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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41J
管理番号 1339176
異議申立番号 異議2016-700705  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-09 
確定日 2018-02-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5857700号発明「ラベル作成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5857700号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4〕について訂正することを認める。 特許第5857700号の請求項1、2及び4に係る特許を維持する。 特許第5857700号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5857700号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成23年12月9日に特許出願され、平成27年12月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人藤本拓也(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年11月29日付けで取消理由が通知され、平成29年1月30日に意見書の提出及び訂正の請求があり、同年3月1日に訂正請求書の手続補正書が提出され、当該訂正の請求に対して特許異議申立人から同年5月25日付けで意見書が提出され、さらに、同年8月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年10月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、当該訂正の請求に対して特許異議申立人から同年12月1日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「印刷可能な領域」とあるのを、「印刷可能と設定された領域」に訂正する。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0007】に「印刷可能な領域」とあるのを、「印刷可能と設定された領域」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「印刷可能な領域」とあるのを、「印刷可能と設定された領域」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0009】に「印刷可能な領域」とあるのを、「印刷可能と設定された領域」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0010】の記載を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれかに記載のラベル作成装置。」とあるのを、「請求項1または2に記載のラベル作成装置。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1に係る訂正は、「印刷可能な領域」が「設定された」領域であることを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書の「ラベルの印刷可能な領域を示す情報として、例えば、ラベルの余白領域の設定情報が使用される。」(段落【0009】)との記載等に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項1は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2及び4についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、明細書の段落【0007】の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項2は、上記(1)で述べたように、本件明細書の記載に基づくものであって、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項2は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
上記訂正事項3に係る訂正は、「印刷可能な領域」が「設定された」領域であることを特定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、かかる訂正は、本件特許明細書の「ラベルの印刷可能な領域を示す情報として、例えば、ラベルの余白領域の設定情報が使用される。」(段落【0009】)との記載等に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。
また、訂正事項3は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3は、請求項2を引用する請求項4についても同様に訂正するものであるが、かかる訂正についても、上記と同様に本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
上記訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、明細書の段落【0009】の記載を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4は、上記(3)で述べたように、本件明細書の記載に基づくものであって、本件特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また、訂正事項4は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
上記訂正事項5に係る訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
上記訂正事項6に係る訂正は、訂正事項5に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、明細書の段落【0010】の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
上記訂正事項7に係る訂正は、訂正前の請求項4が引用する請求項から、訂正事項5において削除された請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(8)一群の請求項について
訂正事項1ないし7に係る訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4がそれぞれ請求項1を引用するものであるから、一群の請求項である。
また、訂正後の請求項1、2及び4は、請求項2及び4がそれぞれ請求項1を引用するものであるから、一群の請求項である。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて

1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段により前記印刷媒体に印刷を行うための印刷データであって、印刷される文字の位置を示す第一情報と、印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報とを含む印刷データを受信する受信手段と、
前記印刷手段によって印刷が行われた前記印刷媒体を第一方向に搬送する搬送手段と、
前記印刷手段に対して前記第一方向側に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体のうち前記印刷手段によって印刷が行われた部分を切り離してラベルを作成するために、前記印刷媒体を切断する切断手段と、
前記印刷媒体のうち印刷が行われない部分であって、前記切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さである第一距離を、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第三情報を参照して特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記第一距離と、前記印刷手段から前記切断手段までの間の長さである第二距離とを比較し、前記第一距離よりも前記第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に前記印刷媒体を前記第二距離分搬送し、前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第二方向への前記印刷媒体の搬送を禁止するように、前記搬送手段を制御する第一制御手段と、
前記第一制御手段によって前記搬送手段が制御されたとき、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第一情報に基づいて、前記印刷媒体に文字を印刷させるよう
に前記印刷手段を制御する印刷制御手段と
を備えたことを特徴とするラベル作成装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記第三情報に基づき、前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷可能と設定された領域までの距離を前記第一距離として特定することを特徴とする請求項1に記載のラベル作成装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記第一制御手段は、
前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第一方向に前記印刷媒体が、前記第一距離から前記第二距離を減算した値分搬送されるように、前記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のラベル作成装置。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)特許法第36条第6項第2号について
請求項1ないし4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)特許法第36条第6項第1号について
請求項3及び4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

(3)特許法第29条第2項について

甲第1号証:特開平11-320993号公報
甲第2号証:特開2008-238684号公報
甲第3号証:特開2001-134392号公報
甲第4号証:特開平11-254770号公報
甲第5号証:特開2002-197493号公報
甲第6号証:特開2005-205709号公報

ア.本件の請求項1、2及び4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証(以下「甲1」ないし「甲5」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件の請求項3に係る発明は、甲1ないし甲5及び甲第6号証(以下「甲6」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。よって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ.本件の請求項1、2及び4に係る発明は、甲1、甲2及び甲5に記載された発明、又は、甲1、甲3及び甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件の請求項3に係る発明は、甲1、甲2及び甲5に記載された発明、甲1、甲3及び甲5に記載された発明、甲1、甲2、甲5及び甲6に記載された発明、又は、甲1、甲3、甲5及び甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3.判断
(1)特許法第36条第6項第2号について
ア.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1に関し、特許異議申立書において、「請求項1には「印刷可能な領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報とを含む印刷データを受信する受信手段」と記載されているが、何を以て「印刷可能」とするのかが本件の特許明細書を参酌しても不明確である。……すなわち、本件特許発明1において、第二方向への印刷媒体の搬送が禁止される「第二距離(距離L)<第一距離(距離S)」(第二距離(距離L)≠第一距離(距離S)の場合に、「印刷可能な領域をラベルの端部からの距離によって特定した」第三情報と第一距離との関連性が不明である。……さらに、本件特許発明1は、「第二距離(距離L)>第一距離(距離S)」の場合に第二距離(距離L)分搬送することが構成として含まれている。……したがって、この制御を行った場合に、「端部」から「印刷可能な領域」までの距離は「0」であり、この点と第三情報との関連性が不明である。」(第31ページ第15行?第32ページ第13行)と主張している。

イ.判断
特許異議申立人の上記主張について検討すると、本件訂正によって請求項1の「印刷可能な領域」が「印刷可能と設定された領域」と訂正されたことにより、「印刷可能と設定された領域」がどのような領域を指すのかが明確になった結果、「ラベルの端部」から「印刷可能と設定された領域」までの距離がどのような距離であるのかが明確になった。そして、当該距離によって特定した「第三情報」と「第一距離」との関係が明確となるとともに、当該距離が「0」でないことが明らかになった。
そうすると、訂正後の請求項1の記載は明確になった。
また、請求項1を引用する請求項2及び4の「印刷可能な領域」に係る記載も同様に明確になった。

ウ.まとめ
よって、本件特許の請求項1、2及び4の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。
また、請求項3に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

(2)特許法第36条第6項第1号について
ア.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、以下のように主張している。
「仮に、請求項3に係る本件特許発明3について、特定手段が、第三情報を参照して、第一距離を特定するものであるとすると、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、「第三情報を参照して「前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷媒体に印刷される対象の最も前記端部側の位置までの距離」を特定する特定手段」について、その具体的構成が何ら記載されていない。また、……「特定手段が、第三情報を参照して、「前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷媒体に印刷される対象の最も前記端部側の位置までの距離」を特定すること」について、いわゆる当業者であっても当然には認識できない。」(異議申立書第33ページ第4?14行。)

イ.判断
請求項3に係る特許は訂正により削除された。
請求項4は訂正により請求項3を引用しないものとなったため、請求項4の記載は、発明の詳細な説明の記載により当業者が請求項4に係る発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。

ウ.まとめ
よって、本件特許の請求項4の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。
また、請求項3に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

(3)特許法第29条第2項について
ア.本件発明1について
(ア)甲第1号証に記載された発明
取消理由通知で甲第1号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-320993号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【請求項1】 印刷媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される印刷媒体上に文字や図形等の印刷データを印刷する印刷手段と、
前記印刷手段から所定の距離に設けられ、前記印刷手段により印刷データの印刷が行なわれた印刷媒体上の印刷領域をラベルとして切断する切断手段と、
複数のラベルの印刷を連続して行なうことを指示する印刷指示手段と、
前記搬送手段に印刷媒体を印刷方向に搬送させながら、前記印刷指示手段の指示に応じて印刷データを複数の印刷領域に印刷させ、その印刷動作の終了後に前記搬送手段に印刷媒体を印刷方向とは逆方向に搬送させ、その後に印刷方向に搬送させつつ前記印刷領域の間の切断位置が前記切断手段の位置に搬送される毎にその搬送動作を中断する制御手段と、を備えることを特徴とする印刷装置。」

b.「【0028】テキストメモリ25aには、キー入力部22における文字・記号キーにより入力された任意の文字列からなるテキストデータが記憶される。書式メモリ25bには、入力中の文字列データからなるテキストデータの設定書式データが、文字サイズ、文字間隔、前後余白Mの組み合わせとして記憶される。
【0029】印刷データメモリ25cには、前記テキストメモリ25aに記憶されたテキストデータが、印刷処理の開始に伴ない印刷用キャラクタジェネレータ27により各文字データ毎にフォントパターンに変換されたドットパターンの印刷データとして記憶される。」

