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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C10L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C10L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C10L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C10L
管理番号 1339137
異議申立番号 異議2017-700676  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-11 
確定日 2018-02-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6057509号発明「軽油燃料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6057509号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6057509号の請求項1に係る特許を維持する。  
理由 第1 手続の経緯等

1 本件特許異議申立に係る特許
本件特許異議申立に係る特許第6057509号は、特許権者である昭和シェル石油株式会社より、平成23年12月14日、特願2011-273324号として出願され、平成28年12月16日、発明の名称を「軽油燃料組成物」、請求項の数を「1」として特許権の設定登録を受けたものである。

2 手続の経緯
本件特許異議申立における手続の経緯は、おおよそ次のとおりである。
平成29年 7月11日 三田翔より特許異議の申立て
同年10月 4日付 取消理由通知
同年11月24日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年12月28日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否

1 訂正事項
前記平成29年11月24日提出の訂正請求書による、本件明細書及び特許請求の範囲についての訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「炭素数19?23のノルマルパラフィン分が7.5mass%以下」と記載されているのを「炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」に訂正する。
(2) 訂正事項2
明細書の【0009】に「炭素数19?23のノルマルパラフィン分が7.5mass%以下」と記載されているのを「炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、明細書の【0019】の記載に基づいて、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「炭素数19?23のノルマルパラフィン分」の含有量を、「4.0mass%以上7.5mass%以下」に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、前記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。

3 小括
前記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 本件特許請求の範囲の記載

前記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
1種または2種以上の軽油基材とEV系低温流動性向上剤とからなり、
直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材を含有し、
炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下、シクロパラフィン類が34mass%以上、芳香族分が18vol%以上、アルキルベンゼン類が10mass%以上、2環シクロパラフィン類が11mass%以上、及び硫黄分が10massppm以下であることを特徴とする軽油燃料組成物。」
(以下、上記請求項1に係る特許及び発明を、単に「本件特許」及び「本件発明」という。また、本件訂正後の明細書を「本件特許明細書」という。)

第4 平成29年10月4日付け取消理由通知に記載した取消理由(記載不備)について

1 取消理由(記載不備)の概要
標記取消理由(記載不備)は、要するに、本件訂正前の特許は、特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)、同法同条第6項第1号(サポート要件)及び同法同条第6項第2号(明確性要件)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである、というものである。
そして、その理由については、特許異議申立書第13、14ページの「(4)」の項に記載のとおりであるとした上で、以下の点を指摘した。
(1) サポート要件違反について
本件訂正前の請求項1には、軽油燃料組成物を構成する各成分の含有割合として、炭素数19?23のノルマルパラフィン分が「7.5mass%以下」、シクロパラフィン類が「34mass%以上」、芳香族分が「18vo1%以上」、アルキルベンゼン類が「10mass%以上」、2環シクロパラフィン類が「11mass%以上」であることが規定されている。
上記規定によれば、炭素数19?23のノルマルパラフィン分の含有割合は「0mass%」であってもよいし、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合は、各々「100%」であってもよいものと解される。
一方、本件訂正前の明細書には、実施例として、僅か2点の軽油燃料組成物の組成が示されるのみであり、上記各成分の含有範囲全体に亘ってサポートするものでなく、また上記各成分の含有範囲全体に亘って上記請求項1に係る発明の効果を奏し得るものとは到底認めることはできないことから、上記請求項1に係る発明は、上記明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を超える範囲まで規定するものとなっており、このために、上記請求項1に係る発明は上記明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(2) 明確性要件違反について
上述したとおり、本件訂正前の請求項1の記載からは、炭素数19?23のノルマルパラフィン分の含有割合は「0mass%」であってもよいことから、係る成分が必須成分であるか任意成分であるのかさえ明確でなく、また、必須成分である、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合は、各々「100%」であってもよいことから、これらいずれかの必須成分の含有割合が「100%」である場合、各成分の合計が100%を超えると解され、係る観点からも請求項の記載が不明確である。
(3) 実施可能要件違反について
本件訂正前の請求項1に係る発明において、炭素数19?23のノルマルパラフィン分、シクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類及び2環シクロパラフィン類の含有割合が、上記請求項1に係る発明が効果を奏する範囲を超えて広く記載されていることから、当業者は、上記各成分をどのように配合した場合に上記請求項1に係る発明の効果を発揮し得るのか理解することができず、このために、本件訂正前の明細書の発明の詳細な説明には、上記請求項1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分な記載がなされていない。

