• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1338905
審判番号 不服2016-12754  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-24 
確定日 2018-03-29 
事件の表示 特願2015-530273「周波数スペクトル管理システム、周波数スペクトル管理方法、及び非揮発コンピュータ読取可能媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日国際公開、WO2014/036856、平成27年11月 2日国内公表、特表2015-531554〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年9月7日 中国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月6日に手続補正書が提出され、平成28年2月19日付けで拒絶理由が通知され、同年4月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月16日付けで拒絶査定されたところ、同年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年10月13日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審において通知した拒絶理由
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。


(中略)

(8)請求項11について
請求項11には「前記危険領域における前記干渉レベルが所定の閾値よりも低い場合に、前記回路は、前記セカンダリシステムにリソースを割当てる」とあるが、明細書中には、「前記危険領域」(プライマリ通信システムの危険領域)における「干渉レベル」に着目して「前記セカンダリシステムにリソースを割当てる」ことは記載されていないから、請求項11の上記特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。(第36条第6項第1号)
また、請求項11にいう「所定の閾値」と、請求項1にいう「干渉許容」及び「所望の通信品質」との関係も不明確である。(第36条第6項第2号)
補正を行う場合には、その根拠となる記載を明示した上で具体的に説明されたい。

(9)請求項12について
請求項12には「面積を監視する」とあるが、明細書中に「面積」を監視するとの記載はないから、請求項12の上記特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。(第36条第6項第1号)
また、「前記危険領域を対応的に更新する」が日本語として何を意味するのか不明である。

<補正の示唆>
明細書には、「図20は、危険領域の周辺領域を監視して得られた情報に基づいて危険領域を更新(補正)する方法の例示を示した。」(段落62)との記載がある。

(中略)

(11)請求項15-16について
請求項15には「前記プライマリ通信システムの通信品質が前記危険領域における所定の閾値よりも降下されたと特定された場合」、また、請求項16には「前記セカンダリシステムのその危険領域における通信品質が所定の閾値よりも降下された場合」とあるが、この場合の「通信品質」が、(i)プライマリ通信システム又はセカンダリシステムの推定された通信品質を意味するのか、(ii)個々のプライマリユーザー又はセカンダリユーザーの通信品質を意味するのかが不明確である。また、請求項15-16にいう「通信品質」と、請求項1にいう「通信品質」との関係も不明確である(上記(1)イ参照)。(第36条第6項第2号)
関連する記載として、明細書の段落65には、「実施例として、・・・例えば、プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信盾量が所定の通信盾量閾値よりも低い場合に、・・・切り替える要求を受信することができる。又は、例えば、セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合に、・・・切り替える要求を送信する。」との記載はあるものの、上記「通信品質」を、上記(i)の意味まで含めた通信品質にまで拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項15-16の上記特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。(第36条第6項第1号)

(12)請求項17について
請求項17には「前記回路は、更に、別のセカンダリシステムの情報を取得するように配置され、前記情報は、前記別のセカンダリシステムの干渉許容を含み、前記別のセカンダリシステムの危険領域における干渉レベルが前記別のセカンダリシステムの前記干渉許容よりも低い」とあるが、「前記別のセカンダリシステムの干渉許容」、「前記別のセカンダリシステムの危険領域における干渉レベル」がそれぞれ何を意味するのかが不明確であり、かつ、請求項1の発明特定事項との関係(特に、セカンダリシステムの使用可能リソースの特定及び割当てとの関係)も不明確であるから、請求項17の上記特定事項の技術的意味が理解できない。(第36条第6項第2号)
さらに、明細書中には、請求項17に係る特定事項をどのように実施するかについて具体的な記載がないから、請求項17の上記特定事項は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。(第36条第6項第1号)
なお、意見書を提出する際には、請求項17に係る特定事項が、当初明細書等に記載されていたかどうかについても、具体的に釈明されたい。

(13)請求項4及び請求項15-17について
請求項4及び請求項15-17には、「前記回路は、・・・するように配置される」又は「前記回路は、・・・されるように配置される」とあるが、明細書をみても、「回路」の物理的な「配置」を特定しているとはいえず、表現が日本語として不適切である。(第36条第6項第2号)

