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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B22D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
管理番号 1339143
異議申立番号 異議2016-700739  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-15 
確定日 2018-02-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5869536号発明「鋳造製品の製造データ管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5869536号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、〔4-5〕について訂正することを認める。 特許第5869536号の請求項1-5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5869536号の請求項1-5に係る特許についての出願は、平成28年1月15日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 浅野文雄(以下「申立人A」という。)より請求項1-5に対して特許異議の申立てがされ、特許異議申立人 岡林茂(以下「申立人B」という。)より請求項1-5に対して特許異議の申立てがされ、同年10月18日付けで取消理由が通知され、同年12月20日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年2月27日に申立人Aから意見書が提出され、同日に申立人Bから意見書が提出され、同年8月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年10月5日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年11月10日に申立人Aから意見書が提出され、同年11月13日に申立人Bから意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成29年10月5日の訂正請求による訂正の内容は、以下のア-カのとおりである。
なお、平成28年12月20日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

ア 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に「上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって前記鋳造製品が鋳込まれるキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」と記載されているのを「上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に訂正し、
「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」と記載されているのを「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」に訂正し、
「前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」と記載されているのを「前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」に訂正し、
「前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」と記載されているのを「前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」に訂正するものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2に「鋳造製品の各種製造データをデータべースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と」、「前記第1データ取得工程及び前記第2データ取得工程において取得した前記各製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」と記載されているのを削除して請求項1を引用し、
「前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」と記載されているのを「前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」に訂正するものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3に「砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」と記載されているのを「複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に訂正し、
「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」と記載されているのを「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における複数の前記工程において前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」に訂正し、
「前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」と記載されているのを「前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」に訂正し、
「前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」と記載されているのを「前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」に訂正し、
「前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」と記載されているのを「前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」に訂正するものである。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4に「砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程」と記載されているのを「複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程」に訂正し、
「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」と記載されているのを「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」に訂正し、
「前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し」と記載されているのを「前記造型工程において、前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し」に訂正し、
「前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し」と記載されているのを「前記溶湯製造工程において、前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し」に訂正するものである。

オ 訂正事項5
訂正事項5は、訂正前の請求項5に「前記中子毎に中子シリアル番号を付与し」と記載されているのを「前記中子製造工程において、前記中子毎に中子シリアル番号を付与し」に訂正するものである。

カ 訂正事項6
訂正事項6は、訂正前の明細書の段落【0007】に「第1データ取得工程は、上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって前記鋳造製品が鋳込まれるキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における砂型の製造データを取得する。」と記載されているのを「第1データ取得工程は、上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における砂型の製造データを取得する。」に訂正し、
「第2データ取得工程は、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における溶湯の製造データを取得する。」と記載されているのを「第2データ取得工程は、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における溶湯の製造データを取得する。」に訂正し、
「砂型の製造データを対応する各鋳造製品に関連付けてデータベースに登録して管理する。」と記載されているのを「砂型の製造データを砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、砂型の製造データを対応する各鋳造製品に関連付けてデータベースに登録して管理する。」に訂正し、
「溶湯の製造データを鋳造される全ての各鋳造製品に対応させつつ関連付けてデータベースに登録して管理する。」と記載されているのを「溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と造型シリアル番号とを結びつけることによって、溶湯の製造データを鋳造される全ての各鋳造製品に対応させつつ関連付けてデータベースに登録して管理する。」に訂正するものである。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1
訂正事項1について、訂正箇所を順次検討する。

(ア)「鋳造製品の各種製造データをデータべースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって前記鋳造製品が鋳込まれるキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」を「鋳造製品の各種製造データをデータべースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」とする訂正は、「砂型」に対して、複数の鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成されることを具体的に特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0014】には、「上型11A及び下型11Bは同一形状のキャビティ14A、14Bが2個ずつ並列状態で形成さている。」と記載されていることから見て、当該(ア)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)「溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」を「溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」とする訂正は、一度に出湯する量が、複数の砂型に注湯する量であることを具体的に特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0022】には、「出湯工程では電気炉内の溶湯を3回に分けて処理取鍋に出湯する。」と記載され、段落【0025】には、「処理取鍋から注湯取鍋に溶湯を移し、注湯取鍋内の溶湯を砂型11の湯口からキャビティ内に流し込む。この際、注湯取鍋内の溶湯を3個の砂型11に分けて流し込む。」と記載されていることから見て、当該(イ)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)「前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」を「前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」とする訂正は、データベースへの登録における「関連付け」が、「造型シリアル番号」と「製品シリアル番号」とを結び付けることによって行われることを特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0015】には、「この造型工程10では、図3(B)に示すように、抜型工程において、砂型11毎、より詳しくは、組み合わされる上型11A及び下型11Bの1組毎に造型シリアル番号(ZB-1、ZB-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、造型シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、抜型工程までに第1データ取得工程において取得した砂型11毎の製造データを造型シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。」と記載され、段落【0018】には、「また、中子収め工程において、図5に示すように、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、後述する中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。」と記載されていることから見て、当該(ウ)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(エ)「前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」を「前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」とする訂正は、データベースへの登録における「関連付け」が、「溶解シリアル番号」と「造型シリアル番号」とを結び付けることによって行われることを特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0023】には、「この溶湯製造工程30では、図3(C)に示すように、出湯工程において、溶解シリアル番号(S-1-1、S-1-2、S-1-3、S-2-1、S-2-2、S-2-3、…)を付与する。つまり、図1に示すように、溶解シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、溶解シリアル番号に第2データ取得工程において取得した出湯毎の溶湯の製造データを結び付けてデータベース1に登録する。」と記載され、段落【0025】には、「注湯工程40において、図5に示すように、造型シリアル番号と溶解シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。これによって、製品シリアル番号、造型シリアル番号、中子シリアル番号、及び溶解シリアル番号がデータベース1上で結び付けられることになる。」と記載されていることから見て、当該(エ)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(オ)以上より訂正事項1は、願書に添付した明細書の記載に基づき、明細書に記載された事項の範囲内において、さらに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2
訂正事項2により、請求項2は請求項1を引用する形式となった。そこで、引用先の請求項1に記載された事項を含めて、訂正事項を順次検討する。

(ア)「鋳造製品の各種製造データをデータべースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と」を削除し、訂正しようとする請求項1の記載の引用に換える訂正は、要するに訂正前に「鋳造製品の各種製造データをデータべースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と」とされていたものを、上記ア(ア)、(イ)の内容、すなわち「鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と」に訂正しようとするものであるから、上記ア(ア)、(イ)と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上述のとおり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)「前記第1データ取得工程及び前記第2データ取得工程において取得した前記各製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」を削除し、訂正しようとする請求項1の記載の引用に換える訂正は、要するに訂正前に「前記第1データ取得工程及び前記第2データ取得工程において取得した前記各製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」とされていたものを、上記ア(ウ)、(エ)の内容、すなわち「前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」に訂正しようとするものであるから、上記ア(ウ)、(エ)と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上述のとおり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)「前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」を「前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」とする訂正は、データベースへの登録における「関連付け」が、「中子シリアル番号」と「製品シリアル番号」とを結び付けることによって行われることを特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0020】には、「この中子製造工程20では、図3(A)に示すように、焼成工程において、中子21毎に中子シリアル番号(N-1、N-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、中子シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、中子21毎の焼成温度を第3データ取得工程において取得し、中子シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。」と記載され、段落【0021】には、「塗装乾燥工程及び検査工程はパリ取り工程より後に実行されるため、これら工程において取得された各種データは、データを取得する際に中子シリアル番号に結び付けられてデータベースに登録される。」と記載され、段落【0018】には、「また、中子収め工程において、図5に示すように、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、後述する中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。」と記載されていることから見て、当該(ウ)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(エ)以上より訂正事項2は、願書に添付した明細書の記載に基づき、明細書に記載された事項の範囲内において、さらに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3

