによって、平均二乗誤差(MSE)が小さく、フローマークが出現する傾向が小さくなる(本件特許の【0153】ないし【0155】、【0169】、【0170】参照。)という、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と甲3発明を対比する。 ・甲3発明における「(A-1)メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重)が1?200g/10分であるプロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(1))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(1))5?30重量%とからなり、前記D_(sol)(1)を135℃デカリン溶液中で測定したときの極限粘度[η]が4?10dl/gであるプロピレン系ブロック共重合体 14?39重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明2における「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)」及び「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し」に相当する。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体であって、プロピレン単独重合体部を主成分とする室温n-デカン不溶分(D_(insol)(2))70?95重量%と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を主成分とする室温n-デカン可溶分(D_(sol)(2))5?30重量%とからなるプロピレン系ブロック共重合体 20?60重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明2における「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2)」に相当する。 ・甲3発明における「(A-1)」と「(A-2)」の重量%からみて、(A-2)/(A-1)は、20/39から60/14、すなわち0.52/1から4.29/1となり、本件特許発明2における「重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲」と重複一致する。 ・甲3発明における「(A-1)」と「(A-2)」は、室温n-デカン可溶分の極限粘度[η]が異なることから、両者は異なるものである。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」中のプロピレン含有量については、甲第3号証の【請求項1】、【0019】及び【0022】の記載からみて、「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」に対して、本件特許発明2における「75.0重量%から90.0重量%」にある蓋然性が高い。 ・甲3発明における「(A-2)プロピレン系ブロック共重合体」のMFRは、甲第3号証の【請求項1】の記載からみて、1?200g/10分であるから、本件特許発明2における「3.0g/10分から120g/10分の範囲」と重複一致する。 ・甲3発明における「(C)無機充填剤 10?30重量%」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「任意で無機充填剤(F)」に相当する。 ・甲3発明における「ポリプロピレン系樹脂組成物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「組成物」に相当する。 したがって、両者は、次の点で一致する。 「(a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではない、 組成物。」 そして、次の点で相違する。 <相違点2> 「異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)」に関して、本件特許発明2においては、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数1】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である」であるのに対し、甲3発明においては、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)」に相当する「(A-1)」が、「プロピレンホモポリマー(H-PP)」に相当する「プロピレン単独重合体部」及び「弾性プロピレンコポリマー(E)」に相当する「エチレン・プロピレンランダム共重合体部」を有するものの、条件(a)ないし(f)を満たすものかどうか明らかでない点。 (イ)判断 そこで、検討する。 甲第3号証には、条件(a)ないし(f)の全てを満たす実施例は記載されていないし、条件(a)ないし(f)の全てを満たすようにすることは、一般記載としてもない。 また、甲第4号証にも、条件(a)ないし(f)の全てを満たすようにすることは記載も示唆もない。 そして、本件特許発明2は、条件(a)ないし(f)の全てを満たすことによって、平均二乗誤差(MSE)が小さく、フローマークが出現する傾向が小さくなるという、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項からみて、格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明2は、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件特許発明3ないし5、7、8及び11ないし14について 本件特許発明3ないし5、7、8及び11ないし14は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ 本件特許発明15について 請求項15の記載からみて、本件特許発明15は、請求項1又は2に記載された発明特定事項を全て有しているものであるから、本件特許発明1又は2と同様に、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)むすび したがって、取消理由によっては、本件特許の請求項1ないし5、7、8、11ないし15に係る特許は取り消すことはできない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は、おおむね次の4つである。 ア 訂正前の請求項1ないし14、16及び17に係る発明についての甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反 イ 訂正前の請求項1ないし14、16及び17に係る発明についての甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反 ウ 訂正前の請求項1ないし17に係る発明についてのサポート要件違反 エ 訂正前の請求項1ないし17に係る発明についての実施可能要件違反 また、特許異議申立書には、取消理由で引用した甲第3及び4号証以外に、次の文献が証拠として提出されている。 甲第1号証:特開2002-12734号公報 甲第2号証:国際公開第2004/016662号 参考資料1:新版高分子分析ハンドブック 社団法人日本分析化学会 高分子分析研究懇談会編集 1995年1月12日発行 1724?1726頁 参考資料2:プラスチック材料講座7 ポリプロピレン樹脂 高木謙行・佐々木平三編著 57?58頁、昭和44年11月30日発行 日刊工業新聞社 参考資料3:「Polypropylene Handbook 2^(nd) Edition(2005)」p.18, Table2.1(対応する翻訳として、「新版ポリプロピレンハンドブック、21頁、日刊工業新聞社発行」も提出されている。) (2)判断 そこで、検討する。 ア 甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反について 本件特許発明1は、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数1】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である」という発明特定事項(以下、「発明特定事項1」という。)を有するものであるが、甲第1号証には、該発明特定事項1について記載も示唆もなく、他の甲号証及び参考資料1ないし3にも記載も示唆もない。 また、本件特許発明2は、「異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数2】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である」という発明特定事項(以下、「発明特定事項2」という。)を有するものであるが、甲第1号証には、該発明特定事項2について記載も示唆もなく、他の甲号証及び参考資料1ないし3にも記載も示唆もない。 したがって、本件特許発明1及び2についての、甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反は理由がない。 請求項1及び2を引用する本件特許発明3ないし5、7、8及び11ないし14についても同様である。 よって、甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反は理由がない。 イ 甲第2号証に基づく新規性・進歩性違反について 本件特許発明1は、発明特定事項1に加え、「異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり」という発明特定事項(以下、「発明特定事項3」という。)を有するものであるが、甲第2号証には、該発明特定事項1及び3について記載も示唆もなく、他の甲号証及び参考資料1ないし3にも記載も示唆もない。 また、本件特許発明2は、発明特定事項2に加え、発明特定事項3を有するものであるが、甲第2号証には、該発明特定事項2及び3について記載も示唆もなく、他の甲号証及び参考資料1ないし3にも記載も示唆もない。 したがって、本件特許発明1及び2についての、甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反は理由がない。 請求項1及び2を引用する本件特許発明3ないし5、7、8及び11ないし14についても同様である。 よって、甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性違反は理由がない。 ウ サポート要件違反について(特許法第36条第6項第1号に対する申立てについて) <特許異議申立人の主張の概要> 訂正前の請求項1に係る組成物に用いられる異相ポリプロピレン組成物(以下、「HECO1」という。)は、フローマークの低減に効果を有する成分であり、その量について、訂正前の請求項1に係る発明においては、ポリオレフィン(PO)との重量比で規定され、また、訂正前の請求項11に係る発明においては、組成物中の5重量%から30重量%の範囲内の量で存在すると規定されている。 しかしながら、周知技術を示すために提示した特開2009-155627号公報によると、プロピレン系樹脂組成物の無機フィラーとしてタルクが好ましいことが理解でき、無機フィラーとしてのタルクの量が増え、20重量%を超えると成形外観が低下すること(効果が優れないこと)が記載されている。 そして、訂正前の請求項1に係る発明について、実施例では、タルクを13重量%、HECO1を15重量%で配合した場合に「射出成形品のフローマークを大幅に減少させる」効果が得られるものの、タルクの量と関係なく、HECO1の量だけによって、その効果が得られるものであることを合理的に説明する記載はない。 そうであれば、訂正前の請求項1に係る発明又は訂正前の請求項11に係る発明の全範囲において、HECO1だけの量により、その効果が得られることは、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 <判断> 本件特許明細書において、無機フィラーとしてタルクが好ましい旨の記載があり、実施例として、タルクを特定量(13%)配合した例しか記載されていないとしても、本件特許発明1及び11に係る実施例において、HECO1(15重量%)及びHECO2(主張の「PO」に相当。)(70重量%)の配合により、射出成形品のフローマークの低減の効果があり、発明の課題を解決できることが理解できる。これは、無機フィラーの有無にかかわらず、HECO1をHECO2に対して特定割合で配合することにより発揮される効果であると推認されるものである。 したがって、本件特許発明1及び11は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ、発明の詳細な説明の記載により発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 また、本件特許発明2についても同様である。 さらに、請求項1及び2を引用する本件特許発明3ないし5、7、8及び12ないし14についても同様である。 さらにまた、本件特許発明15についても同様である。 よって、特許異議申立人が主張するサポート要件違反は理由がない。 エ 実施可能要件違反について(特許法第36条第4項第1号に対する申立てについて) <特許異議申立人の主張の概要> 周知技術を示すために提示した特開2012-207062号公報によれば、タルクの量が増えるとフローマークの少ない成形外観に優れた性能が得られないことが理解できる。 そして、訂正前の請求項1に係る発明又は訂正前の請求項11に係る発明は、タルクの量についての特定はなく、本件特許明細書において、無機フィラーは5重量%?30重量%の範囲内の量で存在すると記載されているだけで、例えば、タルクの量が30重量%である場合に、所期の効果が得られるのか不明であるから、発明の詳細な説明は、訂正前の請求項1に係る発明又は訂正前の請求項11に係る発明を当業者が実施できる程度の明確かつ十分に記載されているとはいえない。 <判断> 本件特許発明1及び11は、HECO1及びHECO2の配合割合が特定されるものであり、また、本件特許明細書には、無機フィラーの配合割合の範囲の記載もあり、さらに、実施例も記載されているから、これらの範囲及び実施例を目安として、各成分の配合量を調整して、効果の奏する範囲とすればよいのであり、当業者が過度の試行錯誤を要するものではない。 したがって、特定の無機フィラーの配合量を想定した場合の具体的な効果が明らかでないからといって、本件特許発明1及び11が、発明の詳細な説明の記載をみても全く実施できないということはない。 また、本件特許発明2についても同様である。 さらに、請求項1及び2を引用する本件特許発明3ないし5、7、8及び12ないし14についても同様である。 さらにまた、本件特許発明15についても同様である。 よって、特許異議申立人が主張する実施可能要件違反は理由がない。 第4 結語 上記第3のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし5、7、8、11ないし15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし5、7、8、11ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項6、9、10、16及び17は、訂正により削除されたため、請求項6、9、10、16及び17に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数1】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 組成物。 【請求項2】 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有する異相プロピレンコポリマー(HECO2); 異相ポリプロピレン組成物(HECO1);並びに 任意で無機充填剤(F); とを有し、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内である; 組成物であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[HECO2/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではなく、 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; (d) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、11.0重量%から35.0重量%の範囲内であり; (e) 異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のエチレン含有量は、24.5重量%以上、38.0重量%以下であり; さらに、 (f) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数2】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 組成物。 【請求項3】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内である、請求項1又は請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量が20.0重量%未満である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項5】 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 前記コモノマーがエチレンである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項8】 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、不等式(Ia)を満たし、 【数3】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、 請求項1から請求項5及び請求項7のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 組成物中に、請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、5重量%から30重量%の範囲内の量で存在する、請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項12】 請求項1から請求項5、請求項7、請求項8及び請求項11のいずれか1項に記載の組成物を有する射出成形品。 【請求項13】 自動車の物品である、請求項12に記載の射出成形品。 【請求項14】 請求項1から請求項5、請求項7及び請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、異相プロピレンコポリマー(HECO2)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、 異相プロピレンコポリマー(HECO2)が、 (a) ポリプロピレンマトリクス(M-PP2)と、 (b) 弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)であって、 - プロピレン及び - エチレン及び/又はC_(4)?C_(12)α-オレフィン 由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E-PP2)と、 を有し; 異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、75.0重量%から90.0重量%であり; ISO1133に準じて測定される前記異相プロピレンコポリマー(HECO2)のメルトフローレートMFR_(2)(230℃)は、3.0g/10分から120g/10分の範囲内であり; 前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但し異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする。 【請求項15】 下記(1)から(8)のいずれか1つに記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、ポリオレフィン(PO)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、充填時間1.50秒で作成した210x148x3mm^(3)の大きさのプラークについて求められる平均二乗誤差が7.4未満である場合に、フローマークの減少が達成されているものとする、前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但しポリオレフィン(PO)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする; (1) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 前記プロピレンホモポリマー(H-PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数4】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である; (2): 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、プロピレンホモポリマー(H-PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、 (a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり; (b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり; (c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり; さらに、 (d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、 【数5】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である; (3): 上記(1)又は(2)において、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR_(2)(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内である; (4) 上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量が20.0重量%未満である; (5) 上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5である; (6): 上記(1)から(5)のいずれか1つにおいて、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分画分の量が、35.0重量%未満である; (7): 上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記コモノマーがエチレンである; (8): 上記(1)から(7)のいずれか1つにおいて、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、不等式(Ia)を満たし、 【数6】 式中、 Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、 IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-01-09 |
出願番号 | 特願2015-544464(P2015-544464) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L) P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 536- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 水野 明梨 |
特許庁審判長 |
小野寺 務 |
特許庁審判官 |
岡崎 美穂 加藤 友也 |
登録日 | 2016-10-21 |
登録番号 | 特許第6027259号(P6027259) |
権利者 | ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト |
発明の名称 | タイガーストライプ改良剤 |
代理人 | 的場 基憲 |
代理人 | 的場 基憲 |