c.「【0039】ここで、書式メモリ25bに設定記憶されている印刷データの前後余白Mが、ヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いか否か判断される(ステップS3)。前記書式メモリ25bに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも長い(図6(A)参照)と判断された場合には、現在、前記ステップS1における初期設定により、カッタ8の位置に合わせてロール紙9の先端がセットされている状態から、該ロール紙9が搬送ローラ6,7の矢印iで示す方向の回転により、図6(A)に示すように、(M-L1 )分だけ矢印Aで示す排出方向に搬送され、ロール紙9の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置(5a)に合わされる(ステップS3→S4)。」

d.「【0042】すると、印刷データメモリ25cに記憶されている印刷データがその先頭から1ドットラインデータずつ読み出されてヘッド駆動回路28に転送され、サーマルヘッド5によりロール紙9に印刷出力されるのと共に、これに同期して、ステップモータ駆動回路30によりステップモータ29が1ステップずつ駆動されて搬送ローラ6,7が矢印iの方向に回転され、搬送ステップ数メモリ25dに記憶される搬送ステップ数Sが順次インクリメントされながら、ロール紙9が矢印Aで示す方向に搬送される(ステップS6,S7,S8→S6)。」

e.「【0045】そして、前記搬送ステップ数メモリ25dに順次インクリメントされて記憶される印刷開始からの搬送ステップ数Sが、切断位置メモリ25eに算出記憶された1枚目の切断位置S1 に到達し、1枚目の後余白Mの後端がカッタ位置(8)まで搬送されたと判断されると、ロール紙9の搬送動作が一時停止されるのと共にモータ駆動回路32によりカッタモータ31が駆動され、カッタ8により1枚目の印刷済みのラベルが切断されて分離される(ステップS13→S14)。
【0046】すると再び、前記1枚目の印刷データ印刷後の前後余白2M分までの搬送が継続され(ステップS11,S12,S13→S15→S11)、ロール紙9の前後余白2M分の搬送がなされて、ロール紙9の先端に2枚目の前余白Mが確保された状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置(5a)に合わされたと判断されると、前記ステップS6からの処理に戻り、2枚目の1ライン印刷・搬送処理が前記1枚目と同様に繰り返される(ステップS15→S6,S7,S8→S6)。」

f.「【0054】一方、前記ステップS3において、前記書式メモリ25bに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも短い(図6(B)参照)と判断された場合には、現在、前記ステップS1における初期設定により、カッタ8の位置に合わせてロール紙9の先端がセットされている状態から、該ロール紙9がロール紙巻取り軸9aの矢印jで示す方向の回転により、図6(B)に示すように、(L1 -M)分だけ矢印Bで示す引き戻し方向に逆搬送され、ロール紙9の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置(5a)に合わされる(ステップS3→S20)。
【0055】すると、印刷データメモリ25cに記憶されている印刷データがその先頭から1ドットラインデータずつ読み出されてヘッド駆動回路28に転送され、サーマルヘッド5によりロール紙9に印刷出力されるのと共に、これに同期して、ステップモータ駆動回路30によりステップモータ29が1ステップずつ駆動されて搬送ローラ6,7が矢印iの方向に回転され、搬送ステップ数メモリ25dに記憶される搬送ステップ数Sが順次インクリメントされながら、ロール紙9が矢印Aで示す方向に搬送される(ステップS21,S22,S23→S21)。」

上記の記載事項を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「印刷媒体上に文字や図形等の印刷データを印刷する印刷手段と、
印刷データがロール紙に印刷出力されるのと共に、ロール紙が搬送され、
印刷媒体を印刷方向に搬送する搬送手段と、
前記印刷手段から所定の距離に設けられ、前記印刷手段により印刷データの印刷が行なわれた印刷媒体上の印刷領域をラベルとして切断する切断手段とを備え、
1枚目の後余白Mの後端がカッタ位置まで搬送されたと判断されると、1枚目の印刷済みのラベルが切断されて分離され、
ロール紙の前後余白2M分の搬送がなされて、ロール紙の先端に2枚目の前余白Mが確保された状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされたと判断され、
書式メモリには、入力中の文字列データからなるテキストデータの設定書式データが、文字サイズ、文字間隔、前後余白Mの組み合わせとして記憶され、
印刷データメモリには、テキストメモリに記憶されたテキストデータが、各文字データ毎にフォントパターンに変換されたドットパターンの印刷データとして記憶され、
書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mが、ヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いか否か判断され、前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いと判断された場合には、カッタの位置に合わせてロール紙の先端がセットされている状態から、(M-L1 )分だけ排出方向に搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ、
前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも短いと判断された場合には、(L1 -M)分だけ引き戻し方向に逆搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ、
印刷データメモリに記憶されている印刷データがその先頭から1ドットラインデータずつ読み出されてヘッド駆動回路に転送され、サーマルヘッドによりロール紙に印刷出力される
印刷装置。」

(イ)甲第2号証に記載された発明
取消理由通知で甲第2号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-238684号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0016】
プリンタ20は、コンピュータ10によって制御される印刷装置である。本実施形態では、プリンタ20は印刷用紙への印刷機能だけでなく、印刷物を測色する測色機能をも備える。つまりプリンタ20は測色部付きプリンタである。プリンタ20では、通信I/F24、プリンタコントロールIC25、測色コントロールIC26等がバス32を介して接続されている。プリンタコントロールIC25は、CPU21、ROM22、RAM23を備え、測色コントロールIC26は、I/F26e、CPU26f、ROM26g、RAM26hを備える。通信I/F24(特定のインターフェース)はプリンタI/F17cと接続され、コンピュータ10とプリンタ20は、プリンタI/F17cおよび通信I/F24を介して双方向通信を実現する。通信I/F24はコンピュータ10から送信されるインク種類別のラスタデータを受信可能である。」

b.「【0045】
(2‐3)印刷処理/プリンタ側
図9は、印刷コマンドを受信した場合にプリンタコントロールIC25が実行する処理であり、図10は、図9のフローチャートに従ってプリンタ20が印刷用紙Mに印刷する合成画像である。
上記図8のS300,305を経て、プリンタコントロールIC25は、S400では、印刷コマンドが印刷領域定義コマンドと印刷位置更新コマンドと印刷データコマンドの何れであるか判別し、判別した印刷コマンドの種類に応じて以後の処理を分岐する。なお、ノズル検査コマンドも印刷コマンドの一種であるとするならば、当該S400の判断後の処理の一つとして図18に示した処理を実行することとなる。
印刷領域定義コマンドを受信した場合には、S410においてプリンタコントロールIC25は、コマンドに含まれている画像領域情報を所定の記憶領域に保存する。画像領域情報とは、上記S100において取得した用紙サイズおよび上下左右端の各マージンを示す情報である。
【0046】
S420では、印刷ヘッド25aの位置xh,yhの値を、印刷用紙M上における画像領域の先頭位置の値に設定する。印刷ヘッド25aの位置xh,yhとは、印刷用紙Mの用紙原点を基準とした用紙上の位置を言い、xhの値は、用紙原点から主走査往路方向(X方向)への距離を意味し、yhの値は、用紙原点から紙送り方向と逆方向(Y方向)への距離を意味する。なお本実施形態では、印刷用紙Mの先頭の両端のうち、紙送り方向先を向いたときに左側に位置する端を用紙原点としている。
画像領域の先頭位置は上記画像領域情報によって特定可能である。つまり画像領域の先頭位置は上下左右端の各マージンのうち、左マージン(例えば20mm)と上端マージン(例えば20mm)とによって特定可能であるから、上記S420では、xh=左マージンの値、yh=上端マージンの値と設定する。」

上記の記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「コンピュータとプリンタは、プリンタI/Fおよび通信I/Fを介して双方向通信し、
印刷領域定義コマンドを受信した場合には、プリンタコントロールICは、コマンドに含まれている画像領域情報を所定の記憶領域に保存し、
画像領域情報は、用紙サイズおよび上下左右端の各マージンを示す情報であり、
印刷ヘッドの位置xh,yhの値を、印刷用紙上における画像領域の先頭位置の値に設定し、
画像領域の先頭位置は上下左右端の各マージンのうち、左マージンと上端マージンとによって特定可能である
プリンタ。」

(ウ)甲第3号証に記載された発明
取消理由通知で甲第3号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開2001-134392号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0044】一方のプリンタ本体2は、CPU3(展開手段、第2格納手段)に、ROM4、RAM5(第1、第2格納手段)、FONT用ROM6、インターフェース制御部(I/F)7及びプリンタエンジン部8(印刷制御手段、印刷手段)がシステムバス9により接続されて構成される。
【0045】ROM4は、CPU3が実行する制御プログラムを格納する。RAM5は、各種データの記憶やプログラム実行の際に使用される。FONT用ROM6は、印刷用の文字パターン等のフォント情報を格納する。I/F7は、上述した情報処理端末装置1のプリンタI/F17とインターフェースケーブル10で接続され、情報処理端末装置1から印刷データを受信すると共に、情報処理端末装置1へ応答を送信する。プリンタエンジン部8は、受信した印刷データに従って印刷の制御を行う。」

b.「【0064】次いで、送られたラスタ分の幅に、展開する必要がある文字があるか否かを判別し(ステップS409)、その判別の結果、展開の必要がある文字がある場合は、その文字のコードデータに基づき上記プリント展開バッファ上にドットイメージ展開する(ステップS410)。その際、FONT用ROM6に格納されたフォント情報によりプリンタ本体2による印刷に最適な解像度のドットパターンに展開される。次いで、ステップS411に進む。
【0065】一方、前記ステップS409の判別の結果、展開の必要がある文字がない場合は、ステップS411に進む。
【0066】続くステップS411では、上記文字バッファ内の全文字をサーチしたか否かを判別し、その判別の結果、未サーチの文字がある場合は前記ステップS408に戻る一方、文字バッファ内の全文字をサーチした場合は、上記プリント展開バッファの内容をプリンタエンジン部8に送信することにより印刷を実行させて(ステップS412)、本処理を終了する。」

