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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1338587
審判番号 不服2017-610  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-16 
確定日 2018-03-15 
事件の表示 特願2014-502835「鼻腔内ベンゾジアゼピン薬剤学的組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/135619、平成26年 4月21日国内公表、特表2014-509655〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年3月30日(パリ条約による優先権主張2011年3月31日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月25日付けで手続補正がなされ、平成28年1月13日付け拒絶理由通知に応答して同年7月6日付けで手続補正書と意見書が提出されたが、同年9月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年1月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成29年1月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
5.00質量%のジアゼパム又はその薬剤学的に許容される塩、45.70質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル、7.60質量%のプロピレングリコールモノカプリレート、9.50質量%のメチルラウレート、22.70質量%のN-メチル-2-ピロリドン、7.60質量%のエタノール、及び1.90質量%の水を含む、薬剤学的組成物。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?17に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である国際公開2009/139589号に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、平成29年1月16日付け手続補正書による手続補正は、当該手続補正前の請求項1?3、5?11及び14?17を削除し、さらに、請求項4、12及び13を独立請求項にすると共に、請求項の番号を繰り上げて請求項1?3とすることを目的とするものであるから、本願の請求項1?3に係る発明は、それぞれ、平成29年1月16日付け手続補正書による手続補正前の請求項4、12、13と同一の発明である。

4.当審の判断
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開2009/139589号(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が記載されている。なお、原文は、英文であるため翻訳文(引用例1に対応する特表2011-520875号公報による。)で示す。また、下線は、当審による。

(ア)
「請求項[7] ジエチレングリコールモノエチルエーテル、脂肪酸エステル、メチルピロリドン、水及びアルコールを含み、経鼻的に噴霧投与される、活性成分として難溶性抗けいれん剤を含む、抗けいれん医薬組成物。
請求項[8] 前記難溶性の抗けいれん剤が、ジアゼパム及びロラゼパムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[9] 前記脂肪酸エステルが、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、イソプロピルパルミテート、オレオイルポリオキシルグリセリド、ソルビタンモノラウレート20、メチルラウレート、エチルラウレート、ポリソルベート20及びプロピレングリコールモノカプリレートからなる群より選ばれる、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[10] 前記脂肪酸エステルがメチルラウレートを含む、請求項9に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[11] 前記アルコールがエタノールである、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[12] 前記難溶性抗けいれん剤が、医薬組成物の全質量に基づき1乃至20質量%の含有量で存在する、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[13] 前記医薬組成物が、経鼻噴霧投与のため、10mm^(2)/秒以下の動粘度を有する、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。
請求項[14] ・・・略・・・
請求項[15] ジアゼパム及びロラゼパムからなる群より選ばれる少なくとも1種の難溶性抗けいれん剤5乃至20質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル40乃至60質量%、メチルラウレート5乃至15質量%、メチルピロリドン5乃至30質量%、水1乃至5質量%、及びエタノール5乃至10質量%を含む、請求項7に記載の抗けいれん医薬組成物。」(17?18頁)
(イ)
「[35]
本発明の典型的な実施態様により使用される脂肪酸エステルは、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、イソプロピルパルミテート、オレオイルポリオキシルグリセリド、ソルビタンモノラウレート20、メチルラウレート、エチルラウレート、ポリソルベート20及びプロピレングリコールモノカプリレートを含むが、これらに特に限定されるものではなく、そしてこれらは単独で又はこれらの組み合わせにおいて使用され得る。それゆえ、脂肪酸エステルは好ましくは、医薬組成物の全質量に基づいて、少なくとも30質量%またはこれ以上の含有量において存在する。より好ましくは、脂肪酸エステルは、医薬組成物の全質量に基づいて、30乃至50質量%の含有量で存在する。
[36]
より好ましくは、メチルラウレートが脂肪酸エステルとして使用され、そして、医薬組成物の全質量に基づいて、少なくとも30質量%又はこれ以上の含有量で存在する。より好ましくは、脂肪酸エステルは、医薬組成物の全質量に基づいて、30乃至50質量%の含有量で存在する。
[37] さらに、プロピレングリコールモノカプリレートが脂肪酸エステルとして好ましく使用される。この場合において、プロピレングリコールモノカプリレートは、好ましくは、医薬組成物の全質量に基づいて、5乃至25質量%の含有量で存在するが、本発明はこれらに特に限定されるものではない。
[38] さらに、本発明の好ましい実施態様により使用されるアルコールは、好ましくは、エタノールを含むが、これに限定されるものではない。
[39] また、本発明の典型的な実施態様によれば、本発明の医薬組成物は、ジアゼパム及びロラゼパムからなる群より選ばれる難溶性抗けいれん剤の少なくとも1種5乃至15質量%、そしてまた、ジエチレングリコールモノエチルエーテル40乃至60質量%、メチルラウレート5乃至15質量%、メチルピロリドン5乃至30質量%、水1乃至5質量%及びエタノール5乃至10質量%を含む。」(6,7頁の段落[37]?[39])
(ウ)
「[47] 実施例1:経鼻投与のための溶液の製造
[48] ジエチレングリコールモノエチルエーテル及び脂肪酸エステルを、パドル型の攪拌器へ入れ、完全に混合した。次に、疎水性溶媒、水及びエタノールを連続して添加し、そして得られた混合物を必要に応じて混合した。ここで、“完全に混合した”の表現は、混合物溶液が透明でそして如何なる層分離及び濁りのない透明である状態を意味する。
[49]
[50] 実施例2:ジアゼパムの溶解性試験
[51] 100mgのジアゼパムを、それぞれの製剤が以下の表に一覧された組成物比を有するように、実施例1の方法で製造された混合物の500μLへ添加した。次に、得られた混合物を室温において24時間攪拌し、そして0.45マイクロメートルのメンブランフィルターを通して濾過した。次に、得られた濾液を、ジアゼパムの濃度を分析するために高速液体クロマトグラフィーにかけた。この実験で使用したカラムは、30cm×3.9mmの10mmのC18カラムであり、そして移動相は、(容量比で)65%のメタノール及び35%の蒸留水からなる混合物であった。流速を1.4mL/分に設定し、そして検出を、波長254nmにおいて行った。p-ヒドロキシアニソールを分析の内部標準物質として使用した。結果を以下の表1乃至8に一覧する。ジアゼパムが溶解している最終溶液において、それぞれの成分は最終組成物比(質量%によって表される。
・・・略・・・
[64] 表7

