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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1339164 |
異議申立番号 | 異議2017-700264 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-13 |
確定日 | 2018-02-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5992792号発明「トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5992792号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕及び〔8ないし11〕について訂正することを認める。 特許第5992792号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5992792号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成24年10月10日の出願であって、平成28年8月26日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数4)がされ、その後、その特許に対し、平成29年3月13日付け(受理日:同年3月14日)で特許異議申立人 渡辺 広基(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、当審において同年5月2日付けで取消理由が通知され、同年7月10日付け(受理日:同年7月12日)で特許権者 住友ゴム工業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)がされ、同年7月18日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月21日付け(受理日:同年8月22日)で特許異議申立人から意見書が提出され、同年9月15日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年10月4日付け(受理日:同年10月6日)で特許権者から意見書並びに訂正請求書及び訂正特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年11月20日付けで取消理由(決定の予告)がされ、平成30年1月19日付け(受理日:同年1月22日)で特許権者から意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正の請求(なお、平成29年7月10日付け(受理日:同年7月12日)で提出された訂正請求書及び訂正特許請求の範囲は、同年10月4日付け(受理日:同年10月6日)で提出された手続補正書により補正されている。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1(請求項1に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項1に 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系又はチアゾール系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3)」 と記載されているのを、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2と、酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3)」 に訂正する。 (2)訂正事項2(請求項2に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項2に 「前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含む請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。」 と記載されているのを、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 2.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物。」 に訂正する。 (3)訂正事項3(請求項3に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項3に 「前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。」 とあるうち、請求項1を引用するものについて、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物(但し、(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物を除く)。」 に訂正する。 (4)訂正事項4(請求項4に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1?3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 とあるうち、請求項1を引用するものについて、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 2.0≦C/B (3)」 に訂正する。 (5)訂正事項5(請求項5に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項3に 「前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。」 とあるうち、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(4)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 1.5≦C≦5.0 (4) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物。」 に訂正し、新たに請求項5とする。 (6)訂正事項6(請求項6に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1?3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 とあるうち、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が20質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 に訂正し、新たに請求項6とする。 (7)訂正事項7(請求項7に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1?3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 とあるうち、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものについて、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含み、 前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%であるトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 に訂正し、新たに請求項7とする。 (8)訂正事項8(請求項8に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項1に 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系又はチアゾール系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3)」 と記載されているのを、 「ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、チアゾール系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3)」 に訂正し、新たに請求項8とする。 (9)訂正事項9(請求項9に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項2に 「前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含む請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。」 と記載されているのを、 「前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含む請求項8記載のトレッド用ゴム組成物。」 に訂正し、新たに請求項9とする。 (10)訂正事項10(請求項10に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項3に 「前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。」 と記載されているのを、 「前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項8又は9記載のトレッド用ゴム組成物。」 に訂正し、新たに請求項10とする。 (11)訂正事項11(請求項11に係る訂正) 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1?3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 と記載されているのを、 「請求項8?10のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 に訂正し、新たに請求項11とする。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「スルフェンアミド系またはチアゾール系」と選択的に記載されていた「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定するとともに、必須成分として「酸化亜鉛」を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1並びに願書に添付した明細書の【0036】、【0047】、【0053】及び【0060】の【表1】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、式(2)で規定する範囲を「2.0≦(B+C)/A≦60」に減縮するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2は、願書に添付した明細書の【0036】及び【0043】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用するものであったものを、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、「(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物」を除くものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、願書に添付した明細書の【0036】の記載に基づくものであり、また、先行技術との重なりのみを除外するものであり、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1?3のいずれかの記載を引用するものであったものを、請求項2及び3を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、式(3)で規定する範囲を「2.0≦C/B」に減縮するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に添付した明細書の【0036】及び【0044】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用するものであったものを、請求項1を引用しないものとした上で、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、ゴム組成物が満たす条件として、式(4)(1.5≦C≦5.0)を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5は、願書に添付した明細書の【0036】及び【0040】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1?3のいずれかの記載を引用するものであったものを、請求項1及び3を引用しないものとした上で、請求項1を引用した請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、シランカップリング剤の硫黄含有率を「20質量%以上」に減縮するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、願書に添付した明細書の【0036】及び【0025】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1?3のいずれかの記載を引用するものであったものを、請求項1及び2を引用しないものとした上で、請求項1を引用した請求項2を引用した請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、訂正事項1と同様に、「加硫促進剤1」を「スルフェンアミド系」に限定し、さらに、「前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%である」との記載を追加して「ゴム成分」を限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、願書に添付した明細書の【0036】、【0019】及び【0020】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項1において、「スルフェンアミド系またはチアゾール系」と選択的に記載されていた「加硫促進剤1」を「チアゾール系」に限定した上で、訂正後の請求項1とは別の独立形式請求項に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項8は、訂正前の請求項1及び願書に添付した明細書の【0037】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の請求項1に従属していた訂正前の請求項2を、「スルフェンアミド系またはチアゾール系」と選択的に記載されていた「加硫促進剤1」を「チアゾール系」に限定した訂正後の請求項8に従属するものに改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項9は、訂正前の請求項1及び2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項1、2に従属していた訂正前の請求項3を、「スルフェンアミド系またはチアゾール系」と選択的に記載されていた「加硫促進剤1」を「チアゾール系」に限定した訂正後の請求項8、9に従属するものに改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項10は、訂正前の請求項1ないし3の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の請求項1?3のいずれかに従属していた訂正前の請求項4を、「スルフェンアミド系またはチアゾール系」と選択的に記載されていた「加硫促進剤1」を「チアゾール系」に限定した訂正後の請求項8?10のいずれかに従属するものに改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項11は、訂正前の請求項1ないし4の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)一群の請求項 本件訂正の請求による訂正は、訂正前の請求項1ないし4は、訂正前の請求項2ないし4が訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項である。 したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに対してされたものである。 3 むすび 以上のとおり、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正の請求は適法なものである。 そして、特許権者から、訂正後の請求項2ないし11について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕及び〔8ないし11〕について訂正することを認める。 