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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1338743
審判番号 不服2016-5996  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-22 
確定日 2018-03-22 
事件の表示 特願2013-501405「改善された制御システム・シミュレータ及び単純化された相互接続制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年9月29日国際公開,WO2011/119626,平成25年6月13日国内公表,特表2013-522802〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は,2011年(平成23年)3月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年(平成22年)3月22日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年12月7日付けで拒絶査定(謄本送達日平成27年12月22日)がなされ,それに対して,平成28年4月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
そして,当審において,平成29年5月25日付けで拒絶理由(発送日平成29年6月6日)を通知し,応答期間内である平成29年9月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところである。

ここで,この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成29年9月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
物理的プロセスの制御システムのためのプロセス・シミュレーション・システムであって、
(a)(i)モジュールと少なくとも1つの制御システム入力又は出力信号との間に少なくとも1つのコンダクタを接続するためのデバイス通信コネクタ装置と、
(ii)モジュールに、複数の信号のいずれかを前記デバイス通信コネクタ装置の複数のコンタクトのいずれかの上に配置させるための、選択可能な相互接続装置を前記コンタクトの特定のものに提供する少なくとも1つの電子集積回路を含み、前記コンタクトの2つは、熱電対温度センサが接続されるためのものであり、前記電子集積回路は、前記熱電対温度センサの電圧を測定するための差動増幅器と、前記差動増幅器に前記熱電対温度センサを接続するためのクロスポイントスイッチとを備え、かつ、前記システムのユーザにより構成可能なインターフェース装置と、
を含む構成可能なコネクタ・モジュールと、
(b)シミュレートされた物理的プロセスに対応する信号を管理するためのシミュレータであって、2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータを備え、前記デバイス通信コネクタ装置の前記コンタクトに接続されるシミュレータと、
を含み、それによって前記物理的プロセス中の前記制御システムの動作がシミュレートされ、前記熱電対温度センサは、前記コネクタ・モジュールにより独立して制御されることを特徴とするプロセス・シミュレーション・システム。」

2 引用例の記載
(1)引用例1
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用された特表2009-518728号(2009年(平成21年)5月7日公表。以下,「引用例1」という。)には,図面とともに次の記載がある。

「【0001】
(関連出願)
本出願の原出願は、2001年2月14日に出願された米国仮出願第60/269,129号の恩恵を主張する2002年2月8日に出願された米国特許出願第10/071,870号の一部継続出願である、2005年1月25日に出願された米国特許出願第11/043,296号の一部継続出願である。前述の開示内容は、参照によって、本明細書中に組み入れられている。
本発明は、一般にケーブリングとケーブリング・システムに関し、さらに具体的に言えば、第1のデバイスに接続を行い、また、この第1のデバイスからケーブルの選択されたケーブルのワイヤへの接続を指示して第2のデバイスに接続を行うプログラマブルI/Oモジュールの使用を通じて、第1のデバイスと第2のデバイスとの間の特定のワイヤの相互接続に関する要件が達成される汎用ケーブリング・システムに関する。
【0002】
電気/電子複合システムは、カスタム・ケーブル構成(custom cable configuration)を必要とすることが多い。ケーブルは、通常、特定の用途に対して決まった構成になっている。ホームオーディオや小型コンピュータシステムなどの比較的に単純なシステムでさえ、一般に、いくつかの異なるケーブルが必要とされる。産業用制御システムなどのさらに広い用途では、カスタム・ケーブル設計の数も多い。自動車工場などを管理するものなどの産業用制御システムでは、制御装置とセンサとアクチュエータとの間に相互作用(インタラクション)が必要とされる。対応する接続をもたらす装置は、入力システム、出力システムと呼ばれることもある。その出力システムを通じて、上記制御システムは、ライト、ポンプ、バルブ、その他のデバイスをオンにすることができる。同様に、その入力システムを通じて、上記制御システムは、押しボタンの状態、スイッチがオンであるかオフであるか、又はタンクが満タンであるかどうか、あるいは、軸がどれくらいの速度で回転しているかを検出することができる。」

「【0009】
それゆえ、本発明の目的は、標準ケーブルを用いて、カスタマイズされた接続を行うことのできる方法及び装置を提供することである。」

「【0015】
手短に言えば、本発明の好ましい実施態様は、デバイスに信号を送ったり、デバイスから信号を受け取るコントローラからの指示を実現する入出力モジュールを含む。この入出力モジュールは、このコントローラとやり取りして、上記コントローラからプログラムを受け取るマイクロプロセッサを含む。この入出力モジュールはさらに、デバイス通信コネクタも含む。それぞれのデバイス通信コネクタは、いくつかのピンを持ち、かつそれぞれのピンが、デバイスに通じるケーブル導体と相互接続されている。この入出力モジュールは、これらのピンのそれぞれに対して特定用途向け集積回路(ASIC)を持っており、それにより、対応するピンとの制御されるインターフェースが実現される。それぞれのASICは、上記マイクロプロセッサによりそれぞれが選択できる複数の相互接続装置を持っていて、特定のASICが機能するピンとの特定のインターフェースを実現する。例えば、或る相互接続装置が、該当するピンへの電源の接続を実現し、また、別の相互接続装置が、特定タイプの信号を、ピンに送ったり、あるいはピンから受け取ることができるようにする。」