訂正事項3について訂正箇所を順次検討する。
(ア)「砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」を「複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に訂正し、
「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」を「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における複数の前記工程において前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」に訂正し、
「前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」を「前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」に訂正し、
「前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」を「前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」とする訂正は、上記ア(ア)から(エ)を含む訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上述のとおり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)「前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」を「前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理する」とする訂正は、上記イ(ウ)の訂正と同質の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上述のとおり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)以上より、訂正事項3は、明細書に記載された事項の範囲内において、さらに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4
訂正事項4について、訂正箇所を順次検討する。
(ア)「砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程」を「複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程」に訂正し、
「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、その溶湯を出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」を「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」とする訂正は、上記ア(ア)、(イ)と同様の訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上述のとおり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)「前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し」を「前記造型工程において、前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し」に訂正し、
「前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し」を「前記溶湯製造工程において、前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し」とする訂正は、
各々シリアル番号を付与するタイミングについて、「造型工程において」砂型毎に造型シリアル番号を付与すること及び「溶湯製造工程において」溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与することを更に特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0015】には、「この造型工程10では、図3(B)に示すように、抜型工程において、砂型11毎、より詳しくは、組み合わされる上型11A及び下型11Bの1組毎に造型シリアル番号(ZB-1、ZB-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、造型シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、抜型工程までに第1データ取得工程において取得した砂型11毎の製造データを造型シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。」と記載され、段落【0023】には、「この溶湯製造工程30では、図3(C)に示すように、出湯工程において、溶解シリアル番号(S-1-1、S-1-2、S-1-3、S-2-1、S-2-2、S-2-3、…)を付与する。つまり、図1に示すように、溶解シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、溶解シリアル番号に第2データ取得工程において取得した出湯毎の溶湯の製造データを結び付けてデータベース1に登録する。」と記載されていることから見て、当該(イ)の訂正事項は願書に添付した明細書の記載の範囲内の事項であるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(ウ)以上より訂正事項4は、願書に添付した明細書の記載に基づき、明細書に記載された事項の範囲内において、さらに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項5
訂正事項5について訂正箇所を順次検討する。

(ア)「前記中子毎に中子シリアル番号を付与し」を「前記中子製造工程において、前記中子毎に中子シリアル番号を付与し」とする訂正は、中子毎への中子シリアル番号の付与が、「前記中子製造工程において」行われることを特定した訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記イ(ウ)と同様、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)以上より訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内において、さらに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ 訂正事項6
訂正事項6は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、上記訂正事項1と同様、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項4及び5は、請求項5が訂正の請求の対象である請求項4の記載を引用する関係にあって、請求項5は、訂正事項4によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、請求項4及び5は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項4に係る訂正の請求は、一群の請求項に対してなされたものと認められる。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1-6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2、3、[4-5]について訂正を認める。

3.本件発明
上記訂正請求により訂正された請求項1-5に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
を備えており、
前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項2】
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、
前記造型工程における前記砂型のキャビティ内に中子を組み込む際、前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする請求項1に記載の鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項3】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程と、
を備えており、
前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記砂型に注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記造型工程における前記砂型のキャビティ内に中子を組み込む際、前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項4】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
を備えており、
前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し、この造型シリアル番号に前記第1データ取得工程において前記砂型毎に取得した前記砂型の製造データを結び付け、
前記造型工程において、前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し、この溶解シリアル番号に前記第2データ取得工程において前記出湯毎に取得した前記溶湯の製造データを結び付け、
前記溶湯製造工程において、前記鋳造製品毎に製品シリアル番号を付与し、この製品シリアル番号と前記造型シリアル番号と前記溶解シリアル番号とを結び付けることによって、前記砂型の製造データ及び前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項5】
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子毎の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、
前記中子製造工程において、前記中子毎に中子シリアル番号を付与し、この中子シリアル番号に第3データ取得工程において前記中子毎に取得した前記中子の製造データを結び付け、
前記鋳造製品毎に製品シリアル番号を付与し、この製品シリアル番号と前記中子シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする請求項4記載の鋳造製品の製造データ管理方法。」

4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?5に係る特許に対して平成29年8月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

請求項1-5に係る特許について
請求項1-5に係る特許は、刊行物1から容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1-5に係る特許は、取り消されるべきものである。

刊行物1:「近未来における鋳造技術を考える技術確習会テキスト」、
公益社団法人日本鋳造工学会、2011年10月15日、
p.41-61(申立人Aによる特許異議申立の甲第1号証、申立人B
による特許異議申立の甲第11号証)

5.刊行物の記載
(1)刊行物の整理
申立人A及び申立人Bのそれぞれが提出した甲号証を合わせて整理すると次のとおりである。
なお、申立人Bの提出した甲第10号証は、本件特許公報である。
刊行物1 :「近未来における鋳造技術を考える技術確習会テキスト」、
公益社団法人日本鋳造工学会、2011年10月15日、
p.41-61(申立人Aによる特許異議申立の甲第1号証、
申立人Bによる特許異議申立の甲第11号証)
刊行物2 :特開2000-15395号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第1号証)
刊行物3 :特開2010-249567号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第2号証)
刊行物4 :特開2003-186519号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第3号証)
刊行物5 :特開平6-315762号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第4号証)
刊行物6 :特開2004-334631号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第5号証)
刊行物7 :特開平6-315757号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第6号証)
刊行物8 :特開2001-179399号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第7号証)
刊行物9 :特開2002-307131号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第8号証)
刊行物10:特開平11-285780号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第9号証)
刊行物11:特開2010-234398号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第12号証)
刊行物12:特開平8-174140号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第13号証)
刊行物13:特開平11-90580号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第14号証)
刊行物14:特開2013-141697号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第15号証)
刊行物15:特開2007-921号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第16号証)
刊行物16:特公昭58-8939号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第17号証)
刊行物17:特開平6-192633号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第18号証)
刊行物18:特開平8-257686号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第19号証)
刊行物19:特開平10-323749号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第20号証)
刊行物20:特開2001-321924号公報
(申立人Bによる特許異議申立の甲第21号証)
刊行物21:千々岩健児、「鋳物の現場技術」、初版第26刷、
日刊工業新聞社、2013年6月28日、p.2,3,172,173
(申立人Bによる特許異議申立の甲第22号証)
刊行物22:堤信久、外9名、「鋳造技術講座14 鋳造工場設備」、
初版、日刊工業新聞社、1970年1月25日、p.167-173
(申立人Bによる特許異議申立の甲第23号証)
刊行物23:「平成21年度戦略的基盤技術高度化支援事業
『固体マーキングによる鋳鉄の革新的品質保証システム開発』
研究開発成果等報告書」、財団法人素形材センター、2010
年3月、p.1-25(申立人Bによる特許異議申立の甲第24号証
)

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
(ア)55頁左欄「1.はじめに」の11行?20行
「全数管理の観点より,ダクタイル鋳鉄の多数個取りを基本とする弊社の鋳鉄生型造型ラインにおき,各部品の製造条件自動計測システムと,部品に識別Noを刻印するマーキングロボットを開発し,製品個体と製造/品質データとの紐付けが可能なトレーサビリティ・システムを構築した。
又取得したデータをデータ・マネージメント手法により,不良原因を明確化し,大幅に不良を低減する活動に取り組んだ。
この新しいやり方を図1に示す。」

(イ)55頁右欄「2.製造条件の自動計測システム」の1?9行
「鋳鉄生型造型ラインに対して,製造条件自動計測システムと,各部品に識別Noを刻印するマーキングロボットを開発し,製品個体と製造/品質データとの紐付けが可能なトレーサビリティ・システムを構築した。
まず,溶解?造型各工程の製造条件自動計測システムを開発し,可能な限り製造データの見える化を計った。
図2に主要な計測項日を示す。」
「図2.製造条件の主要自動計測項目」
「1.溶解,出湯」工程では「出湯時刻」「出湯重量」「成分分析値」、
「2.球状化」工程では「球状化材添加量」「同左添加率」「接種材添加量」、
「3.配湯,2次接種」工程では「配湯重量」「接種材添加量」「成分分析値」、
「4.注湯」工程では「注湯温度」「フェーディング時間」「注湯作業者」、
「5.混砂」工程では「CB値」「水分」「圧縮強度」、
「6.造型」工程では「造型時刻」「上型圧縮率」「下型圧縮率」、
の項目が記載されている。

(ウ)55頁右欄「2.製造条件の自動計測システム」の12?15行
「溶解工程においては,従来バネ式クレーンスケールで読み取っていた出湯重量を,無線式クレーンスケールに変更し,デジタル数値の読み取りによる計量と,重量データの記録を可能とした(図3)。」

(エ)56頁右欄の2?7行
「砂の特性値については,従来から定期的に計測している水分,温度等のデータが自動的に伝送,記録されるシステムを開発した。
また,鋳型の造型条件については,造型機制御盤のシーケンサから必要なデータを取り出し,上・下型の砂圧縮率を求め,データを伝送,記録した。」

(オ)57頁左欄「4.個体マーキングロボット」の6?18行
「マーキングするタイミングと方法を検討した結果,造型直後の鋳型表面にマーキングし,それを製品に転写する方法を採用した。
図9に開発したマーキングロボットの主仕様を示す。
4軸の水平多間接ロボットに,マーキングへッドを持たせる構造とした。
造型直後の鋳型表面へのマーキングパターンは砂の崩れの少ない、Φ1程度ピンで成形したドットパターンとした。
製品識別番号の桁数は999までマーキングできるよう3桁とし,4ケのドットで1桁を構成することにより,2進法のパターンで0?9の数字と対応させた。」

(カ)57頁右欄「5.トレーサビリティの確保」の1?2行
「トレーサビリティを確保するためには,マーキングした部品とその製造条件を紐付けする必要がある。」

(キ)57頁右欄「5.1製造条件データの一元化」の3?8行
「データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするときキーになる因子を設定した。
例えば,球状化処理工程のときは球状化トリべNoをキー因子に設定する。それにより,球状化トリべNoを入力すれば,球状化処理工程の製造状件は全て検索できる。」

(ク)57頁右欄「5.2部品と製造条件の紐付け法」の1?13行
「溶湯関連データと鋳型関連データの接点である注湯工程実績表のデータを利用し,部品と製造条件を紐付けする。
新しい品番を生産開始する時には,マーキングロボットはシリアルNo.1からマーキングを開始し,その鋳枠が注湯ラインに到達,注湯されると,注湯枠No.1とカウントされ,注湯データが注湯実績表に記載される。
前述の製造工程キー因子である,注湯枠No.1の製造条件が分かるので,シリアルNo.1と刻印された部品の造型,砂,注湯条件を特定することが可能となる。以上の考え方を弊社生型造型ラインのレイアウト図に示したものが図11である。」

(ケ)58頁左欄「図11.部品シリアルNoと製造条件データの紐付け」


「新しい品番スタート」に関して、以下の事項が看取できる。
「1.造型機」において「(1)枠目から造型データ記録開始」することにより、「造型枠順」を介して「(5)造型条件、(6)砂特性データ」が紐付けされること、
「2.マーキングロボット」において「シリアルNo(1)から刻印開始」することにより、「注湯枠順」を介して「(4)注湯条件」が紐付けされ、「(4)注湯条件」には、「配湯(注湯)トリべNo」が含まれること、
「3.注湯」に伴い「(1)枠目から注湯記録開始」することにより、「配湯トリべNo」を製造条件キーワードとして「(3)(2)(1)溶湯条件」が紐付けされること。

(コ)58頁左欄「6.1データ・マネジメント手法」の1?4行
「鋳造工場では,図12のように,ひとつのプロセス(工程)だけを見ていても不十分で,工程がつながっていることを艦み,製品1個ずつ,その製品の生まれの履歴をすべて把握し、プロセス連鎖の中での『ゆらぎ』が一定の管理限界の中に入るよう管理していかなければならない。」

(サ)58頁右欄「6.2データ・マネジメントの実施事例」の6?8行
「本トレーサビリティ・システムにより,網羅的に計測,一元化した製造データに,生産計画データ,品質データを加え,データベース化した(図13)。データべース内では,個々の製品はその製造/品質データと紐付け可能になっている。」

(シ)58頁右欄「図13.データベース構成」


「1-1球状化工程」「1-2配湯工程」「1-3注湯工程」「1-4砂データ」「1-5造型工程」の各製造条件データが記載されており、「1-2配湯工程」には「(1)トリベNo」が示され、「1-3注湯工程」には「(9)トリベNo」及び【鋳枠毎データ】として「(2)注湯No」が示され、「1-5造型工程」には「(2)造型No」が示されている。

(ス)59頁左欄の1?3行
「アウトプットデータは判別分析が出来る様,左端列に部品識別No,中央にその部品の製造条件,右端列に良,不良の品質情報で構成した。」

(セ)「図14.判別分析用データの自動アウトプット例」

生産日,直データ、部品データ、元湯データ、球状化処理データ、注湯処理データ、注湯データ、砂データ、造型データが記載されている。
図14中に貼付された「型番:6ケ/枠の区別」として示された配置図中のN?Rの記号と、同じく図14中に白地で四角いテキスト枠として重ね表示された説明文、及び、図表中の部品データの記載を総合すると、N?Rの各型番の製造データを鋳枠ごとに同一の「部品No」として記録することが、看取できる。

以上の記載によれば、以下の事項が認識できる。

上記(ア)(イ)(サ)から、「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システム」が認識できる。

上記(セ)から、一つの鋳枠に6つの型番が存在することが認識できる。

上記(イ)(エ)(シ)から、「上型と下型とを製造する、混砂と造型において、CB値、水分、圧緒強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する」ことが認識できる。

上記(シ)を参照することにより、ダクタイル鋳鉄の多数個取りを基本とする鋳鉄生型造型ラインに係るものであることが理解できるから、上記(ア)?(ウ)(シ)から、「鋳鉄の溶湯を製造する溶解,出湯、球状化、配湯,2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する」ことが認識できる。

上記(ク)の注湯枠No.1と製品シリアル番号No.1との関係から、「部品シリアルNo」と「枠順」が同一の番号とされることが理解できる。また、上記(キ)?(ケ)を参照することにより、造型工程では、図11(5)造型条件の造型枠順がキー因子に設定されることが理解できる。したがって、上記(オ)(キ)(ケ)(シ)から、「造型直後の鋳型表面に製品識別番号(以下「部品シリアルNo」という。)をマーキングして製品に転写し、データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするときキーになるキー因子を設定しておく」こと、及び、「鋳型関連データは造型枠順に紐付けする」ことが認識できる。

また、上記(キ)?(ケ)を併せて参照することにより、注湯工程では注湯枠順がキー因子に設定されることが理解できるから、上記(ク)(ケ)(サ)(シ)から、「溶湯関連データは配湯トリべNoに紐付けし、その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付けし、これにより各キー因子を枠順に紐付けすることで、部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化する」ことが認識できる。

したがって、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システムであって、
一つの鋳枠に6つの型番を有する上型と下型とを製造する、混砂と造型において、CB値、水分、圧緒強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する工程と、
鋳鉄の溶湯を製造する溶解,出湯、球状化、配湯,2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する工程と、
を備えており、
造型直後の鋳型表面に部品シリアルNoをマーキングして製品に転写し、
データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするときキーになるキー因子を設定しておき、鋳型関連データは造型枠順に紐付けし、溶湯関連データは配湯トリべNoに紐付けし、
その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付けし、これにより各キー因子を枠順に紐付けすることで部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化したトレーサビリティ・システム。」
ここで、上記「トレーサビリティ・システム」に係る引用発明は、主要な発明特定事項を工程により特定したものであるから、方法発明である。

イ 刊行物2
刊行物2には、「本発明は鋳型刻印方法及び鋳造ラインに関する。本発明は、たとえば、シェル中子やコールド中子等の中子、あるいは、主型に、文字、図形、模様等といった識別符号を彫り込む際に利用できる。」技術が記載されている(段落0001)。

ウ 刊行物3
刊行物3には、「IDタグに記録する記録情報は、それぞれのIDタグの固有識別符号以外に、例えば次の情報が挙げられる。製造段階は溶解工程、鋳造工程、焼鈍工程、原管検査工程、塗装工程、出荷検査工程に分けられ、それぞれの工程で管理が必要なデータは以下の通りである。溶解工程では取鍋ロットナンバー、溶湯成分が挙げられる。鋳造工程では鋳造ロットナンバー、鋳造年月日時間、機械ナンバー、個体ナンバー、継手形式が挙げられる。焼鈍工程では個体ナンバー、温度、速度が挙げられる。原管検査工程では、個体ナンバー、水圧試験や管厚、質量、各部寸法の各検査データ、引張り試験などの材質試験の試験データが挙げられる。塗装工程では、個体ナンバー、塗装処理日、内外面塗装の仕様が挙げられる。出荷検査工程では個体ナンバー、検査日、担当者が挙げられる。流通段階においては、管理業者名又は管理業者の識別符号、保管場所名又は保管場所の識別符号、在庫情報、出荷予定日、出荷予定先、保管日数、出荷年月日などが挙げられる。埋設を行う事業体の埋設時においては、埋設年月日、埋設作業請負業者、埋設箇所、土被り等が挙げられる。これらの情報を、上記IDタグに共通の様式で記録しておくことで、製造者と流通者と事業者が共有する総合的な管理データベースを設置することなく、竣工された埋設鋳造管のデータを事業者のみが管理するデータベースに集めて利用することができる」技術が記載されている(段落0015)。

