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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1338474
審判番号 不服2017-4141  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-22 
確定日 2018-04-06 
事件の表示 特願2012-241047「定着装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-174859、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年1月23日(以下「優先日」という。)に出願した特願2012-10862号を先の出願とする、特許法第41条第1項に規定する優先権の主張を伴う平成24年10月31日付けの特許出願であって、原審において、平成28年7月19日付けで拒絶理由が通知され、同年9月16日付けで特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がされた後、同年12月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同月22日。)がされ、これに対して、平成29年3月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されて、特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成29年3月22日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年3月22日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.平成29年3月22日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の内容
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりに補正された。(なお、他の請求項に係る補正はされていない。下線部は補正個所である。)
「【請求項1】
記録媒体の未定着画像が担持された側を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接して定着部材との間にニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、少なくとも前記定着部材と加圧部材を収容する外装部材と、前記ニップ部を含めて形成された記録媒体の搬送路とを有する定着装置において、
前記ニップ部の上流側および下流側のどちらか一方または双方にシャッタ部材を配置し、シャッタ部材をシャッタ駆動機構で駆動して搬送路を開放および閉鎖可能とし、かつシャッタ部材およびシャッタ駆動機構を外装部材で保持し、
前記定着部材と加圧部材を相対的に接近させることでニップ部を形成すると共に、両者を相対的に離反させることでニップ部を解消する接離機構を備え、前記接離機構が前記定着部材と加圧部材を相対的に接近および離反させるための接離用偏心カムを有し、
前記シャッタ駆動機構が接離機構と連動するものであり、
シャッタ駆動機構が、接離機構の前記接離用偏心カムに連結された入力側部材と、シャッタ部材を駆動するシャッタ駆動用偏心カムと、入力側部材から前記シャッタ駆動用偏心カムに動力を伝達する伝達機構とを備えることを特徴とする定着装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の平成28年9月16日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
記録媒体の未定着画像が担持された側を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接して定着部材との間にニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、少なくとも前記定着部材と加圧部材を収容する外装部材と、前記ニップ部を含めて形成された記録媒体の搬送路とを有する定着装置において、
前記ニップ部の上流側および下流側のどちらか一方または双方にシャッタ部材を配置し、シャッタ部材をシャッタ駆動機構で駆動して搬送路を開放および閉鎖可能とし、かつシャッタ部材およびシャッタ駆動機構を外装部材で保持し、
前記定着部材と加圧部材を相対的に接近させることでニップ部を形成すると共に、両者を相対的に離反させることでニップ部を解消する接離機構を備え、前記シャッタ駆動機構が接離機構と連動するものであり、
シャッタ駆動機構が、接離機構から動力を受ける入力側部材と、前記接離機構と分離して設けられ、シャッタ部材を駆動するシャッタ駆動カムと、入力側部材から前記シャッタ駆動カムに動力を伝達する伝達機構とを備えることを特徴とする定着装置。」

2.本件補正の目的について
特許法第17条の2第5項の規定するところによれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする場合の特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
これを本件補正についてみると、当該補正が請求項の削除を目的とするものでないことは明らかであるし、また、拒絶理由通知において明りょうでない記載について指摘されたわけではないから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。そして、本件補正前の請求項1中の記載には誤記といえるものがみあたらないから、本件補正が誤記の訂正を目的とするものとも認められない。
更に、本件補正では、本件補正前の請求項1に存在した「前記接離機構と分離して設けられ、(シャッタ部材を駆動するシャッタ駆動カム)」という記載が削除されただけで、これに代わる記載の加入はされていないから、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められない。

してみれば、本件補正は特許法第17条の2第5項各号に掲げられた、いずれの目的とする補正にも該当しない。

3.本件補正の補正却下についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではなく、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.原査定の概要
原査定の概要は、本願請求項1、2、6、7に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、同請求項3に係る発明は、同引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、同請求項4、5に係る発明は、同引用文献1、2、3、4に記載された発明に基づいて、同請求項8、9、10に係る発明は、同引用文献1、2、3、4、5に記載された発明に基づいて、それぞれ、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

<引用文献等一覧>
1.特開昭58-203474号公報(引用文献1)
2.特開2004-13038号公報(引用文献2)
3.特開2002-365962号公報(引用文献3)
4.特開2001-249562号公報(引用文献4)
5.特開2010-122332号公報(引用文献5)

第4.本願発明
本件補正は、上記「第2.平成29年3月22日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、平成28年9月16日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
記録媒体の未定着画像が担持された側を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接して定着部材との間にニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、少なくとも前記定着部材と加圧部材を収容する外装部材と、前記ニップ部を含めて形成された記録媒体の搬送路とを有する定着装置において、
前記ニップ部の上流側および下流側のどちらか一方または双方にシャッタ部材を配置し、シャッタ部材をシャッタ駆動機構で駆動して搬送路を開放および閉鎖可能とし、かつシャッタ部材およびシャッタ駆動機構を外装部材で保持し、
前記定着部材と加圧部材を相対的に接近させることでニップ部を形成すると共に、両者を相対的に離反させることでニップ部を解消する接離機構を備え、前記シャッタ駆動機構が接離機構と連動するものであり、
シャッタ駆動機構が、接離機構から動力を受ける入力側部材と、前記接離機構と分離して設けられ、シャッタ部材を駆動するシャッタ駆動カムと、入力側部材から前記シャッタ駆動カムに動力を伝達する伝達機構とを備えることを特徴とする定着装置。」

本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明10は「請求項1?9何れか1項に記載の定着装置を備える画像形成装置」に係る発明である。

