現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1338179
異議申立番号 異議2017-700639  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-21 
確定日 2018-03-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6048984号発明「偏光膜を有する光学的表示装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6048984号の請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6048984号(以下「本件特許」という。)の請求項1?請求項14に係る特許についての特許出願(特願2015-78939号)は,特許法44条1項の規定に基づいて,特願2011-144064号の一部を平成27年4月8日に新たな特許出願としたものである。また,上記特願2011-144064号は,同規定に基づいて,特願2011-68512号(以下,「もとの特許出願」という。)の一部を平成23年6月29日に新たな特許出願としたものである。そして,もとの特許出願は,平成22年9月3日及び平成22年12月2日に出願された,先の出願に基づく優先権の主張を伴って,平成23年3月25日にされた特許出願である。
本件特許について,平成28年12月2日に特許権の設定の登録,同年12月21日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成29年6月21日に,請求項1?6,8,10,14に係る特許に対して,特許異議申立人平居博美から特許異議の申立てがされた(異議2017-700639号)。
その後の手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成29年 8月10日付け:取消理由通知書
平成29年10月16日付け:意見書
平成29年12月27日付け:上申書
平成30年 1月12日付け:審尋
平成30年 2月14日付け:回答書

第2 本件発明
本件特許の請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は,本件特許の特許請求の範囲の請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に記載された,以下の事項により特定されるとおりのものである。
1 請求項1?請求項6
「【請求項1】
二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなり,厚みが10μm以下である偏光膜と,
前記偏光膜の一方の面に接着された位相差膜と,
該位相差膜に接着された容量型タッチパネル積層体と,
前記容量型タッチパネル積層体に光学的に透明な粘着剤層を介して接合された光学的表示パネルと,
を少なくとも備え,
前記偏光膜の光学特性が,Tを単体透過率(%),Pを偏光度(%)としたとき,次式P>?(10^(0.929T?42.4)?1)×100(ただし,T<42.3),および
P≧99.9(ただし,T≧42.3)
の条件を満足することを特徴とする光学的表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載した光学的表示装置であって,前記偏光膜の他方の面に接合された透明樹脂材料の保護層を備えることを特徴とする光学的表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載した光学的表示装置であって,前記保護層の外側にウインドウが配置されたことを特徴とする光学的表示装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載した光学的表示装置であって,前記偏光膜と前記保護層との間には該偏光膜と該保護層との間の接着を容易にする易接着層が形成されたことを特徴とする光学的表示装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載した光学的表示装置であって,前記保護層に帯電防止層が形成されたことを特徴とする光学的表示装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載した光学的表示装置であって,前記保護層と前記偏光膜との間及び前記偏光膜と前記光学的表示パネルの間の少なくとも一方に拡散層が配置されたことを特徴とする光学的表示装置。」

2 請求項8
「【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載した光学的表示装置であって,前記光学的表示パネルは有機EL表示パネル又は反射型液晶表示パネルであることを特徴とする光学的表示装置。」

3 請求項10
「【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載した光学的表示装置であって,前記位相差膜は1/4波長位相差膜であることを特徴とする光学的表示装置。」

4 請求項14
「【請求項14】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載した光学的表示装置であって,前記光学的表示パネルは反射型液晶表示パネルであり,前記位相差膜は1/4波長位相差層であることを特徴とする光学的表示装置。」

第3 取消理由の概要
当審において,請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に係る発明に係る特許に対して通知した取消の理由は,概略,本件発明1?本件発明6,本件発明8,本件発明10,本件発明14は,本件特許の最先の優先権主張の日(以下,本件優先日」という。)前に,日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである,というものである。
甲第1号証:特開2004-86328号公報
甲第2号証:特開平1-105204号公報
甲第3号証:国際公開第2010/071093号
甲第4号証:国際公開第2007/000910号
甲第5号証:特開2004-338379号公報
甲第6号証:井手文雄,「ディスプレイ用光学フィルムの開発動向」,普及版第1刷,株式会社シーエムシー出版,2008.11.23発行,53?62頁,93?107頁
刊行物7:特開2008-197757号公報
刊行物8:特開2001-318372号公報
(当合議体注:甲第2号証?甲第4号証は,本件発明1と甲第1号証に記載された発明の相違点(後述)に係る本件発明1の構成が,周知技術であることを示す文献であり,甲第5号証?甲第6号証及び刊行物7?刊行物8は,その他の周知技術を示す文献である。)

第4 甲各号証の記載
1 甲第1号証の記載事項
(1)本件優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には,次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
λ/4板とレターデーション値が20nm以下である保護膜との間に,偏光膜の吸収軸が保護膜およびλ/4板の遅相軸と20°以上70°未満の角度をなすように配置された円偏光板を1枚以上有し,かつ,
少なくとも片面に透明導電膜を有する第一の透光性基板と,少なくとも片面に透明導電膜を有する第二の透光性基板とが,第一の透光性基板が視認側になるように透明導電膜同士を対向させて配置されたタッチパネルであって,
該円偏光板の厚みが,80μm以上300μm以下であることを特徴とするタッチパネル。
・・・(略)・・・
【請求項5】
請求項1または2に記載のタッチパネルを搭載した表示装置。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,タッチパネルおよびその製造方法に関し,さらにはタッチパネル付き表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
・・・(略)・・・
【0005】
タッチパネルが装備される表示装置としては,液晶表示装置,CRT,EL,PDPなどがある。液晶表示装置ではそのほとんどが画面の表示のために偏光板を1枚以上用いている。また,ELではセル内部での反射防止のため,外面側に偏光板と位相差板を組み合わせた円偏光板を設けている。
・・・(略)・・・
【0007】
以上のように,タッチパネル付き表示装置では,偏光板は非常に重要な部材である。偏光板は一般に偏光能を有する偏光膜の両面あるいは片面に,接着剤層を介して保護膜が貼り合わせられている。
偏光膜の素材としては,ポリビニルアルコール(以下,PVA)が主に用いられており,PVAフィルムを一軸延伸してから,ヨウ素あるいは二色性染料で染色するかあるいは染色してから延伸し,さらにホウ素化合物で架橋することにより偏光膜が形成される。
保護膜としては,光学的に透明で複屈折が小さいことから,主にセルローストリアセテートが用いられている。偏光膜は,通常連続フィルムの走行方向(長手方向)に一軸延伸して製造されるため,偏光膜の吸収軸は長手方向にほぼ平行となる。」

ウ 「【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は,表示装置の入力感を損なうことなく,薄型化・軽量化または低コスト化に対応可能なタッチパネル,あるいは薄型化・軽量化または低コスト化に対応可能で,かつ,高コントラスト化に対応可能なタッチパネルを提供することにある。
本発明の他の目的は,該タッチパネルを搭載した表示装置を提供することにある。」

