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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60S
管理番号 1338576
審判番号 不服2016-13758  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-14 
確定日 2018-03-15 
事件の表示 特願2014-553814号「車両の路上の前方への進路と補助的機構による最終駐車位置における車両の後部の配置だけを使用した車両を駐車するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日国際公開、WO2013/124694、平成27年 3月19日国内公表、特表2015-508360号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)2月23日を国際出願日とする出願であって、平成27年8月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年2月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月2日付けで拒絶査定がされた。
これに対して、同年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2.平成28年9月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月14日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正することを含むものである。
なお、下線部は補正箇所を示す。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
道路の左側もしくは右側で、車両の路肩駐車を助ける運転手のための方法であって、別の駐車された車両の背後で、かつ縁石あるいは歩道のできるだけ近くに、所望の駐車スペースの内側に車両を運転するために、運転手が所望の駐車環境に応じて左方向あるいは右方向のどちらかで前方に向かって車両を運転し、かつ前方の道路コースを利用し、次いで、車両を最終駐車位置に、すなわち車両を縁石あるいは歩道対して平行に置くことが、適切なセンサの補助により、運転手の指示で、車両の後部に置かれた可動な機構あるいは装置により達せられ、
前記可動な機構あるいは装置が、車体の前部の下に置かれた場合には、前記所望の駐車スペースに対して後ろ向きに車両を置きかつ駐車するために、あるいは前記所望の駐車スペースから前方に車両を出すために、前記車両の後部に置かれた前記可動な機構あるいは装置使用されるのと同様の応用された方法が利用されることができることを特徴とする方法。」

(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
道路の左側もしくは右側で、車両の路肩駐車を助ける運転手のための方法であって、別の駐車された車両の背後で、かつ縁石あるいは歩道のできるだけ近くに、所望の駐車スペースの内側に車両を運転するために、運転手が所望の駐車環境に応じて左方向あるいは右方向のどちらかで前方に向かって車両を運転し、かつ前方の道路コースを利用し、次いで、車両を最終駐車位置に、すなわち車両を縁石あるいは歩道対して平行に置くことが、適切なセンサの補助により、運転手の指示で、車両の後部に置かれた可動な機構あるいは装置により達せられ、
前記可動な機構あるいは装置が、車体の前部の下に置かれた場合には、前記所望の駐車スペースに対して後ろ向きに車両を置きかつ駐車するために、あるいは前記所望の駐車スペースから前方に車両を出すために、前記車両の後部に置かれた前記可動な機構あるいは装置が使用されるのと同様の応用された方法が利用されることができる、
車輪、キャタピラー機構および伸びる棒状体の内のいずれか二つが可動な機構あるいは装置として組合されかつ使用されることを特徴とする方法。」

2 補正の適否
(1)補正の目的の適否について
上記補正は、補正前の「可動な機構あるいは装置」について、さらに限定するものであるから、かかる補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下検討する。