第5.引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定に係る拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭58-203474号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。引用文献2以下についても同様。)
「本発明は、電子複写機、・・・プリンターなどにおいて、紙等の支持体上に形成されたトナー像を少なく共一方が、加熱機構を有する、相対接せしめた一対のロール間で定着させるヒートロール定着装置に関する。」(第1頁右下欄第10?14行)
「以下本発明の詳細を図面により説明する。
第4図は本発明のヒートロール定着装置の一実施例を示す断面図である。第4図において、定着ロール1および加圧ロール2の加圧および分離機構として、本体3に回転自在に設置した支持棒7に固着させた偏心カム8を、支持棒7に対して揺動運動させる駆動源17を設置してある。一方加圧ロール2は一端が支持ピン10を介して本体3に回転自在に設置されている側板11に回転自在に支持されている。側板11の他端には引張りコイルバネ12が装着され、本体3に対して側板11は引張りコイルバネ12により上方に引張られている。このようにして加圧ロール2は定着ロール1のロール表面に加圧接触できるようになっている。側板11には、ガイドコロ18が回転自在に設置され、偏心カム8の揺動運動に追随して上下運動をする。これにより、加圧ロール2は定着ロール1に対して加圧および分離動作をする。
支持体供給ガイド15は本体3にピン19を介して回転自在に設置されて他端には引張りコイルバネ20を設置してある。引張りコイルバネ20の他端は偏心カム8に固定され、偏心カム8の揺動運動に追随してピン19を支点にして上下運動をし、本体3の内部と外部を遮断できるようにしてある。支持体排出ガイド16の直接にはシャッター22を設置して、その一端を偏心カム8に連結させてあるリンク21を介して、偏心カム8の揺動運動に追随してシャッター22は上下運動をする。
上記の如く、偏心カム8の揺動運動により、定着ロール1に対して加圧ロール2を分離させた時には、この分離動作に追随して支持体供給ガイド15および支持体排出ガイド16は、本体3に対して閉鎖し、逆に加圧させた時には、本体3に対して開口するようになる。」(第2頁右下欄第6行?第3頁左上欄第19行)
「上記の全ての作動機構部は全て本体3の外部に設置してあり、従って、高温雰囲気を避けた常温雰囲気で作動させるため、作動部品の耐熱性および錆などに対して問題は無い。また、本体3の内部の構造が簡素になるため、本体3を密閉状態にすることを可能にした。
さらに、本体3の内壁、支持体供給ガイド15およびシャッター22の表面に断熱材23を設置して、本体3の内部の熱が外部に逃げないようにしてある。」(第3頁左上欄第20行?同右上欄第9行)
第4図から、シャッター22とその作動機構部は本体3で保持されていることが看取できる。
上記の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙等の支持体上に形成されたトナー像を、少なく共一方が加熱機構を有する相対接せしめた一対のロール(定着ロール1および加圧ロール2)間で定着させるヒートロール定着装置であって、
定着ロール1および加圧ロール2の加圧および分離機構として、本体3に回転自在に設置した支持棒7に固着させた偏心カム8を、支持棒7に対して揺動運動させる駆動源17を設置してあり、
加圧ロール2は、一端が支持ピン10を介して本体3に回転自在に設置されている側板11に回転自在に支持され、側板11の他端には引張りコイルバネ12が装着されて、本体3に対して側板11は引張りコイルバネ12により上方に引張られていることにより、加圧ロール2は定着ロール1のロール表面に加圧接触できるようになっていて、
側板11には、ガイドコロ18が回転自在に設置され、偏心カム8の揺動運動に追随して上下運動をすることにより、加圧ロール2は定着ロール1に対して加圧および分離動作をし、
支持体供給ガイド15は本体3にピン19を介して回転自在に設置されて他端には引張りコイルバネ20を設置してあり、引張りコイルバネ20の他端は偏心カム8に固定され、偏心カム8の揺動運動に追随してピン19を支点にして上下運動をし、本体3の内部と外部を遮断できるようにしてあり、 支持体排出ガイド16にはシャッター22を設置して、その一端を偏心カム8に連結させてあるリンク21を介して、偏心カム8の揺動運動に追随してシャッター22は上下運動をし、
偏心カム8の揺動運動により、定着ロール1に対して加圧ロール2を分離させた時には、この分離動作に追随して支持体供給ガイド15および支持体排出ガイド16に設置したシャッター22は、本体3に対して閉鎖し、逆に加圧させた時には、本体3に対して開口するようになっていると共に、全ての作動機構部を本体3の外部に設置し、シャッター22とその作動機構部は本体3で保持されている、
ヒートロール定着装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2004-13038号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0036】
(実施形態5)
本発明の更に他の実施形態に係る定着ユニットにおける加圧調整処理について説明する。
図12は、本発明の実施形態に係る定着ユニットの加圧調整機構の概念図、図13は、図12の加圧調整機構による加圧調整処理のフロー図である。
図12を参照すると、定着ローラ21及び加圧ローラ23からなる定着ユニットは、図4で述べたと同様の逆L字形ブラケットと楕円形カムである、逆L字形ブラケット31cと楕円形カム31bからなる加圧調整部31、スプリング32及び加圧レバー33により構成される加圧調整機構により、定着ローラ21の加圧ローラ23による加圧が調整される。更に定着ローラ21と加圧ローラ23の下流側には、搬送路を挟んで可動補助ローラ51と固定補助ローラ52が設置され、可動補助ローラ51にはL字形カム34を、可動補助ローラ51の回転軸がL字形カム34の一端34bとなり、L字形カム34の他端34aが画像形成装置本体の図示しない側板に回転可能になるように取り付ける。またL字形カム34の角部34cをリンクレバー35により加圧レバー33に連結する。
【0037】
従って、加圧モータ31mを正転駆動すると、楕円形カム31bの長径側先端部が逆L字形ブラケット31cの上側水平部と係合するので、逆L字形ブラケット31cは、ピンTをガイドとして前記側板に沿って上方に移動する。逆L字形ブラケット31cが上方に移動すればスプリング32の付勢力が強まり、加圧レバー33の一端が他端を回転中心として上方へ引き上げられるので、加圧ローラ23の回転軸は押し上げられ、加圧ローラ23を定着ローラ21に押し付ける。この動作と連動し、リンクレバー35は、逆L字形カム34を、端部34aを中心として上方へ回転移動させるので、可動補助ローラ51は搬送路(固定補助ローラ52)から離間する。加圧モータ31mを逆転駆動すると、この動作は反転する。」
上記の記載事項からみて、引用文献2には、一方のカム(楕円形カム31b)の回転をレバーなどの連結機構(リンクレバー35)を介して他方のカム(L字形カム34)に伝達するという伝達機構を備えた定着装置(定着ユニット)が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載の技術事項」という)。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-365962号公報)の図6には、「熱定着器8(定着装置)において、分離爪85(分離部材)と下流側ガイド86(ガイド部材)との間に、シャッター(シャッタ部材)を配置するという、定着装置」が記載されていると認められる(以下「引用文献3記載の技術事項」という)。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2001-249562号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成記録装置に装着され未定着トナーを記録媒体に定着させる定着装置に関するものである。」
「【0015】本発明では、・・・通紙ガイド5のローラ1、2側の端部に、通紙開口部6を遮蔽することが可能なシャッタ7を設けた。そして、このシャッタ7をより適正な位置に設けることより、通紙開口部6を通じる放熱経路の熱抵抗値を増加させ、放熱量を低減することができる。」
「【0020】また、シャッタ閉鎖時には、シャッタ7の端部とガイド5間の隙間が小さく、密閉性が高いほど断熱効果は高くなるので、シャッタ7の端部に断熱スポンジ等弾力のある素材を貼り付けるとよい。」
上記の記載事項からみて、引用文献4には、「定着装置に設けるシャッタ7(シャッタ部材)の端部に弾力のある素材を貼り付けて、シャッタ閉鎖時の密閉性と断熱効果を高くする定着装置」が記載されていると認められる(以下「引用文献4記載の技術事項」という)。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2010-122332号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式のプリンタ、複写機、ファクシミリ機等の画像形成装置においては、感光体等から成る画像形成部で形成されたトナー像は、給紙部から感光体位置に給送されてきた印刷媒体等の転写紙に転写された後、定着装置で転写紙に定着されて、排出されるようになっている。・・・
【0004】
また、前記画像形成装置は、定着装置の近傍に配設された冷却用の排気ファンを備えており、該排気ファンによって熱を画像形成装置の筐(きょう)体の外へ放出することにより、定着装置の周辺に配設された部材の温度上昇を抑制する。」
「【0007】
しかしながら、前記従来の画像形成装置においては、定着の際に転写紙を加熱するので、該転写紙が含有する水分が気化し、気化した水分が定着装置周辺の冷たい画像形成装置の筐体に冷やされて結露となってしまうという問題がある。定着装置近辺の温度が画像を定着させるのに十分な温度に上昇するまで排気ファンを運転しないようにしても、結露の問題を解決することができなかった。」
「【0036】
まず、印刷処理が開始されると、・・・給紙部11の給紙ローラ32によって給紙カセット31から用紙が給紙され、搬送される。
【0037】
次に、印刷タイミング用紙センサ28によって・・・用紙の先端を検出した場合、制御部50は、温度センサ37の出力信号の電圧から温度Tの検出を行う。
【0038】
続いて、制御部50は、検出した温度Tが・・・30〔℃〕未満の場合は、プリンタ10内における定着ユニット14の周囲の温度が低く、結露が発生する条件であると考えられるので、制御部50は、ファン36の駆動を開始させる。」
上記の記載事項からみて、引用文献5には、「結露等の防止のために、定着装置の周囲の温度(外部の雰囲気温度)を考慮して、ファンの駆動を制御する制御部を有する定着装置」が記載されていると認められる(以下「引用文献5記載の技術事項」という)。

第6.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
後者の「ヒートロール定着装置」は、その構成や形状と機能等からみて、前者における「定着装置」に相当し、以下同様に、「紙等の支持体上に形成されたトナー像」は「記録媒体の未定着画像」に、「定着ロール1」は「回転可能な定着部材」に、「加熱機構」は「加熱源」に、「加圧ロール2」は「回転可能な加圧部材」に、「本体3」は「外装部材」に、「シャッター22」は「シャッタ部材」に、「(シャッター22の)作動機構部」は「シャッタ駆動機構」に、それぞれ相当する。
そして、後者も前者と同様に、定着ロール1(定着部材)は紙等の支持体のトナー像の形成された側(記録媒体の未定着画像が担持された側)を加熱すると共に、加圧ロール2(加圧部材)は定着ロール1に圧接して定着ロール1との間にニップ部を形成し、定着ロール1と加圧ロール2は本体3(外装部材)に収容されて、ニップ部を含めて紙等の支持体(記録媒体)の搬送路を形成することは明らかである。また、支持体排出ガイド16は、ニップ部の下流側に位置する部材であるから、後者のシャッター22(シャッタ部材)はニップ部の下流側に配置されているといえる。
更に、後者において、「シャッター22・・・の一端を偏心カム8に連結させてあるリンク21を介して、偏心カム8の揺動運動に追随してシャッター22は上下運動をし、」「偏心カム8の揺動運動により、定着ロール1に対して加圧ロール2を分離させた時には、この分離動作に追随して・・・シャッター22は、本体3に対して閉鎖し、逆に加圧させた時には、本体3に対して開口するようになっている」ことは、前者において、「シャッタ部材をシャッタ駆動機構で駆動して搬送路を開放および閉鎖可能」とし、「前記定着部材と加圧部材を相対的に接近させることでニップ部を形成すると共に、両者を相対的に離反させることでニップ部を解消する接離機構を備え、前記シャッタ駆動機構が接離機構と連動する」ことに相当する。