なお、該求めは、訂正後の請求項2、3、4、5、6、7及び8ないし11の間では、別の訂正単位として扱われることの求めかどうかは明確ではないが、訂正後の請求項2、3、4、5、6、7及び8は、独立形式の請求項であることから、上記のように訂正することの求めと判断した。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕及び〔8ないし11〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、平成29年10月4日付け(受理日:同年10月6日)で提出された手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2と、酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 【請求項2】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 2.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物。 【請求項3】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物(但し、(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物を除く)。 【請求項4】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 2.0≦C/B (3) 【請求項5】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(4)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 1.5≦C≦5.0 (4) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物。 【請求項6】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が20質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。 【請求項7】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含み、 前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%であるトレッド用ゴム組成物を用いて作成したトレッドを有する空気入りタイヤ。 【請求項8】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、チアゾール系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 【請求項9】 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含む請求項8記載のトレッド用ゴム組成物。 【請求項10】 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項8又は9記載のトレッド用ゴム組成物。 【請求項11】 請求項8?10のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。」 2 平成29年5月2日付けで通知した取消理由の概要 平成29年5月2日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、該取消理由における「本件特許の請求項1ないし4」は、訂正前の全請求項である。 「1.(明確性)本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2.(サポート要件)本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3.(新規性)本件特許の請求項1及び3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1及び3に係る特許は取り消すべきものである。 4.(進歩性)本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は取り消すべきものである。 記 第1 手続の経緯 ・・・(略)・・・ 第2 本件特許発明 ・・・(略)・・・ 第3 理由1(明確性)について 本件特許の特許請求の範囲の請求項1の「スルフェンアミド系又はチアゾール系の加硫促進剤1」という記載では、本件特許発明1における「加硫促進剤1」が、「スルフェンアミド系の加硫促進剤1」又は「チアゾール系の加硫促進剤1」を意味するのか、「スルフェンアミド系又はチアゾール系」の「加硫促進剤1」を意味するのか明確でなく、本件特許発明1が明確であるとはいえない。 また、本件特許発明2ないし4も同様に明確であるとはいえない。 ・・・(略)・・・ 第4 理由2(サポート要件)について ・・・(略)・・・加硫促進剤1としてスルフェンアミド系の加硫促進剤を使用した場合には、発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。 ・・・(略)・・・ したがって、加硫促進剤1としてチアゾール系の加硫促進剤を使用した場合に、発明の課題を解決することができることを当業者は認識できない。 よって、本件特許発明に関して、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明で、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないので、本件特許発明に関して、本件特許の特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するとはいえない。 ・・・(略)・・・ 第5 理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について 1 本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献等 甲第1号証.特開2010-248315号公報 甲第2号証.エボニックデグサ社(Evonik Degussa GmbH)「Si75プロダクトインフォーメーション(Si75 Product Information)」、2010年7月 甲第4号証.エボニックジャパン株式会社「会社案内」、2015年12月 甲第10号証.特開2006-335984号公報 (甲第1、2、4及び10号証は、平成29年3月13日付けで特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付されたものである。 2 甲第1、2、4及び10号証に記載された事項等 ・・・(略)・・・ 3 対比・判断 ・・・(略)・・・ 4 むすび 以上のとおり、本件特許発明1及び3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 また、本件特許発明2及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 ・・・(略)・・・」 3 平成29年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要 平成29年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。なお、該取消理由(決定の予告)における取消理由1ないし4は、平成29年5月2日付けで通知した取消理由における取消理由1ないし4である。 「第1 手続の経緯 ・・・(略)・・・ 第2 訂正の適否について ・・・(略)・・・ したがって、本件訂正の請求は適法なものである。 そして、特許権者から、訂正後の請求項2ないし11について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕及び〔8ないし11〕について訂正することを認める。 ・・・(略)・・・ 第3 特許異議の申立てについて ・・・(略)・・・ 第4 結語 上記第3のとおり、取消理由1ないし4によっては、請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできないし、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、取消理由1、3及び4によっては、請求項8ないし11に係る特許は取り消すことはできないが、取消理由2によって、請求項8ないし11に係る特許は取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。」 