• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1339149
異議申立番号 異議2017-700687  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-11 
確定日 2018-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6059396号発明「カラーフィルタ用色材分散液、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置、及び有機発光表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6059396号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6059396号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6059396号の請求項1ないし8に係る発明についての出願は、平成28年6月1日(優先権主張平成27年6月1日)に出願した特願2016-110030号の一部を同年9月8日に新たな特許出願としたものであって、同年12月16日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その特許について、特許公報発行の日から6月以内である平成29年7月11日に異議申立人秋山満により特許異議の申立てがなされ、同年9月19日付けで取消理由が通知され、これに対し指定期間内である同年11月17日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正」という。)がなされ、同年12月27日に異議申立人秋山満により意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正の訂正内容は、以下のとおりである。

(1) 特許請求の範囲の請求項1に「当該分散剤の酸価が1mgKOH/g以上」と記載されているのを「当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上」に訂正するものであって、請求項1の記載を引用する請求項2及び請求項4?8も同様に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。

(2) 特許請求の範囲の請求項2に「前記分散剤において、前記塩型ブロック共重合体(P2)を含む、」と記載されているのを、「前記分散剤において、前記塩型ブロック共重合体(P2)を含み、分散剤の酸価が4mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である、」に訂正するものであって、請求項2の記載を引用する請求項4?8も同様に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。

(3) 特許請求の範囲の請求項3に「当該分散剤の酸価が1mgKOH/g以上」と記載されているのを「当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上」に訂正するものであって、請求項3の記載を引用する請求項4?8も同様に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。

2 訂正の目的の適否
(1) 訂正事項1及び訂正事項3について
訂正事項1及び訂正事項3は、本件訂正前の請求項1又は請求項3の分散剤の酸価の範囲の下限値を「1mgKOH/g以上」から「2mgKOH/g以上」へ減縮するものである。
したがって、訂正事項1及び訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2の分散剤について、「分散剤の酸価が4mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である」との限定を付加するものといえる。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

3 一群の請求項
請求項2,4?8は訂正事項1による訂正請求の対象である請求項1を引用する関係にあり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、請求項4?8は訂正事項2による訂正の対象である請求項2を引用する関係にあり、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。さらに、請求項4?8は訂正事項3による訂正請求の対象である請求項3を引用する関係にあり、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1?8は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正事項1ないし3は、一群の請求項ごとに請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

4 新規事項の有無
(1) 訂正事項1及び訂正事項3について
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0093】には、「本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像残渣の抑制効果が発現される点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましい。中でも、現像残渣の抑制効果がより優れる点から、分散剤の酸価は2mgKOH/g以上であることがより好ましい。」と記載されている。
したがって、訂正事項1及び訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
よって、訂正事項1及び訂正事項3は、特許法第120条の5第9号において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0093】には、「また、本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる点から、上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましい。」と記載されている。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9号において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

5 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1及び訂正事項3は、上記2(1)に記載したとおり、酸価の範囲を減縮するものである。また、訂正事項2は、上記2(2)に記載したとおり、分散剤について、酸価の範囲の限定を付加するものである。そうしてみると、訂正によって、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものとはいえない。
したがって、訂正事項1ないし3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

6 むすび
以上のとおり、本件訂正による訂正事項1ないし3は、何れも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められることとなったので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、C.I.ピグメントグリーン59を含み、
前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、
P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体;
P2:前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)?(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;
当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である(但し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合を除く)、カラーフィルタ用色材分散液。
【化1】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(1)において、R^(a)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R^(b)、R^(b’)、及びR^(b”)はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(f)を表し、R^(f)は、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R^(c)及びR^(d)はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R^(c)及びR^(d)の少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【請求項2】
前記分散剤において、前記塩型ブロック共重合体(P2)を含み、分散剤の酸価が4mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である、請求項1に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項3】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、C.I.ピグメントグリーン59を含み、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、
当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上8mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である、カラーフィルタ用色材分散液。
【化2】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
前記分散剤において、前記ブロック共重合体のアミン価が40mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有する、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項5に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項7】
前記請求項6に記載のカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記請求項6に記載のカラーフィルタと、有機発光体を有することを特徴とする有機発光表示装置。」
(以下、請求項1?8に係る発明をそれぞれ、「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。)

2 取消理由の概要
請求項1ないし8に係る発明に対して、平成29年9月19日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

理由1.(進歩性)本件特許の請求項1?8に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



甲第1号証:特開2009-52010号公報
甲第2号証:DIC株式会社,“高色再現を実現するカラーフィルタ用の新グリーン顔料を開発”,[online],平成26年9月9日,DIC株式会社,[平成29年7月7日検索],インターネット
甲第3号証:"Benefical Combination of Blockcopolymer Dispersants, Pigments, Binders and Solvents Used for Color Filters in the Flat Panel Display Technology - Rules and Proposals", RESERCH DISCLOSURE, Ireland, 2014/12/23, Research Disclosure database number 609069
甲第5号証:特開2004-339330号公報
甲第6号証:特開2004-339368号公報
甲第7号証:特開2006-343648号公報
甲第8号証:特開2011-191783号公報

3 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証
ア 取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2009-52010号公報(以下、「甲第1号証」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は合議体が付与した。)