エ 「【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のタッチパネルおよびタッチパネル付き表示装置の構成の代表的な例を,図12に概略断面図として模式的に示した。
図12の例は,タッチパネルの操作者面側の基板である上部基板を円偏光板としたいわゆるインナー型タッチパネルタッチパネルであり,円偏光板によって内部反射を無くすことにより,コントラストを向上させることができる。図12において,透明導電膜205を有する第一の透光性基板204と透明導電膜206を有する円偏光板(第二の透光性基板)207は,各々の透明導電膜が対向するように配置されてタッチパネル211を構成している。円偏光板207上にはハードコート膜208と反射防止膜209がこの順序で配置されている。
・・・(略)・・・
図12,13のどちらにも示されているように,タッチパネルの耐擦傷性を強化したり,タッチパネル表面での反射を防止するために,第二の透光性基板(207,258)上にはハードコート膜(208,259)と反射防止膜(209,260)を設けてもよい。
図12,13に関しては両側に円偏光板を有する透過型または半透過型の液晶セルの例を記載しているが,当然,反射型の液晶セルの上に搭載することも可能である。また,図13の例に関しては,両側に直線偏光板を有する液晶セル上に搭載することも可能である。
なお,本発明のタッチパネル付き表示装置は図12の例に限定されず,各種のバリエーションがあることは言うまでもない。
【0015】
(円偏光板)
本発明のタッチパネル付き表示装置に用いられる円偏光板(本明細書中,「本発明の偏光板」ともいう)について,詳細に説明する。
本発明の円偏光板は,偏光能を持つ偏光膜を有し,該偏光膜の片面に保護膜がさらに反対側の面には,λ/4板が設けられる。
通常,長尺の偏光板(通常ロール形態)を製造し,それを用途に合わせて打ち抜くことにより,実用上の偏光板が得られるものである。なお,本明細書の記載において,特に断らない限り,長尺の偏光板及び打ち抜いた偏光板の両者を含む意味で用いられる。
・・・(略)・・・
【0017】
本発明では,円偏光板の作製で偏光膜とλ/4板との貼り合わせを,偏光膜とλ/4板とを各々ロール状態で供給し,連続的に貼合し,ロール状態で巻き取る工程により行うことが製造効率を上げ,コストを下げる意味で好ましい。
・・・(略)・・・
【0021】
また,本発明の円偏光板は,単板透過率が550nmで35%以上かつ偏光度が550nmで80%以上であることを特徴とする。単板透過率は,好ましくは40%以上であり,偏光度は好ましくは95.0%以上,より好ましくは99%以上,特に好ましくは99.9%以上である。なお,以下の記載において,特に断りのない限り透過率は単板透過率のことである。
本発明の円偏光板は,優れた単板透過率及び偏光度を有しているため,液晶表示装置として用いる場合に,そのコントラストを高めることができ,有利である。
・・・(略)・・・
【0050】
<偏光膜用ポリマーフィルム>
本発明で,偏光膜を形成するための延伸の対象とするポリマーフィルムに関しては特に制限はなく,熱可塑性の適宜なポリマーからなるフィルムを用いることができる。ポリマーの例としては,PVA,ポリカーボネート,セルロースアシレート,ポリスルホンなどを挙げることができる。
好ましくはPVAを包含するポリビニルアルコール系ポリマーである。PVAは通常,ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが,例えば不飽和カルボン酸,不飽和スルホン酸,オレフィン類,ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を少量含有しても構わない。また,アセトアセチル基,スルホン酸基,カルボキシル基,オキシアルキレン基等を含有する変性PVAもポリビニルアルコール系ポリマーに含まれ好ましく用いることができる。
なかでも,PVAが最も好ましい。
【0051】
PVAのケン化度は特に限定されないが,溶解性等の観点から80?100mol%が好ましく,90?100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが,1000?10000が好ましく,1500?5000が特に好ましい。
【0052】
延伸前のポリマーフィルムの好ましい弾性率は,ヤング率で表して,0.01Mpa以上5000Mpa以下,更に好ましくは0.1Mpa以上500Mpa以下である。弾性率が低すぎると延伸時・延伸後の収縮率が低くなり,シワが消えにくくなり,また高すぎると延伸時にかかる張力が大きくなり,フィルム両端を保持する部分の強度を高くする必要が生じ,機械に対する負荷が大きくなる。
【0053】
延伸前のフィルムの厚味は特に限定されないが,フィルム保持の安定性,延伸の均質性の観点から,1μm?1mmが好ましく,20?200μmが特に好ましい。
【0054】
<染色処方・方法>
偏光膜は,偏光膜用ポリマーフィルム,例えばPVAフィルムを配向すると共に染色して得られる。染色は,気相または液相吸着により行われる。液相で行う場合の例として,偏光子としてヨウ素を用いる場合には,ヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液に偏光膜用ポリマーフィルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.1?20g/l,ヨウ化カリウムは1?200g/l,ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1?200が好ましい。染色時間は10?5000秒が好ましく,液温度は5?60℃が好ましい。染色方法としては浸漬だけでなく,ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等,任意の手段が可能である。染色操作は,本発明の延伸工程の前後いずれに置いても良い。また,適度に膜が膨潤され延伸が容易になることから,延伸工程前に液相で染色することが特に好ましい。
・・・(略)・・・
【0059】
<保護膜>
本発明の円偏光板は,偏光膜の片面に保護膜を貼り付けて用いられる。保護膜の種類は特に限定されず,セルロースアセテート,セルロースアセテートブチレート,セルロースプロピオネート等のセルロースエステル類,ポリカーボネート,ポリオレフィン,ポリスチレン,ポリエステル等を用いることができる。
・・・(略)・・・
【0063】
本発明では,円偏光板の製造工程において,含水率の低い状態で保護膜と偏光膜を貼り合わせるため,位相差フイルム(λ/4板,λ/2板)等の透湿性の低いフイルムを保護膜として直接,偏光膜に接着することができる。これにより,従来法より保護膜の使用枚数が液晶表示素子当たり2枚少ない薄型・軽量化されたタッチパネルおよび該タッチパネルを搭載した表示装置の提供が可能になる。しかしながら,偏光膜の両側を保護膜で貼りあわせた後に,位相差フィルムを粘着剤などで貼り合わせることも当然可能である。
【0064】
<接着剤>
偏光膜と保護層との接着剤は特に限定されないが,PVA系樹脂(アセトアセチル基,スルホン酸基,カルボキシル基,オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ,中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01乃至10μmが好ましく,0.05乃至5μmが特に好ましい。
【0065】
<一貫工程>
本発明において,フィルム(偏光膜)を延伸後,収縮させ揮発分率を低下させる乾燥工程を有し,乾燥後もしくは乾燥中に偏光膜の含水率を10%以下(好ましくは5%以下)にした状態で保護膜とλ/4板とを偏光膜に貼り合わせた後,後加熱工程を有することが好ましい。具体的な貼り付け方法として,乾燥工程中,両端を保持した状態で接着剤を用いてフィルムに保護膜とλ/4板を貼り付け,その後両端を耳きりする,もしくは乾燥後,両端保持部からフィルムを解除し,フィルム両端を耳きりした後,保護膜とλ/4板を貼り付けるなどの方法がある。耳きりの方法としては,刃物などのカッターで切る方法,レーザーを用いる方法など,一般的な技術を用いることができる。貼り合わせた後に,接着剤を乾燥させるため,および偏光性能を良化させるために,加熱することが好ましい。加熱の条件としては,接着剤により異なるが,水系の場合は,30℃以上が好ましく,さらに好ましくは40℃以上100℃以下,さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。これらの工程は一貫した製造ラインで行われることが,性能上及び生産効率上更に好ましい。
・・・(略)・・・
【0067】
(透光性基板)
透光性基板としては,例えば,ガラス,非晶性フィルム,ポリエーテルサルフォン,ポリカーボネート,ポリアリレート,ポリエチレンテレフタレート,セルロースエステルなどのポリマーフィルムなどが挙げられる。タッチパネルの上部基板に円偏光板を有する構成の場合にはタッチパネルの下部基板に用いる透光性基板はReが20nm以下であることが望ましい。
また,上部基板に用いる基板は良好な動作性を有するために適度な可撓性を有することが望ましい。
【0068】
(透明導電膜)
本発明のタッチパネルに用いる透明導電膜としては,表面抵抗率は,2000Ω/□以下であることが好ましく,1000Ω/□以下であることがさらに好ましい。さらに好ましくは100Ω/□以上900Ω/□以下である。
本発明では,第一の基板,第二の基板のいずれとも少なくとも片方の表面に透明導電膜が形成されている。操作者側の透明基板には,片面に透明導電膜を設け,反対面にハードコート層および反射防止膜を設けてタッチパネルとして用いることが特に好ましい。
【0069】
基板としてのフィルム上に透明導電膜を形成する場合は,ロール式の連続スパッタ装置を用いることが好ましい。インナータイプのタッチパネルで基板として円偏光板を用いる場合は,円偏光板作製において偏光膜とλ/4板との貼合せを行う前にλ/4板または他のフィルム上に透明導電膜を形成するのが,生産性上では好ましい。勿論,貼合せして円偏光板を作成した後に透明導電膜を形成してもよい。
・・・(略)・・・
【0075】
(タッチパネル,その製法,用途など)
本発明のタッチパネルを製造する際には,少なくとも片面に透明導電膜が形成された円偏光板または透光性基板を供給して,該透明導電膜上にタッチパネル用の電極および/または絶縁コートおよび/またはドットスペーサーを連続的に印刷するが,円偏光板または透光性基板を枚葉で供給してもよいが,より好ましくはをロール状態で供給し,該透明導電膜上にタッチパネル用の電極および/または絶縁コートおよび/またはドットスペーサーを連続的に印刷し,ロール状態で巻き取る印刷工程を用いることが好ましい。なお,上部基板に円偏光板を有する場合は,本発明の円偏光板を用いないと,円偏光板作製時の偏光板とλ/4板の貼合せ時に,軸合せのために,偏光板とλ/4板を枚葉に切り出してから貼りあわせる必要があり,ロール状態で印刷機に供給することができず,生産性およびコスト面で問題がある。
この印刷工程は,具体的には,スクリーン印刷を用いることが望ましいが,これに限るものではなく,印刷以外のパターン形成方法を使用しても構わない。」

オ 「【0080】
実施例1
〔I〕λ/4板の作製
・・・(略)・・・
【0092】
〔II〕透明導電膜付きλ/4板の形成
上記で作製したλ/4板の片面にSiO_(2)微粒子を30質量%含有するアクリル系のハードコート膜を3μm設け,ロール式の連続スパッタリング装置にセットして,真空槽を1.2mPaの圧力まで排気した後,Ar+O_(2)混合ガス(O_(2)=1.5%)を導入し,圧力を0.3Paに調整した後,基板温度を25℃,投入電力密度1W/cm^(2)にて,DCスパッタリングを行ない,厚み20nmの酸化スズを約10質量%含有する酸化インジウム・酸化スズ膜をハードコート膜上に形成した。
このようにして得られた透明導電膜付きλ/4板の透明導電膜側の表面抵抗率を,4端子法にて測定した結果,415Ω/□であり,波長550nmの光の透過率は酸化インジウム・酸化スズ膜のみで96%であった。
【0093】
〔III〕円偏光板の作製
(1)円偏光板Aの作製
平均重合度が1700,膜厚75μmのPVAフィルムの両面を水流2L/分で,イオン交換水にて洗浄し,エアーブローして表面水分を飛ばした後,該PVAフィルムをヨウ素1.0g/l,ヨウ化カリウム60.0g/lの水溶液に25℃にて90秒浸漬し,さらにホウ酸40g/l,ヨウ化カリウム30g/lの水溶液に25℃にて120秒浸漬後,フィルムの両面をエアーブローして,余剰水分を除去し,フィルム中の含有水分率の分布を2%以下にした状態で,図1の形態のテンター延伸機に導入した。搬送速度を5m/分として,100m送出し,40℃95%雰囲気下で5.5倍に一旦延伸した後4.0倍まで収縮させ,以降幅を一定に保ち,60℃で乾燥中に延伸膜の含水率が6%となった時点で,PVA((株)クラレ製PVA-117H)3%水溶液を接着剤として一方の面を上記で作製した透明導電膜付きλ/4板Aと,もう一方の面をハードコート膜および反射防止膜付きセルロースエステルフィルムと貼り合わせ,さらに60℃で30分間加熱した。透明導電膜付きλ/4板Aは透明導電膜と反対の面を貼合せ,反射防止膜付きセルロースエステルフィルムは反射防止膜の反対の面をケン化処理した後に貼りあわせた。この後,テンターより離脱し,幅方向から3cm,カッターにて耳きりをし,有効幅650mm,長さ100mのロール形態の円偏光板Aを作製した。
乾燥点は(c)ゾーンの中間であり,延伸開始前のPVAフィルムの含水率は30%で,乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は,0.05%未満であり,導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は,0゜だった。ここで|L1-L2|は0.7m,Wは0.7mであり,|L1-L2|=Wの関係にあった。テンター出口におけるシワ,フィルム変形は観察されなかった。
得られた円偏光板Aの吸収軸方向は,保護膜(フジタック)およびλ/4板の遅相軸に対し45゜傾斜していた。550nmで測定された偏光度は99.97%,単板透過率は42.9%であった。また,円偏光板Aの厚みは192μmであった。
・・・(略)・・・
【0095】
〔IV〕タッチパネルA?Eの作製
片面の表面抵抗率が415Ω/□の透明導電膜(ITO)が付いた0.7mm厚みのガラス板を用意し,表面に1mmピッチのドットスペーサと両端部に銀電極を印刷した。また,得られた透明導電膜付き円偏光板(ロール状)の両端に銀電極を印刷した。それぞれの基板には銀電極印刷前に,透明導電性膜と銀電極が接触してはいけないところに絶縁コート膜を印刷した。銀電極および絶縁コートはアライメント機構付きロール式連続スクリーン印刷機にて印刷したのち,連続で硬化を行った。銀電極を形成した透明導電膜付き円偏光板(ロール状)は,タッチパネルのサイズに打ち抜かれ,上記透明導電ガラス板と,透明導電膜が対向するように接着し,同時にフレキシブル電極を取り付けた。この際,両基板の周囲に100μm厚の絶縁性貼り合せ剤を挟んだ。このようにしてタッチパネルA?Eを完成した。
【0096】
〔V〕タッチパネル付き半透過型液晶表示装置A?Eの作製
半透過型液晶セルを用意し,背面面側にタッチパネル部に用いたものと同じ円偏光板を貼合せ,その後面にバックライトを配置し,前面側に上記で作製したタッチパネルA?Eをガラス基板が液晶セル上にくるように取り付けた。なお,半透過型液晶表示装置Eは,比較用である。」

カ 「【図面の簡単な説明】
・・・(略)・・・
【図12】本発明のタッチパネル付き液晶表示装置を模式的に示す概略断面図である。
・・・(略)・・・
【符号の説明】
・・・(略)・・・
201 バックライト
202 円偏光板
203 液晶セル
204 透光性基板
205 透明導電膜
206 透明導電膜
207 円偏光板
208 ハードコート膜
209 反射防止膜」

