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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する B25F
管理番号 1338431
審判番号 訂正2017-390120  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-11-10 
確定日 2018-03-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4953170号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第4953170号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

本件訂正審判請求に係る特許第4953170号(以下「本件特許」という)は,平成14年2月22日に出願した特願2002-046928号の一部を平成17年7月28日に特願2005-218188号として新たに出願し,更にその一部を平成21年7月7日に特願2009-160502号として新たに特許出願したものであって,平成24年3月23日に特許権の設定登録がなされ,平成29年11月10日に本件訂正審判の請求がなされた後,同年12月15日付けで訂正拒絶理由が通知され,これに対して,平成30年1月19日に意見書が提出されたものである。


第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は,特許第4953170号の明細書,特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求めるものである。

2.訂正の内容
本件訂正の内容は,次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す)。

(1) 訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に,「前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーをハンマケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。」と記載されているのを,「前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3,4も同様に訂正する。)

(2) 訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2に,「前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーをハンマケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。」と記載されているのを,「前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3,4も同様に訂正する。)

(3) 訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0026】および【0027】に記載された「ハンマケース」を「前記ケース」及び「ケース」に訂正する。


第3 訂正拒絶理由通知の概要
当審からの平成29年12月15日付け訂正拒絶理由通知の概要は,以下のとおりである。

訂正事項1ないし3の「ハンマケース」を「前記ケース」又は「ケース」とする訂正は,「ハンマ」を削除することにより,ハンマとして用いられるケースから,ハンマ以外にも用いることができるケースとなることから,実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものである。
したがって,特許法第126条第6項の規定に適合していない。


第4 当審の判断

1.訂正事項1について
(1)訂正の目的の適否について
本件特許請求の範囲の請求項1全体をみると,「ケース」とまず書かれ,これを受けて「前記ケース」と書かれた箇所が5箇所あった上で,最後だけ「前記ケース」とされずに「ハンマケース」と記載されており,全体として用語の使用が統一されていないことが確認できるので,「ケース」あるいは「ハンマケース」のいずれかが誤った記載でることは明らかである。そして,本件訂正審判請求人は,審判請求書の(3)訂正の理由において,「『ハンマケース』は『前記ケース』の誤記」であると主張している。
これらの記載及び主張を踏まえると,「ハンマケース」が「前記ケース」の誤記であることは明らかである。
よって,訂正事項1は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる,誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項1は,上記1.の「(1)訂正の目的の適否について」で示したように,「ケース」とまず書かれ,これを受けて「前記ケース」と書かれた箇所が5箇所あった上で,最後だけ「前記ケース」とされずに「ハンマケース」と記載されており,全体として用語の使用が統一されていなかったものを,用語が統一されるよう「ハンマケース」を「前記ケース」とする訂正であるから,「ハンマケース」を本件特許請求の範囲の請求項1に記載される「ケース」を受ける「前記ケース」と訂正することは,本件特許の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものと認められる。
よって,訂正事項1は,当初明細書等に記載した範囲内の訂正であり,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
平成29年12月15日付け訂正拒絶理由にも示したとおり,「ハンマケース」を「前記ケース」とする訂正は,「ハンマ」を削除することにより,ハンマとして用いられるケースから,「ハンマ以外にも用いることができるケースとなる」ことで電動工具の種別自体が変更となり,実質上特許請求の範囲を拡張・変更するようにも思える。また,本件特許出願には,取下げられた出願を除き,本件以外に,(A)特願2002-046928号(本件特許の原出願),(B)特願2004-309445号(上記(A)の出願の一部を分割した出願),(C)特願2005-218170号(上記(A)の出願の一部を分割した出願)及び(D)特願2005-218188号(上記(A)の出願の一部を分割した出願)の関連出願がある。これらの関連出願は,いずれの特許請求の範囲にも「ハンマケース」という記載が用いられている。
これに対して本件訂正審判請求人は,平成30年1月19日の意見書で,「2)訂正拒絶理由に対する反論」の(3)において,「さらに、明細書の段落【0001】には『本発明は、作業者の腰ベルト等に掛止可能なフック部を有するインパクトドライバ及びインパクトレンチ等の電動工具に関するものである。』と記載されています(下線は審判請求人において付しました。)。・・・このように、本件明細書には、本件特許発明の対象がインパクト工具に限られないことが明記されています。」と主張している。
当該主張を踏まえると,本件特許請求の範囲の請求項1並びに請求項1を引用する請求項3及び4に係る発明は,インパクトドライバ及びインパクトレンチだけでなく,それ以外の電動工具にも用いられることから,請求項1並びに請求項1を引用する請求項3及び4に係る発明のケースは,ハンマ以外にも用いるものも含むといえ,ハンマという用語を削除して単なる「ケース」を指す「前記ケース」としたとしても,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことから,特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について
ア 本件発明
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1並びに請求項1を引用する請求項3及び4に係る発明(以下「訂正発明1」,「訂正発明3-1」及び「訂正発明4-1」という。)は,訂正特許請求の範囲に記載された請求項1,3及び4に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

イ 文献
特許第4953170号公報に参考文献として記載された文献は,以下のとおりである。
(イ-1)特開2000-334682号公報
(イ-2)特開平8-141943号公報
(イ-3)特開2001-88052号公報
(イ-4)特開2005-342890号公報
(イ-5)特開2003-245865号公報
(イ-6)特開昭64-16383号公報

ウ 判断
訂正発明1における,「ハウジングの前方に設けられ、動力伝達部を収容し、金属により構成されるケースと、前記ケースの前方より突出し、前記動力伝達部に接続される先端工具保持部と、前記ハウジングに前記ケースを設けるための締付けネジと、を有する電動工具において、前記締付けネジの頭部を覆う突出部を有し、樹脂により構成されるカバーを、前記ケースの外周に設け、前記ケースに係合し、弾性ゴムにより構成されるストッパを、前記カバーよりも前方側に設け、前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成した」との発明特定事項は,上記各文献のいずれにも記載されていない。そして,訂正発明1は,当該発明特定事項を備えることにより,締付けネジの外周を覆うカバーを,ケースの外周に設けることで,被削材に傷を付けてしまうことを防ぐことができ,作業性及び操作性に優れた安価な電動工具を提供することができる,という顕著な効果を奏する。

