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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1339205
異議申立番号 異議2017-701153  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-06 
確定日 2018-04-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6154209号発明「顧客誘導システム及び顧客誘導方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6154209号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6154209号に係る出願は、平成25年6月19日に特許出願され、平成29年6月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 赤松智信(以下、単に「特許異議申立人」と記す。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明

特許第6154209号の請求項1?12の特許に係る発明(以下、各請求項の特許に係る発明を「本件特許発明1」の様に記す。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された次の事項により特定される以下の通りのものである。

「【請求項1】
店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部と、前記顧客による電子的な記帳データの入力を受け付け、受付番号を付した媒体を出力する電子記帳機とを備える顧客誘導システムにおいて、
前記受付部で受け付けた取引種別に基づいて、前記電子記帳機へ誘導するか否かを判定し、前記電子記帳機へ誘導しないと判定した場合は、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する顧客誘導部を備え、
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が第1の取引種別である場合に、該顧客を前記電子記帳機に誘導を行い、
前記電子記帳機は前記記帳データの生成に応じて受付番号を付した媒体の出力を行う
ことを特徴とする顧客誘導システム。

【請求項2】
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が前記顧客による伝票への記帳が不要な第2の取引種別である場合に、該顧客を前記第2の取引種別の取引処理を行う窓口に誘導することを特徴とする請求項1に記載の顧客誘導システム。

【請求項3】
前記電子記帳機は、
前記記帳データに係る情報が含まれる書類の画像データを読み取る読取部と、
前記読取部により読み取られた画像データから前記書類に含まれる記帳データに係る情報を抽出する抽出部と
を備え、
前記抽出部により抽出された記帳データを、前記第1の取引種別の取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の顧客誘導システム。

【請求項4】
前記受付部は、店舗に来店した顧客が希望する取引種別及び該顧客の属性情報を受け付け、
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が前記第1の取引種別である場合に、該顧客の属性情報に適した電子記帳機に該顧客を誘導する
ことを特徴とする請求項1?3のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項5】
前記第1の取引種別の取引処理を行う窓口が空き状態であるか否かを検知する検知部をさらに備え、
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が前記第1の取引種別であり、かつ、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知された場合に、該顧客を前記窓口に誘導する
ことを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項6】
店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部と、前記顧客による電子的な記帳データの入力を受け付ける電子記帳機とを備える顧客誘導システムにおいて、
前記受付部で受け付けた取引種別に基づいて、前記電子記帳機へ誘導するか否かを判定し、前記電子記帳機へ誘導しないと判定した場合は、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する顧客誘導部と、
第1の取引種別の取引処理を行う窓口が空き状態であるか否かを検知する検知部と
を備え、
前記電子記帳機は、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理し、
前記顧客誘導部は、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知された際に、前記電子記帳機で入力を行う顧客を前記窓口に誘導する
ことを特徴とする顧客誘導システム。

【請求項7】
前記窓口端末は、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知され、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記電子記帳機から受信した場合に、前記記帳データの未入力分について追加入力を受け付けることを特徴とする請求項6に記載の顧客誘導システム。

【請求項8】
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が前記顧客による伝票への記帳が不要な第2の取引種別である場合に、前記第2の取引種別の取引処理を行う窓口の待ち時間を推定し、推定した待ち時間が所定時間以上であるならば、窓口以外で前記顧客に対応する店員に対して報知を行うことを特徴とする請求項1?7のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項9】
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が前記第1の取引種別であり、かつ、現在時刻が所定の時間帯に属すると判定した場合に、該顧客を前記第1の取引種別の取引処理を行う窓口に誘導することを特徴とする請求項1?8のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項10】
前記受付部は、店舗に来店した顧客が希望する取引種別及び該顧客の属性情報を受け付け、
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた属性情報が重要顧客としての条件を満たす場合に、前記重要顧客に対応する店員に対して報知を行う
ことを特徴とする請求項1?9のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項11】
店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部と、前記顧客による電子的な記帳データの入力を受け付ける電子記帳機とを備える顧客誘導システムにおける顧客誘導方法であって、
顧客誘導部が、前記受付部で受け付けた取引種別が第1の取引種別である場合に、該顧客を前記電子記帳機に誘導を行う誘導ステップと、
前記電子記帳機が、前記記帳データの生成に応じて受付番号を付した媒体の出力を行う媒体出力ステップと
を含んだことを特徴とする顧客誘導方法。

【請求項12】
店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部と、前記顧客による電子的な記帳データの入力を受け付ける電子記帳機とを備える顧客誘導システムにおける顧客誘導方法であって、
第1の取引種別の取引処理を行う窓口が空き状態であるか否かを検知する検知ステップと、
前記電子記帳機が、前記検知ステップにより前記窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理するステップと、
顧客誘導部が、前記検知ステップにより前記窓口が空き状態であると検知された際に、前記電子記帳機で入力を行う顧客を前記窓口に誘導するステップと
を含んだことを特徴とする顧客誘導方法。」


第3 申立理由の概要

特許異議申立人は、以下の各甲号証を提出し、本件特許発明1?12は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当することを申立ての理由として主張している。

甲第1号証:特開2004-157704号公報
甲第2号証:特開平8-221498号公報
甲第3号証:特開2005-284648号公報
甲第4号証:特開2012-48394号公報
甲第5号証:特開昭63-244267号公報
甲第6号証:特開2006-134007号公報
甲第7号証:特開2004-220154号公報
甲第8号証:特開2005-10849号公報

(以下、各甲号証は「甲1」の様に略記し、甲第1号証に記載された発明は「甲1発明」、甲第2号証に記載された発明は「甲2発明」、甲第3号証に記載された発明は「甲3発明」と記す。)