(2)独立特許要件について
ア 刊行物
(ア)刊行物1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平1-85512号(実開平3-25359号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付与したものである。以下同様。
(1a)「【産業上の利用分野】
本考案は、車両の前部又は後部に補助輪を上昇及び下降可能に設け、同補助輪の下降時における回転に応じて前記車両前部又は後部を横方向へ移動可能とする車両の補助輪装置に関する。
【従来技術】
従来、この種の装置は、例えば実公昭40-23852号公報に示されるように、車両の後部に補助輪を設けるとともに、該補助輪を正逆回転させるアクチュエータとしてのギヤモータを設け、補助輪の下降時に同モータの正逆回転を指示して車両の後部を左右いずれかに移動させて、狭い場所での縦列駐車等を可能としている。」(明細書1頁18行?2頁10行)
(1b)「【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面を用いて説明する。
この実施例においては、第2図に示すように、車両の後部中央に、補助輪アセンブリ10が設けられている。この補助輪アセンブリ10は、第1図?第3図に示すように、補助輪11、油圧シリンダ12及び電動モータ13を主要構成部品とするもので、補助輪11は車両前後方向の軸回りに回転可能に枠体14によって支持されている。
油圧シリンダ12は外側にて車体BDに固定されるとともに、その内部は液密的かつ摺動可能に収容されたピストン12aにより上下油室12b,12cに区画されている。ピストン12aにはピストンロッド12dがその上端にて接続され、その下端には枠体14が接続されている。また、油圧シリンダ12の下油室12c内にはスプリング15が収容されており、同スプリング15はピストン12a及びピストンロッド12dを上方へ付勢している。
電動モータ13は枠体14の側板上に固定されており、同モータ13の回転軸13aの外周上にはウォームギヤが一体形成されている。このウォームギヤは補助輪11の回転軸に一体的に形成したホイール16に噛合しており、これらのウォームギヤ及びホイール15により逆効率の極めて低い減速機構が形成されていて、補助輪11側から回転軸13aが回転されにくくなっている。・・・
かかる補助輪アセンブリ10は油圧制御回路及び電気制御回路により制御されるようになっている。」(明細書4頁10行?6頁5行)
(1c)「電気制御回路は車速センサ31、シフトセンサ32、障害物センサ33a?33d、上昇完了検出スイッチ34、下降完了検出スイッチ35、旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37を備えている。・・・障害物センサ33a?33dは第6図に示すように車体BDの前後左右端にそれぞれ設けられ、車体BDから障害物までの距離を光、電波、音波等の反射を利用することにより測定するとともに、該測定距離に基づいて車両近傍に位置する障害物の存在を検出して、障害物の有無を表す検出信号をそれぞれ出力する。」(明細書7頁14行?8頁10行)
(1d)「実施例の動作を第5図のフローチャートに従って説明する。」(明細書13頁1?2行)
「今、当該車両が停止中であって、前記ステップ63にて「YES」と判定されると、次に、ステップ64にて旋回選択スイッチ36がオン状態にあるか否かが判定される。」(明細書14頁2?5行)
「運転者が旋回選択スイッチ36をオン操作すると、ステップ64にて「YES」すなわち旋回選択スイッチ36がオン状態であると判定され、ステップ65にて下降完了検出スイッチ35がオン状態にあるか否かが判定される。かかる場合、補助輪11が完全に下降していなければ、ステップ65における「NO」との判定の基に、ステップ66にて、電磁切り換えバルブ21のソレノイド21eを通電制御し、かつソレノイド21fを非通電制御するための制御信号が、出力インターフェース38fを介して励磁制御回路43へ出力される。その後、かかるステップ65,66からなる循環処理が続行される。これにより、励磁制御回路43がソレノイド21eのみを通電制御するので、電磁切り換えバルブ21が第1状態に設定され、油圧ポンプ22からの突出作動油が油圧シリンダ12の上油室12bに供給されるとともに、同シリンダ12の下油室12b内の作動油はリザーバ23に排出されて、補助輪11は下降する。このようにして補助輪11が下降した結果、下降完了検出スイッチ35がオンすると、前記ステップ65,66からなる循環処理中、ステップ65にて「YES」と判定され、プログラムはステップ77に進められる。・・・ステップ77においては、前記ステップ74の処理と同様に、電磁切り換えバルブ21が第2状態に設定されて、補助輪11が前記下降完了位置に維持制御される。なお、かかる場合には、第2図に示すように、後輪RWは地面GRから浮いた状態に保たれる。
次に、プログラムはステップ78に進められ、同ステップ78にて方向選択スイッチ37の操作状態が検出される。」(明細書17頁11行?19頁6行)
「一方、前記ステップ78の判定処理時に、方向選択スイッチ37の可動接点37aが固定接点37c側に投入すなわち左方向移動が選択されていれば、同ステップ78の判定処理により、プログラムはステップ79へ進められる。ステップ79においては、障害物センサ33a?33dからの検出信号が取り込まれて車両の外周近傍における障害の有無が判定される。かかる場合、車両の外周近傍に障害物がなければ、前記ステップ79における「NO」との判定の基に、ステップ80にて、上記ステップ71の処理と同様にして、確認ためにブザー48が非発音制御されるとともに、警告ランプ49が消灯制御される。次に、ステップ81にて、方向表示装置46の表示器46aを点灯制御するために制御信号と、表示器46bを点滅制御するための制御信号とが出力インターフェース38fを介して表示制御回路41へ出力される。・・・
かかるステップ81の処理後、ステップ82にて電動モータ13を逆転制御するための制御信号が出力インターフェース38fを介して回転制御回路44へ出力され、同制御回路44はリレースイッチ53a,53bを介して電動モータ13を逆転させる。その結果、同モータ13は逆転し始め、該回転は回転軸13aに形成したウォーム及びホイール16を介して補助輪11へ伝達されて、左回転し始める。この補助輪11の左回転により、当該車両の後部は、第6図の破線矢印の方向へ旋回し始める。前記ステップ82の処理後、プログラムはステップ62へ戻されるが、前記操作状態が継続している限り、ステップ62?65,77?82からなる循環処理が実行され続けて、当該車両の後部は左旋回し続ける。
前記循環処理中、運転者が旋回選択スイッチ37を中立状態に復帰させると(当審注:「旋回選択スイッチ37」は「方向選択スイッチ37」の誤記と認める。)、ステップ78の判定処理により、前記ステップ85,86の処理が実行されて、方向表示装置46の全てが消灯されるとともに、電動モータ13の回転が停止されて前記当該車両の後部の左旋回も停止する。また、旋回選択スイッチ36がオフ操作されれば、ステップ64の判定処理により、ステップ69?74の処理が実行されて、補助輪11は回転停止されるとともに上昇制御される。」(明細書19頁16行?22頁2行)
「また、前記ステップ78の判定処理時に、方向選択スイッチ37の可動接点37aが固定接点37bに投入すなわち右方向移動が選択されていれば、同ステップ78の判定処理により、プログラムはステップ87?92,85,86の処理へ進められる。かかる場合、車両の外周近傍に障害物がなければ、前記ステップ87おける「NO」との判定の基に、ステップ88?90にて、前記ステップ80?82の処理と同様にして、ブザー48の発音が停止され、警告ランプ49が消灯され、方向表示装置46の表示器46aが点灯され、表示器46cが点滅され、電動モータ13の正転によって当該車両の後部が第6図の実線矢印の方向へ旋回される。
また、当該車両の外周の一部が壁等の障害物に接近した場合には、ステップ87における「YES」すなわち障害物有りとの判定の基に、ステップ91,92,85,86にて、前記ステップ83?86の処理と同様に、方向選択スイッチ37が強制的に中立状態に復帰され、ブザー48が発音され、警告ランプ49が点灯され、方向表示装置46の表示器46a?46cが消灯され、電動モータ13の停止によって補助輪11の回転が停止される。なお、かかる場合も、運転者により、方向選択スイッチ37が中立状態に戻されて補助輪11が回転が停止される点、及び旋回選択スイッチ36のオン操作が解除されて補助輪11の回転が停止されかつ上昇される点に関しては、前述した場合と全く同じである。
このように、旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37の操作により、当該車両の後部を同車両の前部を中心に旋回させることができるので、当該車両を狭い場所に簡単に駐車させることが可能になる。」(明細書23頁9行?25頁2行)
(1e)「(4)上記実施例においては、補助輪11を車両の後部中央付近に設けるようにしたが、車両の前部すなわち両前輪の中央付近に設けるようにしてもよい。かかる場合は、車両は後部を中心に回動するようになる。」(明細書29頁9?13行)
(1f)以下の第1図、第2図、第3図、第5図、第6図が示されている。

(1g)
(i)上記(1b)より、「補助輪アセンブリ10」は「車両の後部中央に」設けられており、「油圧制御回路及び電気制御回路により制御される」ものであること、
(ii)さらに上記(1f)第1?3図を併せみると、補助輪アセンブリ10は、補助輪11、油圧シリンダ12、ピストン12a、ピストンロッド12d、電動モータ13を含んでおり、ピストンロッド12dはピストン12aの上端に接続され、ピストン12aは油圧シリンダ12の内部に摺動可能に収容されていることが明らかである。
(1h)上記(1c)より、「電気制御回路」は、「障害物センサ33a?33d、上昇完了検出スイッチ34、下降完了検出スイッチ35、旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37を備え」、「障害物センサ33a?33d」は、「車両近傍に位置する障害物の存在を検出して、障害物の有無を表す検出信号をそれぞれ出力する」ものであることが明らかである。
(1i)
(i)上記(1d)及び(1f)第5図より、「車両が停止中であって」、「運転者が旋回選択スイッチ36をオン操作すると」、「旋回選択スイッチ36がオン状態であると判定され」、「下降完了検出スイッチ35がオン状態にあるか否かが判定され」「補助輪11が完全に下降していなければ」、「補助輪11は下降」し、「下降完了検出スイッチ35がオンすると」、「補助輪11が前記下降完了位置に維持制御され」、「後輪RWは地面GRから浮いた状態に保たれ」、「方向選択スイッチ37の操作状態が検出され」「左方向移動が選択されていれば」、「障害物センサ33a?33dからの検出信号が取り込まれて車両の外周近傍における障害の有無が判定され」、「車両の外周近傍に障害物がなければ」、「電動モータ13を逆転制御するための制御信号が」「回転制御回路44へ出力され」、「電動モータ13を逆転させ」、「補助輪11へ伝達されて、左回転し始め」、「車両の後部は、第6図の破線矢印の方向へ旋回し始め」、「運転者が方向選択スイッチ37を中立状態に復帰させると」、「電動モータ13の回転が停止されて前記当該車両の後部の左旋回も停止し」、「また、旋回選択スイッチ36がオフ操作されれば」、「補助輪11は回転停止されるとともに上昇制御され」、「また」、「方向選択スイッチ37」が「右方向移動が選択されていれば」、「車両の外周近傍に障害物がなければ」、「電動モータ13の正転によって当該車両の後部が第6図の実線矢印の方向へ旋回され」、「運転者により方向選択スイッチ37が中立状態に戻されて補助輪11が回転が停止され」、また、「旋回選択スイッチ36のオン操作が解除されて補助輪11の回転が停止されかつ上昇され」、「このように」、「旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37の操作により」、「車両の後部を同車両の前部を中心に旋回させることができるので」、「車両を狭い場所に簡単に駐車させることが可能になる」こと、
(ii)上記第6図より、「第6図の破線矢印の方向へ旋回」することは、「車両を縦列駐車位置に向けて旋回」することであり、「第6図の実線矢印の方向へ旋回」することは、「車両を縦列駐車位置とは逆の方向に向けて旋回」すること、が明らかである。
(1j)上記(1a)の「狭い場所での縦列駐車等を可能としている」との記載及び上記(1d)の「実施例の動作を第5図のフローチャートに従って説明する」との記載から、上記(1i)に記載した事項は、縦列駐車等の方法に関する事項であることが明らかである。

