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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1338622 |
審判番号 | 不服2016-9809 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-30 |
確定日 | 2018-03-13 |
事件の表示 | 特願2011-241012「電子装置用ハウジング及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月21日出願公開、特開2012-119666〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成23年11月2日(パリ条約による優先権主張2010年11月29日 中国)の出願であって、平成27年6月12日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日付けで意見書が提出され、平成28年2月19日付けで拒絶査定されたところ、同年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年3月28日付けで拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、同年6月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年6月30日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「 ウィンドー部材を用意するステップと、 前記ウィンドー部材をインサート材とし、前記ウィンドー部材の周りにフロントカバーを射出成形するステップと、 前記射出成形するステップにおいて得られた前記フロントカバーをインサート材とし、前記フロントカバーと一体に連接されるバックカバーを射出成形して、前記フロントカバー及び前記バックカバーにより取り囲まれて形成された収容空洞部を有する電子装置用ハウジングを形成するステップと、 を備えることを特徴とする電子装置用ハウジングの製造方法。」 2.引用発明・公知技術 (1)引用発明 当審拒絶理由に引用された特開2008-258573号公報(平成20年10月23日公開、以下「引用文献1」という。)には、「電子装置用カバー及びその製造方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【請求項3】 雌型と、この雌型と係合する雄型と、を含み、前記雌型の略中心には、第一成形部が形成され、前記雄型には、第二成形部が形成され、前記第二成形部には、凹部が形成されている射出用金型を提供するステップと、 形状及びサイズが前記凹部と同じである電子インク表示装置を提供するステップと、 前記電子インク表示装置を前記雄型の凹部に装着するステップと、 前記雌型を前記雄型に係合させて、前記雌型の第一成形部と前記雄型の第二成形部との間に、プラスチックカバーの形状及びサイズと同じであるキャビティを形成するステップと、 前記キャビティに熱可塑性樹脂材料を注入して、前記凹部に装着された前記表示装置と一体に形成されるプラスチックカバー形成するステップと、 前記プラスチックカバーが固化された後、前記金型を開放し、金型の内部からプラスチックカバーと表示装置が一体に形成された電子装置用カバーを取り出すステップと、を含むことを特徴とする電子装置用カバーの製造方法。」(2頁「特許請求の範囲」の欄参照。)(下線は当審で付加した。以下同様。) イ.「【0001】 本発明は、電子装置用カバー及びその製造方法に関する。 ・・・・・・・・ 【0003】 しかし、ネジなどの固定手段を使用して、前記表示装置14を前記プラスチックカバー12の窓部122に装着する場合、ネジをねじる工具が必要となるので、組み立てる過程が複雑になる。又は、前記表示装置14を直接に前記窓部122の係合構造に係合させる場合、この窓部122に係合構造を形成する必要があるから、プラスチックカバー12を製造する過程が複雑になる。且つ、前記表示装置14を前記窓部122にいくら密着させても、両者の間に間隔が形成されることを防ぐことができないので、外部の水や埃などがこの間隔から電子装置に入り、電気装置の寿命を縮小する可能性がある。 ・・・・・・・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 以上の問題点に鑑みて、本発明は組み立てが簡単で、使用寿命が長く、電気消耗が少ない電子装置用カバー及びその製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 この目的を達成するために、プラスチックカバーと表示装置を含み、前記プラスチックカバーと表示装置が射出成型成形によって一体に形成され、前記表示装置は、電子インク表示装置であることを特徴とする電子装置用カバーを提供する。 ・・・・・・・・・ 【発明の効果】 【0008】 前記電子装置用カバー及びその製造方法において、前記プラスチックカバーと表示装置が一体に形成されているので、ネジ又は係合構造を利用して、前記表示装置を前記プラスチックカバーに固定する必要がないから、組み立てる過程が簡単になり、組み立てる効率を向上させることができる。又、一体に形成された前記プラスチックカバーと表示装置との間に間隔が形成されることができないので、この間隔から水や埃等が入ることを防ぎ、電子装置用カバーの使用寿命を延長することができる。また、電子インク表示装置に記憶機能があるので、電気を提供しなくても、停止した画像が続けて表示される。従って、電気消耗を減らすことができる。」 ウ.