してみれば,訂正発明1は,上記各文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また,他に訂正発明1について特許を受けることができないとする理由を発見しない。

訂正発明3-1及び4-1は,いずれも訂正発明1を引用し,さらに特定事項を付したものであるから,訂正発明1と同様に,上記各文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできず,また,他に本件訂正発明3-1及び4-1について特許を受けることができないとする理由を発見しない。

したがって,本件訂正発明1,3-1及び4-1について,特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとはいえないから,訂正事項1は,特許法第126条第7項の規定に適合する。


2.訂正事項2について
(1)訂正の目的の適否について
本件特許請求の範囲の請求項2全体をみると,「ケース」とまず書かれ,これを受けて「前記ケース」と書かれた箇所が4箇所あった上で,最後だけ「前記ケース」とされずに「ハンマケース」と記載されており,全体として用語の使用が統一されていないことが確認できるので,「ケース」あるいは「ハンマケース」のいずれかが誤った記載でることは明らかである。そして,本件訂正審判請求人は,審判請求書の(3)訂正の理由において,「『ハンマケース』は『前記ケース』の誤記」であると主張している。
これらの記載及び主張を踏まえると,「ハンマケース」が「前記ケース」の誤記であることは明らかである。
よって,訂正事項2は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる,誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項2は,上記2.の「(1)訂正の目的の適否について」で示したように,「ケース」とまず書かれ,これを受けて「前記ケース」と書かれた箇所が4箇所あった上で,最後だけ「前記ケース」とされずに「ハンマケース」と記載されており,全体として用語の使用が統一されていなかったものを,用語が統一されるよう「ハンマケース」を「前記ケース」とする訂正であるから,「ハンマケース」を本件特許請求の範囲の請求項2に記載される「ケース」を受ける「前記ケース」と訂正することは,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものと認められる。
よって,訂正事項2は,当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項2は,上記「1.訂正事項1について」の(3)の判断と同様に,本件訂正審判請求人の平成30年1月19日の意見書の主張を踏まえると,本件特許請求の範囲の請求項2,3及び4に係る発明は,インパクトドライバ及びインパクトレンチだけでなく,それ以外の電動工具にも用いられることから,請求項2,3及び4に係る発明のケースは,ハンマ以外にも用いるものも含むといえ,ハンマという用語を削除して単なる「ケース」を指す「前記ケース」としたとしても,訂正事項2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,訂正事項2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことから,特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について
ア 本件発明
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項2並びに請求項2を引用する請求項3及び4に係る発明(以下「訂正発明2」,「訂正発明3-2」及び「訂正発明4-2」という。)は,訂正特許請求の範囲に記載された請求項2,3及び4に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

イ 文献
特許第4953170号公報に参考文献として記載された文献は,以下のとおりである。
(イ-1)特開2000-334682号公報
(イ-2)特開平8-141943号公報
(イ-3)特開2001-88052号公報
(イ-4)特開2005-342890号公報
(イ-5)特開2003-245865号公報
(イ-6)特開昭64-16383号公報

ウ 判断
訂正発明2における,「ハウジングと、前記動力伝達部を収容し、締付けネジにより前記ハウジングの第1の端部に固定される金属製のケースと、前記ハウジングの第2の端部に設けられる蓄電池と、前記ハンドル部に設けられ、作業者により操作可能なトリガスイッチと、前記ケースの前方より突出し、前記動力伝達部に接続される先端工具保持部と、を有する電動工具であって、前記締付けネジの頭部を覆う突出部を有し、樹脂により構成されるカバーを、前記ケースの外周に設け、前記ケースに係合する弾性ゴムにより構成されるストッパを、前記カバーよりも前方側に設け、前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーをハンマケースから取外すことができる」との発明特定事項は,上記各文献のいずれにも記載されていない。そして,訂正発明2は,当該発明特定事項を備えることにより,締付けネジの外周を覆うカバーを,ケースの外周に設けることで,被削材に傷を付けてしまうことを防ぐことができ,作業性及び操作性に優れた安価な電動工具を提供することができる,という顕著な効果を奏する。

してみれば,訂正発明2は,上記各文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

また,他に訂正発明2について特許を受けることができないとする理由を発見しない。

訂正発明3-2及び4-2は,いずれも訂正発明2を引用し,さらに特定事項を付したものであるから,訂正発明2と同様に,上記各文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできず,また,他に本件訂正発明3-2及び4-2について特許を受けることができないとする理由を発見しない。

したがって,本件訂正発明2,3-2及び4-2について,特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとはいえないから,訂正事項2は,特許法第126条第7項の規定に適合する。


3.訂正事項3について
(1)訂正の目的の適否について
上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため,当初明細書等の段落【0026】及び【0027】の「ハンマケース」を「前記ケース」及び「ケース」に訂正するものであり,訂正事項1及び2において既に示したとおり,本件に関し「ハンマケース」と記載した箇所の一部は,「前記ケース」又は「ケース」の誤記としたのであるから,訂正事項3も同様に誤記の訂正を目的とした訂正であることは明らかである。
よって,訂正事項3は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる,誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。