「【0017】
本発明のさらに他の利点は、本発明が、関連する使用説明(documentation)、ワイヤストリップ(ワイヤ被覆剥ぎ)、ワイヤラベリング、設置、テストを含め、手作業配線のコストを削減することである。
【0018】
本発明のさらに他の利点は、本発明が、カスタム・ケーブル・ハーネスの必要性を排除するか、あるいは最小限に抑えることである。
【0019】
本発明のさらに他の利点は、本発明が、新たなシステムを設計するのに必要な時間を削減することである。」

「【0027】
図6に示されるI/Oモジュール66は、マイクロプロセッサ82と場合によって電源84とを含む動作指示装置(directing apparatus)115及び、1つ又は複数のインターフェース装置97を含む。それぞれのインターフェース装置97は、コネクタ114の1つのピンに接続された1本のライン94に接続されている。別法として、電源84は、図5を参照して述べられた通り、外部に位置づけられて、I/Oモジュール66に相互接続されることもある。入力ライン86と出力ライン88は、好ましい実施形態により、I/Oモジュール66とシステム・コントローラ72との間で、それぞれ、通信入力と通信出力に必要なものとして(例えば、イーサネット)両方とも示されている。使用中の通信ネットワークのタイプにより、本発明には、他のタイプの相互接続も含まれる。図6のバス86は、図5のシステム・コントローラ72などのコントローラとI/Oモジュール66との間のネットワーク通信に必要な接続装置を表している。図6のバス88は、I/Oモジュール120とI/Oモジュール122との間で、別のI/Oモジュール(例えば、図7中の124)に通信するのに必要な接続装置を表している。一般に、マイクロプロセッサ82は、例えば、圧力センサ、温度センサなどのデバイス96のうち選択された特定の1つを検出するために要求される、システム・コントローラ72からの命令を受け取って、対応するデータをシステム・コントローラ72に提供するように、システム・コントローラ72により構成され/プログラムされている。マイクロプロセッサ82はまた、コネクタ114上のどれか選択された1つ又は複数のピン、また、それを経て、1本又は複数本のケーブル94の対応する導体に特定の信号を印加させるように、システム・コントローラ72によりプログラムされ/指示されている。さらに、マイクロプロセッサ82は、選択されたタイプの信号を、デバイス96からシステム・コントローラ72に送る指示に応答するようにプログラムされている。
【0028】
図6は、ライン94A上の特定の選択可能なインターフェースを、コネクタ114Aの特定のピンにそれぞれが提供する98?112などの相互接続装置をいくつでも含むことのできるインターフェース装置97Aを示している。図6は、第2のインターフェース装置97Bを示している。第2のインターフェース装置97Bは、インターフェース装置97Aと同一であることもあり、図示されるコネクタ114Aの別のピンに接続している。同様に、114Aなどのコネクタのそれぞれのピンに対して、インターフェース装置97が設けられることもある。次に、図6は別のコネクタ114Nを示し、これは、本発明にコネクタ114がいくつでも含まれ、しかも、それぞれのコネクタ114がピンをいくつでも持つことを表している。それぞれのピンは、1つの専用インターフェース装置97と接続できる。それぞれのインターフェース装置は、相互接続装置(98?112)などの1つ又は複数の選択可能な相互接続装置を持っている。それゆえ、I/Oモジュール66は、図示されるように、複数のライン94のコネクタ・ピンのそれぞれに対して、相互接続装置(98?112)を提供する。それぞれの組の相互接続装置(98?112)は、或るコネクタ114の或るピンに通じる或るライン94に接続するのにあてられる。それゆえ、本発明は、コネクタ114のコネクタ・ピンの1つ1つに通じるライン94ごとに、98?112などの一組の相互接続装置と、マイクロプロセッサ82中の対応する所要のプログラム・ロジックとを含むインターフェース装置を含む。また、これらのコネクタ・ピンは、例えば、コネクタ114上の円で示される通りのものであり、ケーブル68を通じて、対応するどんなデバイス70にも接続する。
【0029】
システム65の動作の一例として、マイクロプロセッサ82は、特定の入力データを認識するようにプログラムされる。この特定の入力データは例えば、特定のデバイス70に通じる特定のライン94上でアナログ信号として、そのデータを送る命令が入っているライン86上のイーサネット・パケット中に含まれている。この場合、そのプログラムは、デジタル・アナログ変換器116を持つ相互接続装置98を通じて、データを方向づけ/変換するように、マイクロプロセッサ82に指示する。このような接続を行う機構は、リレー「R1」で表されている。このリレーを作動させて、デバイス116からデバイス70への所要の接続を行うことができる。別の例として、ライン94が、デバイス70に15ボルトを伝えるとすると、マイクロプロセッサ82は、システム・コントローラ72からの信号に応答して、リレーR6を作動させるようにプログラムされる。このようにして、システム65は、94などの任意のラインを通じて、選択された様々な信号を伝達できるようにし、また、送られる様々な信号のうちどれか1つを、94などの任意の選択ラインに、また、そこから対応するデバイス70に印加できるようにする。そのために、ライン94などのラインに接続しているケーブルは、所要の信号を送ることのできる任意ケーブルである。そのケーブルは、上で説明されるように、好ましくは従来通り標準のケーブルである。
【0030】
回路切替え装置(R1?R8)は、電気機械式のリレーとして線図式に示されている。一実施形態では、この回路切替え装置は、半導体回路中に実現される。半導体回路は、電気機械式リレー回路よりもはるかに安い費用で実現でき、また、電気機械式リレー回路よりも速く動作できる。本発明の要旨を示すために、電気機械式リレーを使用する。
【0031】
図6に示されるように、98?112として示される8つの信号経路相互接続装置のどれか1つを、ライン94に相互接続することができる。図6は例えば、24VDC、接地、15VDC、-15VDCを含む動作電力用の4つの異なる電源信号を特定のピンに供給する装置を示している。相互接続装置102は、ライン94に通じるピン接続部にデジタル信号を伝えられるようにする。相互接続装置108は、電源帰路/接地である。相互接続装置98と相互接続装置100はそれぞれ、デジタル・アナログ変換とアナログ・デジタル変換を実現する。動作指示装置のマイクロプロセッサ82は、第1の信号をシステム・コントローラ72に出力するようにI/Oモジュール66に指示するようにプログラムされ、しかも、この第1の信号は、デバイス70からI/Oモジュール66に入力された信号のデータ内容を、コネクタ114のピン117の選択された1つに伝える。上述の通り、I/Oモジュール66は、それぞれのケーブル68(図5)中のそれぞれのライン94(図6)に対して、98?112などの一組の相互接続装置を用いて構成される。
【0032】
これらのラインと相互接続は、どんなタイプの信号でも伝えることができる。例えば、信号は、サーボモータからのフィードバックにおいて見出されるものなどの周波数情報を含むこともある。あるいは、これらの信号は、例えばRS-232データ、あるいは、デバイス・ネット、プロフィバス、又はイーサネットなどのフィールドバス・データを処理するシリアル通信キャリアを表すこともある。」

「【0037】
本発明の方法の一実施形態が図9に示されており、図9では、インターロック・システム内でカスタム配線を最小限に抑えるか、あるいは排除するために、I/Oモジュール66などの構成可能なコネクタ付きI/Oモジュール(166、168、170)が使用されている。I/Oモジュール166、I/Oモジュール168、I/Oモジュール170は、図5及び図6のI/Oモジュール66と類似するか、あるいは同一であってもよく、インターロック・モジュール180、インターロック・モジュール182、インターロック・モジュール184に接続される。図9に示される相互接続は、その全部又は一部に標準のコネクタとケーブリングが設けられ、また、信号の特定の指示/経路指定は、これらの構成可能なコネクタ付きI/Oモジュールをプログラムすることで達成される。
【0038】
図9に例示されるシステム154は、マスフロー・コントローラなどのようなデバイス158を含め、動作を制御するシステム・コントローラ156を含む。システム154は、3つすべての安全センサ(160、162、164)の状態により、動作条件が適切であることが示された場合にのみ、デバイス158を動作できるようにするインターロック・システムを含む。これらのセンサは、その目的では、任意タイプのものであることもある。これら3つの例は、近接スイッチ160、安全インターロック162、リミットスイッチ164である。
【0039】
システム・コントローラ156は、上述のように、プログラム可能な柔軟性(programmable flexibility)を与える上記3つの構成可能なコネクタ付きI/Oモジュール(166、168、170)のそれぞれに接続されて、このシステム全体にわたって標準のケーブルと標準コネクタを使用できるようにすることで、指示される様々な接続を行う。I/Oモジュール(166、168、170)は、図ではインターロック・モジュール(180、182、184)と重なっており、これは、インターロック・モジュール(180、182、184)が、I/Oモジュール(166、168、170)に差込み接続していることを示す。好ましい実施形態では、インターロック・モジュール(180、182、184)は、ケーブル68の代わりに、図5のI/Oモジュール66などのI/Oモジュールのコネクタ74に差込み接続している。インターロック・モジュール(180、182、184)はそれぞれ、デバイス(158?164)を相互接続するためにケーブル68が差込み接続するデバイス・コネクタ74を含む。それゆえ、インターロック・モジュール(180、182、184)は、I/Oモジュール(166、168、170)と、例として図9に示される通り、近接スイッチ160、リミットスイッチ164、安全インターロック162、及びデバイス158を含め、I/Oモジュール(166、168、170)が接続しているデバイス(158?164)との間にある。
【0040】
システム・コントローラ156は、ライン174で示されるイーサネットなどのネットワークを介して、I/Oモジュール(166、168、170)やインターロック・プロセッサ172とやり取りする。イーサネット通信を達成する装置は、当業者には理解されよう。よって、これは、図示して、本発明を再現する必要はない。電源176は、図では、その接続が、ライン178により記号で表されている。インターロック・モジュール(180、182、184)は、I/Oモジュール(166、168、170)のそれぞれに接続されている。それぞれのインターロック・モジュール(180?184)は、ライン(186、188、190)で示されるケーブル/バスを通じて、インターロック・プロセッサ172に接続されている。」