上記の記載事項を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「CPU(展開手段、第2格納手段)に、ROM、RAM(第1、第2格納手段)、FONT用ROM、インターフェース制御部(I/F)及びプリンタエンジン部(印刷制御手段、印刷手段)がシステムバスにより接続されて構成され、
I/Fは、情報処理端末装置のプリンタI/Fとインターフェースケーブルで接続され、情報処理端末装置から印刷データを受信し、
プリンタエンジン部は、受信した印刷データに従って印刷の制御を行い、
展開の必要がある文字がある場合は、その文字のコードデータに基づきプリント展開バッファ上にドットイメージ展開し、
文字バッファ内の全文字をサーチした場合は、上記プリント展開バッファの内容をプリンタエンジン部8に送信することにより印刷を実行させる
プリンタ本体。」

(エ)甲第4号証に記載された発明
取消理由通知で甲第4号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開平11-254770号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0006】
【発明の実施の態様】そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。図1、図2は、本発明のシリアル記録装置の一実施例を示すものであって、印刷機構1を収容する函体2は、操作し易い位置、例えば前面に制御パネル3が設けらていて、ここに紙送りスイッチ4、カッテング指令スイッチ5、自動カッテング選択スイッチ6、電源スイッチ7等が配置され、また印字ヘッドを露出させ易い領域、この実施例では上面に開口を形成してカバー8が設けられている。」

b.「【0015】印刷がさらに進行し、記録用紙の先端から現在の印刷位置までの長さ(TOF+L2)(図6)と、次行の印刷領域までの1行分の紙送り量L3との和(TOF+L2+L3)(図6)が、印刷位置とカッタ18との距離L0に一致すると(図5 ステップハ)、1行分の紙送りを実行して(図5 ステップ ニ)次の行の印刷データを印刷し、同時に用紙切断制御手段31は、この印刷期間中にカッタ18を作動させて記録用紙を切断する(図5 ステップ ホ)。これにより、印刷動作の終了を待つこと無く、記録用紙を切断することができて、印刷のスループットが向上する。
【0016】一方、1行の印刷が終了した段階で、次行分の紙送りを実行すると、記録用紙の先端から次行の印刷位置までの長さ(TOF+L2+L3)が印刷位置とカッタ18との距離Lよりも長くなる場合には(図5 ステップ ハ)、記録用紙の切断位置がカッタ18に位置するように1行分よりも短い距離L4だけ紙送りし(図5 ステップ ヘ)、カッタ18を作動させて用紙を切断する(図5 ステップ ト)。」

上記の記載事項を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。

「記録用紙の先端から現在の印刷位置までの長さ(TOF+L2)と、次行の印刷領域までの1行分の紙送り量L3との和(TOF+L2+L3)が、印刷位置とカッタとの距離L0に一致すると、1行分の紙送りを実行して次の行の印刷データを印刷し、同時に用紙切断制御手段は、この印刷期間中にカッタを作動させて記録用紙を切断し、
1行の印刷が終了した段階で、次行分の紙送りを実行すると、記録用紙の先端から次行の印刷位置までの長さ(TOF+L2+L3)が印刷位置とカッタとの距離Lよりも長くなる場合には、記録用紙の切断位置がカッタに位置するように1行分よりも短い距離L4だけ紙送りし、カッタを作動させて用紙を切断する
シリアル記録装置。」

(オ)甲第5号証に記載された発明
取消理由通知で甲第5号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開2002-197493号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0024】このように本実施の形態のチケットプリンタにおいては、チケットデータの印字を終了し、データが印字されたチケット部とその後端側のチケット部との間の境界線でカッタ5によりチケット用紙1が切断されてチケットが発行されると、その状態のまま次のチケット印字開始まで待機する。このときのチケット用紙1の状態を図6(a)に示す。図示するように、ロール体から引き出されたチケット用紙1は撓んでいない。したがって、たとえ次のチケット印字開始まで長時間を要しても、チケット用紙1が変形することはない。
【0025】この状態で、ホスト装置から次のチケットデータを受信すると、フィードモータ4を逆転駆動してプラテンローラ3を図6(a)中矢印-A方向に回転させることにより、チケット用紙1を図中矢印-B方向に切断位置Cから印字位置Pまでの距離Tだけバックフィードさせてチケット用紙1の先端を印字ヘッド3による印字位置Pに位置決めする。しかる後、チケットデータがドット展開された編集バッファ20の1ライン目L1のドットデータから順にライン印字を行なう。したがって、チケットデータを確実にチケット用紙1のチケット部1a,1b,…に印字して、チケットを発行することができる。
【0026】ただし、チケットデータを受信する毎に距離Tだけバックフィードする方式では、チケット用紙切断後に同等の距離だけバックフィードして次のチケット印字に備えていた従来のプリンタと比較して、チケット印字開始からチケットが発行されるまでの時間が長くかかる不具合がある。
【0027】そこで本実施の形態では、チケット印字開始時に印字するチケットデータのチケット部先端からの空白幅を検出し、この空白幅がカッタ5から印字ヘッド2までの距離Tより短いとき、つまり1ライン目L1からnライン目Lnまでのドットデータに印字ドットが含まれる場合にはバックフィードを行なうが、空白幅がカッタ5から印字ヘッド2までの距離Tより長いとき、つまり1ライン目L1からnライン目Lnまでのドットデータが全て非印字ドットであった場合には、印字開始位置をnライン目Lnに設定して、バックフィード無しにチケットデータの印字を開始するようにしている。こうすることにより、チケット部先端からの空白幅がカッタ5から印字ヘッド2までの距離Tより長いチケットデータに関しては、印字を高速に行なうことができる。」

上記の記載事項を総合すると、甲第5号証には、次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。

「ホスト装置から次のチケットデータを受信すると、
チケット用紙を切断位置から印字位置までの距離だけバックフィードさせてチケット用紙の先端を印字ヘッド3による印字位置に位置決めし、
チケット印字開始時に印字するチケットデータのチケット部先端からの空白幅を検出し、この空白幅がカッタから印字ヘッドまでの距離Tより短いときにはバックフィードを行なうが、空白幅がカッタから印字ヘッドまでの距離Tより長いときには、バックフィード無しにチケットデータの印字を開始する
チケットプリンタ。」

(カ)甲第6号証に記載された発明
取消理由通知で甲第6号証として引用された、本件特許の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-205709号公報には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
なお、この実施の形態は、図5に示すように、ラベル台紙1に一定の間隔を開けて設けられたラベル2A,2B,2C,2D,…に、サーマルヘッド3とプラテン4とが対向する印字位置でデータを印字した後、カッタ5によりラベル台紙1を切断して、ラベル2A,2B,2C,2D,…を順次発行する形式のラベルプリンタに本発明を適用した場合である。」

b.「【0016】
次に、CPU11は、ST6として余白ライン数Aが“0”であるか否かを判断する。そして、“0”であった場合には、ラベルの先頭からデータを印字するので、CPU11は、ST7としてステッピングモータ16を逆転駆動させてラベル台紙1を-X方向にバックフィードさせる。そして、バックフィード量が予め設定された固定ライン数Bに相当する規定量に達したならば、ST15として今度はステッピングモータ16を正転駆動させてラベル台紙1をX方向にフィードさせるとともに、サーマルヘッド3の通電を制御しかつリボンモータ18を駆動させて、ラベル台紙1の先頭に位置していたラベルに対し、イメージバッファ30の1ライン目から描画されているイメージデータの印字を行う。そして印字終了後、印字開始からの紙送り量が所定値に到達したならば、ステッピングモータ16を停止させるとともにカッタソレノイド20を通電して、ラベル台紙1を切断し、ラベル発行を行う。」

上記の記載事項を総合すると、甲第6号証には、次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。

「CPUは、余白ライン数が“0”であった場合には、ステッピングモータを逆転駆動させてラベル台紙を-X方向にバックフィードさせ、バックフィード量が予め設定された固定ライン数に相当する規定量に達したならば、今度はステッピングモータを正転駆動させてラベル台紙をX方向にフィードさせるとともに、ラベル台紙の先頭に位置していたラベルに対し、イメージバッファ1ライン目から描画されているイメージデータの印字を行い、
印字終了後、印字開始からの紙送り量が所定値に到達したならば、ステッピングモータを停止させるとともにカッタソレノイドを通電して、ラベル台紙を切断し、ラベル発行を行う
ラベルプリンタ。」

(キ)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。

後者の「印刷媒体上に文字や図形等の印刷データを印刷する印刷手段」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「印刷媒体に印刷を行う印刷手段」に相当し、同様に、「印刷装置」は「ラベル作成装置」にそれぞれ相当する。

