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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1338717
審判番号 不服2017-10333  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2018-04-10 
事件の表示 特願2014-531888「分散型記憶システム管理装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/043514、平成26年11月27日国内公表、特表2014-531668、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年9月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月23日、中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月20日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年10月25日付けで意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成29年3月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年3月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-19に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-224954号公報
2.特開2001-195205号公報
3.特開2005-234825号公報
4.特開2007-4620号公報

第3 本願発明
本願請求項1-19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明19」という。)は、平成28年10月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、前記1つ以上のプロセッサに、
複数の記憶装置を複数のシーケンスに分割することであって、前記複数のシーケンスの個々のシーケンスが、各々、前記複数の記憶装置のうちのそれぞれの予め定められた数の記憶装置を含む、ことと、
前記複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む、ことと、
前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始することと、
前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定することと、
前記データを一時記憶装置に転送することと、
を含む工程を実行するように命令するコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項2】
前記工程が、
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置が回復可能であるかを判定することと、
前記特定の記憶装置が回復可能である場合、前記データを前記一時記憶装置から前記特定の記憶装置に転送することと、
前記特定の記憶装置が回復不可能である場合、前記仮想ノードグループにおいて、前記特定の記憶装置を前記一時記憶装置に交換することと、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項3】
前記複数の仮想ノードグループが、前記一時記憶装置を含まない、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項4】
前記工程が、
特定のデータが所定の再試行回数以内に無事に前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に転送されていると判定することと、
前記特定の記憶装置は回復可能であると判定することと、
前記一時記憶装置から前記特定の記憶装置に無事に転送されなかった前記データを転送することと、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項5】
前記特定のデータのサイズが、前記特定の記憶装置に無事に転送されなかった前記データのサイズよりも小さい、請求項4に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
前記複数の仮想ノードグループの前記仮想ノードグループのそれぞれの記憶装置は、前記複数のシーケンスのうちの一意のシーケンスに属する、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項7】
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に前記データの転送を開始することが、前記特定の記憶装置に前記データの書き込みを開始することを含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項8】
前記工程が、
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置が回復不可能であると判定することと、
前記仮想ノードグループの有効な記憶装置に記憶されたデータを前記一時記憶装置にコピーすることであって、前記有効な記憶装置が回復不可能である前記特定の記憶装置とは異なる、ことと、
前記仮想ノードグループにおいて、前記特定の記憶装置を前記一時記憶装置に交換することと、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
複数の記憶サーバを複数のシーケンスに分割することであって、前記複数のシーケンスの個々のシーケンスが、各々、前記複数の記憶サーバのうちのそれぞれの予め定められた数の記憶サーバを含む、ことと、
前記複数の記憶サーバを複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶サーバを含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶サーバのそれぞれのセットを含む、ことと、
前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶サーバにデータの転送を開始することと、
前記特定の記憶サーバに関連した故障が発生したことを判定することと、
前記データを前記仮想ノードグループの1つ以上の有効な記憶サーバおよび一時記憶サーバに転送することであって、前記1つ以上の有効な記憶サーバは前記故障と関連する前記特定の記憶サーバとは異なる、ことと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶サーバに関連する前記故障が永久的であると判定することと、
前記仮想ノードグループにおいて、前記特定の記憶サーバを前記一時記憶サーバに交換することと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記仮想ノードグループの前記1つ以上の有効な記憶サーバのうちの1つの有効な記憶サーバに記憶されたデータを前記一時記憶サーバにコピーすることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶サーバに関連する前記故障が永久的であると判定することは、特定のデータが所定の再試行回数以内に無事に前記特定の記憶サーバに転送されないことを判定することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記一時記憶サーバが、所定の規則に基づいて選択され、前記仮想ノードグループが、前記一時記憶サーバを含まない、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記仮想ノードグループの前記特定の記憶サーバに前記データの転送を開始することが、前記特定の記憶サーバに前記データの書き込みを開始することを含む、請求項9に記載
の方法。
【請求項15】
複数の記憶サーバに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスを備え、
前記コンピューティングデバイスは、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、前記1つ以上のプロセッサに、
前記複数の記憶サーバを複数のシーケンスに分割することであって、前記複数のシーケンスのうちの個々のシーケンスは、各々、前記複数の記憶サーバのうちのそれぞれの予め定められた数の記憶サーバを含む、ことと、
前記複数の記憶サーバを複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶サーバを含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶サーバのそれぞれのセットを含む、ことと、
前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶サーバにデータの転送を開始することと、
前記データが前記特定の記憶サーバに転送するのに失敗するような、前記特定の記憶サーバが故障していると判定することと、
前記データを前記特定の記憶サーバに転送するのに所定の再試行回数、失敗したと判定することと、
前記データを一時記憶サーバに転送することと
を含む工程を実行するように命令するコンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備える、システム。
【請求項16】
前記工程は、前記特定の記憶サーバが回復したと判定された後に、前記データを前記特定の記憶サーバに転送することをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記工程は、前記特定の記憶サーバが回復不可能であると判定された後に、前記仮想ノードグループにおいて、前記仮想ノードグループの前記特定の記憶サーバを、前記一時記憶サーバに交換することをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
特定のデータが、さらなる所定の再試行回数以内に前記仮想ノードグループの前記特定の記憶サーバに無事に転送されない場合、前記特定の記憶サーバが、回復不可能であると判定される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数のシーケンスのそれぞれのシーケンスが前記複数の記憶サーバのうちの所定の数の記憶サーバを含み、前記複数の仮想ノードグループのうちの前記仮想ノードグループのそれぞれの記憶装置が前記複数のシーケンスのうちの各々、一意のシーケンスに属し、前記仮想ノードグループが、前記一時記憶サーバを含まない、請求項15に記載のシステム。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は重要箇所につき、当審にて付与した。以下、同様。)