「【0043】
次に、図面の図10を参照すると、本発明の他の実施形態が示されており、そこでは、図6に示される98?112などの相互接続装置を含むインターフェース装置が、特定用途向け集積回路(ASIC)198として構成されている。ASIC198は、I/Oモジュール200内で、それぞれのコネクタ202のピンごとに繰り返されている。例えば、1つのコネクタ202上の複数のピンに対する一連のASIC198は、破線204で囲まれたもので示されている。したがって、コネクタ202が25個のピンを持っている場合には、その1本の導体に対して、25個のASIC198が用いられる。ちょうど、どんなモジュールも、コネクタ202をいくつでも含められるように、I/Oモジュール200は、ASIC198をいくつでも含むことができる。他の実施形態は、それぞれのASIC内で複数のピンを処理するか、あるいは、複数のASICを使用して1つ又は複数のピンを処理するような別のASICアーキテクチャを使用することがある。ASICを使用した結果によって、最新の半導体製法によりもたらされた小型化のおかげで、I/Oモジュール200を構築するコストとサイズが大幅に減らされた。この場合も、図10の回路200は、図6を参照して述べられる回路モジュール66と機能的に類似するか、あるいは同一である。その違いは、相互接続装置(98?112)、あるいはそれらの要素(98?112)を任意に組み合わせたもの、若しくは他の要素の機能を果たして、ピンとインタフェースする/やり取りする回路が、図10の回路200中のASIC198に組み入れられている点である。
【0044】
図11は、ピン・ドライバASIC198のブロック図を示している。SPIインターフェースなどのシリアル通信バス206によりマイクロプロセッサ82に接続されると、図10のマイクロプロセッサ82は、ASIC198に命じて、98?112として示される図6の回路の機能を果たすことができる。図11の回路は、図6の相互接続装置(98?112)とは異なるように見えるが、回路198は、これと同一又は類似する所要の機能を果たすことができる。図6は、本発明の要旨を伝えることを目的とするやや理想化された略図であるが、図11は、ASIC内に入れられることになる回路素子をもっと多く含む。それでも、図11は、図6のすべての回路素子を実現する。例えば、図6は、スイッチ98を使用して、デジタル・アナログ変換器(D/A又はA/D)を出力ライン94Aに接続する。図11では、デジタル・アナログ変換器226は、スイッチ220を介して出力ピン208に接続される。本発明はまた、これと同一又は類似する目的で、ASIC198用の他の回路構成も含む。当業者であれば、このような様々な回路を設計する方法と、これらの回路が本発明に含まれることがわかるであろう。
【0045】
次に、図11の回路の模範的な特徴を簡潔に述べる。大電流スイッチ222bを閉じて、電源セレクタ227を、24ボルト、12ボルト、5ボルト、接地、又はマイナス12ボルトなど、有効電源電圧のいずれかにセットすることで、電力がピン208に印加されることがある。
【0046】
この回路は、小電流スイッチ222を閉じて、アナログ・デジタル変換器216で変換された電圧を読み取ることで、ピン208上の電圧を測定できる。
【0047】
この回路は、超低電圧信号を発生させる熱電対温度センサをポイント/ピン208に直結できる。クロスポイント・スイッチ210を用いれば、高精度差動増幅器212を、上記熱電対の両リード線に接続することができる。その場合、上記熱電対の一方のリード線は、コネクタ202(図10)のピンに接続されたノード/ピン208に接続されており、また、上記熱電対の他方のリード線は、4方向クロスポイントI/O214のコネクタに接続された、コネクタ202の別のピンに接続されている。それゆえ、クロスポイント・スイッチ210により、コネクタ202の隣り合った2つのピンを、差動増幅器212を介して、同一のアナログ・デジタル変換器216に接続することができる。」

「【0055】
本発明の他の改良は、I/Oモジュール200に接続されたデバイスをI/Oモジュール200が別々に制御できることを含む。例えば、熱電対又は他の温度センサが、ヒータとともにI/Oモジュール200に接続される場合には、マイクロプロセッサ82は、その温度センサを読み取って、所望の温度が得られるように、このヒータを作動させる。このヒータは、通常、増幅器(例えば、リレー)を利用して、I/Oモジュール200の低レベルの出力を、ヒータを駆動できる大電力の出力に変換する。それにより、I/Oモジュール200は、閉ループ制御を実行できる。そのような場合に、上記熱電対は、入力部として構成されている隣り合った2つのピン208に接続される一方で、上記ヒータは、出力部として構成されている2つのピン208に接続される。動作中に、マイクロプロセッサ82は、上述の通り、温度センサの電圧を測定する。マイクロプロセッサ82は、所望の温度を、公知の制御アルゴリズムを用いて、その測定温度に加え、さらに、その容認された方法を用いて作動信号(actuation signal)も作り出す。次に、マイクロプロセッサ82は、連続的に変動するアナログ信号を用いて、あるいは、パルス幅変調(PWM)されたオン/オフ信号を介して、上記ヒータを作動させる。したがって、I/Oモジュール200に接続されたデバイスが別々に制御される。」

【図5】

【図6】

【図9】

【図10】

【図11】


イ 上記記載から,引用例1には,次の技術的事項が記載されている。

(ア)引用例1に記載された発明は,汎用ケーブリング・システムに関するものであり(【0001】),自動車工場などを管理するものなどの産業用制御システムでは,制御装置とセンサとアクチュエータとの間に相互作用(インタラクション)が必要とされ,対応する接続をもたらす装置は,入力システム,出力システムと呼ばれることもあるが,その出力システムを通じて,上記制御システムは,ライト,ポンプ,バルブ,その他のデバイスをオンにすることができ,その入力システムを通じて,上記制御システムは,押しボタンの状態,スイッチがオンであるかオフであるか,又はタンクが満タンであるかどうか,あるいは,軸がどれくらいの速度で回転しているかを検出することができる(【0002】)のであるが,そのような技術分野において,引用例1に記載された発明は,標準ケーブルを用いて,カスタマイズされた接続を行うことのできる方法及び装置を提供し(【0009】),関連する使用説明(documentation),ワイヤストリップ(ワイヤ被覆剥ぎ),ワイヤラベリング,設置,テストを含め,手作業配線のコストを削減し(【0017】),カスタム・ケーブル・ハーネスの必要性を排除するか,あるいは最小限に抑え(【0018】),新たなシステムを設計するのに必要な時間を削減する(【0019】)という発明である。

(イ)I/Oモジュール内の,ASICの回路は,超低電圧信号を発生させる熱電対温度センサをポイント/ピンに直結できるが,ここで,クロスポイント・スイッチを用いれば,高精度差動増幅器を,上記熱電対の両リード線に接続することができ,それぞれのインターフェース装置は,コネクタの1つのピンに接続された1本のラインに接続されている(【0027】,【0043】,【0047】)。

(ウ)マイクロプロセッサは,例えば,圧力センサ,温度センサなどのデバイスのうち選択された特定の1つを検出するために要求される,システム・コントローラからの命令を受け取って,対応するデータをシステム・コントローラに提供するように,システム・コントローラにより構成され/プログラムされており,マイクロプロセッサはまた,コネクタ上のどれか選択された1つ又は複数のピン,また,それを経て,1本又は複数本のケーブルの対応する導体に特定の信号を印加させるように,システム・コントローラによりプログラムされ/指示されており,マイクロプロセッサは,選択されたタイプの信号を,デバイスからシステム・コントローラに送る指示に応答するようにプログラムされている(【0027】)。

(エ)コネクタのコネクタ・ピンの1つ1つに通じるラインごとに,一組の相互接続装置と,マイクロプロセッサ中の対応する所要のプログラム・ロジックとを含むインターフェース装置を含み,また,これらのコネクタ・ピンは,例えば,コネクタ上の円で示される通りのものであり,ケーブルを通じて,対応するどんなデバイスにも接続する(【0028】)。