後者においては「書式メモリには、入力中の文字列データからなるテキストデータの設定書式データが、文字サイズ、文字間隔、前後余白Mの組み合わせとして記憶され」て、「ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ」るところ、「印刷開始位置」が印刷される文字の位置であることは明らかであるから、「前余白M」は印刷される文字の位置を示す情報であって、前者の「印刷される文字の位置を示す第一情報」に相当する。
なお、後者の「設定書式データ」は「文字サイズ、文字間隔、前後余白Mの組み合わせ」であって、このうち「前余白M」は上述のとおり前者の「印刷される文字の位置を示す第一情報」に相当する。また、引用文献1の段落【0035】に「図6は前記印刷装置の印刷処理による連続印刷状態をロール紙9に対する印刷開始からの切断位置S1 ,S2 ,…に対応付けて示す図であり、同図(A)はヘッド-カッタ間距離L1 よりも余白Mを長く設定した場合の連続印刷状態を示す図、同図(B)はヘッド-カッタ間距離L1 よりも余白Mを短く設定した場合の連続印刷状態を示す図である。」と記載されているところ、当該記載を参照して、図6(A)と(B)とを対照すると、同一の大きさの「印刷文字サイズX」に対して長短の「余白M」が設定されていることが看取できる。そうすると、後者においては、「余白M」を長く設定しても短く設定しても同一の「印刷文字サイズX」を設定し得るのだから、「余白M」と「印刷文字サイズX」とは独立して設定されるものであって、「余白M」を特定することによって「印刷文字サイズX」の領域、すなわち印刷される文字の領域が特定されるものではない。
そうすると、後者の「設定書式データ」は「前後余白M」を含むものの、「前後余白M」は「印刷される文字の位置を示す第一情報」に相当するものであり、また、「前後余白M」は印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定するとはいえないから、後者の「設定書式データ」は、「印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報」を含むものではない。

後者においては「印刷データがロール紙に印刷出力されるのと共に、ロール紙が搬送され」るのだから、印刷出力されたロール紙が搬送されることは明らかであって、後者の「印刷媒体を印刷方向に搬送する搬送手段」は、前者の「前記印刷手段によって印刷が行われた前記印刷媒体を第一方向に搬送する搬送手段」に相当する。

後者の「前記印刷手段から所定の距離に設けられ、前記印刷手段により印刷データの印刷が行なわれた印刷媒体上の印刷領域をラベルとして切断する切断手段」は、「印刷手段により印刷データの印刷が行なわれた印刷媒体」を切断するのだから、印刷手段よりも排出方向に位置することは明らかであって、前者の「前記印刷手段に対して前記第一方向側に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体のうち前記印刷手段によって印刷が行われた部分を切り離してラベルを作成するために、前記印刷媒体を切断する切断手段」に相当する。

後者の「前後余白M」が印刷が行われない部分であることは明らかであり、後者においては「1枚目の後余白Mの後端がカッタ位置まで搬送されたと判断されると、1枚目の印刷済みのラベルが切断されて分離され」るから、「前後余白M」は切断された端部近傍に設けられるといえる。また、後者は、印刷データの前後余白Mが書式メモリに設定記憶されているとともに、「ロール紙の前後余白2M分の搬送がなされて、ロール紙の先端に2枚目の前余白Mが確保された状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされたと判断され」るのだから、書式メモリの前後余白Mを参照して、前後余白分の搬送される長さを定めているといえ、両者は、「印刷媒体のうち印刷が行われない部分であって、切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さである第一距離を、情報を参照して特定する」との概念で共通し、後者が「特定する」ための手段を有することは明らかであるから、両者は「特定手段」を有する点でも共通している。

後者の「印刷データの前後余白Mが、ヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いか否か判断され」る点は、前者の「前記特定手段によって特定された前記第一距離と、前記印刷手段から前記切断手段までの間の長さである第二距離とを比較し」との点に相当する。
後者の「前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも短いと判断された場合には、(L1 -M)分だけ引き戻し方向に逆搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ」ることと、前者の「前記第一距離よりも前記第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に前記印刷媒体を前記第二距離分搬送」することとは、「第一距離よりも第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に印刷媒体を搬送する」との概念で共通する。

前者は「第二距離が第一距離以下であるとき、第二方向への印刷媒体の搬送を禁止する」ものであるところ、本件特許明細書には「そこで本発明では、距離Sと距離Lとを比較し、距離Lが距離S以下である場合には、第二方向への感熱テープ8の搬送を禁止する。即ち、図7でラベル7が感熱テープ8から切り離された後、図8のように第二方向(矢印45)への感熱テープ8の搬送を行うことなく、そのまま、図9に示すように継続して第一方向(矢印46)に感熱テープ8を搬送し、同時に、サーマルラインヘッド112によって文字64の印刷を行う。」(段落【0037】)と記載されているから、前者における「第二方向への印刷媒体の搬送を禁止する」ことは、第二方向への搬送を行うことなく、第一方向に搬送することを含むものと認められる。
そうすると、後者の「印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いと判断された場合には、カッタの位置に合わせてロール紙の先端がセットされている状態から、(M-L1 )分だけ排出方向に搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ」ることは、排出方向への搬送のみを行い、排出と逆方向への搬送を行っていないから、前者の「前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第二方向への前記印刷媒体の搬送を禁止する」ことに相当する。

後者は、「前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mが、ヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いか否か判断され、前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも長いと判断された場合には、カッタの位置に合わせてロール紙の先端がセットされている状態から、(M-L1 )分だけ排出方向に搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ、前記書式メモリに設定記憶されている印刷データの前後余白Mがヘッド-カッタ間距離L1 よりも短いと判断された場合には、(L1 -M)分だけ引き戻し方向に逆搬送され、ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ」るところ、後者がこのような判断を行い、搬送するための手段を有していることは明らかであって、当該手段は前者の「第一制御手段」に相当する。

後者においては、「印刷データメモリには、テキストメモリに記憶されたテキストデータが、各文字データ毎にフォントパターンに変換されたドットパターンの印刷データとして記憶され」るのだから、印刷データを生成する際に「テキストデータの設定書式データ」が用いられることは明らかである。そうすると、後者の「ロール紙の先端に前余白Mを確保した状態で該前余白M直後の印刷開始位置がヘッド位置に合わされ」、「印刷データメモリに記憶されている印刷データがその先頭から1ドットラインデータずつ読み出されてヘッド駆動回路に転送され、サーマルヘッドによりロール紙に印刷出力される」ことは、前者の「前記第一制御手段によって前記搬送手段が制御されたとき、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第一情報に基づいて、前記印刷媒体に文字を印刷させる」ことに相当する。また、後者が上記印刷出力を行うために印刷手段を制御する手段を有していることは明らかであって、当該手段は前者の「印刷制御手段」に相当する。

したがって、両者は、

「印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段により前記印刷媒体に印刷を行うための印刷データであって、印刷される文字の位置を示す第一情報を含む印刷データを受信する受信手段と、
前記印刷手段によって印刷が行われた前記印刷媒体を第一方向に搬送する搬送手段と、
前記印刷手段に対して前記第一方向側に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体のうち前記印刷手段によって印刷が行われた部分を切り離してラベルを作成するために、前記印刷媒体を切断する切断手段と、
前記印刷媒体のうち印刷が行われない部分であって、前記切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さである第一距離を、前記受信手段によって受信された前記印刷データの情報を参照して特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記第一距離と、前記印刷手段から前記切断手段までの間の長さである第二距離とを比較し、前記第一距離よりも前記第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に前記印刷媒体を搬送し、前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第二方向への前記印刷媒体の搬送を禁止するように、前記搬送手段を制御する第一制御手段と、
前記第一制御手段によって前記搬送手段が制御されたとき、前記受信手段によって受信された前記印刷データの第一情報に基づいて、前記印刷媒体に文字を印刷させるように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と
を備えたラベル作成装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者が「印刷手段により印刷媒体に印刷を行うための印刷データであって、印刷される文字の位置を示す第一情報と、印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報とを含む印刷データを受信する受信手段」を有するのに対して、後者はそのような手段を有さない点。

[相違点2]
第一距離と第二距離とを比較し、第一距離よりも第二距離の方が大きいときに、前者が「第二方向に印刷媒体を第二距離分搬送する」のに対して、後者は搬送する距離が第二距離分ではない点。

[相違点3]
特定手段に関して、前者では「第一距離を、受信手段によって受信された印刷データの第三情報を参照して特定する」のに対して、後者では第三情報を参照しない点。