以上を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「補助輪アセンブリ10は車両の後部中央に設けられ、油圧制御回路及び電気制御回路により制御され、補助輪11、油圧シリンダ12、ピストン12a、ピストンロッド12d、モータ13を含んでおり、ピストンロッド12dはピストン12aの上端に接続され、ピストン12aは油圧シリンダ12の内部に摺動可能に収容されているものであって、
前記電気制御回路は、障害物センサ33a?33d、上昇完了検出スイッチ34、下降完了検出スイッチ35、旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37を備え、障害物センサ33a?33dは、車両近傍に位置する障害物の存在を検出して、障害物の有無を表す検出信号をそれぞれ出力するものであって、
車両が停止中であって、運転者が旋回選択スイッチ36をオン操作すると、旋回選択スイッチ36がオン状態であると判定され、下降完了検出スイッチ35がオン状態にあるか否かが判定され、補助輪11が完全に下降していなければ、補助輪11は下降し、下降完了検出スイッチ35がオンすると、補助輪11が前記下降完了位置に維持制御され、後輪RWは地面GRから浮いた状態に保たれ、方向選択スイッチ37の操作状態が検出され、左方向移動が選択されていれば、障害物センサ33a?33dからの検出信号が取り込まれて車両の外周近傍における障害の有無が判定され、車両の外周近傍に障害物がなければ、電動モータ13を逆転制御するための制御信号が回転制御回路44へ出力され、電動モータ13を逆転させ、補助輪11へ伝達されて、左回転し始め、車両の後部は、車両を縦列駐車位置に向けて旋回し始め、運転者が旋回選択スイッチ37を中立状態に復帰させると、電動モータ13の回転が停止されて前記当該車両の後部の左旋回も停止し、また、旋回選択スイッチ36がオフ操作されれば、補助輪11は回転停止されるとともに上昇制御され、また、方向選択スイッチ37が右方向移動が選択されていれば、車両の外周近傍に障害物がなければ、電動モータ13の正転によって当該車両の後部が車両を縦列駐車位置とは逆の方向に向けて旋回され、運転者により方向選択スイッチ37が中立状態に戻されて補助輪11が回転が停止され、また、旋回選択スイッチ36のオン操作が解除されて補助輪11の回転が停止されかつ上昇され、このように、旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37の操作により、車両の後部を同車両の前部を中心に旋回させることができるので、車両を狭い場所に簡単に駐車させることが可能になる
縦列駐車等の方法」