「【0013】 以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に電子装置用カバーの製造方法に対して詳細に説明する。この製造方法は、以下のようなステップを含む。 【0014】 先ず、射出用金型を提供する。図3及び図4に示したように、この射出用金型は、雌型32と、この雌型32と係合する雄型34と、を含む。前記雌型32の略中心には、第一成形部322が形成され、前記雄型34には、第二成形部342が形成されている。前記第二成形部342には、表示装置24の形状及びサイズと同じである凹部344が形成されている。 【0015】 次に、形状及びサイズが前記凹部344と同じである表示装置24を提供する。この表示装置24は、電子インク表示装置または他の表示装置である。 【0016】 次に、図5に示したように、前記表示装置24を前記雄型34の凹部344に装着する。 【0017】 次に、図6に示したように、前記雌型32と雄型34を係合させて、前記雌型32の第一成形部322と前記雄型34の第二成形部342との間にキャビティ36を形成する。このキャビティ36は、前記電子装置用カバー20の形状及びサイズと同じである。 【0018】 次に、前記キャビティ36にポリ塩化ビニール等のような熱可塑性樹脂材料を注入する。この熱可塑性樹脂材料が前記キャビティ36によって、プラスチックカバー22に形成される。これにより、先ず前記前記雄型34の凹部344に前記表示装置24を装着したので、この表示装置24がプラスチックカバー22と一体に形成される。 【0019】 次に、図7に示したように、前記プラスチックカバー22が固化された後、前記金型を開放し、金型の内部からプラスチックカバー22と表示装置24が一体に形成された電子装置用カバー20を取り出す。」 エ.図2?7として以下の図面が記載されている。 オ.「図面の簡単な説明」の欄に、図2?7に関し以下の記載がある。 「【図2】本発明の電子装置用カバーを示す斜視図である。 【図3】本発明の電子装置用カバーを製造する雌型を示す斜視図である。 【図4】本発明の電子装置用カバーを製造する雄型を示す斜視図である。 【図5】本発明の電子装置用カバーの表示装置を雄型に装着した状態を示す斜視図である。 【図6】本発明の電子装置用カバーのプラスチックカバーを雌型に装着し、雌型と雄型が係合された状態を示す斜視図である。 【図7】本発明の電子装置用カバーを製造する雌型と雄型が開放された状態を示す斜視図である。」 上記摘記事項ア.?オ.の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、 a.上記イ.の記載によれば、引用文献1は電子装置用カバーの製造方法に関するものである。 b.上記ア.の記載、及び上記ウ.の【0013】、【0015】段落の記載によれば、引用文献1は、電子装置用カバーの製造方法において、「表示装置24を提供するステップ」を有するといえる。 c.上記ア.の記載、及び上記ウ.の【0013】、【0016】?【0018】段落の記載によれば、引用文献1は、電子装置用カバーの製造方法において、次の各ステップを有するといえる。 ・表示装置24を雄型34の凹部344に装着するステップ。 ・雌型32と雄型34を係合させて、キャビティ36を形成するステップ。 ・キャビティ36に熱可塑性樹脂材料を注入し、この熱可塑性樹脂材料が前記キャビティ36によって、表示装置24と一体になったプラスチックカバー22に形成されるステップ。 図2及び図7をみれば、プラスチックカバー22はフロントカバーとして形成されることは明らかである。 また、特に図6及び図7によれば、表示装置24の周りに熱可塑性樹脂材料が注入され、成形されることが明らかである。 したがって、上記摘記した引用文献1の記載及び図面を総合すると、引用文献1には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「 表示装置24を提供するステップと、 前記表示装置24を雄型34の凹部344に装着するステップと、 雌型32と前記雄型34を係合させて、キャビティ36を形成するステップと、 前記キャビティ36の前記表示装置24の周りに熱可塑性樹脂材料を注入し、前記熱可塑性樹脂材料が前記キャビティ36によって、前記表示装置24の周りに前記表示装置24と一体になってフロントカバーを構成するプラスチックカバー22が形成されるステップと、 を有する電子装置用カバーの製造方法。」 (2)公知技術 当審拒絶理由に引用された特開平10-329148号公報(平成10年12月15日公開、以下「引用文献2」という。)には、「プラスチック製成形体の製造方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、管や容器その他、少なくとも一部に中空部を有するプラスチック製成形体の製造方法およびこれに用いられる中子に関し、特に中空部を任意の中空形状に成形できるプラスチック製成形体の製造方法およびこれに用いられる中子に関する。」 イ.「【0028】図3は本発明のプラスチック製成形体の製造方法の他の実施形態を示す断面図であり、まず同図(A)に示すように、中子2を用いることなく、成形型34および35によってキャビティ34cを形成し、ここにPP樹脂を注入して分岐管1の半分を成形する。 【0029】次いで、同図(B)に示すように、この分岐管1の中間成形体11に、予め成形しておいた水溶性中子2を装着し、成形型34および36を型締めする。中子2の製法、形状等は第1実施形態と同じである。これにより、中間成形体11が被覆されていない中子2の表面と成形型36の内面との間にキャビティ36cが形成されるので、ここにPP樹脂を注入する。 【0030】以上の工程で、中空部に中子2が充填されたPP樹脂からなる分岐管1が得られるので、以下は上述した第1実施形態と同様に、これを成形型3から脱型する。そして、何れか若しくはそれぞれの先端開口に水を噴射して、中子2を溶かす。これにより、図6に示すような先端開口にネジ部1aが形成されたPP製分岐管1が得られる。」 ウ.図3(本発明のプラスチック製成形体の製造方法の他の実施形態を示す断面図)として以下の図面が記載されている。 a.上記ア.の記載から、引用文献2は中空部を有するプラスチック製成形体の製造方法であるといえる。 b.上記イ.の記載から、引用文献2は、図3(A)のように成形型34及び35によって形成したキャビティ34cにPP樹脂を注入して、プラスチック製成形体の半分を中間成形体として成形しているといえる。 次に、図3(B)に示されるように中間成形体11に、成形型34および36を型締めし、形成されるキャビティ36cにPP樹脂を注入し中空部を有するプラスチック製成形体である分岐管1を得ている。したがって、中間成形体を成形型にいれ、形成されるキャビティにPP樹脂を注入しプラスチック製成形体を形成しているといえる。 そうすると、上記ア.?ウ.の摘記事項によれば、引用文献2には次の技術事項(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。 (公知技術) 「 中空部を有するプラスチック製成形体の製造方法であって、 プラスチック製成形体の半分を中間成形体として成形し、 次に、前記中間成形体を成形型に入れ、形成されるキャビティにPP樹脂を注入し、中空部を有するプラスチック製成形体を形成する方法。」 3.対比 本願発明を引用発明と対比すると、 a.引用発明の「表示装置24」は、表示を行うための構成を有している点で、本願発明のウィンドー部材と異なるものの、当該「表示装置24」は、キャビティ内に配置された状態で熱可塑性樹脂が注入されることによりフロントカバーを構成するプラスチックカバー22と一体に構成されるものであるから、本願発明の「ウィンドー部材」と「インサート材」といえる点で共通する。 また、引用発明の「表示装置24を提供する」とは、表示装置24が提供されることによって表示装置24が用意されるということができる。 そうすると、引用発明と本願発明とは「インサート材を用意するステップ」を有するといえる点で共通する。 b.引用発明の「フロントカバーを構成するプラスチックカバー22」が、本願発明の「フロントカバー」に相当する。 そして、引用発明と本願発明とは、「インサート材の周りにフロントカバーを射出成形するステップ」を有するといえる点で共通する。 c.引用発明の「電子装置用カバーの製造方法」は、本願発明の「電子装置用ハウジングの製造方法」に対応する。 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違するものと認められる。 (一致点) 「 インサート材を用意するステップと、 前記インサート材の周りにフロントカバーを射出成形するステップと、 を備えることを特徴とする電子装置用ハウジングの製造方法。」 (相違点1) 一致点の「インサート材」に関し、本願発明では「ウィンドー部材」であるのに対して、引用発明では「表示装置」である点。 (相違点2) 本願発明は「前記射出成形するステップにおいて得られた前記フロントカバーをインサート材とし、前記フロントカバーと一体に連接されるバックカバーを射出成形して、前記フロントカバー及び前記バックカバーにより取り囲まれて形成された収容空洞部を有する電子装置用ハウジングを形成するステップ」を有するのに対して、引用発明は当該ステップを有していない点。 4.当審の判断 上記相違点1について検討する。 携帯電話等の電子機器ではインサート材として透明なウインドー部材を採用することは周知であるから(特開2009-154479号公報、国際公開第2008/149789号、特開2002-225069号公報参照。)、相違点1とした本願発明の特定構成は当業者が引用発明から容易に想到できた事項にすぎない。 上記相違点2について検討する。 引用発明において製造される電子装置用カバーはフロントカバーであるから、電子機器のキャビネット体を樹脂で一体成形することは、例えば当審拒絶理由で引用した実願昭50-156421号のマイクロフィルム(実開昭52-68130号公報参照)にあるように普通に行われることであり、その際に「中空部を有するプラスチック製成形体の製造方法であって、プラスチック製成形体の半分を中間成形体として成形し、次に、前記中間成形体を成形型に入れ、形成されるキャビティにPP樹脂を注入し、中空部を有するプラスチック製成形体を形成する方法」はプラスチック製成形体の製造方法として公知の技術であるから(上記「2.(2)」欄参照。)、当該公知技術を採用して、収容空洞部を有する電子装置ハウジングを形成するステップを設けることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明及び公知技術から容易に想到できたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-27 |
結審通知日 | 2017-10-02 |
審決日 | 2017-11-01 |
出願番号 | 特願2011-241012(P2011-241012) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂、飯星 潤耶、遠藤 秀明 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 中木 努 |
発明の名称 | 電子装置用ハウジング及びその製造方法 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |