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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1338722
審判番号 不服2017-5155  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-11 
確定日 2018-04-16 
事件の表示 特願2014-542522「アモルファス酸化物半導体薄膜トランジスタ作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/075028、平成27年 2月12日国内公表、特表2015-504603、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年(2012年)11月16日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年11月18日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 6月 9日 審査請求
平成27年 5月19日 拒絶理由通知
平成27年11月20日 意見書・手続補正
平成28年 5月23日 拒絶理由通知
平成28年 8月30日 意見書・手続補正
平成28年12月 5日 補正却下決定・拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 4月11日 審判請求・手続補正
平成29年10月13日 上申書
平成29年11月14日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成30年 2月 9日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし24に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明24」といい,まとめて「本願発明」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
基板を設けるステップであって,前記基板は表面を有し,前記表面は,ソースエリアと,ドレインエリアと,チャネルエリアとを含み,前記基板は,前記基板の前記表面上の酸化物半導体層と,前記基板の前記チャネルエリアの上にある前記酸化物半導体層上のマスクとを含むステップと,
金属カチオンを,前記基板の前記ソースエリアおよび前記ドレインエリアの上にある前記酸化物半導体層中に注入して,ドープn型酸化物半導体層を形成するステップと,
を含み,
前記金属カチオンの注入深さが前記酸化物半導体層の厚さに等しく,
前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,
前記金属カチオンが,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである,方法。
【請求項2】
前記マスクが,薄膜トランジスタ(TFT)のための金属ゲートを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化物半導体層が,インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),およびスズ(Sn)のうちの1つまたは複数を含む,請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記チャネルエリアの上にある前記酸化物半導体層上に第1の誘電体層を形成するステップと,前記第1の誘電体層上に第1の金属層を形成するステップと,をさらに含む,請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マスクが前記第1の金属層を含む,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の金属層および前記ドープn型酸化物半導体層上に,第2の誘電体層を形成するステップと,
前記第2の誘電体層の部分を除去して,前記基板の前記ソースエリアの上にある前記ドープn型酸化物半導体層と,前記基板の前記ドレインエリアの上にある前記ドープn型酸化物半導体層とを露出させるステップと,
第1のコンタクトと第2のコンタクトとを形成するステップであって,前記第1のコンタクトが,前記基板の前記ソースエリアの上にある前記ドープn型酸化物半導体層に接触し,前記第2のコンタクトが,前記基板の前記ドレインエリアの上にある前記ドープn型酸化物半導体層に接触するステップと,
をさらに含む,請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属層上,ならびに,前記基板の前記ソースエリアおよび前記ドレインエリアの上にある前記酸化物半導体層上に,第2の誘電体層を形成するステップと,
前記第2の誘電体層をエッチングして,前記第1の金属層および前記第1の誘電体層に関連付けられた,誘電体側壁を形成するステップと,
をさらに含む,請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記金属カチオンが,約10^(19)原子/cm^(3)よりも高い,前記基板の前記ソースエリアおよび前記ドレインエリアの上にある前記酸化物半導体層中の濃度まで注入される,請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化物半導体層が,約10?100ナノメートルの厚さである,請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1のイオンを,前記チャネルエリアの上にある前記酸化物半導体層の少なくとも1つの領域中に注入するステップをさらに含む,請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のイオンが金属カチオンである,請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のイオンが,約10^(12)原子/cm^(2)と10^(20)原子/cm^(2)との間のドーズを使用して注入される,請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12に記載の方法のいずれかに従って作製されるデバイス。
【請求項14】
表面を含む基板と,
前記基板表面上の酸化物半導体層であって,前記酸化物半導体層は,チャネル領域と,ソース領域と,ドレイン領域とを含み,前記酸化物半導体層の前記ソース領域および前記ドレイン領域は,約10^(19)原子/cm^(3)よりも高い濃度まで金属カチオンが注入されたドープn型酸化物半導体層であり,前記金属カチオンの注入深さが前記酸化物半導体層の厚さに等しい,酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層の前記チャネル領域上の第1の誘電体層と,
前記第1の誘電体層上の第1の金属層と,
を備え,
前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,
前記金属カチオンが,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである,装置。
【請求項15】
前記酸化物半導体層が,インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),およびスズ(Sn)のうちの1つまたは複数を含む,請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ソース領域に接触する第1のコンタクトと,前記ドレイン領域に接触する第2のコンタクトとをさらに備える,請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1の誘電体層の両側,および前記第1の金属層の両側の誘電体側壁であって,第1の誘電体側壁および第2の誘電体側壁が,前記酸化物半導体層の前記チャネル領域の部分の上にある,誘電体側壁,をさらに備える,請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が,
第2の誘電体層をさらに備え,前記第2の誘電体層が,前記第1の金属層,前記酸化物半導体層の前記ソース領域,および前記酸化物半導体層の前記ドレイン領域上である,請求項14から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記基板がガラス基板を含む,請求項14から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
ディスプレイと,
前記ディスプレイと通信するように構成され,画像データを処理するように構成されるプロセッサと,
前記プロセッサと通信するように構成されるメモリデバイスと,
をさらに備える,請求項14から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記ディスプレイに少なくとも1つの信号を送るように構成されるドライバ回路と,
前記ドライバ回路に前記画像データの少なくとも一部を送るように構成されるコントローラとをさらに備える,請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサに前記画像データを送るように構成される画像ソースモジュールであって,受信機,トランシーバ,および送信機のうちの少なくとも1つを含む,画像ソースモジュールをさらに備える,請求項20または21に記載の装置。
【請求項23】
入力データを受信し,前記入力データを前記プロセッサに通信するように構成される入力デバイスをさらに備える,請求項20から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記ディスプレイが,液晶ディスプレイまたは有機発光ダイオードディスプレイである,請求項20から23のいずれか一項に記載の装置。」

第3 原査定の理由の概要
(進歩性)本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2011-146694号公報
2.特開平07-302768号公報
3.特開2002-016082号公報
4.特表2007-519256号公報
5.特開2002-091332号公報

第4 当審拒絶理由の概要
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1ないし26について
本願発明の課題は,EMSデバイスに関連づけられ得る薄膜トランジスタデバイスを提供する(本願明細書段落0005)というものであり,その課題を解決するための手段は,金属カチオンは酸化物半導体層中で酸素分子と結合するので,金属カチオンの注入で酸素空孔のより高密度化を引き起こし,高濃度ドープn型半導体層を得るというものであり,特定の構成金属の酸化半導体層に対し特定の金属カチオンを注入することでこれを実現するというもの(本願明細書段落0070-0071)である。
しかし,請求項1ないし26には,前記課題を解決するための手段が反映されていない。
よって,請求項1ないし26に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

第5 引用文献
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
酸化物半導体を用いる半導体装置及びその作製方法に関する。」
イ 「【0022】
(実施の形態1)
本実施の形態では,半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を,図1を用いて説明する。本実施の形態では,半導体装置の一例としてトランジスタを示す。
(中略)
【0025】
トランジスタ410は,絶縁表面を有する基板400上に,絶縁層407と,チャネル形成領域413,酸素欠陥誘起因子を含むソース領域414a,及び酸素欠陥誘起因子を含むドレイン領域414bが設けられている酸化物半導体層403と,ゲート絶縁層402と,ゲート電極層401と,を有する。
(中略)
【0027】
ソース領域414a,及びドレイン領域414bは,酸素欠陥誘起因子の導入によってドナーが形成された低抵抗化領域である。
【0028】
以下,図1(A)乃至(D)を用い,基板400上にトランジスタ410を作製する工程を説明する。
【0029】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが,少なくとも,後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。
(中略)
【0033】
絶縁層407上に酸化物半導体膜を形成する。
【0034】
酸化物半導体膜に用いる酸化物半導体としては,四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn-O系や,三元系金属の酸化物であるIn-Ga-Zn-O系,In-Sn-Zn-O系,In-Al-Zn-O系,Sn-Ga-Zn-O系,Al-Ga-Zn-O系,Sn-Al-Zn-O系や,二元系金属の酸化物であるIn-Zn-O系,Sn-Zn-O系,Al-Zn-O系,Zn-Mg-O系,Sn-Mg-O系,In-Mg-O系や,In-O系,Sn-O系,Zn-O系などを用いることができる。ここで,例えば,In-Ga-Zn-O系酸化物半導体とは,少なくともInとGaとZnを含む酸化物であり,その組成比に特に制限はない。また,InとGaとZn以外の元素を含んでもよい。また,上記酸化物半導体膜にSiO_(2)を含んでもよい。
【0035】
また,酸化物半導体膜は,化学式InMO_(3)(ZnO)_(m)(m>0)で表記される酸化物半導体を用いることができる。ここで,Mは,Ga,Al,MnおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして,Ga,Ga及びAl,Ga及びMn,またはGa及びCoなどがある。
【0036】
酸化物半導体膜はスパッタリング法によって形成することができる。本実施の形態では,In-Ga-Zn-O系酸化物ターゲットを用いてスパッタリング法により酸化物半導体膜を成膜し,島状に加工して酸化物半導体層420を形成する(図1(A)参照)。
(中略)
【0041】
次に,酸化物半導体層420に酸素欠陥誘起因子421を導入し,ソース領域414a,ドレイン領域414b,チャネル形成領域413を含む酸化物半導体層403を形成する(図1(C)参照)。例えば,ソース領域414a,ドレイン領域414bに含まれる酸素欠陥誘起因子421の濃度は,1×10^(19)atoms/cm^(3)以上1×10^(21)atoms/cm^(3)以下とすればよい。
【0042】
酸素欠陥誘起因子421の導入処理の後に加熱処理(例えば200℃以上600℃以下)を行っても良い。
【0043】
本明細書において,酸素欠陥誘起因子の濃度とは,酸化物半導体層の成膜後,導入処理によって導入された酸素欠陥誘起因子の濃度であり,成膜時など導入処理以外の工程で含まれた酸素欠陥誘起因子と同じ元素は考慮しないものとする。
【0044】
酸素欠陥誘起因子421としては,チタン(Ti),タングステン(W),モリブデン(Mo),アルミニウム(Al),コバルト(Co),亜鉛(Zn),インジウム(In),シリコン(Si),ボロン(B)のいずれか一または複数から選択された元素を用いることができる。さらに,上記酸素欠陥誘起因子に加えて,水素,又は\及び窒素を用いてもよい。
【0045】
酸化物半導体層420に,選択的に酸素欠陥誘起因子421を導入することによって,該導入領域において酸素欠陥を効果的に誘起する。酸素欠陥はドナーとして機能するため,選択的に低抵抗化したソース領域414a及びドレイン領域414bを有する酸化物半導体層403を形成することができる。
【0046】
本実施の形態では,酸素欠陥誘起因子421の導入処理において,ゲート電極層401をマスクとして用いる。よって,酸化物半導体層403において,自己整合的に,ゲート電極層401と重なる領域は,酸素欠陥誘起因子421が導入されずチャネル形成領域413となり,一方ゲート電極層401と重ならない領域には,酸素欠陥誘起因子421が導入されソース領域414a,ドレイン領域414bが形成される。また,酸化物半導体層420の少なくともチャネル形成領域上を覆うマスクを別途設けて,酸素欠陥誘起因子421の導入処理を行ってもよい。該マスクとしては,フォトリソグラフィ工程によるレジストマスクを用いればよい。」
ウ 「【0052】
なお,酸素欠陥誘起因子421としては,酸素親和性の高い金属元素を用いるとより好ましい。酸素親和性の高い金属元素としては,例えば,チタン,アルミニウム,マンガン,マグネシウム,ジルコニウム,ベリリウムなどが挙げられる。また,銅などを用いても良い。」
(2)引用方法発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体層を形成し,酸化物半導体層にマスクを用いて選択的に酸素欠陥誘起因子を導入し,酸化物半導体層において,マスクと重なる領域はチャネル形成領域となり,一方,酸素欠陥誘起因子が導入されてソース領域及びドレイン領域が形成され,酸素欠陥はドナーとして機能する,半導体装置の作製方法。」
(3)引用装置発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用装置発明」という。)が記載されていると認められる。
「絶縁表面を有する基板上に,チャネル形成領域,酸素欠陥誘起因子を含むソース領域及び酸素欠陥誘起因子を含むドレイン領域が設けられている酸化物半導体層と,ゲート絶縁層と,ゲート電極層と,を有するトランジスタであって,ソース領域,ドレイン領域に含まれる酸素欠陥誘起因子の濃度は,1×10^(19)atoms/cm^(3)以上であって,酸素欠陥はドナーとして機能すること。」
2 引用文献2の記載
引用文献2には,図面とともに次の記載がある。
「【0012】次いで本発明の方法においては,上記ゲート電極14及びSiO_(2)サイドウォール16をマスクにし,p型再結晶Si層12の例えば表面部12a に高濃度ソース・ドレイン形成のための第1段階の燐(P) の高ドーズ量によるイオン注入を,例えば加速エネルギー30KeV ,ドーズ量5×10^(15)cm^(-2)の条件で行う。117S_(1) 及び117D_(1) は上記第1段階の高濃度燐注入領域を示し,上記条件で燐のピーク濃度の深さは35nm程度になる。なお,Si層12の厚さは前記のように100nm である。
【0013】この高濃度の燐(P) のイオン注入により,上記第1段階の燐注入領域117S_(1) 及び117D_(1) はアモルファス化する。(図3(a) 参照)
次いで,上記第1段階の高濃度燐注入領域117S_(1) 及び117D_(1) の結晶性を回復させるための第1次の熱処理を行う。熱処理の条件は例えば 850℃で10min 程度でよい。なおこの熱処理は,赤外線等の光を用いた急速加熱アニール(RTA) 手段によってもよく,その場合アニール条件は1000℃,10sec 程度にする。
【0014】この熱処理により,アモルファス化された高濃度燐注入領域117S_(1) 及び117D_(1)内に,下部に接するイオン注入がなされないで元の結晶性のまま存在しているSi層深部2bのSi結晶を核にしてSiの結晶が成長し,該高濃度燐注入領域117S_(1) 及び117D_(1) の結晶性は元のSi層12とほぼ同様な再結晶構造に回復する。またそれと同時に注入された燐が活性化されて10^(20)cm^(-3)台の燐濃度を有する第1段階のn^(+) 型高濃度ソース領域17S_(1)及び第1段階のn^(+) 型高濃度ドレイン領域17D_(1)に変質する。また同時に,前記低濃度砒素注入領域115S及び115Dも活性化されて,ゲートオフセット部に10^(16)cm^(-3)台の砒素濃度を有するn^(-) 型低濃度ソース領域15S 及びn^(-) 型低濃度ドレイン領域15D が形成される。(図3(b) 参照)
次いで,再び前記ゲート電極14及びSiO_(2)サイドウォール16をマスクにし,p型再結晶Si層12の深部12b に高濃度ソース・ドレイン形成のための第2段階の燐(P) の高ドーズ量によるイオン注入を,例えば加速エネルギー80KeV ,ドーズ量5×10^(15)cm^(-2)の条件で行う。117S_(2) 及び117D_(2) は上記第2段階の高濃度燐注入領域を示し,上記条件で燐のピーク濃度の深さは98nm程度になる。なお,Si層12の厚さは前記のように100nm である。」
3 引用文献3の記載
引用文献3には,図面とともに次の記載がある。
「【0051】本実施例のTFTを図8に示す。このTFTの構造は,実施例1のTFTのそれとほぼ等しい。ただし,本実施例のTFTでは,半導体薄膜3のソース領域3bおよびドレイン領域3cは,それぞれソース電極配線8bおよびドレイン電極配線8cの下にのみ配され,絶縁壁13a下の領域には,不純物イオンが注入されていないオフセット領域3gが配されている。すなわち,ゲート電極5aおよび絶縁壁13aにより覆われた領域には不純物イオンが注入されていない。
【0052】本実施例のTFTは,たとえば以下のようにして製造される。図9(a)に示すように,実施例1と同様にして基板1上に導電膜5等を形成した後,エッチングによりこれらを加工してゲート電極5aを形成する。その後,絶縁壁13aを形成する。すなわち,基板1の半導体薄膜3が配された側の全面を覆うようにたとえば酸化ケイ素からなる絶縁膜13を形成し,さらに絶縁膜13を異方性エッチング(ドライエッチング)により加工して,ゲート電極5aの側面を覆う絶縁壁13aを自己整合的に形成する。
【0053】形成された絶縁壁13aおよびゲート電極5a(必要に応じてはさらにレジスト層)をマスクに用いて,図9(b)に示すように半導体薄膜3に不純物イオンを注入する。その後は,実施例1と同様にしてゲート電極5a,ドレイン電極配線8c配線等を形成すると,絶縁壁13aの下にオフセット領域3gを有するTFTが得られる。」
4 引用文献4の記載
引用文献4には,図面とともに次の記載がある。
「【0018】
上述のように,典型的には,チャネルの一部だけを異なる状態になるようにドープし,ターンオン電圧を変化させる。通常,ドープされるエリアは,チャネル80と誘電体70との間の界面またはその付近にある境界部分または領域82である。これを達成するための1つの方法は,図2?図5に示す例のように,異なる状態にドープされたチャネル材料からなる個別の層を,誘電体70に隣接しかつ接触するように堆積することによる。チャネルの1つまたは複数の残された層(例えば,図2の部分84)は,下層の同じ材料(例えば酸化亜鉛)で製造されるが,付加的な不純物でドープされていない。追加的にまたは別法では,異なる状態にドープされた材料からなる領域は,チャネル層の堆積中に,ある特定の処理パラメータを変更することによって達成することができ,その結果,チャネルの残りの部分とは異なる状態にドープされた,局在化したチャネル領域が得られる。
【0019】
境界領域内に導入される不純物は,下層の材料と相互作用するドナー型の不純物であってよく,これにより,ドープされた領域内に導入される正の固定電荷密度が高まる。こうして,正の電荷密度が高まると,ソース電極62とドレイン電極64との間に導電性経路を誘起するために必要なゲート電圧が低下する。下層のチャネル材料として酸化亜鉛が用いられる場合には,アルミニウムが,適当なドナー型の不純物の一例であり,この場合,境界領域82内の正の固定電荷密度を高め,それによりソース62とドレイン64との間に電気伝導を誘発するためのゲート電極60で必要なターンオン電圧を低下させるために導入できるものである。下層の酸化亜鉛チャネルとともに用いることができる他のドナー型の不純物は,ホウ素,ガリウム,インジウム,フッ素および塩素を含む。これらの不純物は,RFスパッタリング,DCスパッタリングまたはイオンビームスパッタリング(例えば,酸化物ターゲットによるスパッタリングかまたは金属ターゲットによる反応性スパッタリング),熱蒸着または電子ビーム蒸着,化学気相成長,パルスレーザ堆積,原子層堆積,分子ビームエピタキシおよび/または他の適当な方法によって,デバイス内に添加することができる。
【0020】
また,アクセプタ型の不純物を用いることもでき,これにより,異なる状態にドープされた領域内の負の固定電荷密度が高まり,それにより,閾値電圧が高まる。ドナー型の不純物と同様に,そのようなドーピングの変化は,典型的には,チャネルの一部中のみで実施することができ,そのような部分は典型的には,チャネル80と誘電体70との間の界面またはその付近に位置する。酸化亜鉛チャネルとともに用いることができる例示的なアクセプタ型の不純物は,窒素,リン,ヒ素,アンチモン,リチウム,ナトリウム,カリウムおよび銅を含む。
【0021】
下層の酸化インジウムチャネルに対して,許容可能なドナー型の不純物は,シリコン,ゲルマニウム,スズ,鉛,フッ素および塩素であり,一方,許容可能なアクセプタ型の不純物は,窒素,リン,ヒ素およびアンチモンを含む。下層の酸化スズチャネルに対しては,許容可能なドナー型の不純物は,ヒ素,アンチモン,ビスマス,フッ素および塩素を含み,一方,許容可能なアクセプタ型の不純物は,ホウ素,アルミニウム,ガリウム,インジウム,窒素,リン,ヒ素およびアンチモンを含む。」
5 引用文献5の記載
引用文献5には,図面とともに次の記載がある。
「【0009】半導体装置301は,入力端子311,第1の制御回路312,第2の制御回路313,CPU314,第1のメモリ315,第2のメモリ316,及び半導体表示装置302によって構成される。入力端子311からは,それぞれの電子機器に応じて,画像データの基となるデータが入力される。例えば,放送受信機ではアンテナからの入力データであり,ビデオカメラではCCDからの入力データである。DVテープやメモリーカードからの入力データであってもよい。入力端子311から入力されたデータは,第1の制御回路312によって画像信号に変換される。第1の制御回路312では,MPEG規格やテープフォーマット等に従って圧縮符号化された画像データの復号処理,画像の補間やリサイズといった画像信号処理が行われる。第1の制御回路312から出力された画像信号や,CPU314が作成または加工した画像信号は,第2の制御回路313に入力され,半導体表示装置302に適したフォーマット(例えば走査フォーマット等)に変換される。第2の制御回路313からは,フォーマット変換された画像信号と制御回路が出力される。
(中略)
【0012】以上のようにして,半導体装置301は画像データを取り込み,または作成して,画像を表示するが,このような半導体装置は,2つの独立した半導体装置と考えることもできる。2つの独立した半導体装置は,図4に示すようなブロック図によって表すことができる。図4において,半導体装置401からは,第2の制御回路を介して,色信号,輝度信号,画質調整用の信号といった一般的なフォーマットの画像信号と制御信号が出力される。半導体装置401から出力された画像信号と制御信号は,半導体装置402に入力され,制御回路422によって半導体表示装置403に適したフォーマットの画像信号とクロック信号,スタートパルスといった制御信号に変換される。そして半導体表示装置403は,制御回路422から画像信号と制御信号を受け取り,画像の表示を行う。なお,制御回路422は,画素部425とは別のチップで構成される。半導体装置401としては,例えば放送受信機,ゲーム機を,また,半導体装置402としては,例えば液晶ディスプレイ,ELディスプレイを考えることができる。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用方法発明との対比
ア 引用方法発明において「絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体層を形成」し,「酸化物半導体層において,マスクと重なる領域はチャネル形成領域となり,一方,酸素欠陥誘起因子が導入されてソース領域及びドレイン領域が形成される」から,引用方法発明は,本願発明1の「基板を設けるステップであって,前記基板は表面を有し,前記表面は,ソースエリアと,ドレインエリアと,チャネルエリアとを含み,前記基板は,前記基板の前記表面上の酸化物半導体層と,前記基板の前記チャネルエリアの上にある前記酸化物半導体層上のマスクとを含むステップ」を備えるものである。
イ 引用方法発明において,「酸化物半導体層にマスクを用いて選択的に酸素欠陥誘起因子を導入」し「酸素欠陥誘起因子が導入されてソース領域及びドレイン領域が形成され,酸素欠陥はドナーとして機能する」ものであり,ここで「酸素欠陥誘起因子」としては「金属元素」が好ましく(前記第5の1(1)ウ),金属元素がイオンの形で導入されることは当業者に自明であるから,引用方法発明は,本願発明1の「金属カチオンを,前記基板の前記ソースエリアおよび前記ドレインエリアの上にある前記酸化物半導体層中に注入して,ドープn型酸化物半導体層を形成するステップ」を備えるものである。
ウ すると,本願発明1と引用方法発明とは,下記エの点で一致し,下記オの点で相違する。
エ 一致点
「基板を設けるステップであって,前記基板は表面を有し,前記表面は,ソースエリアと,ドレインエリアと,チャネルエリアとを含み,前記基板は,前記基板の前記表面上の酸化物半導体層と,前記基板の前記チャネルエリアの上にある前記酸化物半導体層上のマスクとを含むステップと,
金属カチオンを,前記基板の前記ソースエリアおよび前記ドレインエリアの上にある前記酸化物半導体層中に注入して,ドープn型酸化物半導体層を形成するステップと,
を含む,方法。」
オ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1では「前記金属カチオンの注入深さが前記酸化物半導体層の厚さに等し」いのに対し,引用方法発明ではこの旨が明示されない点。
(イ)相違点2
本願発明1では「前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,前記金属カチオンが,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである」のに対し,引用方法発明ではそうではない点。
(2)相違点についての検討
相違点2について検討すると,相違点2に係る発明特定事項についていずれの引用文献にも記載も示唆もない。
引用文献1には,酸素欠陥誘因因子としては酸素親和性の高い金属元素が好ましい(前記第5の1(1)ウ)と記載されているだけで,相違点2に係る発明特定事項である「前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである」ように選択することに動機付けが見いだせない。
(3)まとめ
したがって,相違点1について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明14について
(1)本願発明14と引用装置発明との対比
ア 引用装置発明の「絶縁表面を有する基板上に,チャネル形成領域,酸素欠陥誘起因子を含むソース領域及び酸素欠陥誘起因子を含むドレイン領域が設けられている酸化物半導体層」及び「ソース領域,ドレイン領域に含まれる酸素欠陥誘起因子の濃度は,1×10^(19)atoms/cm^(3)以上であって,酸素欠陥はドナーとして機能する」は,ここで「酸素欠陥誘起因子」としては「金属元素」が好ましく(前記第5の1(1)ウ),金属元素がイオンの形で導入されることは当業者に自明であることを考慮すると,下記相違点3を除いて,本願発明14の「表面を含む基板と,前記基板表面上の酸化物半導体層であって,前記酸化物半導体層は,チャネル領域と,ソース領域と,ドレイン領域とを含み,前記酸化物半導体層の前記ソース領域および前記ドレイン領域は,約10^(19)原子/cm^(3)よりも高い濃度まで金属カチオンが注入されたドープn型酸化物半導体層である酸化物半導体層」を満たす。
イ 引用装置発明の「ゲート絶縁層と,ゲート電極層」は,ゲートとして機能するために「チャネル形成領域」上にこの順に存在することは当業者に自明であるから,本願発明14の「前記酸化物半導体層の前記チャネル領域上の第1の誘電体層と,前記第1の誘電体層上の第1の金属層」を満たす。
ウ 引用装置発明の「トランジスタ」は,下記相違点3及び4を除いて,本願発明14の「装置」を満たす。
エ すると,本願発明14と引用装置発明とは,下記オの点で一致し,下記カの点で相違する。
オ 一致点
「表面を含む基板と,
前記基板表面上の酸化物半導体層であって,前記酸化物半導体層は,チャネル領域と,ソース領域と,ドレイン領域とを含み,前記酸化物半導体層の前記ソース領域および前記ドレイン領域は,約10^(19)原子/cm^(3)よりも高い濃度まで金属カチオンが注入されたドープn型酸化物半導体層である酸化物半導体層と,
前記酸化物半導体層の前記チャネル領域上の第1の誘電体層と,
前記第1の誘電体層上の第1の金属層と,
を備える,装置。」
カ 相違点
(ア)相違点3
本願発明14では「前記金属カチオンの注入深さが前記酸化物半導体層の厚さに等しい」のに対し,引用装置発明ではこの旨が明示されない点。
(イ)相違点4
本願発明14では「前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,前記金属カチオンが,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである」のに対し,引用装置発明ではそうではない点。
(2)相違点についての検討
相違点4について検討すると,相違点4に係る発明特定事項についていずれの引用文献にも記載も示唆もない。
引用文献1には,酸素欠陥誘因因子としては酸素親和性の高い金属元素が好ましい(前記第5の1(1)ウ)と記載されているだけで,相違点4に係る発明特定事項である「前記金属カチオンが,ハフニウムカチオン(Hf^(+)),およびスズカチオン(Sn^(+))のうちの1つまたは複数から選択され,前記酸化物半導体層の構成金属のカチオンである」ように選択することに動機付けが見いだせない。
(3)まとめ
したがって,相違点3について検討するまでもなく,本願発明14は,引用発明1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 本願発明15ないし24について
本願発明15ないし24は,本願発明14を引用するものであり,本願発明14の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記3と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
5 特許請求の範囲の記載不備について
当審補正により請求項1及び請求項14の記載が補正されて,本願発明1ないし24は,発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
よって,当審拒絶理由は解消した。

第7 原査定の理由についての判断
前記第6の1ないし4のとおり,本願発明1ないし24は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-30 
出願番号 特願2014-542522(P2014-542522)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
深沢 正志
発明の名称 アモルファス酸化物半導体薄膜トランジスタ作製方法  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  
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