(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、溶剤および分散剤を含有し、該顔料が臭素化亜鉛フタロシアニンを含有し、該分散剤が、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤を含有する、ことを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
前記ブロック共重合体からなる分散剤において、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基である、請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記ブロック共重合体からなる分散剤において、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来である、請求項1または2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
顔料の平均一次粒径が0.04μm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の顔料分散液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の顔料分散液、およびバインダー樹脂を含有してなる、ことを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項6】
さらに光重合開始系を含有してなる、請求項5記載のカラーフィルタ用着色組成物。
【請求項7】
請求項5または6に記載のカラーフィルタ用着色組成物を用いて作成した画素を有する、ことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタと、液晶駆動用基板を対向させ、両者の間に液晶を封入してなる、ことを特徴とする液晶表示装置。」

(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたもので、その目的は下記の通りである。
(a)緑色画素の高輝度化を目的として臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いた場合にこれまで問題となっていた、高コントラストと分散安定性の両立を実現した顔料分散液を提供すること。
(b)上記顔料分散液を用いて、現像性の良好なカラーフィルタ用着色組成物を提供すること。
(c)上記カラーフィルタ用着色組成物を用いて、高品質のカラーフィルタを提供すること。
(d)上記カラーフィルタ基板を使用した、高品質の液晶表示装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料に、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるA-Bブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g(有効固形分換算)以上であることを特徴とする分散剤を組み合わせて用いることによって、液晶テレビ用として十分な高コントラスト領域となるよう微粒化された顔料についても、十分な分散安定性を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、複数の関連する発明から成り、各発明の要旨は次の通りである。
【0008】
(1) 顔料、溶剤および分散剤を含有し、該顔料が臭素化亜鉛フタロシアニンを含有し、該分散剤が、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤を含有する、ことを特徴とする顔料分散液。
(2) 前記ブロック共重合体からなる分散剤において、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基である、上記(1)に記載の顔料分散液。
(3) 前記ブロック共重合体からなる分散剤において、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来である、上記(1)または(2)に記載の顔料分散液。
(4) 顔料の平均一次粒径が0.04μm以下である、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の顔料分散液。
【0009】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれか一に記載の顔料分散液、およびバインダー樹脂を含有してなる、ことを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
(6) さらに光重合開始系を含有してなる、上記(5)に記載のカラーフィルタ用着色組成物。
(7) 上記(5)または(6)に記載のカラーフィルタ用着色組成物を用いて作成した画素を有する、ことを特徴とするカラーフィルタ。
(8) 上記(7)に記載のカラーフィルタと、液晶駆動用基板を対向させ、両者の間に液晶を封入してなる、ことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以下に挙げる効果を奏する。
(a)緑色画素の高輝度化を目的として臭素化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いた場合にこれまで問題となっていた、高コントラストと分散安定性の両立を実現した顔料分散液を提供し得る。
(b)上記顔料分散液を用いて、現像性の良好なカラーフィルタ用着色組成物を提供し得る。
(c)上記カラーフィルタ用着色組成物を用いて、高品質のカラーフィルタを提供し得る。
(d)上記カラーフィルタ基板を使用した、高品質の液晶表示装置を提供し得る。」

(ウ) 「【0039】
[1-3]分散剤:
本発明で使用される分散剤は、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である。
中でも、(メタ)アクリル系ブロック共重合体が好ましく、以下、(メタ)アクリル系ブロック共重合体である場合を例に前記分散剤について説明する。
Bブロックは、窒素原子を含む官能基を有し、該官能基としては1?3級アミノ基が好ましい。1?3級アミノ基の含有比率は、窒素原子含有官能基全体の20モル%以上が好適であり、より好ましくは50モル%以上である。1?3級アミノ基としては、好ましくは-NR^(41)R^(42)(但し、R^(41)及びR^(42)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示す。)で表わされ、これを含む部分構造(繰返し単位)として好ましいものは、例えば下記式で表される。
【0040】
【化1】

【0041】
(但し、R^(41)及びR^(42)は、上記のR^(41)及びR^(42)と同義であり、R^(43)は炭素数1以上のアルキレン基、R^(44)は水素原子又はメチル基を示す。)
中でも、R^(41)及びR^(42)はメチル基が好ましく、R^(43)はメチレン基、エチレン基が好ましく、R^(44)は水素原子もしくはメチル基であるのが好ましい。このような部分構造としては下記式で表されるジメチルアミノエチルアクリレートやジメチルアミノエチルメタアクリレート由来の構造などが、特に好適に用いられる。

(中略)

【0044】
親溶媒性のAブロックとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸クロライドなどの(メタ)アクリル酸塩系モノマー;酢酸ビニル系モノマー;アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系モノマーなどのコモノマーを共重合させたポリマー構造が挙げられる。

(中略)

【0048】
本発明で用いる(メタ)アクリル系分散剤は、このようなAブロックとBブロックとからなる、ABブロック又はABAブロック共重合型高分子化合物である。中でもABブロック共重合体が好ましい。このようなブロック共重合体は、例えば以下に示すリビング重合法にて調製される。
リビング重合法にはアニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法、ラジカルリビング重合法がある。アニオンリビング重合法は、重合活性種がアニオンであり、例えば下記スキームで示される。