したがって、両者は、
「記録媒体の未定着画像が担持された側を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱源と、前記定着部材に圧接して定着部材との間にニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、少なくとも前記定着部材と加圧部材を収容する外装部材と、前記ニップ部を含めて形成された記録媒体の搬送路とを有する定着装置において、
前記ニップ部の上流側および下流側のどちらか一方または双方にシャッタ部材を配置し、シャッタ部材をシャッタ駆動機構で駆動して搬送路を開放および閉鎖可能とし、かつシャッタ部材およびシャッタ駆動機構を外装部材で保持し、
前記定着部材と加圧部材を相対的に接近させることでニップ部を形成すると共に、両者を相対的に離反させることでニップ部を解消する接離機構を備え、前記シャッタ駆動機構が接離機構と連動するものである、
定着装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明1では、「シャッタ駆動機構が、接離機構から動力を受ける入力側部材と、前記接離機構と分離して設けられ、シャッタ部材を駆動するシャッタ駆動カムと、入力側部材から前記シャッタ駆動カムに動力を伝達する伝達機構とを備える」のに対し、引用発明では、「シャッター22の作動機構部」(シャッタ駆動機構)が、「その一端を偏心カム8に連結させてあるリンク21」を備えていることが明確であるにとどまり、「入力側部材」や「シャッタ駆動カム」に相当するものを備えるか否かは不明であり、したがって、「入力側部材から前記シャッタ駆動カムに動力を伝達する伝達機構」を備えるか否かも不明である点。
なお、引用発明では「偏心カム8の揺動運動に追随してシャッター22は上下運動をし、」としているところから、「偏心カム8」を「シャッタ駆動カム」とみることはできるが、偏心カム8は本願発明1の「接離機構」を構成する部材に相当するから、偏心カム8は「接離機構と分離して設けられ」ているシャッタ駆動カムとはいえない。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
上記「第5 2.」のとおり、引用文献2記載の技術事項には、一方のカム(楕円形カム31b)の回転をレバーなどの連結機構(リンクレバー35)を介して他方のカム(L字形カム34)に伝達するという伝達機構を備えた定着装置(定着ユニット)が示されている。
しかしながら、引用文献2において、L字形カム34の移動により、可動補助ローラ51を搬送路から、離間・接触させるもの(段落【0037】参照)であって、本願発明1のように、シャッタ部材を開放および閉鎖可能とするものでない。
そして、そもそも引用文献2記載の技術事項には、本願発明1の「(接離機構から動力を受ける)入力側部材」は備えられていない。
してみると、引用文献2記載の技術事項は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
なお、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、上記「第5 3.」?「第5 5.」のとおり、引用文献3ないし5記載の技術事項にも記載されていないし、示唆もされていない。

2.本願発明2ないし10について
本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明であり、また、本願発明10は、本願発明1ないし9に係る「定着装置」を備える画像形成装置に係る発明であって、本願発明2以下のいずれの発明も本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記「1.」と同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術事項、及び引用文献3?5記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし10は、当業者が引用発明及び引用文献2?5記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-27 
出願番号 特願2012-241047(P2012-241047)
審決分類 P 1 8・ 571- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平田 佳規  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
黒瀬 雅一
発明の名称 定着装置及び画像形成装置  
代理人 城村 邦彦  

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