A.段落【0012】-【0017】
「【0012】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るストレージ装置10の構成を示す模式図である。ストレージ装置10は、論理ディスク20を構成する一以上の物理ディスク21とホットスペアディスク22とディスクコントローラ30とを備えている。また、このストレージ装置10は、SCSI(small computer system interface)やFC(Fibre Channel)などによりネットワークを介してホスト装置5と接続しており、ホスト装置5からの要求に応じてデータを記憶する2次記憶装置である。物理ディスク21は、一般的にはHDD(hard disk drive)が用いられるが、これに限らず、半導体ディスクを含めたストレージデバイスであってもよい。ホットスペアディスク22は、障害が発生した物理ディスクを代替するものである。
【0013】
ディスクコントローラ30は、メモリ40とプロセッサ50とを有しており、メモリ40に格納された「論理ディスク管理プログラム」がプロセッサ50に読み込まれることにより、論理ディスク設定部51、一時的障害検出部52、障害回復部53、データ複製部54、ディスク監視部55、故障判定部56、論理ディスク再構成部57、警告データ出力部58としての機能するものである。なお、図1では各処理部51?58をプロセッサ内部に記載しているが、これは便宜上の表現である。すなわち、各処理部51?58は論理ディスク管理プログラムの機能の一部としてプログラムされ、そのプログラムをプロセッサ50が実行することで実現される。
【0014】
メモリ40は、ディスクコントローラ30が情報処理するデータを記憶する記憶装置である。このメモリ40には、予め設定された「基準応答データ」が記憶されている。また、メモリ40には、後述するディスク監視部55により「応答データ」が書き込まれる。
【0015】
なお、正常な平均レスポンスタイムはHDD機種により異なり、また、同じHDDであってもIO負荷(キューイングの深さ)により変動するので、これに対応した値が基準応答データとして用いられる。例えば、ストレージ装置10がサポートしているHDD機種毎のテーブルデータや、あらゆる機種と環境とを想定して確実に異常と判定できる値などが基準応答データとして用いられる。 論理ディスク設定部51は、一以上の物理ディスク21をまとめて論理ディスク20として設定するものである。これによりRAID(redundant array of inexpensive disks)機能が実現される。なお、論理ディスク20はRAIDの種類に応じて冗長性をもつ場合と持たない場合とがある。
【0016】
一時的障害検出部52は、物理ディスク21に生じる一時的な障害を検出するものである。例えば、一時的障害検出部52は、ホスト装置5からライト要求を受けたときのタイムアウト等から一時的障害を検出する。
【0017】
障害回復部53は、一時的障害検出部52が一時的障害を検出した場合、その一時的な障害が生じた物理ディスク(以下、障害発生物理ディスク21Xという)に対し障害回復処理を行なうものである。例えば、障害回復部53は、デバイスリセットや物理ディスクの電源のオフオン等により障害回復処理を行う。なお、障害回復部53が障害回復処理中は、障害発生物理ディスク21Xへのホスト装置5からのアクセスは停止され、障害回復処理が完了した時点でI/O処理が再開される。
【0018】
データ複製部54は、障害発生物理ディスク21Xのデータをホットスペアディスク22に複製してミラー化するものである。ここで、データ複製部54は、ホットスペアディスク22のデータが障害発生物理ディスク21Xのミラーであるため、障害発生物理ディスク21Xからデータを全面コピーすることができる。また、データ複製部54は、論理ディスク20が冗長性をもつRAID構成である場合、図2に示すように、論理ディスク20のメンバーディスクのうち、障害発生物理ディスク21X以外のメンバーディスクからホットスペアディスク22のデータを復元することも可能である。」