4 取消理由についての判断 平成29年5月2日付けで通知した取消理由及び同年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)を併せて検討する。 (1)取消理由1(明確性)について 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、本件特許発明1ないし7及び8ないし11に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かを検討する。 本件特許発明1ないし7及び8ないし11は、上記第3 1のとおりであり、本件特許発明1ないし7における「加硫促進剤1」が「スルフェンアミド系の加硫促進剤1」のことであることは明確であるし、また、本件特許発明8ないし11における「加硫促進剤1」が「チアゾール系の加硫促進剤1」のことであることも明確である。 したがって、本件特許発明1ないし7及び8ないし11に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえず、本件特許の請求項1ないし7及び8ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 (2)取消理由2(サポート要件)について ア サポート要件 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、本件特許発明1ないし7及び8ないし11に関して、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かを検討する。 イ 発明の課題 本件特許明細書の【0006】等の記載によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「耐摩耗性、耐熱劣化性、加工性及び低燃費性をバランスよく改善したトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供すること」である。 ウ 本件特許発明1ないし7について 本件特許発明1ないし7は、「スルフェンアミド系の加硫促進剤1」を含むものである。 そして、本件特許明細書には、加硫促進剤1としてスルフェンアミド系の加硫促進剤を使用した実施例について、加工性指数、低燃費指数、耐熱劣化指数及び耐摩耗性指数等の評価が記載されており、加硫促進剤1としてスルフェンアミド系の加硫促進剤を使用した場合、すなわち本件特許発明1ないし7が、発明の課題を解決できることを当業者は認識できる。 よって、本件特許発明1ないし7に関して、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明で、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるので、本件特許発明1ないし7に関して、本件特許の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合する。 エ 本件特許発明8ないし11について 本件特許発明8ないし11は、「チアゾール系の加硫促進剤1」を含むものである。 そして、本件特許明細書には、加硫促進剤1としてチアゾール系の加硫促進剤を使用した実施例は本件特許明細書に記載されておらず、また、スルフェンアミド系の加硫促進剤とチアゾール系の加硫促進剤を加硫促進剤1と区分けした理由も本件特許明細書に記載されていない。 また、スルフェンアミド系の加硫促進剤のどのような作用機序により、「耐摩耗性、耐熱劣化性、加工性及び低燃費性をバランスよく改善」することができるのか本件特許明細書に記載されていない。 しかし、スルフェンアミド系の加硫促進剤が、チアゾール系の加硫促進剤への構造変化を経て、ゴムの加硫を生じさせることは、平成30年1月19日付け(受理日:同年1月22日)で特許権者から提出された意見書に添付された以下の乙第5-1ないし5-3号証に記載されているように、本件特許の出願時において、当業者の技術常識である。 また、チアゾール系の加硫促進剤であるMBTSを用いたゴム組成物において、スルフェンアミド系の加硫促進剤を用いたゴム組成物と同様、耐摩耗性、耐熱劣化性、加工性、低燃費性の向上効果が得られることが、平成30年1月19日付け(受理日:同年1月22日)で特許権者から提出された意見書に添付された以下の乙第6号証に示されている。 してみると、チアゾール系の加硫促進剤は、スルフェンアミド系の加硫促進剤と同様に、「耐摩耗性、耐熱劣化性、加工性及び低燃費性をバランスよく改善」することができると当業者は認識できる。 したがって、加硫促進剤1としてチアゾール系の加硫促進剤を使用した場合、すなわち本件特許発明8ないし11が、発明の課題を解決することができることを当業者は認識できる。 よって、本件特許発明8ないし11に関して、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明で、本件特許の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるので、本件特許発明8ないし11に関して、本件特許の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合する。 乙第5-1号証:「Vulcanization & Accelerators(加硫と促進剤)」インターネット<URL:http://www.nocil.com/Downloadfile/DTechnicalNote-Vulcanization-Dec10.pdf> 乙第5-2号証:「SULFUR VULCANIZATION OF NATURAL RUBBER FOR BENZOTHIAZOLE ACCELERATED FORMULATIONS:FROM REACTION MECHANISMS TO A RATIONAL KINETIC MODEL(ベンゾチアゾール促進処方に対する天然ゴムの硫黄架橋:反応機構から理論速度モデルまで)」インターネット<URL:http://cepac.cheme.cmu.edu/pasi2008/slides/venkat/library/reading/RCT-ReviewPublishedPaper.pdf> 乙第5-3号証:「Vulcanization of Rubber(ゴムの加硫)」インターネット<URL:http://www.ias.ac.in/article/fulltext/reso/002/04/0055-0059> 乙第6号証:実験成績証明書 オ 取消理由2(サポート要件)についてのむすび 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。 (3)取消理由3及び4(新規性及び進歩性)について ア 甲第1、2、4及び10号証に記載された事項等 (ア)甲第1号証に記載された事項及び甲1発明 a 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、次の記載(以下、総称して「甲第1号証に記載された事項」という。)がある。 ・「【請求項1】 少なくとも一種のスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを50?100質量%の量で含むゴム成分100質量部に対し、 充填剤としてシリカを10?150質量部、脂肪酸亜鉛塩を0.5?5.0質量部、並びにスルフェンアミド系加硫促進剤を0.2?5.0質量部および/またはチウラム系加硫促進剤を0.2?5.0質量部の量で配合し、さらに シランカップリング剤を前記シリカ100質量部に対して1?20質量部の量で配合してなり、かつ 酸化亜鉛を配合しないことを特徴とするゴム組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のゴム組成物を用いることを特徴とする空気入りタイヤ。 【請求項6】 前記ゴム組成物をトレッドに用いることを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。」 ・「【0005】 ・・・(略)・・・ そこで、本発明は、耐摩耗性の向上を図るとともに優れた低発熱性と加硫物性とを兼ね備え、ゴム成分として乳化重合ポリマーをも採用し得るシリカ配合系のゴム組成物を提供することを目的としている。」 ・「【0010】 本発明のゴム組成物によれば、充填剤としてシリカを配合しつつも優れた耐摩耗性および低発熱性を発揮し得るタイヤを得ることができる。また、スコーチ安全性が高いと同時に加硫速度が速く、かつ良好な加工性をも有する。したがって、かかるゴム組成物を用いれば、高性能な空気入りタイヤが得られ、特にトレッド用ゴム組成物として好適である。」 ・「【0015】 本発明のゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対し、充填剤としてシリカを、通常10?150質量部、好ましくは30?120質量部、より好ましくは50?100質量部の量で配合する。シリカの配合量が10質量部未満であると、本発明の効果が充分に発揮されないおそれがあり、150質量部を超えると硬度が必要以上に高くなるおそれがある。」 ・「【0018】 本発明のゴム組成物には、さらにシランカップリング剤が配合されてなる。かかるシランカップリング剤の配合量は、上記シリカ100質量部に対して、通常1?20質量部、好ましくは3?15質量部、より好ましくは6?12質量部の量である。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満であるとカップリング効果が充分に発揮されないおそれがあり、20質量部を超えるとゲル化を引き起こすおそれがある。」 ・「【0019】 上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-(2-メチル-1,3-プロパンジアルコキシエトキシシリル)-1-プロピルチオオクタノエート等が挙げられ、市販品を好適に用いることができる。これらシランカップリング剤は一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。なかでも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-(2-メチル-1,3-プロパンジアルコキシエトキシシリル)-1-プロピルチオオクタノエートなどが好ましく、市販品としては、デグサ社の「Si-69」(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)や「Si-75」(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のNXTシラン(3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン)、NXT-LowV(3-(2-メチル-1,3-プロパンジアルコキシエトキシシリル)-1-プロピルチオオクタノエート)などを使用することができる。」 ・「【0040】 本発明のゴム組成物には、上記スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤のほか、本発明の目的を損なわない範囲内でその他の加硫促進剤を配合してもよい。かかる加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)等のグアニジン系加硫促進剤、エチレンチオウレア(ETU)、1,3-ジエチルチオウレア(DETU)、1,3-ジブチルチオウレア(DBTU)、トリメチルチオウレア(TMU)等のチオウレア系加硫促進剤、ジチオカルバメート系加硫促進剤、キサントゲネート系加硫促進剤等が挙げられる。」 ・「【0043】 本発明のゴム組成物は、上記各成分を、たとえば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることにより製造することができる。また、本発明のゴム組成物を用いて乗用車、トラック、バス、二輪車用等の空気入りタイヤを製造する場合には、たとえば押し出し機やカレンダー等によりトレッドやサイドトレッド等の各部材を作製し、これらの部材を成型ドラム上で張り合わせること等でグリーンタイヤを作製し、このグリーンタイヤをタイヤモールドに収め、内側から圧を加えながら加硫する方法などにより行うことができる。なお、タイヤ内部には、空気のほか、窒素や不活性ガスを充填してもよい。さらに、本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、ホース、ベルトコンベアなどの肉厚のゴム製品などにも好適に使用でき、特にタイヤのトレッドのベースゴムやベルトゴム等に用いるゴム組成物として最適である。」 ・「【0059】 [実施例1?6、比較例1?4] バンバリーミキサーを使用して、各成分を表1?2に示す配合処方で混練り混合して、未加硫のゴム組成物を調製し、上記の方法にしたがって各項目につき評価した。結果を表1?2に示す。 【0060】 ・・・(略)・・・ 【0061】 【表2】 【0062】 ※1:SBR#1712(ゴム成分100部に対してオイル37.5部含む油展SBR)、JSR(株)製 ※2:ニップシールAQ、東ソーシリカ(株)製 ※3:ISAF、シースト6、東海カーボン(株)製 ※4:関東化学(株)製 ※5:シランカップリング剤Si75、デグッサ社製 ※6:ノクラック6C、大内新興化学工業(株)製 ※7:酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製 ※8:ノクセラーD、ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業(株)製 ※9:ノクセラーDM、ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学工業(株)製 ※10:ノクセラーNS、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製 ※11:ノクセラーTOT-N、テトラキス-2-エチルヘキシルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業(株)製」 b 甲1発明 甲第1号証に記載された事項、特に【請求項1】、【請求項5】及び【請求項6】並びに実施例2に関する記載を整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「A 乳化重合SBR(ゴム成分100部に対してオイル37.5部含む油展SBR;SBR#1712、JSR(株)製) 137.5質量部(ゴム成分として100質量部)と、 B シリカ(ニップシールAQ、東ソーシリカ(株)製) 60質量部と、 C シランカップリング剤(シランカップリング剤Si75、デグッサ社製) 5.0質量部と、 D 硫黄 1.5質量部と、 E 加硫促進剤TBBS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド;ノクセラーNS、大内新興化学工業(株)製) 0.7質量部と、 F 加硫促進剤TOT-N(テトラキス-2-エチルヘキシルチウラムジスルフィド;ノクセラーTOT-N、大内新興化学工業(株)製) 1.2質量部とを含むゴム組成物。」 (イ)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、Si75の硫黄含有率が15.3質量%である旨の記載がある。 (ウ)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、エボニックジャパン株式会社の「変遷」が記載され、該記載から、エボニック社、エボニックデグサ社及びデグッサ社は実質的に同一法人であることがわかる。 (エ)甲第10号証に記載された事項 甲第10号証には、次の記載(以下、総称して「甲第10号証に記載された事項」という。)がある。 ・「【請求項1】 ゴム成分100重量部に対して、 シリカを20?90重量部、 (A)グアニジン系加硫促進剤を0.5?2重量部、 (B)チウラム系加硫促進剤を0.1?0.5重量部、および (C)一般式(1)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤を0.5?2重量部含有するトレッド用ゴム組成物。 ・・・(略)・・・」 ・「【0001】 本発明は、トレッド用ゴム組成物に関する。」 ・「【0008】 本発明は、加硫工程における加硫速度を最適化させ、さらに、耐熱老化性を向上させたトレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。」 ・「【0012】 本発明によれば、シリカ、および3種類の特定の加硫促進剤をそれぞれ特定量配合することによって、加硫工程における加硫速度を最適化させ、さらに、耐熱老化性を向上させたトレッド用ゴム組成物を提供することができる。」 ・「【0018】 本発明のトレッド用ゴム組成物は、シリカと併用してシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、具体的にビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、加硫を遅延させず、架橋を促進できるという理由により、シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。」 ・「【0020】 本発明において、加硫促進剤は、(A)グアニジン系加硫促進剤、(B)チウラム系加硫促進剤および(C)スルフェンアミド系加硫促進剤からなる。 【0021】 グアニジン系加硫促進剤(A)としては、例えば、ジフェニルグアニジン、ジオルトトリグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどがあげられる。なかでも、加硫速度を速められ、さらに安価であるという効果が得られることから、グアニジン系加硫促進剤(A)としては、ジフェニルグアニジンが好ましい。 【0022】 グアニジン系加硫促進剤(A)の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、0.5重量部以上、好ましくは0.7重量部以上、より好ましくは1重量部以上である。グアニジン系加硫促進剤(A)の含有量が0.5重量部未満では、加硫速度を速める効果が不充分である。また、グアニジン系加硫促進剤(A)の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、2重量部以下、好ましくは1.8重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下である。グアニジン系加硫促進剤(A)の含有量が2重量部をこえると、ゴム中への溶解限度をこえ、ゴム表面にブルーム(析出)してくる。」 ・「【0034】 前記加硫促進剤(A)?(C)を含有するゴム組成物に対して、シリカを特定量、ならびに好ましくゴム成分およびカーボンブラックを特定量配合することで、さらに、加硫速度を最適化、および耐熱老化性を向上させることができ、タイヤのトレッド用ゴム組成物として最適なものとなる。」 ・「【0038】 実施例において使用した各種薬品を以下に記載する。 NR:TSR20 溶液重合SBR(S-SBR):JSR(株)製のSL1552 カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシースト9(N110) シリカ:日本シリカ工業(株)製のニップシールAQ シランカップリング剤:デグサジャパン(株)のSi69 老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C 亜鉛華:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号 アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX140 ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸 硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄 加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 加硫促進剤CBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)加硫促進剤TBZTD:フレキシス(株)製のPerkacit TBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては、「酸化亜鉛」を含むものであるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 甲第1号証の【請求項1】の「酸化亜鉛を配合しないことを特徴とするゴム組成物。」という記載によると、甲1発明は、酸化亜鉛を配合しないことを前提とする発明であるから、甲1発明において、酸化亜鉛を含むようにすることには、阻害要因があるというべきである。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、甲第2、4及び10号証に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到しえたこととはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (イ)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明2においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「2.0≦(B+C)/A≦60 (2)」を満たすものであるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明2においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「2.0≦(B+C)/A≦60 (2)」を満たすことによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。なお、甲第10号証には、グアニジン系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤を使用することによって、耐熱老化性(「耐熱劣化性」に相当する。)を向上させることができることが記載されているが、グアニジン系加硫促進剤を使用せずに、耐熱老化性を向上させることができることは記載されていない。 したがって、本件特許発明2は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (ウ)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点3> 本件特許発明3においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物を除く」ものであるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明3においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物を除く」ことによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明3は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (エ)本件特許発明4について 本件特許発明4と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点4> 本件特許発明4においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「2.0≦C/B (3)」を満たすものであるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明4においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「2.0≦C/B (3)」を満たすことによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明4は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (オ)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点5> 本件特許発明5においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「1.5≦C≦5.0 (4)」を満たすものであるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明5においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「1.5≦C≦5.0 (4)」を満たすことによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明5は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (カ)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点6> 本件特許発明6においては、「前記シランカップリング剤」が「硫黄含有率が20質量%以上のシランカップリング剤」であるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明6においては、「前記シランカップリング剤」が「硫黄含有率が20質量%以上のシランカップリング剤」であることによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明6は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (キ)本件特許発明7について 本件特許発明7と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点7> 本件特許発明7においては、「ゴム成分」が「前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%」であるのに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明7においては、「ゴム成分」が「前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%」であることによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明7は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (ク)本件特許発明8について 本件特許発明8と甲1発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。 <相違点8> 本件特許発明8においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「1.0≦C/B (3)」を満たすものである(当審注:本件特許発明1ないし7と異なり、「加硫促進剤1」は「チアゾール系」である。)のに対し、甲1発明においては、そうではない点。 そこで、検討する。 本件特許発明8においては、「前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)」が「1.0≦C/B (3)」を満たすことによって、「耐摩耗性」、「耐熱劣化性」、「加工性」及び「低燃費性」という4つの特性をバランスよく改善するという効果を奏するものであるが、甲1発明は、そのようなものではないし、甲第2、4及び10号証にも、「耐熱劣化性」を含む上記4つの特性をバランスよく改善するという効果について、記載も示唆もされていない。 したがって、本件特許発明8は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 (ケ)本件特許発明9ないし11について 本件特許発明9ないし11は、請求項8を引用するものであるから、本件特許発明8と同様に、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2、4及び10号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ 取消理由3及び4(新規性及び進歩性)についてのむすび 以上のとおり、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条の規定に違反するものではないから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。 5 平成29年5月2日付けで通知した取消理由及び同年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由 平成29年5月2日付けで通知した取消理由及び同年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由はない。 なお、甲第1、2、4及び10号証以外の特許異議申立書に添付された証拠は、甲第1号証に記載された「シランカップリング剤Si75」に関する文献及び本件特許発明2等で特定された「グアニジン系加硫促進剤」に関する文献であるが、これらを検討しても、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 第4 結語 上記第3のとおり、平成29年5月2日付けで通知した取消理由及び同年11月20日付けで通知した取消理由(決定の予告)によっては、請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2と、酸化亜鉛とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 【請求項2】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 2.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物。 【請求項3】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物(但し、(B+C)/A=1.27かつC/B=1.71であるトレッド用ゴム組成物を除く)。 【請求項4】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 2.0≦C/B (3) 【請求項5】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(4)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 1.5≦C≦5.0 (4) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含むトレッド用ゴム組成物。 【請求項6】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が20質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含むトレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。 【請求項7】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、スルフェンアミド系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たし、 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含み、 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含み、 前記ゴム成分100質量%中、変性スチレンブタジエンゴムの含有量が30?90質量%、ブタジエンゴムの含有量が5?70質量%であるトレッド用ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。 【請求項8】 ゴム成分と、シリカと、シランカップリング剤と、硫黄加硫剤と、チアゾール系の加硫促進剤1と、チウラム系の加硫促進剤2とを含むトレッド用ゴム組成物であって、 前記シリカ及び任意に含まれるカーボンブラックの合計100質量%中の前記シリカの含有率は、80質量%以上であり、 前記シランカップリング剤は、硫黄含有率が15質量%以上のシランカップリング剤を含み、 前記ゴム成分100質量部に対する前記硫黄加硫剤の含有量(A)、前記加硫促進剤1の含有量(B)及び前記加硫促進剤2の含有量(C)が下記式(1)?(3)を満たすトレッド用ゴム組成物。 0.1≦A≦3.0 (1) 1.0≦(B+C)/A≦60 (2) 1.0≦C/B (3) 【請求項9】 前記ゴム組成分100質量部に対して、グアニジン系加硫促進剤0.5?4.0質量部含む請求項8記載のトレッド用ゴム組成物。 【請求項10】 前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカを10?150質量部含み、 前記シリカ100質量部に対して、前記シランカップリング剤を1?20質量部含む請求項8又は9記載のトレッド用ゴム組成物。 【請求項11】 請求項8?10のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-02-14 |
出願番号 | 特願2012-225298(P2012-225298) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤本 保 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大島 祥吾 |
登録日 | 2016-08-26 |
登録番号 | 特許第5992792号(P5992792) |
権利者 | 住友ゴム工業株式会社 |
発明の名称 | トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ |
代理人 | 特許業務法人安富国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |