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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  H05B
管理番号 1338136
異議申立番号 異議2016-701197  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-27 
確定日 2018-02-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第5945363号発明「加熱調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5945363号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第5945363号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成21年10月28日に出願した特願2009-247704号の一部を平成25年8月27日に新たな特許出願とした特願2013-175518号の一部を平成26年7月7日に新たな特許出願とした特願2014-139543号の一部を平成27年5月11日に新たな特許出願とした特願2015-96449号の一部を平成27年12月15日に新たな特許出願としたものであって、平成28年2月4日及び平成28年4月8日に手続補正書及び意見書が提出され、平成28年6月3日に特許権の設定登録がされた。そして、その後、特許異議申立人松本征二より特許異議の申立てがされ、平成29年2月22日付けで取消理由が通知され、平成29年4月26日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成29年5月8日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成29年6月8日に意見書の提出がされ、平成29年6月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年8月25日に意見書が提出され、平成29年9月15日付けで再度の取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年11月17日に意見書が提出されたものである。

2.訂正の請求についての判断
(1)訂正の内容
平成29年4月26日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5945363号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたものであり」とあるのを、「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向の内側に前記モータ全体が収納されているとともに前記冷却ファンの軸方向の内側に前記モータの一部が収納されたものであり」に訂正する。
(訂正事項2)
明細書の段落【0007】に「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたものである。」とあるのを、「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向の内側に前記モータ全体が収納されているとともに前記冷却ファンの軸方向の内側に前記モータの一部が収納されたものである。」に訂正する。

(2)訂正の適否
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項1
上記訂正事項1は、冷却ファンを回転駆動するモータについて、冷却ファンの軸方向の内側に、「全体が収納されたもの」から「一部が収納されたもの」、すなわち全体が収納された態様を含まず、一部が収納され一部が冷却ファンの軸方向の外側へ配置された態様へと、モータが収納される態様を変更するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでない。
また、上記「一部が収納されたもの」が、全体が収納されたものをも含むと解するならば、上記訂正事項1は、モータが収納される態様について、全体が収納された態様に加えて、一部が収納された態様をも包含させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものでない。
そして、訂正前の「前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたもの」とは、冷却ファンの径方向及び軸方向の両方向において、モータ全体が内側に収納されていることを特定するものであるから、その記載は明瞭であり、訂正事項1は明瞭でない記載の釈明に当たらない。
ここで、請求人は、「前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたもの」との補正は、平成28年2月4日付けの手続補正により補正したものであり、同日付けの意見書において、当該補正の根拠を「出願当初の図5の内容」と記載しているから、図2、5、8及び10の記載との関係で不合理であるから、不明瞭である旨主張する(平成29年11月17日の意見書等。)。
しかし、発明は、補正の有無に関係なく、特段の事情が無い限り、特許請求の範囲の記載に基づいて認定されるものであるから、訂正前の「前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたもの」との記載は、上記のとおり不明瞭とはいえない。また、請求人が主張する当該記載と図2、5、8及び10に記載された冷却ファンとモータとの位置関係とが合致してないとしても、そもそも、訂正前の「前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたもの」が図2、5、8及び10に記載された冷却ファンとモータとの位置関係を表しているとの根拠は、本件明細書に記載されておらず、平成28年2月4日付けの意見書を参酌する理由はない。さらに、訂正前の「前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたもの」と図2、5、8及び10に記載された冷却ファンとモータとの位置関係は、それぞれが明確に示されているから、それぞれに別の位置関係を表していると解することは合理的であり、請求人の主張は採用できない。
したがって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものではない。
そして、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号及び第4号に規定する誤記又は誤訳の訂正及び請求項間の引用関係の解消のいずれを目的とするものでもない。
よって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に規定するいずれの目的にも該当しないから、特許法第120条の5第2項ただし書の規定に違反するものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記訂正事項1は、既述のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に違反するものである。

ここで、請求人は、「モータ全体が収容され」との用語は、図2、5、8及び10を考慮して解釈すれば、冷却ファンの軸方向においては、モータ全体が冷却ファンの内側に収納されていることまでをも意味するものでなく、モータの大部分つまりモータの一部が冷却ファンの軸方向の内側に収納されている程度のものを意図していることは明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない旨主張する(平成29年11月17日の意見書等。)。
しかし、請求項1の記載は、既述のとおり、明確であって、モータの一部が冷却ファンの軸方向の内側に収納されている程度のものを意図しないことは明らかであるから、請求人の主張は失当である。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、明細書の段落【0007】の記載を訂正事項1と同様に訂正するものである。
したがって、訂正事項2は、上記(1)と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書の規定、及び同条第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書の各号のいずれにも該当せず、同条第9項の規定によって準用する第126条第6項の規定に違反するものであるから、訂正後の請求項1?5についての訂正を認めない。