イ 対比・判断
(ア)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「縦列駐車」には、道路の左側もしくは右側で、車両を路肩駐車することを含むことは明らかである。そして、引用発明の「縦列駐車等の方法」は、「旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37の操作により、車両の後部を同車両の前部を中心に旋回させることができるので、車両を狭い場所に簡単に駐車させることが可能になる」のであるから、縦列駐車を助ける運転者のための方法であるということができる。
そうすると、引用発明の「縦列駐車等の方法」は、本願補正発明の「道路の左側もしくは右側で、車両の路肩駐車を助ける運転手のための方法」に相当するといえる。
(b)引用発明の「補助輪アセンブリ10」は、「車両の後部中央に設けられ」るものであり、かかる「補助輪アセンブリ10」に含まれる「補助輪11」は「下降」もしくは「上昇」するものであり、「回転」するものでもあるから、引用発明の「補助輪アセンブリ10」は、可動な機構あるいは装置ということができる。
また、かかる「補助輪11」の「回転」により、「車両の後部は、車両を縦列駐車位置に向けて旋回」することができるから、引用発明の「補助輪アセンブリ10」により、「縦列駐車」が達せられるといえ、かかる「縦列駐車」は、車両を最終駐車位置、すなわち、縁石あるいは歩道に対して平行に置くことを含むということができる。
また、かかる「縦列駐車」の際に、「障害物センサ33a?33dからの検出信号が取り込まれて車両の外周近傍における障害の有無が判定され」、「車両の外周近傍に障害物がなければ」、「車両の後部は、車両を縦列駐車位置に向けて旋回」させられるものであるから、適切なセンサの補助により、「縦列駐車」が達せられるということもできる。
さらに、「運転者」による「旋回選択スイッチ36及び方向選択スイッチ37の操作により」、「車両の後部を同車両の前部を中心に旋回させることができる」ものであり、「車両を狭い場所に簡単に駐車させることが可能になる」ものであるから、引用発明の「縦列駐車」は、運転者の指示で達せられるものということができる。
そうすると、引用発明の「縦列駐車等の方法」は、上記(a)での対比をも踏まえると、本願補正発明の「道路の左側もしくは右側で、車両の路肩駐車を助ける運転手のための方法であって」、「車両を最終駐車位置に、すなわち車両を縁石あるいは歩道対して平行に置くことが、適切なセンサの補助により、運転手の指示で、車両の後部に置かれた可動な機構あるいは装置により達せられ」る「方法」に相当するといえる。
(c)引用発明の「補助輪アセンブリ10」は、「補助輪11」を含むとともに、「油圧シリンダ12、ピストン12a、ピストンロッド12d」を含むものであり、かかる「ピストンロッド12d」は、「油圧シリンダ12の内部に摺動可能に収容されている」「ピストン12aの上端に接続され」ており、「ピストン12a」と一体に変位することができるから、「補助輪アセンブリ10」に含まれる「油圧シリンダ12」は「ピストンロッド12d」を含む全体の長さが長手方向に変化する棒状体、すなわち、伸びる棒状体であるということができる。
引用発明の「補助輪アセンブリ10」は、「補助輪11」と「油圧シリンダ12、ピストン12a、ピストンロッド12d」を含むものであり、それらが「縦列駐車」に使用されるから、上記(b)での対比をも踏まえると、本願補正発明の「車輪、キャタピラー機構および伸びる棒状体の内のいずれか二つが可動な機構あるいは装置として組合されかつ使用される」ものに相当するといえる。

