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審決分類 |
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B65H 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1338756 |
審判番号 | 不服2017-3794 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-15 |
確定日 | 2018-03-22 |
事件の表示 | 特願2015-174487「印刷機の印刷紙巻取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月16日出願公開、特開2016- 79033〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年9月4日(パリ条約による優先権主張2014年10月21日、韓国)の出願であって、平成28年9月14日付けで手続補正書が提出され、同年11月7日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成29年3月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 第2 平成29年3月15日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成28年9月14日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「印刷機本体に回転可能に備えられ、印刷紙を巻き取る巻取ローラと、 前記巻取ローラを一方向に回転させるための動力を伝達する巻取モータと、 前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達し、前記巻取モータの作動開始時点と前記巻取ローラの回転開始時点との差によって生じる前記巻取モータへの負荷を緩和する緩衝動力伝達部と、を有し、 前記緩衝動力伝達部は、 前記印刷機本体から延設され、前記巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持するブラケットと、 前記巻取ローラと前記巻取モータに連結され、前記巻取モータへの負荷を緩和して、前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達する緩衝部材と、を有し、 前記緩衝部材は、 前記巻取モータの作動時に回転するように前記巻取モータに連結される第1の連結部材と、 前記巻取ローラの端部に固定連結される第2の連結部材と、 前記第1の連結部材と前記第2の連結部材に連結され、前記巻取モータの負荷を緩和する緩衝弾性部材と、を有し、 前記巻取ローラは、前記巻取ローラの両側に設けられたベアリング部材によって前記ブラケットに回転可能に支持され、 前記緩衝弾性部材は、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に時差をもって連動させるトーションスプリングであることを特徴とする印刷紙巻取装置。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「印刷機本体に回転可能に備えられ、印刷紙を巻き取る巻取ローラと、 前記巻取ローラを一方向に回転させるための動力を伝達する巻取モータと、 前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達し、前記巻取モータの作動開始時点と前記巻取ローラの回転開始時点との差によって生じる前記巻取モータへの負荷を緩和する緩衝動力伝達部と、を有し、 前記緩衝動力伝達部は、 前記印刷機本体から延設され、前記巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持するブラケットと、 前記巻取ローラと前記巻取モータに連結され、前記巻取モータへの負荷を緩和して、前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達する緩衝部材と、を有し、 前記緩衝部材は、 前記巻取モータの作動時に回転するように前記巻取モータに連結される第1の連結部材と、 前記巻取ローラの端部に固定連結される第2の連結部材と、 前記第1の連結部材と前記第2の連結部材に連結され、前記巻取モータの負荷を緩和する緩衝弾性部材と、を有し、 前記巻取ローラは、前記巻取ローラの両側に設けられたベアリング部材によって前記ブラケットに回転可能に支持され、 前記緩衝弾性部材は、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に時差をもって連動させるトーションスプリングとして機能し、 前記緩衝動力伝達部は、 前記巻取ローラの軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体を、さらに有し、 前記筐体は、前記巻取ローラを定設し、前記緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持することを特徴とする印刷紙巻取装置。」