(2)新規事項の有無について
訂正事項3は,上記3.の「(1)訂正の目的の適否について」で示したように,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため,当初明細書等の段落【0026】及び【0027】の「ハンマケース」を「前記ケース」及び「ケース」に訂正するものであり,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものと認められる。
よって,訂正事項3は,当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項3は,上記「1.訂正事項1について」の(3)の判断と同様に,本件訂正審判請求人の平成30年1月19日の意見書の主張を踏まえると,本件特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は,インパクトドライバ及びインパクトレンチだけでなく,それ以外の電動工具にも用いられることから,請求項1ないし4に係る発明のケースは,ハンマ以外にも用いるものも含むといえ,ハンマという用語を削除して単なる「ケース」を指す「前記ケース」としたとしても,訂正事項3は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
よって,訂正事項3は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について
上記「1.訂正事項1について」の(4)及び「2.訂正事項2について」の(4)の判断と同様に,訂正発明1ないし4が,特許出願の際独立して特許を受けることができない理由は見いだせない。
よって,訂正事項3は,特許法第126条第7項の規定に適合するものである。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電動工具
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の腰ベルト等に掛止可能なフック部を有するインパクトドライバ及びインパクトレンチ等の電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13?図19を用いて従来の電動工具(インパクトドライバ及びインパクトレンチ)を説明する。図13は、従来の電動工具の側面図、図14は一部縦断側面図、図15はフック部の一部側面図、図16は電動工具を図14の蓄電池側から見た一部断面図、図17はフックのロック状態を示す断面図、図18はフックのロック解除状態を示す断面図、図19は従来の電動工具の使用状態を示す説明図である。
【0003】
図13?図18において、二つ割のハウジング1及びハンマケース2などの外枠を有する電動工具は、略T字形状を成しており、ハウジング1によって形成される本体胴体部1aには、駆動源であるモータ3や減速機構部4などを収容し、且つ本体胴体部1aから垂下するハンドル部1bには、モータ3に電力を供給するためのトリガスイッチ5や蓄電池6の接続端子と電気的に接続される図示しない接点などを収容している。
【0004】
また、ハウジング1に当接して配置されるハンマケース2内には、モータ3の回転動力を打撃力に変換するための打撃機構部7及び図示しないビットやレンチ等の先端工具保持部8などを収容している。このような構成において、モータ3の回転動力は、モータ3の出力軸であるピニオン3aから減速機構部4に伝達され、更に減速機構部4から打撃機構部7を介して先端工具に伝達される。
【0005】
なお、上述した減速機構部4は、ハウジング1内に回転止めを有し支持されている固定歯車支持治具4a、固定歯車4b、遊星歯車4c、スピンドル9とを有し、且つスピンドル9に支持される遊星歯車4cの回転軸となるニードルピン4dとから構成されており、また打撃機構部7は、スピンドル9と、スピンドル9に形成したカム溝9aに挿入されるスチールボール10(鋼球)を介して回転可能で且つ回転軸の軸方向に移動可能なハンマ11と、ハンマ11に設けた複数のハンマ爪11aにより打撃され回転するアンビル爪12aを有するアンビル12と、ハンマ11をアンビル12側に常に付勢するスプリング13とから構成されている。
【0006】
このように構成された電動工具において、先端工具により締め付けられるネジ或いはナット等に与えるパルス的な衝撃(インパクト)は、トリガスイッチ5の操作によりモータ3に電力を供給し、モータ3を回転駆動させた後、このモータ3の回転動力をモータ3の先端に連結されているピニオン3aを介して遊星歯車4cに伝達し、遊星歯車4cと固定歯車4bと噛み合いによりピニオン3aの回転動力をニードルピン4dを介してスピンドル9に伝達し、スピンドル9のカム溝9aとハンマ11のカム溝11bとの間に配置されたスチールボール10を介して、スピンドル9の回転力をハンマ11に伝達し、ハンマ11とスピンドル9の遊星歯車4cとの間に配されているスプリング13によって前方(ビット側)に付勢されているハンマ11のハンマ爪11aが回転によりアンビル12のアンビル爪12aを打撃することにより発生する。
【0007】
打撃後、ハンマ11の打撃エネルギが減少しアンビル12のトルクが減少すると、ハンマ11はアンビル12から反発するため、ハンマ11はカム溝に沿って遊星歯車4c方向に移動(後退)する。その後、ハンマ11はスプリング13の圧縮力で再びアンビル12方向にカム溝に沿って押し戻され、再びスピンドル9の回転によりハンマ爪11aがアンビル爪12aを打撃する。
【0008】
このようにハンマ11の軸方向移動と回転によりアンビル12への打撃を繰り返すことで、連続的な衝撃トルクをビットやレンチ等の先端工具に与え、被削材14へのネジ締め或いはナット締め、または被削材14へのネジ緩め或いはナット緩め作業を行うことができる。
【0009】
また、上述した打撃機構部7及び減速機構部4を有する電動工具のハウジング1表面、具体的にはハウジング1の本体胴体部1a後面やハンドル部1bには、二層成形によりエラストマー15を施してある。このエラストマー15を設ける目的は、電動工具を確実に把持するための滑り止め、或いは握り心地を良くし操作性及び作業性を向上させるためであり、更には地面に落とした時の衝撃を吸収し電動工具が破損してしまうことを防いだり、傾斜面に電動工具を置いた時に傾斜に沿って電動工具が滑り落ちないようにするためである。なお、電動工具の破損や電動工具の滑り止め効果を向上させるためにエラストマー15を蓄電池収容部1cの周辺に施しても良い。
【0010】
また、本電動工具には、図13?図18に示すように作業者の腰ベルト等に電動工具本体を掛止させるため、以下に詳述する係止部材16と保持部17とストラップ部18とから構成される回動可能なフック部19が設けられている。
【0011】
フック部19は、ビット等の先端工具20を収容可能な樹脂から成る略円筒形の基端部16aを有する係止部材16と、この係止部材16の基端部16aを収容可能な貫通穴17aを有し且つハンドル部1bから蓄電池6の側面に隣接する位置まで延在する保持部17と、この保持部17内に挿通され且つ基端部16a内に設けた抜け止め部材であるナット16bに螺合して保持部17から係止部材16が抜け出てしまうことを防ぐ固定部材であるボルト21と、係止部材16を回動不能位置にロックする方向に付勢して成るスプリング或いは弾性ゴム等の弾性体22とから構成されており、略L字形を成す係止部材16の基端部16aには、枢軸23を回転軸とする円筒状の回転筒16cと、この回転筒16c上に設けられ且つ枢軸23方向に突設し且つ枢軸23の半径方向外側に突出する複数の歯を有する角度調整用ギヤ部16dと、この角度調整用ギヤ部16dの内径と略同径に突設する第1リング部16eと、この第1リング部16eの外径と同等或いはそれより小径の第2リング部16fとが設けられている。
【0012】
また、基端部16aの内部には、第2リング部16f側から挿通されるボルト21と螺合するナット16bを回転不能に収容する半六面壁形状のナット収容部16gが設けられていると共に、このナット収納部16gから第2リング部16fまでボルト21を収容するための貫通穴(ボルト穴)17aが枢軸23方向に設けられている。
また、反角度調整用ギヤ部16d側位置する回転筒16cの端面、即ち滑止部16hを有する係止部材16における回転筒16cの立ち上がり突設部には、回転筒16cの外径より大きい外径を形成するための段差部16iを設けていると共に、回転筒2cの外周には係止部材16の回動範囲を所定の角度内に規制するための回転抑止板16jを突設している。
【0013】
一方、保持部17は、ハウジング1の分割面を中心に対称型で且つその内部に基端部16aを収容するための貫通穴(円筒穴)17aを有しており、この貫通穴17aは回転筒16cを収容する回転支持穴17bと、角度調整用ギヤ部16dと噛合可能な複数の歯を有するリングギヤ部17cと、このリングギヤ部17cと溝付き頭部(ボルト頭)21aを有するボルト21との間に設けられるフック用スプリング22と当該ボルト頭21aを収容する受容穴17dとから構成されており、回転支持穴17bには、回転抑止板16jの回動範囲を所定の角度内に規制するため回転抑止板16jと当接する回転抑止板受容溝17eが設けられている。
【0014】
また、ストラップ部18は、保持部17の上方に設けられており、円筒穴17aに挿通する基端部16aの軸長に対して平行に設けられるストラップ用ネジ18aと、このストラップ用ネジ18aを挿通するための挿通穴18bと、この挿通穴18bからストラップ用ネジ18aが抜け出ないようにストラップ用ネジ18aと螺合するストラップ用ナット18cとから構成されており、ストラップ部18の一部にストラップ用ネジ18aが露出する切欠き部18dを設け、この切欠き部18dにストラップ18eの一端に設けた輪状部18fを挿通し、その後、輪状部18f内にストラップ用ネジ18aを挿通しストラップ用ナット18cと螺合することにより、ストラップ18eをストラップ用ネジ18aの軸部に引っ掛けることができるようになっている。なお、上述したようにストラップ部18が、保持部17の上方に設けられているため、保持部17に着脱自在に設けられている係止部材16が蓄電池6の側壁付近に隣接配置されている。
【0015】
次にハウジング1の保持部17に対する係止部材16の着脱方法について説明する。まずナット収容部16gにナット16bを挿入した状態で、保持部17の円筒穴17aに挿通し、第2リング部16fに沿って受容穴17dにフック用スプリング22を挿通させ、ボルト21の先端に設けたネジ部21bとナット16bの内部に設けたネジ部16kとを螺合させることにより、係止部材16をフック用スプリング22を介して保持部17に装着することができる。
【0016】
また、ハウジング1の保持部17に対して係止部材16を離脱させる場合には、上述した手順の逆を行えば簡単に行える構成になっている。なお、保持部17は上述したようにハウジング1の分割面を中心に対称型になっていると共に、ビット等の先端工具20を収容可能な係止部材16の形状が略直線的形状であるため、例えば作業者の利き手に応じて係止部材16を保持部17の左右どちらから挿入装着しても問題なく使用することができる。
【0017】
次に係止部材16の回動操作について図13?図18を用いて説明する。図13?図18は係止部材16が蓄電池6の側面付近に隣接配置される位置で位置決め固定されている状態を示しており、係止部材16は、フック用スプリング22の圧力が保持部内のスプリング受端面16lを支点にボルト頭21aを押し出す方向に付勢されていると共に、段差部16iが保持部17の端面17fに当接して支持されているため離脱防止が図られており、更に角度調整用ギヤ部16dがリングギヤ部17cと噛合状態に保持されているため、基端部16aの枢軸23の周方向の回転が防止され安定した位置決め固定が得られる構成になっている。なお、蓄電池6の側面付近に隣接配置される位置は、回転抑止板16jの端面が回転抑止板受容溝17eの端面に当接する位置の一つとなっているため、この位置まで係止部材16を回動させることができる構成になっている。
【0018】
この状態から係止部材16を回動操作する場合には、図13?図18に示すように、係止部材16の滑止部16hを指でつまみ枢軸23方向(図中上方)に引っ張れば基端部16aの角度調整用ギヤ部16dとリングギヤ部17cとの噛合が解除されるため、所定の角度内で係止部材16を回動させることができ、任意の位置で係止部材16を離せばフック用スプリング22の弾性力により角度調整用ギヤ部16dとリングギヤ部17cとが噛合し位置決め固定することができる構成になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、モータの回転動力を打撃力に変換するための打撃機構部及びビットやレンチ等の先端工具保持部などを収容するハンマケースは、図13?図19に示すようにハウジングと並んで電動工具の外観を構成している。
【0020】
ハンマケースはハウジングに当接し締付けネジにより取付けられている。しかし、この締付けネジの頭部がハンマケース同様に露出している。
【0021】