キ 「【図12】



(2)甲1発明
甲第1号証には,図12に示されるタッチパネル付き液晶表示装置に関する実施例として,次のタッチパネル付き液晶表示装置の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)
「 λ/4板の片面にSiO_(2)微粒子を30質量%含有するアクリル系のハードコート膜を3μm設け,厚み20nmの酸化スズを約10質量%含有する酸化インジウム・酸化スズ膜をハードコート膜上に形成して,透明導電膜付きλ/4板を得て,
PVAフィルムをヨウ素1.0g/l,ヨウ化カリウム60.0g/lの水溶液に25℃にて90秒浸漬し,さらにホウ酸40g/l,ヨウ化カリウム30g/lの水溶液に25℃にて120秒浸漬後,
フィルムの両面をエアーブローして,余剰水分を除去し,
フィルム中の含有水分率の分布を2%以下にした状態で,5.5倍に一旦延伸した後4.0倍まで収縮させ,以降幅を一定に保ち,
60℃で乾燥中に延伸膜の含水率が6%となった時点で,
PVA((株)クラレ製PVA-117H)3%水溶液を接着剤として一方の面を透明導電膜付きλ/4板と,もう一方の面をハードコート膜および反射防止膜付きセルロースエステルフィルムと貼り合わせ,さらに60℃で30分間加熱して,円偏光板を作製し,
透明導電膜付き円偏光板(ロール状)の両端に銀電極を印刷し,銀電極を形成した透明導電膜付き円偏光板(ロール状)は,タッチパネルのサイズに打ち抜かれ,透明導電ガラス板と,透明導電膜が対向するように接着し,同時にフレキシブル電極を取り付けて,タッチパネルを完成し,
半透過型液晶セルを用意し,背面面側にタッチパネルに用いたものと同じ円偏光板を貼合せ,その後面にバックライトを配置し,前面側に前記タッチパネルをガラス基板が液晶セル上にくるように取り付けることによって作製される
タッチパネル付き半透過型液晶表示装置」

2 甲第2号証?甲第4号証の記載事項
(1)甲第2号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には,次の事項が記載されている。
ア 「2.特許請求の範囲
(1) ポリビニルアルコールの一軸延伸フィルムを基材とし,沃素又は二色性色素を偏光素子とする偏光フィルムにおいて,ポリビニルアルコールが少なくとも2500の重合度を有するポリビニルアルコールであることを特徴とする偏光フィルム。
(2) 少なくとも2500の重合度を有するポリビニルアルコールを濃度が2?35重量%になるよう溶剤に溶解し,得られたポリビニルアルコール溶液からフィルムを形成し,得られたフィルムを一軸延伸して延伸フィルムを得るに際し,延伸に先立つ任意の工程,延伸工程,あるいは延伸後の任意の工程において偏光素子として沃素又は二色性色素を含有させることを特徴とする偏光フィルムの製造法。
(3) 延伸後のフィルムを熱処理する請求項2に記載の偏光フィルムの製造法。」

イ 「(産業上の利用分野)
本発明は,偏光フィルム及びその製造法に関し,さらに詳しくは高重合度のポリビニルアルコール(以下PVAという。)の一軸延伸フィルムを基材とし,耐熱性並びに耐湿熱性が著しく改善され,しかも光学特性に優れた偏光フィルム及びその製造法に関する。
(従来の技術)
従来,偏光フィルムとしては,沃素や二色性色素を吸着させた一軸延伸PVAフィルムが知られている。この偏光フィルムは,基材フィルムとしてのPVAフィルムが一般に重合度2000以下の低重合度PVAからなっている。この偏光フィルムは,電卓,時計,ワードプロセッサ,液晶プリンター,液晶カラーテレビ,計器類,自動車用インスツルメントパネル等の液晶ディスプレイの構成要素として,あるいはガラス等に貼付したり,合わせガラスの間に挿入したりしてサングラス,スキー用ゴーグル等の防眩用フィルムとして広く用いられている。しかし,この偏光フィルムは偏光度は優れているものの,基材が親水性高分子であるために耐水性,耐湿熱性に乏しく,また,耐熱性に欠けるという欠点があった。したがって,この偏光フィルムは高温多湿又は高温に曝されると,偏光度が低下し易いものであった。そして,電子工業の発展と共に液晶表示装置に使用される範囲が拡大し,それに伴い,偏光フィルムにも,偏光度や透過度といった光学的特性に加えて耐水性,耐熱性,耐湿熱性等が良好であることが要求されるに至っている。
(発明が解決しようとする課題)
このような状況のもとに耐熱性,耐湿熱性が改良されたものとして,ポリエステルに二色性色素を練り込み,溶融押出しし,これを延伸して得られる一軸延伸ポリエステルフィルム(例えば,特開昭58-68008号公報,同58-124621号公報,同60-125804号公報)が提案されている。しかし,このものは耐熱性,耐湿熱性はPVA系偏光フィルムより優るものの,偏光度が不十分であり,PVA系偏光フィルムに比べてあまり使用されていないのが現状である。
したがって,本発明は,上記のような課題を解決し,耐熱性並びに耐湿熱性が改善され,しかも偏光度,透過度等の光学的特性に優れた偏光フィルム及びその製造法を提供することを目的とするものである。」(1頁右下欄2行?2頁右上欄7行)

ウ 「(課題を解決するための手段)
本発明者らは,このような状況のもとに鋭意研究を重ねた結果,高重合度のPVAからなる一軸延伸フィルムを基材フィルムとすることにより上記の目的を達成しうることを見出し,本発明に到達したものである。
すなわち,本発明の偏光フィルムは,PVAの一軸延伸フィルムを基材とし,沃素又は二色性色素を偏光素子とする偏光フィルムにおいて,PVAが少なくとも2500の重合度を有するPVAであることを特徴とする。
・・・(略)・・・
本発明におけるPVAは上記のような高い重合度を有するので,本発明の偏光フィルムは,従来のPVA偏光フィルムの致命的な欠点であった耐熱性及び耐湿熱性が改善された極めて有用なフィルムである。しかも,一方向に高度に延伸することができ,そのため沃素及び二色性色素の配向性がよくなるためか,偏光度及び透過度といった光学的特性にも優れる。
偏光フィルムにおいては,透過度と偏光度とは相反する関係にあり,透過度と偏光度は偏光素子による染色度合によって調節される。偏光フィルム中の偏光素子の濃度が高い程,フィルムの透過度は低くなり,一方,偏光度は高くなって最高値は100%になる。これに対して,フィルム中の偏光素子の濃度が低い程,透過度は高くなり,一方,偏光度は低くなる。性能のよい偏光フィルムでは透過度と偏光度が揃って高く,透過度と偏光の値の理想的な組み合わせば,それぞれ50%と100%である。本発明の偏光フィルムは,例えば透過度が42?45%のときに,偏光度は100?98%,さらに,好ましくは透過度が44?48%のときに,偏光度は100?99%である。
また,本発明におけるPVAは,ケン化度が少なくとも95モル%,特に少なくとも99モル%であることが好ましい。」(2頁右上欄8?18行,同頁左下欄19行?3頁左上欄3行)

エ 「実施例3
重合度4980,ケン化度99.8%のPVAをPVA濃度が7重量%になるようDMSO/水=95/5(重量比)の混合溶剤に80℃で加温溶解し,PVA溶液を作成した。この溶液を20℃でバーコータを用いて厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(以下,PETという)フィルムの上に塗布し,メタノール浴中に10分間浸漬してフィルム化し,室温で自然乾燥し,PVAフィルムを得た。次いで,PETフィルムからPVAフィルムを剥離し,このPVAフィルムを20℃の沃素/沃化カリウム溶液(0.05重量%/0.25重量%)中に5分間浸漬し,同溶液中で9倍に一軸延伸した後,3重量%のホウ酸浴に室温で15分間浸漬し,自然乾燥後,65℃で熱処理した。得られた偏光フィルム(厚み7μm)の透過度は44.1%,偏光度は100%であった。」(6頁右下欄6行?7頁左上欄2行)