以上によれば、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりといえる。
<一致点>
「道路の左側もしくは右側で、車両の路肩駐車を助ける運転手のための方法であって、車両を最終駐車位置に、すなわち車両を縁石あるいは歩道対して平行に置くことが、適切なセンサの補助により、運転手の指示で、車両の後部に置かれた可動な機構あるいは装置により達せられ、
車輪、キャタピラー機構および伸びる棒状体の内のいずれか二つが可動な機構あるいは装置として組合されかつ使用される方法」
<相違点1>
本願補正発明は、「別の駐車された車両の背後で、かつ縁石あるいは歩道のできるだけ近くに、所望の駐車スペースの内側に車両を運転するために、運転手が所望の駐車環境に応じて左方向あるいは右方向のどちらかで前方に向かって車両を運転し、かつ前方の道路コースを利用」するという手順を備えているのに対し、引用発明はそのような手順を備えているとの特定がされていない点。
<相違点2>
本願補正発明は、「前記可動な機構あるいは装置が、車体の前部の下に置かれた場合には、前記所望の駐車スペースに対して後ろ向きに車両を置きかつ駐車するために、あるいは前記所望の駐車スペースから前方に車両を出すために、前記車両の後部に置かれた前記可動な機構あるいは装置が使用されるのと同様の応用された方法が利用されることができる」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

(イ)判断
(a)相違点1について
引用発明の「縦列駐車等の方法」は、上記摘示(1d)及び上記摘示(1f)の第6図の記載を参酌すると、前方に駐車している車両の背後に自車の前部を着けるように運転し、第6図示の破線矢印の方向に車両の後部を旋回させて、縦列駐車するものであるといえる。そうすると、引用発明の「縦列駐車等の方法」においても、前記破線矢印の方向に車両の後部を旋回させる前に、運転士が、縦列駐車するために、すなわち、前記前方に駐車している車両(別の駐車された車両)の背後で、かつ縁石あるいは歩道のできるだけ近くに、所望の駐車スペースの内側に車両を運転するために、所望の駐車環境に応じて左方向あるいは右方向のどちらかで前方に向かって車両を運転し、かつ前方の道路コースを利用し、前方に駐車している車両の背後に自車の前部を着けるように運転する手順が前提となっていることが明らかであるといえる。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点とはいえない。
仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の手順を備えるようにすることは、引用発明における縦列駐車等の方法を考慮すれば、当業者が容易に想到しうる程度の事項といえる。

(b)相違点2について
刊行物1には、「(4)上記実施例においては、補助輪11を車両の後部中央付近に設けるようにしたが、車両の前部すなわち両前輪の中央付近に設けるようにしてもよい。かかる場合は、車両は後部を中心に回動するようになる。」(上記摘示(1e))と記載されているように、「補助輪アセンブリ10」を車両の前部の下に置いた場合には、車両の後部を中心にして前部を旋回するような使い方ができることが記載されているといえる。
引用発明の「縦列駐車等の方法」に接した当業者がこのような使い方ができることを知れば、かかる使い方を参考にするとともに引用発明の「縦列駐車等の方法」を応用して、縦列駐車を行うための所望のスペースに対して後ろ向きに車両を置きかつ駐車するために、「補助輪アセンブリ10」を使用することは格別困難なこととはいえない。
また、引用発明の「縦列駐車等の方法」は、「車両を縦列駐車位置とは逆の方向に向けて旋回」(刊行物1の第6図の実線矢印の方向に旋回)することも可能であることを考慮すれば、上記使い方を参考にすることで、前記所望の駐車スペースから前方に車両を出すために、「補助輪アセンブリ10」を使用することも格別困難なこととはいえない。
してみると、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明のようにすることは、引用発明及び刊行物1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到しうるものといえる。
そして、本願補正発明の作用効果についても、引用発明及び刊行物1に記載された事項から予測可能なものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年2月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(1)【請求項1】」に記載したとおりである。

2 刊行物の記載事項等
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、上記「第2[理由]2(2)ア」に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は、本願補正発明の「車輪、キャタピラー機構および伸びる棒状体の内のいずれか二つが可動な機構あるいは装置として組合されかつ使用される」という事項を省いたものに相当するところ、上記「第2[理由]2(2)イ(ア)」で述べたのと同様な相違点を有するといえるから、上記「第2[理由]2(2)イ(イ)」で判断したとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-05 
結審通知日 2017-10-11 
審決日 2017-10-27 
出願番号 特願2014-553814(P2014-553814)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60S)
P 1 8・ 121- Z (B60S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯島 尚郎  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 和田 雄二
平田 信勝
発明の名称 車両の路上の前方への進路と補助的機構による最終駐車位置における車両の後部の配置だけを使用した車両を駐車するための方法  
代理人 清田 栄章  
代理人 篠原 淳司  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  

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