(下線は審決で付した。以下同じ。) 2 各補正事項について 本件補正により、本件補正後の請求項1に、緩衝弾性部材は、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に時差をもって連動させるトーションスプリング「として機能し」との補正事項(以下「補正事項1」という。)、及び「前記緩衝動力伝達部は、前記巻取ローラの軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体を、さらに有し、前記筐体は、前記巻取ローラを定設し、前記緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持する」との補正事項(以下「補正事項2」という。)が追加された。 (1)補正事項1について 上記補正事項1は、本件補正前の請求項1の「印刷紙巻取装置」における「緩衝弾性部材」に関して、トーションスプリング「として機能し」と、機能を有することを明示的に特定したものであるから、上記補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、上記補正事項1は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 (2)補正事項2について 上記補正事項2は、本件補正前の請求項1の「印刷紙巻取装置」における「緩衝動力伝達部」に関して、「前記巻取ローラの軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体を、さらに有し、前記筐体は、前記巻取ローラを定設し、前記緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持する」と、具体的に特定したものであるから、上記補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 ここで、上記補正事項2における、筐体が、巻取ローラを定設する、と限定する特定(以下「補正事項2に係る特定」という。)について検討する。 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「当初明細書等」という)には、筐体と巻取ローラに関して、「筐体130は、巻取ローラ30の軸方向に沿いブラケット110の外に延設され、巻取モータ40を定設する。」(【0040】)と記載されているだけであって、筐体が、巻取ローラを定設することに関しては、当初明細書等に記載されていないし、自明の事項であるともいえない。 したがって、上記補正事項2に係る特定を含む補正事項2により補正された請求項1の記載は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。 (3)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 独立特許要件について 上記補正事項2における「前記筐体は、前記巻取ローラを定設し」が、「前記筐体は、前記巻取モータを定設し」の誤記とした場合、「前記筐体は、前記巻取モータを定設し」と読み替えて、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、予備的に、検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成29年3月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載したとおりのものを、上記のとおり読み替えて認める。 (2)引用刊行物 ア 刊行物1 本願の優先日前の平成21年4月30日に頒布された特開2009-90578号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【請求項6】 ロール状の被噴射媒体を保持し、回転することにより前記被噴射媒体を供給する供給ローラと、 前記供給ローラにより供給された前記被噴射媒体の被噴射面に液体を噴射するノズル列を有する液体噴射ヘッドと、 前記液体噴射ヘッドにより液体が噴射された前記被噴射媒体を、回転することにより巻き取る巻取ローラと、 前記被噴射媒体の給送方向において前記液体噴射ヘッドを挟んで一対配され、前記被噴射媒体の前記被噴射面の裏面に接触して張力を与えることにより、前記被噴射媒体を液体噴射ヘッドの前記ノズル列と対向して平坦に保持し、前記被噴射媒体に連れ回るプラテンローラと、 前記巻取ローラに回転駆動力を与える巻取ローラ駆動部と、 前記供給ローラに回転負荷を与えることにより、前記供給ローラから前記巻取ローラまでの給送経路において、前記被噴射媒体にバックテンションを付与する供給ローラ負荷部と を備え、 前記給送経路において前記被噴射媒体の表裏面が挟まれることなく給送される液体噴射装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、給送装置および液体噴射装置に関する。本発明は、特に、被記録媒体を保持し、被記録媒体に連れ回るプラテンローラを備えた給送装置および液体噴射装置に関する。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、上記インクジェット式記録装置においては、被記録媒体を一対のローラで表裏面から挟んで給送するので、被記録媒体の表裏面に圧痕がつく。また、プラテン面と擦れる部分には、擦り傷がつく。特に、被記録媒体が透明な場合に圧痕、擦り傷が目立つ。一方、このインクジェット式記録装置に上記染色装置の給送方法を用いると、被記録媒体の給送が停止と再開を間欠的に繰り返すので、ロールを保持している給送ローラが慣性によって追従しきれずに被記録物が給送ローラから引き出されすぎてたるみ、正確に画像を記録することができない。」 そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「ロール状の被噴射媒体を保持し、回転することにより前記被噴射媒体を供給する供給ローラと、 前記供給ローラにより供給された前記被噴射媒体の被噴射面に液体を噴射するノズル列を有する液体噴射ヘッドと、 前記液体噴射ヘッドにより液体が噴射された前記被噴射媒体を、回転することにより巻き取る巻取ローラと、 前記被噴射媒体の給送方向において前記液体噴射ヘッドを挟んで一対配され、前記被噴射媒体の前記被噴射面の裏面に接触して張力を与えることにより、前記被噴射媒体を液体噴射ヘッドの前記ノズル列と対向して平坦に保持し、前記被噴射媒体に連れ回るプラテンローラと、 前記巻取ローラに回転駆動力を与える巻取ローラ駆動部と、 前記供給ローラに回転負荷を与えることにより、前記供給ローラから前記巻取ローラまでの給送経路において、前記被噴射媒体にバックテンションを付与する供給ローラ負荷部と を備え、 前記給送経路において前記被噴射媒体の表裏面が挟まれることなく給送される液体噴射装置。」 イ 刊行物2 本願の優先日前の平成15年5月20日に頒布された特開2003-144642号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 モータのモータ軸と回転部材の回転軸とをカップリングで連結した遊技機部品において、カップリングを可撓性体で形成したことを特徴とする遊技機部品。 【請求項2】 可撓性体をコイルスプリングにしたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機部品。 【請求項3】 モータ軸にカラーを装着し、カラーに可撓性体の一端を装着したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遊技機部品。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、回転部材を備えた遊技機部品に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、パチンコ機等の遊技機の部品のうち回転部材を備える遊技機部品としては例えば図4,5に示すような回転装置が知られている。図4は回転装置の前側を示す斜視図、図5は回転装置を縦方向に切断した断面図である。回転装置11は、遊技盤10に取付けられるもので、モータ12と、このモータ12により回転する回転部材13と、この回転部材13が収納される収納部材14とで構成される。収納部材14は、円形状の固定ベース14aとこの固定ベース14aの外周側より立上る外周壁14bとを有し、固定ベース14aの外周側の一部に相当する位置においては外周壁14bがなく球が1個通過可能な入口14cが設けられ、固定ベース14aの外周側の上記一部に対してほぼ180°隔てた外周位置においても外周壁14bのない出口14dが設けられている。回転部材13の外周側の一部には球を収納可能な大きさに切欠かれた第1凹部13aが設けられ、この第1凹部13aが設けられた位置に対してほぼ180°隔てた回転部材13の外周側にも球を収納可能な第2凹部13bが設けられている。また、収納部材14の固定ベース14aには、第1凹部13aに収容されて回転部材13の回転により搬送されてくる球を例えば図示しないセンター飾りのステージスロープ上や入賞装置の入口側あるいは遊技盤10の裏側等に導く排出孔14eが設けられている。回転装置11は、収納部材14の入口14cが上側に、出口14dが下側になるように、固定ベース14aの左右両側に設けられるブラケット14fの取付孔14gを介して図示しない止めねじにより遊技盤面10fに取付けられる。従って、第1凹部13aあるいは第2凹部13bが入口14cに一致したタイミングのときに球が入口14cを介して第1凹部13aあるいは第2凹部13bに収容される。第1凹部13aに収容された球と排出孔14eは回転軸13cを中心として同一円周上に位置し、第1凹部13aに収容された球は回転部材13の反時計方向(矢示A)の回転により排出孔14eまで搬送され、また、第2凹部13bに収容された球は回転部材13の反時計方向の回転により出口14dまで搬送される。即ち、第2凹部13bの深さは第1凹部13aの深さより浅い。12aはモータ取付用のブラケットであり、このブラケット12aは、収納部材14の固定ベース14aの裏側より突出する如く設けられる支柱12bに取付孔12gを介してねじ12fで固定される。10aは遊技盤10に形成された回転装置11の取付け孔、14sは固定ベース14aの中心に設けられた回転軸13cの軸受孔である。