(中略)

【0054】
本発明に係るABブロック共重合体およびABAブロック共重合体の、固形分1g中のアミン価は、好ましくは90?150mgKOH/gであり、より好ましくは100?140mgKOH/gである。
アミン価が低すぎると、顔料表面への吸着力が不十分となり、十分な分散安定性を得ることができない。一方、アミン価が高すぎると逆にAブロックの分子量が不十分になることを意味するため、分散安定性が劣る。言い換えれば、最適な分散性を発現するためのアミン価が上記範囲にある、ということになる。
【0055】
なお、分散剤のアミン価(有効固形分換算)は、分散剤試料中の溶剤を除いた固形分1gあたりの塩基量と当量のKOHの重量で表し、次の方法により測定する。100mLのビーカーに分散剤試料の0.5?1.5gを精秤し、50mLの酢酸で溶解する。pH電極を備えた自動滴定装置を使って、この溶液を0.1mol/L HClO_(4)酢酸溶液にて中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点とし次式によりアミン価を求める。
【0056】
アミン価[mgKOH/g]=(561×V)/(W×S)
(但し、W:分散剤試料秤取量[g]、V:滴定終点での滴定量[mL]、S:分散剤試料の固形分濃度[wt%]を表す。)
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常50mgKOH/g以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。
本発明においては、上述のものと同様の構造を有する市販の(メタ)アクリル系ブロック共重合体を適用することもできる。
【0057】
本発明の顔料分散液は、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるABブロック共重合体またはABAブロック共重合体であり、そのアミン価が80mgKOH/g(有効固形分換算)以上である分散剤を用いることが必須である。分散剤としてこのようなブロック共重合体を用いることにより、顔料表面への強固な高分子吸着と、高い溶媒親和性を同時に満たすことができるため、高い分散安定性を発現することができる。又、アミン価を高めることで特に酸性処理された顔料表面への吸着力が増すため、一層分散安定性が向上する。
【0058】
特に、Bブロックにおける窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であることが好ましい。これより少ないと、たとえアミン価として80mgKOH/g以上だったとしても十分な吸着力を得ることができず、高い分散安定性が得られない場合もある。
なお、顔料の平均一次粒径が小さいときには、比表面積が増大することで単位面積当たりの分散剤吸着量が少なくなる。このような場合に、上述したABブロック共重合体またはABAブロック共重合体からなる分散剤は、他の構造の分散剤と比べて効果の差が非常に顕著に現れるため、特に好適に用いられるものである。本発明における分散剤は、顔料分散液中の顔料全量に対して5?200重量%程度使用することが好ましく、10?100重量%程度使用することがより好ましい。
本発明の顔料分散液および着色組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述したブロック共重合体からなる分散剤以外の分散剤を含有していてもよい。このような分散剤としては、例えば特開2006-343648号公報に記載の各種分散剤などが挙げられる。」

(エ) 「【0063】
[2-1]バインダー樹脂
バインダー樹脂としては、前述したように、どのような手段により硬化する着色組成物とするかにより、好ましい樹脂は異なる。光重合性樹脂組成物の場合、バインダー樹脂としては、例えば特開平7-207211号、特開平8-259876号、特開平10-300922号、特開平11-140144号、特開平11-174224号、特開2000-56118号、特開2003-233179号などの各公報等に記載される公知の高分子化合物を使用することができるが、好ましくは
[2-1-1]:エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、或いは該付加反応により生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる、アルカリ可溶性樹脂
[2-1-2]主鎖にカルボキシル基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂
[2-1-3]前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂
[2-1-4](メタ)アクリル系樹脂
[2-1-5]カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂
等が挙げられる。以下、これら各樹脂について説明する。」

(オ) 「【0169】
[2-2]その他の固形分
本発明のカラーフィルタ用着色組成物には、更に、必要に応じ上記成分以外の固形分を配合できる。このような成分としては、光重合性モノマー、光重合開始系成分、有機カルボン酸、有機カルボン酸無水物、界面活性剤、熱重合防止剤、可塑剤、保存安定剤、表面保護剤、密着向上剤、現像改良剤、染料等が挙げられる。
【0170】
[2-2-1]光重合性モノマー
光重合性モノマーは、重合可能な低分子化合物であれば特に制限はないが、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と称す)が好ましい。エチレン性化合物とは、本発明の着色組成物が活性光線の照射を受けた場合、後述の光重合開始系の作用により付加重合し、硬化するようなエチレン性二重結合を有する化合物である。なお、本発明における単量体は、いわゆる高分子物質に相対する概念を意味し、狭義の単量体以外に二量体、三量体、オリゴマーも含有する概念を意味する。

(中略)

【0175】
その他、本発明に用いられるエチレン性化合物としては、例えば、エチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類;フタル酸ジアリル等のアリルエステル類;ジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等も有用である。
また、エチレン性化合物は酸価を有するモノマーであってもよい。酸価を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。」