B.段落【0051】-【0052】
「【0051】
なお、上記実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、光磁気ディスク(MO)、半導体メモリ、半導体ディスクなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。
【0052】
また、この記憶媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であっても良い。」


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ストレージ装置10は、論理ディスク20を構成する一以上の物理ディスク21とホットスペアディスク22とディスクコントローラ30とを備え、
このストレージ装置10は、ネットワークを介してホスト装置5と接続しており、ホスト装置5からの要求に応じてデータを記憶する2次記憶装置であり、
物理ディスク21は、一般的にはHDDが用いられるが、これに限らず、半導体ディスクを含めたストレージデバイスであってもよく、
ホットスペアディスク22は、障害が発生した物理ディスクを代替するものであり、
ディスクコントローラ30は、メモリ40とプロセッサ50とを有しており、
メモリ40に格納された「論理ディスク管理プログラム」がプロセッサ50に読み込まれることにより、論理ディスク設定部51、一時的障害検出部52、障害回復部53、データ複製部54、ディスク監視部55、故障判定部56、論理ディスク再構成部57、警告データ出力部58としての機能するものであり、
論理ディスク設定部51は、一以上の物理ディスク21をまとめて論理ディスク20として設定するものであり、
これによりRAID機能が実現され、
一時的障害検出部52は、物理ディスク21に生じる一時的な障害を検出するものであり、
一時的障害検出部52は、ホスト装置5からライト要求を受けたときのタイムアウト等から一時的障害を検出し、
データ複製部54は、障害発生物理ディスク21Xのデータをホットスペアディスク22に複製してミラー化するものであり、
各処理部51?58は論理ディスク管理プログラムの機能の一部としてプログラムされ、そのプログラムをプロセッサ50が実行することで実現され、
実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、記憶媒体に格納して頒布することができる方法。」


2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には以下の記載がある。

C.段落【0019】-【0023】
「【0019】図1は本発明方法を適用するデータ蓄積システムの一例を示すもので、5台のライブラリL1,L2,L3,L4,L5と、これらを制御するサーバー100とからなっている。なお、ホストコンピュータ200は本データ蓄積システムに対してデータの記録/再生を要求する上位のコンピュータである。
【0020】各ライブラリL1?L5はそれぞれ、少なくとも1つの記録媒体、例えば100枚の光ディスク#1?#100と、少なくとも1つの記録再生用ドライブ、例えば4台の光記録再生用ドライブD1?D4と、少なくとも1つの記録媒体搬送装置、例えば1台の光ディスク搬送用ロボットピッカーPとを備えている。各光ディスク#1?#100は通常、個別の保管場所(図示せず)に保管され、データの記録/再生を行う時のみ、ロボットピッカーPによっていずれかのドライブD1?D4まで搬送・装填され、記録/再生終了後は再び保管場所まで搬送されて収納・保管される如くなっている。
【0021】サーバー100は、CPU110と、揮発性メモリ(RAM)120と、SCSIバスコントローラ131?137と、外付けのハードディスク(HD)141,142とを備えている。HD141,142は、一時的にデータを保存したり、データ管理プログラム(本発明を実現するデータ復旧プログラムを含む。)のオブジェクトを保存する。そして、サーバー100内のメモリ120上に展開されたデータ管理プログラムがSCSIバスコントローラ131?135に接続されている5台のライブラリL1?L5、メモリ120及びHD141,142を制御する。
【0022】図1に示したデータ蓄積システムは、データ管理プログラムによって、図2に示すような、ユーザデータをライブラリL1?L4に記録し、パリティデータをライブラリ装置L5に記録するRAIL4の構成で運用されている。サーバー100はデータ管理プログラムが提供する1つ以上の論理媒体からなる仮想ボリュームに対してデータの書き込みあるいは読み出しを行う。論理媒体は複数の物理的な記録媒体、ここでは光ディスクからなるものである。
【0023】図2は論理媒体1?3からなる仮想ボリューム1を示しており、論理媒体1は各ライブラリL1?L5の光ディスク#1で構成され、データ1,2がそれぞれ分割されてパリティとともに記録されている状態を示している。同様に論理媒体2は各ライブラリL1?L5の光ディスク#2で構成され、データ3,4がそれぞれ分割されてパリティとともに記録され、また、論理媒体3は各ライブラリL1?L5の光ディスク#3で構成され、データ5が分割されてパリティとともに記録されている状態を示している。各データは1回の記録/再生の途中で媒体交換が生じないように1つの論理媒体内に収まるように配置される。」

D.段落【0037】-【0040】
「【0037】次に、ライブラリL1の光ディスク#3に分割データBlock9,10、ライブラリL2の光ディスク#3に分割データBlock11,12、ライブラリL3の光ディスク#3に分割データBlock13,14、ライブラリL4の光ディスク#3に分割データBlock15,16、ライブラリL5の光ディスク#3にParity3,4の書き込みを行う(s13)が、(ii)に示すように、ライブラリL3の光ディスク#3に対する書き込みエラーが発生する(s14)ため、データ6の分割データBlock13,14をライブラリL3の記録媒体へ書き込むべき障害実データとして保存する(s15)とともに、その書き込み先を指定するのに用いたI/O情報を障害データI/O情報として不揮発性メモリ、例えばHD141または142に記録する(s16)。
【0038】この時、1つの障害データI/O情報は1回のデータ記録に対応する。
【0039】また、データ復旧は以下の通りである。
【0040】まず、(iii)に示すように、新しい光ディスク、例えば#3’がライブラリL3に投入され、障害媒体の復旧が完了する(s17)と、障害光ディスク#3に存在する、正常にアクセスできるデータを新しい光ディスク#3’にコピーするとともに、障害データI/O情報を参照し、前記保存した障害実データ(Block13,14)を読み出し、光ディスク#3’に書き込む(s18)。そして、(iv)に示すように、障害媒体の排出と一時保存した障害データI/O情報及び障害実データのクリアを行う(s19)。」

上記の記載によれば、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「論理媒体1?3からなる仮想ボリューム1を示しており、論理媒体1は各ライブラリL1?L5の光ディスク#1で構成され、
同様に論理媒体2は各ライブラリL1?L5の光ディスク#2で構成され、
また、論理媒体3は各ライブラリL1?L5の光ディスク#3で構成され、
ライブラリL1の光ディスク#3に分割データBlock9,10、ライブラリL2の光ディスク#3に分割データBlock11,12、ライブラリL3の光ディスク#3に分割データBlock13,14、ライブラリL4の光ディスク#3に分割データBlock15,16、ライブラリL5の光ディスク#3にParity3,4の書き込みを行うが、ライブラリL3の光ディスク#3に対する書き込みエラーが発生するため、データ6の分割データBlock13,14をライブラリL3の記録媒体へ書き込むべき障害実データとして保存するとともに、その書き込み先を指定するのに用いたI/O情報を障害データI/O情報として不揮発性メモリ、例えばHD141または142に記録し、
ライブラリL3の光ディスク#3に対する書き込みエラーが発生するため、データ6の分割データBlock13,14をライブラリL3の記録媒体へ書き込むべき障害実データとして保存するとともに、その書き込み先を指定するのに用いたI/O情報を障害データI/O情報として不揮発性メモリ、例えばHD141または142に記録する。」


3.引用文献3、引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3及び引用文献4には、ディスクアレイ装置において、各記憶装置を複数のグループに分けて管理することが記載されており、当該技術的事項は、本願優先日前において周知の技術であったと認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア)引用発明の「一以上の物理ディスク21」は本願発明1の「複数の記憶装置」に相当する。
引用発明の「論理ディスク設定部51」は、一以上の物理ディスク21をまとめて「論理ディスク20」として設定しているので、複数の記憶装置である物理ディスクを複数のグループに分割する設定をしているといえる。そのため、引用発明の「一以上の物理ディスク21をまとめて「論理ディスク20」として設定する」ことは、本願発明1の「複数の記憶装置を複数のシーケンスに分割すること」に相当するといえる。
そして、引用発明の「論理ディスク20」は定められた一以上の物理ディスク21をまとめているので、引用発明の「論理ディスク設定部51は、一以上の物理ディスク21をまとめて論理ディスク20として設定する」ことは、本願発明1の「複数の記憶装置を複数のシーケンスに分割することであって、前記複数のシーケンスの個々のシーケンスが、各々、前記複数の記憶装置のうちのそれぞれの予め定められた数の記憶装置を含む」ことに相当するといえる。

イ)引用発明のストレージ装置10は、「論理ディスク20を構成する一以上の物理ディスク21とホットスペアディスク22とディスクコントローラ30とを備え」、「ネットワークを介してホスト装置5と接続しており、ホスト装置5からの要求に応じてデータを記憶する2次記憶装置」であるので、ホスト装置から論理ディスク20を構成する一以上の物理ディスク21とホットスペアディスク22とディスクコントローラ30にデータの転送が開始されることは明らかであるので、引用発明と本願発明1は「特定の記憶装置にデータの転送を開始する」機能を有する点で共通する。

ウ)引用発明の「一時的障害検出部52」は、物理ディスク21に生じる一時的な障害を検出するものであり、ホスト装置5からライト要求を受けたときのタイムアウト等から一時的障害を検出しているので、引用発明の「一時的障害検出部52」の有する機能は、本願発明1の「特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定すること」と一致する。

エ)引用発明の「ホットスペアディスク22」は、障害が発生した物理ディスクを代替するものであるので、本願発明1の「一時記憶装置」に相当する。
そして、引用発明の「データ複製部54」は、障害発生物理ディスク21Xのデータをホットスペアディスク22に複製してミラー化するので、データを「ホットスペアディスク22」に転送していることは明らかである。そのため、引用発明の「データ複製部54は、障害発生物理ディスク21Xのデータをホットスペアディスク22に複製してミラー化する」ことは、本願発明1の「データを一時記憶装置に転送すること」に相当する。

オ)引用発明の「各処理部51?58は論理ディスク管理プログラムの機能の一部としてプログラムされ、そのプログラムをプロセッサ50が実行することで実現され」ている点は、本願発明1の「1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、前記1つ以上のプロセッサに」「工程を実行するように命令するコンピュータ実行可能命令」を有する点に相当する。
そして、引用発明は「実施形態に記載した手法は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、記憶媒体に格納」できる点で、本願発明の「実行するように命令するコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体」と共通する。


したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
1つ以上のプロセッサによって実行されるときに、前記1つ以上のプロセッサに、
複数の記憶装置を複数のシーケンスに分割することであって、前記複数のシーケンスの個々のシーケンスが、各々、前記複数の記憶装置のうちのそれぞれの予め定められた数の記憶装置を含む、ことと、
特定の記憶装置にデータの転送を開始することと、
前記データが前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定することと、
前記データを一時記憶装置に転送することと、
を含む工程を実行するように命令するコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。


〈相違点1〉
本願発明1は、複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含むものであるのに対し、引用発明はこのような構成の記憶装置の構成を対象にしていない点。

〈相違点2〉
本願発明1は、複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始し、前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定し、前記データを一時記憶装置に転送するものであるのに対し、引用発明は、特定の記憶装置にデータの転送を開始して、特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定しているものの、特定の記憶装置が仮想ノードグループの特定の記憶装置ではない点。


(2)相違点についての判断

以下に、相違点1及び相違点2についてまとめて判断する。

引用文献2に記載されている技術的事項において、論理媒体1は各ライブラリL1?L5の光ディスク#1で構成され、論理媒体2は各ライブラリL1?L5の光ディスク#2で構成され、論理媒体3は各ライブラリL1?L5の光ディスク#3で構成されているので、「論理媒体1」「論理媒体2」「論理媒体3」からなる構成は、本願発明1の「複数の記憶装置を複数のシーケンスに分割する」構成に相当するといえるものの、引用文献2に記載されている技術的事項には、複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割する構成が含まれておらず、「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む」ことに相当する構成は有していない。
また、引用文献3、引用文献4に記載されている周知の技術は、ディスクアレイ装置において、各記憶装置を複数のグループに分けて管理することであり、「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む」構成を示唆するものではない。
そのため、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて、「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む」という構成を当業者であっても容易になし得ることはできない。
同様に、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて、「複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始し、前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定し、前記データを一時記憶装置に転送する」という構成を当業者であっても容易になし得ることはできない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない

2.本願発明2-8について
本願発明2-8は、本願発明1の「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む、ことと、前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始することと、前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定することと、前記データを一時記憶装置に転送すること」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明9-14について
本願発明9は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「記憶装置」を「記憶サーバ」に特定し、本願発明1の「「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む、ことと、前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始することと、前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定することと、前記データを一時記憶装置に転送すること」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
同様に、本願発明10-14は、上記の対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明15-19について
本願発明15は、本願発明1に対応するシステムの発明であり、本願発明1の「記憶装置」を「記憶サーバ」に特定し、本願発明1の「複数の記憶装置を複数の仮想ノードグループに分割することであって、前記複数の仮想ノードグループは、集合的に前記複数の記憶装置を含み、前記複数の仮想ノードグループの個々の仮想ノードグループは、前記複数のシーケンスの記憶装置のそれぞれのセットを含む、ことと、前記複数の仮想ノードグループのうちの1つの仮想ノードグループの特定の記憶装置にデータの転送を開始することと、前記データが前記仮想ノードグループの前記特定の記憶装置に無事に転送されていないと判定することと、前記データを一時記憶装置に転送すること」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
同様に、本願発明16-19は、上記の対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-19は、当業者が引用文献1-4の記載に基づいて、容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2014-531888(P2014-531888)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 啓介田名網 忠雄  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 松田 岳士
安久 司郎
発明の名称 分散型記憶システム管理装置および方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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