3.本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められないから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
上部に調理容器が載置される本体と、
前記本体内に配置され、前記調理容器を加熱する加熱コイルと、
前記本体内に配置され、平面視において前記加熱コイルを内包するように支持するコイルベースと、
前記本体内に配置され、前記加熱コイルに高周波電流を供給する回路基板と、
前記本体内に配置され、前記本体外の空気を前記本体内に吸い込んで冷却風として前記回路基板側及び前記加熱コイル側へ吐出するファン装置と、を備え、
前記ファン装置は、
縦軸型の冷却ファンと、
前記冷却ファンを回転駆動するモータと、を有し、
前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたものであり、
前記モータは、前記冷却ファン及び前記モータを囲繞するファンケーシングに対して垂下した状態で前記ファンケーシングに取り付けられており、
前記冷却ファンと前記コイルベースとは平面視において少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている、
加熱調理器。
【請求項2】
前記冷却ファンと前記回路基板に設けられた放熱部材とは、平面視において重ならない位置に配置されているとともに、側面視において少なくとも一部が上下方向に重なり合う位置に配置され、
前記コイルベースは、前記放熱部材及び前記冷却ファンに対して平面視において少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱コイルは、同心円状に形成された第1の配線領域と第2の配線領域とを有し、
前記第1の配線領域と前記第2の配線領域との間に隙間が形成されており、
前記ファン装置から前記加熱コイル側へ吐出された冷却風の一部は、前記加熱コイルの前記隙間を抜ける、
請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ファン装置から吐出された冷却風を、前記回路基板側へ流れる冷却風と前記加熱コイル側へ流れる冷却風とに分ける分流板部を備えている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記ファン装置から吐出された冷却風の一部を、前記回路基板側へ案内する案内板を備えている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱調理器。

4.当審の判断
(1)取消理由の概要
平成29年2月22日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
本件発明は、平成28年4月8日の手続補正で補正した特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりであるところ、本件発明1の「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたものであ」ることは、出願当初の特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものであるから、その特許は特許法第17条の2第3項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)取消理由についての判断
ア 本件特許明細書の記載事項
本件特許の当初明細書等には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
上部に調理容器が載置される本体と、
前記本体内に配置され、前記調理容器を加熱する加熱コイルと、
前記本体内に配置され、平面視において前記加熱コイルを内包するように支持するコイルベースと、
前記本体内に配置され、前記加熱コイルに高周波電流を供給する回路基板と、
前記本体内に配置され、前記本体外の空気を前記本体内に吸い込んで冷却風として前記回路基板側及び前記加熱コイル側へ吐出するファン装置と、を備え、
前記ファン装置は、
縦軸型の冷却ファンと、
前記冷却ファンの径方向の内側に設けられ前記冷却ファンを回転駆動するモータと、を有し、
前記冷却ファンと前記コイルベースとは平面視において少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている、
加熱調理器。」

(イ)「【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の加熱調理器は、上部に調理容器が載置される本体と、前記本体内に配置され、前記調理容器を加熱する加熱コイルと、前記本体内に配置され、平面視において前記加熱コイルを内包するように支持するコイルベースと、前記本体内に配置され、前記加熱コイルに高周波電流を供給する回路基板と、前記本体内に配置され、前記本体外の空気を前記本体内に吸い込んで冷却風として前記回路基板側及び前記加熱コイル側へ吐出するファン装置と、を備える。前記ファン装置は、縦軸型の冷却ファンと、前記冷却ファンの径方向の内側に設けられ前記冷却ファンを回転駆動するモータと、を有する。前記冷却ファンと前記コイルベースとは平面視において少なくとも一部が重なり合う位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す加熱調理器をシステムキッチンに組み込んだ状態を示す三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断側面図
【図2】加熱調理器の分解斜視図
【図3】トッププレート組立及び操作パネルユニットを取り外した状態で示す平面図
【図4】図2におけるX1-X1線に沿う縦断正面図
【図5】図2におけるX2-X2線に沿う縦断側面図
【図6】図5におけるX3-X3線に沿う横断平面図
【図7】図1の(b)におけるX4-X4線に沿う一部縦断側面図
【図8】ファン装置周辺の構成を示す分解斜視図
【図9】基板ケース部分の分解斜視図
【図10】基板ケースとファン装置とをユニット化した状態の斜視図」
(ウ)「【0019】
次に、電気回路ユニット7及びファン装置6側の構成について、図5から図10を参照して説明する。ファン装置6と電気回路ユニット7は、基板ケース45に設けられている。基板ケース45は、本体ケース2の下空間19における仕切板10の右側に配置されており、図9に示すように、下部ケース45aと上部ケース45bの2部材を組み合わせて構成されている。この基板ケース45内の底部には、一枚のプリント基板からなる回路基板46が基板ケース45の底部全体にわたって収容配置されている。この回路基板46に、電気部品100を実装することにより、電気回路ユニット7が構成されている。電気回路ユニット7は、前記加熱コイル30、31に高周波電流を供給するインバータを備えている。回路基板46には、図示はしないが、マイクロコンピュータを含む制御装置(制御手段)も設けられている。
【0020】
本体ケース2内の右後部には、本体ケース2、仕切体16及び後述するファンケーシング52のそれぞれの面によって冷却風を通すための第1の吸気ダクト47(図2及び図5参照)を形成している。また、本体ケース2の右側背面の下部には、後方に向かって上向きとなる斜面2aが設けられており、この斜面2aには複数の小孔からなる第1の吸気口48が機外と連通して設けられている(図3及び図5参照)。
【0021】
基板ケース45の後部の上部に、回路基板46の上方に位置させてファン装置6が取り付けられている。このファン装置6は、縦軸型の遠心ファンからなる冷却ファン50と、この冷却ファン50を回転駆動するモータ51と、冷却ファン50を囲繞するファンケーシング52とを備えている。なお、ファンケーシング52の下部は、前記基板ケース45の上部ケース45bに一体に形成されている。モータ51は、ファンケーシング52の上部にねじ52aにより取り付けられていて、回転軸51aを下に向けている。ファンケーシング52の上面と仕切体16の下面との間は離間している。ファンケーシング52の吐出口53は前方に向けられていて、その吐出口53の上部の先端部53aは、上に向けられて、仕切体16の下面に当接している。冷却ファン50は、これの回転軸となるモータ51の回転軸51aが前記第1の吸気口48よりも前方に位置していて、右側の加熱コイル30の下方にまで臨む大きさに構成されている。
【0022】
ファンケーシング52の上部には、モータ51の外形よりも大きな開口部である上部吸込口54が形成されている。この上部吸込口54は、ファンケーシング52内と、第1の吸気ダクト47とを連通している。ここで、冷却ファン50がモータ51により回転駆動された際に、第1の吸気口48から第1の吸気ダクト47を通して上部吸込口54へ吸い込まれる外気(冷却風)が通る経路を第1の吸気経路55(図5の矢印A1参照)としている。」
(エ)「図2



(オ)「図5



(カ)「図8



(キ)「図10



イ 当審の判断
当初明細書等において、冷却ファンとモータとの軸方向の位置関係について、具体的に記載されているのは、図2、5、8、10のみであり、【0008】の記載によると、図2、5、8、10は全て同一の実施例の図面であって、その内の図5は、「図2におけるX2-X2線に沿う縦断側面図」(【0008】)であり、冷却ファンとモータとの軸方向の位置関係を明確に表している。
そして、図5には、冷却ファンが、冷却ファンの軸方向の内側にモータの一部が収納されたものが記載されているものの、モータ全体が収納されたものが記載されていないことは明らかである。また、当該事項は、図2、8、10の記載とも整合している。
したがって、平成28年4月8日の手続補正で補正した本件発明1中の「前記冷却ファンは、前記冷却ファンの径方向及び軸方向の内側に前記モータ全体が収納されたものであ」ることは、当初明細書等の全ての事項を総合しても導かれるとはいえず、当該構造を採用することでファン装置の高さ方向の寸法をモータの厚みの分だけ小さく抑えることができる(平成28年4月8日の意見書3.参照)という新たな技術的事項を導入するものであるから、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
そして、本件発明2?5は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2?5に係る当該補正は、同様の理由により、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明1?5に係る平成28年4月8日の補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との対比において新たな技術的事項を導入するものであるから、本件発明1?5に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明1?5に係る特許は、特許法第113条第1号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-12-22 
出願番号 特願2015-244078(P2015-244078)
審決分類 P 1 651・ 55- ZB (H05B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 宮崎 賢司  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 佐々木 正章
井上 哲男
登録日 2016-06-03 
登録番号 特許第5945363号(P5945363)
権利者 アイリスオーヤマ株式会社
発明の名称 加熱調理器  
代理人 特許業務法人白坂  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  
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