2 前記取消理由(記載不備)についての判断
当審は、本件訂正後の特許請求の範囲の記載及び本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に記載不備は存しないので、本件特許に対して、前記取消理由(記載不備)は妥当しないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
(1) 前記取消理由(記載不備)の論拠の整理
前記取消理由(記載不備)の論拠は、整理すると、次の2点に集約することができる。
(i)特許請求の範囲に記載された「炭素数19?23のノルマルパラフィン分」の含有割合が形式上「0mass%」である場合を含むこと(明確性要件違反の論拠)
(ii) 特許請求の範囲に記載された「シクロパラフィン類」、「芳香族分」、「アルキルベンゼン類」及び「2環シクロパラフィン類」の含有割合は上限値を規定するものではないから、形式上、各々が「100%」である場合を含むこと(サポート要件違反及び実施可能要件違反の論拠)
(2) 前記(i)について
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、前記「第3」に示したとおりであり、そこには、本件発明に係る軽油燃料組成物を構成する上記各成分の含有割合について、「炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下」、「シクロパラフィン類が34mass%以上」、「芳香族分が18vo1%以上」、「アルキルベンゼン類が「10mass%以上」及び「2環シクロパラフィン類が11mass%以上」であることが規定されている。
そうすると、前記(i)については、「炭素数19?23のノルマルパラフィン分」の含有割合の下限値が「4.0mass%以上」と規定されているのであるから、形式上「0mass%」である場合を含むことはないため、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に対しては当てはまらない。
(3) 前記(ii)について
前記(ii)について検討すると、そもそも、本件発明に係る軽油燃料組成物は前記成分のすべてを構成成分として含むのであるから、各成分の含有割合が「100%」を超えることはあり得ない。加えて、当該軽油燃料組成物は、シクロパラフィン類などの成分のほかにも、炭素数が19未満あるいは23超のノルマルパラフィン分であるとか、イソパラフィン分を、少なからず含有するものと解される上、本件発明が特定する「軽油燃料組成物」という枠組みの中にあっては、当該枠組みを超えるような構成成分の含有割合は、おのずと規制されるのであるから(例えば、シクロパラフィン類や芳香族分などの含有割合が高すぎれば、所定のセタン価は得られないため、おのずとそれらの上限は制限される。)、シクロパラフィン類などの上限値についての規定がなくとも、それらの含有割合が、極端に高い数値となるとは考えにくい。したがって、本件発明は、確かにシクロパラフィン類などの含有割合の上限値について規定するものではないが、その値は、「軽油燃料組成物」という枠組みの中で、適正な範囲(極端に高くない数値)に帰するものと解するのが合理的である。そうである以上、前記 (ii)の論拠にも理由がないといわざるを得ない。
(4) 小括
以上のとおり、先の取消理由(記載不備)の論拠はいずれも理由がない。 したがって、前記(i)の論拠により、本件特許請求の範囲の記載が不明確であるとして明確性要件違反を認めることはできない。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明に実施例が2つしか記載されていないとしても、前記(ii)の論拠をもって、本件特許請求の範囲が広範にすぎるとして、サポート要件違反、さらにはこれに起因する実施可能要件違反を認めることもできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 特許異議申立人が主張するその他の申立理由(甲1に基づく進歩性)
前記「第4」において検討した取消理由のほかに、特許異議申立人は、甲第1号証(特開2009-292932号公報、以下「甲1」という。)を提出し、これに基づいて特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反(同法第113条第2号に該当)を主張している。
そこで、以下、当該申立理由について検討をする。