(ク)判断
相違点1及び3について検討する。

引用発明2は「画像領域情報は、用紙サイズおよび上下左右端の各マージンを示す情報であり、印刷ヘッドの位置xh,yhの値を、印刷用紙上における画像領域の先頭位置の値に設定し、画像領域の先頭位置は上下左右端の各マージンのうち、左マージンと上端マージンとによって特定可能である」ものであるところ、引用発明2における「画像領域情報」は「コマンドに含まれている用紙サイズおよび上下左右端の各マージンを示す情報」であって、「画像領域の先頭位置は上下左右端の各マージンのうち、左マージンと上端マージンとによって特定可能であ」る。そうすると、引用発明2の「画像領域情報」である「上下左右端の各マージンを示す情報」は、「画像領域の先頭位置」を示す情報ではあるものの、印刷可能か否かに係る情報ではないから、本件発明1の「印刷可能と設定された領域を特定した」情報に相当するものではない。
また、本件発明1の「第一距離」は「切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さ」であるところ、引用発明2は切断手段を備えるものではないから「第一距離を特定する」ことを開示するものではない。また、甲第2号証には、印刷媒体の搬送に関して、段落【0058】に「プリンタコントロールIC25は、搬送距離D1を式(1)によって算出する。 D1=dHM+dMD-(yH-yS)+hP/2 …(1)」と記載されており、搬送距離D1を「yS」等の値から求めることが示されている。そして、「yS」に関しては、段落【0051】に「S500では、コンピュータ10は、上記印刷された認証チャートの印刷用紙M内における位置等を定義したチャート定義情報(画像位置情報)を生成する。」、「先頭位置(xS,yS)については、上記S100で入力した上端マージンと、左マージンと、認証チャートの先頭位置xP,yPによって定義できる。つまり、左マージンとxPとの和がxSであり、上端マージンとyPとの和がySである。」、段落【0052】に「S510では、コンピュータ10は上記生成したチャート定義情報を含むチャート定義コマンドを生成するとともに、当該チャート定義コマンドをプリンタI/F17cを介してプリンタ20に対し送信する。」と記載されている。してみると、引用発明2における「上端マージン」は、コンピュータにおいて、上端マージンと認証チャートの先頭位置yPとの和である認証チャートの先頭位置ySの算出に用いられるのであり、プリンタにおける搬送距離D1の算出には、認証チャートの先頭位置ySは用いられるものの、上端マージンは用いられていない。すなわち、引用発明2は、印刷媒体の搬送に係る距離である搬送距離D1を、受信手段によって受信された「画像領域情報」である「上端マージン」を参照して特定するものではない。

そうすると、引用発明2は、上記相違点1及び3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものではない。また、引用発明3ないし6も、「印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した」情報を用いるものではないから、上記相違点1及び3に係る本件発明1の発明特定事項を備えるものではない。

また、上記相違点1及び3に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。

そして、本件発明1は、上記相違点1及び3に係る本件発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「本発明において、前記第三情報に基づき、前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷可能と設定された領域までの距離を前記第一距離として特定してもよい。ラベルの印刷可能と設定された領域を示す情報として、例えば、ラベルの余白領域の設定情報が使用される。従ってラベル作成装置は、第一距離を容易に特定することができる。」(段落【0009】)という効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

イ.本件発明2ないし4について
本件発明2及び4は、本件発明1をさらに限定したものである。
すると、本件発明2及び4は、本件発明1と同様に、引用発明1ないし6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、請求項3に係る特許は訂正により削除された。

ウ.まとめ
本件発明1、2及び4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
また、請求項3に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