このため、図19に示すように隅部でネジ締め作業を行う場合に、締付けネジの頭部が被削材に接触してしまい、結果的に被削材に傷を付けてしまうという問題が生じる。また、締付けネジの頭部が突出する形で露出しているため、電動工具の持ち運び時などに他の部材に接触してしまい同じく被削材に傷を付けてしまうという問題が生じる。
【0022】
また、作業によって使用者は、ハンマケースの外周を把持しながら作業する場合があるが、ハンマ爪がアンビル爪を打撃する際に発生する熱によりハンマケースが熱くなってしまうと、ハンマケースを把持し難くなってしまい作業性及び操作性の低下を招いてしまうという問題があった。
【0023】
また、アルミ製のハンマケースを把持した場合、使用者の手が汗や水等により濡れていると滑り易く、安定した作業が行えないという問題があった。
【0024】
また、ハンマケースは、腐食防止のため且つ見ばえを良くするために塗装が施されているため、この塗装作業によりコストと手間がかかってしまうという問題があった。
【0025】
本発明の目的は、上記問題を解消し、被削材に傷を付けてしまうことを防ぐ作業性及び操作性に優れた安価な電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するために本発明は、モータと、前記モータを収容するハウジングと、前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、前記ハウジングの前方に設けられ、前記動力伝達部を収容し、金属により構成されるケースと、前記ケースの前方より突出し、前記動力伝達部に接続される先端工具保持部と、前記ハウジングに前記ケースを設けるための締付けネジと、を有する電動工具であって、前記締付けネジの頭部を覆う突出部を有し、樹脂により構成されるカバーを、前記ケースの外周に設け、前記ケースに係合し、弾性ゴムにより構成されるストッパを、前記カバーよりも前方側に設け、前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成したことに一つの特徴を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、締付けネジの外周を覆うカバーを、ケースの外周に設けることで、被削材に傷を付けてしまうことを防ぐことができ、作業性及び操作性に優れた安価な電動工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1?図12を用いて本実施例における電動工具(インパクトドライバ及びインパクトレンチ)を説明する。図1は本実施例における電動工具を示す側面図、図2は本実施例における電動工具を示す一部縦断側面図、図3は本実施例における電動工具を蓄電池6側から見た場合における係止部材16のロック状態を示す断面図、図4は本実施例における電動工具を蓄電池側から見た場合における係止部材16のロック解除状態を示す断面図、図5は本実施例における電動工具のハンマケース2周辺に設けられるカバー25を示す外観斜視図、図6は電動工具に設けたカバー25を位置決め固定するストッパ27を示す外観斜視図、図7は図6に示すストッパ27の内側を示す外観斜視図、図8は本実施例における電動工具にカバー25を設け且つ当該カバー25をキャップ27により位置決め固定した状態を示す要部拡大縦断側面図、図9は本実施例における電動工具の使用状態を示す説明図、図10は本実施例における電動工具の他の使用状態を示す説明図、図11は本実施例における他のカバー25´を示す外観斜視図、図12は本実施例における更に他のカバー25“を示す外観斜視図である。
【0029】
図1?図2において、二つ割のハウジング1及びハンマケース2などの外枠を有する電動工具は、略T字形状を成しており、ハウジング1によって形成される本体胴体部1aには、駆動源であるモータ3や減速機構部4などを収容し、且つ本体胴体部1aから垂下するハンドル部1bには、モータ3に電力を供給するためのトリガスイッチ5や蓄電池6の接続端子と電気的に接続される図示しない接点などを収容している。
【0030】
また、ハウジング1に当接して配置されるハンマケース2内には、モータ3の回転動力を打撃力に変換するための打撃機構部7及び図示しないビットやレンチ等の先端工具保持部8などを収容している。このような構成において、モータ3の回転動力は、モータ3の出力軸であるピニオン3aから減速機構部4に伝達され、更に減速機構部4から打撃機構部7を介して先端工具に伝達される。
【0031】
なお、上述した減速機構部4は、ハウジング1内に回転止めを有し支持されている固定歯車支持治具4a、固定歯車4b、遊星歯車4c、スピンドル9とを有し、且つスピンドル9に支持される遊星歯車4cの回転軸となるニードルピン4dとから構成されており、また打撃機構部7は、スピンドル9と、スピンドル9に形成したカム溝9aに挿入されるスチールボール10(鋼球)を介して回転可能で且つ回転軸の軸方向に移動可能なハンマ11と、ハンマ11に設けた複数のハンマ爪11aにより打撃され回転するアンビル爪12aを有するアンビル12と、ハンマ11をアンビル12側に常に付勢するスプリング13とから構成されている。
【0032】
このように構成された電動工具において、先端工具により締め付けられるネジ或いはナット等に与えるパルス的な衝撃(インパクト)は、トリガスイッチ5の操作によりモータ3に電力を供給し、モータ3を回転駆動させた後、このモータ3の回転動力をモータ3の先端に連結されているピニオン3aを介して遊星歯車4cに伝達し、遊星歯車4cと固定歯車4bと噛み合いによりピニオン3aの回転動力をニードルピン4dを介してスピンドル9に伝達し、スピンドル9のカム溝9aハンマ11のカム溝11b間に配置されたスチールボール10を介して、スピンドル9の回転力をハンマ11に伝達し、ハンマ11とスピンドル9の遊星歯車4cとの間に配されているスプリング13によって前方(ビット側)に付勢されているハンマ11のハンマ爪11aが回転によりアンビル12のアンビル爪12aを打撃することにより発生する。
【0033】
打撃後、ハンマ11の打撃エネルギが減少しアンビル12のトルクが減少すると、ハンマ11はアンビル12から反発するため、ハンマ11はカム溝に沿って遊星歯車4c方向に移動(後退)する。その後、ハンマ11はスプリング13の圧縮力で再びアンビル12方向にカム溝に沿って押し戻され、再びスピンドル9の回転によりハンマ爪11aがアンビル爪12aを打撃する。このようにハンマ11の軸方向移動と回転によりアンビル12への打撃を繰り返すことで、連続的な衝撃トルクをビットやレンチ等の先端工具に与え、被削材14へのネジ締め或いはナット締め、または被削材14へのネジ緩め或いはナット緩め作業を行うことができる。