エ 刊行物4
刊行物4には、「組付工程では、様々なところで製造された部品45を組み立てることでユニット製品60を製造する。組付工程入力端末18は、この組付工程に対応して設けられた端末であり、図4に示した製品レコード70の入力に用いられる。ここでは、各ユニット製品にはそれぞれID(例えば製造番号)が付与されるので、このIDに対応して製品レコード70のエントリが製品DB30に生成され、組付けた各部品のIDやその組付条件などの情報や、ユニット製品60の検査結果の情報がそのレコード70に随時登録される」技術が記載されている(段落0040)。

オ 刊行物5
刊行物5には、「従来、例えばアルミニウム製品の鋳造法は、砂型、金型、ダイキャストで大半を占めるが、それぞれの生産ラインでは段取りや機械の調整具合など管理する内容が異なる。生産現場で抱えている問題点も違う。したがって、従来の管理は現場での作業者の勘に頼らざるを得ないところも多い。このため、従来は、資材管理および売上管理すなわち工場の入口と出口の管理は正確に把握できるが、その間の工場内での生産管理は現場の作業者に任されていて、その状況を正確に把握できなかった」とする事項が記載されている(段落0002)。

カ 刊行物6
刊行物6には、「鋳造工場における鋳造ラインをコンピュータで制御する鋳造の生産管理方法及びその装置に係り、特に、鋳造現場の製造状況を各工程番地毎に鋳型番号と対応させて各鋳型単位又は全体工程をリアルタイムに画面に表示してシミュレーションするとともに、この画面上にて最適な鋳造条件に変更し、且つ、鋳造ラインに直接指示できるようにした」技術が記載されている(段落0001)。

キ 刊行物7
刊行物7には、「図2はアルミキャスティング用鋳物製造工場の生産ラインネットワークシステムの概要を示し、製造事務所11と、砂型鋳造ライン12と、金型による連鋳ライン(以下、GDラインという)13と、ダイキャストライン(以下、DCラインという)14と、保全事務所15と、中子成型機16と、熱処理部17と、仕上げ部18と、機械加工部19と、製品貯蔵部20とに、それぞれネットワークの端末機器(パーソナルコンピュータ、以下、パソコンと略称する)が設置され、これらの各生産現場のパソコンと製造事務所11のパソコンとが、ローカルエリアネットワーク(以下、LANという)21により接続されている。外部情報を取入れるために付加価値情報網(VAN)22とも接続されている」という技術が記載されている(段落0009)。

ク 刊行物8
刊行物8には、「図6はその一例を示したもので、図中200は鋳物砂201をバインダで固めて成る鋳型であり、主型202と中子型210とから成っている。また主型202は、上型204と下型206との2つ割構成となっている。この鋳型200は、その内部に製品成形用のキャビティ208を有しており、そのキャビティ208内部に中子型210が上型204と下型206とによりその両端部の幅木を挟持された状態でセットされている」技術が記載されている(段落0006)。

ケ 刊行物9
刊行物9には、「図1は、実施の形態に係る鋳型の要部断面図であり、図2は無機系粘結剤を含浸する装置の概略断面図である。図1で、1は鋳型であり、この鋳型1は、下型2aと上型2bからなる主型2と、主型2内に配置される中子3からなり、主型2と中子3ほかで形成されるキャビティ4は主要部の間隙が3mmであり、また主型2には湯口5及び湯道6を設けている。そして、下型2a、上型2b及び中子3は、以下の工程により製作している。先ず、下型2a、上型2bは、シェルモールド法、コールドボックス法、水溶性フェノールレジン法およびアルカリフェノールレジン法などの造型法により鋳物砂と有機系粘結剤を混練後に造型を行う。そして、下型2a及び上型2bを図2の含浸装置に装入し、真空ポンプにより減圧室21の下半分に貯留された無機系粘結剤22をコロイダルシリカとして、この無機系粘結剤22に浸漬した後、減圧室21を減圧して、コロイダルシリカを鋳型1の砂粒間の空隙内に含浸させる。なお、無機系粘結剤はSiO2/Na2Oのモル比で4?20、その濃度は20?100、さらにはモル比で5?10、濃度で40?80%を好ましい範囲として含浸させている」技術が記載されている(段落0012)。

コ 刊行物10
刊行物10には、「図1は本発明の実施例方法に係る鋳造方法において、鋳型に溶湯が注入された状態を示す模式図である。本実施例方法において使用される下型5a及び上型5bからなる主型5の内部には、吸引孔6が穿設されている。吸引孔6は1箇所で分岐しており、下型5aの上面には2個の開口部6a及び6bが設けられている。なお、開口部6a及び6b上には、砂型であって中子1を支持し位置決めする巾木7a及び7bが配置されている。巾木7a及び7bにも吸引孔8が穿設されており、吸引孔8は開口部6a又は6bで吸引孔6に整合する位置に配設されている。そして、コの字型の管形状を有する中子1がその両端部を巾木7a及び7bに支持されて配置されている。なお、中子1は図示しない他の部材により支持されていてもよい。中子1には、前述のように熱分解性樹脂材を使用して形成されたガス抜き孔2が形成されている。そして、ガス抜き孔2の両端部は吸引孔8に整合する位置に配置されている。なお、中子1の外径は4mm以上であり、ガス抜き孔2の直径は0.5乃至2.0mmである」技術が記載されている(段落0017)。

サ 刊行物11
刊行物11には、「熟成ステップが終了したら、次に、2次混練部8において2次混練ステップを実施する。この場合、熟成容器7の出口7pから吐出させた熟成後の鋳物砂14を2次混練機に投入させ、2次混練させる。この状態で2次混練部8内の鋳物砂14に水を添加させる。ここで、2次混練ステップにおいて鋳物砂14に添加される水量をW3とする。2次混練ステップにおいて添加される水量W3は、予備混練ステップにおいて添加される水量W2よりも多い(W3>W2)。また、2次混練ステップにおいて添加剤を添加させる必要があれば、添加剤を鋳物砂14に添加する。2次混練ステップにおいて添加される添加剤の量をM3とする。2次混練ステップを終えた鋳物砂は良好に再生されているため、造型部1に供給され、造型部1における造型機で鋳型13が造型される。鋳型13は有枠でも良いし、無枠でも良い」とする技術が記載されている(段落0049)。

シ 刊行物12
刊行物12には、「図4に示すように、鋳枠4内に型砂5を投入し、造型機のスクイズシリンダ11を上昇させることにより型砂5をスクイズフット12に押しあて、図5に示すように型砂5を高圧で圧縮成形する。
そして、図6に示すように、スクイズシリンダ11による圧縮を解除し、スクイズフット12および金型模型2を抜型きすることにより上型6の造型が終了する。 なお、前記粒状吸熱体3には、前述のように粘結材として粘土が被覆されているので、造型時に型砂5と緊密に一体化しており、抜型きに際して粒状吸熱体3が金型模型2の側に残存したり、上型6から脱落したりすることはない。
この様にして造型された上型6は、図3ないし図6に示した造型要領と同様な手順によって造型された下型7(但しこの実施例においては、下型には粒状吸熱体3を使用しない)と型合わせされ、図7(a),(b)および(c)に示すように鋳造用砂型8が完成する」技術が記載されている(段落0030-0032)。

ス 刊行物13
刊行物13には、「本発明による鋳型成型用硬化剤組成物を使用して鋳型を提供するには、従来の常法に従って、まず砂100部(重量基準、以下に同じ)に対し、本発明の硬化剤組成物0.2?3部を混合し、次いでフラン樹脂0.6?5部を混合して成型するのが一般的であるが、この方法、順序に限定されるものではない。混合、成型、硬化に際しても特に加熱、冷却の必要はなく、雰囲気温度により使用して差し支えない」とする技術が記載されている(段落0017)。

セ 刊行物14
刊行物14には、「それから、ダボ配置工程S50が実行され、作製されたダボ32が、下型12に取り付けられる。また、中子22も下型22の凹み20に配置される。
次に、吊り上げ工程S60が実行される。吊り上げ工程S60では、図7に示すように、ロッド30にワイヤ46が掛け回され、ワイヤ46を介して、クレーンやチェーンブロック等の吊り上げ装置48によって上型10を吊り上げる。
この後、型合わせ工程S70が実行される。型合わせ工程S70では、下型12の上方に配置された上型10が、下型12に向けて徐々に下降させられる。この間、作業員が、ダボ32及びダボ穴34の位置を視認しながら、上型10の水平方向位置を粗調整する」技術が記載されている(段落0033-0034)。

ソ 刊行物15
刊行物15には、「鋳物製品は、原料をキュポラや誘導加熱式の誘導炉等の溶解炉で溶解し、溶解された鋳物用溶湯を砂型等の鋳型で鋳造することにより製造されている。鋳物用溶湯の原料には、高炉から得られる鋳物用銑鉄、鋳物屑、鋼屑等が用いられており、これらの原料に、低炭素量に調整するための鋼屑、加炭材としての黒鉛、加珪材としてのフェロシリコン等を配合して、鋳物用溶湯の成分組成が調整されている」技術が記載されている(段落0002)。

タ 刊行物16
刊行物16には、「断面真円状の円筒形あるいは円柱形の中子を割り金型中で焼成中又は焼成後に、上記金型をわずかに開いて中子外周面と金型に隙間を設け、焼成中子内に予め挿入している断面非円形のマンドレルまたは中子焼成中に外部より挿入した断面非円形のピンを回転せしめることにより、金型合せ面のエッジでパリを切除することを特徴とする中子のパリ取り方法」が記載されている(特許請求の範囲)。

チ 刊行物17
刊行物17には、「この工程の概略は次の通りである。
1)中子に接着剤塗布→2)中子組立→3)コンベア搬送→4)鋳物湯流し込み→5)冷却→6)中子を解体、除去→7)バリ取り→8)鋳物製品
従来は、中子の組立に、ホットメルト形の接着剤や無機系充填剤混入の熱硬化形の水性接着剤さらには両面粘着形のテープなどが使用されている」技術が記載されている(段落0003)。

ツ 刊行物18
刊行物18には、「次に、工程4のあと、第1ロボット2は、B面を把持した状態で中子部品70をバリ取り装置80まで移動させ、このバリ取り装置80によりA面側から中子70のバリ取りが行なわれる(工程6)。バリ取り装置80は、突出して回転するバリ取り工具を一面に具備し固定配置されたものであり、第1ロボット2が中子のバリ取り部位を移動させることにより、A面側から中子部品70の周囲面のバリ取りが行なわれる。ここで、工程5のあとで工程6に移行した場合には、B面側から中子部品70の周囲面のバリ取りが行なわれる」技術が記載されている(段落0017)。

テ 刊行物19
刊行物19には、「次に,再び図示されない遠隔操作手段によって前記注湯装置5を前記軌条4,4上を移動させ,注湯が完了した前記枠付き砂型3と隣接する未注湯の前記枠付き砂型3に注湯するため該未注湯の枠付き砂型3に対向する位置に位置させる。その後上述の操作を繰り返すことによって未注湯の前記枠付き砂型3に溶湯を注湯する。このようにして数枠分注湯が修了した時点で再び前記定盤台車1を1ピッチ前記搬送ライン2上を団子送りさせ,同様な操作を繰り返すことによって順次前記枠付き砂型3に注湯して行く。即ち,前記枠付き砂型3の造型サイクルタイムは比較的長いため,このサイクルタイムの時間内で前記注湯装置5を移動させながら前記枠付き砂型3の数型に注湯する作業を行う」技術が記載されている(段落0010)。

ト 刊行物20
刊行物20には、「本発明に係る鋳造用自動注湯装置においては、数個乃至は数十個の鋳型に対して注湯可能な大量の溶湯が貯留せしめられる取鍋を、かかる大量の溶湯の貯留状態下で計量する計量機構、つまり、大重量のものが計量し得るように、最小計量単位が大きく、そのために計量誤差の単位も不可避的に大きくなってしまう計量機構を備えた従来装置とは異なって、計量手段として、取鍋に比べて小型で、それ故に軽量な注湯ポットを、一つの鋳型に対する注湯量分に相当する、比較的に少量の溶湯の収容状態下で計量可能な構造を有するもの、つまり、従来装置に採用される計量機構に比して、最小計量単位が小さく、それ故に計量誤差の単位も十分に小さく為し得るものが採用され得るのであり、それによって、かかる計量手段によって計量される一つの鋳型に対する溶湯の注湯重量を、より高い精度で正確に計量することが出来る」技術が記載されている(段落0013)。

ナ 刊行物21
刊行物21の図1.1及び図7.46から、溶解炉から取鍋に出湯した溶湯を、造型機で造型された複数の砂型に分注する技術が読み取れる。

ニ 刊行物22
刊行物22には、「中物あるいはやや小さい鋳型の場合は、一つのとりべで2個あるいは数個の鋳型に注湯できる」技術が記載されている(168頁最下行-169頁第1行)。

ヌ 刊行物23
刊行物23では、図2-8から、取鍋の溶湯を20個の鋳枠に順次注湯することが読み取れる。

6.判断
(1)取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
ア 訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という)は、上記3.本件発明において示したとおりのものである。

イ 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「鋳鉄生型造型ライン」における「個々の製品」は、「鋳造製品」であることは明らかである。
引用発明の「製造/品質データ」は、「各種製造データ」に相当する。
引用発明の「データベース化」することは、「データベースに登録して管理する」ことに他ならず、引用発明の「トレーサビリティ・システム」と「管理方法」は実質的な差異はない。してみると、引用発明の「鋳鉄生型造型ラインに対して、個々の製品をその製造/品質データと紐付け可能にデータベース化したトレーサビリティ・システム」は、本件発明1の「鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法」に相当する。
鋳型において上型と下型とを組み合わせることは当然に行われることである。そして、引用発明の「混砂と造型」が、本件発明の「造型工程」に相当し、引用発明の「CB値、水分、圧縮強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧緒率のデータを伝送、記録すること」が、本件発明の「砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に相当する。してみると、引用発明の「一つの鋳枠に6つの型番を有する上型と下型とを製造する、混砂と造型において、CB値、水分、圧緒強度、造型時刻、上型圧縮率、下型圧縮率のデータを伝送、記録する工程」は、本件発明1の「上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における複数の工程において前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程」に相当する。
また、引用発明の「鋳鉄」は、本件発明1の「鋳造用金属」に相当する。そして、複数の鋳枠に注湯することが、刊行物1の56頁の図5に「注湯回数:20?30枠/トリベ」と記載されていることからして、引用発明の「鋳鉄の溶湯を製造する溶解,出湯、球状化、配湯,2次接種の各工程において溶湯の製造条件を計測する工程」は、本件発明1の「鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程」に相当する。
引用発明の「部品シリアルNo」は本件発明1の「製品シリアル番号」に相当すること、引用発明の「鋳型関連データ」は本件発明1の「砂型の製造データ」に相当し、引用発明の「造型枠順」は、図11の【注湯ライン】上に丸数字で示されるようにシリアル番号であって、本件発明1の「造型シリアル番号」に相当すること、及び、引用発明では「製造条件を検索できるように鋳型関連データは造型枠順に紐付け」するため、鋳型関連データをデータベースに登録して管理するのが明らかであることから、引用発明の「造型直後の鋳型表面に部品シリアルNoをマーキングして製品に転写し、データ取得時に製造条件と製品とを紐付けするときキーになるキー因子を設定しておき、鋳型関連データは造型枠順に紐付けし」は、本件発明1の「前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し」に相当する。
引用発明の「溶湯関連データ」は、本件発明1の「溶湯の製造データ」に相当すること、及び、引用発明の「配湯トリべNo」は、上記5(2)ア(ケ)の2.で部品シリアルNoに対応付けられる注湯条件に対応付けられており、本件発明1の「溶解シリアル番号」と同様に製造工程キー因子(図11の製造条件キーワード)であることから、引用発明の「溶湯関連データは配湯トリべNoに紐付けし、その後、マーキングされた鋳枠が注湯されると、注湯条件を注湯枠順に紐付し、これにより各キー因子を枠順に紐付けすることで部品シリアルNoと各工程で取得される製造データを一元化し、データベース化した」は、本件発明1の「前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、・・・前記データベースに登録して管理する」と、「前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを製造工程キー因子に結び付け、この製造工程キー因子と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する」点において一致する。