回転装置11は、モータ軸12cと回転軸13cとを図5のような鋼製等の剛体筒内に挿入してねじ21,21で締結して連結するカップリング20を介してモータ12の回転力を回転部材13に伝達するように構成していた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記のような剛体筒で構成されたカップリング20で回転軸13cとモータ軸12cとを連結した場合、モータ取付用のブラケット12aの取付孔12gとねじ12fの外周との間には隙間があるためブラケット12aの取付状態によってはモータ軸12cと回転軸13cとの軸心がずれる。このような軸心ずれが生じると、モータ軸12c,回転軸13c,及び軸受孔14sに無理な力(摩擦抵抗,接触抵抗等)が発生し、回転部材13がスムーズに回転しなくなるという課題があった。」 (ウ)「【0005】 【発明の実施の形態】図1?3に基づいて本発明の遊技機部品の実施形態を説明する。図1は回転部材を備えた遊技機部品としての回転装置を縦方向に切断した断面図、図2はカップリングを形成する可撓性体としてのコイルスプリングの斜視図、図3は回転装置の分解斜視図である。尚、図4,5の従来例と同一部分については同一符号を付して詳説を省略する。実施形態による遊技機部品としての回転装置1は、図1に示すように、モータ12のモータ軸2と回転部材13の回転軸3とを連結するカップリングとして可撓性体であるコイルスプリング5を用いたものである。 【0006】コイルスプリング5は、図2に示すように、一端側にモータ軸側装着部5aを備え、他端側に回転軸側装着部5bを備える。コイルスプリング5のコイル内径は回転軸3の外径より若干大きい。モータ軸側装着部5aはコイルスプリング5の一端側をコイルの外周部から軸方向と平行になるように折り曲げた形態であり、回転軸側装着部5bはコイルスプリング5の他端側をコイルの外周部から径方向内側に折り曲げた形態である。回転軸3の一端側は回転部材13に嵌合されており、回転部材13の裏側より突出する回転軸3の他端3e側には当該他端3eより回転部材13の方向に向けて切り込まれたスリット3aが形成されている。このスリット3aは、回転軸3の周面において互いに180°隔てた部分が開放している。回転軸3の他端と対向するモータ軸2の先端部は断面D形状等の異形端部2aに形成されている。異形端部2aに取付けられるカラー4は、本体部4aの一端側に径方向外側に突出した鍔部4bを備える。本体部4aの外径はコイルスプリング5のコイル内径より若干小さく、鍔部4bの外径はコイルスプリング5のコイル外径より大きい。カラー4における鍔部4b側の一端側には一端面4eより内部に延長する如く形成された断面D形状等の異形穴4cを有し、また、鍔部4bの外周縁の一部は切り欠かれて係留部4dが形成されている。異形穴4cと異形端部2aとが互いに嵌め込まれることで、モータ軸2とカラー4とが一緒に回転するように互いに組合わせられる。異形穴4cと異形端部2aとは互いに嵌め込まれた場合にモータ軸2とカラー4とが周方向にがたつくことなく一緒に回転するような嵌め合いを形成する整合関係を有する。 【0007】次に回転装置1の組立について図1,3に基づいて説明する。回転部材13の回転軸3は収納部材14の前側より軸受孔14sに挿入され、軸受孔14sより突出した回転軸3には止輪15が結合されることで、回転部材13が収納部材14より脱落しないように取付けられ、モータ軸2に取付けられたカラー4と回転軸3とにコイルスプリング5が装着される。つまり、回転軸側装着部5bがスリット3a内に挿入されるとともに回転軸3の他端3e側がコイルスプリング5のコイル内部に挿入され、カラー4の本体部4aがコイルスプリング5のコイル内部に挿入されるとともにモータ軸側装着部5aが係留部4dに挿入される。この状態でねじ12fを用いてモータ取付用のブラケット12aを支柱12bに取付けて、モータ12を収納部材14に固定する。このように組立てられた回転装置1を遊技盤面10f側より回転装置11の取付孔10aに挿入して収納部材14のブラケット14fをねじで遊技盤面10fに取付ける。」 そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「モータのモータ軸と回転部材の回転軸とをカップリングで連結した遊技機部品としての回転装置において、カップリングをコイルスプリングで形成し、 モータ軸にカラーを装着し、カラーにコイルスプリングの一端を装着し、 回転部材の回転軸は収納部材の前側より固定ベースの中心に設けられた軸受孔に挿入され、軸受孔より突出した回転軸には止輪が結合されることで、回転部材が収納部材より脱落しないように取付けられ、モータ軸に取付けられたカラーと回転軸とにコイルスプリングが装着され、この状態でねじを用いてモータ取付用のブラケットを、収納部材の固定ベースの裏側より突出する如く設けられる支柱に取付孔を介してねじで固定して、モータを収納部材に固定した、 遊技機部品としての回転装置。」 ウ 刊行物3 本願の優先日前の平成4年5月18日に頒布された実願平2-99299号(実開平4-57697号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「2.