」(8頁段落[47]?12頁段落[64])

(2)対比、判断
引用例1の請求項15(上記(1)の摘示(ア))に記載の発明を、請求項7を引用しない形式で記載すると以下のとおりである。

「ジエチレングリコールモノエチルエーテル、脂肪酸エステル、メチルピロリドン、水及びアルコールを含み、経鼻的に噴霧投与される、活性成分として難溶性抗けいれん剤を含む、抗けいれん医薬組成物であって、
ジアゼパム及びロラゼパムからなる群より選ばれる少なくとも1種の難溶性抗けいれん剤5乃至20質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル40乃至60質量%、メチルラウレート5乃至15質量%、メチルピロリドン5乃至30質量%、水1乃至5質量%、及びエタノール5乃至10質量%を含む、
医薬組成物。」

この発明において、メチルラウレートは、摘示(ア)の請求項10の記載等を勘案すると脂肪酸エステルに該当し、エタノールは、摘示(ア)の請求項11等の記載を勘案するとアルコールに該当する。
また、この発明は、難溶性抗けいれん剤について選択肢(ジアゼパム及びロラゼパムからなる群より選ばれる少なくとも1種)を有するものであり、当該選択肢についてジアゼパムを選択した場合の発明(以下、「引用発明」という。)は以下のとおりのものである。

< 引用発明 >
「活性成分としてジアゼパムからなる難溶性抗けいれん剤5?20質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル40乃至60質量%、脂肪酸エステルとしてメチルラウレート5乃至15質量%、メチルピロリドン5乃至30質量%、アルコールとしてエタノール5乃至10質量%、水1乃至5質量%を含み、経鼻的に噴霧投与される、抗けいれん医薬組成物。」

本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「メチルピロリドン」について、「メチルピロリドン」は、「N-メチル-2-ピロリドン」の別名である。
そうすると、両発明は、
「ジアゼパム又はその薬剤学的に許容される塩、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルラウレート、N-メチル-2-ピロリドン、エタノール、及び水を含む、薬学的組成物」
である点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

< 相違点1 >
薬学的組成物を構成する成分について、本願発明は、7.60質量%のプロピレングリコールモノカプリレートを含むのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。
< 相違点2 >
薬学的組成物を構成する各成分であるジアゼパム、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、メチルラウレート、N-メチル-2-ピロリドン、エタノール、及び水の含有量について、本願発明は、それぞれ、5.00質量%、45.70質量%、9.50質量%、22.70質量%、7.60質量%、及び1.90質量%と特定されているのに対し、引用発明は、それぞれ、5?20質量%、40乃至60質量%、5乃至15質量%、5乃至30質量%、5乃至10質量%、1乃至5質量%と特定されている点。