2 甲1に基づく特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反について
(1) 甲1発明
甲1には、ディーゼルエンジン用燃料油組成物(発明の名称)に関する発明が記載されているところ、具体的には、実施例2につき、次のように記載されている。
・「【0053】
<実施例2>
脱硫軽油基材90容量%に、ナフテンBを10容量%混合することにより、ディーゼルエンジン用燃料油組成物を得た。そして得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物に、エチレン-酢酸ビニル共重合体から成る流動性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し300容量ppm、また長鎖アルキルエステルから成る潤滑性向上剤をディーゼルエンジン用燃料油組成物全量に対し100mg/kg添加した。得られたディーゼルエンジン用燃料油組成物の性状を表3に示す。」
・「【0058】
【表3】


そうすると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「【表3】に実施例2として記載されたディーゼルエンジン用燃料油組成物。」
(2) 対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ディーゼル用燃料油組成物」は、本件発明の「軽油燃料組成物」に相当するものである。そして、両者の2環シクロパラフィン類(2環ナフテン類)の含有割合についてみると、本件発明は「11mass%以上」であるのに対して、甲1発明では、2環以上のナフテン類含有量が「22.8容量%」であり、3環以上のナフテン類含有量が「9.3容量%」であるから、それらの差分にあたる「13.5容量%」が、当該含有割合であることが分かる。
そうすると、両者は少なくとも次の点で相違するといえる。
・相違点:軽油燃料組成物(ディーゼル用燃料油組成物)における2環シクロパラフィン類(2環ナフテン類)の含有量について、本件発明は「11mass%以上」と特定しているのに対して、甲1発明は「13.5容量%」である点
(3) 相違点の検討
前記相違点について、特許異議申立人は、おおむね次のように主張する(特許異議申立書の12頁3?6行参照)。
すなわち、甲1発明における2環シクロパラフィン類が13.5容量%であるという構成要件は、軽油燃料組成物を構成する炭化水素の密度が炭化水素間で大幅に異なるものではないから、本件発明の2環シクロパラフィン類が11mass%以上であるという構成要件に対応するものである。
そこで、まず、上記主張について検討する。
当該主張は、「軽油燃料組成物を構成する炭化水素の密度が炭化水素間で大幅に異なるものではない」という技術的事項を前提とするものであるが、これを裏付ける事実は、特許異議申立人が提出した証拠をみても見当たらない。また、そのような技術的事項を裏付ける技術常識の存在を認めるに足りる証拠もない。
そうすると、上記主張は、その前提を欠くものといわざるを得ないから、当該主張を採用することはできない。
ほかに、前記相違点が実質的なものではない、あるいは当該相違点に係る本件発明の技術的事項が容易想到のものである、と認めるに足りる証拠も見当たらない。
そして、本件発明は、2環シクロパラフィン類が11mass%以上であるという技術的事項を採用することにより、本件特許明細書記載の効果(例えば、本件特許明細書の【0025】【表1】の実施例1あるいは実施例2と、比較例1との対比から認められる低温性状に関する効果)を奏するものである。
(4) 小括
以上のとおり、前記相違点は実質的なものであるから、本件発明は、甲1発明(甲1に記載された発明)であるはいえない。また、当該相違点に係る本件発明の技術的事項は容易想到のものであるとはいえないから、本件発明は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
したがって、本件発明に、特許法第29条第1項第3号及び第2項所定の規定違反は認められない。

第6 平成29年12月28日提出の意見書における特許異議申立人の主張(特に、サポート要件に関するもの)について

1 主張の概要
標記意見書において、特許異議申立人は、サポート要件違反について特に詳述し、おおむね次の(i)、(ii)の点について主張しているので、一応、ここで触れておく。
(i)本件発明の軽油燃料組成物中に含まれるシクロパラフィン類、芳香族分、アルキルベンゼン類または2環シクロパラフィン類は、専ら分解系軽油に由来するものであるから、これらを多量に含むことは、当該軽油燃料組成物の大部分が分解系軽油により構成されることを意味することになる。
そうすると、これらを多量に含む本件発明は、分解系軽油を多く含む軽油燃料組成物における問題点(これまで知られている低温性状の改善に用いる添加剤では十分な効果が得られないこと)にかんがみ、これに代わる軽油燃料組成物を提供するという本件発明の課題との関係で合理性を欠くものである。
さらに、これらを多量に含む本件発明は、所定のセタン価を満たさないことから、そもそも軽油燃料組成物として成立し得るものではない。
(ii)本件発明は、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を含む1種又は2種以上の軽油基材を含有することを規定するものであり、例えば、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1%、その他の基材を99%含む軽油燃料組成物を内包するものである。これに対して、本件特許明細書の実施例には、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1種のみ用いた軽油燃料組成物しか開示されていないから、サポート要件を充足しない。