実用新案登録請求の範囲 (1)本体に形成された吸込口と吹出口を結ぶ導風路内に熱交換器とクロスフローファンと同クロスフローファンを駆動するモータを配設してなるファンコンベクタにおいて、上記モータに対向する上記クロスフローファンの回転軸に、先端に同モータの回転軸を嵌入する連結ボスを取付けたコイルスプリングを固定し、同連結ボスを同モータの回転軸に連結するようにしてなることを特徴とするファンコンベクタ。 (2)上記クロスフローファンのモータに対向するボスと連結ボスの外周に、モータの回転によりコイルスプリングを巻き込む方向に螺線状の溝を形成し、コイルスプリングを巻着するようにしてなることを特徴とする請求項(1)記載のファンコンベクタ。」(1頁4?19行) (イ)「〔産業上の利用分野〕 本考案は、ファンコンベクタに関し、詳しくはファンコンベクタのクロスフローファンの連結機構に関するものである。」(2頁1?4行) (ウ)「〔考案が解決しようとする課題〕 本考案は、上記従来の技術の問題点に鑑みなされたもので、起動時にクロスフローファンの捩じれ等による耳障りな異常音の発生を押さえたファンコンベクタのクロスフローファンの連結機構を提供することを目的としている。」(3頁4?9行) そうすると、上記(ア)乃至(ウ)の記載事項から、刊行物3には、次の技術事項(以下「刊行物3の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「本体に形成された吸込口と吹出口を結ぶ導風路内に熱交換器とクロスフローファンと同クロスフローファンを駆動するモータを配設してなるファンコンベクタにおいて、上記モータに対向する上記クロスフローファンの回転軸に、先端に同モータの回転軸を嵌入する連結ボスを取付けたコイルスプリングを固定し、同連結ボスを同モータの回転軸に連結するようにしてなり、 上記クロスフローファンのモータに対向するボスと連結ボスの外周に、モータの回転によりコイルスプリングを巻き込む方向に螺線状の溝を形成し、コイルスプリングを巻着するようにしてなるファンコンベクタ。」 エ 刊行物4 本願の優先日前の平成13年3月27日に頒布された特開2001-80800号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【0017】図1に示すように、プロッタ10(本発明にいう画像形成装置の一例である)は、スタンド12の上部に固定されている。プロッタ10は、プロッタ10を操作するための操作部14を備えており、この操作部14に設置された各種スイッチ等により、紙種、オンライン/オフライン、コマンドなどが指示される。プロッタ10の後方には、ロール紙(図示せず)が配置されており、このロール紙に画像が形成される。ロール紙のうち画像の形成された部分20aが排出口16から矢印A方向に排出される。この排出された部分(排出部分)が巻取装置30に巻き取られる。 【0018】巻取装置30は、排出口16の前方に配置されている。巻取装置30は、排出口16の幅とほぼ同じ距離だけ離れて向き合った一対のスタンド32,34を有する。スタンド32,34それぞれには、排出口16の幅とほぼ同じ長さの円柱状の芯体40の端部が回転自在に固定されている。芯体40には、シート状部材60(本発明にいうつなぎ部材の一例である)の一辺が固定されている。」 (イ)「【0031】スタンド32の内側に固定された側板80には、軸受110を介して短い芯体112が回転自在に固定されている。この芯体112はモータ(図示せず)によって回転する。芯体112には、ロール紙が巻き付けられる紙管118の一端部に差し込まれるスプールストッパ116が固定されている。紙管118とスプールストッパ116は芯体112の回転に伴って回転する。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、 ア 後者の「液体噴射装置」、「被噴射媒体」、「巻取ローラ」、及び「巻取ローラ駆動部」は、それぞれ、前者の「印刷機本体」、「印刷紙」、「巻取ローラ」、及び「巻取モータ」に相当する。そして、「巻取ローラ」が回転可能であることは、印刷機分野において自明の事項である。 イ 後者の「巻取ローラ駆動部」は、「巻取ローラに回転駆動力を与える」ものであるから、「巻取ローラを一方向に回転させるための動力を伝達する巻取モータ」といえる。 ウ 後者の「液体噴射装置」は、「被噴射媒体を、回転することにより巻き取る巻取ローラ」、及び「巻取ローラ駆動部」とを備えるものであるから、「印刷紙巻取装置」を備えるといえる。 エ 後者の「液体噴射装置」は、「巻取ローラに回転駆動力を与え」て回転駆動させるものであるから、巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持する装置から延設されたブラケットを有していることは、明記されていないものの、明らかな事項であるから、「印刷機本体から延設され、巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持するブラケット」を有しているといえる。 したがって、両者は、 「印刷機本体に回転可能に備えられ、印刷紙を巻き取る巻取ローラと、 前記巻取ローラを一方向に回転させるための動力を伝達する巻取モータと、 印刷機本体から延設され、巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持するブラケットと を有する印刷紙巻取装置。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、「巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達し、前記巻取モータの作動開始時点と前記巻取ローラの回転開始時点との差によって生じる前記巻取モータへの負荷を緩和する緩衝動力伝達部と、を有し、前記緩衝動力伝達部は、前記巻取ローラと前記巻取モータに連結され、前記巻取モータへの負荷を緩和して、前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達する緩衝部材と、を有し、前記緩衝部材は、前記巻取モータの作動時に回転するように前記巻取モータに連結される第1の連結部材と、前記巻取ローラの端部に固定連結される第2の連結部材と、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材に連結され、前記巻取モータの負荷を緩和する緩衝弾性部材と、を有し」、「前記緩衝弾性部材は、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に時差をもって連動させるトーションスプリングとして機能」するものであるのに対し、引用発明1は、この点につき、備えていない点。 [相違点2] 本願補正発明は、「巻取ローラは、前記巻取ローラの両側に設けられたベアリング部材によって前記ブラケットに回転可能に支持され」ているものであるのに対し、引用発明1では、その点が明らかでない点。 [相違点3] 本願補正発明は、「緩衝動力伝達部は、前記巻取ローラの軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体を、さらに有し、前記筐体は、前記巻取モータを定設し、前記緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持する」ものであるのに対し、引用発明1は、この点につき、備えていない点。 (4)判断 上記相違点1乃至相違点3について以下検討する。 ア [相違点1]について 一般に、モータから回転部材への動力の伝達を滑らかにするために、前記回転部材と前記モータに連結され、前記モータからの動力を前記回転部材に伝達する動力伝達部材であって、前記モータの作動時に回転するように前記モータに連結される第1の連結部材と、前記回転部材の端部に固定連結される第2の連結部材と、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材に連結され、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に連動させるトーションスプリングと、を有する動力伝達部材は、本願の優先日時点で周知の技術事項(例えば、引用発明2、及び刊行物3記載の技術事項参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。 そして、引用発明1と上記周知の技術事項1とは、共に「回転動力伝達装置」という技術分野に属し、また、一般に回転動力伝達装置に関連する技術分野において、回転部材を滑らかに回転させることは、周知の課題であるから、引用発明1においても、内在する自明の課題である。 そうすると、引用発明1において、上記周知の技術事項1を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 ここで、引用発明1に、上記周知の技術手段1を適用すれば、巻取モータと巻取ローラとが、トーションスプリングで連結されることとなるから、必然的に、巻取モータの作動開始時点と巻取ローラの回転開始時点との差によって生じる巻取モータへの負荷が緩和されて、巻取モータからの動力が巻取ローラに伝達されることになる。 したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項1を適用することにより、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 イ [相違点2]について 印刷紙巻取装置において、巻取ローラを、巻取ローラの両側に設けられた軸受によってブラケットに回転可能に支持することは、本願の優先日時点で周知の技術事項(上記「(2)引用刊行物 エ 刊行物4」参照。以下「周知の技術事項2」という。)である。 そして、引用発明1と上記周知の技術事項2とは、共に「印刷紙巻取装置」という技術分野に属し、また、一般に印刷紙巻取装置に関連する技術分野において、迅速で確実な印刷紙の巻取を行うことは、周知の課題であるから、引用発明1、及び上記周知の技術事項2においても、内在する自明の課題である。 そうすると、引用発明1において、上記周知の技術事項2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、引用発明1において、上記周知の技術事項2を適用することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 ウ [相違点3]について 引用発明2の「モータ」、「カラー」、「回転軸」、「コイルスプリング」、及び「固定ベース」は、それぞれ、本願補正発明の「モータ」、「第1の連結部材」、「第2の連結部材」、「トーションスプリング」、及び「ブラケット」に相当する。 