相違点1について
引用例1には、脂肪酸エステルについて、「脂肪酸エステルは、・・メチルラウレート、・・プロピレングリコールモノカプリレート・・これらは単独で又はこれらの組み合わせにおいて使用され得る。」、「より好ましくは、メチルラウレートが脂肪酸エステルとして使用され、そして、医薬組成物の全質量に基づいて、少なくとも30質量%又はこれ以上の含有量で存在する。」、「さらに、プロピレングリコールモノカプリレートが脂肪酸エステルとして好ましく使用される。この場合において、プロピレングリコールモノカプリレートは、好ましくは、医薬組成物の全質量に基づいて、5乃至25質量%の含有量で存在する」(摘示(イ)参照)と記載されている。
また、引用例1には、実施例2の製剤7が記載されており、その組成は、「ジアゼパム13.41質量%、ジエチレングリコールモノエチルエーテル41.56質量%、メチルラウレート8.68質量%、プロピレングリコールモノカプリレート6.93質量%、メチルピロリドン20.78質量%、蒸留水1.73質量%、及びエタノール6.93質量%」というもの(摘示(ウ)の段落[64]参照)であって、引用発明に該当すると同時に脂肪酸エステルとしてプロピレングリコールモノカプリレートを含むものである。
そうすると、引用発明において、さらに、プロピレングリコールモノカプリレートを含有させるとともに、その含有量を、5乃至25質量%を満足する7.60質量%とする程度のことは、当業者であれば適宜なし得ることであると認められる。
また、プロピレングリコールモノカプリレートを含有させるとともに、その含有量を7.60質量%としたことにより、当業者が引用文献1に記載された事項から予測することができない効果が奏されているわけでもない。

相違点2について
当業者であれば、引用発明において、各成分の含有割合を、それぞれの範囲の中から、それぞれ、5.00質量%、45.70質量%、9.50質量%、22.70質量%、7.60質量%、及び1.90質量%に特定する程度のことは、適宜なし得ることであると認められる。
また、上記特定をしたことにより上記特定を満足しない場合と比較して、当業者が引用文献1に記載された事項から予測することができない効果が奏されているわけでもない。

請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、以下の主張1、2をしている。下線は、当審による。
< 主張1 >
「そして、本願明細書の実施例には、DZNSフォーミュラ1の鼻腔内投与により、また、DZNSフォーミュラ2の鼻腔内投与により、Diastatの直腸投与に比して、可変性が小さい、ジアゼパムの高い溶解性及び高い生体内利用率が示されたことが記載されています(例えば[表3]参照)。」(5頁20?23行)
< 主張2 >
「更に、本願請求項1に係る薬剤学的組成物(DZNSフォーミュラ1)は、引用文献1に記載のFormulation7よりも優れた効果を示すものであり、そして、該優れた効果は、引用文献1に記載された発明から容易に予測できない顕著なものといえるものです。」(6頁18?21行)

主張1について
引用発明は、経鼻的に噴霧投与されるものであるから、Diastatの直腸投与は、引用発明に対応しない。
むしろ、本願発明は、鼻腔投与用に限定されておらず、直腸投与用も含むと解されるから、Diastatの直腸投与は、本願発明に対応する。
結局、Diastatの直腸投与と比較しても、引用発明と本願発明を比較したことにはならないから、主張1は、本願発明の構成に対応して得られる引用発明に比して有利な効果に関するものではない。

主張2について
この主張(本願発明が引用文献1に記載された発明から容易に予測できない顕著な効果を奏する)に関連して、具体的な説明や根拠が何も記載されていないこと、この主張の直前に主張1が記載されていることを勘案すると、この主張は、要するに主張1に基づけば、本願発明は、引用文献1に記載された発明から容易に予測できない顕著な効果を奏するというものであると解されるが、上述のとおり、主張1は、そもそも、本願発明と引用発明が奏する効果の比較に関するものではない。

したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められる。


5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-16 
結審通知日 2017-10-18 
審決日 2017-10-31 
出願番号 特願2014-502835(P2014-502835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星 功介牧野 晃久深草 亜子  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 淺野 美奈
前田 佳与子
発明の名称 鼻腔内ベンゾジアゼピン薬剤学的組成物  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  
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