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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  D04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D04B
管理番号 1339179
異議申立番号 異議2017-700782  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-10 
確定日 2018-03-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6085125号発明「丸編機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6085125号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6085125号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成24年9月6日を出願日とする特許出願であって、平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年8月10日に、その請求項1?4に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人あーく特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年11月7日付けで取消理由が通知され、平成29年12月27日に特許権者より意見書の提出がなされたものである。

第2 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
縦軸まわりに回転するシリンダの外周面にシリンダ針が上下動自在に保持され、
前記シリンダ針の上下動軌道にベア糸用給糸ポイントが設定され、
前記ベア糸用給糸ポイントよりも前記シリンダの回転方向で上流となる位置にプレーティング編の地糸とする糸をシリンダ針の上下動軌道へ向けて給糸する地糸用給糸ポイントが設定されている丸編機において、
前記シリンダの外周位置に前記ベア糸用給糸ポイントへベア糸を給糸するベア糸給糸装置が備えられており、
前記ベア糸給糸装置は、
前記ベア糸用給糸ポイントへ向けてベア糸を導くように前記シリンダの上周部で水平回転軸まわりに回転自在に保持されたベア糸用ガイドローラと、
前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含む水平面に対して鋭角の縦方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調節可能にするローラ保持機構と、
を有しており、
前記ベア糸給糸装置における前記ベア糸用ガイドローラの設置位置とは前記シリンダの径方向において相対的に内方となる位置に、前記地糸用給糸ポイントへ地糸を導く地糸用給糸ガイドが設けられていることを特徴とする丸編機。
【請求項2】
前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含むシリンダ接線方向の垂直面に対して鋭角の横方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調節可能にする第2ローラ保持機構を有していることを特徴とする請求項1記載の丸編機。
【請求項3】
前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用ガイドローラに対してベア糸の給糸方向で上流となる位置に、当該ベア糸用ガイドローラの水平回転軸と交差して設定される別の水平回転軸まわりに回転自在に保持されて、前記ベア糸を外接支持するアイドルローラが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の丸編機。
【請求項4】
前記シリンダの上部に当該シリンダと同心で一体回転するダイヤルが設けられ且つ当該ダイヤルの上面にダイヤル針が径方向移動自在に保持されていると共に、
前記ベア糸用給糸ポイントに対して前記シリンダの回転方向で上流となる位置に、シリンダ針からダイヤル針への目移しでラッチ閉止状態となったシリンダ針のラッチと接触して当該ラッチを開動させるラッチオープナーが設けられており、
前記地糸用給糸ポイントは、前記ラッチオープナーと前記ベア糸用給糸ポイントとのシリンダ回転方向の相互間に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の丸編機。」

2 取消理由の概要
平成29年11月7日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知において申立人の特許異議申立理由は全て採用した。

理由1)
本件発明1?4は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2)
本件特許は、明細書、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


理由1)について
刊行物1:特開平4-91259号公報
刊行物2:特開平11-269744号公報
刊行物3:米国特許第5513503号明細書
刊行物4:特開昭51-88767号公報
刊行物5:特開2009-133014号公報
刊行物6:特開2000-336561号公報

本件発明1?4は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

理由2)について
本件発明1?4が解決しようとする課題は「ベア糸(ポリウレタン等の裸糸)の給糸に関して、糸切れやハネ、編組織不良などを完全に解消できるものとし、また特殊針の開発などは必要とせず、更にはベア糸の給糸に伴う編機の運転制御も不要にすることができる丸編機を提供すること」(本件特許明細書の段落【0011】)と認められるが、発明の詳細な説明には本件発明1?4によってどのように上記課題が解決されたかについて記載されていないため当業者が本件発明1?4の技術上の意義を理解することができない。また、本件発明1?4が、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
また、本件特許明細書の段落【0042】?【0043】には、どのように上記課題が解決されたかについては記載されていないが、縦方向給糸角度α、横方向給糸角度βが鋭角であることが上記課題を解決する旨、記載されている。ここで、縦方向給糸角度α、横方向給糸角度βは鈍角にはならないから、縦方向給糸角度α、横方向給糸角度βが鋭角というのは、直角(90°)を除く全ての場合を包含するものと解される。しかし、具体的にどのような角度であれば上記課題を解決できるのか、例えば89°や60°の場合に上記課題を解決できるのかどうかは確認されておらず、また、89°のような直角(90°)に近く給糸が困難な場合でも本件発明1?4の丸編機を使用できることが確認されているともいえない。さらに、そもそも縦方向給糸角度αと横方向給糸角度βを鋭角としたならば何故上記課題を解決するのかが、明確に説明されていない。

3 引用発明
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1) 丸編機の編針(2)に、糸道(6)を介して地糸(4)を給糸するとともに、弾性糸(5)を給糸する装置において、
前記編針(2)の個数と対応する個数の弾性糸送りガイドローラ(7)を設け、該ガイドローラ(7)のすべてを同調して給糸方向に駆動すべく前記ガイドローラ(7)に共通の駆動ベルト(12)を巻掛けるとともに、該駆動ベルト(12)の駆動プーリー(13)を備えたことを特徴とする丸編機における弾性糸の給糸装置。」(1頁左欄4?14行)

「筒状メリヤス生地を編成する場合の丸編機においては、その編針に、糸道を介して地糸とともにゴム糸、スパンテックス等の弾性糸を給糸して編成したり挿入したりしている。」(1頁左欄末行?同右欄3行)

「(発明が解決しようとする課題)
弾性糸の給糸用ガイド糸道をそれぞれ個別に独立して備えた従来の技術にあっては、弾性糸の張力が個々に異なるため、弾性糸が糸道を通過するとき、静電気が発生し、編成斑を生じていた。また、弾性糸の張力を一定にして給糸することが困難で、編成生地の品質に斑が生しることがあった。」(1頁右欄7?13行)

「図において、1は丸編機のシリンダであり、このシリンダ1の外周には編針2が上下動自在に備えられ、該編針2には針体にバット2Aを有し、上部にノッチ2B等を有している。
編針2のバット2Aがカムボックス3のカム3Aに係合され、シンリダ1の回転駆動により多数の編針2は所定の運針動作し、地糸4とともに給糸されたゴム糸等の弾性糸5を筒状生地に編成又は挿入する。
地糸4は、給糸口6Aを有する糸道6を介して対応する編針2にそれぞれ給糸され、弾性糸5は糸道6を介さずに対応する編針2に給糸可能とされている。
シリンダ1の放射状位置における固定側に取付けられている多数の糸道6すなわち、編針2の個数と対応する個数の弾性糸5のための送りガイドローラ7がカムボックス3等の固定側に支軸8を介して装着してあり、該送りガイドローラ7は複数、図では3個のV溝7Aを有し、ベアリング9によって支軸8に回転自在に装着してある。
なお、支軸8は立面視において途中が屈曲され、基部が固定ボックス10に、ネジ部8Bとナツト11によって高さ方向および給糸方向を調整可能としている。
送りガイドローラ7のそれぞれには共通のエンドレス形駆動ベルト12が巻掛けられていて、該駆動ベルト12はひとつの駆動プーリー13によって矢示A方向に循環回走され、これによって、送りガイドローラ7のすべてを給糸方向に同調回転するようにしており、従って、送りガイドローラ7のV溝7Aに接触されている弾性糸5はその給糸張力を一定にして糸道6を介して給糸される地糸4とともに対応する編針2に供給可能である。」(2頁右上欄7行?同左下欄19行)

「(発明の効果)
本発明は以上の通りであり、編針2の個数と対応する個数の弾性糸送りガイドローラ7を設け、該ガイドローラ7のすべてを同調して給糸方向に駆動すべく前記ガイドローラ7に共通の駆動ベルト12を巻掛けるとともに、該駆動ベルト12の駆動プーリー13を備えたものであるから、編針2に給糸される弾性糸5の給糸張力は一定となり、編針2による編成中の斑が少なくなって弾性糸5を編成又は挿入する生地の品質を向上させることができる。
また、弾性糸5のガイドローラ7は強制駆動されるので静電気の発生を防止する。
これにより、生産稼動率の向上等によって生産コストも節減できる等の利点があり、品質の劣化も防止できる。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄5行)

上記記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「シリンダ1の外周には編針2が上下動自在に備えられている丸編機において、
ゴム糸、スパンテックス等の弾性糸5の給糸装置が備えられており、
弾性糸5の給糸装置は、
編針2の個数と対応する個数の弾性糸5のための送りガイドローラ7であって、ベアリング9によって支軸8に回転自在に装着され、送りガイドローラ7のそれぞれには共通のエンドレス形駆動ベルト12が巻掛けられていて、該駆動ベルト12はひとつの駆動プーリー13によって循環回走され、これによって、送りガイドローラ7のすべてを給糸方向に同調回転するようにしている、送りガイドローラ7と、
立面視において途中が屈曲され、基部が固定ボックス10に、ネジ部8Bとナツト11によって高さ方向および給糸方向を調整可能としている支軸8とを有している丸編機。」