第4 むすび

以上のとおり、本件発明1、2及び4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して特許異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ラベル作成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープに印刷を行った後、印刷されたテープを切断することによってラベルを作成するラベル作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラベル作成装置は、印刷媒体であるテープに対して文字等の印刷を行い、その後、印刷されたテープを切断することによってラベルを作成する。ラベル作成装置は、印刷を行う印刷ヘッドと、印刷ヘッドに対してテープの搬送方向下流側に設けられた切断刃とを備えている。切断刃は、テープを切断することによって、テープのうち印刷された部分を切り離す。切り離された部分がラベルに相当する。
【0003】
作成されたラベルの先頭部分に、文字等が印刷されない余白が形成される場合がある。理由は、印刷ヘッドと切断刃との間が離間しているため、印刷および切断が繰り返される場合、テープの切断部分から印刷ヘッドまでの部分には印刷を行うことができないためである。これに対し、印刷されたテープを切断してラベルが作成された後、次に印刷を開始する前に、印刷時の搬送方向と逆方向にテープを搬送する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術では、テープを逆方向に搬送することによって切断部分を印刷ヘッドの位置まで戻し、切断部分の近傍、即ちラベルの先頭部分に印刷を行う。これによってラベル作成装置は、ラベルの先頭に余白が形成されることを抑止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-118151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の技術が用いられた場合、ラベルの先頭に故意に余白を設けて印刷が行われる場合でも、印刷を開始する前にテープが常に逆方向に搬送されることになる。このため、テープを逆方向に搬送するために要する時間が余分に発生し、短時間でラベルを作成することができないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、ラベルの先頭に余白が形成されることを適切に抑止し、且つ、短時間でラベルを作成することが可能なラベル作成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラベル作成装置は、印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、前記印刷手段により前記印刷媒体に印刷を行うための印刷データであって、印刷される文字の位置を示す第一情報と、印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報とを含む印刷データを受信する受信手段と、前記印刷手段によって印刷が行われた前記印刷媒体を第一方向に搬送する搬送手段と、前記印刷手段に対して前記第一方向側に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体のうち前記印刷手段によって印刷が行われた部分を切り離してラベルを作成するために、前記印刷媒体を切断する切断手段と、前記印刷媒体のうち印刷が行われない部分であって、前記切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さである第一距離を、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第三情報を参照して特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された前記第一距離と、前記印刷手段から前記切断手段までの間の長さである第二距離とを比較し、前記第一距離よりも前記第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に前記印刷媒体を前記第二距離分搬送し、前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第二方向への前記印刷媒体の搬送を禁止するように、前記搬送手段を制御する第一制御手段と、前記第一制御手段によって前記搬送手段が制御されたとき、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第一情報に基づいて、前記印刷媒体に文字を印刷させるように前記印刷手段を制御する印刷制御手段とを備えている。
【0008】
第二距離が第一距離以下である場合に、従来どおり、第二方向に印刷媒体を搬送する制御が行われた場合を想定する。この場合、印刷媒体が第二方向に搬送された後、第二方向への搬送量よりも大きな搬送量分、印刷媒体は第一方向に搬送され、その後印刷処理が開始されることになる。これに対してラベル作成装置は、第一距離と第二距離との関係に基づいて、第二方向に印刷媒体を搬送するか否かを判断し、第二距離が第一距離以下である場合、第二方向への印刷媒体の搬送は不要と判断し、搬送を禁止する。これによってラベル作成装置は、第二方向への印刷媒体の搬送を適切に実行してラベルの端部に印刷を行い、且つ、第二方向への印刷媒体の搬送が不要な場合には、第二方向への印刷媒体の搬送を禁止できる。従ってラベル作成装置は、ラベルの作成に要する時間を短縮できる。
又、ラベル作成装置は、第二方向に印刷媒体を搬送する場合の搬送量を一律に特定できる。従ってラベル作成装置は、第二方向に印刷媒体を搬送する場合の制御を簡素化し、処理負荷を軽減することができる。
【0009】
本発明において、前記第三情報に基づき、前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷可能と設定された領域までの距離を前記第一距離として特定してもよい。ラベルの印刷可能と設定された領域を示す情報として、例えば、ラベルの余白領域の設定情報が使用される。従ってラベル作成装置は、第一距離を容易に特定することができる。
【0010】(削除)
【0011】
【0012】
【0013】
本発明において、前記第一制御手段は、前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第一方向に前記印刷媒体が、前記第一距離から前記第二距離を減算した値分搬送されるように、前記搬送手段を制御してもよい。ラベル作成装置は、印刷を開始する前に印刷媒体を第一方向に搬送する場合の搬送量を、適切に算出できる。従ってラベル作成装置は、印刷媒体のうち印刷が開始される位置から迅速に印刷を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ラベル作成システム5の概要を示す図である。
【図2】ラベル作成装置1の斜視図である。
【図3】トップカバー101を外した状態のラベル作成装置1を示す斜視図である。
【図4】図2のI-I線矢視方向断面図である。
【図5】ラベル作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】感熱テープ8が搬送される様子を示す図である。
【図7】ラベル7が作成される様子を示す図である。
【図8】感熱テープ8が搬送される様子を示す図である。
【図9】感熱テープ8が搬送される様子を示す図である。
【図10】ラベル61を示す図である。
【図11】メイン処理を示すフローチャートである。
【図12】ラベル71を示す図である。
【図13】変形例におけるメイン処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。記載されている装置の構成、各種処理のフローチャート等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
図1を参照し、ラベル作成システム5の概要について説明する。ラベル作成システム5は、ラベル作成装置1および外部端末2を備える。ラベル作成装置1および外部端末2は、USB(登録商標)ケーブル3によって接続する。ラベル作成装置1は、印刷媒体である感熱テープ8(図6等参照)に文字や図形等を印刷した後、感熱テープ8のうち文字や図形等が印刷された部分を切り離すことによって、ラベルを作成する。ラベル作成装置1は、外部端末2から受信した印刷データに基づいて駆動し、ラベルを作成する。外部端末2は汎用のパーソナルコンピュータ(PC)である。外部端末2は、ラベル作成装置1がラベルを作成する場合に必要な印刷データを作成する。ユーザは、外部端末2のキーボードやマウスを介して印刷データを編集することができる。
【0017】
図2から図4を参照し、ラベル作成装置1の構成について説明する。図2の右下、左上、右上、左下、上方向、および下方向を、それぞれ、ラベル作成装置1の右方、左方、後方、前方、上方、下方と定義する。
【0018】
図2に示すように、ラベル作成装置1は筐体100を備える。筐体100の形状は略箱形である。筐体100は、トップカバー101およびアンダーカバー102を備える。トップカバー101は、筐体100の上面に設けられる。アンダーカバー102は、筐体100の下面に設けられる。トップカバー101は、固定部101Aおよび開閉蓋101Bを備える。固定部101Aは、トップカバー101の前側部分である。開閉蓋101Bは、トップカバー101の後側部分である。
【0019】
図3に示すように、開閉蓋101B(図2参照)の下方に、ロール収納部161が設けられる。ロール収納部161には、感熱テープ8(図6等参照)が巻回されたロール9が収容される。ロール9の両端部に、支持部材162が取り付けられる。ロール9は、支持部材162によって回転可能に軸支される。これによって、ロール収納部161から連続的に感熱テープ8を供給することができる。開閉蓋101Bの後端は、ヒンジ部164に回転可能に軸支される。開閉蓋101Bは、後端を軸として前端を上下に揺動させることで開閉する。開閉蓋101Bが開いた状態で、ロール収納部161は露出する。従ってユーザは、ロール9の装着および交換を容易に行うことができる。
【0020】
図4に示すように、トップカバー101(図2参照)の前後方向略中央部であって固定部101Aと開閉蓋101Bとの間に、排出口107が設けられる。排出口107は、感熱テープ8のうち印刷が行われた部分を、筐体100の内部から外部に向けて通す。これによって、感熱テープ8は筐体100の内部から外部に排出される。開閉蓋101Bの前方側端部に、プラテンローラ111が回転可能に支持される。筐体100の内部に設けられた駆動モータ(図示外)は、ギア機構(図示外)を介してプラテンローラ111に接続する。駆動モータは、筐体100内部前方に設けられた制御基板170上のCPU11(図5参照)によって駆動が制御される。駆動モータの回転駆動力はプラテンローラ111に伝達し、プラテンローラ111は回転する。
【0021】
固定部101Aの後端部下方に、サーマルラインヘッド112、固定板113、およびばね114が設けられる。固定板113は、プラテンローラ111の前方に設けられる。固定板113は、平面を前後方向に向けた状態で左右方向に延びる。固定板113の後面に、サーマルラインヘッド112が設けられる。サーマルラインヘッド112は、左右方向に延びる。サーマルラインヘッド112は、感熱テープ8に形成する画像の一ライン分の発熱素子が主走査方向(左右方向)に配列した構造を有している。サーマルラインヘッド112の発熱素子は、電流を通電することによって発熱する。ばね114は、固定板113を後方に付勢する。
【0022】
サーマルラインヘッド112の上方に切断刃160が設けられる。切断刃160は、排出口107に沿うように延びる。ユーザは、排出口107から排出された感熱テープ8を前方に引っ張り、切断刃160に押し付けることによって、感熱テープ8を手動で切断できる。
【0023】
ラベル7(図7参照)が作成されるまでの工程について説明する。プラテンローラ111とサーマルラインヘッド112との間に、ロール収納部161に収容されたロール9から延びる感熱テープ8が下方から上方に向けて挿通される。ばね114が固定板113を後方に付勢し、サーマルラインヘッド112は所定の力でプラテンローラ111に感熱テープ8を押し付ける。駆動モータの回転に伴いプラテンローラ111が回転することによって、ロール9から感熱テープ8が順次繰り出され、下方から上方に向けて搬送される。以下、下方から上方に向かう方向を「第一方向」ともいう。感熱テープ8を第一方向に搬送させるためにプラテンローラ111が回転する回転方向を「順方向」という。同時に、サーマルラインヘッド112の発熱素子が発熱する。これによって、感熱テープ8に文字や図形が印刷される。印刷後の感熱テープ8は、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112の第一方向側にある排出口107から、筐体100の外部へ排出される。排出された感熱テープ8は、排出口107に沿って設けられた切断刃160によって切断される。これによってラベル7(図7参照)が作成される。
【0024】
図5を参照し、ラベル作成装置1の電気的構成について説明する。ラベル作成装置1は、CPU11、SRAM12、FLASH ROM13、EEPROM14、入出力インタフェース(以下、入出力I/Fという。)15、駆動回路16、18、サーマルラインヘッド112、プラテンローラ111、及びUSBコントローラ20を備えている。CPU11、SRAM12、FLASH ROM13、EEPROM14、入出力インタフェース(以下、入出力I/Fという。)15、駆動回路16、18、及びUSBコントローラ20は、制御基板170(図4参照)に実装される。
【0025】
CPU11は、ラベル作成装置1全体の制御を司る。FLASH ROM13は、書き換え可能な不揮発性記憶素子である。FLASH ROM13には、制御プログラム等が記憶される。SRAM12には、外部端末2から受信した印刷データが一時的に記憶される。入出力I/F15は、駆動回路16、18、およびUSBコントローラ20とCPU11との間に挿入される。入出力I/F15は、データや制御信号を伝達する。駆動回路16は、サーマルラインヘッド112を駆動する。駆動回路18は、プラテンローラ111を駆動する。USBコントローラ20は、USBケーブル3を介して外部端末2と通信を行うためのデバイスである。
【0026】
図6から図9を参照し、従来の感熱テープ8の搬送制御方法について説明する。図6から図9に示すように、サーマルラインヘッド112と切断刃160との間は距離L分離間しているとする。距離Lは約7mmである。図6に示すように、はじめにプラテンローラ111は、サーマルラインヘッド112との間に感熱テープ8を挟んだ状態で順方向に回転する。プラテンローラ111の回転によって、感熱テープ8はロール9(図3参照)から繰り出され、第一方向(矢印41)に搬送される。またプラテンローラ111の回転と同時に、サーマルラインヘッド112の発熱素子が発熱する。これによって、外部端末2(図5参照)から受信した印刷データに基づく文字や図形51が、感熱テープ8に順次印刷される。感熱テープ8のうち文字や図形51が印刷された部分は、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112に対して第一方向側にある切断刃160の後方(図6の上方)を通過する。感熱テープ8のうち文字や図形51が印刷された部分は、切断刃160に対して第一方向側にある排出口107を通り、ラベル作成装置1の外部に排出される。
【0027】
印刷データに基づいた印刷が全て実行された場合、プラテンローラ111の回転は停止する。感熱テープ8は、文字や図形51が印刷された部分がラベル作成装置1の外部に露出した状態で停止する。
【0028】
図7に示すように、ユーザは、感熱テープ8のうち文字や図形51が印刷された部分を切り離すために、ラベル作成装置1の外部に露出した部分を前方(図7の下方)に引っ張る(矢印42)。感熱テープ8は、前方にある切断刃160に押し付けられ、切断される。感熱テープ8のうち文字や図形51が印刷された部分が切り離される。切り離された部分がラベル7に相当する。このようにしてラベル7は作成される。
【0029】
感熱テープ8への印刷が繰り返し実行される場合を想定する。ラベル7が感熱テープ8から切り離された状態では、感熱テープ8のうち切断刃160によって切断された先端部44と、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112との接触部との間の部分43は、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112よりも第一方向側に位置する。従って、ラベル7が感熱テープ8から切り離された後、部分43に印刷を行うためには、第一方向と反対方向に感熱テープ8を搬送する必要がある。以下、第一方向と反対方向を「第二方向」という。
【0030】
そこで従来の方法では、次のようにして感熱テープ8の搬送制御を行う。感熱テープ8に対する一連の印刷処理が終了し、ラベル7が感熱テープ8から切り離された後、図8に示すように、プラテンローラ111は順方向とは逆向きの方向に回転する。以下、順方向とは逆向きの回転方向を「逆方向」という。プラテンローラ111の回転によって、感熱テープ8は第二方向(矢印45)に距離L分搬送される。搬送後、プラテンローラ111の回転は停止する。感熱テープ8は、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112が先端部44に接触した状態で停止する。これによって、感熱テープ8の部分43に対して先端部44から印刷を行うことが可能な状態になる。
【0031】
なお実際には、感熱テープ8の第二方向への搬送量は、距離Lよりも僅かに小さい距離とされる。これによって、感熱テープ8の先端部44がプラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112よりも第二方向側に移動してしまい、プラテンローラ111が感熱テープ8を搬送できなくなることを抑止している。具体的には、距離Lが7mmである場合、第二方向への搬送量は6mmである。
【0032】
続いて図9に示すように、プラテンローラ111は順方向の回転を開始する。プラテンローラ111の回転によって、感熱テープ8は第一方向(矢印46)に搬送される。プラテンローラ111の回転と同時に、サーマルラインヘッド112の発熱素子が発熱し、文字や図形52が感熱テープ8に順次印刷される。感熱テープ8は第二方向に移動しており、部分43に対して印刷を行うことが可能であるため、印刷データに基づき、必要に応じて部分43への印刷(文字や図形52)が実行される。感熱テープ8のうち文字や図形52が印刷された部分は、切断刃160の後方(図9の上方)を通過し、排出口107を通ってラベル作成装置1の外部に排出される。
【0033】
以上のように従来の感熱テープ8の搬送制御方法では、一連の印刷処理が終了してラベル7が作成された後、続けて感熱テープ8への印刷が実行される場合、印刷が開始される前に感熱テープ8は第二方向に距離L分搬送される。これによって、ラベル作成装置1は、感熱テープ8の先端部44からの印刷が可能な状態とする。その後、プラテンローラ111及びサーマルラインヘッド112の駆動が開始され、感熱テープ8への印刷が実行される。
【0034】
ここで、図10に示すラベル61を作成するための印刷データが、外部端末2によって作成されたとする。印刷データは、文字の種別、フォント、大きさ、並び、およびラベルに対する文字の位置を示す情報(以下「第一情報」という。)を含んでいる。また印刷データは、印刷が行われる場合の感熱テープ8の搬送方向、すなわち第一方向を示す情報(以下「第二情報」という。)を含んでいる。さらに印刷データは、ラベルのうち印刷可能な領域を、ラベルの端部からの距離によって特定した情報(以下「第三情報」という。)を含んでいる。図10の場合、第一情報は、例えば文字の種別「ABCDEFG」、フォント「ゴシック」、大きさ「○pt」、並び「二段」、ラベル61に対する文字の位置「上端から○mm、下端から○mm、左端から○mm、右端から○mm」である(文字64)。第二情報は「第一方向:左方向」である(矢印66)。第三情報は「上端から◎mm、下端から◎mm、左端からSmm、右端から◎mm」(印刷可能領域63)である。第一情報、第二情報、および第三情報は、外部端末2(図1参照)のキーボードやマウスを介してユーザによって入力される。
【0035】
ここで、ラベル61の第一方向側端部62から、印刷可能領域63の第一方向側端部65までの間の距離Sが、サーマルラインヘッド112(図6等参照)と切断刃160(図6等参照)との間の距離L(図6等参照)よりも大きくなっていたとする。図7に相当する位置に感熱テープ8が配置した状態で、印刷データに基づいて文字64の印刷が開始される場合を想定する。この場合、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112は、印刷可能領域63よりも第一方向側(図10の矢印66側)に配置する。このため、上述した従来の搬送制御方法に基づき、文字64の印刷前に感熱テープ8が第二方向に距離L分搬送される(図8参照)と、その後、感熱テープ8への印刷が実行されることなく、距離Lよりも大きい距離S分第一方向に感熱テープ8は搬送される。これによって、印刷可能領域63の第一方向側端部65にサーマルラインヘッド112が位置した状態になる。そして更に感熱テープは第一方向に搬送される(図9参照)。搬送の過程で、サーマルラインヘッド112によって感熱テープ8に文字64の印刷が実行される。
【0036】
以上のように、感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送し、その後、感熱テープを第一方向に距離S分搬送する過程で、サーマルラインヘッド112による印刷処理は実行されない。このためラベル61のように距離Sが距離Lよりも大きい場合、感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送する処理、および、第一方向に距離S分搬送する処理が不要となる。従って、これらの搬送処理を行うために必要な時間が余分に発生し、ラベル61が作成されるまでの時間は長くなる。
【0037】
そこで本発明では、距離Sと距離Lとを比較し、距離Lが距離S以下である場合には、第二方向への感熱テープ8の搬送を禁止する。即ち、図7でラベル7が感熱テープ8から切り離された後、図8のように第二方向(矢印45)への感熱テープ8の搬送を行うことなく、そのまま、図9に示すように継続して第一方向(矢印46)に感熱テープ8を搬送し、同時に、サーマルラインヘッド112によって文字64の印刷を行う。これによって、感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送する処理(図8参照)、および、第一方向に距離S分搬送する処理に要する時間を短縮できる。従って、ラベル作成装置1がラベル61を作成するために要する時間は短縮される。
【0038】
図11を参照し、ラベル作成装置1のCPU11において実行されるメイン処理について、図10のラベル61が作成される場合を想定して説明する。メイン処理は、ラベルの作成指示がラベル作成装置1に対して行われた場合に、CPU11において起動され実行される。はじめにCPU11は、USBケーブル3(図1参照)を介して外部端末2から印刷データを受信する(S11)。CPU11は、外部端末2から受信した印刷データを、SRAM12(図5参照)に記憶する。CPU11は、印刷データに含まれている第三情報を参照し、ラベル61の第一方向側端部62から、印刷可能領域63の第一方向側端部65までの間の距離Sを特定する(S13)。
【0039】
CPU11は、S13で特定した距離Sと、サーマルラインヘッド112(図6等参照)と切断刃160(図6等参照)との間の距離Lとを比較する(S15)。ラベル61の場合、距離Sは距離L以上であるので(S15:NO)、第二方向に感熱テープ8を距離L分搬送する処理(図8等参照)は行わない。処理はS19に進む。一方、ラベル61の場合とは異なり、距離Sが距離L未満となる場合には(S15:YES)、感熱テープ8のうち先端部44に近い部分43(図7、図8参照)に印刷を行うことが可能なように感熱テープ8を第二方向に移動させる必要がある。CPU11は、プラテンローラ111(図6等参照)を逆方向に回転させ、感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送する(S17)。感熱テープ8は、プラテンローラ111およびサーマルラインヘッド112が先端部44に接触した状態となる(図8参照)。処理はS19に進む。
【0040】
CPU11は、SRAM12に記憶された印刷データに含まれる第一情報に基づき、文字64の印刷を行うためにプラテンローラ111を順方向に回転させ、感熱テープ8を第一方向に搬送する(S19)。同時にCPU11は、第一情報に基づき、サーマルラインヘッド112の発熱素子を発熱させる。これによって感熱テープ8に文字64が印刷される(S21)。感熱テープ8のうち文字64が印刷された部分は、排出口107(図6等参照)からラベル作成装置1の外部に排出される。文字64の印刷が終了した場合、CPU11はプラテンローラ111の回転を停止する(S23)。感熱テープ8は、文字64が印刷された部分が排出口107から外部に露出した状態で停止する(図6参照)。メイン処理は終了する。
【0041】
なおユーザは、感熱テープ8のうち文字64が印刷された部分を切り離すために、排出口107から外部に露出した部分を前方(図7の下方)に引っ張る(図7参照)。感熱テープ8は、前方にある切断刃160に押し付けられて切断される。感熱テープ8のうち文字64が印刷された部分が切り離され、ラベル61が作成される。
【0042】
以上説明したように、ラベル作成装置1は、距離Sと距離Lとの関係に基づき、印刷の開始前に感熱テープ8を第二方向に搬送するか否かを判断する。ラベル作成装置1は、距離Lが距離S以下である場合、感熱テープ8を第二方向に搬送させる処理は不要と判断し、感熱テープ8を第二方向に搬送しない。これによってラベル作成装置1は、ラベル61を作成するために要する時間を短縮できる。なお、距離Lが距離Sよりも大きい場合には、従来通り、印刷の開始前に感熱テープ8は第二方向に距離L分搬送されるので、ラベル作成装置1は、感熱テープ8を第二方向に搬送する処理を適切に実行し、端部まで印刷されたラベルを作成できる。
【0043】
またラベル作成装置1は、ラベル61の第一方向側端部62から、印刷可能領域63の第一方向側端部65までの間の距離を距離Sとして特定する。印刷可能領域63は、外部端末2に対してユーザが直接入力するパラメータである。従ってラベル作成装置1は、距離Sを容易に特定できる。