2 前記主張について
(1) 前記(i)の点について
本件発明に係る軽油燃料組成物は、シクロパラフィン類や芳香族分などの分解系軽油に由来する成分を多量に含むものであるが、本件特許明細書に記載された実施例1、2(分解系軽油を含む本件発明に係る軽油燃料組成物)と、比較例1、2(分解系軽油を含む従来の軽油燃料組成物)との比較などからも明らかなように、分解系軽油を含む軽油燃料組成物のなかでも、その構成成分の含有量が、所期の効果を奏するように最適化されたものであるということができる。したがって、本件発明は、分解系軽油を含む従来の軽油燃料組成物に代わるものを提供しているのであるから、本件発明の課題との不整合は何ら存在しない。
また、本件発明は、あくまで「軽油燃料組成物」という枠組みの中に属するものであるから、軽油燃料組成物として成立し得えないものまで、その範疇とするものではない。
以上の点をからみて、当該主張(i)は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(2) 前記(ii)の点について
本件発明は、確かに「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を含有するものであるが、本件発明の解決課題との関係において、当該軽油基材の含有割合にさほどの意味はないというべきである。そして、当該解決課題との関係において、本件発明が重要視しているのは、あくまで、最終的に得られる軽油燃料組成物の構成成分(その含有割合の最適化)であると考えるべきである。この点は、本件特許明細書に、「【0018】本発明の軽油燃料組成物は、最終的に得られる軽油燃料組成物が規定する特定の性状を有するように1種または2種以上の軽油基材を脱硫装置などの2次装置などで処理し、硫黄分10massppm以下にしたものや、硫黄分値に関わらず、1種または2種以上の軽油基材を混合して調製できる。」、「【0007】・・・これに対し、本発明者は、社会情勢の変化に十分対応しながら軽油燃料組成物の低温性能の向上を図るためには、硫黄含有量の低下や分解軽油の混合比率の増加に伴い、ワックスの性状、析出量に加え、低温で析出したワックスの溶解量に寄与する物質、すなわち分解軽油に多く含まれる芳香族や、脱硫装置内で芳香族を水添処理することにより生成するナフテンの組成、含有量にも着目する必要があることを見出した。」、「【0016】・・・本発明者は、この分析結果をふまえ、炭素数19?23のノルマルパラフィン含有量を調整することで良好な低温流動性を確保できることを見出した。また、炭素数19?23のノルマルパラフィンとその他軽油燃料組成物の組成および低温流動性との関係を調べたところ、炭素数19?23のノルマルパラフィン分のみならず、芳香族分やアルキルベンゼン類及びシクロパラフィン類や2環シクロパラフィン類の組成および比率も低温性能に影響を及ぼす事実を見出した。そして、特定の炭素数のワックス量とアルキルベンゼン類を含む芳香族分、2環シクロパラフィン類を含むシクロパラフィン類を適正にコントロールした基材と特定の添加剤を組み合わせることで、社会情勢にあった状況下でも、適正な低温流動性を確保できることを見出した。本発明は、本発明者によるこれら新たな知見に基づくものである。」などと記載されていることからも明らかである。
そうすると、「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」の含有割合と本件発明の解決課題との間に直接的な関係はないというほかないから、本件特許明細書の実施例に「直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材」を1種のみ用いた軽油燃料組成物しか開示されていないことをもって直ちに、サポート要件違反と結論付けることはできない。
したがって、前記主張(ii)を採用することはできない。

第7 結び

以上のとおりであるから、本件特許は、特許法同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとも、同法第29条の規定に違反してされたものであるともいえず、同法第113条第4号又は第2号に該当するとは認められないから、前記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由によっては、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
軽油燃料組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等に使用される軽油燃料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等に使用される軽油燃料組成物は、寒冷地や冬季の使用を考慮し、曇り点や流動点等を指標とした低温性能の調整が行われている。そして、所望の低温性能を得るための多くの手法が提案されている。
【0003】
例えば、特開2008-111082号公報には、炭素数10?14の直鎖状パラフィン全含有量に対する炭素数15?18の直鎖状パラフィン全含有量の重量比を0.5?1.5とし、且つ、炭素数19?25の直鎖状パラフィン全含有量に対する炭素数15?18の直鎖状パラフィン全含有量の重量比を0.5?1.5とし、徐冷時に析出する直鎖状パラフィンの量を減少させ、低温性状の改善に用いる添加剤の効果を高める手法が開示されている。
【0004】
また、特開2005-220330号公報には、徐冷曇り点(X)を-30.0?-15.0℃、軽油組成物中の炭素数18?25のノルマルパラフィン含有量から求めた線形回帰直線の傾き(Y)を0.18以下、上記XとYを変数とする所定の式で表される指標(Z)を1.5以上、組成物中の炭素数が18以上のノルマルパラフィンの含有量を3.4質量%以下とすることで、硫黄分を50質量ppm以下に抑えながら、低温でのフィルタ閉塞を起こすことなく、かつ、実用性能や排出ガス浄化能を満足する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-111082号公報
【特許文献2】特願2005-220330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、社会情勢の変化に伴い、軽油燃料組成物の性状や製法において考慮すべき点も変化してきている。具体的には、硫黄の含有量や、重油需要減少に伴う軽油脱硫装置への分解軽油の混合比率増などが挙げられる。そして、これらの環境変化や燃料油の需要構造の変化に伴い、軽油の低温性能維持に従来技術が使用できない場合があり、たとえば分解系基材を多く含んだものには、これまで知られている低温性状の改善に用いる添加剤(低温流動性向上剤:CFI)では十分な効果が得られない虞がある。そのため、環境の変化に応じた新たな指標が求められている。
【0007】
軽油の低温性能維持に従来技術が使用できない原因の一つとして、その殆どの技術がノルマルパラフィン(ワックス)の性状や析出量などに着目していることが挙げられる。これに対し、本発明者は、社会情勢の変化に十分対応しながら軽油燃料組成物の低温性能の向上を図るためには、硫黄含有量の低下や分解軽油の混合比率の増加に伴い、ワックスの性状、析出量に加え、低温で析出したワックスの溶解量に寄与する物質、すなわち分解軽油に多く含まれる芳香族や、脱硫装置内で芳香族を水添処理することにより生成するナフテンの組成、含有量にも着目する必要があることを見出した。
【0008】
本発明は、硫黄の含有量の低下や、分解軽油の混合比率の増加に対応しながら、車両の燃料用として十分な低温性状を備えた軽油燃料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の軽油燃料組成物は、炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下、シクロパラフィン類が34mass%以上、芳香族分が18vol%以上で硫黄分が10massppm以下であり、EV系低温流動性向上剤を含む。
【0010】
本発明において、EV系低温流動性向上剤とは、エチレン‐不飽和エステル共重合体である。エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA系)が代表例の一つである。EVA系のアセテート基(酢酸基)は炭素数が2つであるが、アセテート基中のメチル基の代わりに適度な炭素数のアルキル基に置換した低温流動性向上剤でも可能である。添加量は50?500mg/Lが好ましく、100?500mg/Lであることが特に好ましい。
【0011】
アルキルベンゼン類が10mass%以上であり、また、2環以上のシクロパラフィン類が11mass%以上である。
【0012】
なお、本発明において、シクロパラフィン類とは脂環式炭化水素を意味し、1環、2環、3環のものを含み、さらにアルキル基で置換したものも含まれるものとする。また、2環シクロパラフィン類とは2環の脂環式炭化水素を意味し、アルキル基で置換したものも含まれるものとする。
【0013】
また、本発明において、アルキルベンゼン類とは1環芳香族をアルキル基で置換したものであり、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1-エチル-3-メチルベンゼン、トリメチルベンゼンの誘導体、1-エチル-3,5-ジメチルベンゼン、1-メチル-4-プロピルベンゼン、2-メチル-1,3-ジメチルベンゼンなどがあるが、これらに限定されるわけではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硫黄の含有量の低下や、分解軽油の混合比率の増加に対応しながら、車両の燃料用として十分な低温性状を備えた軽油燃料組成物を提供することができる。
【0015】
軽油燃料組成物の低温性能には、ワックス分と称されるノルマルパラフィン分が大きく影響することは広く知られるところであるが、本発明者は、このノルマルパラフィンのなかでも、ディーゼルエンジンへの燃料供給系に設置されているフィルタに析出し目詰まりを生じさせるものに着目し、その組成に関する分析を行った。分析の結果を図1に示す。なお、分析対象としたワックスの採取にあたっては、まず、軽油燃料組成物を25℃の恒温槽に入れ、当該軽油燃料組成物について予め測定した曇り点より5.0℃高い温度まで急冷し、その後-5.0℃まで1.0℃/hで徐冷した。そして、析出したワックスを、吸引ろ過装置を使用して採取した。ワックス採取にはガラス繊維濾紙(GFシリーズ:GF/A:1.6μm)を使用した。更に、採取されたワックス中に残った軽油燃料組成物は、2-ブタノンを使用して除去した。得られたワックス分は、ガスクロマトグラフ法により分析した。
【0016】
図1に示すように、軽油中のノルマルパラフィンはC9からC30まで幅広く分布しC16からC18にピークを持つ。一方、目詰まりを生じさせるワックスの炭素分布は主に19?23が大部分を占めており、本発明者は、この分析結果をふまえ、炭素数19?23のノルマルパラフィン含有量を調整することで良好な低温流動性を確保できることを見出した。また、炭素数19?23のノルマルパラフィンとその他軽油燃料組成物の組成および低温流動性との関係を調べたところ、炭素数19?23のノルマルパラフィン分のみならず、芳香族分やアルキルベンゼン類及びシクロパラフィン類や2環シクロパラフィン類の組成および比率も低温性能に影響を及ぼす事実を見出した。そして、特定の炭素数のワックス量とアルキルベンゼン類を含む芳香族分、2環シクロパラフィン類を含むシクロパラフィン類を適正にコントロールした基材と特定の添加剤を組み合わせることで、社会情勢にあった状況下でも、適正な低温流動性を確保できることを見出した。本発明は、本発明者によるこれら新たな知見に基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ワックス中のノルマルパラフィンの炭素数分布を、軽油燃料組成物中のノルマルパラフィンの炭素数分布との比較において示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の軽油燃料組成物は、最終的に得られる軽油燃料組成物が規定する特定の性状を有するように1種または2種以上の軽油基材を脱硫装置などの2次装置などで処理し、硫黄分10massppm以下にしたものや、硫黄分値に関わらず、1種または2種以上の軽油基材を混合して調製できる。
例えば、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分や軽油留分及びそれらを脱硫した脱硫灯油や脱硫軽油を用いることができる。また常圧蒸留装置から得られる軽油留分と分解軽油を適切な割合で混合、脱硫処理して得られた硫黄分10massppm以下の軽油燃料組成物も用いることができる。なお、分解軽油とは、直接脱硫装置から得られる直脱軽油や、間接脱硫装置から得られる間接脱硫軽油、或いは、流動接触分解装置から得られるライトサイクルオイルなど重油のアップグレーディングプロセスから留出する軽油留分をいい、近年の社会的要請に従えば、それの混合比率はできるだけ高くすることが好ましい。
更に、これらを色相改善のために水素化処理した軽油も用いることができる。すなわち、脱硫装置処理後の脱硫軽油中に炭素数15?23のノルマルパラフィン類、シクロパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン、アルキルベンゼン類が適正量になるように、脱硫装置原料種類や比率を調整したり、脱硫装置内の反応で消滅、生成するこれらの物質を最終製品で適正範囲内になるように種々の脱硫条件を調整して得られたものを使用することができる。