なお、申立ての理由の要点は、以下に示す通りである。

・請求項1、2
甲1発明、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項3
甲1?甲3発明に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項4
甲1?甲3発明、及び甲4の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項5
甲1?甲3発明、及び甲4、甲5の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項6
甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項7
甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項8
甲1?甲3発明、及び甲4?甲7の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項9
甲1?甲3発明、及び甲4?甲8の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項10
甲1?甲3発明、及び甲4?甲8の記載に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項11
甲1発明、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到。
・請求項12
甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者が容易に想到。


第4 甲号証の記載

1.甲1について

甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付したものである。)

(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、顧客が来店する営業店のシステム及び方法に係り、特に、金融機関(例えば、銀行、証券会社、保険会社、郵便局等)で用いられるシステム及び方法に関する。」(【0001】)

(イ)「本発明の目的は、今後金融営業店において提供される多様なサービスに対して、多様な端末を提供していく上で、店舗の混雑度、来店用件、顧客情報により顧客の行動フローを管理することにより、応対員の事務の効率化および顧客サービスの向上を実現することにある。」(【0008】)

(ウ)「【発明の実施の形態】図1は、本発明のシステム構成を示す図である。このシステムは、ネットワーク101を介して、顧客が来店する営業店102、各種の計算を行う電算センタ103が接続されている。
営業店102は、来店した顧客が受付を行う受付端末111、ロビーにて待ち時間に顧客が自由に操作可能なロビー端末112、営業店の応対員(例えば、銀行の行員や相談員)が顧客と直接応対する窓口端末113、ATMや現金入出金機、通帳発行機等専用の機能を備えて顧客が操作する自動機115を備えており、窓口端末113には、顧客が参照および操作可能な対話型ディスプレイ114が接続されている。また、本発明において営業店102内の複数の端末(例えば、受付端末111、ロビー端末112、窓口端末113、自動機115)を跨るワークフロー管理およびデータ連携を統括管理する営業店管理サーバ116を備えている。営業店管理サーバ116は、受付管理情報121、フロー対応情報122、フロー情報123、顧客一時情報124を記憶している。なお、営業店管理サーバ116は、各銀行の設置形態により電算センタ103内に設置されていてもよい。また、ロビー端末112は、設置場所に固定されているものでもよいし、営業店から顧客へ貸し出される携帯端末(例えば、携帯電話やPDA)であってもよい。」(【0012】、【0013】)

(エ)「図4は来店した顧客を受付けた際にどのように誘導させるかを決定するための情報であるフロー対応情報122であり、閑散時か混雑時かを示す混雑度401、来店用件402、優良、一般、新規、VIP等顧客情報132に格納されているセグメントを示す顧客セグメント403の3つの条件に対し、該当するフロー404を示している。顧客が受付を行った際に本データを参照することにより、顧客に対するフローを決定し、図2の受付管理情報のフローID307を設定する。」(【0018】)

(オ)「次に本発明の処理の詳細を説明する。本実施形態は、顧客が営業店102に来店し、受付端末111で受付を行い、ロビー端末112、窓口端末113を順に利用する例である。
以下に、図6のフロー図をもとに図7?図8の表示画面を参照して、受付端末111の処理手順を説明する。
・・・途中省略・・・
受付端末111は、個人メニュー画面711または一般メニュー画面で用件が選択されると、これを受付け(ステップ609)、選択項目を営業店管理サーバ116に送信する。営業店管理サーバ116では、営業店102内の混雑度を常に管理しており、現在の状況から「混雑」または「閑散」を判定する(ステップ610)。例えば、営業店管理サーバ116は、ステータス308から、処理を完了していない顧客数又は処理数を算出し、算出された数と予め定めたしきい値(混雑度を判定するためのしきい値)とを比較し、その顧客数又は処理数がしきい値以上の場合は「混雑」と判定し、その顧客数又は処理数がしきい値未満の場合は「閑散」と判定する。尚、この混雑度の判定は、営業店管理サーバ116以外の他の装置が行い、営業店管理サーバ116が他の装置から混雑度データを取得してもよい。この混雑度401と、顧客が選択した来店用件402、顧客管理サーバ133から取得済で顧客一時情報124に格納されている顧客セグメント403より、図3で示すフロー対応情報122を参照して、対応するフロー404を決定し(ステップ611)、これを受付管理情報121に登録し、フロー管理を開始する(ステップ612)。ここで定義されている各フロー404は、フロー情報123に格納されている。そして、フロー404を参照して次に誘導すべき端末を確定し、受付番号とともに受付端末111に回答する。受付端末111では、回答された情報により、図8のような案内画面801を表示し(ステップ613)、受付番号が記された整理券とカードを排出する(ステップ614)。
以上が受付端末111の処理手順である。」(【0024】?【0029】)

(カ)「以下に、図9のフロー図をもとに図10?図15の表示画面を参照して、ロビー端末112での処理手順を説明する。ロビー端末の利用形態としては、カード保有者がカード挿入により個人用として各種情報参照等自由に利用する形態、カード挿入なしで一般用として各種情報参照等自由に利用する形態、および窓口等の処理を軽減させるための取引項目の事前入力に利用する形態がある。」(【0030】)

(キ)「ここで、図10のフロー図をもとに図14の表示画面を参照して、ステップ910の事前入力処理の詳細の処理手順を説明する。まず、図14(a)のような事前入力画面1401を表示し(ステップ1001)、顧客の入力を受付ける。顧客の入力がされると、まだ入力項目の残っているかどうかを判定し(ステップ1002)、残っている場合は次の入力画面を表示する。すべての入力が完了すると、入力された情報を営業店管理サーバ116に送信し、顧客一時情報124として格納する(ステップ1003)。そして、継続して利用するかどうかを確認する図14(b)のような継続利用確認画面1411を表示する。継続利用確認画面1411において、「利用する」ボタン1412が選択されると継続利用ありと判断し、「利用しない」ボタン1413が選択されると継続利用なしと判断する。」(【0034】)