オ 「(発明の効果)
本発明の偏光フィルムは,高い重合度のPVAからなるので,従来のPVA偏光フィルムの本質的欠点であった耐熱性及び耐湿熱性が著しく改善され,さらに優れた透過度,偏光度を有する。また,上記のように,高い重合度のPVAからなり,また,有機溶剤が使えるので,分散染料も使用可能であって,染料の選択範囲が広がる。したがって,偏光フィルムとしての有用性を著しく向上させるものである。
かかる本発明の偏光フィルムは,OA端末ディスプレイ,液晶テレビや耐熱性,耐湿熱性が厳しく要求される自動車用のインスッルメントパネル,計測器等の液晶ディスプレイの他,パネル写真のフィルター,サングラス,住宅又はビルの窓,あるいは各種センサー等幅広い分野に活用できる。
また,本発明の製造法によれば,商業的に入手可能な重合度が2500以上のPVAを用いるので,従来のPVAフィルムに比べると,高い延伸倍率で延伸することができ,光学的特性,耐熱性ならびに耐湿熱性に優れた偏光フィルムを生産性よく製造することが可能である。」(7頁左下欄16行?同頁右下欄17行)

(2)甲第3号証の記載事項
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証には,次の事項が記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,液晶表示装置の偏光板を構成する部材として使用することのできる偏光フィルムの製造法に関する。
背景技術
[0002] 液晶表示装置(LCD)はその開発初期の頃,電卓および腕時計等の小型機器で使用されていたが,近年ではノートパソコン,液晶モニター,液晶カラープロジェクター,液晶テレビ,車載用ナビゲーションシステム,携帯電話,屋内外で用いられる計測機器等の広い範囲で使用されるようになっている。一方で,特に液晶テレビ等の用途においては,表示品質の向上,例えばコントラストの向上がますます求められており,LCDの部材の1つである偏光板に対しても,偏光性能の向上が強く求められている。
[0003] 従来一般的に使用されている偏光板は,ポリビニルアルコール(以下,PVAと称することがある)からなるフィルム原反に,一軸延伸,ヨウ素や二色性染料による染色処理,ホウ素化合物による固定処理等を施し,得られた偏光フィルムの片面または両面に三酢酸セルロースフィルムや酢酸・酪酸セルロースフィルム等の保護膜を貼り合わせた構成を有している。このような偏光板の偏光性能を向上させる手法として,原料であるPVAの構造を改良する手法,PVAフィルムの物性を制御する方法,偏光板の製造条件を工夫する方法等,様々な手法が提案されており,LCDのコントラスト向上に寄与してきた。
[0004] 例えば特許文献1では,2500以上,好ましくは6000?10000の重合度を有するPVAからなる偏光フィルムが光学特性に優れていることが記載されている。重合度の高いPVAを用いることは偏光性能の向上には有利な手法であるが,工業的な実施は困難であった。
[0005] また,偏光性能を向上させる別の方法として,例えば特許文献2では,原反フィルムとして,熱水中での完溶温度(X)と平衡膨潤度(Y)との関係が下式で示される範囲であるPVA系フィルムを用いる偏光フィルムの製造方法が記載されている。
Y > -0.0667X+6.73 ・・・・(I)
X ≧ 65 ・・・・(II)
しかしながら,上記の発明に使用されるPVAの重合度は好ましくは3500?5000の範囲であり,該製造方法をそのまま高重合度PVAに適用しても,後述する比較例に示されるように,得られる偏光フィルムの偏光性能が充分でないことが判明した。すなわち,高重合度のPVAからなる偏光フィルムを工業的に製造するには,PVAの構造,PVAフィルムの物性,偏光フィルムの製造条件等に関する知見を総動員して,新たな製造法を見出すことが必要であった。
・・・(略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0007] そこで,本発明の目的は,高重合度のPVAからなるフィルムを,高い偏光性能を有する偏光フィルムに加工することのできる,偏光フィルムの製造法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 発明者らは,PVAの構造およびPVAフィルムの物性,さらには偏光フィルムの製造条件に関する知見を最大限に生かして検討を行った。その結果,重合度が5000以上のPVAを製膜して得られる,膨潤度がA(%)であるフィルム原反を,2.0?2.9倍に湿式延伸して,膨潤度がB(%)である延伸フィルムを得る工程を含む偏光フィルムの製造法であって,上記AとBとが下記式(1)および(2)を満足することにより,初めて本発明の効果が発現することを見出した。
200 ≦ A ≦ 240 (1)
A+20 ≦ B ≦ A+35 (2)
・・・(略)・・・
[0012] 本発明は,上記の製造法によって得られる,透過率が43.0%以上,かつ偏光度が99.97%以上である偏光フィルムをも包含する。
発明の効果
[0013] 本発明の製造法により,高重合度のPVAからなるフィルムを,高い偏光性能を有する偏光フィルムに加工することができ,高い偏光性能を有する偏光フィルムの工業的な生産が可能となる。」

イ 「発明を実施するための形態
[0014] 以下に,本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるPVAの重合度は,本発明の目的とする良好な偏光性能に対応するため,5000以上であることが必要であり,5500以上が好ましく,6000以上がより好ましい。PVAの重合度が5000未満であると,高い偏光性能を発現することが困難となる。PVAの重合度の上限としては特に制限はないが,高重合度になるほどPVAの生産性が低下するので,工業的な観点から10000以下であることが好ましい。なお,本発明でいうPVAの重合度は,後述する実施例に記載の方法にしたがって測定した重合度(粘度平均重合度)を意味する。
[0015] また,PVAのケン化度は,99モル%以上であることが好ましく,99.8モル%以上がより好ましい。PVAのケン化度が99モル%未満であると,後述する偏光フィルムの製造工程でPVAが溶出し易くなり,溶出したPVAがフィルムに付着して偏光フィルムの性能を低下させるおそれがある。
・・・(略)・・・
[0025] フィルム原反の膨潤度Aは,200?240%であることが必要であり,205?235%が好ましく,210?230%がより好ましい。膨潤度Aが200%未満であると,延伸時の張力が大きくなりすぎて,充分な延伸を行うことが困難となる。また,膨潤度Aが240%を超えると,吸水性が高いために,後述の偏光フィルムの製造工程においてフィルムにしわや端部カールが発生し易くなり,延伸時の破断の原因となる。膨潤度Aを所定の範囲に制御するためには,例えば,製膜後のフィルム原反を熱処理する際の温度や時間を調整すればよい。フィルム原反の膨潤度Aは,実施例の項目において後述する方法により測定することができる。
・・・(略)・・・
[0031] 上記の延伸フィルムの膨潤度Bは,下記式(2)を満足する必要があり,下記式(2’)を満足することが好ましく,下記式(2”)を満足することがより好ましい。
A+20 ≦ B ≦ A+35 (2)
A+20 ≦ B ≦ A+33 (2’)
A+20 ≦ B ≦ A+30 (2”)
[0032] 延伸倍率を制御することにより偏光性能が向上する理由は明確ではないが,以下のように予想される。すなわち,延伸倍率が低すぎる場合,延伸フィルム中に微結晶が壊れずに残存する。このとき,BはA+20よりも小さくなり,後の延伸において延伸倍率を上げることができず,得られる偏光フィルムの偏光性能が低くなる。また,延伸倍率が高すぎる場合も,PVAの配向結晶化が進むため,やはりBはA+20よりも小さくなり,後の延伸において延伸倍率を上げることができず,得られる偏光フィルムの偏光性能が低くなる。一方,例えば延伸するときの浴の温度が高すぎると,BはA+35よりも大きくなる。この場合,延伸中にフィルム内の結晶の破壊が進行し,後の延伸で十分な張力をかけて延伸することが困難になり,得られる偏光フィルムの偏光性能が低くなる。
[0033] なお,延伸フィルムの膨潤度Bは,230?265%であることが好ましい。膨潤度Bを所望の範囲に制御するためには,上記のように延伸倍率や湿式延伸する際の水または水溶液の温度を調整すればよい。延伸フィルムの膨潤度Bは,実施例の項目において後述する方法により測定することができる。
・・・(略)・・・
[0040] こうして得られた偏光フィルムは,偏光板等の用途に供するために優れた偏光性能を有していることが好ましい。すなわち,偏光フィルムの透過率は好ましくは43.0%以上であり,偏光度は好ましくは99.97%以上(より好ましくは99.98%以上)である。」