【0044】
またラベル作成装置1は、印刷前に第二方向に感熱テープ8を搬送する場合の搬送量を距離Lとして一律に定める。これによってラベル作成装置1は、プラテンローラ111を逆方向に回転する場合の回転量を一律に特定できる。従ってラベル作成装置1は、CPU11の制御を簡素化して処理負荷を軽減できる。またラベル作成装置1は、印刷前に感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送することで、感熱テープ8の先端部44がサーマルラインヘッド112に接触する状態まで感熱テープ8を移動させることができる。従ってラベル作成装置1は、感熱テープ8の先端部44から確実に印刷を行い、文字や図形が先端部に印刷されたラベルを作成できる。
【0045】
なお本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。上述の実施形態では、ラベル61の第一方向側端部62から、印刷可能領域63の第一方向側端部65までの間を距離Sとして特定し、距離Lと比較した。これに対してラベル作成装置1は、距離Sとは異なるパラメータを特定し、距離Lと比較することによって、印刷の開始前に感熱テープ8を第二方向に搬送させるか否かを判断してもよい。例えば、距離Lと比較するパラメータは、図12のように特定されてもよい。
【0046】
例えば図12に示すように、ラベル71を作成するための印刷データが、外部端末2によって作成されたとする。印刷データには、ラベル61(図10参照)の印刷データと同様、第一情報(文字74)、第二情報(矢印77)、および第三情報(印刷可能領域73)が含まれている。ラベル71の第一方向側端部72から、印刷可能領域73の第一方向側端部75までの間の距離Sは、ラベル61の場合と異なり、距離Lよりも小さくなっている。従って上述した場合と同様、距離Sと距離Lとが比較された場合、印刷の開始前に感熱テープ8は第二方向に距離L分搬送されることになる。
【0047】
ここでCPU11は、文字74のうち最も第一方向側(矢印77の方向側)の位置(以下、「開始位置」という。)76を、第一情報に基づいて特定する。文字74の印刷が開始される場合、サーマルラインヘッド112が開始位置76に配置していれば、感熱テープ8が第一方向に搬送される過程で文字74を感熱テープ8に印刷することができることになる。そこでCPU11は、ラベル71の第一方向側端部72から、特定した開始位置76までの間の距離Tを特定する。CPU11は、距離Tと距離Lとを比較し、印刷の開始前に感熱テープ8を第二方向に搬送させるか否かを判断する。
【0048】
距離Sの代わりに距離Tが距離Lと比較される場合のメイン処理では、図11のS15で、距離Sの代わりに距離Tと距離Lとが比較される。距離Tが距離L以上である場合(S15:NO)、感熱テープ8を第二方向に搬送しなくても、CPU11は、感熱テープ8を第一方向に搬送する過程で文字74を開始位置76から印刷できることになる。従ってCPU11は、第二方向に感熱テープ8を距離L分搬送する処理を行わず、処理はS19に進む。一方、距離Tが距離Lよりも小さい場合(S15:YES)、感熱テープ8に対して文字74を開始位置76から印刷するためには、感熱テープ8を第二方向に搬送する必要がある。CPU11は、プラテンローラ111(図6等参照)を逆方向に回転させ、感熱テープ8を第二方向に距離L分搬送する(S17)。処理はS19に進む。他の処理は、距離Sと距離Lとが比較される場合と同一であるので、説明を省略する。
【0049】
以上のようにラベル作成装置1は、距離Tと距離Lとを比較することによって、印刷の開始前に感熱テープ8を第二方向に搬送させるか否かをより適切に特定できる。距離Sが距離L以下となっている場合でも、距離Tが距離Lよりも大きければ、ラベル71の印刷の開始前に感熱テープ8を第二方向に搬送する処理を行わなくても、文字74を感熱テープ8に印刷することが可能なためである。従ってラベル作成装置1は、ラベル71を作成するために要する時間を更に短縮できる。
【0050】
上述では、印刷前に感熱テープ8を第二方向に搬送する場合、常に距離L分搬送していた、これに対してラベル作成装置1は、印刷を開始する位置にサーマルラインヘッド112が配置するように、感熱テープ8を第二方向に搬送する場合の距離を調整してもよい。加えて、ラベル作成装置1は、距離Sが距離L以上である場合も同様に、印刷を開始する位置にサーマルラインヘッド112が配置するように、感熱テープを第一方向に搬送する場合の距離を調整してもよい。詳細は以下のとおりである。
【0051】
図13を参照し、変形例におけるメイン処理について説明する。S15で距離Sが距離Lよりも小さいと判断された場合(S15:YES)、CPU11は、距離Lから距離Sを減算することによって算出される距離L-S分、感熱テープ8を第二方向に搬送する(S31)。一方、S15で距離Sが距離L以上であると判断された場合(S15:NO)、CPU11は、距離Sから距離Lを減算することによって算出される距離S-L分、感熱テープ8を第一方向に搬送する(S33)。他の処理は、図11のメイン処理と同一であるので、説明を省略する。
【0052】
例えば図12のラベル71の印刷データに基づいて図13のメイン処理が実行され、感熱テープ8に印刷が実行される場合を想定する。この場合、印刷が開始される前の段階(図7参照)で、サーマルラインヘッド112は、ラベル71の第一方向側端部72から距離Lだけ離間した位置78(図12参照)に配置する。従って、感熱テープ8が第二方向に距離L-S分搬送されることで、サーマルラインヘッド112は、印刷可能領域73のうち第一方向側端部75に配置する。これによってラベル作成装置1は、感熱テープ8の第一方向への搬送を開始して感熱テープ8への印刷を即座に実行できる。このようにラベル作成装置1は、感熱テープ8を第二方向に搬送する場合の距離を短くできるので、ラベルの作成に要する時間をさらに短縮できる。
【0053】
また例えば図10のラベル61の印刷データに基づいて図13のメイン処理が実行され、感熱テープ8に印刷が実行される場合を想定する。この場合、印刷を開始する前の段階(図7参照)で、サーマルラインヘッド112は、ラベル61の第一方向側端部62から距離Lだけ離間した位置67に配置する。従って、感熱テープ8が第一方向に距離S-L分搬送されることで、サーマルラインヘッド112は、印刷可能領域63のうち第一方向側端部65に配置する。これによってラベル作成装置1は、感熱テープ8の第一方向への搬送を開始して感熱テープ8への印刷を即座に実行できる。このようにラベル作成装置1は、印刷を即座に開始できる位置に感熱テープ8を搬送することで、ラベルの作成に要する時間をさらに短縮できる。
【0054】
なお図13のメイン処理において、距離Sの代わりに距離Tが使用されてもよい。即ち、距離Tが距離Lよりも小さいと判断された場合(S15:YES)、CPU11は、距離Lから距離Tを減算することによって算出される距離L-T分、感熱テープ8を第二方向に搬送してもよい(S31)。同様に、S15で距離Tが距離L以上であると判断された場合(S15:NO)、CPU11は、距離Tから距離Lを減算することによって算出される距離T-L分、感熱テープ8を第一方向に搬送してもよい(S33)。これらの移送制御が実行されることによって、サーマルラインヘッド112は開始位置76(図12参照)に配置した状態になる。従ってラベル作成装置1は、感熱テープ8の第一方向への搬送を開始すると同時にサーマルラインヘッド112の発熱素子を発熱させ、印刷を即座に開始できる。このためラベル作成装置1は、ラベルの作成に要する時間をさらに短縮できる。
【0055】
なお上述では、距離Sまたは距離Tと距離Lとを比較することによって、感熱テープ8を第二方向に搬送するか否かを判断していたが、ラベル作成装置1は、他のパラメータと距離Lとを比較することによって、感熱テープ8を第二方向に搬送するか否かを判断してもよい。感熱テープ8は、長尺紙テープでもよいし、プレカット紙テープでもよい。また、プレカット紙テープが用いられる場合、感熱テープを第二方向に搬送するか否かを判断する場合のパラメータを、プレカット紙の搬送方向の長さに基づいて決定してもよい。ラベル作成装置1は、ユーザが手動で切断刃160に感熱テープ8を押し付け、感熱テープ8を切断していた。これに対し、感熱テープ8への印刷後、ラベル作成装置1が自動的に感熱テープ8を切断することによってラベル7を作成してもよい。
【0056】
ラベル作成装置1が第二方向に感熱テープ8を距離L分搬送する場合、その搬送距離は厳密に距離Lである必要はなく、距離Lより僅かに小さくてもよい。例えば距離Lが7mmである場合、第二方向に感熱テープ8を搬送する場合の搬送量を6mmとしてもよい。同様に、ラベル作成装置1が第二方向に感熱テープ8を距離L-S又はT-S分搬送する場合、その搬送距離は厳密に距離L-S又はT-Sである必要はなく、これらの距離より僅かに小さくても大きくてもよい。
【0057】
なお、サーマルラインヘッド112が本発明の「印刷手段」に相当する。プラテンローラ111が本発明の「搬送手段」に相当する。切断刃160が本発明の「切断手段」に相当する。S13の処理を行うCPU11が本発明の「特定手段」に相当する。S15、S17、S31、S33の処理を行うCPU11が本発明の「第一制御手段」に相当する。距離S又は距離Tが本発明の「第一距離」に相当する。距離Lが本発明の「第二距離」に相当する。
【符号の説明】
【0058】
1 ラベル作成装置
2 外部端末
7、61、71 ラベル
8 感熱テープ
11 CPU
63、73 印刷可能領域
111 プラテンローラ
112 サーマルラインヘッド
160 切断刃
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段により前記印刷媒体に印刷を行うための印刷データであって、印刷される文字の位置を示す第一情報と、印刷可能と設定された領域をラベルの端部からの距離によって特定した第三情報とを含む印刷データを受信する受信手段と、
前記印刷手段によって印刷が行われた前記印刷媒体を第一方向に搬送する搬送手段と、
前記印刷手段に対して前記第一方向側に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記印刷媒体のうち前記印刷手段によって印刷が行われた部分を切り離してラベルを作成するために、前記印刷媒体を切断する切断手段と、
前記印刷媒体のうち印刷が行われない部分であって、前記切断手段によって切断された端部近傍に設けられる空白部分の搬送方向の長さである第一距離を、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第三情報を参照して特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された前記第一距離と、前記印刷手段から前記切断手段までの間の長さである第二距離とを比較し、前記第一距離よりも前記第二距離の方が大きいとき、前記第一方向と反対方向である第二方向に前記印刷媒体を前記第二距離分搬送し、前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第二方向への前記印刷媒体の搬送を禁止するように、前記搬送手段を制御する第一制御手段と、
前記第一制御手段によって前記搬送手段が制御されたとき、前記受信手段によって受信された前記印刷データの前記第一情報に基づいて、前記印刷媒体に文字を印刷させるように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と
を備えたことを特徴とするラベル作成装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記第三情報に基づき、前記印刷媒体のうち前記切断手段によって切断された端部から、前記印刷可能と設定された領域までの距離を前記第一距離として特定することを特徴とする請求項1に記載のラベル作成装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記第一制御手段は、
前記第二距離が前記第一距離以下であるとき、前記第一方向に前記印刷媒体が、前記第一距離から前記第二距離を減算した値分搬送されるように、前記搬送手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のラベル作成装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-14 
出願番号 特願2011-270464(P2011-270464)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B41J)
P 1 651・ 537- YAA (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 牧島 元  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
登録日 2015-12-25 
登録番号 特許第5857700号(P5857700)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 ラベル作成装置  

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