したがって、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致している。
「鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における複数の工程において前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における複数の前記工程において前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
を備えており、
前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを製造工程キー因子に結び付け、この製造工程キー因子と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法。」

そして、本件発明1と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>本件発明1では、溶湯の製造データの各鋳造製品への関連付けを、「前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって」行うのに対して、引用発明では、溶湯の製造データの各鋳造製品への関連付けを、溶湯製造工程の製造工程キー因子と造型シリアル番号とを結びつけることによって行うものの、溶湯製造工程の製造工程キー因子である配湯トリべNoが、前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に相当するか否かは明らかでない点。

ウ 判断
相違点について
引用発明の「配湯トリべNo」は、上記5(2)ア(ケ)の製造条件キーワードであるとされ、かつ、これと造型シリアル番号との結びつけによって、溶湯の製造データの関連付けを行うものであるが、「配湯トリべNo」がどのように決定されるのかは、刊行物1においては、明らかでない。
一般に、「トリベ」自体は、装置に備わっているものであり、それぞれのトリベに事前にNoが付与されていると考えるのが通常である。
そして、上記5(2)ア(ケ)、(セ)からすると、刊行物1の図11からは、例えばNo1の配湯トリベに球状化トリベNo1と溶解No1が関連することが理解でき、造型シリアル番号に相当する部品No1の鋳枠に、配湯トリベNo1の湯が注がれるとすれば、部品No1に球状化トリベNo1と溶解No1が関連することが理解できる。このことは、図14において、「部品データ」、「元湯データ」、「球状化処理データ」のそれぞれにNoが付与されていることからも明らかである。しかしながら、図14においては、「配湯トリべNo」は示されておらず、出湯ごとに、「配湯トリべNo」を付与し、そのシリアル番号で管理するという技術思想が刊行物1に示されていたと認めることはできない。

また、データベースをどのように構築するかは、ある程度は設計的事項にすぎないとは考えられるが、引用発明において、「球状化トリベNo」、「溶解No」とは別の、出湯毎に付与される番号を用いて管理するようになすことが十分想到しうる事項であると認めるにたりる証拠は、刊行物2-23からも見いだすことができない。

したがって、請求項1に係る発明は、引用発明及び刊行物2-23に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 訂正後の請求項2に係る発明
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、引用発明及び刊行物2-23に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 訂正後の請求項3に係る発明
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明と同様に、引用発明に対して、上記相違点を有するものであるから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、引用発明及び刊行物2-23に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 訂正後の請求項4に係る発明
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明と同様に、引用発明に対して、上記相違点を有するものであるから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、引用発明及び刊行物2-23に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 訂正後の請求項5に係る発明
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明の判断と同様の理由により、引用発明及び刊行物2-23に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった取消理由について

ア 特許法第29条第2項について
申立人Bは申立て当初は刊行物2-4を証拠として、特許法第29条第2項の理由を主張した。
そして、申立時の請求項4に記載された、上記相違点の「溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号」について、特許異議申立書の第79頁下から6-3行において「しかし、『前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与』することが明確に記載されていないことから、『相違点2』として、後述する。」と主張しているように、刊行物2には、「溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号」については記載されていない。
さらに、特許異議申立書の第82頁下から8行-第83頁第14行において、相違点2の検討をしているものの、「以上のように、取鍋毎にロットナンバーが付与されることは、甲第2号証(当審注:刊行物3)に記載されている。つまり甲第2号証の「溶湯を入れて鋳造機まで運ぶ鍋について、1回運ぶ毎に」「ロットナンバー」を付与することは、本件特許発明の『前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与』に相当し、相違点2は甲第2号証に記載されているといえる。」との主張のみであり、刊行物2において「溶解シリアル番号」を用いることが容易に想到し得たとすることはできない。
また、訂正に対応して、申立人Bは新たな証拠として刊行物1を提出したが、平成29年2月27日の意見書及び平成29年11月13日の意見書においても、「溶解シリアル番号」についての追加の主張は特段なく、上記(1)のとおり、刊行物1の存在を前提としても、「溶解シリアル番号」に係る相違点について、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないのであるから、申立人Bの主張は理由がない。

イ 特許法第29条第1項第3号について
申立人Aは刊行物1を証拠として、特許法第29条第1項第3号についての主張をしているが、上記(1)のとおり、本件発明1-5と引用発明との間には相違点が存在するのであるから、かかる主張は理由がない。
また、申立人Bは、刊行物2を証拠として、請求項1-3について、特許法第29条第1項第3号についての主張をしているが、訂正により上記(ア)のとおり相違点が存在することになったのであるから、かかる主張は理由がない。

7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては本件発明1-5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鋳造製品の製造データ管理方法
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造製品の製造データ管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の鋳造製品である鋳鉄管の製造履歴等の管理方法を開示している。この鋳鉄管の製造履歴等の管理方法では、鋳鉄管の受け口に形成されたフランジの外側端面に対応する中子毎に管理番号を形成する凹部を刻印する。この刻印された中子を使用することによって、1本毎に管理番号が付された鋳鉄管を製造する。そして、管理番号毎に鋳鉄管の製造履歴データ等を保存して管理を行う。この管理方法によれば、鋳鉄管1本毎にその製造履歴等を把握することができ、鋳鉄管の信頼性及び安全性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-135772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の鋳鉄管の製造履歴等の管理方法には管理番号毎に保存して管理する製造履歴データの内容が開示されていない。また、この鋳鉄管は高速回転する金型の内側に溶湯を流し込んで遠心鋳造される。この金型は、鋳造品を取り出す脱型工程時に砂型のように崩してしまうものではなく、繰り返し使用される。つまり、同一形状の鋳鉄管であれば同じ金型を利用して製造される。このため、鋳鉄管1本毎に鋳造の際に利用した金型が相違するものではない。また、鋳鉄管が完成した後であっても金型は存在する。このため、鋳鉄管の品質に不具合が生じれば金型を検証することができる。このように、この鋳鉄管の製造履歴等の管理方法において、鋳鉄管1本毎に金型に関するデータを保存して管理する有用性が乏しい。
【0005】
一方、砂型を利用して鋳造製品を鋳造した場合、解枠時に砂型を崩してしまうため、鋳造製品が完成した後では砂型が存在せず、そのものを検証することができない。また、鋳造製品の製造工程における中間物の中には、砂型以外にも鋳造製品が完成した後に、そのものを検証できないもの(例えば、溶湯、中子等)がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を鋳造製品毎に検証することができる鋳造製品の製造データ管理方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1発明の鋳造製品の製造データ管理方法は鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する。この鋳造製品の製造データ管理方法は第1データ取得工程と第2データ取得工程とを備えている。第1データ取得工程は、上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における砂型の製造データを取得する。第2データ取得工程は、鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における溶湯の製造データを取得する。この鋳造製品の製造データ管理方法は第1データ取得工程において取得した砂型の製造データを砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、砂型の製造データを対応する各鋳造製品に関連付けてデータベースに登録して管理する。また、この鋳造製品の製造データ管理方法は、溶湯を各砂型のキャビティに注湯する注湯工程を実行した際、第2データ取得工程において取得した溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と造型シリアル番号とを結びつけることによって、溶湯の製造データを鋳造される全ての各鋳造製品に対応させつつ関連付けてデータベースに登録して管理する。
【発明の効果】
【0008】
鋳造製品の製造工程において、砂型及び溶湯は中間物である。砂型及び溶湯の状態は鋳造製品の品質に大きな影響を与える。しかし、砂型は解枠時に崩されてしまう。このため、鋳造製品が完成した後に砂型を直接的に検証することができない。また、溶湯も鋳造製品が完成した後に直接的に検証することができない。そこで、この鋳造製品の製造データ管理方法は、第1データ取得工程において取得した造型工程における砂型の製造データ、及び第2データ取得工程において取得した溶湯製造工程における溶湯の製造データを対応する各鋳造製品に関連付けてデータベースに登録し、管理する。これによって、鋳造製品が完成した後であっても、データベースに登録した各種製造データから、その鋳造製品を製造した際の砂型及び溶湯の検証を行うことができる。なお、本願第1発明等において、「関連付け」とは、データベースにアクセスすることによって、鋳造製品から各種製造データを特定することができる状態、かつ、各種製造データから鋳造製品を特定することができる状態にすることをいう。
【0009】
したがって、本願第1発明の鋳造製品の製造データ管理方法は、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の鋳造製品の製造データ管理方法を具体化した管理システムの概略図である。
【図2】実施例の鋳造製品の製造工程を示すフロー図である。
【図3】実施例の鋳造製品の製造工程において、(A)は中子製造工程において中子シリアル番号を付与するタイミングを示し、(B)は造型工程において造型シリアル番号及び製品シリアル番号を付与するタイミングを示し、(C)は溶湯製造工程において溶解シリアル番号を付与するタイミングを示す。
【図4】実施例の砂型を示す模式図であって、(A)は抜型工程後の上型及び下型を示し、(B)は下型のキャビティ内に中子を収めた状態を示し、(C)はキャビティ内に中子は配置して上型と下型とを組み合わせた状態を示す。
【図5】実施例において、各シリアル番号を結び付けるタイミングを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の鋳造製品の製造データ管理方法を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<実施例>
実施例の鋳造製品の製造データ管理方法は、図1に示すように、製造データ管理システムのデータベース1に各種製造データを登録して管理するものである。このデータベース1は、鋳造製品の製造工程において、各種計測器及びセンサーからの自動入力、又はタッチパネルを使用した作業者の手動入力によって、各種製造データが登録される。また、このデータベース1はネットワークを介して複数のコンピュータ2からアクセスすることができる。
【0013】
鋳造製品の製造工程は、図2に示すように、造型工程10、中子製造工程20、溶湯製造工程30、注湯工程40、成形工程50、脱型工程60、及び仕上げ工程70を備えている。
【0014】
造型工程10では砂型11(図4(C)参照)を製造する。鋳造製品の製造工程において、砂型11は中間物である。造型工程10は、混練工程、砂入れ工程、硬化工程、抜型工程、中子収め工程、及び枠合わせ工程をこの順に実行する。混練工程では樹脂及び硬化剤を添加した鋳物砂13を混練する。砂入れ工程では同一形状の2個の鋳造模型(図示せず)を並列に配置した1個の鋳枠12内に混練した鋳物砂13を投入する。硬化工程では鋳枠12内に投入した鋳物砂13を硬化させる。抜型工程では鋳造模型を鋳枠12から抜き取る。このようにして、上型11A及び下型11Bが形成される(図4(A)参照)。上型11A及び下型11Bは同一形状のキャビティ14A、14Bが2個ずつ並列状態で形成さている。上型11Aは、各キャビティ14Aに連通した湯口15及び図示しないガス抜き孔が貫設されている。中子収め工程では下型11Bの2個のキャビティ14Bの夫々に後述する中子製造工程20で製造した中子21を1個ずつ配置する(図4(B)参照)。枠合わせ工程では中子21を配置した下型11Bの上に上型11Aを組み合わせる(図4(C)参照)。このようにして、キャビティ14A、14B内に中子21を配置した砂型11が完成する。この砂型11は1個で2個の鋳造品を鋳造することができる。
【0015】
この造型工程10では、図3(B)に示すように、抜型工程において、砂型11毎、より詳しくは、組み合わされる上型11A及び下型11Bの1組毎に造型シリアル番号(ZB-1、ZB-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、造型シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、抜型工程までに第1データ取得工程において取得した砂型11毎の製造データを造型シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。
【0016】
第1データ取得工程は、造型工程10において、砂型11毎(上型11A及び下型11Bの1組毎)に、鋳物砂13に添加した樹脂及び硬化剤の添加量、混練工程での混練砂の温度、鋳造模型の使用回数、及び硬化工程における鋳物砂13の硬化時間等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。また、第1データ取得工程は、中子収め工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。この際に入力されるデータは、キャビティ14Bに対して中子21がきつかった、中子21が折れた等の情報である。中子収め工程は抜型工程より後に実行されるため、中子収め工程において手動入力されたデータはその際に造型シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。
【0017】
さらに、造型工程10では、図3(B)に示すように、中子収め工程において、鋳造される鋳造製品毎に対応する製品シリアル番号(CB-1、CB-2…)を付与する。つまり、図1に示すように、製品シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。なお、この時点で、鋳造製品は存在しない。このため、1個の鋳造品が成形されるキャビティ14A、14B毎に製品シリアル番号を付すことになる。また、上型11A又は下型11Bの所定の部位のキャビティ面に製品シリアル番号を付ける。これによって、鋳造製品に製品シリアル番号を鋳出し文字として形成する。
【0018】
また、中子収め工程において、図5に示すように、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、後述する中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。
このように、中子収め工程において、製品シリアル番号と、造型シリアル番号と、中子シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録することによって、鋳造製品毎に砂型11及び中子21の各種製造データを間違えなく確実に関連付けることができる。
【0019】
中子製造工程20では中子21を製造する。鋳造製品の製造工程において、中子21も中間物である。中子製造工程20は、図2に示すように、焼成工程、バリ取り工程、組立工程、塗装乾燥工程、及び検査工程をこの順に実行する。焼成工程では、樹脂及び硬化剤を添加した鋳物砂13を混練し、それを金型内に入れて所定の形状(中子21の中間体)に成形し、焼成する。バリ取り工程では中子21の中間体にできたバリを取り除く。組立工程では、形状の違う複数の中子21の中間体を組み立てることによって、中子21を形成する。塗装乾燥工程では耐熱性の塗布剤を中子21に塗装し乾燥させる。検査工程では作業員の目視によって中子21の良否を検査する。このようにして、砂型11のキャビティ内に配置する中子21が完成する。
【0020】
この中子製造工程20では、図3(A)に示すように、焼成工程において、中子21毎に中子シリアル番号(N-1、N-2、…)を付与する。つまり、図1に示すように、中子シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、中子21毎の焼成温度を第3データ取得工程において取得し、中子シリアル番号に結び付けてデータベース1に登録する。また、中子シリアル番号を記したテープを各中子21に貼付ける。
【0021】
第3データ取得工程は、中子製造工程20において、中子21毎に焼成工程における焼成温度、塗装乾燥工程における塗型濃度、及び塗装乾燥工程における乾燥温度等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。塗型濃度とは中子21に塗装する泥状の塗布剤の濃度(分散値)である。また、第3データ取得工程は、中子製造工程20の検査工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。塗装乾燥工程及び検査工程はバリ取り工程より後に実行されるため、これら工程において取得された各種データは、データを取得する際に中子シリアル番号に結び付けられてデータベースに登録される。