【0034】
また、上述した打撃機構部7及び減速機構部4を有する電動工具のハウジング1表面、具体的にはハウジング1の本体胴体部1a後面やハンドル部1bには、二層成形によりエラストマー15を施してある。このエラストマー15を設ける目的は、電動工具を確実に把持するための滑り止め、或いは握り心地を良くし操作性及び作業性を向上させるためであり、更には地面に落とした時の衝撃を吸収し電動工具が破損してしまうことを防いだり、傾斜面に電動工具を置いた時に傾斜に沿って電動工具が滑り落ちないようにするためである。なお、電動工具の破損や電動工具の滑り止め効果を向上させるためにエラストマー15を蓄電池収容部1cの周辺に施しても良い。
【0035】
また、本電動工具には、図1?図4に示すように作業者の腰ベルト等に電動工具本体を掛止させるため、以下に詳述する係止部材16と保持部17とストラップ部18とから構成される回動可能なフック部19が設けられている。
【0036】
フック部19は、ビット等の先端工具20を収容可能な樹脂から成る略円筒形の基端部16aを有する係止部材16と、この係止部材16の基端部16aを収容可能な貫通穴17aを有し且つハンドル部1bから蓄電池6の側面に隣接する位置まで延在する保持部17と、この保持部17内に挿通され且つ基端部16a内に設けた抜け止め部材であるナット16bに螺合して保持部17から係止部材16が抜け出てしまうことを防ぐ固定部材であるボルト21と、係止部材16を回動不能位置にロックする方向に付勢して成るスプリング或いは弾性ゴム等の弾性体22とから構成されており、略L字形を成す係止部材16の基端部16aには、枢軸23を回転軸とする円筒状の回転筒16cと、この回転筒16c上に設けられ且つ枢軸23方向に突設し且つ枢軸23の半径方向外側に突出する複数の歯を有する角度調整用ギヤ部16dと、この角度調整用ギヤ部16dの内径と略同径に突設する第1リング部16eと、この第1リング部16eの外径と同等或いはそれより小径の第2リング部16fとが設けられている。
【0037】
また、基端部16aの内部には、第2リング部16f側から挿通されるボルト21と螺合するナット16bを回転不能に収容する半六面壁形状のナット収容部16gが設けられていると共に、このナット収納部16gから第2リング部16fまでボルト21を収容するための貫通穴(ボルト穴)17aが枢軸23方向に設けられている。
【0038】
また、反角度調整用ギヤ部16d側位置する回転筒16cの端面、即ち滑止部16hを有する係止部材16における回転筒16cの立ち上がり突設部には、回転筒16cの外径より大きい外径を形成するための段差部16iを設けていると共に、回転筒2cの外周には係止部材16の回動範囲を所定の角度内に規制するための回転抑止板16jを突設している。
【0039】
一方、保持部17は、ハウジング1の分割面を中心に対称型で且つその内部に基端部16aを収容するための貫通穴(円筒穴)17aを有しており、この貫通穴17aは回転筒16cを収容する回転支持穴17bと、角度調整用ギヤ部16dと噛合可能な複数の歯を有するリングギヤ部17cと、このリングギヤ部17cと溝付き頭部(ボルト頭)21aを有するボルト21との間に設けられるフック用スプリング22と当該ボルト頭21aを収容する受容穴17dとから構成されており、回転支持穴17bには、回転抑止板16jの回動範囲を所定の角度内に規制するため回転抑止板16jと当接する回転抑止板受容溝17eが設けられている。
【0040】
また、ストラップ部18は、保持部17の下方に設けられており、円筒穴17aに挿通する基端部16aの軸長に対して平行に設けられるストラップ用ネジ18aと、このストラップ用ネジ18aを挿通するための挿通穴18bと、この挿通穴18bからストラップ用ネジ18aが抜け出ないようにストラップ用ネジ18aと螺合するストラップ用ナット18cとから構成されており、ストラップ部18の一部にストラップ用ネジ18aが露出する切欠き部18dを設け、この切欠き部18dにストラップ18eの一端に設けた輪状部18fを挿通し、その後、輪状部18f内にストラップ用ネジ18aを挿通しストラップ用ナット18cと螺合することにより、ストラップ18eをストラップ用ネジ18aの軸部に引っ掛けることができるようになっている。
【0041】
なお、上述したようにストラップ部18が、保持部17の下方に設けられているため、保持部17に着脱自在に設けられている係止部材16が蓄電池6の一部を収容する被覆部(スカート部)1c付近に隣接配置されるため、ハンドル部1bに対して着脱操作を行う蓄電池の操作部(ラッチ)6aを操作する際に係止部材16が邪魔にならないため、使用者は容易に蓄電池6の着脱作業を行うことができる。
【0042】
次にハウジング1の保持部17に対する係止部材16の着脱方法について説明する。まずナット収容部16gにナット16bを挿入した状態で、保持部17の円筒穴17aに挿通し、第2リング部16fに沿って受容穴17dにフック用スプリング22を挿通させ、ボルト21の先端に設けたネジ部21bとナット16bの内部に設けたネジ部16kとを螺合させることにより、係止部材16をフック用スプリング22を介して保持部17に装着することができる。また、ハウジング1の保持部17に対して係止部材16を離脱させる場合には、上述した手順の逆を行えば簡単に行える構成になっている。
【0043】
なお、保持部17は上述したようにハウジング1の分割面を中心に対称型になっていると共に、ビット等の先端工具20を収容可能な係止部材16の形状が略直線的形状であるため、例えば作業者の利き手に応じて係止部材16を保持部17の左右どちらからでも挿入装着可能であり、更にどちらに装着しても係止部材16が蓄電池6の一部を収容する被覆部付近1cに隣接配置可能なため、ハンドル部1bに対して着脱操作を行う蓄電池6の操作部6aを操作する際に係止部材16が邪魔にならない位置に配されるため、使用者は容易に蓄電池6の着脱作業を行うことができ作業性及び操作性の向上が図れる。
【0044】
因みに本実施例では、上述したように保持部17の左右どちらに係止部材16を装着しても問題のない形状になっているが、蓄電池6の操作部6aを操作する際に係止部材16が邪魔にならないように係止部材16の形状を略直線的形状のものから屈曲形状として良い。但し、この場合、例えば保持部17の左側から係止部材16を挿通した時と保持部17の右側から係止部材16を挿通した時とでどちらか一方から挿通した時に係止部材16の上下が逆になるため、蓄電池6の操作部6a上に係止部材16が位置してしまう場合が生じてしまう。よって、必要に応じて係止部材16を交換する場合には、左側専用係止部材或いは右側専用係止部材のように専用の係止部材を個別に容易する必要があり、使い勝手が悪くなってしまうと共に、使用者に経済的負担をかけてしまうものになってしまう。