4 判断
(1)理由1(進歩性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する(下線は当審で付した。以下同じ。)。
相違点1.本件発明1のベア糸用ガイドローラは、ベア糸を導くように水平回転軸まわりに回転自在に保持されているのに対して、引用発明の送りガイドローラ7は、ゴム糸、スパンテックス等の弾性糸5のためのものであって、ベアリング9によって支軸8に回転自在に装着し、送りガイドローラ7のそれぞれには共通のエンドレス形駆動ベルト12が巻掛けられていて、該駆動ベルト12はひとつの駆動プーリー13によって循環回走され、これによって、送りガイドローラ7のすべてを給糸方向に同調回転するようにしている点。

上記相違点1について検討する。
引用発明の弾性糸5のための送りガイドローラ7はすべて、支軸8に回転自在に装着し、さらに、共通のエンドレス形駆動ベルト12が巻掛けられて、同調回転するようにされているものである。そうすると、編成時の送りガイドローラ7の回転はエンドレス形駆動ベルト12で拘束されているから、送りガイドローラ7は、本件発明1の回転自在に保持された状態のように、弾性糸5から接触抵抗による回転力を受けて従動回転することはない。
そして、水平回転軸まわりに回転自在に保持されているガイドローラは、刊行物2(案内用鼓車15)、刊行物3(案内ホイール32)に記載されているものの、引用発明の強制駆動される送りガイドローラ7を、刊行物2、3の従動回転されるガイドローラに置換することの動機付けが存在することを示す記載や示唆する記載は、いずれの刊行物にもない。また、そのような置換を行うと、弾性糸の張力が個々に異なるようになって、斑や静電気の発生を防止するという引用発明の格別な作用効果を奏さないこととなるから、そのような置換には阻害事由がある。
一方、本件発明1は、「細くて滑りが少なく且つ切れやすい」(本件特許明細書の段落【0009】)ベア糸に対して、ベア糸用ガイドローラが回転自在に保持されていることで、「ベア糸sが給糸されることに伴うベア糸sとの接触抵抗により回転力を受けて、軽快に連れ回り(従動回転)する。
このように、ベア糸用ガイドローラ20は自在回転する構造であることが重要であって、この回転でベア糸sとの相対速度差をゼロにして、ベア糸sに擦過損傷を与えない状態を維持できるようになっている。」(段落【0029】)という格別な効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、引用発明及び刊行物2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様に、引用発明及び刊行物2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)理由2について
本件発明1?4が解決しようとする課題は「ベア糸(ポリウレタン等の裸糸)の給糸に関して、糸切れやハネ、編組織不良などを完全に解消できるものとし、また特殊針の開発などは必要とせず、更にはベア糸の給糸に伴う編機の運転制御も不要にすることができる丸編機を提供すること」(本件特許明細書の段落【0011】)と認められる。そして、本件発明1?4は「前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含む水平面に対して鋭角の縦方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調節可能にするローラ保持機構」を有することで、鋭角すなわち「水平面を基準とする-90°から+90°の範囲内」(段落【0031】)で、上記(1)に示した格別な作用効果を奏するように、縦方向給糸角度が容易に設定できることは明らかであるから、当業者であれば、本件発明1?4の技術上の意義を理解することができ、また、本件発明1?4が上記課題を解決できることを認識できる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1?4について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。また、本件発明1?4は、発明の詳細な説明の記載において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものではない。

(3)小括
上記(1)のとおり、本件発明1?4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできず、その特許は同法第113条第2号に該当しない。
また、上記(2)のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしており、また、本件発明1?4に係る特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、その特許は同法第113条第4号に該当しない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した上記取消理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-03-12 
出願番号 特願2012-196216(P2012-196216)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D04B)
P 1 651・ 537- Y (D04B)
P 1 651・ 536- Y (D04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 尋  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 久保 克彦
小野田 達志
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6085125号(P6085125)
権利者 グンゼ株式会社
発明の名称 丸編機  
代理人 安田 幹雄  
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