上記(ア)から(キ)の記載より、甲1には、

「金融機関で用いられるシステムであって、
このシステムは、ネットワーク101を介して、顧客が来店する営業店102、各種の計算を行う電算センタ103が接続されており、
営業店102は、来店した顧客が受付を行う受付端末111、ロビーにて待ち時間に顧客が自由に操作可能なロビー端末112、営業店の応対員(例えば、銀行の行員や相談員)が顧客と直接応対する窓口端末113、ATMや現金入出金機、通帳発行機等専用の機能を備えて顧客が操作する自動機115、営業店102内の複数の端末(例えば、受付端末111、ロビー端末112、窓口端末113、自動機115)を跨るワークフロー管理およびデータ連携を統括管理する営業店管理サーバ116を備えており、
営業店管理サーバ116は、受付管理情報121、フロー対応情報122、フロー情報123、顧客一時情報124を記憶し、
フロー対応情報122は、来店した顧客を受付けた際にどのように誘導させるかを決定するための情報であり、
受付端末111は、個人メニュー画面711または一般メニュー画面で用件が選択されると、これを受付け、選択項目を営業店管理サーバ116に送信し、
営業店管理サーバ116では、混雑度401と、顧客が選択した来店用件402、顧客管理サーバ133から取得済で顧客一時情報124に格納されている顧客セグメント403より、フロー対応情報122を参照して、対応するフロー404を決定し、そして、フロー404を参照して次に誘導すべき端末を確定し、受付番号とともに受付端末111に回答し、
受付端末111では、回答された情報により、案内画面801を表示し、受付番号が記された整理券とカードを排出し、
ロビー端末の利用形態としては、窓口等の処理を軽減させるための取引項目の事前入力に利用する形態があり、事前入力処理の詳細の処理手順としては、事前入力画面1401を表示し、顧客の入力を受付け、すべての入力が完了すると、入力された情報を営業店管理サーバ116に送信し、顧客一時情報124として格納する、
システム。」の発明が記載されている。

2.甲2について

甲2には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付したものである。)

(ク)「【産業上の利用分野】
本発明は、伝票処理システムに関するもので、特に金融機関において顧客の順番待ちの時間を短縮し、情報入力を効率化するのに有効なものである。」(【0001】)

(ケ)「【実施例】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例につき詳細に説明する。図1は本発明にかかる伝票処理システムの概略システム構成を示すブロック図である。
システムコントローラ10には起票機20、受付番号表示器40が接続され、起票機20で伝票が発行された時点で伝票上に受付番号が印刷され、窓口に置かれた番号表示機40に番号が表示される。起票機20で発行された入出金伝票50は、窓口に設置されたオンラインテラーズマシン(OTM)70に付属する伝票読み取り機60によって読み取られ、OTM70へデータが入力される。」(【0018】、【0019】)

(コ)「図4は、起票機20のハードウェア構成を示す構成ブロック図である。
・・・途中省略・・・
伝票プリンタ204は伝票用紙の印字を行うプリンタであって、制御部201の指令に基づき、顧客が入力したデータ及び後述するデータリーダで得られた、カードあるいは通帳の磁気データから読み込んだ情報をもとに各種のフォーマットの伝票を印字出力する。すなわち口座番号等の情報も伝票の書式に沿って印字する。
・・・途中省略・・・
番号札プリンタ208は窓口での受付順番を示す番号札を発給するものである。この番号札は後述するように特定の処理の場合に発給される。
・・・以下省略・・・ 」(【0026】?【0030】)

(サ)「ロビーに設置してある電子起票機のメニュー画面には図6に示すようなガイダンスが表示されている(ステップS101)。顧客がこのタッチパネルに触れることにより、処理の選択が行われる(ステップS102)。このときに選択できる処理は、入金(新規)、入金(継続)、定期預金(新規)、定期預金(継続)、出金、振り込み、両替、法人取引であり、以下、場合ごとに異なる処理が行われる。
(1) 新規窓口開設、新規定期、法人取引の場合
処理を図7のフローチャート(フローA)を参照して説明する。これらの処理が選択された場合には、伝票発行を伴わないので、それらの項目が指定されると、起票機からこれらの処理が選択されたことが受付番号管理機31に送信され(ステップS201)、受付番号管理機31により該当する窓口における受付番号が決定され(ステップS202)、起票機にエコーバックされる(ステップS203)。この指令に基づいて番号札プリンタ208で番号札が印刷され、取り出し口から排出される(ステップS204)。このとき、画面には[受付番号札を受け取りお待ちください]との、番号札の受け取りを促すメッセージが表示されるとともに、取り出し口の両側に設けられた番号札排出表示器が点滅することにより取出しが促される。この番号札は顧客が希望する処理を担当する該当窓口における順番を示すものであり、その窓口に設けられた番号表示装置に自分の番号が表示されることを待つことになる。
この場合、起票機は単なる番号札発行機としての役割を果たすのみであるが、ここに示された処理のように必ずしもロビーの近くに設置されていない窓口での順番を起票機で確保できるという利点がある。
(2) 継続の入金、継続の出金、継続の定期入金・解約の場合
これらの処理は口座がすでに設定されている場合であるので、すでに設定されている情報を最大限利用するようにする。以下、各処理で表示内容等に若干の相違があるため、場合に分けて説明する。
(a) 継続の入金の場合
図8のフローチャート(フローB)を参照する。この処理が選択されることにより、電子起票機の画面には[通帳またはキャッシュカードを通してください]という通帳等の挿入のメッセージが表示される(ステップS301)。このメッセージに従って顧客により電子起票機上の該当する読み取り部103,104にキャッシュカードまたは通帳が挿入されると(ステップS302)、これらの磁気ストライプ部から店番、科目、口座番号等の情報が読み取られ(ステップS303)、この情報は制御部201内のRAMに一時記憶される(ステップS304)。そして、画面には図9に示すような金額入力を促すメッセージが表示される(ステップ305)。顧客が数字キーに触れれるとその部分の色が変化するとともに電子音が発生することによりキー入力があったことを確認しながら、金額入力が行われる(ステップS306)。次に画面に[入金金額を確認して下さい]というメッセージが表示され(ステップS307)、これに従って、表示された金額が正しい場合、顧客によりなされる確認のキー入力により入金金額が確定する(ステップS308)。この金額情報も記憶される(ステップS309)。
これにより必要な情報が揃ったので、この起票機から受付番号管理機31に必要なデータ収集が完了した旨が送信され(ステップS310)、受付番号管理機31では入金窓口における連続番号が受付番号として採番され(ステップS311)、この番号が起票機にエコーバックされる(ステップS312)。
起票機ではこの番号とすでに記憶された情報から印刷データを再構成し(ステップS313)、印刷を行う(ステップS314)。なお、この伝票印刷中は[「印字中」しばらくお待ち下さい]とのメッセージが表示され、印字が完了すると[伝票を取り署名をして入金窓口の順番をお待ち下さい。番号は伝票の右隅に印字されています。]との表示に代わり、伝票取り出し口105の横に設けられたランプ106が取り出しを促す(ステップS315)。
印字された伝票の一例を図10に示す。この例では店番号301、科目コード302、口座番号303、入金額304、受付番号305が印刷されるとともに、バーコード306の印字も行われている。なお、窓口用情報処理装置がOCRを使用する場合は、バーコードの印字は不要である。このように発行された伝票は受付番号札を兼ねている。」(【0037】?【0044】)

