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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D |
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管理番号 | 1339054 |
審判番号 | 不服2017-3617 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-10 |
確定日 | 2018-04-05 |
事件の表示 | 特願2013- 91105「コンパクト容器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月17日出願公開、特開2014-212877〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年4月24日の出願であって、平成28年8月29日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年11月2日に意見書が提出されたが、平成28年12月26日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成29年3月10日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「【請求項1】 内容物が収納される収納凹部が形成された容器本体と、 前記容器本体に連結されて前記収納凹部を開閉する蓋体と、 を備えるコンパクト容器において、 前記容器本体及び前記蓋体は、容器軸回りに間隔をあけて配設された3つ以上の連結部材を介して互いに連結され、 前記連結部材は、 前記容器本体及び前記蓋体のうちのいずれか一方に設けられるとともに、凹球面状の内周面を有する支持部と、 他方に設けられるとともに、前記支持部内に回動自在にかつ着脱自在に嵌入された嵌入突部と、を備え、 前記3つ以上の連結部材のうち、一部の連結部材における前記嵌入突部が前記支持部内で回動し、かつ残りの連結部材における前記嵌入突部が前記支持部に着脱されることで、前記収納凹部が開閉されることを特徴とするコンパクト容器。」 第3 引用文献記載の発明及び事項 これに対して、原査定の平成28年8月29日付けで通知された拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭59-152084号(実開昭61-67609号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)及び特開2004-45917号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。なお、下線は当審において付したものである。 1 刊行物1 (1)刊行物1に記載された事項 刊行物1には、「コンパクトケース」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 1ページ4?11行(実用新案登録請求の範囲) 「化粧料(2)を収納する器体(1)と蓋体(10)はそれぞれ外形状が一対の多角形状をしており、 器体(1)と蓋体(10)の一方にはその頂角(5),(5')にそれぞれ磁力を有した吸着体(8)が設けられ、他方にはその頂角(5),(5')にそれぞれ前記吸着体(8)と吸着する磁性体(12)を止着し、 どの方向にも蓋体(10)の開閉が可能であることを特徴とするコンパクトケース。」 イ 2ページ14?20行 「〔問題を解決するための手段〕 化粧料2を収納する器体1と蓋体10は、外形が同一の多角形状をしている。この器体1と蓋体10の一方には頂角5、5’にそれぞれ磁石7を有した吸着体8が設けられている。また他方には頂角5、5’にそれぞれ前記吸着体8と吸着する球状の磁性体12を止着している。」 ウ 3ページ2?17行 「〔作用〕 器体1と蓋体10は、頂角5、5’にあるそれぞれの吸着体8と球状の磁性体12が磁石により吸着しているため、器体1に蓋体10が嵌着している。そして、器体1を保持して蓋体10を開けようとすると蓋体10の指を掛けた部分と対向する辺の両端の頂角5、5’が蝶番となり、他の頂角5、5’がフックとなり蓋体10が開かれる。 尚、この操作は偶数角形をしたコンパクトケースの場合は辺の部分に指を掛け、奇数角形をしたコンパクトケースの場合は頂角の部分に指を掛ければどの位置に指を掛けても蓋体10の開閉操作が行えるものである。 また、吸着体8に吸着した磁性体12は球状をしているため滑らかな蓋体10の開閉が行えるものである。」 エ 3ページ18行?4ページ20行 「〔実施例〕 器体1は中央に化粧料2を収納する収納凹所3が穿設されており、この収納凹所3の縁部に沿って嵌着部4が突出し周設されている。また器体1は外形状が正三角形をしており、その頂角5にはそれぞれ段部6が刻設されている。この段部6にはそれぞれ天面中央に磁石7を圧入した吸着体8が止着されている。この吸着体8天面は球状の凹面となった吸着面9が刻設されている。 蓋体10は器体1と外形状が一対の正三角形をしており、裏面に器体1の嵌着部4が嵌着する嵌着溝11が刻設されている。更にその頂角5’には器体1の吸着面9に吸着する球状の磁性体12が止着される受溝13が刻設されている。 尚、本考案のコンパクトケースは蓋体10と器体1の頂角5、5’の部分にそれぞれ球状の磁性体12と吸着体8を設ければ外形状が何角形をしていても実施可能であるが、外形状を三角形としたものが2つの頂角部分が蝶番となり、他の1つの頂角部分がフック部となるため使用に際して最も望ましいものとなる。 また球状の磁性体12と吸着体8は、蓋体10と器体1のどちら側に設けても良い。」 オ 5ページ1?9行 「〔考案の効果〕 本考案は以上の様に球状の磁性体12と磁性体12に吸着する吸着体8を器体1と蓋体10に設け、それぞれが器体1と蓋体10の蝶番部とフック部の作用を兼ねているためにどの方向からも蓋体10を開くことが可能となるものである。 また必要ならば全部の磁性体12と吸着体8の吸着を解除し、蓋体10を取り外すことも可能である等、数多くの利点を有する考案である。」 (2)刊行物1発明 カ 上記記載事項オの「器体1と蓋体10の蝶番部」及び第1図の図示内容に照らせば、蓋体10は、「器体1に連結」されて、器体1に穿設ないし形成された「収納凹所3を開閉」するものであると認められる。 キ 上記記載事項ア及びイ並びに上記認定事項カに照らせば、それぞれの外形が一対の多角形状をしている器体1と蓋体10は、その頂角5、5’において「吸着体8及び磁性体12を介して連結」されていると認められる。 ク 上記認定事項キより、対となる吸着体8及び磁性体12の数は、「頂角5、5’の数に対応する複数」であると認められる。 ケ 上記記載事項ウの「吸着体8に吸着した磁性体12は球状をしているため滑らかな蓋体10の開閉が行える」、上記記載事項エの「この吸着体8天面は球状の凹面となった吸着面9が刻設されている」及び技術常識等に照らすと、球状の磁性体12は、球状の凹面を有する「吸着体8内に回動自在に吸着」されるものと認められる。 コ 上記記載事項ウの「蓋体10の指を掛けた部分と対向する辺の両端の頂角5、5’が蝶番となり、他の頂角5、5’がフックとなり蓋体10が開かれる」、上記記載事項オの「球状の磁性体12と磁性体12に吸着する吸着体8・・・それぞれが器体1と蓋体10の蝶番部とフック部の作用を兼ねている」及び技術常識等に照らすと、球状の磁性体12は、吸着体8に「着脱自在に吸着」されるものと認められる。 そして、刊行物1の上記記載事項アないしオ及び上記認定事項カないしコを、技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「刊行物1発明」という。) 「化粧料2が収納される収納凹所3が形成された器体1と、 前記器体1に連結されて前記収納凹所3を開閉する蓋体10と、 を備えるコンパクトケースにおいて、 前記器体1と前記蓋体10は、それぞれ外形が一対の多角形状をしており、その頂角5、5’に配設された、前記頂角5、5’の数に対応する複数の吸着体8及び磁性体12を介して互いに連結され、 前記吸着体8及び前記磁性体12は、 前記吸着体8が、前記器体1及び前記蓋体10のうちのいずれか一方に設けられるとともに、球状の凹面を有する吸着体8であり、 前記磁性体12が、他方に設けられるとともに、前記吸着体8内に回動自在にかつ着脱自在に吸着された球状の磁性体12であり、 前記複数の吸着体8及び前記磁性体12のうち、一部における前記磁性体12が前記吸着体8内で回動し、かつ残りにおける前記磁性体12が前記吸着体8に着脱されることで、前記収納凹所3が開閉されるコンパクトケース。」 2 刊行物2 (1)刊行物2に記載された事項 刊行物2には、「めがね」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0024】 図1に示すように、この例のめがね1は、前述の従来のめがね1におけるヒンジ15,16に代えて、左右の鎧11,12と左右のテンプル13,14との間に、それぞれボールジョイント19,20が設けられている。また、左右のテンプル13,14と左右の掛止杆17,18との間に、それぞれボールジョイント21,22が設けられている。更に、左右のノーズパッド7,8と左右のノーズパッド連結杆9,10との間にも、それぞれボールジョイント23,24が設けられている。 【0025】 これらのボールジョイント19,20,21,22,23,24は、いずれも同じ構造を有している。そこで、代表として、右側のボールジョイント20について説明する。図2(a)に示すように、ボールジョイント20は、軸25aとこの軸25aの先端に設けられたボール25bを有する第1ジョイント部材25、および軸26aとこの軸26aの先端に設けられた横断面円形の有底筒状のボール収容部26bを有する第2ジョイント部材26から構成されている。第1および第2ジョイント部材25,26は、いずれも、合成樹脂あるいは軽金属から形成されている。 【0026】 第2ジョイント部材26のボール収容部26bの筒状部26b1は所定の弾性を有しており、その先端の開口端面26b2は内側に傾斜する傾斜面とされている。また、図2(b)に示すように筒状部26b1の内周面の径は開口端面26b2から底部26b3に向かって徐々に連続して大きくなるように設定されている。そして、ボール25bの直径αがボール収容部26bの開口端面26b2の内周径βより大きく、ボール収容部26bの底部26b3の内周径より小さく設定されている。 【0027】 図2(c)に示すように、ボール25bはボール収容部26b内に押し込まれて収容されることでボールジョント20が構成される。その場合、ボール25bがボール収容部26b内に押し込まれるときは、このボール25bが傾斜面の開口端面26b1を押圧することで、筒状部26b1の先端側が弾性変形して押し拡げられ、ボール25bはボール収容部26b内に進入するようになっている。」 イ 「【0030】 ボール25bがボール収容部26b内に収容された図2(c)に示す状態では、筒状部26b1は図2(b)に示す自由状態より弾性変形しており、その弾性復元力でボール25bをボール収容部26bの底部26b3に押し付けられている。したがって、この状態では、ボール25bは筒状部26b1と底部26b3とにより所定の力で挟持されている。 【0031】 そして、ボール25bは、回動方向に所定以上の回動外力が加えられない限り、この所定の挟持力による筒状部26b1および底部26b3との間の摩擦力でその位置に保持されるようになっている。すなわち、軸25aつまり第1ジョイント部材25は、前述の回動範囲内で例えば二点差線で示す位置Dに回動して停止したとき、所定以上の回動外力が加えられない限りその回動位置Dに保持され、また、所定以上の回動外力が加えられた場合にはその回動位置Dから筒状部26b1および底部26b3に対して相対的に回動するようになっている。 【0032】 また、ボール25bは、ボール収容部26bから引き抜く方向に所定以上の引き抜き外力が加えられない限り、このボール収容部26bから引き抜かれなく、また、所定以上の引き抜き外力が加えられたときは、このボール収容部26bから引き抜くことができるようになっている。すなわち、第1および第2ジョイント部材25,26は互いに着脱可能に連結されるようになっている。 このようなボールジョイントは、構造が簡単であるのでその製造が容易であり、また、例えばワヨー株式会社製のボールジョイント等の市販のボールジョイントを応用することもできる。 この例のめがね1の他の構成は、前述の従来のめがねと同じである。」 (2)刊行物2事項 上記記載事項ア及びイを、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「刊行物2事項」という。) 「ボール25bを有する第1ジョイント部材25、及び、有底筒状のボール収容部26bを有する第2ジョイント部材26から構成されたボールジョイント20であって、該ボール収容部26bの筒状部は、所定の弾性を有し、かつ、該第1ジョイント部材25は、該第2ジョイント部材26内に回動可能かつ着脱可能に嵌入されたものであり、めがねに応用した市販のボールジョイントであるボールジョイント20。」 第4 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。 まず、刊行物1発明の「化粧料2」は、技術常識を踏まえれば、本願発明の「内容物」に相当し、以下同様に、「収納凹所3」は「収納凹部」に、「器体1」は「容器本体」に、「蓋体10」は「蓋体」に、「コンパクトケース」は「コンパクト容器」に、「吸着体8及び磁性体12」は「連結部材」に、「吸着体8及び前記磁性体12のうち、一部」は「連結部材のうち、一部の連結部材」に、「吸着体8及び前記磁性体12のうち・・・残り」は「連結部材のうち・・・残りの連結部材」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1発明において、収納凹所3を閉じてコンパクトケースを平面視した場合、外形が一対の多角形状(第1図は正三角形)をした「器体1及び蓋体10」の頂部5、5’にある「吸着体8及び磁性体12」は、収納凹所3の回りに間隔をあけて位置することとなる。 そうすると、刊行物1発明の「前記器体1と前記蓋体10は、それぞれ外形が一対の多角形状をしており、その頂角5、5’に配設された」は、本願発明の「(連結部材は)容器軸回りに間隔をあけて配設された」に相当すること、そして、前者の「頂角5、5’の数に対応する複数の」は、後者の「3つ以上の」に相当することは明らかである。 また、刊行物1発明の「吸着体8」は、「凹球面状の内周面」たる「球状の凹面」を有するものであり、その内部に「球状部材」たる「球状の磁性体12」が「回動自在にかつ着脱自在に」吸着されたものである。そうすると、該「吸着体8」は、「凹球面状の内周面を有する部材」(以下「凹球面状部材」という。)であり、かつその内部に「回動自在かつ着脱自在に」「球状部材」を「連結」する部材である限りにおいて、本願発明の「支持部」と共通する。 また、刊行物1発明の「磁性体12」は、「球状部材」たる「球状の磁性体12」であり、凹球面状部材の内部に「回動自在にかつ着脱自在に」吸着されたものである。そうすると、該「磁性体12」は、凹球面状部材の内部に「回動自在にかつ着脱自在に」「連結」された「凸状部材」ないし「球状部材」である限りにおいて、本願発明の「嵌入突部」と共通する。 さらに、刊行物1発明の「前記吸着体8及び前記磁性体12は、前記吸着体8が・・・吸着体8であり、前記磁性体12が・・・磁性体12であり」は、「連結部材は、・・・凹球面状部材と・・・球状部材と、を備え」の限りにおいて、本願発明の「前記連結部材は・・・支持部と・・・嵌入突部と、を備え」と共通するとともに、刊行物1発明の「吸着された」は、「回動自在にかつ着脱自在に連結された」の限りにおいて、本願発明の「嵌入された」と共通する。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「内容物が収納される収納凹部が形成された容器本体と、 前記容器本体に連結されて前記収納凹部を開閉する蓋体と、 を備えるコンパクト容器において、 前記容器本体及び前記蓋体は、容器軸回りに間隔をあけて配設された3つ以上の連結部材を介して互いに連結され、 前記連結部材は、 前記容器本体及び前記蓋体のうちのいずれか一方に設けられるとともに、凹球面状の内周面を有する部材たる凹球面状部材と、 他方に設けられるとともに、前記凹球面状部材内に回動自在にかつ着脱自在に連結された球状部材と、を備え、 前記3つ以上の連結部材のうち、一部の連結部材における前記球状部材が前記凹球面状部材内で回動し、かつ残りの連結部材における前記球状部材が前記凹球面状部材に着脱されることで、前記収納凹部が開閉されるコンパクト容器。」 <相違点> 凹球面状部材と球状部材とを備える連結部材について、 本願発明は、凹球面状部材が「支持部」で、かつ、球状部材が「嵌入突部」であって、嵌入部材が支持部内に回動自在にかつ着脱自在に「嵌入」されたものであるのに対して、 刊行物1発明は、凹球面状部材が「吸着体8」で、かつ、球状部材が「球状の磁性体12」であって、磁性体12が吸着体8内に回動自在にかつ着脱自在に「吸着」されたものである点。 第5 相違点の検討 1 周知技術について 刊行物2事項につき、特に「めがねに応用した市販のボールジョイントである」点を踏まえると、刊行物2事項で特定されるボールジョイントは、本願出願前に周知のボールジョイントであって、しかも、刊行物2の「めがね」に限定されることなく、他の技術分野に適用可能な一般的なものであると認められる(以下、刊行物2事項で特定されるボールジョイントを「本件周知技術」という。)。 2 本件周知技術の適用の動機付けについて まず、上記1に記載したとおり、本件周知技術は、刊行物2の「めがね」以外の他の技術分野に適用可能な一般的なものであって、その技術内容に照らすと、適用可能な「他の技術分野」には、少なくとも、家庭用品が含まれるものと認める。そうすると、本件周知技術を刊行物1発明の「コンパクトケース」に適用することは可能であるといえる。 また、刊行物1発明において、連結部材たる吸着体8及び磁性体12は、上記第3の1(1)記載事項エに「器体1と蓋体10の蝶番部とフック部の作用を兼ねている」とあるように、「蝶番部」の作用を有する。しかも、互いに「回動自在にかつ着脱自在に」連結するものであるから、この点において、刊行物1発明と本件周知技術は、機能ないし作用の共通性を有する。 さらに、刊行物1発明の吸着体8は「球状の凹面」を有し、磁性体12は「球状」のものであるから、連結部材の形態の点おいても、本件周知技術と共通又は類似する。 したがって、本件周知技術を刊行物1発明に適用する動機付けは存在する。 なお、本件周知技術のボールジョイントを刊行物1発明のコンパクトケースに適用する動機付けが存在することは、以下の点を踏まえると、一層、明らかとなる。 すなわち、コンパクトケースを含む家庭用品の容器において、蓋体の蝶番部にボールジョイントを用いることは、本願出願時において周知である(例えば、実公昭53-40320公報の「自在接手用球部17」、実公昭56-53811号公報の「球状体12」、実公昭61-12889号公報の「球部12」参照)。また、該家庭用品の容器において、蓋体のフック部にボールジョイントと同様の形態の連結部材を用いることは公知である(特開2000-313428号公報参照)。 以上のことから、本件周知技術を適用する動機付けの存在は、明らかである。 3 相違点の容易想到性について 上記1及び2を踏まえ、刊行物1発明に本件周知技術を適用するに当たり、凹球面状部材と球状部材とを備える連結部材の形態を維持しつつ、凹球面状部材たる「吸着体8」を「有底筒状のボール収容部」に、球状部材たる「球状の磁性体12」を「ボール」にそれぞれ置換すると、凹球面状かつ有底筒状のボール収容部と、該ボール収容部内に回動自在にかつ着脱自在に嵌入されたボールとを備える連結部材の構成に到達することとなる。 そして、かかる連結部材の構成においては、該ボール収容部が該ボールを「支持」することは明らかであるから、到達した連結部材の構成は、上記相違点に係る本願発明の構成である。 したがって、本件周知技術を刊行物1発明に適用して、上記相違点に係る本願発明の構成を想到することは、当業者ならば容易になし得たことである。 4 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、(i)刊行物1及び2に記載の発明は、技術分野、解決しようとする課題、及び作用機能が相違しており、両者を組み合わせる動機付けを見い出せない、(ii)刊行物1に記載の発明に支持部及び嵌入突部を適用すると、吸着体8の吸着面から磁性体12を離脱しにくく、蓋体10を開くことが困難になるため、該適用を試みることは想定しにくい、(iii)本願発明は、嵌入突部が支持部内に回動自在にかつ着脱自在に嵌入されているので、蓋体の開閉の際、嵌入突部が支持部から不用意に外れるのを抑制し、開閉操作を安定させることができるという有利な作用効果を有する旨主張する。 しかしながら、本件周知技術を適用する動機付けが存在することは、上記2に記載したとおりであり、上記3に記載した適用の具体的態様に請求人が主張するような困難性は見い出せず、また、本願発明の作用効果も、刊行物1発明と本件周知技術を組み合わせる際に当然に生じるものであって、格別のものともいえない。 よって、請求人の上記主張は、採用することができない。 5 小括 したがって、本願発明は、刊行物1発明及び本件周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 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審理終結日 | 2018-02-02 |
結審通知日 | 2018-02-06 |
審決日 | 2018-02-20 |
出願番号 | 特願2013-91105(P2013-91105) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A45D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 根本 徳子 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
五閑 統一郎 平瀬 知明 |
発明の名称 | コンパクト容器 |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 仁内 宏紀 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 志賀 正武 |