更にまた、脱硫後の軽油が炭素数15?23のノルマルパラフィン類、シクロパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン、アルキルベンゼン類の適正量を満たす、満たさないに関わらず、石油精製2次装置から留出する軽油相当油や、水素化分解軽油、フィッシャートロップシュ合成油などを基材として用いて、上記適正量を満たすものにすることも可能である。
【0019】
炭素数19?23のノルマルパラフィン分は7.5mass%以下である。それ以上になると、低温下の始動時においてディーゼルエンジンへの燃料供給経路中のフィルタの目詰まりを起こしやすいものになるなど、低温性状の悪化を招くため好ましくない。7.0mass%以下がより好ましく、6.0mass%以下が更に好ましい。ただし、この炭素数19?23のノルマルパラフィン分は、低温性状向上の観点からできるだけ少ないことが好ましい反面、セタン指数の観点から、4.0mass%以上、好ましくは5.0mass%以上とする必要がある。
【0020】
シクロパラフィン類は34mass%以上である。35mass%以上がより好ましく、36mass%以上が更に好ましい。また、2環シクロパラフィン類は11mass%以上であり、12mass%以上が好ましく、より好ましくは13mass%以上である。
【0021】
芳香族分は18vol%以上であり、20vol%以上が好ましく、23vol%以上がより好ましい。また、アルキルベンゼン類は10mass%以上が好ましく、11mass%以上がより好ましく、15mass%以上がさらに好ましい。ただし、芳香族分は、多すぎるとセタン価が低下し、自動車排ガスの粒子状物質が増加するなどの不具合を生じるため、28vol%以下が好ましい。
【0022】
硫黄分は、環境への影響を考慮して取り決められたJIS K 2204規格を満たすもの、すなわち、10mass%以下とする必要がある。
【0023】
本発明の軽油燃料組成物は、EV系低温流動性向上剤を添加することにより、基材の低温性状を大きく改善することができる。なお、EV系低温流動性向上剤としては、たとえば、キャリオールKA-701(三洋化成社製)、R570(インフィニアム社製)が好適である。また、必要に応じて、酸化防止剤、燃料供給ポンプ部品等の磨耗を防止するため潤滑性向上剤など、その他の添加剤を添加してもよい。
【実施例】
【0024】
「実施例1」
沸点範囲181?371℃の直留軽油留分が85vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145?372℃のライトサイクルオイルが10vol%および沸点範囲が170?365℃の間接脱硫装置から留出する間脱軽油が5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.0、水素分圧5MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、後述のEV系低温流動性向上剤(CFI1)を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「実施例2」
沸点範囲181?362℃の直留軽油留分が90vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145?374℃のライトサイクルオイルが10vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「比較例1」
沸点範囲181?362℃の直留軽油留分が98vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145?374℃のライトサイクルオイルが2vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「比較例2」
沸点範囲181?376℃の直留軽油留分が95vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145?372℃のライトサイクルオイルが5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.0、水素分圧5MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た軽油に、上記CFI1を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「比較例3」
実施例1で得た軽油に、後述の界面活性剤系低温流動性向上剤(CFI2)を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「比較例4」
実施例1で得た軽油に、後述のWAX分散剤系低温流動性向上剤(CFI3)を200massppm添加した軽油燃料組成物。
「CFI1」
R570(インフィニアム社製)
「CFI2」
FPD-779N(東邦化学社製)
「CFI3」
キャリオールFD-391(三洋化成社製)
【0025】
【表1】

【0026】
なお、表1に示す各性状は以下に示すものである。
「密度(@15℃)」
JIS K 2249「原油及び石油製品-密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」により測定される15℃における密度。
「動粘度(@30℃)」
JIS K 2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される30℃における動粘度。
「硫黄分」
JIS K 2541-2「原油及び石油製品-硫黄分試験方法 第2部:微量電量滴定式酸化法」により得られる硫黄分。
「引火点」
JIS K 2265-3「引火点の求め方-第3部:ペンスキーマルテンス密閉法」により得られる引火点。
「10%残油の残留炭素分」
JIS K 2270「原油及び石油製品-残留炭素分試験方法」により得られる10%残油の残留炭素分。
「セタン指数」
JIS K 2280「石油製品-燃料油-オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法 8. 4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」により測定されるセタン指数を意味する。
「蒸留性状」
JIS K 2254「石油製品-蒸留試験方法」により得られる蒸留性状。
「飽和分合計」
JPI-5S-49-97「石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフ法」により測定されるパラフィン分。
「芳香族分合計」
JPI-5S-49-97「石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフ法」により測定される1環芳香族分と2環芳香族分と3環以上芳香族炭化水素分との総和。
「C19-23ノルマルパラフィン分」
ASTM D 2887「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Fraction by Gas Chromatography」に準拠したガスクロマトグラフ法を用い、得られたクロマトグラムから各炭素数毎の炭化水素含有量を算出することによって得た。すなわち、炭素数の異なるノルマルパラフィンの混合物を標準物としてリテンションタイムを調べておき、ノルマルパラフィンのピーク面積値からノルマルパラフィンの含有量を求め、炭素数N-1のノルマルパラフィンによるピーク?炭素数Nのノルマルパラフィンによるピークの間にあるピークのクロマトグラム面積値の総和を炭素数Nのイソパラフィン含有量として求めた。ガスクロマトグラフィの検知器は水素炎イオン化型検出器(FID)であることから、測定感度はパラフィンの炭素数に比例する。そこで、この感度を考慮して面積値から含有モル比を求め、最終的に各質量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラフ法におけるカラムの種類は、HP5(長さ:30m,内径:0.32mm,液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下のとおりである。
カラム槽昇温条件:35℃(5分)→10℃/分(昇温)→320℃(11.5分)
試料気化室条件:320℃一定 スプリット比150:1
検出器部:320℃
「流動点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる流動点。
「曇り点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる曇り点。
「目詰まり点」
JIS K 2288「石油製品-軽油-目詰まり点試験方法」によって得られる目詰まり点。
「シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類」
シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類の分析には、Agilent Technology社製HP-6890N型FI-MS検出器付きガスクロマトグラムおよびJEOL社製JMS-T100GC飛行時間型質量分析計からなるGCシステムを用い、ノルマルパラフィン標準試料の分析強度にて補正グラフを作成し、測定したデータを補正グラフにて補正後、全体の強度を100mass%として各重量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラム法におけるカラムの種類は、DB-5(長さ:30m、内径:0.25mm、液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下の通りである。
カラム槽昇温条件:30℃(5分)→20℃/分(昇温)→300℃(27分)
試料気化室条件:300℃一定 スプリットレス
検出器部:250℃
溶媒:ヘキサン
溶媒待ち時間:3分
収集範囲:25.00m/zから600.00m/z
【0027】
表1において、実施例1と比較例1との比較から、炭素数19?23のノルマルパラフィン分が少なく、シクロパラフィンを多く含む場合は、EV系低温流動性向上剤(CFI1)の添加による低温性状の改善効果の大きくなることが確認された。また、実施例1と比較例2、3より改善効果が大きい低温流動性向上剤はEV系であり、界面活性剤系(CFI2)やワックス分散剤系(CFI3)の添加では、大きな改善のないことが確認された。更に、実施例1と実施例2から、芳香族を多く含む場合にも同様に低温性状の改善効果が大きいことが確認された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または2種以上の軽油基材とEV系低温流動性向上剤とからなり、
直留軽油に分解軽油を混合し水素化脱硫した軽油基材を含有し、
炭素数19?23のノルマルパラフィン分が4.0mass%以上7.5mass%以下、シクロパラフィン類が34mass%以上、芳香族分が18vol%以上、アルキルベンゼン類が10mass%以上、2環シクロパラフィン類が11mass%以上、及び硫黄分が10massppm以下であることを特徴とする軽油燃料組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-01 
出願番号 特願2011-273324(P2011-273324)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C10L)
P 1 651・ 537- YAA (C10L)
P 1 651・ 113- YAA (C10L)
P 1 651・ 536- YAA (C10L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森 健一磯貝 香苗柴田 啓二  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 日比野 隆治
井上 能宏
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6057509号(P6057509)
権利者 昭和シェル石油株式会社
発明の名称 軽油燃料組成物  
代理人 小森 栄斉  
代理人 宮部 岳志  
代理人 宮部 岳志  
代理人 小森 栄斉  

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