(カ) 「【0179】
[2-2-2]光重合開始系
光重合開始剤は、通常、加速剤及び必要に応じて添加される増感色素等の付加剤との混合物(光重合開始系)として用いられる。光重合開始系は、光を直接吸収し、或いは光増感されて分解反応又は水素引き抜き反応を起こし、重合活性ラジカルを発生する機能を有する成分である。
光重合開始系成分を構成する光重合開始剤としては、例えば、特開昭59-152396号、特開昭61-151197号各公報に記載のチタノセン化合物を含むメタロセン化合物や、特開平10-39503号公報記載のヘキサアリールビイミダゾール誘導体、ハロメチル-s-トリアジン誘導体、N-フェニルグリシン等のN-アリール-α-アミノ酸類、N-アリール-α-アミノ酸塩類、N-アリール-α-アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤、α-アミノアルキルフェノン系化合物、特開2000-80068号公報に記載されているオキシムエステル系開始剤等が挙げられる。」

(キ) 「【0209】
[4-1]透明基板(支持体)
カラーフィルタの透明基板としては、透明で適度の強度があれば、その材質は特に限定されるものではない。材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホンの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、又は各種ガラスなどが挙げられる。この中でも、耐熱性の観点からガラスまたは耐熱性樹脂が好ましい。」

(ク) 「【0215】
[4-3]画素の形成
画素の形成方法は、使用する着色組成物の種類により異なるが、ここでは着色組成物として光重合性組成物を用いた場合を例に説明する。
ブラックマトリクスを設けた透明基板上に、赤色、緑色、青色のうち一色の着色組成物を塗布し、乾燥した後、塗布膜の上にフォトマスクを重ね、このフォトマスクを介して画像露光、現像、必要に応じて熱硬化又は光硬化により画素画像を形成させ、着色層を作成する。この操作を、赤色、緑色、青色の三色の着色組成物について各々行なうことによって、カラーフィルタ画像を形成することができる。」

(ケ) 「【0228】
[5]液晶表示装置(パネル)
次に、本発明に係る液晶表示装置(パネル)の製造法について説明する。本発明に係る液晶表示装置は、通常、上記本発明に係るカラーフィルタ上に配向膜を形成し、この配向膜上にスペーサを散布した後、対向基板と貼り合わせて液晶セルを形成し、形成した液晶セルに液晶を注入し、対向電極に結線して完成する。配向膜は、ポリイミド等の樹脂膜が好適である。配向膜の形成には、通常、グラビア印刷法及び/又はフレキソ印刷法が採用され、配向膜の厚さは数10nmとされる。熱焼成によって配向膜の硬化処理を行なった後、紫外線の照射やラビング布による処理によって表面処理し、液晶の傾きを調整しうる表面状態に加工される。」

(コ) 「【0241】
[4]緑色顔料分散液の調製
緑色顔料として合成例にて得られた臭素化亜鉛フタロシアニンaまたはbを7.24重量部及びC.I.ピグメントイエロー150を2.54重量部、また比較例4、5については緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン36を6.31重量部及びC.I.ピグメントイエロー150を3.47重量部使用し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60.00重量部、分散剤として表1に記載の各種を固形分換算で1.96重量部、および表1に記載の分散樹脂を固形分換算で3.26重量部、径0.5mmのジルコニアビーズ225重量部をステンレス容器に充填し、ペイントシェーカーにて6時間分散させて緑色顔料分散液を調製した。
【0242】
【表1】

【0243】
但し、表1における分散剤AおよびBは以下の化合物である。
<分散剤A:ビックケミー社製分散剤「BYK-LPN6919」>
メタクリル酸系ABブロック共重合体。アミン価は121mgKOH/g、酸価は1mgKOH/g以下である。
Bブロックに含まれる、窒素原子含有官能基を有する繰返し単位のうち、約100モル%が下記式(i)で表される構造であり、また下記式(ii)で表される繰返し単位の、Aブロックにおける割合は11モル%であった。」

イ 記載事項(ア)の請求項1?3,5の記載に基づけば、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる。
「顔料、溶剤および分散剤を含有し、該顔料が臭素化亜鉛フタロシアニンを含有し、該分散剤が、親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤を含有する顔料分散液、およびバインダー樹脂を含有してなる、カラーフィルタ用着色組成物。」(以下、「引用発明」という。)

(2)甲第2号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、DIC株式会社,“高色再現を実現するカラーフィルタ用の新グリーン顔料を開発”,[online],平成26年9月9日,DIC株式会社,[平成29年7月7日検索],インターネット(以下、「甲第2号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「 今般、当社が他社に先駆け開発しましたG59は、G58シリーズと同様に中心金属を亜鉛とするフタロシアニン系顔料ですが、高輝度と高着色力を両立するために、最適な分光透過スペクトルを有する化学構造として設計しました。当製品は、G58並みの高輝度とG7を大きく上まわる着色力を有する、極めて優れた新規カラーフィルタ用グリーン顔料です。」(第1葉第12?15行)

(3)甲第3号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、"Benefical Combination of Blockcopolymer Dispersants, Pigments, Binders and Solvents Used for Color Filters in the Flat Panel Display Technology - Rules and Proposals", RESERCH DISCLOSURE, Ireland, 2014/12/23, Research Disclosure database number 609069(以下、「甲第3号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「Especially for Pigment Green 59 (but also for Pigment Green 58) diblock copolymers based on
MMA/Isobornyl methacrylate/DMAEMA- copolymers
BMA/ Isobornyl methacrylate/DMAEMA- copolymers
MMA/BMA(in any ratio)/ Isobornyl methacrylate/DMAEMA- copolymers
with preferably Mn from 2,000 - 18,000 and most preferably Mn from 5,000 - 15,000, and an amine value preferably from 20 - 160 and most preferably from to 50 - 140 can be used.