【0045】
次に係止部材16の回動操作について図2?図4を用いて説明する。図2及び図3は係止部材16が蓄電池6の一部を収容する被覆部(スカート部)1c付近に隣接配置される位置で位置決め固定されている状態を示しており、係止部材16は、フック用スプリング22の圧力が保持部内のスプリング受端面16lを支点にボルト頭21aを押し出す方向に付勢されていると共に、段差部16iが保持部17の端面17fに当接して支持されているため離脱防止が図られており、更に角度調整用ギヤ部16dがリングギヤ部17cと噛合状態に保持されているため、基端部16aの枢軸23の周方向の回転が防止され安定した位置決め固定が得られる構成になっている。
【0046】
なお、本実施例において、蓄電池6の一部を収容する被覆部1c付近に隣接配置される位置は、回転抑止板16jの端面が回転抑止板受容溝17eの端面に当接する位置の一つとなっているため、この位置まで係止部材16を回動させることができる構成になっている。
【0047】
この状態から係止部材16を回動操作する場合には、図2及び図4に示すように、係止部材16の滑止部16hを指でつまみ枢軸23方向(図中上方)に引っ張れば基端部16aの角度調整用ギヤ部16dとリングギヤ部17cとの噛合が解除されるため、所定の角度内で係止部材16を回動させることができ、任意の位置で係止部材16を離せばフック用スプリング24の弾性力により角度調整用ギヤ部16dとリングギヤ部17cとが噛合し位置決め固定することができる構成になっている。
【0048】
よって、本実施例における係止部材16は、簡単な構成及び方法により任意の位置に位置決め固定することができるという効果を奏するものであり、更に例示したインパクトドライバ及びインパクトレンチに限らず、丸のこ、ドリル、ディスクグラインダ、ドライバ、ハンマ、ハンマドリル、ジグソー、カッター、セーバソー、エアツール、釘打ち機等の携帯用工具に幅広く適用でき汎用性に富んだものである。
【0049】
次に図5?図10を用いて電動工具の打撃機構部7を収容するハンマケース2の外周に着脱自在な樹脂製のカバー25について説明する。図5はカバー25の外観斜視図を示しており、図8に示すようにアルミ製のハンマケース2の外周に装着されて使用される。ハンマケース2は、ハウジング1に複数の締付けネジ26(図19)を用いて一体的に締付け固定されるが、この締付けネジ26の頭部26aは電動工具の外観に露出している。このように露出していると図15に示す作業を行う場合に締付けネジ26が被削材14に接触してしまい、被削材14に傷を付けてしまうという問題が生じる。
【0050】
そこで、本実施例では図1に示すようにカバー25を設け、締付けネジ26の頭部26aをカバー25で覆い、露出させないように構成している。このカバー25は、締付けネジ26の材質(金属)よりも硬度の低い、即ち柔らかい弾性材質(樹脂或いはゴム)から形成する。
【0051】
また、上記カバー25は、図6及び図7に示す弾性を有する固定手段であるストッパ(樹脂或いは弾性ゴム)27により、電動工具の使用時に生じる衝撃振動により先端工具側に向いハンマケース2からカバー25が離脱してしまわないように確実に位置決めされている。カバー25とストッパ27による装着状態は図8に示すように、ハンマケース2の外周を覆うようにカバー25を挿通した後、ハンマケース2に設けた嵌合凸部2aに図6及び図7に示すストッパの内部に設けた嵌合凹部27aを係合させることで確実に行われる。
【0052】
このような構成により、図9及び図10に示すように被削材14には、カバー25が接触するため、上述した問題を解消することができる。なお、上記嵌合凸部2aと上記嵌合凹部27aとを逆に設けても良い。
【0053】
また、締付けネジ26を収容するためにカバー25の長手方向に設けた複数に突出部25aの先端側に傾斜(テーパー)25bを設けることで、万一、この突出部25aに何かの部材が接触したとしても傾斜25bに沿って衝撃を緩和する、即ち傾斜25aに沿って上記部材を逃がすことができるの、使用者の使い勝手が向上すると共に、カバー25の傷損等を極力抑制することができる構成になっている。
【0054】
更に作業によって使用者は、ハンマケース2の外周を把持しながら作業する場合があるが、ハンマ爪11aがアンビル爪12aを打撃する際に発生する熱によりハンマケース2が熱くなってしまうと、ハンマケース2を把持し難くなってしまい作業性及び操作性の低下を招いてしまうが、本実施例ではハンマケース2の外周にカバー25を設けているため、熱による影響を低減することができ、使い勝手に優れた電動工具を提供することができる。
【0055】
また、アルミ製のハンマケース2を把持する場合と本実施例のカバー25を把持する場合と比較して見ると、ハンマケース2を把持した場合の方が摩擦力の面から見ても滑り易く、特に使用者の手が汗や水等により濡れていると滑り易くなってしまうため、安定した作業が行えないという不具合が起きるが、カバー25を把持した場合にはアルミ製のハンマケース2を把持する場合よりも滑り難いことから、安定した作業が行える。
【0056】
また、カバー25を有さないハンマケース2が露出している電動工具の場合には、ハンマケース2の見ばえを良くするために塗装を行っていたが、本実施例ではハンマケース2の外周にカバー25を設けることによりハンマケース2が露出しないため、ハンマケース2の見ばえを考慮する必要性がないため、塗装に要するコストと手間をなくすことができ安価な電動工具を提供することができる。
【0057】
なお、上述したカバー25の変形例として、図11及び図12に示すカバー25´,25“のような形状にしても良く、カバー25´はカバー25の後方部(反先端工具側)を途中でカットした形状で締付けネジの外周を覆っており、また、カバー25“はカバー25の前方部(先端工具側)をカットした形状で上記同様に締付けネジの外周を覆う形状になっている。このようにカバー25の形状は、締付けネジ26の頭部26a外周を覆うことのできる形状であれば良く本実施例の形状に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明になる電動工具を示す側面図である。
【図2】本発明になる電動工具を示す一部縦断側面図である。