(以下、省略)

第3 請求人の対応
当審拒絶理由に対して、請求人は、平成29年12月18日に、特許請求の範囲及び明細書の段落【0065】を補正する手続補正書及び意見書を提出した。

1 補正後の特許請求の範囲
平成29年12月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲(抜粋)は以下のとおりである。なお、補正により補正前の請求項2及び5が削除されたため、当審拒絶理由に記載中の請求項11-12及び15-17は、それぞれ補正後の請求項9-10及び13-15に対応する。

「 【請求項1】
プライマリ通信システムの干渉防止閾値を含む情報を取得し、
セカンダリシステムの所定の通信品質を取得し、
前記セカンダリシステムがリソースを利用して通信を行う際に、前記プライマリ通信システムの危険領域において前記セカンダリシステムが当該プライマリ通信システムに与えた干渉を推定することで、当該推定した干渉レベルが前記プライマリ通信システムの前記干渉防止閾値を超えないリソースを前記セカンダリシステムの使用可能リソースとして特定し、
前記セカンダリシステムにおけるセカンダリユーザーがセカンダリシステム危険領域において前記特定した使用可能リソースを利用して通信を行う際の通信品質を推定し、前記特定した使用可能リソースのうち該推定された通信品質が前記所定の通信品質を満足する使用可能リソースを前記セカンダリシステムに割り当てる回路を備える、
周波数スペクトル管理システム。

【請求項6】
前記干渉レベルは、プライマリ通信システムの危険領域において特定され、前記回路は、更に、前記プライマリ通信システムの推定されたSN比(SNR)に基づいて前記プライマリ通信システムの前記危険領域を識別する請求項1に記載の周波数スペクトル管理システム。

【請求項9】
前記危険領域における前記干渉レベルが前記干渉防止閾値よりも低い場合に、前記回路は、前記セカンダリシステムにリソースを割当てる請求項6に記載の周波数スペクトル管理システム。
【請求項10】
前記回路は、前記プライマリ通信システムの前記危険領域におけるプライマリユーザーおよびセカンダリユーザーの通信状況を監視する請求項6に記載の周波数スペクトル管理システム。

【請求項13】
前記回路は、更に、前記プライマリ通信システムの推定された通信品質が前記危険領域における所定の閾値よりも降下されたと特定された場合に、前記プライマリ通信システムのユーザーが前記セカンダリシステムに切り替える請求項10に記載の周波数スペクトル管理システム。
【請求項14】
前記回路は、更に、前記セカンダリシステムのその危険領域における推定された通信品質が所定の閾値よりも降下された場合に、前記セカンダリシステムのユーザーが前記プライマリ通信システムに切り替える請求項13に記載の周波数スペクトル管理システム。
【請求項15】
前記回路は、更に、別のセカンダリシステムの情報を取得し、
前記情報は、前記別のセカンダリシステムの干渉防止閾値を含み、前記別のセカンダリシステムの危険領域において当該別のセカンダリシステムが前記プライマリ通信システムに与えると推定した干渉レベルが前記別のセカンダリシステムの前記干渉防止閾値よりも低い請求項1に記載の周波数スペクトル管理システム。」([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

2 意見書における請求人の主張
平成29年12月18日提出の意見書における請求人の主張は、概ね以下のとおりである。

「(2) かかる拒絶理由通知書を受けて、本件出願人は、特許請求の範囲の記載を詳細に検討した結果、本願発明の特徴をさらに明確にするべく、本意見書と同日付提出の手続補正書において、本願の内容を補正いたしました。つまり以下に述べる理由により、審判長殿ご指摘の拒絶理由はすべて解消したものと思量いたしますので、再度ご審査の上は速やかに特許査定を賜りますようお願い申し上げます。

(3)拒絶理由について
本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、請求項1を
「プライマリ通信システムの干渉防止閾値を含む情報を取得し、
セカンダリシステムの所定の通信品質を取得し、
前記セカンダリシステムがリソースを利用して通信を行う際に、前記プライマリ通信システムの危険領域において前記セカンダリシステムが当該プライマリ通信システムに与えた干渉を推定することで、当該推定した干渉レベルが前記プライマリ通信システムの前記干渉防止閾値を超えないリソースを前記セカンダリシステムの使用可能リソースとして特定し、
前記セカンダリシステムにおけるセカンダリユーザーがセカンダリシステム危険領域において前記特定した使用可能リソースを利用して通信を行う際の通信品質を推定し、前記特定した使用可能リソースのうち該推定された通信品質が前記所定の通信品質を満足する使用可能リソースを前記セカンダリシステムに割り当てる回路を備える、
周波数スペクトル管理システム。」
と補正致しました。当該補正により、請求項1の構成が明確になったものと思量致します。
また本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、請求項1の補正に伴い、請求項2を削除する補正を行いました。
また本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、請求項1に対する補正と同趣旨の補正を、補正前の請求項18及び19(補正後の請求項16及び17)に対しても行いました。
本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、補正前の請求項4(補正後の請求項3)を
「前記回路は、更に、前記推定された通信品質が前記所定の通信品質よりも低い場合に、前記セカンダリシステムの使用可能リソースを新たに選択するように、前記セカンダリシステムに対して再構成を指示する請求項1に記載の周波数スペクトル管理システム。」
と補正致しました。当該補正により、請求項3の構成が明確になったものと思量致します。
また本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、請求項3の補正に伴い、補正前の請求項5を削除する補正を行いました。
その他、本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、審判長殿が指摘された記載不備を解消するための補正を行いました。
なお審判長殿は、上記拒絶理由通知において、「発射電力」が何を意味するのか不明であると指摘されました。
「発射電力」は、アンテナから発射(放射とも言い換えることが可能です)される電波の電力の意であります。本願の優先権の基礎となる国際出願においてもそのように記載されており、誤訳ではございません。
また審判長殿は、上記拒絶理由通知において、段落0065の「通信盾量」が何を意味するのか不明であると指摘されました。
「盾量」は、日本語における「品質」の意であります。同段落では「通信品質」「通信品質閾値」との記載もあり、本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、それらの語と合わせるための補正を行いました。

(4) 従いまして、本件出願人といたしましては、本意見書と同日付提出の手続補正書により、審判長殿ご指摘の拒絶理由はすべて解消したものと確信する次第ですので、審判長殿におかれましては再度ご審査の上、速やかに特許査定を賜りますようお願い申し上げます。」

第4 当審の判断
1 本願の請求項9(補正前の請求項11)に係る発明について(当審拒絶理由の(8))
発明の詳細な説明には、次の記載がある。(なお、下線は当審で付した。以下、同様。)
(1)「【0036】
図1は本開示の一実施例による無線伝送リソース管理方法を模式的に示したフローチャートである。図1に示された無線伝送リソース管理方法は、セカンダリシステムにおける無線伝送リソース管理デバイス(例えばセカンダリシステムに関する周波数スペクトルマネージャやセカンダリシステムにおけるセカンダリ基地局など)により実施することができる。
【0037】
図1に示されたように、当該無線伝送リソース管理方法は、ステップ102、104、106と108を含むことができる。
【0038】
ステップ102において、プライマリシステムリソース情報を取得する。ここでのプライマリシステムリソース情報は、プライマリシステムの許容可能な最大の干渉電力レベルを反映する干渉防止閾値の情報を含む。
(中略)
【0040】
ステップ104において、セカンダリシステムリソース情報を取得する。ここでのセカンダリシステムリソース情報はセカンダリシステムのリソース利用に関する情報であっても良い。例えば、前記情報は、セカンダリシステムにおけるセカンダリ基地局の発射電力、セカンダリシステムのチャンネルモデル及びセカンダリ基地局のカバー範囲と位置などに関する情報を含んでも良い。
(中略)
【0042】
そして、ステップ106において、プライマリシステムリソース情報とセカンダリシステムリソース情報に基づいてプライマリシステムのカバー範囲に存在可能な危険領域(プライマリシステム危険領域とも呼ばれる)を推定する。ここで、プライマリシステム危険領域は、前記プライマリシステムのカバー範囲における通信品質の低い(即ちセカンダリシステムの干渉によってSN比が相対的に低い)一つ又は複数の領域、例えばSN比が所定の閾値(当該閾値は実際の応用で必要に応じて特定されることができるが、ここではその具体的な値を限定しない)よりも低い領域を含んでも良い。
(中略)
【0044】
そして、ステップ108において、プライマリシステム危険領域とプライマリ基地局の干渉防止閾値に基づいて、プライマリシステムの伝送リソースのうちセカンダリシステムに使用可能な使用可能伝送リソースを特定することができる。
(中略)
【0046】
前記プライマリシステム危険領域と干渉防止閾値に基づいて使用可能伝送リソースを特定する際に、セカンダリシステムが使用可能伝送リソースを利用して通信を行う時に発生したプライマリシステムのプライマリシステム危険領域における干渉がプライマリシステムの干渉防止閾値を超えないような規則に従うことができる。具体的な実施例として、ステップ108の処理は、セカンダリシステムが伝送リソースを利用して通信を行う時にプライマリシステム危険領域においてプライマリシステムに与える干渉を推定し、干渉値がプライマリシステムの干渉防止閾値を超えない伝送リソースをセカンダリシステムに使用可能な使用可能伝送リソースを特定することを含んでも良い。(以下、略)」