【0022】
溶湯製造工程30では砂型11のキャビティ内に流し込む溶湯を製造する。鋳造製品の製造工程において、溶湯も中間物である。溶湯製造工程30は、図2に示すように、計量工程、溶解工程、成分調整工程、及び出湯工程をこの順に実行する。計量工程では、電気炉で一度に溶解する各種鋳造用金属や添加剤等を計量する。溶解工程では電気炉で各種鋳造用金属等を溶解する。成分調整工程では電気炉内の溶湯の成分を調整する。出湯工程では電気炉内の溶湯を3回に分けて処理取鍋に出湯する。
【0023】
この溶湯製造工程30では、図3(C)に示すように、出湯工程において、溶解シリアル番号(S-1-1、S-1-2、S-1-3、S-2-1、S-2-2、S-2-3、…)を付与する。つまり、図1に示すように、溶解シリアル番号をデータベース1に登録して管理する。この際、溶解シリアル番号に第2データ取得工程において取得した出湯毎の溶湯の製造データを結び付けてデータベース1に登録する。なお、この溶解シリアル番号は、電気炉において1度に溶解される溶湯毎にS-1、S-2、…として、さらに、処理取鍋に3回に分けて出湯する毎に枝番(-1、-2、-3)を追加したものである。
【0024】
第2データ取得工程は、溶湯製造工程30において、出湯毎に電気炉内の溶湯温度、溶湯重量、各種鋳造用金属の配合量、添加材の配合量、及び成分値等を各種計測器及びセンサーを利用して自動取得する。また、第2データ取得工程は、出湯工程において、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力によって取得する。
【0025】
注湯工程40では、図2に示すように、造型工程10を経て完成した砂型11に溶湯製造工程30で製造された溶湯を流し込む。つまり、処理取鍋から注湯取鍋に溶湯を移し、注湯取鍋内の溶湯を砂型11の湯口からキャビティ内に流し込む。この際、注湯取鍋内の溶湯を3個の砂型11に分けて流し込む。注湯工程40において、図5に示すように、造型シリアル番号と溶解シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録し、管理する。これによって、製品シリアル番号、造型シリアル番号、中子シリアル番号、及び溶解シリアル番号がデータベース1上で結び付けられることになる。このように、注湯工程40において、造型シリアル番号と溶解シリアル番号とを結び付けてデータベース1に登録することによって、鋳造製品毎に溶湯の製造データを間違えなく確実に関連付けることができる。
【0026】
成形工程50では、砂型11に流し込まれた溶湯を砂型11内で徐々に冷却(徐冷)し、固化させる。これによって、砂型11内で鋳造品が成形される。この際、冷却に要した時間が計測器及びセンサーを利用して自動取得され、造型シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。
【0027】
脱型工程60では砂型11から鋳造品を取り出す。この脱型工程60は、解枠工程、枠外徐冷工程、外部ショット工程、及び一次検査工程をこの順に実行する。解枠工程では砂型11を崩して鋳造品を取り出す。枠外徐冷工程では砂型11から取り出した鋳造品を徐々に冷却する。外部ショット工程では鋳造品の外表面に付着した鋳物砂13をショットブラストによって除去する。一次検査工程では作業員の目視によって鋳造品の外表面の良否を検査する。この際、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力し、製品シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。
【0028】
仕上げ工程70では鋳造品を仕上げ加工して鋳造製品とし、出荷する。仕上げ工程70は、バリンダ工程、内部ショット工程、二次検査工程、及びフライス工程をこの順に実行する。バリンダ工程では鋳造品に形成されたバリを除去する。内部ショット工程では鋳造品の内表面に付着した鋳物砂13をショットブラストによって除去する。二次検査工程では作業員の目視によって鋳造品の良否を最終検査する。この際、作業者が気付いた事項をタッチパネルから手動入力し、製品シリアル番号に結び付けられてデータベース1に登録される。フライス工程では鋳造品の所定部位を切削する。このようにして、鋳造製品が完成し、出荷される。
【0029】
このように、この鋳造製品の製造データ管理方法では、製品シリアル番号、造型シリアル番号、中子シリアル番号、及び溶解シリアル番号がデータベース1上で結び付けられている。これによって、第1データ取得工程において取得した造型工程10における砂型11毎の製造データ、第2データ取得工程において取得した溶湯製造工程30における出湯毎の溶湯の製造データ、及び第3データ取得工程において取得した中子製造工程20における中子21毎の製造データ等の鋳造製品の各種製造データが対応する鋳造製品毎に関連付けられている。
【0030】
このため、鋳造製品が完成した後であっても、データベース1にネットワークを介してアクセスすることができるコンピュータ2を利用して、鋳造製品に付された製品シリアル番号からその鋳造製品の各種製造データを呼び出すことができる。これによって、その鋳造製品を製造した際の砂型11、溶湯、及び中子21の検証を行うことができる。また、データベース1にネットワークを介してアクセスすることができるコンピュータ2を利用して、中子シリアル番号、造型シリアル番号、溶解シリアル番号から製品シリアル番号を呼び出すことができる。これによって、ある工程で不具合が起こる状態で製造を続けてしまった場合等、対応する鋳造製品も特定することができる。
【0031】
したがって、実施例の鋳造製品の製造データ管理方法は、鋳造製品の品質に影響を与え、鋳造製品が完成した後に検証し難い製造工程における中間物を検証することができる。
【0032】
また、この鋳造製品の製造データ管理方法では、砂型11毎にその製造データを取得し、出湯毎に溶湯の製造データを取得し、中子21毎にその製造データを取得して、鋳造製品毎に関連付けている。このため、鋳造製品のロット毎ではなく、鋳造製品の1個ずつに固有の各種製造データを特定することができる。よって、鋳造製品の品質に影響する要因を適確に把握することができる。
【0033】
また、この鋳造製品の製造データ管理方法では、各種シリアル番号を付与して、鋳造製品毎にそれらシリアル番号を結び付けている。これによって、鋳造製品毎の各種製造データの関連付けを容易に行うことができる。
【0034】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、中子をキャビティ内に配置して鋳造する鋳造製品の製造データ管理方法を説明したが、中子を使用せずに鋳造する鋳造製品にこの鋳造製品の製造データ管理方法を適用してもよい。
(2)実施例で示した各種製造データ以外の製造データをデータベースに登録して、管理してもよい。
(3)実施例では、1個の砂型で2個の鋳造品を鋳造することができたが、1個の砂型で1個又は3個以上の鋳造品を鋳造してもよい。
(4)実施例では、電気路内の溶湯を3回に分けて注湯取鍋に出湯したが、3回に限らず複数回に分けて注湯取鍋に出湯してもよい。
(5)各種シリアル番号を付与するタイミングは実施例で示したタイミング以外であってもよい。
(6)各種シリアル番号の形式は実施例で示した以外の形式であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…データベース
10…造型工程
11…砂型
20…中子製造工程
21…中子
30…溶湯製造工程
40…注湯工程
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
上型と下型とを有し、前記上型と前記下型とを組み合わせることによって複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
を備えており、
前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記各砂型の前記キャビティに注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを鋳造される全ての前記各鋳造製品に対応させつつ関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項2】
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、
前記造型工程における前記砂型のキャビティ内に中子を組み込む際、前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする請求項1に記載の鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項3】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子の製造データを取得する第3データ取得工程と、
を備えており、
前記第1データ取得工程において取得した前記砂型の製造データを前記砂型毎に付与された造型シリアル番号に結び付け、この造型シリアル番号と前記鋳造製品毎に付与された製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記砂型の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記溶湯を前記砂型に注湯する注湯工程を実行した際、前記第2データ取得工程において取得した前記溶湯の製造データを出湯する毎に付与された溶解シリアル番号に結び付け、この溶解シリアル番号と前記造型シリアル番号とを結びつけることによって、前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理し、
前記造型工程における前記砂型のキャビティ内に中子を組み込む際、前記第3データ取得工程において取得した前記中子の製造データを前記中子毎に付与された中子シリアル番号に結び付け、この中子シリアル番号と前記製品シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に対して関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項4】
鋳造製品の各種製造データをデータベースに登録して管理する鋳造製品の製造データ管理方法であって、
複数の前記鋳造製品が鋳込まれる複数のキャビティが形成される砂型を製造する造型工程における前記砂型毎の製造データを取得する第1データ取得工程と、
鋳造用金属を溶解して溶湯を製造し、複数の前記砂型に注湯する量の前記溶湯を一度に出湯する溶湯製造工程における出湯毎に前記溶湯の製造データを取得する第2データ取得工程と、
を備えており、
前記造型工程において、前記砂型毎に造型シリアル番号を付与し、この造型シリアル番号に前記第1データ取得工程において前記砂型毎に取得した前記砂型の製造データを結び付け、
前記溶湯製造工程において、前記溶湯の出湯毎に溶解シリアル番号を付与し、この溶解シリアル番号に前記第2データ取得工程において前記出湯毎に取得した前記溶湯の製造データを結び付け、
前記鋳造製品毎に製品シリアル番号を付与し、この製品シリアル番号と前記造型シリアル番号と前記溶解シリアル番号とを結び付けることによって、前記砂型の製造データ及び前記溶湯の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする鋳造製品の製造データ管理方法。
【請求項5】
前記砂型のキャビティ内に組み込まれる中子を製造する中子製造工程における前記中子毎の製造データを取得する第3データ取得工程を備えており、
前記中子製造工程において、前記中子毎に中子シリアル番号を付与し、この中子シリアル番号に第3データ取得工程において前記中子毎に取得した前記中子の製造データを結び付け、
前記鋳造製品毎に製品シリアル番号を付与し、この製品シリアル番号と前記中子シリアル番号とを結びつけることによって、前記中子の製造データを対応する前記各鋳造製品に関連付けて前記データベースに登録して管理することを特徴とする請求項4記載の鋳造製品の製造データ管理方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-08 
出願番号 特願2013-165577(P2013-165577)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B22D)
P 1 651・ 113- YAA (B22D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 西村泰英
特許庁審判官 中川隆司
平岩正一
登録日 2016-01-15 
登録番号 特許第5869536号(P5869536)
権利者 KYB株式会社
発明の名称 鋳造製品の製造データ管理方法  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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