引用発明2の「回転部材」と、本願補正発明の「巻取ローラ」とは、「回転部材」との概念で共通する。 引用発明2の「遊技機部品としての回転装置」は、ねじを用いてモータ取付用のブラケットを、収納部材の固定ベースの裏側より突出する如く設けられる支柱に取付孔を介してねじで固定して、モータを収納部材に固定し、モータ軸に取付けられたカラーと回転軸とにコイルスプリングを装着するものであるから、引用発明2の「遊技機部品としての回転装置」は、「回転部材の軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体」を有する「緩衝動力伝達部」といえる。 そして、引用発明2の「モータ取付用のブラケット」、「収納部材の固定ベース」、及び「支柱」は、伸縮するものではないから、引用発明2の「遊技機部品としての回転装置」は、「緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持する」といえる。 そうすると、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明2に示されているといえる。 そして、引用発明1と引用発明2とは、共に「回転動力伝達装置」という技術分野に属し、また、一般に回転動力伝達装置に関連する技術分野において、回転部材を滑らかに回転させることは、周知の課題であるから、引用発明1においても、内在する自明の課題である。 そうすると、引用発明1において、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、引用発明1において、引用発明2を適用することにより、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年9月14日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「印刷機本体に回転可能に備えられ、印刷紙を巻き取る巻取ローラと、 前記巻取ローラを一方向に回転させるための動力を伝達する巻取モータと、 前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達し、前記巻取モータの作動開始時点と前記巻取ローラの回転開始時点との差によって生じる前記巻取モータへの負荷を緩和する緩衝動力伝達部と、を有し、 前記緩衝動力伝達部は、 前記印刷機本体から延設され、前記巻取ローラの両端を回転可能に挿入して前記巻取ローラを挟持するブラケットと、 前記巻取ローラと前記巻取モータに連結され、前記巻取モータへの負荷を緩和して、前記巻取モータからの動力を前記巻取ローラに伝達する緩衝部材と、を有し、 前記緩衝部材は、 前記巻取モータの作動時に回転するように前記巻取モータに連結される第1の連結部材と、 前記巻取ローラの端部に固定連結される第2の連結部材と、 前記第1の連結部材と前記第2の連結部材に連結され、前記巻取モータの負荷を緩和する緩衝弾性部材と、を有し、 前記巻取ローラは、前記巻取ローラの両側に設けられたベアリング部材によって前記ブラケットに回転可能に支持され、 前記緩衝弾性部材は、前記第1の連結部材と前記第2の連結部材との回転開始時点に時差をもって連動させるトーションスプリングであることを特徴とする印刷紙巻取装置。」(以下「本願発明」という。) 2 引用刊行物 平成28年6月8日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、実質的に、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「前記緩衝動力伝達部は、前記巻取ローラの軸方向に沿い前記ブラケットの外に延設される筐体を、さらに有し、前記筐体は、前記巻取ローラを定設し、前記緩衝弾性部材が軸方向に伸びることを制限することによって、前記緩衝弾性部材の円周方向の弾性力を維持する」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点1及び相違点2となる。 そして、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、上記周知の技術事項1、及び上記周知の技術事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-18 |
結審通知日 | 2017-10-24 |
審決日 | 2017-11-07 |
出願番号 | 特願2015-174487(P2015-174487) |
審決分類 |
P
1
8・
56-
Z
(B65H)
P 1 8・ 575- Z (B65H) P 1 8・ 121- Z (B65H) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀之、松井 裕典 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
森次 顕 藤本 義仁 |
発明の名称 | 印刷機の印刷紙巻取装置 |
代理人 | 毛受 隆典 |
代理人 | 桜田 圭 |
代理人 | 森川 泰司 |
代理人 | 美恵 英樹 |
代理人 | 木村 満 |