These products are especially suitable for the grinding of Pigment Green 58 and Pigment Green 59.
Here they improve especially the Y-value and show good heat stability of the final color resist.
Of course, Pigment Green 58 and Pigment Green 59 can be grinded alone or in combination with yellow pigments (e.g. Pigment Yellow 150 or Pigment Yellow 138), to get even better Y value and brightness of the color resist and the final color filter」(第6葉第1行?第15行)
翻訳文
「特に、ピグメントグリーン59(ただし、ピグメントグリーン58も)のために、以下をベースとする2ブロック共重合体が使用できる。
MMA/イソボルニルメタクリレート/DMAEMA-共重合体
BMA/イソボルニルメタクリレート/DMAEMA-共重合体
MMA/BMA(任意の比率で)/イソボルニルメタクリレート/DMAEMA-共重合体
好ましくは、Mnが2,000-18,000、最も好ましくはMnが5,000-15,000であり、アミン価が好ましくは20-160、最も好ましくは50-140である。

これらの製品は、ピグメントグリーン58及びピグメントグリーン59の粉砕に特に適している。
ここでは、特にY値を改善し、最終的にカラーレジストの良好な熱安定性を示す。
もちろん、ピグメントグリーン58及びピグメントグリーン59は、カラーレジスト及び最終的にカラーフィルターのさらに良好なY値及び輝度を得るために、単独で又は黄色顔料(例えば、ピグメントイエロー150又はピグメントイエロー138)と組み合わせて粉砕することができる。」

(4)甲第5号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-339330号公報(以下、「甲第5号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項6】
前記顔料分散剤のガラス転移温度が、70℃以上である、請求項1乃至5のいずれかに記載の熱硬化性インク用顔料分散液。」

イ 「【0091】
また、この共重合体からなる顔料分散剤は、後述するインクの保存安定性の点から低い方が好ましく、実質的に酸性官能基がないと見なせる値、具体的には酸価が10mgKOH/g以下が好ましく、特に3mgKOH/g以下であることが好ましい。共重合体が酸性官能基を持たなくても加水分解等の影響や実験誤差により酸価が検出される場合があり、例えば、酸性官能基を含まないメチルメタクリレートモノポリマーであっても、酸価実測値が3mgKOH/gとなる場合がある。なお、酸価は固形分1gあたりの酸価を示し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。」

(5)甲第6号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2004-339368号公報(以下、「甲第6号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項6】
前記顔料分散剤のガラス転移温度が70℃以上である、請求項1乃至5のいずれかに記載の顔料分散液。」

イ 「【0104】
また、この共重合体からなる顔料分散剤の酸価は、実質的に酸性官能基がないと見なせる値、具体的には10mgKOH/g以下が好ましく、特に3mgKOH/g以下であることが好ましい。酸性官能基を持たなくても加水分解等の影響や実験誤差により酸価が検出される場合があり、例えば、酸性官能基を含まないメチルメタクリレートホモポリマーであっても酸価実測値が約3mgKOH/mgとなる場合がある。なお、酸価は固形分1gあたりの酸価を示し、JIS K0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。」

(6)甲第7号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2006-343648号公報(以下、「甲第7号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターに用いられる色材分散液、硬化性樹脂組成物及びその製造方法、並びにそれを用いたカラーフィルター及び液晶表示装置に関する。」

イ 「【0049】
〔1-2〕(B)分散剤:
本発明の色材分散液は、(B)分散剤として、例えば、窒素原子を含有するグラフト共重合体及び/又はアクリル系ブロック共重合体を含有する。以下、各分散剤について詳述する。

(中略)

【0102】
また、このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常100mg-KOH/g以下であり、その分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で通常1000以上、100000以下の範囲である。ブロック共重合体の分子量が小さすぎると分散安定性が低下し、大きすぎると現像性、解像性が低下する傾向にある。」

ウ 「【0178】
〔2-3〕モノマー:
モノマーは、光重合性で、重合可能な低分子化合物を含むものであれば良く、特に制限はないが、官能基を有する多官能モノマーであるのが好ましく、エチレン性二重結合を少なくとも1つ有する付加重合可能な化合物(以下、「エチレン性化合物」と称す。)が更に好ましい。また、モノマーは酸基を有していても良い。

(中略)

【0190】
酸基を有する多官能モノマーの酸価は、通常0.1mg-KOH/g以上、中でも5mg-KOH/g以上、また、通常40mg-KOH/g以下、中でも30mg-KOH/g以下の範囲が好ましい。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが必須である。」

(7)甲第8号証
取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2011-191783号公報(以下、「甲第8号証」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
顔料分散剤と、顔料と、溶媒とを有するカラーフィルタ用顔料分散液であって、前記顔料分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、さらに前記構成単位(1)が有するアミノ基と、下記一般式(III)で表される酸性リン酸エステルとが塩を形成したブロック共重合体であることを特徴とするカラーフィルタ用顔料分散液。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(I)?(III)中、R^(1)は、水素、またはメチル基であり、R^(2)およびR^(3)は、水素、または炭素数が1?8の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、Q^(1)は、炭素数1?8のアルキレン基、-(CH(R^(6))-CH(R^(7))-O)_(x)-CH(R^(6))-CH(R^(7))-および-((CH_(2))_(y)-O)_(z)-(CH_(2))_(y)-からなる群から選択される置換基である。また、R^(6)およびR^(7)は、それぞれ独立に水素、またはメチル基である。
また、R^(4)およびR^(5)は、炭素数が1?18の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ビフェニル基、-(CH(R^(6))-CH(R^(7))-O)_(x)-R^(8)および-((CH_(2))_(y)-O)_(z)-R^(8)からなる群から選択される置換基であり、芳香環中の水素は、炭素数が1?4の直鎖または分枝のアルキル基で置換することができる。
ここで、R^(8)は水素、または炭素数が1?18の直鎖、分枝または環状のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、ビフェニル基、-CHO、-CH_(2)CHO、-CO-CH=CH_(2)、-CO-C(CH_(3))=CH_(2)、および-CH_(2)COOR^(9)からなる群から選択される置換基である。R^(8)が水素以外である場合、R^(8)中の炭素原子上の水素は、炭素数が1?4の直鎖または分枝のアルキル基またはF、Cl、Brで置換することができる。また、R^(9)は水素、または炭素数が1?5のアルキル基である。
また、xは0?18の整数であり、yは1?5の整数であり、zは0?18の整数である。l、mは1?200の整数であり、nは1?2の整数である。)」

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件特許発明1について
(ア) 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「顔料」、「分散剤」、及び「溶剤」は、「顔料分散液」を構成するものである。顔料分散液における機能を鑑みれば、引用発明の「顔料」、「分散剤」、及び「溶剤」は、それぞれ、本件特許発明1の「色材」、「分散剤」、及び「溶剤」に相当するといえる。
また、引用発明の「顔料分散液」は「カラーフィルタ用着色組成物」に含有されるものである。そうすると、引用発明の「顔料分散液」は、「カラーフィルタ用」といえる。したがって、引用発明の「顔料分散液」は、本件特許発明1の「カラーフィルタ用色材分散液」に相当する。

b 引用発明の「分散剤」は「親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である」とされるものである。ここで、引用発明の「分散剤」における「Bブロック」は、「窒素原子を含む官能基を有する」ブロックであって、「窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来」であるから、本件特許発明1の「一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック」に包含される。また、引用発明の「分散剤」は、「オキシラニル基及びオキセタニル基」を有するものではないから、本件特許発明1において除くとされた「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合」には該当しない。
そうすると、引用発明の「親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤」と、本件特許発明1の「前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体;P2:前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)?(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である(但し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合を除く)」とは、「前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック」「を含有するブロック共重合体」;P2:前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)?(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;」「(但し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合を除く)」である点で共通する。

c 以上より、本件特許発明1と引用発明とは、
「色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、
P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックを含有するブロック共重合体;
P2:前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)?(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;
(但し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合を除く)、カラーフィルタ用色材分散液。
【化1】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(1)において、R^(a)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R^(b)、R^(b’)、及びR^(b”)はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(f)を表し、R^(f)は、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R^(c)及びR^(d)はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R^(c)及びR^(d)の少なくとも一つは炭素原子を含む。)」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1-1]本件特許発明1では、色材が、C.I.ピグメントグリーン59であるのに対し、引用発明では、顔料が臭素化亜鉛フタロシアニンである点。
[相違点1-2]本件特許発明1では、分散剤のBブロックが、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み、分散剤の酸価が2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であるのに対し、引用発明では、分散剤の親溶媒性を有するAブロックが、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むとしておらず、分散剤の酸価を特定していない点。
[相違点1-3]本件特許の請求項1に係る発明では、分散剤のガラス転移温度が30℃以上であるのに対し、引用発明1では、分散剤のガラス転移温度を特定していない点。

(イ) 判断
事案に鑑みて[相違点1-2]について検討する。
引用発明は、前記3(1)イに記載したとおりのものであって、酸価を発明特定事項として具備するものではない。したがって、引用発明の酸価が、2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下の範囲に含まれるということはできない。
次に、甲第1号証の記載事項(イ)を考慮すれば、引用発明において関心が向けられている事項は、酸価ではなくアミン価である。したがって、当業者といえども、引用発明の分散剤の酸価が2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下の範囲に制御することが容易にできた事項であるということはできない。
甲第1号証の記載事項(ウ)の段落【0056】には、「このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、通常50mgKOH/g以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。」と記載されている。この記載から理解される事項は、引用発明の分散剤の酸価は低い方が好ましいという事項である。そうしてみると、当業者であれば、引用発明の分散剤の酸価を、当業者における通常の創意工夫により可能な範囲内において、できるだけ低い方となるように、すなわち引用発明の分散剤に酸性基が含まれないように設計すると考えられる。この点は、甲第1号証の記載事項(ウ)の段落【0044】に挙げられるAブロックのポリマー構造や、甲第1号証の記載事項(ウ)の段落【0039】?【0041】に挙げられるBブロックの構造には酸性基が含まれていないことからみても明らかな事項である。
甲第5号証の記載事項イには「共重合体が酸性官能基を持たなくても加水分解等の影響や実験誤差により酸価が検出される場合があり、例えば、酸性官能基を含まないメチルメタクリレートモノポリマーであっても、酸価実測値が3mgKOH/gとなる場合がある。」という記載があり、甲第6号証の記載事項イには「酸性官能基を持たなくても加水分解等の影響や実験誤差により酸価が検出される場合があり、例えば、酸性官能基を含まないメチルメタクリレートホモポリマーであっても酸価実測値が約3mgKOH/mgとなる場合がある。」との記載がある。これらの記載によれば、酸性基を含まなくとも、ホモポリマーの酸価が3mgKOH/g程度となる場合があるといえる。しかしながら、甲第1号証の記載事項(コ)には、実施例に用いられた「分散剤A」として、ビックケミー社製分散剤「BYK-LPN6919」が開示されているところ、この分散剤は「酸価は1mgKOH/g以下」とされている。本件特許の優先日時点の当業者において、酸化が2mgKOH/g未満の分散剤を入手することは、単に市販品を入手すれば良い程度の事項であったといえる。このような甲第1号証の記載内容を勘案すると、当業者が引用発明を具体化した場合においても、その分散剤の酸価が、2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下の範囲に入ることがあるということはできない。
甲第7号証の記載事項ウに「酸基を有する多官能モノマーの酸価は、通常0.1mg-KOH/g以上、中でも5mg-KOH/g以上、また、通常40mg-KOH/g以下、中でも30mg-KOH/g以下の範囲が好ましい。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが必須である。」と記載されている。甲第7号証の記載事項アによれば、記載事項ウにおける酸基を有する多官能モノマーは、カラーフィルターに用いられる色材分散液に含有されるものといえる。そうすると、甲第7号証の記載に基づけば、カラーフィルター用組成物において用いられる成分の酸価が現像溶解性や光重合性能、硬化性に影響を及ぼすことが従来より知られていたといえる。しかしながら、同じカラーフィルター用の色材分散液に含まれる成分であったとしても、分散剤は、多官能モノマーと異なり光重合性能及び硬化性を要求されるものではなく、色材分散性を求められる点でも相違している。そして、甲第7号証の記載事項イには分散剤として含有されるブロック共重合体の酸価について、「このブロック共重合体の酸価は、該酸価の元となる酸性基の有無及び種類にもよるが、一般に低い方が好ましく、」と記載されている。以上より、多官能モノマーの酸価を5mg-KOH/g以上とすることが知られていたとしても、分散剤の酸価も同様の範囲とすることが求められていたとはいえない。そうすると、異議申立人が主張するように「カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロック」を含ませて、共重合体の酸価を調整することが既に広く知られていたことであったとしても、引用発明の分散剤の酸価は「一般に低い方が好ましく」調整されるものであるから、分散剤の構成単位としてカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を採用し、分散剤の酸価を2mgKOH/g以上とする動機が存在したとはいえない。
以上のとおりであるから、引用発明において、分散剤の酸価を2mgKOH/g以上とすることを、当業者が容易になし得たということはできない。

よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1?3,5?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

イ 本件特許発明3について
(ア) 対比
本件特許発明3と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「顔料」、「分散剤」、及び「溶剤」は、「顔料分散液」を構成するものである。顔料分散液におけるそれぞれの機能を鑑みれば、引用発明の「顔料」、「分散剤」、及び「溶剤」は、それぞれ、本件特許発明3の「色材」、「分散剤」、及び「溶剤」に相当するといえる。
また、引用発明の「顔料分散液」は「カラーフィルタ用着色組成物」に含有されるものである。そうすると、引用発明の「顔料分散液」は、「カラーフィルタ用」といえる。したがって、引用発明の「顔料分散液」は、本件特許発明3の「カラーフィルタ用色材分散液」に相当する。

b 引用発明の「分散剤」は「親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である」とされるものである。ここで、引用発明における「Bブロック」は、「窒素原子を含む官能基を有する」ブロックであって、「窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来」であるから、本件特許発明2の「一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック」に包含される。
そうすると、引用発明の「親溶媒性を有するAブロック及び窒素原子を含む官能基を有するBブロックからなるブロック共重合体であり、窒素原子を含む官能基成分のうち少なくとも20モル%以上が1?3級アミノ基であり、1?3級アミノ基を有する繰返し単位が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート由来であり、そのアミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下(有効固形分換算)である分散剤」と本件特許発明3の「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上8mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である」とは、「前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック」「を含有するブロック共重合体であ」「る」点で共通する。

c 以上より、本件特許発明3と引用発明とは、
「色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックを含有するブロック共重合体である、カラーフィルタ用色材分散液。
【化2】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。)」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点3-1]本件特許発明3では、色材が、C.I.ピグメントグリーン59であるのに対し、引用発明では、顔料が臭素化亜鉛フタロシアニンである点。
[相違点3-2]本件特許発明3では、分散剤のBブロックが、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み、分散剤の酸価が2mgKOH/g以上8mgKOH/g以下であるのに対し、引用発明では、分散剤の親溶媒性を有するAブロックが、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むとしておらず、分散剤の酸価を特定していない点。
[相違点3-3]本件特許発明3では、分散剤のガラス転移温度が30℃以上であるのに対し、引用発明1では、分散剤のガラス転移温度を特定していない点。

(イ) 判断
事案に鑑みて[相違点3-2]について検討する。[相違点3-2]と[相違点1-2]は、「分散剤の酸価が2mgKOH/g以上」であることを相違点とする点で共通している。
そして、前記ア(イ)において検討したとおり、引用発明において、分散剤の酸価を2mgKOH/g以上とすることを、当業者が容易になし得たとはいえないものであるから、[相違点3-2]についても、同様の理由により、当業者が容易になし得たとはいえない。

よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1?3,5?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

ウ 本件特許発明2,4?8について
本件特許発明2,4?8は、本件特許発明1又は本件特許発明3を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1又は本件特許発明3についての判断と同様の理由により、甲第1?3,5?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ むすび
以上のとおり、本件特許発明1?8は、甲第1?3,5?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得るものではない。

(2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 特許法第36条第6項第2号について
異議申立人秋山満は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項3に関し、特許異議申立書において、請求項1に記載の「分散剤の酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下」及び請求項3に記載の「分散剤の酸価が1mgKOH/g以上8mgKOH/g以下」が、加水分解の影響によって少量の「カルボキシ基」が事後的に発生して酸価が「3mgKOH/g」になった場合をも包含するのか否か、全く不明であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないと主張している。
しかし、請求項1の「分散剤の酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下」及び請求項3の「分散剤の酸価が1mgKOH/g以上8mgKOH/g以下」との記載は、事後的に発生するか否かに関わらず、カラーフィルタ用色材分散液に含有されている分散剤の酸価の範囲を特定するものであるから、その範囲は明確である。
よって、本件特許の請求項1及び3は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしており、異議申立人の主張は理由がない。

イ 特許法第36条第6項第1号について
異議申立人秋山満は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし8に関し、特許異議申立書において、分散剤の種類に関して非常に広い範囲を包含しているが、その実施例においては、DMMA(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)を共重合したアクリル系共重合体しか使用されておらず、それ以外の種類の分散剤の効果に関しては何も実証されていないから、本件請求項1?8は明細書の開示範囲を大きく逸脱するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないと主張している。
しかし、本件特許の明細書の段落【0013】の記載に基づけば、本件特許発明1ないし8が解決しようとする課題は、色材分散安定性に優れた分散液を提供するものといえるものである。そして、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体とされる分散剤において、色材分散安定性は、それぞれのブロックが分担する色材吸着性と溶剤親和性によって達成されるものであり、一般式(I)における2価の連結基AやR^(1)、R^(2)、R^(3)の差異による寄与は小さいものであることは技術常識であるといえる。したがって、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体からなる分散剤を含む本件特許発明1?8の作用効果は、本件特許の明細書の記載から十分に推認できるものである。
よって、本件特許発明1?8は、発明の詳細な説明に記載したものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしており、異議申立人の主張は理由がない。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、C.I.ピグメントグリーン59を含み、
前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、
P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体;
P2:前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)?(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;
当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である(但し、前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、且つ、オキシラニル基及びオキセタニル基を有し、重合体中のオキシラニル基(oxi)と、オキセタニル基(oxe)との割合が、モル比(oxi/oxe)で3/97?50/50である場合を除く)、カラーフィルタ用色材分散液。
【化1】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(1)において、R^(a)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R^(b)、R^(b’)、及びR^(b”)はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(f)を表し、R^(f)は、置換基を有してもよい炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R^(c)及びR^(d)はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R^(e)を表し、R^(e)は、炭素数1?20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1?4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R^(c)及びR^(d)の少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【請求項2】
前記分散剤において、前記塩型ブロック共重合体(P2)を含み、当該分散剤の酸価が4mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である、請求項1に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項3】
色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記色材が、C.I.ピグメントグリーン59を含み、
前記分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であって、
当該分散剤の酸価が2mgKOH/g以上8mgKOH/g以下で、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である、カラーフィルタ用色材分散液。
【化2】

(一般式(I)中、R^(1)は水素原子又はメチル基、Aは、2価の連結基、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R^(2)及びR^(3)が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項4】
前記分散剤において、前記ブロック共重合体のアミン価が40mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有する、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項5に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項7】
前記請求項6に記載のカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記請求項6に記載のカラーフィルタと、有機発光体を有することを特徴とする有機発光表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-02 
出願番号 特願2016-175921(P2016-175921)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩井 好子  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
佐藤 秀樹
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6059396号(P6059396)
権利者 株式会社DNPファインケミカル
発明の名称 カラーフィルタ用色材分散液、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置、及び有機発光表示装置  
代理人 山下 昭彦  
代理人 山下 昭彦  
代理人 岸本 達人  
代理人 岸本 達人  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