(オ)相互接続装置を含むインターフェース装置は,特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されており(【0043】),ASICの回路は,超低電圧信号を発生させる熱電対温度センサをポイント/ピンに直結できるが,ここで,クロスポイント・スイッチを用いれば,高精度差動増幅器を,上記熱電対の両リード線に接続することができ,その場合,上記熱電対の一方のリード線は,コネクタのピンに接続されたノード/ピンに接続されており,また,上記熱電対の他方のリード線は,4方向クロスポイントI/Oのコネクタに接続された,コネクタの別のピンに接続されており(【0047】),I/Oモジュールに接続された熱電対を含むデバイスは,I/Oモジュールが別々に制御できる(【0055】)。

ウ これらのことから,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

産業用制御システムであって,
(a)(i)I/Oモジュールと制御システム入力又は出力信号との間に1本又は複数本のケーブルの対応する導体を接続する1つ又は複数のピンのあるコネクタと,
(ii)I/Oモジュールのマイクロプロセッサはまた,コネクタ上のどれか選択された1つ又は複数のピン,また,それを経て,1本又は複数本のケーブルの対応する導体に特定の信号を印加させるために,特定用途向け集積回路(ASIC)を含み,ASICの回路は,超低電圧信号を発生させる熱電対温度センサをポイント/ピンに直結できるが,ここで,クロスポイント・スイッチを用いて高精度差動増幅器を上記熱電対の両リード線に接続するものであり,
(b)産業用制御システムは種々のセンサやアクチュエータを備えており,上記コネクタのコネクタ・ピンは,ケーブルを通じて,対応するどんなデバイスも接続できるものであり,
上記熱電対センサは,I/Oモジュールにより独立して制御されるシステム。

(2)引用例2
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用された特開平5-257523号公報(平成5年10月8日出願公開。以下,「引用例2」という。)には,図面とともに次の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、制御盤に組み込まれるコンピュータのソフトウェアの論理を検証するために制御対象であるプラントのシミュレーションを行ないコンピュータソフトと組み合わせて動作させる設計支援装置に関する。」

「【0009】本発明の目的は、実際の運用に則した論理検証を行なうことができる汎用性のある論理検証装置を提供することにある。」

「【0011】また本発明では、プラントシミュレータにコンピュータを用い模擬制御盤の入力部とプラントシミュレータの出力装置間に接続変更可能な接続装置を設置するとともに、模擬制御盤の出力部とプラントシミュレータの入力装置間にも接続変更可能な接続装置を設置したものである。」

「【0013】
【作用】模擬制御盤に組み込むコンピュータは、実際に組み込まれるものと同機種,同形式とすることにより、設計したコンピュータソフトを別の形にコンパイルすることなくそのままの形で検証に供し得る。その他の模擬制御盤のハードウェア構成のうちコンピュータ,電源,伝送ネットワーク等全てを多重化構成も含んだ形で実機に則した構成としておくことによって、ハードウェアの異常時の模擬も実運用に則して実施でき、異常発生時の論理も検証し得る。
【0014】模擬制御盤とプラントシミュレータ間の切替装置は、制御対象によりコンピュータへの入出力点数や接続が変わっても、容易に切替えて実運用状態を模擬し得るため、汎用性を確保することができる。
【0015】また、プラントシミュレータにコンピュータを使用することにより、制御対象が変わっても、それに応じたシミュレーションモデル変更をソフトウェア(プログラム)の変更を行なうのみで対応できるので、高い汎用性を確保することができる。さらにプラントシミュレータに組み込んだ表示部と操作部は、上記切替装置により、制御対象に応じて模擬制御盤との入出力接続を変えることができるため、汎用性確保を達成し得る。」

「【0023】図3は、プラントシミュレータに操作部24と表示部25を具備した例である。操作部24は、制御対象に起動,停止などの操作指令を与えるスイッチ機能を持つ装置の模擬部であり、表示部25は、操作指令を与えられた結果として制御対象の状態を表示する装置や警報表示装置を模擬する部分である。これらは制御対象によって員数,接続が変更になるものであり、これをプラントシミュレータ2の一部として具備し接続装置3と組み合わせることによって、制御対象のいかんにかかわらず検証に供し得る。
【0024】図4は、接続装置3の1例である。端子台またはコネクタ31からジャック32を接続しておき、ジャック間をプラグ34を具備したジャンパー線33で接続することによって接続変更を容易にしたものである。これを実現する方法として、ジャック32とプラグ34の代りにロータリースイッチを使用することもできる。」

「【0029】
【発明の効果】本発明によれば、模擬制御盤に実機制御盤と同機種,同形式のコンピュータを組み込むので、設計したコンピュータ用ソフトウェアをそのままの形態で検証できコンパイル等の余分な作業を行なわなくて済むため、効率向上とコンパイルにおける不具合の作り込みを防止することができる。また、模擬制御盤とプラントシミュレータ間の接続装置やプラントシミュレータにコンピュータ,操作部,表示部を具備することによって、制御対象によらず汎用性の高い論理検証装置とすることができ、経済的な論理検証を可能とし得る。」

【図1】


イ 上記記載から,引用例2には,次の技術的事項が記載されている。
制御盤に組み込まれるコンピュータのソフトウェア検証のために,実機制御盤と同機種,同型式のコンピュータを組み込んだ模擬制御盤とプラントシミュレータを用いることで,ソフトウェア検証を行うものであり,模擬制御盤とプラントシュミレータとの接続は,接続変更容易な接続装置を用い,プラントシミュレータにもコンピュータを使用することでシミュレーションモデルの変更を容易にする技術。

(3)引用例3
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用された特表2007-507888号公報(2007年3月29日公表。以下,「引用例3」という。)には,図面とともに次の記載がある。

「【0001】
本発明は、一般に、半導体デバイスを製造することに関し、より具体的には、半導体製造プロセスにおける、第1の原理シミュレーションの利用に関する。」

「【0004】
これらの産業上及び製造上の難題は、半導体製造産業におけるコンピュータを使ったモデリング及びシミュレーションのより多くの利用への関心につながっている。コンピュータを使ったモデリング及びシミュレーションは、半導体製造ツールの設計プロセス中のツールパフォーマンスの予測に用いられるようになってきている。モデリングの利用は、ツール開発サイクルに伴うコスト及び時間の低減を可能にする。応力、熱、磁気学等の多くの学問分野におけるモデリングは、設計上の問題に的確な答えを与えることを信頼できる成熟したレベルに達している。また、コンピュータの処理能力は、新たな解法アルゴリズムと共に急速に増大してきており、これらは共に、シミュレーション結果を得るのに必要な時間の低減をもたらした。実際に、本発明者らは、現在、ツールの設計段階において一般に行われる非常に多くのシミュレーションを、ウェハまたはウェハカセット処理時間に匹敵する時間、実行することができることを明確に理解している。これらのトレンドは、一般に、ツール設計にのみ用いられているシミュレーション能力を、前記ツールによって実行される様々なプロセスにおいて支援するために、前記ツール自体に対して直接実施することができるという提案につながった。例えば、2001年の半導体のためのインターナショナル・テクノロジー・ロードマップでは、次世代の半導体デバイスにおける、非常に小さな形状構成の製造を可能にする技術としてのオンツール(on-tool)統合シミュレーション能力の開発を妨げる問題を確認している。」

「【0031】
本発明の一実施形態において、各シミュレーションモジュール302は、ネットワーク接続を介して、メインの工場レベルAPCコントローラ304に接続されている。図3を見て分かるように、工場レベルAPCコントローラ304は、スタンドアロン(独立型)シミュレーションモジュール308及び工場レベルライブラリ310に、および、インターネット314及びコミュニケーションサーバ316を介してスタンドアロンシミュレーションモジュール312に接続することもできる。
【0032】
スタンドアロンシミュレーションモジュール308及び312は、以下にさらに説明するように、より計算が集中する第1の原理シミュレーションを実行する際に、シミュレーションモジュール302を補助するのに用いることができる計算資源である。工場レベルライブラリ310は、前記ネットワークシステムの前記シミュレーションモジュールのいずれかから得られたシミュレーション結果を蓄積するデータベースである。工場レベルAPCコントローラ304は、何らかの適当なワークステーション、サーバ、あるいは、シミュレーションモジュール302、308及び312と通信し、かつ工場レベルライブラリ310に情報を蓄積し、かつ前記ライブラリから情報を検索する他の装置である。また、工場レベルAPCコントローラ304は、シミュレーションモジュール302のシミュレーション結果に基づいて、ツール102によって実行されるプロセスを容易にする。例えば、前記APCコントローラは、シミュレーションモジュールからシミュレーション結果を受取り、前記シミュレーション結果を用いて、いずれかのツール102のプロセス調整および/または補正のための制御手順を実施するように構成してもよい。工場レベルAPCコントローラ304は、何らかの適当なプロトコルを用いて、シミュレーションモジュール302、308及び312、および工場レベルライブラリ310と通信し、例えば、図14のコンピュータシステム1401を用いて実施することができる。」