(2)「【0048】
図2は本開示の別の一実施例による無線伝送リソース管理方法を模式的に示したフローチャートである。図2に示された実施例において、更にセカンダリシステムの危険領域を推定する。
【0049】
図2に示されたように、当該無線伝送リソース管理方法はステップ202、204、206、208-1、208-2と208-3を含むことができる。
【0050】
ステップ202、204と206は、前記のステップ102、104と106にそれぞれ類似しているので、ここでは重複しない。
【0051】
ステップ208-1において、プライマリシステムリソース情報とセカンダリシステムリソース情報に基づいてセカンダリシステムのカバー範囲における存在可能な危険領域(セカンダリシステム危険領域とも呼ばれる)を推定することができる。
【0052】
セカンダリシステムのカバー範囲における各領域におけるSN比は、プライマリシステムリソース情報とセカンダリシステムリソース情報を利用して、任意の適当な方法を採用して推定することができる。これにより、前記セカンダリシステム危険領域を特定する。例えば、以下に図9、11、13を参照して説明された方法の例示のうちの何れか一つを採用しても良い。当然ながら、本開示はこれらの実施例又は例示に限定されない。
【0053】
そして、ステップ208-2において、セカンダリシステム危険領域内においてセカンダリシステムが前記使用可能伝送リソースを利用して達成可能な最適通信品質を評価する。
(中略)
【0055】
そして、ステップ208-3において、ステップ208-2における評価の結果に基づいてセカンダリシステムに前記使用可能伝送リソースを割当てる。
【0056】
例示として、推定された最適通信品質が所定の品質閾値(当該閾値は実際の応用において必要に応じて特定することができ、ここでは具体的な値に限定されない)に達しているか否かを判断することができる。肯定の場合に、伝送リソースをセカンダリシステムに割当てる。否定の場合に、伝送リソースをセカンダリシステムに割当てない。
【0057】
別の例示として、推定された最適通信品質がセカンダリシステムの所望通信品質に達しているか否かを更に判断することができる。図3は当該具体例示による、セカンダリシステムの所望通信品質に基づいてセカンダリユーザーに伝送リソースを割当てる方法を模式的に示したフローチャートである。図3に示されたように、ステップ310において、セカンダリシステムの所望通信品質に関する情報を取得することができる。セカンダリシステムの所望通信品質に関する情報は、セカンダリシステムにおける無線伝送リソース管理デバイスによりセカンダリシステムのセカンダリ基地局から取得することができる。又は、これらの情報は、予めセカンダリシステムの無線伝送リソース管理デバイスに記憶され(例えばその中の記憶デバイス(図示せず)に記憶され)、使用の必要がある時に取得されるものであっても良い。ここでは詳しく説明しない。そして、ステップ312において、評価されたセカンダリシステム危険領域内にセカンダリシステムが前記使用可能伝送リソースを利用して達成可能な最適通信品質がセカンダリシステムの所望通信品質を満たすか否かを判断する。」

上記(1)の記載によれば、「無線伝送リソース管理デバイス」によって実施される「無線伝送リソース管理方法」では、ステップ108において、「セカンダリシステムが伝送リソースを利用して通信を行う時にプライマリシステム危険領域においてプライマリシステムに与える干渉」を「推定」した「干渉値」(請求項1の「干渉レベル」、請求項9の「前記危険領域における前記干渉レベル」に対応。)が、「プライマリシステムの干渉防止閾値」(請求項1の「干渉防止閾値」、請求項9の「前記干渉防止閾値」に対応。)を越えない伝送リソースを、「セカンダリシステムに使用可能な使用可能伝送リソース」(請求項1にいう「セカンダリシステムの使用可能リソース」に対応。)として特定する(請求項1の「前記セカンダリシステムがリソースを利用して通信を行う際に、前記プライマリ通信システムの危険領域において前記セカンダリシステムが当該プライマリ通信システムに与えた干渉を推定することで、当該推定した干渉レベルが前記プライマリ通信システムの前記干渉防止閾値を超えないリソースを前記セカンダリシステムの使用可能リソースとして特定し」に対応。)。
そして、上記(2)の記載によれば、「ステップ208-2において、セカンダリシステム危険領域内においてセカンダリシステムが前記使用可能伝送リソースを利用して達成可能な最適通信品質を評価」し、「ステップ208-3において、ステップ208-2における評価の結果に基づいてセカンダリシステムに前記使用可能伝送リソースを割当てる」。その例示として、ステップ312では、「評価されたセカンダリシステム危険領域内にセカンダリシステムが前記使用可能伝送リソースを利用して達成可能な最適通信品質」(請求項1にいう「前記セカンダリシステムにおけるセカンダリユーザーがセカンダリシステム危険領域において前記特定した使用可能リソースを利用して通信を行う際の通信品質」に対応。)が、「セカンダリシステムの所望通信品質」(請求項1にいう「所定の通信品質」に対応。)を満たすか否かを判断し、その結果に基づいてセカンダリシステムに前記使用可能伝送リソースを割当てる(請求項1の「前記セカンダリシステムにおけるセカンダリユーザーがセカンダリシステム危険領域において前記特定した使用可能リソースを利用して通信を行う際の通信品質を推定し、前記特定した使用可能リソースのうち該推定された通信品質が前記所定の通信品質を満足する使用可能リソースを前記セカンダリシステムに割り当てる」に対応。)。

そうすると、発明の詳細な説明には、プライマリシステム危険領域における「干渉レベル」が「干渉防止閾値」よりも低い伝送リソースを、セカンダリシステムに使用可能な使用可能伝送リソースとして特定することは記載されているが、特定した前記使用可能伝送リソースをそのままセカンダリシステムに割り当てることまで記載されているとはいえない。

よって、請求項9に係る発明は、「前記危険領域における前記干渉レベルが前記干渉防止閾値よりも低い場合に、・・・前記セカンダリシステムにリソースを割当てる」とした点で、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

また、請求項9は、補正により、補正前の「所定の閾値」が「干渉防止閾値」であることは明らかになったものの、請求項9の「前記危険領域における前記干渉レベルが前記干渉防止閾値よりも低い場合に、前記回路は、前記セカンダリシステムにリソースを割当てる」ことが、請求項1の「・・・当該推定した干渉レベルが前記プライマリ通信システムの前記干渉防止閾値を超えないリソースを前記セカンダリシステムの使用可能リソースとして特定」すること、又は、「前記特定した使用可能リソースを利用して通信を行う際の通信品質を推定し、・・・前記所定の通信品質を満足する使用可能リソースを前記セカンダリシステムに割り当てる」こと、のどちらに対応するのかが不明確である。

よって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 本願の請求項10、13及び14(補正前の請求項12、15及び16)に係る発明について(当審拒絶理由の(9)、(11)及び(13))
発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(1)「【0062】
図4に示されたように、当該方法はステップ422と424を含む。具体的に、ステップ422において、プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信状況を監視し、セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信状況を監視する。前記の説明と同じように、プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信品質に関する情報は、セカンダリシステムにおける無線伝送リソース管理デバイスによりプライマリシステムにおけるプライマリ基地局から取得することができるが、ここでは詳しく説明しない。セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信状況に関する情報は、セカンダリシステムにおける無線伝送リソース管理デバイスによりセカンダリシステムにおけるセカンダリ基地局やセカンダリユーザーから取得することができる。例えば、無線伝送リソース管理デバイスは、セカンダリシステム危険領域に関する情報をセカンダリ基地局やセカンダリユーザー(又はセカンダリ基地局に送信してからセカンダリ基地局からセカンダリユーザーに配布される)に送信し、関連のセカンダリ基地局及び/又はセカンダリユーザー(例えば危険領域内にあるセカンダリ基地局及び/又はセカンダリユーザー)により、自身で割当てられた伝送リソースを利用して得られた通信情報の情報を無線伝送リソース管理デバイスに送信することができるが、ここでは詳しく説明しない。そして、ステップ424において、監視の結果に基づいてプライマリシステムリソース情報及び/又はセカンダリシステムリソース情報を更新する。例えば、その中のチャンネルモデルなどを更新する。これらの更新の情報は、以降に再び伝送リソースを割り当てる必要のある時に使用できるように、無線伝送リソース管理デバイス(例えばその中の記憶デバイス)に記憶することができる。ここでの通信状況に関する情報は、プライマリユーザーの信号強度と周波数スペクトル利用情報、セカンダリユーザーの信号強度と周波数スペクトル利用情報、プライマリユーザー信号エネルギー変化統計情報及びセカンダリユーザー信号強度統計情報などのうちの一つ又は複数個を含むことができる。好ましくは、プライマリシステム危険領域の周辺領域におけるプライマリユーザーの通信状況を監視し、セカンダリシステム危険領域の周辺領域におけるプライマリユーザーの通信状況を監視することもできる。ここでの周辺領域とは、危険領域の周辺にある領域(必要に応じて危険領域周辺にある領域を選択して周辺領域とすることができ、ここでは限定されない)である。(中略)
【0065】
実施例として、プライマリセカンダリシステムにおけるプライマリユーザーとセカンダリユーザーを切り替えることができる。例えば、プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合に、セカンダリシステム(例えば無線伝送リソース管理デバイス)は、プライマリシステムにおいてプライマリシステム危険領域にあるプライマリユーザーをセカンダリシステムに切り替える要求を受信することができる。又は、例えば、セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合に、プライマリシステムにセカンダリシステムにおいてセカンダリシステム危険領域にあるセカンダリユーザーをプライマリシステムに切り替える要求を送信する。」

(2)「【0142】
好ましくは、図19に示されたように、無線伝送リソース管理デバイス1700は、受信装置1709、探索装置1711と送信装置1713を備えることもできる。無線伝送リソース管理デバイス1700は、前に図5又は図6を参照して説明された切替処理を実行することができる。一例示として、プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合に、受信装置1709は、プライマリシステムにおけるプライマリシステム危険領域内に位置するプライマリユーザーをセカンダリシステムに切り替える切替要求を受信することができる。探索装置1711は、カバー範囲が前記プライマリユーザーの位置をカバーするセカンダリ基地局を探索することができる。送信装置1713は、前記切替要求を探索されたセカンダリ基地局に送信することができる。当該例示において、受信装置1709と送信装置1713は、図5に示された他の受信と送信処理を実行することもでき、ここでは重複しない。別の一例示として、セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合に、受信装置1709はセカンダリシステムにおけるセカンダリシステム危険領域内に位置するセカンダリユーザーをプライマリシステムに切り替える切替要求を受信する。探索装置1711はカバー範囲が前記セカンダリユーザーの位置をカバーするプライマリ基地局を探索することができる。送信装置1713は、前記切替要求を探索されたプライマリ基地局に送信することができる。当該例示において、受信装置1709と送信装置1713は、図6に示された他の受信と送信処理を実行することができ、ここでは重複しない。」

上記(1)の記載によれば、発明の詳細な説明には、「プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信状況を監視し、セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信状況を監視する」ことは記載されているものの、請求項10の「前記プライマリ通信システムの前記危険領域におけるプライマリユーザーおよびセカンダリユーザーの通信状況を監視する」ことは記載も示唆もない。

よって、請求項10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、当審拒絶理由の(9)は解消しておらず、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

また、上記(1)の段落65及び上記(2)の記載によれば、発明の詳細な説明には、「プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合」に「プライマリシステムにおけるプライマリシステム危険領域内に位置するプライマリユーザーをセカンダリシステムに切り替える切替要求を受信」すること、「セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信品質が所定の通信品質閾値よりも低い場合」に、「セカンダリシステムにおけるセカンダリシステム危険領域内に位置するセカンダリユーザーをプライマリシステムに切り替える切替要求を受信」することが記載されている。

ここで、「プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザーの通信品質」及び「セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザーの通信品質」は、それぞれ「プライマリシステム危険領域におけるプライマリユーザー」の実際の通信品質及び「セカンダリシステム危険領域におけるセカンダリユーザー」の実際の通信品質であると解するのが自然であるから、請求項13の「プライマリ通信システムの推定された通信品質」及び請求項14の「セカンダリシステムのその危険領域における推定された通信品質」に基づいて切り替えを行うことは、発明の詳細な説明には記載も示唆もない。

よって、請求項13及び14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、当審拒絶理由の(11)は解消しておらず、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

また、請求項13は、「前記回路は」、「プライマリ通信システムのユーザーが前記セカンダリシステムに切り替える」としており、「切り替え」を行う主体が「回路」であるのか、「プライマリ通信システムのユーザー」であるのかも不明確であるから、当審拒絶理由の(13)も解消していない。請求項14についても同様である。

よって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 本願の請求項15(補正前の請求項17)に係る発明について(当審拒絶理由の(12))
請求項15は、請求項1を引用しているが、請求項15の「別のセカンダリシステムの危険領域において当該別のセカンダリシステムが前記プライマリ通信システムに与えると推定した干渉レベル」を推定する主体が何であるかが不明であり、「別のセカンダリシステムの前記干渉防止閾値よりも低い」ことを判断する主体も不明である。このため、請求項15の「前記別のセカンダリシステムの危険領域において当該別のセカンダリシステムが前記プライマリ通信システムに与えると推定した干渉レベルが前記別のセカンダリシステムの前記干渉防止閾値よりも低い」との特定事項が、技術的に何を特定しようとしているのかが不明である。また、その結果、請求項15に係る発明において、請求項1で特定した「前記回路」が、更に、「別のセカンダリシステムの干渉防止閾値を含」む「別のセカンダリシステムの情報を取得」することの技術的意味も不明となっている。

よって、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

また、請求項15において、請求項1で特定した「回路」が、「更に、別のセカンダリシステムの情報を取得」すること、「前記情報は、前記別のセカンダリシステムの干渉防止閾値を含」むこと、「前記別のセカンダリシステムの危険領域において当該別のセカンダリシステムが前記プライマリ通信システムに与えると推定した干渉レベルが前記別のセカンダリシステムの前記干渉防止閾値よりも低い」ことに関し、発明の詳細な説明には対応する記載も示唆も見当たらない。特に、請求項1で特定された「回路」が、「別のセカンダリシステムが前記プライマリ通信システムに与える」「干渉レベル」の推定や、「別のセカンダリシステムの干渉防止閾値」より低いか否かの判断を行うことは、記載も示唆もない。

よって、請求項15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、当審拒絶理由の(11)は解消しておらず、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

なお、この点に関し、当審の拒絶理由の(12)において、「なお、意見書を提出する際には、請求項17に係る特定事項が、当初明細書等に記載されていたかどうかについても、具体的に釈明されたい。」として釈明を求めたが、意見書には、「その他、本件出願人は、本意見書と同日付提出の手続補正書において、審判長殿が指摘された記載不備を解消するための補正を行いました。」とあるだけで、何ら具体的な説明はない。

以上により、当審拒絶理由の(8)-(9)、(11)-(13)が解消されたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-24 
結審通知日 2018-01-30 
審決日 2018-02-13 
出願番号 特願2015-530273(P2015-530273)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
P 1 8・ 536- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 川口 貴裕
北岡 浩
発明の名称 周波数スペクトル管理システム、周波数スペクトル管理方法、及び非揮発コンピュータ読取可能媒体  
代理人 亀谷 美明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