【図3】本発明になる電動工具を蓄電池側から見た場合におけるフックのロック状態を示す断面図である。
【図4】本発明になる電動工具を蓄電池側から見た場合におけるフックのロック解除状態を示す断面図である。
【図5】本発明になる電動工具のハンマケース周辺に設けられるカバーを示す外観斜視図である。
【図6】本発明になる電動工具に設けたカバーを位置決め固定するキャップを示す外観斜視図である。
【図7】図6に示すキャップの内側を示す外観斜視図である。
【図8】本発明になる電動工具にカバーを設け且つ当該カバーをキャップにより位置決め固定した状態を示す要部拡大縦断側面図である。
【図9】本発明になる電動工具の使用状態を示す説明図である。
【図10】本発明になる電動工具の他の使用状態を示す説明図である。
【図11】本発明になる他のカバーを電動工具に装着した状態を示す正面図(a)及び平面図(b)である。
【図12】本発明になる更に他のカバーを電動工具に装着した状態を示す正面図(a)及び平面図(b)である。
【図13】従来における電動工具を示す側面図である。
【図14】従来における電動工具を示す一部縦断側面図である。
【図15】従来における電動工具のフック部を示す図12の右側から見た一部省略側面図である。
【図16】従来における電動工具を図12の蓄電池側から見た一部断面図である。
【図17】従来における電動工具を蓄電池側から見た場合におけるフックのロック状態を示す断面図である。
【図18】従来における電動工具を蓄電池側から見た場合におけるフックのロック解除状態を示す断面図である。
【図19】従来における電動工具の他の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1は二つ割ハウジング、1aは本体胴体部、1bはハンドル部、1cは蓄電池収容部、2はハンマケース、2aは嵌合凸部、3はモータ、3aはピニオン、4は減速機構部、4aは固定歯車支持治具、4bは固定歯車、4cは遊星歯車、4dはニードルピン、5はトリガスイッチ、6は蓄電池、6aは操作部、7は打撃機構部、8は先端工具保持部、9はスピンドル、9aはカム溝、10はスチールボール、11はハンマ、11aはハンマ爪、11bはカム溝、12はアンビル、12aはアンビル爪、13はスプリング、14は被削材、15はエラストマー、16は係止部材、16aは基端部、16bはナット、16cは回転筒、16dは角度調整用ギヤ部、16eは第1リング部、16fは第2リング部、16gはナット収容部、16hは滑止部、16iは段差部、16jは回転抑止板、16kはネジ部、16lはスプリング受容部、17は保持部、17aは貫通穴、17bは回転支持穴、17cはリングギヤ部、17dは受容穴、17eは回転抑止板受容溝、17fは端面、18はストラップ部、18aはストラップ用ネジ、18bは挿通穴、18cはストラップ用ナット、18dは切欠き部、18eはストラップ、18fは輪状部、19はフック部、20は先端工具、21はボルト、21aは溝付き頭部、21bはネジ部、22は弾性体、23は枢軸、24はフック用スプリング、25はカバー、25aは突出部、25bは斜面、26は締付けネジ、25´はカバー、25“はカバー、26aは締付けネジ頭部、27はストッパ、27aは嵌合凹部である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを収容するハウジングと、
前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、
前記ハウジングの前方に設けられ、前記動力伝達部を収容し、金属により構成されるケースと、
前記ケースの前方より突出し、前記動力伝達部に接続される先端工具保持部と、
前記ハウジングに前記ケースを設けるための締付けネジと、を有する電動工具であって、
前記締付けネジの頭部を覆う突出部を有し、樹脂により構成されるカバーを、前記ケースの外周に設け、
前記ケースに係合し、弾性ゴムにより構成されるストッパを、前記カバーよりも前方側に設け、
前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
モータと、
前記モータの動力を伝達する動力伝達部と、
前記モータを収容し、ハンドル部を有するハウジングと、
前記動力伝達部を収容し、締付けネジにより前記ハウジングの第1の端部に固定される金属製のケースと、
前記ハウジングの第2の端部に設けられる蓄電池と、
前記ハンドル部に設けられ、作業者により操作可能なトリガスイッチと、
前記ケースの前方より突出し、前記動力伝達部に接続される先端工具保持部と、を有する電動工具であって、
前記締付けネジの頭部を覆う突出部を有し、樹脂により構成されるカバーを、前記ケースの外周に設け、
前記ケースに係合する弾性ゴムにより構成されるストッパを、前記カバーよりも前方側に設け、
前記ストッパを前記ケースから取外すことにより、前記カバーを前記ケースから取外すことができるように構成したことを特徴とする電動工具。
【請求項3】
前記締付けネジは、4本設けられており、
前記カバーは、前記4本の締付けネジの頭部を全て覆うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動工具。
【請求項4】
前記ケースは、前方に向かうにしたがって先細りになっている第1の先細り部分を有し、
前記カバーは、前記第1の先細り部分に対応するように、前方に向かうにしたがって先細りになっている第2の先細り部分を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動工具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-02-07 
結審通知日 2018-02-09 
審決日 2018-02-23 
出願番号 特願2009-160502(P2009-160502)
審決分類 P 1 41・ 852- Y (B25F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 利英  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 近藤 裕之
平岩 正一
登録日 2012-03-23 
登録番号 特許第4953170号(P4953170)
発明の名称 電動工具  
代理人 特許業務法人筒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人筒井国際特許事務所  

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