【図3】


【図6】


イ 上記記載から,引用例3には,次の技術的事項が記載されている。
半導体製造産業においてコンピュータを使ってモデリング及びシミュレーションを行うという技術。


3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「産業用制御システム」,「I/Oモジュール」,「1本又は複数本のケーブルの対応する導体」,「1つ又は複数のピンのあるコネクタ」及び「特定用途向け集積回路(ASIC)」はそれぞれ,本願発明における「物理的プロセスの制御システム」,「モジュール」,「少なくとも1つのコンダクタ」,「デバイス通信コネクタ装置」及びに「電子集積回路」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
物理的プロセスの制御システムであって,
(a)(i)モジュールと少なくとも1つの制御システム入力又は出力信号との間に少なくとも1つのコンダクタを接続するためのデバイス通信コネクタ装置と,
(ii)モジュールに,複数の信号のいずれかを前記デバイス通信コネクタ装置の複数のコンタクトのいずれかの上に配置させるための,選択可能な相互接続装置を前記コンタクトの特定のものに提供する少なくとも1つの電子集積回路を含み,前記コンタクトの2つは,熱電対温度センサが接続されるためのものであり,前記電子集積回路は,前記熱電対温度センサの電圧を測定するための差動増幅器と,前記差動増幅器に前記熱電対温度センサを接続するためのクロスポイントスイッチとを備え,かつ,前記システムのユーザにより構成可能なインターフェース装置と,
を含む構成可能なコネクタ・モジュールと,
(b)種々のセンサとアクチュエータを備えた,
物理的プロセスの制御システム。

<相違点1>
本願発明は「物理的プロセスの制御システムのためのプロセス・シミュレーション・システム」であって「シミュレートされた物理的プロセスに対応する信号を管理するためのシミュレータ」が「前記デバイス通信コネクタ装置の前記コンタクトに接続される」ものであり,「それによって前記物理的プロセス中の前記制御システムの動作がシミュレート」されるのに対し,引用発明はシミュレーションシステムではなく,「物理的プロセスの制御システム」がコンタクトに接続されるものである点。

<相違点2>
本願発明は「2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータ」を備えているのに対し,引用発明はセンサやアクチュエータの種類や数が明らかでない点。

4 当審の判断

以下,上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
制御システムの構築や改修の際に,システムの一部をシミュレータに置換してシステムの動作確認や検証を行うことは引用例2及び3に例示されるように当業者にとって従来から周知の技術的事項である。
そうすると,引用発明のシステムにおいても,構築時や改修時にシステムの動作確認や検証を行うことは当業者であれば通常考慮することであるから,上記周知の技術的事項を適用することで,上記相違点1に係る事項を備えたものとすることは,当業者にとって容易になし得た事項である。

(2)相違点2について
引用発明も産業用制御システムであるから,複数種類のセンサやアクチュエータを制御するものであるし,引用発明は種々のデバイスを接続可能としているものである。ここで,システムを具体的に限定することなく,対象とするセンサ及びアクチュエータの種類や数を2個と特定することに技術的な意義は見られないことから,どのようなセンサ及びアクチュエータを何個設定するかは,当業者が適宜設定すべき事項にすぎない。
そうすると,引用発明において対象となるセンサやアクチュエータを適宜設定し,引用発明において接続するデバイスを「2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータ」を接続することは,当業者にとって容易になし得たものである。

(3)請求人の主張について
請求人は,平成29年9月5日に提出された意見書の【意見の内容】「3.拒絶理由について」の項で,「しかしながら,周知技術の例として引用された引用文献2,3には,本願発明1の上記特徴については開示されていません。すなわち,引用文献2には,様々な入出力信号をシミュレートできるプラントシミュレータ2が記載されていますが,2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータを備えたシミュレータは記載されていません。また,引用文献3には,コントローラ304に様々な複数のシミュレーションモジュールが接続できることが記載されているだけです。
さらに,上記特徴を有する発明によれば,2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータを備えたシステムの動作を,一つのコネクタ・モジュールによってシミュレートすることが可能となります。このような作用効果についても,引用文献2,3には記載されておらず,それを示唆するような記載もありません。」と主張している。
しかしながら,引用発明の対象となるプラントにおいて,複数種類のセンサやアクチュエータは通常備わっているものであり,引用発明は,種々のデバイスを接続可能とする発明であり,センサやアクチュエータの種類が2つであることに格別な技術的意義は見られないから,引用発明において,当該事項を備えたプラント制御装置とすることは,当業者にとって容易になし得たものである。また,シミュレートとは,実際の装置を模擬的に行うものであり,センサやアクチュエータが2つの異なる種類,となることで,シミュレーションが行えなくなるような理由も存在しない。そうすると,シミュレート対象としての引用発明を「2つの異なるセンサと2つの異なるアクチュエータを備えたシステム」とすることが容易である以上,上記主張は採用の限りではない。

(5)そして,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用例2,3で例示される周知の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

(6)よって,本願発明は,引用発明及び引用例2,3で例示される周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-05 
結審通知日 2017-10-17 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2013-501405(P2013-501405)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青山 純  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 長清 吉範
柏原 郁昭
発明の名称 改善された制御システム・シミュレータ及び単純化された相互接続制御システム  
代理人 山川 政樹  
代理人 山川 茂樹  
代理人 小池 勇三  

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