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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1338601 |
審判番号 | 不服2017-9080 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-06-21 |
確定日 | 2018-03-15 |
事件の表示 | 特願2015-246249号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月22日出願公開、特開2017-108942号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年12月17日の出願であって、平成28年7月27日付け拒絶理由通知に対して、同年10月5日付けで手続補正がなされたところ、平成29年3月13日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年3月21日)、これに対して、同年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について本件補正前に、 (平成28年10月5日付け手続補正) 「【請求項1】 通常遊技状態と前記通常遊技状態より有利な特定遊技状態とを含む各遊技状態で遊技を進行させる遊技制御手段と、 前記特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる遊技状態移行手段と、 予め定められた契機で、前記特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行う上乗せ抽選手段であって、1の特定の契機で、第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う上乗せ抽選手段と、 前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じて前記特定遊技状態を延長する上乗せ制御手段と、 前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果を個別には判断不能な態様で報知可能な報知手段と を具備する遊技機。」 とあったものを、 (本件補正である平成29年6月21日付け手続補正) 「【請求項1】 通常遊技状態と前記通常遊技状態より有利な特定遊技状態とを含む各遊技状態で遊技を進行させる遊技制御手段と、 前記特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる遊技状態移行手段と、 予め定められた契機で、前記特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行い、且つ、1の特定の契機で、第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う上乗せ抽選手段と、 前記第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、前記特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する上乗せ制御手段と、 前記第1上乗せ遊技回数と前記第2上乗せ遊技回数とをあわせた総上乗せ遊技回数を、前記第1上乗せ遊技回数および前記第2上乗せ遊技回数を個別には判断不能な態様で報知可能であり、且つ、前記延長後の前記残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である報知手段と を具備し、 前記報知遊技回数は、前記特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され、 前記報知手段は、 前記総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合、前記総上乗せ遊技回数を一度に報知し、 前記総上乗せ遊技回数が前記閾値を超えた場合、当該閾値を前記総上乗せ遊技回数の一部として報知し、当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に前記報知遊技回数が所定回数まで減少された場合、前記総上乗せ遊技回数のうち前記閾値を超えた分の上乗せ遊技回数を報知する 遊技機。」 と補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。 2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「上乗せ制御手段」に関して、「前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じて前記特定遊技状態を延長する」とあったものを「前記第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、前記特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する」と限定し、 補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「報知手段」に関して、「前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果を個別には判断不能な態様で報知可能な」とあったものを「前記第1上乗せ遊技回数と前記第2上乗せ遊技回数とをあわせた総上乗せ遊技回数を、前記第1上乗せ遊技回数および前記第2上乗せ遊技回数を個別には判断不能な態様で報知可能であり、且つ、前記延長後の前記残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である」と限定し、 補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「報知遊技回数」に関して、「前記報知遊技回数は、前記特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され、」ることを限定し、 補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「報知手段」に関して、「前記総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合、前記総上乗せ遊技回数を一度に報知し、前記総上乗せ遊技回数が前記閾値を超えた場合、当該閾値を前記総上乗せ遊技回数の一部として報知し、当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に前記報知遊技回数が所定回数まで減少された場合、前記総上乗せ遊技回数のうち前記閾値を超えた分の上乗せ遊技回数を報知する」ことを限定することを含むものである。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面等の記載からみて、新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?G2は、分説するため当審で付した。)。 「A 通常遊技状態と前記通常遊技状態より有利な特定遊技状態とを含む各遊技状態で遊技を進行させる遊技制御手段と、 B 前記特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる遊技状態移行手段と、 C 予め定められた契機で、前記特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行い、且つ、1の特定の契機で、第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う上乗せ抽選手段と、 D 前記第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、前記特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する上乗せ制御手段と、 E 前記第1上乗せ遊技回数と前記第2上乗せ遊技回数とをあわせた総上乗せ遊技回数を、前記第1上乗せ遊技回数および前記第2上乗せ遊技回数を個別には判断不能な態様で報知可能であり、且つ、前記延長後の前記残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である報知手段と を具備し、 F 前記報知遊技回数は、前記特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され、 G 前記報知手段は、 G1 前記総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合、前記総上乗せ遊技回数を一度に報知し、 G2 前記総上乗せ遊技回数が前記閾値を超えた場合、当該閾値を前記総上乗せ遊技回数の一部として報知し、当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に前記報知遊技回数が所定回数まで減少された場合、前記総上乗せ遊技回数のうち前記閾値を超えた分の上乗せ遊技回数を報知する 遊技機。」 (2)刊行物に記載された事項 ・記載事項 ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特許第5823006号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 通常遊技と、当該通常遊技より遊技者に有利な特典遊技とがあり、それらの遊技間を所定の契機で移行しながら遊技が実行される遊技機であって、 役を抽選するための役抽選手段と、 前記特典遊技に含まれる複数の特殊遊技を各々制御する特殊遊技制御手段と、 前記複数の特殊遊技の間を所定の契機で移行させる特殊遊技間移行手段と、 前記複数の特殊遊技のうち、少なくとも1つの特定の特殊遊技において、前記役抽選手段による役の抽選結果に対応した特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行する上乗せ抽選手段と、を備え、 前記上乗せ抽選手段は、 前記複数の特殊遊技の間の移行の段階が最上位に位置する特殊遊技において、前記上乗せ抽選を実行させるようにし、 前記上乗せ抽選手段は、 前記役抽選手段による役の抽選結果が、第1の抽選結果の場合に、当該第1の抽選結果と個別に対応付けられた少なくとも1つの特殊遊技の遊技区間における前記上乗せ抽選を実行させ、 前記第1の抽選結果と異なる第2の抽選結果の場合には、前記複数の特殊遊技の全てのうちのいずれか少なくとも一つ特殊遊技の遊技区間を決定し、決定された遊技区間における前記上乗せの抽選を実行させ、 前記一つ特殊遊技には、前記最上位に位置する特殊遊技が含まれている、 ことを特徴とする遊技機。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 この発明は、スロットマシン等の遊技機に関し、役の抽選結果に対応した特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行させることで、上乗せ抽選をより複雑に、かつ遊技者の関心の高いものとすることができるようにしたものである。」 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、上記した従来のものでは、上乗せ抽選を2回行うというものに過ぎず、当選した役に応じて、遊技状態を選択し、当該選択した遊技状態の上乗せ抽選を行うという構成を採用するものでなかった。 そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。 【0005】 本発明は、役の抽選結果に対応した特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行させるようにしたものである。 このため、本発明によれば、上乗せ抽選をより複雑に、かつ遊技者の関心の高いものとすることができる。 【0006】 本発明は、最上位に位置する特殊遊技において、役の抽選結果に対応した特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行させることで、その下位に位置する特殊遊技における上乗せ抽選も実行させることができるようにしたものである。 このため、本発明によれば、下位の特殊遊技に移行した場合に、上乗せ抽選の結果を享有することができるほか、下位の特殊遊技における上乗せ抽選に当選した場合に、最上位の特殊遊技から当該下位の特殊遊技に転落するような遊技性を持たせることも可能である。 【0007】 本発明は、役と対応する特殊遊技との関係を複雑に設定することができるようにしたものである。 【0008】 本発明は、上乗せ抽選をより複雑に、かつ遊技者の関心の高いものとすることができるようにしたものである。 【0009】 本発明は、最上位に位置する特殊遊技において、役の抽選結果に対応した特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行させることで、その下位に位置する特殊遊技における上乗せ抽選も実行させることができるようにしたものである。 【0010】 本発明は、役と対応する特殊遊技との関係を複雑に設定することができるようにしたものである。」 (ウ)「【0028】 (演出装置70) 前記前扉14には、遊技者に役抽選の当選等の種々の情報を音や光や映像等で報知させる演出装置70が形成されている。この演出装置70は、前扉14に配置されているものであって、スピーカー72と、表示装置84と、演出用ランプ78とを備えている。なお、回転リール62は、通常、遊技進行のために用いられるが、遊技の進行を停止している状態において、通常の回転動作とは異なる挙動による演出(いわゆるリール演出)を示すことにより演出装置70の一種としても使用される。」 (エ)「【0041】 メイン制御手段200は、マックスベットスイッチ34、精算スイッチ36、スタートスイッチ40、ストップスイッチ50の入力を受け付け、役抽選を行い、リールユニット60及び貯留払出手段24の作動を制御する。サブ制御手段300は、メイン制御手段200から信号を入力し、表示装置84等の演出装置70の作動を制御する。サブ制御手段300の出力側には、演出装置70としてのスピーカー72、表示装置84、演出用ランプ78の各パーツが接続されている。」 (オ)「【0073】 (上乗せ抽選手段450) 上乗せ抽選手段450は、上乗せ抽選を制御するものである。 上乗せ抽選手段450は、図5に示すように、第1上乗せ抽選手段451及び第2上乗せ抽選手段452を含む。 【0074】 (第1上乗せ抽選手段451) 第1上乗せ抽選手段451は、第1?第3特殊遊技のうち、少なくとも1つの特定の特殊遊技、本実施の形態では第1?第3特殊遊技の間の移行の段階が中位に位置する特殊遊技、例えば第2特殊遊技において、少なくとも当該第2特殊遊技より移行の段階が上位に位置する特殊遊技、例えば第3特殊遊技の遊技区間の上乗せ抽選を実行するものである。 このとき、特殊遊技間移行手段440は、第1上乗せ抽選手段451により上乗せ抽選に当選した場合に、特定の特殊遊技、例えば第2特殊遊技から上位の特殊遊技、例えば第3特殊遊技へ移行させるようにしている。 【0075】 「特定の特殊遊技」として、第2特殊遊技を例示したが、これに限定されず、例えば第1特殊遊技としてもよく、このとき「上位に位置する特殊遊技」として、例えば第2特殊遊技が相当する。」 (カ)「【0092】 (図7を用いた演出状態の説明) つぎに、図7を用いて「演出状態」について説明する。 「演出状態」は、主としてサブ制御手段300により管理され、図7に示すように、「通常遊技」、「特典遊技」(AT中)、「特別遊技」がある。「演出状態」を、主としてサブ制御手段300により管理したが、これに限定されず、メイン制御手段200とサブ制御手段300とが協同して管理するようにしてもよい。 「通常遊技」には、「通常状態」、「前兆遊技」がある。 なお、「通常遊技」として、「通常状態」及び「前兆遊技」とを例示したが、これらに限定されない。 ・・・ 【0095】 (特典遊技(AT中)) 「特典遊技」は、「通常遊技」より遊技者に有利な遊技であり、AT中である。「特典遊技」は、主としてサブ制御手段300により管理され、サブ制御手段300側からみると、AT制御手段330による「AT状態」にある。 「特典遊技」には、大別すると、第1?第3特殊遊技の3種類の特殊遊技が含まれ、図9に示すように、3種類の第1?第3特殊遊技は段階的に移行する。また、第1特殊遊技の前段には、「第1特殊準備遊技」がある。また、第1特殊遊技と第2特殊遊技及び第3特殊遊技との間には、「昇格準備遊技」、「昇格遊技」が位置する。 第1?第3特殊遊技は、本実施の形態では、ART中である。第1?第3特殊遊技は、主としてサブ制御手段300により管理され、サブ制御手段300側からみると、AT制御手段330による「AT状態」にある。このとき、メイン制御手段200側からみると、RT制御手段273による「RT状態」(RT2)にある。なお、特殊遊技を、ARTとしたが、これに限定されず、ATとしてもよい。 ・・・ 【0097】 (第1特殊遊技) 第1特殊遊技は、「第1特殊準備遊技」から移行し、基本のゲーム数として「20G」の遊技が可能であり、当該ゲーム中に「昇格遊技」への移行抽選を実行している。移行抽選に当選すると、「昇格準備遊技」に移行する。移行抽選に「ハズレ」のまま、ゲーム数を消化すると、「通常遊技」に戻る。 なお、第1特殊遊技の管理をゲーム数で行ったが、これに限定されず、払出枚数、純増枚数で管理するようにしてもよい。」 (キ)「【0125】 (当選役が「スイカ」の場合) 第1に当選役が「スイカ」の場合を例に挙げて説明する。 まず、図17に示すように、ステップS70に進み、「当選役は『スイカ』か?」否かが判定される。 上記判定の結果、当選役が「スイカ」であるので、次のステップS71に進み、「第3特殊遊技の上乗せゲーム数抽選」が実行される。例えば「10G、20G、30G、50G+α」のうちから、上乗せゲーム数が決定される。その結果、「スイカ」に当選すると、「10G」以上の上乗せゲーム数が獲得可能となる。 決定された上乗せゲーム数は記憶され、現在、進行中の第3特殊遊技の残りゲーム数に、上乗せゲーム数が加算される。 ステップS71の処理後、次のステップS72に進み、「当選役は『ベル』か?」否かが判定される。 上記判定の結果、当選役が「スイカ」であり、「ベル」でないので、次のステップS73を飛び越えて、ステップS72からステップS74に進み、「当選役は『チェリー』か?」否かが判定される。 上記判定の結果、当選役が「スイカ」であり、「チェリー」でないので、次のステップS75を飛び越えて、図17に示すフローチャートを終了する。 なお、第3特殊遊技の上乗せゲーム数として、「10G、20G、30G、50G+α」を例示したが、これらに限定されず、例えば「0G」を含めてもよい。また、第3特殊遊技の上乗せゲーム数を一段階で抽選させたが、これに限らず、第一段階で上乗せをする否かを抽選させ、その結果、上乗せをすると決定した場合に、第二段階として上乗せゲーム数を抽選するようにしてもよい。」 (ク)「【0131】 (変形例3) 変形例3は、少なくとも一つの特殊遊技において、第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を実行する場合である。 (1)一つの特殊遊技において、第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を選択抽選により選択するパターン 選択抽選の結果は、第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選のうちから、1個を選択する抽選でもよいし、「ハズレ」を含ませ、いずれの上乗せ抽選も実行しないようにしてもよいし、或いは同時当選を含め、2個の上乗せ抽選を行うようにしてもよい。 同時当選の場合には、2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を合計してもよいし、或いは2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を比較し、多い上乗せゲーム数を獲得できるようにしてもよい。 (2)一つの特殊遊技において、第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を同時に実行するパターン 本パターンでは、2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を合計してもよいし、或いは2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を比較し、多い上乗せゲーム数を獲得できるようにしてもよい。 なお、本実施の形態のほか全ての実施の形態の説明において、特殊遊技の管理をゲーム数で行ったが、これに限定されず、払出枚数、純増枚数で管理するようにしてもよい。」 ・認定事項 (ケ)【0125】の「当選役が「スイカ」の場合・・・決定された上乗せゲーム数は記憶され、現在、進行中の第3特殊遊技の残りゲーム数に、上乗せゲーム数が加算される。」との記載から、特殊遊技において決定された上乗せゲーム数は、進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算されることが記載されている。 また、【0131】には、「第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を同時に実行する・・・パターンでは、2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を合計してもよい」ことが記載されている。 したがって、刊行物1には、「特殊遊技における2個の上乗せ抽選により獲得された上乗せゲーム数は、合計され、進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算される」ことが記載されているといえる。 ・刊行物発明 上記(ア)?(ク)の記載事項、及び、上記(ケ)の認定事項を総合すると、刊行物1には、上乗せ抽選に関して変形例3の構成を備えるスロットマシンを中心に、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?eは、本願補正発明の記号A?GのうちのA?Eに対応させて付した。)。 「a 通常遊技、通常遊技より遊技者に有利な遊技であり、AT中である、第1?第3の3種類の特殊遊技を含む特典遊技、特別遊技を主として管理するサブ制御手段300(【0092】、【0095】)を備え、 b 第1特殊遊技において、移行抽選に「ハズレ」のまま、ゲーム数を消化すると「通常遊技」に戻り(【0095】、【0097】)、 c 役抽選手段による役の抽選結果が、第1の抽選結果の場合に、当該第1の抽選結果と個別に対応付けられた少なくとも1つの特殊遊技の遊技区間における第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を同時に実行する上乗せ抽選手段450(【請求項1】、【0131】)を備え、 d 特殊遊技における2個の上乗せ抽選により獲得された上乗せゲーム数は、合計され、進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算され(認定事項ケ)、 e 遊技者に役抽選の当選等の種々の情報を映像で報知する表示装置84(【0028】、【0041】)を備えた スロットマシン。」 イ 刊行物2に記載された技術事項 前置報告書において新たに提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-136005号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線部は当審で付した。以下同様。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、たとえば、スロットマシンに関する。詳しくは、遊技用価値を用いて1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンに関する。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、特許文献1に記載のスロットマシンでは、付与されたATゲーム数を1度にすべて報知するかあるいは複数回に分割して報知するかを、当該ATゲーム数に関わらず決定するものであった。このため、比較的多くのATゲーム数や最大ATゲーム数が付与された場合であっても、複数回に分割して報知されてしまう。その結果、比較的多くのATゲーム数や最大ATゲーム数が付与されることにより遊技者に対して本来提供できたはずの優越感を遊技者に抱かせることができず、比較的多くのATゲーム数や最大ATゲーム数が付与されることが、興趣向上に寄与し得ないといった不都合が生じる虞があった。 【0009】 この発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、有利度合いの高い特典が付与されることによる優越感を確実に遊技者に抱かせることにより、遊技の興趣を向上させることができるスロットマシンを提供することである。」 (ウ)「【0378】 このように、優遇期間においては、ゲーム毎にAT当選し決定されたATゲーム数が加算される。また、10ゲームに亘る優遇期間に移行されることにより獲得することが期待されるATゲーム数の期待値は、12×9+17=125となり、たとえば図16(c)に示す第3テーブルを参照してのAT抽選におけるATゲーム数の期待値よりも大きくなる。このため、優遇期間においては、優遇期間でないときよりも遊技者にとって有利となるようにAT抽選が行なわれる。」 (エ)「【0394】 [ATゲーム数報知処理] サブ制御部91は、演出状態制御処理に含まれるATゲーム数報知処理を実行することにより、未報知のATゲーム数の範囲内でゲーム数を設定して報知するとともに、1ゲーム消化に応じて1ずつ減算表示することにより行なわれる。本実施の形態におけるゲーム数の報知は、たとえば、液晶表示器51の所定表示領域に表示することにより行なわれ、1ゲームが開始するとき(あるいは1ゲームが終了するとき)に1ずつ減算表示される。 ・・・ 【0399】 S04において上乗せ当選していないと判定されたときには、S06において、未報知のATゲーム数がありながら、現在報知されている報知ゲーム数が1であって今から開始されるゲームで0になってしまう状況(すなわち後述するS16で表示されているゲーム数が0となってしまう状況)であるか否かが判定される。S06において報知ゲーム数(現在報知中のATゲーム数)が1であると判定されたときには、S07において、図19(c)に示す終了時テーブルを参照して、未報知のATゲーム数の範囲内で、上乗せ報知する上乗せゲーム数を決定し、S10に移行して未報知ゲーム数から今回報知すると決定された上乗せゲーム数を減算した後の残りゲーム数を特定するための未報知ゲーム数情報に更新する。」 (オ)「【0435】 図20は、ゲームの進行に応じた、報知ゲーム数および未報知ゲーム数の変化の一例を説明するためのタイミングチャートである。図20では、AT抽選の当選状況、報知ゲーム数情報から特定され液晶表示器51において報知されている報知ゲーム数、および未報知ゲーム数情報から特定される未報知ゲーム数が示されている。 ・・・ 【0440】 タイミング3は、上乗せ当選して「30ゲーム」が上乗せされるATゲーム数に決定され、未報知ゲーム数が一旦10+30=「40ゲーム」となり、上乗せされるATゲーム数である「30ゲーム」のうち、当該上乗せ当選により図18のS05において「20ゲーム」が上乗せゲーム数に決定された場合を示している。なお、図20では、当該上乗せ前の報知ゲーム数が「4ゲーム」であるときを例示する。 【0441】 上乗せゲーム数が決定されたときには、図18のS12で示したとおり、ゲーム数報知演出として「20ゲーム上乗せ!」といった演出が実行された後、報知ゲーム数として4+20=「24ゲーム」が報知されている。また、未報知ゲーム数は、40-20=20ゲームとなっている。上乗せ当選したときの上乗せゲーム数は、前述したように、AT+通常中やAT+RT2などであるときには再びRT3に制御されてARTに移行されたとき(それ以前に報知ゲーム数が0となったときにはそのタイミング)に報知され、それ以外の優遇期間を含む期間であるときにはそのゲームが終了したときに報知される。 【0442】 タイミング4は、報知ゲーム数が1となったとき、すなわち図18のS06において「YES」と判定されたときにおいて、図18のS07において未報知ゲーム数「20ゲーム」のうち「10ゲーム」が上乗せゲーム数に決定された場合を示している。」 (カ)「【0730】 また、未報知ゲーム数、今回上乗せゲーム数、あるいは報知ゲーム数のうち、振分率を特定するための対象となるゲーム数が、所定ゲーム数未満であるときには、未報知ゲーム数あるいは今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知せず、所定ゲーム数以上であるときにのみ、未報知ゲーム数あるいは今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知するようにしてもよい。」 (キ)上記(ア)?(カ)の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる(記号e2?g2は、本願補正発明の記号A?GのうちのE?Gに対応させて付した。)。 「優遇期間に、ゲーム毎にAT当選し、決定されたATゲーム数が加算されるスロットマシンにおいて、 e2 ゲームの進行に応じて(【0435】)、 上乗せ当選して「30ゲーム」が上乗せされるATゲーム数に決定された場合、未報知ゲーム数が一旦10+30=「40ゲーム」となり、上乗せされるATゲーム数である「30ゲーム」のうち、当該上乗せ当選により「20ゲーム」が上乗せゲーム数に決定され、20ゲーム上乗せされたことのゲーム数報知演出を実行し(【0435】、【0440】、【0441】)、 報知ゲーム数が1となったとき、未報知ゲーム数「20ゲーム」のうち「10ゲーム」が上乗せゲーム数に決定され(【0442】)、 ATゲーム数報知処理により、未報知のATゲーム数の範囲内でATゲーム数を設定して報知するサブ制御部91(【0394】)を備え、 f2 サブ制御部91は、報知されるATゲーム数を1ゲームが開始するときに1ずつ減算表示し(【0394】)、 g2 サブ制御部91は、 今回上乗せゲーム数が、所定ゲーム数未満であるときには、今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知せず、 今回上乗せゲーム数が、所定ゲーム数以上であるときにのみ、今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知し、 報知ゲーム数が1であると判定されたときには、未報知のATゲーム数の範囲内で、上乗せ報知する上乗せゲーム数を決定し、未報知ゲーム数から今回報知すると決定された上乗せゲーム数を減算した後の残りゲーム数を未報知ゲーム数として更新し、報知する(【0399】、【0730】)こと。」 (3)対比 本願補正発明と刊行物発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Dと刊行物発明の構成a?dについて、それぞれ(a)?(d)の見出しを付けて行った。)。 (a)刊行物発明における「通常遊技」、「通常遊技より遊技者に有利な遊技」「である特典遊技」は、それぞれ、本願補正発明における「通常遊技状態」、「通常遊技状態より有利な特定遊技状態」に相当する。 そして、刊行物発明における「通常遊技」、「特典遊技」は、本願補正発明における「各遊技状態」に相当する。 また、刊行物発明における「管理する」ことは、本願補正発明における「遊技を進行させる」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成aの「サブ制御手段300」は、本願補正発明における構成Aの「遊技制御手段」に相当する。 (b)上記(a)より刊行物発明における「特典遊技」に含まれる「第1特殊遊技」は、本願補正発明における「特定遊技状態」に相当する。 そして、刊行物発明における「移行抽選に「ハズレ」のまま、ゲーム数を消化する」ことは、本願補正発明における「終了条件が成立した」ことに相当する。 また、刊行物発明における「「通常遊技」に戻」すことは、本願補正発明における「特定遊技状態を終了させる」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成bの「「特典遊技」に含まれる第1特殊遊技において、移行抽選に「ハズレ」のまま、ゲーム数を消化すると、「通常遊技」に戻」ることは、本願補正発明における構成Bの「特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる」ことに相当する。 (c)刊行物発明における「役抽選手段による役の抽選結果が、第1の抽選結果の場合」は、本願補正発明における「予め定められた契機」、及び、「1の特定の契機」に相当する。 そして、刊行物発明における「上乗せ抽選を同時に実行」することは、構成dによると、「上乗せゲーム数は、進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算され」、加算されたゲーム数分だけ特殊遊技が延長されることになるから、本願補正発明における「特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行」うことに相当する。 また、刊行物発明における「第1、第2上乗せ抽選の2個の上乗せ抽選を同時に実行する」ことは、本願補正発明における「第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成cの「上乗せ抽選手段450」は、本願補正発明における構成Cの「上乗せ抽選手段」に相当する。 (d)刊行物発明における「2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を合計し、決定された上乗せゲーム数」は、本願補正発明における「第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数」に相当する。 そして、刊行物発明における「決定された上乗せゲーム数は、現在進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算され」ることは、ゲーム数が加算された分だけ「特典遊技」に含まれる特殊遊技の実行回数が増加し、特殊遊技が延長されることであるから、本願補正発明における「特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成dの「2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数を合計し、決定された上乗せゲーム数は、現在進行中の特殊遊技の残りゲーム数に加算され」ることは、本願補正発明における構成Dの「第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する」ことに相当する。 (e)刊行物発明における「役抽選の当選等の種々の情報」に「合計され」た「上乗せゲーム数」等が含まれることは、明らかである。 したがって、刊行物発明における「役抽選の当選等の種々の情報を映像で報知する表示装置84」と、本願補正発明における「延長後の前記残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である報知手段」とは、「遊技回数に関する情報を報知可能である報知手段」である点で共通する。 上記(a)?(e)の検討により、本願補正発明と刊行物発明とは、 [一致点] 「A 通常遊技状態と前記通常遊技状態より有利な特定遊技状態とを含む各遊技状態で遊技を進行させる遊技制御手段と、 B 前記特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる遊技状態移行手段と、 C 予め定められた契機で、前記特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行い、且つ、1の特定の契機で、第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う上乗せ抽選手段と、 D 前記第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、前記特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する上乗せ制御手段と、 E’遊技回数に関する情報を報知可能である報知手段と を具備する 遊技機。」 である点で一致し、構成E?Gに関して次の点で相違する。 [相違点1](構成E) 遊技回数に関する情報を報知可能である報知手段に関して、 本願補正発明は、「第1上乗せ遊技回数と第2上乗せ遊技回数とをあわせた総上乗せ遊技回数を、第1上乗せ遊技回数および第2上乗せ遊技回数を個別には判断不能な態様で報知可能であり、且つ、延長後の残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である報知手段」を具備するのに対して、 刊行物発明は、そのように特定されていない点。 [相違点2](構成F) 本願補正発明は、「報知遊技回数は、特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され」るのに対して、刊行物発明は、そのように特定されていない点。 [相違点3](構成G?G2) 報知手段に関し、 本願補正発明は、「総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合、総上乗せ遊技回数を一度に報知し、総上乗せ遊技回数が閾値を超えた場合、当該閾値を前記総上乗せ遊技回数の一部として報知し、当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に報知遊技回数が所定回数まで減少された場合、総上乗せ遊技回数のうち閾値を超えた分の上乗せ遊技回数を報知する」のに対して、 刊行物発明は、そのように特定されていない点。 (4)判断 ア 相違点1(構成E)について 刊行物発明は、「遊技回数に関する情報を報知可能である報知手段」を備えるものであり、刊行物発明においては「遊技回数に関する情報」として、刊行物発明の構成dによる「合計され」た「2個の上乗せ抽選により獲得された上乗せゲーム数」が含まれることから、上記「報知手段」で報知する「遊技回数に関する情報」として、該「合計され」た「2個の上乗せ抽選により獲得された上乗せゲーム数」を含めることで、上記相違点1に係る本願補正発明の構成Eの前半部分(「且つ、」より前)の構成とすることは当業者が適宜なし得たものであり、その際に、合計された上乗せゲーム数からは加算される前の個々の上乗せゲーム数を把握することが困難であることは当業者にとって自明である。 一方、刊行物2に記載された技術事項e2は、「上乗せ当選」する前に10ゲームであった未報知ゲーム数が、「30ゲーム」が上乗せされるATゲーム数に決定された場合、一旦10+30=「40ゲーム」となることを特定するものである。そうすると、刊行物2に記載された技術事項e2の「ATゲーム数である」「40ゲーム」の「未報知ゲーム数」は、本願補正発明における構成D、Eの「特定遊技状態で遊技可能な延長後の残り遊技回数」に相当する。 そして、同e2の一旦「40ゲーム」となった未報知ゲーム数から、上乗せゲーム数に決定され、上乗せゲーム数として報知された「20ゲーム」は、本願補正発明における構成Eの「延長後の残り遊技回数の」「一部」の「報知遊技回数」に相当する。 また、同e2は、「未報知のATゲーム数の範囲内でATゲーム数を設定して報知」するものであって、「未報知のATゲーム数の範囲」には、未報知のATゲーム数の最大値である未報知のATゲーム数そのものが含まれるものである。そうすると、同e2の「未報知のATゲーム数の範囲内でATゲーム数を設定して報知」する場合における未報知のATゲーム数そのものは、本願補正発明における構成Eの「延長後の残り遊技回数の全部」の「報知遊技回数」に相当する。 ところで、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、特典遊技の上乗せを決定する遊技機である点で共通する。 また、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、上乗せ抽選を行うことにより遊技者の興趣を向上させるという共通する課題を解決するものである(前記第2[理由]3(2)ア(イ)、イ(イ))。 したがって、刊行物発明の特典遊技の上乗せ抽選に係る構成に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にある。 よって、刊行物発明の構成eに刊行物2に記載された技術事項の構成e2を適用して、上記相違点1に係る本願補正発明の構成Eの後半部分(「且つ、」以降)の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点2(構成F)について 刊行物2に記載された技術事項f2の「報知されるATゲーム数を1ゲームが開始するときに1ずつ減算表示」することは、本件補正発明の構成Fの「報知遊技回数は、特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され」ることに相当する。 したがって、刊行物発明の特典遊技のATゲーム数に係る構成に刊行物2に記載された技術事項を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 ウ 相違点3(構成G?G2)について 刊行物2に記載された技術事項の構成g2と、本願補正発明の構成G?G2について対比する。 同構成g2の「今回上乗せゲーム数が、所定ゲーム数未満であるとき」は、本願補正発明の構成G1の「総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合」に相当する。 そして、同構成g2の「今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知」しないことについて、「分割して報知」しないことが一度にまとめて報知することを意味するから、本願補正発明の構成G1の「総上乗せ遊技回数を一度に報知」することに相当する。 また、同構成g2は、「今回上乗せゲーム数が、所定ゲーム数以上であるときにのみ、今回上乗せゲーム数を切り分けて分割して報知」するものであり、同構成e2には「未報知のATゲーム数の範囲内でATゲーム数を設定して報知する」ことが特定されている。 ここで、例えば、「今回上乗せゲーム数」が加算される前の「未報知のATゲーム数」が0であった場合について検討する。 この場合、「今回上乗せゲーム数」が加算された後の「未報知のATゲーム数」は、「今回上乗せゲーム数」そのものとなり、これは、本願補正発明の「総上乗せ遊技回数」に相当するものといえる。 したがって、同構成g2の「今回上乗せゲーム数が、所定ゲーム数以上である」場合に、「今回上乗せゲーム数」のうちから、その一部のゲーム数である「所定ゲーム数」を、「未報知のATゲーム数の範囲内」のゲーム数として切り分けることは、本願補正発明の構成G2の「総上乗せ遊技回数が閾値を超えた場合、当該閾値を総上乗せ遊技回数の一部と」することに相当する。 また、同構成g2の「報知ゲーム数が1であると判定されたときには、未報知のATゲーム数の範囲内で、上乗せ報知する上乗せゲーム数を決定」することは、「今回上乗せゲーム数」が、「所定ゲーム数未満であるとき」にも、「所定ゲーム数以上であるとき」にも該当し、後者の場合、「所定ゲーム数以上」のうちの一部のゲーム数である「所定ゲーム数」を切り分けて報知した後に、「報知ゲーム数が1であると判定され」ることになる。 したがって、同構成g2の「報知ゲーム数が1であると判定されたとき」は、本願補正発明の構成G2の「当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に報知遊技回数が所定回数まで減少された場合」に相当する。 さらに、同構成g2の「報知ゲーム数が1であると判定されたとき」に「決定」される「上乗せ報知する上乗せゲーム数」は、その時点における「未報知のATゲーム数の範囲内」で決定されることから、「報知ゲーム数が1であると判定されたとき」に「決定」される「上乗せ報知する上乗せゲーム数」には、その時点における「未報知のATゲーム数」そのもの、すなわち、「所定ゲーム数以上」のゲーム数から、「所定ゲーム」を減算した後の残りゲーム数が含まれるものといえる。 したがって、同構成g2の「報知ゲーム数が1であると判定されたとき」に「決定」される「上乗せ報知する上乗せゲーム数」は、本願補正発明の構成G2の「総上乗せ遊技回数のうち閾値を超えた分の上乗せ遊技回数」に相当する。 よって、刊行物発明における表示装置84において報知される情報の内容に刊行物2に記載された技術事項の、今回上載せゲーム数の報知に関する構成g2を適用して、上記相違点3に係る本願補正発明の構成G?G2とすることは当業者が容易になし得たものである。 エ 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、本願補正発明の構成Gは、拒絶査定時に提示された文献1?5には開示されていない旨主張する。 しかしながら、文献1に関する刊行物発明に文献2?5と異なる刊行物2に記載された技術事項を適用したものが、本願補正発明の構成Gを備えることは上記ウにおいて検討したとおりである。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 (5)まとめ 本願補正発明により奏される効果は、刊行物発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。 そうすると、上記(4)において検討したとおり、本願補正発明は、刊行物発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 4 むすび 上記1?3より、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 A 通常遊技状態と前記通常遊技状態より有利な特定遊技状態とを含む各遊技状態で遊技を進行させる遊技制御手段と、 B 前記特定遊技状態において終了条件が成立した場合、当該特定遊技状態を終了させる遊技状態移行手段と、 C 予め定められた契機で、前記特定遊技状態を延長させるための上乗せ抽選を行う上乗せ抽選手段であって、1の特定の契機で、第1の上乗せ抽選と第2の上乗せ抽選の双方を別々に行う上乗せ抽選手段と、 D 前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じて前記特定遊技状態を延長する上乗せ制御手段と、 E 前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果を個別には判断不能な態様で報知可能な報知手段と を具備する遊技機。」 2 刊行物に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項及び刊行物発明の認定については、上記「第2[理由]3(2)刊行物に記載された事項」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明から、「上乗せ制御手段」に関して、「前記第1の上乗せ抽選の結果に応じた第1上乗せ遊技回数および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じた第2上乗せ遊技回数によって、前記特定遊技状態で遊技可能な残り遊技回数を延長する上乗せ制御手段」とあったものを、「前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果に応じて前記特定遊技状態を延長する上乗せ制御手段」とその限定を省くものであり、 同様に、「報知手段」に関して、「前記第1上乗せ遊技回数と前記第2上乗せ遊技回数とをあわせた総上乗せ遊技回数を、前記第1上乗せ遊技回数および前記第2上乗せ遊技回数を個別には判断不能な態様で報知可能であり、且つ、前記延長後の前記残り遊技回数の全部または一部を報知遊技回数として報知可能である報知手段」とあったものを、「前記第1の上乗せ抽選の結果および前記第2の上乗せ抽選の結果を個別には判断不能な態様で報知可能な報知手段」とその限定を省くものであり、 同様に、「報知遊技回数」に関して、「前記報知遊技回数は、前記特定遊技状態で遊技が行われる毎に減少され、」るとの限定を省くものであり、 同様に、「報知手段」に関して、「前記総上乗せ遊技回数が閾値以下の場合、前記総上乗せ遊技回数を一度に報知し、前記総上乗せ遊技回数が前記閾値を超えた場合、当該閾値を前記総上乗せ遊技回数の一部として報知し、当該総上乗せ遊技回数の一部を報知した後に前記報知遊技回数が所定回数まで減少された場合、前記総上乗せ遊技回数のうち前記閾値を超えた分の上乗せ遊技回数を報知する」との限定を省くものである。 そして、本願補正発明の構成C、Dと本願発明の構成C、Dとは、その表現は一部異なる箇所を有するものの、その内容は実質的に同一のものであるから、上記「第2[理由]3(3)対比」にて検討した内容からみて、本願発明と刊行物発明とは、構成Eに関して、次の点で相違し、その余の点で一致する。 [相違点](構成E) 報知手段に関し、 本願発明は、「第1の上乗せ抽選の結果および第2の上乗せ抽選の結果を個別には判断不能な態様で報知可能」であるのに対して、 刊行物発明は、そのように特定されていない点。 そこで、上記相違点(構成E)について検討する。 遊技機の技術分野において、個別に複数回決定された特典遊技の上乗せゲーム数を、個別に報知せず、合算して報知するようにすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、原査定で示した特開2015-136502号公報の【0782】、【0786】?【0795】や、同特開2012-205892号の【0214】?【0217】、【0380】、【図117】や、同特開2014-50554号の【0376】を参照。)。 ここで、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、特典遊技の上乗せを決定する遊技機である点で共通する。 したがって、刊行物発明の表示装置84における情報報知に上記周知の技術事項を適用して、上載せ抽選により獲得された上載せゲーム数の報知に関し、抽選毎に獲得されたゲーム数を個別に報知すること、抽選毎に獲得されたゲーム数の合計を報知することのうち、後者の情報を表示装置84により報知することは当業者が容易になし得たものである。 さらに、別の観点から検討する。 上記「第2[理由]3(4)判断ア」において検討したように、刊行物発明は、「遊技回数に関する情報を報知可能である報知手段」を備えるものであり、「遊技回数に関する情報」として、刊行物発明の構成dによる「合計され」た「2個の上乗せ抽選により獲得した上乗せゲーム数」を採用することは当業者が適宜なし得たものであり、その際に、合計された上載せゲーム数からは加算される前の個々の上載せゲーム数を把握することが困難であることは当業者にとって自明である。 また、本願発明により奏される効果は、刊行物発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる効果の範囲内のものであり、格別顕著なものとはいえない。 よって、本願発明は、刊行物発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-01-10 |
結審通知日 | 2018-01-16 |
審決日 | 2018-01-29 |
出願番号 | 特願2015-246249(P2015-246249) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 史彬、生駒 勇人 |
特許庁審判長 |
石井 哲 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 川崎 優 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 鈴木 均 |