ウ 「[0049][実施例1]
重合度5800,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,120℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,230%であった。
[0050] 次に,上記のフィルム原反を流れ方向11cm×幅方向10cmにカットし,流れ方向を延伸方向としてチャック間4cmの延伸治具に取り付け,30℃の純水に1分間浸漬し,続けて,ヨウ素を0.03質量%,ヨウ化カリウムを3質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)に浸漬し,0.13m/minの速度で2.6倍に延伸して,ヨウ素を吸着させた。この延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,260%であった。
[0051] 続けてこの延伸フィルムを,ホウ酸を4質量%,ヨウ化カリウムを6質量%の割合で含有する延伸液(温度57.5℃)に浸漬し,0.13m/minの速度で2.3倍に延伸した後,延伸方向を固定して50℃で4分間乾燥して偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.99%であり,偏光性能が良好な偏光フィルムが得られた。
[0052][実施例2]
重合度5800,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,115℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,240%であった。
[0053] 次に,実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,260%であった。
[0054] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.99%であり,偏光性能が良好な偏光フィルムが得られた。
[0055][実施例3]
重合度9100,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み20μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,110℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,230%であった。
[0056] 次に,延伸倍率を2.5倍としたこと以外は実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,255%であった。
[0057] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.99%であり,偏光性能が良好な偏光フィルムが得られた。
[0058][実施例4]
重合度5200,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,110℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,205%であった。
[0059] 次に,実施例3と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,235%であった。
[0060] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.98%であり,偏光性能が良好な偏光フィルムが得られた。
[0061][実施例5]
重合度5500,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み30μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,130℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,215%であった。
[0062] 次に,実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,235%であった。
[0063] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.99%であり,偏光性能が良好な偏光フィルムが得られた。
[0064][比較例1]
重合度4800,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する6.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,120℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,220%であった。
[0065] 次に,延伸倍率を2.7倍としたこと以外は実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,245%であった。
[0066] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.92%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。
[0067][比較例2]
重合度5800,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,140℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,195%であった。
[0068] 次に,実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,220%であった。
[0069] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.92%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。
[0070][比較例3]
重合度5800,ケン化度99.8モル%のPVA100質量部と,可塑剤としてグリセリン12質量部とを含有する5.5質量%PVA水溶液を,60℃の金属ロール上に流延し,60分乾燥して,厚み40μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを金属枠に固定し,110℃で3分間熱処理をした。熱処理後のフィルム原反の膨潤度Aを上記(2)に記載した方法で測定したところ,250%であった。
[0071] 次に,実施例1と同様にして,上記のフィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,280%であった。
[0072] 続けて,実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.87%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。
[0073][比較例4]
実施例1で得られたフィルム原反について,延伸倍率を1.7倍としたこと以外は実施例1と同様にして,フィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,240%であった。
[0074] 続けて,延伸倍率を3.5倍としたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.90%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。
[0075][比較例5]
実施例1で得られたフィルム原反について,延伸倍率を4.2倍としたこと以外は実施例1と同様にして,フィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,240%であった。
[0076] 続けて,延伸倍率を1.4倍としたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.80%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。
[0077][比較例6]
実施例1で得られたフィルム原反について,延伸倍率を1.2倍としたこと以外は実施例1と同様にして,フィルム原反を延伸しながらヨウ素を吸着させた。得られた延伸フィルムの膨潤度Bを上記(3)に記載した方法で測定したところ,230%であった。
[0078] 続けて,延伸倍率を4.6倍としたこと以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。この偏光フィルムの透過度および偏光度を,上記(4)および(5)に記載した方法で測定したところ,それぞれ44.0%,99.40%であり,偏光フィルムの偏光度が若干不足していた。そこで,偏光度を改善するために延伸倍率の目標値を4.6倍から5.0倍に変更したところ,延伸切れが発生して偏光フィルムを得ることができなかった。
[0079] 上記の結果をまとめて表1に示す。
[0080] [表1]



エ 「請求の範囲
[請求項1] 重合度が5000以上のポリビニルアルコールを製膜して得られる,膨潤度がA(%)であるフィルム原反を,2.0?2.9倍に湿式延伸して,膨潤度がB(%)である延伸フィルムを得る工程を含む偏光フィルムの製造法であって,上記AとBとが下記式(1)および(2)を満足することを特徴とする,偏光フィルムの製造法。
200 ≦ A ≦ 240 (1)
A+20 ≦ B ≦ A+35 (2)
[請求項2] 前記フィルム原反をヨウ素-ヨウ化カリウム水溶液中で湿式延伸する,請求項1に記載の偏光フィルムの製造法。
[請求項3] 前記フィルム原反が,製膜後に115?130℃で熱処理されて得られたものである,請求項1または2に記載の偏光フィルムの製造法。
[請求項4] 前記湿式延伸する工程に続いて,得られた延伸フィルムをさらにホウ酸水溶液中で3倍以下に延伸する工程を含む,請求項1?3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造法。
[請求項5] 請求項1?4のいずれか1項に記載の製造法によって得られる,透過率が43.0%以上,かつ偏光度が99.97%以上である偏光フィルム。」

(3)甲第4号証の記載事項
本件優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証には,次の事項が記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,セルロースエステルフィルム,それを用いた横電界駆動式表示装置用偏光板及び横電界駆動式表示装置に関する。
・・・(略)・・・
発明の開示
[0007] 本発明は,上記課題に鑑みなされたものであり,その目的は,偏光板の寸法安定性,コーナームラ(光漏れ),平面性に優れ,かつ湿度変動時のリターデーション安定性が高いセルロ-スエステルフィルム,それを用いた視野角安定性が高い偏光板及びIPS,FFS等の横電界駆動式表示装置を提供することにある。
本発明の上記目呈を達成するための態様の一つは,下記一般式(1)または(2)で表されるポリエステルを含有するセルロースエステルフィルムであって,常温常湿(23℃,55%RH)における面内のリターデーション(Ro)が0?5nm,厚み方向のリターデーション(Rt)が-20?10nmであることを特徴とするセルロースエステルフィルムにある。」
(当合議体注:「目呈」は「目的」の誤記である。)

イ 「[0261] (偏光板)
本発明の偏光板について述べる。
[0262] 本発明のセルロースエステルフィルムは,偏光子の少なくとも一方の面に偏光板保護フィルムとして好ましく用いられ,これを用いた偏光板は,本発明のセルロースエステルフィルムがセル側に配置されるように貼り付けられることが好ましく,偏光子の両面に用いてもよい。
・・・(略)・・・
[0265] (エチレン変性ポリビニルアルコール)
本発明においては,偏光子としてエチレン変性ポリビニルアルコールを延伸,染色したものが好ましく用いられる。特に,エチレン単位の含有量1?4モル%,重合度2000?4000,けん化度99.0?99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。中でも熱水切断温度が66?73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。また,フィルムのTD方向に5cm離れた二点間の熱水切断温度の差が1℃以下であることが,色斑を低減させる上でさらに好ましく,さらにフィルムのTD方向に1cm離れた二点間の熱水切断温度の差が0.5℃以下であることが,色斑を低減させるうえでさらに好ましい。
[0266] またフィルムの膜厚が5?20μmであることが色斑を低減させる上えで特に好ましい。
・・・(略)・・・
[0286] 一軸延伸は,湿式延伸法または乾熱延伸法が使用でき,ホウ酸水溶液等の温水中(前記染料を含有する溶液中や後記固定処理浴中でもよい)または吸水後のエチレン変性PVAフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は,特に限定されず,エチレン変性PVAフィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30?90℃が好ましく,また乾熱延伸する場合は50?180℃が好ましい。また一軸延伸の延伸倍率(多段の一軸延伸の場合には合計の延伸倍率)は,偏光子の偏光性能の点から4倍以上が好ましく,特に5倍以上が最も好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが,8倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後のフィルムの厚さは,2?20μmが好ましく,5?15μmがより好ましい。」

ウ 「実施例
[0294] 以下,実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されない。なお,特に断りない限り,実施例中の「%」は「質量%」を表す。
[0295] 実施例
・・・(略)・・・
[0305] (偏光子1型の作製)
エチレン単位の含有量2.1モル%,けん化度99.92モル%,重合度3000のエチレン変性ポリビニルアルコール100質量部に,グリセリン10質量部,水200質量部を含浸させ,これを溶融混練し,脱泡した後,Tダイから金属ロールに溶融押出し,乾燥させて膜厚40μmのエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを得た。
[0306] 得られたエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを予備膨潤,染色,一軸延伸,固定処理,乾燥,熱処理の順番で連続的に処理して偏光子1型を作製した。すなわち,前記エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に60秒間浸して予備膨潤し,ホウ酸濃度40g/リットル,ヨウ素濃度0.4g/リットル,ヨウ化カリウム60g/リットルの35℃の水溶液中に2分間浸した。続いて,ホウ酸濃度4%の55℃の水溶液中で一軸延伸(延伸倍率は膜厚が5?25μmになるように変えた)を行い,ヨウ化カリウム濃度60g/リットル,ホウ酸濃度40g/リットル,塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。この後,エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを取り出し,常湿下,40℃で熱風乾燥し,さらに100℃で5分間熱処理を行った。
[0307] 得られた偏光子1型の透過率は43%,偏光度は99.9%であった。
・・・(略)・・・
[0309] (偏光板1?30,36?39の作製)
上記セルロ-スエステルフィルム1?30を40℃の2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し,3分間水洗して鹸化処理層を形成し,アルカリ処理フィルムを得た。次に上記作製した偏光子1型の両面にこのアルカリ処理フィルムを,完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ,セルロ-スエステルフィルム1?30,36?39からそれぞれ偏光板1?30,36?39を作製した。
・・・(略)・・・
[0312] 〔評価〕
得られたセルロ-スエステルフィルム1?39について下記の評価を行った。
・・・(略)・・・
[0327] [表6]



第5 対比・判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明とを対比すると,以下のとおりとなる。
ア 偏光膜
甲1発明の「PVAフィルムをヨウ素1.0g/l,ヨウ化カリウム60.0g/lの水溶液に25℃にて90秒浸漬し,さらにホウ酸40g/l,ヨウ化カリウム30g/lの水溶液に25℃にて120秒浸漬後,フィルムの両面をエアーブローして,余剰水分を除去し,フィルム中の含有水分率の分布を2%以下にした状態で,5.5倍に一旦延伸した後4.0倍まで収縮させ,以降幅を一定に保」つことにより形成されるフィルムは,「λ/4板」並びに「ハードコート膜および反射防止膜付きセルロースエステルフィルム」と合わせて「円偏光板」を構成するから,技術常識を踏まえれば,偏光膜である。
また,甲1発明の「PVA」は,ポリビニルアルコール系樹脂のことである(甲第1号証の段落【0007】の記載からも確認される事項である。)。また,「ヨウ素」及び「ヨウ化カリウム」は二色性物質であるから,「PVAフィルム」を「ヨウ素」及び「ヨウ化カリウム」の水溶液に「浸漬し」た後に,「5.5倍に一旦延伸した後4.0倍まで収縮させ,以降幅を一定に保」つことは,当該フィルムを染色かつ延伸することにより,二色性物質を配向させることといえる(甲第1号証の段落【0054】の記載からも確認される事項である。)。
そうしてみると,甲1発明の「PVAフィルムをヨウ素1.0g/l,ヨウ化カリウム60.0g/lの水溶液に25℃にて90秒浸漬し,さらにホウ酸40g/l,ヨウ化カリウム30g/lの水溶液に25℃にて120秒浸漬後,フィルムの両面をエアーブローして,余剰水分を除去し,フィルム中の含有水分率の分布を2%以下にした状態で,5.5倍に一旦延伸した後4.0倍まで収縮させ,以降幅を一定に保」つことにより形成されるフィルムと本件発明1の「偏光膜」は,「二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなり」という点で共通する。

イ 位相差膜
甲1発明の「λ/4板」は「位相差膜」に含まれるものである。そして,当該「λ/4板」は,「透明導電膜付きλ/4板」とした上で,上記アで検討した「PVAフィルム」を染色かつ延伸したフィルムの一方の面に,「PVA((株)クラレ製PVA-117H)3%水溶液を接着剤」によって「貼り合わせ」られている。そうしてみると,上記アで述べた対応関係も踏まえると,甲1発明の「λ/4板」と本件発明1の「位相差膜」は,「偏光膜の一方の面に接着された」という点で共通する。

ウ 容量型タッチパネル積層体
甲1発明の「タッチパネル」は,複数の「膜」や「板」から構成されているから,タッチパネル積層体である。したがって,甲1発明の「タッチパネル」は,本件発明1の「タッチパネル積層体」に相当する。

エ 光学的表示パネル
甲1発明の「半透過型液晶セル」は,光学的表示パネルに含まれる。そして,当該「半透過型液晶セル」は,「前面側に前記タッチパネルをガラス基板が液晶セル上にくるように取り付け」られる。したがって,上記ウで述べた相当関係を踏まえると,甲1発明の「半透過型液晶セル」と本件発明1の「光学的表示パネル」は,「タッチパネル積層体に」「接合された光学的表示パネル」である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)を踏まえると,本件発明1と甲1発明は,次の構成で一致する。
「 二色性物質を配向させたポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光膜と,
前記偏光膜の一方の面に接着された位相差膜と,
タッチパネル積層体と,
前記タッチパネル積層体に接合された光学的表示パネルと,
を少なくとも備える
光学的表示装置。」

イ 相違点
本件発明1と甲1発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1の「偏光膜」は,「厚みが10μm以下であ」り,「光学特性が,Tを単体透過率(%),Pを偏光度(%)としたとき,次式P>?(10^(0.929T?42.4)?1)×100(ただし,T<42.3),およびP≧99.9(ただし,T≧42.3)の条件を満足する」のに対して,甲1発明の「偏光膜」は,これらの特定がなされていない点。
(当合議体注:以下,相違点1に係る本件発明1の光学特性を具備する偏光フィルムを,「相違点1に係る偏光フィルム」という。)

(相違点2)
本件発明1の「タッチパネル積層体」は「容量型」であり,「位相差膜に接着された」ものであるのに対して,甲1発明の「タッチパネル」は容量型であるとは特定されておらず,また,「タッチパネル」の一部をなす「透明導電膜」は,「λ/4板」上の「ハードコート膜上に形成」されるものであるから,「タッチパネル」と「λ/4板」は,接着されたものではない点。

(相違点3)
本件発明1の「光学的表示パネル」は,「タッチパネル積層体に光学的に透明な粘着剤層を介して接合され」るのに対して,甲1発明は,「タッチパネル」と「液晶セル」の取り付け手段が不明である点。

(3)相違点についての判断
当合議体は,平成29年8月10日付けの取消理由通知書において,前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であることを前提として,特許法29条2項の取消の理由を通知した(前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であるという特許異議申立人の主張が正しいという前提で,取消の理由を通知した。)。
これに対して,特許権者は,平成29年10月16日付け意見書及び同年12月27日付け上申書において,概略,特許異議申立人が周知例として提出した甲第2号証?甲第4号証は,前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であることを示すものではないと主張している。
そこで,甲第2号証?甲第4号証に記載された事項について検討すると,以下のとおりである。

ア 甲第2号証について
甲第2号証には,実施例3(6頁右下欄6行?7頁左上欄2行)として,厚みが7μmで,透過度は44.1%,偏光度は100%である偏光フィルムが得られたことが記載されている。これらの値は,本件発明1に係る上記の条件を,一応満足する。
しかしながら,甲第2号証に記載された発明の技術的意義は,甲第2号証の「従来の技術」及び「発明が解決しようとする課題」,並びに,「特許請求の範囲」及び「課題を解決するための手段」(前記「第4」1(1))に示されるように,耐熱性及び耐湿熱性が改善され光学特性に優れた偏光フィルム並びにその製造方法を提供するために,少なくとも2500の重合度のポリビニルアルコールを材料として用いたことにある。そして,甲第2号証の出願時における技術水準を踏まえた当業者ならば,甲第2号証に実施例3として記載されたポリビニルアルコールの重合度及び製造方法によって製造された偏光フィルムの偏光度が,どの程度の値となるかを心得ている。
そうしてみると,甲第2号証の実施例3の記載に接した当業者ならば,そこに記載された「100%」は「100.0%」ではなく,例えば,小数1位が四捨五入された「100%」であると理解し,そして,甲第2号証の実施例3の「100%」という記載は,理想的な最大値(100%)に近い偏光度の偏光フィルムが得られたことを示すことによって甲第2号証に記載された発明の技術的意義を強調した記載であると理解するといえる。この点は,他の実施例においては偏光度が小数1位まで記載され,実施例3のみが「100%」と記載されている点からみても明らかである。
したがって,甲第2号証は前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であることを示す文献であるとはいえない。

イ 甲第3号証について
甲第3号証には,実施例3として,透過度及び偏光度がそれぞれ44.0%及び99.99%である偏光フィルムが得られたことが記載されている(段落[0057]を参照。)。また,当該偏光フィルムは,厚み20μmのフィルム原反を総延伸倍率5.75(=2.5×2.3)で延伸して形成されているから(段落[0056],[0051]を参照。),自由端延伸であれば,8.3μm,固定端延伸であれば3.5μmの厚みであると推認される。そうしてみると,甲第3号証の実施例3の偏光フィルムは,相違点1に係る条件を,一応満足する。
しかしながら,甲第3号証に記載された発明の技術的意義は,甲第3号証の「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」,並びに,「請求の範囲」及び「課題を解決するための手段」(前記「第4」1(2))に示されるように,高重合度のPVAからなるフィルムを,高い偏光性能を有する偏光フィルムに加工することを可能にするために,フィルム原反の膨潤度Aを特定の範囲として,更に,延伸フィルムの膨潤度Bを前記膨潤度Aに対して所定の関係を満足するように設計することある。そして,甲第3号証の段落[0080]の表1には,[1]ポリビニルアルコールの重合度,フィルム原反の膨潤度A,湿式延伸倍率及び延伸フィルムの膨潤度Bが[請求項1]に記載された範囲を満たした場合には,[実施例1と同様]の染色条件で透過率が一律に44.4%となり,偏光度も99.99%又は99.98%となること(実施例1?実施例5),その一方,[2]上記条件のいずれかが[請求項1]に記載された要件を満たさない場合には,「実施例1と同様」の染色条件で透過率が一律44.4%となり偏光度のみが99.40?99.92%となること(比較例1?比較例6)が開示されている。ここで,当業者ならば,偏光フィルムの透過率が染色条件以外の製造条件によっても容易に変化し得ることや,染色条件を同一として製造条件を変えた場合には透過率及び偏光度が負の相関関係で変化し,両者を同一の値に維持することは極めて困難であることを心得ている。
そうしてみると,甲第3号証の記載に接した当業者ならば,甲第3号証の実施例3に記載された透過率及び偏光度は,甲第3号証の出願時において目標とすべき透過率及び偏光度の水準を示すものであって,甲第3号証に記載された発明の技術的意義を強調するためのものと理解するにとどまるといえる。
したがって,甲第3号証は,前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であることを示す文献であるとはいえない。

ウ 甲第4号証について
甲第4号証には実施例として,膜厚40μmのエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを,膜厚が5?25μmになるように延伸倍率を変えながら一軸延伸して,偏光子1型を作製することが記載され(段落[0305],[0306]を参照。),段落[0327]の[表6]には,膜厚が10μm以下の偏光子1型を作製したことが記されている(偏光板No.9,20,22,29を参照。)。そして,段落[0307]には,「得られた偏光子1型の透過率は43%,偏光度は99.9%であった。」と記載されている。
甲第4号証に記載された様々な厚みを有する偏光子1型は,延伸倍率だけを変えて作製されたものである。ここで,当業者ならば,偏光子の膜厚を変えた場合には,透過率及び偏光度が負の相関関係で変化し,両者を同一の値に維持することは極めて困難であることを心得ている。
そうしてみると,甲第4号証の記載に接した当業者ならば,段落[0307]に記載された透過率及び偏光度が,異なる厚みを有する偏光子1型の全てについてのものであると解釈することはないといえる。そして,同段落並びに甲第4号証の他の箇所の記載を総合しても,厚みが10μm以下の偏光子の透過率及び偏光度は,明らかではない。
したがって,甲第4号証は,前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であることを示す文献であるとはいえない。

エ 以上ア?ウのとおりであるから,甲第2号証?甲第4号証に記載された事項を根拠としては,本件優先日において前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であったということはできない。また,特許異議申立ての他の証拠並びに刊行物7及び刊行物8からも,本件優先日において前記相違点1に係る偏光フィルムが周知技術であったということはできない。
したがって,本件優先日前の当業者が,甲1発明と,前記相違点1に係る偏光フィルムの周知技術を組み合わせることは,できない。

オ 以上のとおりであるから,相違点2及び相違点3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲第1号証?甲第6号証並びに刊行物7及び刊行物8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本件発明2?6,8,10,14について
本件発明1が,甲第1号証?甲第6号証並びに刊行物7及び刊行物8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから,本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに他の発明特定事項を付加した本件発明2?本件発明6,本件発明8,本件発明10,本件発明14も同様に,甲第1号証?甲第6号証並びに刊行物7及び刊行物8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 特許異議申立理由について
特許異議申立人は,甲第1号証に記載された発明において,より薄く光学特性に優れた偏光フィルムとして,甲第2号証?甲第4号証の実施例に記載された周知の偏光フィルムを採用することにより,本件発明1に到達することは容易であると主張する(特許異議申立書の23頁8行?25頁5行を参照。)。しかしながら,上記「第5」1(3)で述べたとおり,本件優先日前において前記相違点に係る偏光フィルムが周知技術であったということはできないから,特許異議申立人が主張する取消の理由を採用することはできない。

第7 むすび
したがって,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?請求項6,請求項8,請求項10,請求項14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-09 
出願番号 特願2015-78939(P2015-78939)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 佐藤 秀樹
中田 誠
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6048984号(P6048984)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 偏光膜を有する光学的表示装置  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大塚 文昭  
代理人 近藤 直樹  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 辻居 幸一  
代理人 上杉 浩  
代理人 弟子丸 健  
代理人 須田 洋之  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