上記(ク)から(サ)の記載より、甲2には、

「金融機関において顧客の順番待ちの時間を短縮し、情報入力を効率化するのに有効な伝票処理システムであって、
システムコントローラ10には起票機20、受付番号表示器40が接続され、
起票機20のハードウェア構成である伝票プリンタ204は伝票用紙の印字を行うプリンタであって、制御部201の指令に基づき、顧客が入力したデータ及び後述するデータリーダで得られた、カードあるいは通帳の磁気データから読み込んだ情報をもとに各種のフォーマットの伝票を印字出力し、 番号札プリンタ208は窓口での受付順番を示す番号札を発給するものであり、
ロビーに設置してある電子起票機のメニュー画面にはガイダンスが表示され、顧客がこのタッチパネルに触れることにより、処理の選択が行われ、
新規窓口開設、新規定期、法人取引の処理が選択された場合には、伝票発行を伴わないので、それらの項目が指定されると、起票機からこれらの処理が選択されたことが受付番号管理機31に送信され、受付番号管理機31により該当する窓口における受付番号が決定され、起票機にエコーバックされ番号札プリンタ208で番号札が印刷され、取り出し口から排出され、
継続の入金の処理が選択されると、電子起票機の画面には通帳等の挿入のメッセージが表示され、このメッセージに従って顧客により電子起票機上の該当する読み取り部103,104にキャッシュカードまたは通帳が挿入されると、これらの磁気ストライプ部から店番、科目、口座番号等の情報が読み取られ、この情報は制御部201内のRAMに一時記憶され、そして、画面には金額入力を促すメッセージが表示され、金額入力が行われ、顧客によりなされる確認のキー入力により入金金額が確定すると、起票機から受付番号管理機31に必要なデータ収集が完了した旨が送信され、受付番号管理機31では入金窓口における連続番号が受付番号として採番され、この番号が起票機にエコーバックされ、起票機ではこの番号とすでに記憶された情報から印刷データを再構成し、印刷を行い、印字された伝票には、店番号301、科目コード302、口座番号303、入金額304、受付番号305が印刷されるとともに、バーコード306の印字も行われている、
伝票処理システム」の発明が記載されている。

3.甲5について(なお、下線は当審にて付したものである。)

甲5には、「先ず、本実施例における取引処理の概略について述べる。
顧客は電子伝票記帳台1-1にて取引科目を選択し、取引データの入力を終えると、電子伝票記帳台1-1のディスプレイに各々の取引科目に対応した処理コーナへの誘導メッセージが表示され、現物処理単位ごとに付与される通番を印字した番号札が自動発行される。この時、処理終了までの予想待ち時間が表示される。同時に処理コーナの処理状況を判定し、空きの場合は処理コーナへ顧客を誘導し、処理中の場合は、待機のためにソファへ誘導する。同一科目を処理するコーナが複数の場合、順番待ち行列(ファイル要求順序キュー)により、より早く処理が終了する処理装置へ誘導する。」との事項が記載されている。(第6頁左下欄第8行?同頁右下欄第2行)

4.甲6について

甲6には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付したものである。)

(シ)「【解決手段】
そこで、受付端末では来店目的を顧客に選択させるに留めることで、受付端末の占有を早期に解放する技術を提供する。併せて、受付端末、ロビー端末、窓口端末、呼出表示機を連動する装置/システム/方法を提供する。すなわち、当該受付端末には来店目的のみ顧客に選択させ、窓口から呼ばれるまで顧客をロビーに誘導し、ロビー端末にて顧客側で出来得る取引の事前入力を行う技術を提供する。また、ロビー端末の操作状況を参照して適切なタイミングで顧客を呼び出す技術を提供する。」(【要約】)

(ス)「以下、金融機関等の店舗(営業店)に設置された受付端末を利用した顧客が窓口からの呼び出しまでの時間を有効に活用できる手段の提供を、本発明の実施に好適な形態例として説明する。ただし、本発明の対象は、金融機関に限られず、また、構成や行程の取捨選択・入れ替え等も可能である。
図1は、ロビー端末管理システムのハードウエア構成のブロック図を示す。顧客の操作に基づいて、入出金やお振込み、相談、住所変更などの来店目的を入力し、受付番号を出力する複数の受付端末1と、顧客のCIF番号や口座番号(顧客番号)に応じて、顧客の氏名、住所等の顧客情報を記憶したり、受付端末から入力された来店目的に応じて、来店時間や顧客番号、来店目的などの来店受付状況を記憶したり、ロビー端末や呼出表示機を制御するサーバ2と、窓口からの呼出までの時間を事前入力や情報検索できる複数のロビー端末3と、勘定系取引や相談事務等を行う複数の窓口端末4と、ロビー端末を操作していない人に窓口から呼び出す番号を表示する呼出表示機5と、窓口端末4から入金・出金・振込などの取引(勘定取引)の要求に応じ、その取引を実行して結果を窓口端末へ送信する勘定系ホスト6とがネットワーク(回線)を介して接続されている。ロビー端末管理システムは、これら端末、サーバ、ホストの少なくとも一部を含むものを指すものとする。
受付端末1は、プログラムに基づいてデータを処理する処理部100(主に半導体プロセッサを意味する)と、プログラムやデータを記憶するメモリ101と、ネットワークを介して他の機器との通信を中継する通信部102(主にプロトコル変換などを実行するインターフェイスを意味する)と、顧客のカードの磁気ストライプ・ICチップ・印刷等から店番・科目・口座番号等のカード情報を読み取るカードリーダ107と、顧客に受付端末1の操作内容を表示するLCD等のディスプレイ103と、ディスプレイ103に表示した操作内容に基づく顧客の入力を受け付けるタッチパネルやキーボードなどの入力部104と、顧客が受付端末1の前に立つと反応するセンサ部106と、受付番号等を印字する印字部105とを具備する。」(【0010】?【0012】)

(セ)「図7は、ロビー端末3に表示する画面例である。701から703は、それぞれ、図8の画面番号803のうち、G01「メニュー画面」と、G13「新規口座開設(3/5)」と、G212「住宅ローン案内(2/4)」に相当する。701は、メニューとして、新たな口座を開設する「新規口座開設」と、口座間で資金を移動する「振替/振込」と、ローン等の金融商品の案内を見る、シミュレーションをする、申し込む等の「商品閲覧/購入」と、氏名や住所の変更、口座の解約等をする「変更/解約手続」と、口座の残高等を照会する「口座照会」と、取引に応じてポイントが付加されるポイントサービスやインターネットを利用したサービス等を申し込む「サービス申込み」とを入力部304で選択可に表示している。702は、新規口座開設の際に最初に入金する金額を指定できるよう金額入力欄と数値キーと金額入力欄を訂正する訂正キーと金額入力欄の金額を確定する確定キーとを表示している。703は、住宅ローンの返済年数を指定できるよう返済年数欄と返済年数選択キー(その他キーを押すと数値キーにより任意の年数を指定できる)と返済年数欄の年数を確定する確定キーと前の画面に戻るための戻るキーとを表示している。」(【0021】)

(ソ)「処理部100は、送信部102を介して受信した受付番号を受信し、印字部で受付番号等を印字する。このとき、来店目的に応じて顧客誘導先をディスプレイ103に表示できることが好ましい。」(【0025】)

(タ)「図3は、処理部200、300、400がロビー端末での取引や窓口からの顧客呼出に関するプログラムとデータに基づいて実行する処理の流れを示すフローチャートである。以下、図6、7、8を引用しながら説明する。
処理部300は、カードリーダ307にてカード情報を取得し、ロビー端末3の装置番号とともにサーバ2へ通信部302を介して送信する(S3101)。受付端末1で受付番号をカードに記憶しておいてカード情報として受付番号を取得しても良いし、受付端末で発行された受付番号を入力部に入力させて取得するようにしても良い。処理部300は、来店目的に応じて取引を実行し、画面の遷移状況をサーバ2へ送信する(S3102)。例えば、ローン相談に来た顧客に対しては、金融商品の紹介やローンシミュレーションなどのコンテンツを表示させ、サーバ2にどの画面を表示しているかを送信する。あるいは、新規口座開設や住所変更などを目的に来た顧客に対しては、口座を開設するに当たって入金する金額や新住所などを入力部304から入力していき、こちらもサーバ2にどの画面を表示しているかを送信する。このとき、画面ごとに異なる任意の符号などを予め画面情報に設定していることが望ましい(図8)。
処理部200は、カード情報とロビー端末3の装置番号を取得する(S3201)。処理部200は、ロビー端末3の利用状況を把握し、ロビー端末管理ファイル205を更新する(S3202)。カード情報から受付端末1にて受け付けた受付番号を受付管理ファイル204から取得することができ、ロビー端末3の利用者をロビー端末管理ファイル205に記憶することができる。
処理部400は、待っている顧客のリストをサーバ2に要求する(顧客呼出確認、S3301)。
処理部200は、顧客の呼び出し可能かを図6のロビー端末管理ファイルのように判断する(S3203)。例えば、図6のロビー端末装置番号M1においては、操作状況603の状態が、処理部300からシミュレーション終了状態からメニュー画面に戻っていることがサーバ2に送られてきているので、図8の画面情報テーブルG01に相当するとして呼び出し可と判断している。図6のロビー端末装置番号M2においては、操作状況603が金額入力中とのことなので、図8の画面情報テーブルG08に相当するとして呼び出し不可と判断している。これらの判断は、図8のように画面ごとに呼出可否を関連づけておくことで判断してもよいが他の方法によって判断しても良い。例えば、ロビー端末に表示する画面の種類では、メニュー画面のようにこれから選択していく画面は呼出可否を選択可としておいてもよい。つまり、ロビー端末3を操作し始めたときに最初に表示されているメニュー画面は呼び出し不可とし、一度取引を終了してメニュー画面に戻った場合などは呼出可とするなど、ロビー端末3の操作履歴から判断可能であるとしても良い。あるいは、操作時間605から同じメニュー画面を表示しているにしても、操作時間が短い場合は呼び出し不可、ある程度の時間(例えば5分以上)操作しているメニュー画面の場合は呼び出し可としてもよい。また、窓口端末4から顧客呼出確認を受けてから判断するようにしても良いし、予め判断して図6のテーブルを参照して回答しても良い。呼出可否を含む待ち顧客リストを窓口端末4に返信する。呼び出し不可と判断された場合は、S3202に戻って判断を再実行するようにしても良いが、呼出不可として図6のロビー端末管理ファイルに登録して一旦終了する(呼出可否いずれについてもその後(逐次)判断を繰り返して状況を把握する)。
処理部400は、呼出可能な待ちリストを表示させ、呼び出したい顧客の受付番号をサーバ2へ送信する(S3302)。待ちリストには顧客の顧客番号や受付番号、ロビー端末の操作状況や呼び出し可否情報が含まれる。選択された顧客について、顧客番号や受付番号を発信する。
呼び出し可と判断された場合は、窓口端末4からの要求に応じてロビー端末3に窓口へ誘導する画面を表示させることができる。あるいはロビー端末3を利用していない場合は
、ロビー端末管理ファイル205から受付番号を検索することで判断できるので、呼出表示機5の表示部503やスピーカ504を通して、店舗内等にアナウンスすることもできる(S3204)。また、重要顧客などの場合には、テラーが顧客のところへ迎え等に行けるようその顧客が操作している端末の番号や場所を示す地図を表示するようにしても良い。S3302からサーバ2のS3204を経由せず、ロビー端末3に送信しS3103を実行するようにしても良い。呼び出した顧客については、図6のロビー端末管理ファイルの呼び出し可否情報を否又は呼び出し中と変更する。
処理部300は、顧客呼出信号を受けるとディスプレイ303に来てもらう窓口端末4の番号等を表示する(S3103)。ロビー端末3や呼出表示機5にて窓口へ呼び出された顧客は、窓口端末4にてロビー端末3では処理し切れなかった取引を継続することができる(S3303)。窓口に顧客が来ると図5の受付管理ファイルから当該顧客の情報を削除する。」(【0026】?【0033】)


第5 対比・判断

1.本件特許発明1について

<対比>

本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(1-1)
甲1発明にかかる「受付端末111」は、「来店した顧客が受付を行」い、顧客により「個人メニュー画面711または一般メニュー画面で用件が選択される」のであるから、本件特許発明1でいうところの『店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部』に相当する。

(1-2)
甲1発明にかかる「ロビー端末112」は、「ロビーにて待ち時間に顧客が自由に操作可能な」端末であり、「窓口等の処理を軽減させるための取引項目の事前入力に利用」し、「顧客の入力を受付け」るものであるものの、前記「取引項目の事前入力」の具体的内容については特定されていないので、本件特許発明1とは、『顧客による電子的なデータを受け付ける端末』という概念で一致している。

(1-3)
甲1発明は、営業店管理サーバ116にフロー対応情報122を記憶しており、営業店管理サーバ116では、「混雑度401と、顧客が選択した来店用件402、顧客管理サーバ133から取得済で顧客一時情報124に格納されている顧客セグメント403より、フロー対応情報122を参照して、対応するフロー404を決定し、そして、フロー404を参照して次に誘導すべき端末を確定し、受付番号とともに受付端末111に回答」し、「受付端末111では、回答された情報により、案内画面801を表示し、受付番号が記された整理券とカードを排出」するのであり、前記「来店用件」は、本件特許発明1でいうところの『取引種別』に相当することは明らかであるから、本件特許発明1とは、『受付部で受け付けた取引種別に基づいて、どの端末へ誘導するかを判定し、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する顧客誘導部』に対応する構成を備えているといえる。

そして、営業店管理サーバ116は、「顧客が選択した来店用件」等により、どの端末へ誘導するかを判定するものであり、「顧客が選択した来店用件等」の具体的内容によっては、顧客をロビー端末へ誘導することになるので、「顧客をロビー端末へ誘導することになる来店用件等」は、本件特許発明1でいうところの『第1の取引種別』に相当するので、甲1発明は、本件特許発明1でいうところの『顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が第1の取引種別である場合に、該顧客を端末に誘導を行い、』に対応する構成を備えているといえる。

(1-4)
甲1発明のシステムは、来店した顧客をその来店用件等により営業店102内の所定の端末へ誘導するものであるから、本件特許発明1でいうところの『顧客誘導システム』といえる。

上記(1-1)から(1-4)で対比した様に、本件特許発明1と甲1発明とは、

「店舗に来店した顧客が希望する取引種別を受け付ける受付部と、前記顧客による電子的なデータを受け付ける端末とを備える顧客誘導システムにおいて、
前記受付部で受け付けた取引種別に基づいて、どの端末へ誘導するかを判定し、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する顧客誘導部を備え、
前記顧客誘導部は、前記受付部により受け付けた取引種別が第1の取引種別である場合に、該顧客をロビー端末に誘導を行う、
顧客誘導システム。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件特許発明1にかかる『電子記帳機』は、『顧客による電子的な記帳データの入力を受け付け、受付番号を付した媒体を出力する』ものであり、『記帳データの生成に応じて受付番号を付した媒体の出力を行う』ものであるのに対して、甲1発明にかかる「ロビー端末」は、「記帳データの入力を受け付け」ているのか不明であることに加え、「受付番号を付した媒体を出力」していない点。(甲1発明においては、受付番号が記された整理券とカードを排出するのは、受付端末111である点。)

[相違点2]
本件特許発明1においては、『電子記帳機へ誘導しないと判定した場合は、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する顧客誘導部を備え』ているのに対し、甲1発明にかかる営業店管理サーバ116では、どの端末へ顧客を誘導するかに拘わらず、受付端末111へ受付番号を回答する点。

<判断>

上記[相違点1]及び[相違点2]をまとめて検討する。

甲2発明にかかる「起票機20」は、「伝票プリンタ204」を備え、「制御部201の指令に基づき、顧客が入力したデータ及びデータリーダで得られた、カードあるいは通帳の磁気データから読み込んだ情報をもとに各種のフォーマットの伝票を印字出力し、番号札プリンタ208は窓口での受付順番を示す番号札を発給するもの」であり、「印字された伝票には、店番号301、科目コード302、口座番号303、入金額304、受付番号305が印刷される」ものである。

一方、甲1発明は、「営業店管理サーバ116では、混雑度401と、顧客が選択した来店用件402、顧客管理サーバ133から取得済で顧客一時情報124に格納されている顧客セグメント403より、フロー対応情報122を参照して、対応するフロー404を決定し、そして、フロー404を参照して次に誘導すべき端末を確定し、受付番号とともに受付端末111に回答し、受付端末111では、回答された情報により、案内画面801を表示し、受付番号が記された整理券とカードを排出」するものである。
そして、甲1発明は、甲1の図9のステップ914から明らかな様に、営業店管理サーバ116から受付端末111に対して回答された受付番号を顧客がロビー端末にて取引項目の事前入力を行う際に入力するというものである。

ここで、甲2発明にかかる起票機20が実行する「制御部201の指令に基づき、顧客が入力したデータ及びデータリーダで得られた、カードあるいは通帳の磁気データから読み込んだ情報をもとに各種のフォーマットの伝票を印字出力し、番号札プリンタ208は窓口での受付順番を示す番号札を発給する」との処理を甲1発明にかかる「ロビー端末」にて実行させることが可能かについて検討する。

甲1発明は、顧客が選択した来店用件等に基づいて、営業店管理サーバ116では、どの端末へ顧客を誘導するかに拘わらず、受付端末111へ受付番号を回答するものであり、ロビー端末にて取引項目の事前入力を行う際には、顧客に対して受付番号が既に示されていることが前提であり、甲2発明にかかる起票機が実行する前記処理を甲1発明にかかるロビー端末にて実行させようとすると、顧客はロビー端末に対して入力するべき「受付番号」が知らされていないため、ロビー端末に対して取引項目の事前入力が行えないので、甲1発明にかかるロビー端末に甲2発明にかかる起票機が実行する前記処理を実行させること、即ち、甲1発明と甲2発明とを組み合わせることに阻害要因が存在することは明らかである。

また、甲1発明及び甲2発明の何れにおいても、本件特許発明1の様に『電子記帳機へ誘導しないと判定した場合は、前記受付部で受付番号を取得し、該受付番号を出力する』との事項は開示も示唆もされていない。

なお、甲1発明において、ロビー端末に対して取引項目を事前入力する具体的内容を、本件特許発明1の様に『記帳データ』とすることが当業者にとって容易であるとしても、甲1発明と甲2発明とを組み合わせることに阻害要因が存在するとの結論に影響を与えるものではない。

以上の通りであるから、甲1発明に甲2発明を組み合わせて本件特許発明1とすることは、当業者といえども容易になし得るものではない。


2.本件特許発明2?5について

本件特許発明2?5は、いずれも本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、甲1発明との間には、上記[相違点1]及び[相違点2]が存在する。
そして、上記[相違点1]及び[相違点2]に関する事項は、甲3?5の何れにも開示されていないから、上記「1.本件特許発明1について」で検討したのと同様の理由により、本件特許発明2?5は、甲1発明、甲2発明、甲3発明、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。


3.本件特許発明6について

本件特許発明6と甲1発明とは、上記[相違点1]及び[相違点2]に加えて、以下の点においても相違している。

[相違点3]
本件特許発明6には、『第1の取引種別の取引処理を行う窓口が空き状態であるか否かを検知する検知部』を備え、『電子記帳機は、前記検知部により窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理し、顧客誘導部は、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知された際に、前記電子記帳機で入力を行う顧客を前記窓口に誘導する』との構成を備えているのに対し、甲1発明には、かかる構成を備えていない点。

<判断>

甲5には、「顧客は電子伝票記帳台1-1にて取引科目を選択し、取引データの入力を終えると、電子伝票記帳台1-1のディスプレイに各々の取引科目に対応した処理コーナへの誘導メッセージが表示され、現物処理単位ごとに付与される通番を印字した番号札が自動発行される。この時、処理終了までの予想待ち時間が表示される。同時に処理コーナの処理状況を判定し、空きの場合は処理コーナへ顧客を誘導し、処理中の場合は、待機のためにソファへ誘導する。」との事項が記載されている。

また、甲6には、「ロビー端末の操作状況を参照して適切なタイミングで顧客を呼び出す技術」について記載されており、「ロビー端末3や呼出表示機5にて窓口へ呼び出された顧客は、窓口端末4にてロビー端末3では処理し切れなかった取引を継続することができる」との事項が記載されている。

しかしながら、甲5には、「処理コーナの処理状況を判定し、空きの場合は処理コーナへ顧客を誘導」する事項が、そして甲6には、「ロビー端末の操作状況を参照して適切なタイミングで顧客を呼び出す」にあたって、「ロビー端末3や呼出表示機5にて窓口へ呼び出された顧客は、窓口端末4にてロビー端末3では処理し切れなかった取引を継続することができる」との事項が記載されているに過ぎない。特に、甲6において、顧客を呼び出すタイミングは、ロビー端末の操作状況を参照して決定するものである。

してみると、甲5及び甲6の何れにも、本件特許発明6で特定されている『検知部により窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理し、』との事項は記載も示唆もされていない。

したがって、当業者が甲1発明に甲5及び甲6に記載されている事項を組み合わせたとしても、本件特許発明6で特定されている『検知部により窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理し、』との事項に到達するとは認められないので、当業者といえども容易になし得るものではない。

さらに、本件特許発明6と甲1発明との間には、上記[相違点1]及び[相違点2]も存在しており、当該[相違点1]及び[相違点2]については、甲1発明にかかる[相違点1]及び[相違点2]についての記載がないばかりでなく、異議申立人が取消理由として提示していない甲2発明を考慮しても、上記「1.本件特許発明1について」で検討した様に当業者といえども容易になし得るものではない。

以上の通りであるから、本件特許発明6は、甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものではない。


4.本件特許発明7について

本件特許発明7は、本件特許発明6を引用するものであるから、甲1発明との間には、上記[相違点1]?[相違点3]が存在する。
そして、上記[相違点1]?[相違点3]については、上記「3.本件特許発明6について」で検討した通りであるから、本件特許発明7は、甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものではない。


5.本件特許発明8?10について

本件特許発明8?10は、いずれも本件特許発明1又は本件特許発明6を直接又は間接的に引用するものであるから、甲1発明との間には、上記[相違点1]?[相違点3]が存在する。
そして、上記[相違点1]?[相違点3]については、甲3?8の何れにも開示されていないから、上記「1.本件特許発明1について」及び「3.本件特許発明6について」で検討したのと同様の理由により、本件特許発明8?10は、甲1?甲3発明、及び甲4?甲8の記載に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものではない。


6.本件特許発明11について

本件特許発明11と甲1発明とは、以下の点で相違している。

[相違点4]
本件特許発明11にかかる『電子記帳機』は、『顧客による電子的な記帳データの入力を受け付ける』ものであり、『記帳データの生成に応じて受付番号を付した媒体の出力を行う媒体出力ステップ』を実行するものであるのに対して、甲1発明にかかる「ロビー端末」は、「記帳データの入力を受け付け」ているのか不明であることに加え、「受付番号を付した媒体を出力を行う媒体出力ステップ」を実行していない点。(甲1発明においては、受付番号が記された整理券とカードを排出するのは、受付端末111である点。)

<判断>

上記[相違点4]は、実質的に上記[相違点1]と同様のものであり、上記「1.本件特許発明1について」で検討した通り、甲1発明において、ロビー端末に対して取引項目を事前入力する具体的内容を、本件特許発明11の様に『記帳データ』とすることが当業者にとって容易であるとしても、甲1発明は、顧客が選択した来店用件等に基づいて、営業店管理サーバ116では、どの端末へ顧客を誘導するかに拘わらず、受付端末111へ受付番号を回答するものであり、ロビー端末にて取引項目の事前入力を行う際には、顧客に対して受付番号が既に示されていることが前提であり、甲2発明にかかる起票機が実行する前記処理を甲1発明にかかるロビー端末にて実行させようとすると、顧客はロビー端末に対して入力するべき「受付番号」が知らされていないため、ロビー端末に対して取引項目の事前入力が行えないので、甲1発明にかかるロビー端末に甲2発明にかかる起票機が実行する前記処理を実行させようとすること、即ち、甲1発明と甲2発明とを組み合わせることに阻害要因が存在することは明らかである。

以上の通りであるから、甲1発明に甲2発明を組み合わせて本件特許発明11とすることは、当業者といえども容易になし得るものではない。


7.本件特許発明12について

本件特許発明12と甲1発明とは、以下の点において相違している。

[相違点5]
本件特許発明12にかかる『電子記帳機』は、『顧客による電子的な記帳データの入力を受け付ける』ものであるのに対して、甲1発明にかかる「ロビー端末」は、「記帳データの入力を受け付け」ているのか不明である点。(甲1発明においては、受付番号が記された整理券とカードを排出するのは、受付端末111である点。)

[相違点6]
本件特許発明12には、『第1の取引種別の取引処理を行う窓口が空き状態であるか否かを検知する検知ステップ』を備え、『電子記帳機が、前記検知ステップにより窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理するステップと、顧客誘導部は、前記検知部により前記窓口が空き状態であると検知された際に、前記電子記帳機で入力を行う顧客を前記窓口に誘導するステップ』との構成を備えているのに対し、甲1発明には、かかる構成を備えていない点。

<判断>

上記[相違点6]は、実質的に上記[相違点3]と同様のものであり、上記「3.本件特許発明6について」で検討した通り、甲5及び甲6の何れにも、本件特許発明12で特定されている『検知ステップにより窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理するステップ』との事項は記載も示唆もされていない。

したがって、当業者が甲1発明に甲5及び甲6に記載されている事項を組み合わせたとしても、本件特許発明12で特定されている『検知ステップにより窓口が空き状態であると検知された際に、その時点までに入力された記帳データを含む窓口データを前記窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理するステップ』との事項に到達するとは認められないので、当業者といえども容易になし得るものではない。

以上の通りであるから、本件特許発明12は、甲1発明、及び甲5、甲6の記載に基づいて当業者といえども容易に想到し得るものではない。

なお、甲1発明において、ロビー端末に対して取引項目を事前入力する具体的内容を、本件特許発明12の様に『記帳データ』とすることが当業者にとって容易であるとしても、上記[相違点6]の判断に影響を与えるものではない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?12を取り消すことはできない。

さらに、他に本件特許発明1?12を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-04-04 
出願番号 特願2013-129071(P2013-129071)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩田 徳彦  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 智康
相崎 裕恒
登録日 2017-06-09 
登録番号 特許第6154209号(P6154209)
権利者 グローリー株式会社
発明の名称 顧客誘導システム及び顧客誘導方法  
代理人 中辻 史郎  

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